説明

電力供給装置

【課題】制御を容易に行うことができ、より高い周波数で動作する電力供給装置を提供する。
【解決手段】電力供給装置1aは、1台の交流電源2と、交流電源2と交流電源2の第1〜第nの負荷14との間に接続される切り替え部3と、を備え、切り替え部3は、第1〜第nの切り替え回路3a,3b・・・3nと、制御部6と、を備え、第1〜第nの切り替え回路3a,3b・・・3nのそれぞれは、逆並列接続された半導体スイッチング素子の一対8,9から構成され、半導体スイッチング素子対8,9の一対の一端が、交流電源2の一端と各負荷14の一端との間に直列接続され、各負荷14の他端が、交流電源2の他端に接続され、半導体スイッチング素子8,9の一対のそれぞれは、ダイオード10とトランジスタ11との直列接続からなる。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11を用いれば、制御が容易で、高速でメンテナンスが不要な切り替え部3を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力供給装置に関する。さらに、詳しくは、本発明は、電源と複数の負荷との間に切り替え部を挿入した電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波を用いた誘導加熱装置や溶解炉装置において、高周波や低周波の電源1台で負荷となる複数の加熱コイルを制御する装置、又は、高周波の電源1台を時分割で使用する場合の装置構成は以下のようになっている。
図8は、従来の電力供給装置50で用いられる切り替え回路51の構成を示す回路図である。図8に示すように、電力供給装置50の切り替え回路51は、電源52と負荷となるコイル53,54との間に挿入されている。通常の切り替え回路51は、電磁接触器(マグネットと呼ばれる)やエヤー駆動の機械式接点からなるスイッチで構成されている。
【0003】
しかしながら、機械式のスイッチは安価である反面、接点に寿命が有るので定期的な交換と保守が必要となる。また、機械式のスイッチは高速動作ができないために動作速度に制限が生じるので、短時間で電力配分ができない。
【0004】
特許文献1には、複数の誘導コイルを1台の電源で加熱する誘導加熱装置が開示されている。
本書に添付した図9は、特許文献1に開示された誘導加熱装置を示す図である。この図9に示すように、誘導加熱装置55は、1台の電源90と電源90の制御回路100と、制御回路100によって制御される第1の切り替え回路101と第2の切り替え回路102とから構成されている。誘導加熱装置55は、複数の区間81,82,83とからなる誘導加熱コイル80を加熱する。各コイル区間は、一方の端子が切り替え回路101に接続されている。各コイル81,82,83の他方の端子は第2の切り替え回路102に接続されている。
【0005】
切り替え回路101及び102はサイリスタ又はSCRの逆並列の組101a,101b,101c,102a,102b及び102cを含む。各コイル81,82,83は、切り替え回路101の逆並列のSCRの一組に接続された一方の端子84,86,88と、切り替え回路102の逆並列のSCRの組に接続されたもう一方の端子85,87とを持つ。例えば、コイル81の両端の端子84,85に対しては、コイル81の端子84が逆並列のSCRの組101aに接続され、コイル81の端子85は逆並列のSCRの組102aに接続されている。電源90は、全ての逆並列のSCRの組に接続されている。制御回路100は、第1の切り替え回路101と第2の切り替え回路102とを切り替えることにより、電源90から3つのコイル81,82,及び83へ供給される電力の継続時間を制御している。
【0006】
特許文献2には、1台のインバータによって、複数の加熱コイルに電力を供給する誘導加熱装置が開示されている。
図10は、特許文献2に開示された誘導加熱装置を示す図である。誘導加熱装置200は、インバータの逆変換部204に第1の加熱コイル261が接続されている。さらに、第2の加熱コイル262が、逆並列接続のサイリスタ対271,272を介してインバータの逆変換部204に接続され、逆並列接続のサイリスタ対271,272の流通角が第2の制御回路211で制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002―529906号公報
【特許文献2】特開2009−32495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2で使用されているサイリスタは、大電流が扱え、そして高耐圧とすることが可能な素子ではある。しかしながら、サイリスタは自己消弧型半導体素子ではないので転流回路が必要となり使用し難い。さらに、サイリスタは近年では生産量も大きく減少し、新たに設備装置に使用すると保守が困難となる問題がある。
またサイリスタは、アノードとカソードとの間にある程度の電圧を印加しておきゲート信号を加え素子固有の保持電流以上の電流を流し続けないとオン状態を維持できない。つまりサイリスタをオン状態にするにはあらかじめアノード、カソード間に電圧が印加されており保持電流が流れることが条件となる。このため、交流電源からの電力を複数のコイルに供給する場合、制御回路が複雑になることや、サイリスタの流通角の制御に制限が生じる等の課題がある。
【0009】
さらに、サイリスタは、交流の商用周波数からせいぜい10kHz程度までのスイッチングしかできず、高速化ができない。また、またサイリスタで制御する場合にはサイリスタのアノードとカソードとの間に逆電圧が印加されるまでオフ出来ない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、制御を容易に行うことができ、より高い周波数で動作し、保守が容易な電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の電力供給装置は、1台の交流電源と、交流電源と交流電源の第1〜第nの負荷との間に接続される切り替え部と、を備え、切り替え部は、第1〜第nの切り替え回路と、制御部と、を備え、第1〜第nの切り替え回路のそれぞれは、逆並列接続された半導体スイッチング素子の一対から構成され、半導体スイッチング素子の一対の一端が、交流電源の一端と各負荷の一端との間に直列接続され、各負荷の他端が、交流電源の他端に接続され、半導体スイッチング素子の一対のそれぞれは、ダイオードとトランジスタとの直列接続からなることを特徴とする。
【0012】
上記構成において、各負荷の他端と交流電源の他端との間にさらに、逆並列接続された半導体スイッチング素子の一対からなる切り替え回路が接続されてもよい。
トランジスタは、好ましくは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、MOSFET及びバイポーラトランジスタの何れかである。負荷は、好ましくはコイル又は溶接用電極である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な切り替え部によって、1台の交流電源から複数の負荷に交流電力を高速で分配し得る電力供給装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力供給装置の構成を示す回路図である。
【図2】電力供給装置の動作の一例を説明するためのタイムチャートであり、それぞれ(A)は電源の電圧、(B)はVp1、(C)はVn1、(D)はVp2、(E)はVn2、(F)は第1のコイルの電圧、(G)は第2のコイルの電圧の波形を示している。
【図3】本発明の電力供給装置の変形例の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の電力供給装置の別の変形例の構成を示す回路図である。
【図5】電力供給装置の負荷を溶接用電極とした例を示す回路図である。
【図6】電力供給装置の負荷を溶接用電極とした別の例を示す回路図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電力供給装置の構成を示す回路図である。
【図8】従来の電力供給装置で用いられる替え回路の構成を示す回路図である。
【図9】特許文献1に開示された誘導加熱装置を示す図である。
【図10】特許文献2に開示された誘導加熱装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、幾つかの実施形態に基づいて図面を参照して本発明を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の電力供給装置1に係る第1の実施形態の構成を示す回路図である。図1に示すように、電力供給装置1は、交流の電源2と、電源2に接続される切り替え部3と、を含んで構成されている。切り替え部3には、第1のコイル4及び第2のコイル5が接続される。つまり、第1のコイル4及び第2のコイル5は、電源2の負荷である。
【0016】
電源2として、交流を発生する電源、所謂電圧形インバータからなる大電力の発振器等を用いることができる。
【0017】
切り替え部3は、第1のコイル4を駆動する第1の切り替え回路3aと、第2のコイル5を駆動する第2の切り替え回路3bと、制御部6とから構成されている。
【0018】
第1の切り替え回路3a及び第2の切り替え回路3bは、それぞれが逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の一対から構成されている。半導体スイッチング素子8,9は、それぞれダイオード10と三端子のスイッチング素子11との直列接続からなる。半導体スイッチング素子8において、ダイオード10と三端子のスイッチング素子11との直列接続は、交流からなる電源2が正の半周期で導通するように構成されている。一方、半導体スイッチング素子9は半導体スイッチング素子8に対して逆並列接続となるように、ダイオード10と三端子のスイッチング素子11との直列接続は、交流からなる電源2が負の半周期で導通するように構成されている。半導体スイッチング素子8,9において、各スイッチング素子11の主電極と第2の主電極とには、フリーホイーリングダイオード12が逆並列に接続されている。例えば、三端子のスイッチング素子11がnチャンネルの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの場合、第1の主電極、第2の主電極及び制御電極は、それぞれ、コレクタ、エミッタ及びゲートと呼ばれている。この場合には、フリーホイーリングダイオード12のカソードが絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBTとも呼ばれている)のコレクタに接続されている。フリーホイーリングダイオード12のアノードが絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのエミッタに接続されている。ダイオード10は、スイッチング素子11に逆電圧が印加されたとき、フリーホイーリングダイオード12に電流を流さないために接続されている。
なお、フリーホイーリングダイオード12は、フライホイールダイオードや還流ダイオードとも呼ばれている。
【0019】
ダイオード10として、大電流、高耐圧のダイオードを使用する。三端子のスイッチング素子11として、所謂自己消弧型半導体素子であるトランジスタを使用することができる。このようなトランジスタとして、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、FET、MOS型のFET(MOSFET)等の電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等が挙げられる。以下の説明では、三端子のスイッチング素子11は、nチャンネルの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとして説明する。
【0020】
ダイオード10の逆方向耐圧及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のコレクタ耐圧は、電源2の交流電圧の3倍以上であるとして説明する。例えば、電源2の電圧、つまり実効電圧が200V、400V系であれば、トランジスタの耐圧は、それぞれ600V、1200V以上は必要となる。
【0021】
第1の切り替え回路3aにおいて、電源2の一端が第1の切り替え回路3aの一端に接続され、第1の切り替え回路3aの他端が第1のコイル4の一端に接続され、第1のコイル4の他端が電源2の他端に接続されている。従って、第1の切り替え回路3aは、第1のコイル4に直列接続されている。
【0022】
第1の切替え回路3aの上段の半導体スイッチング素子8において、ダイオード10のアノードが電源2の一端に接続され、ダイオード10のカソードが絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のコレクタに接続され、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のエミッタが第1のコイル4の一端に接続されている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のゲートには、電源2の正側の半周期毎に所定の導通角θp1で導通するように、制御部6から制御信号Vp1が印加される。
【0023】
第1の切り替え回路3aの下段の半導体スイッチング素子9において、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のエミッタが電源2の一端に接続され、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のコレクタがダイオード10のカソードに接続され、ダイオード10のアノードが第2のコイル5の一端に接続されている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のゲートには、電源2の負側の半周期毎に所定の導通角θn1で導通するように、制御部6から制御信号Vn1が印加される。
【0024】
第2の切り替え回路3bは、第2のコイル5に直列接続されている。つまり、電源2の一端が第2の切り替え回路3bの一端に接続され、第2の切り替え回路3bの他端が第2のコイル5の一端に接続され、第2のコイル5の他端が電源2の他端に接続されている。
【0025】
第2の切り替え回路3bの上段の半導体スイッチング素子8において、ダイオード10及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11の接続関係は第1の切り替え回路3aと同じであり、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のエミッタが第2のコイル5の一端に接続される点が異なっている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のゲートには、電源2の正側の半周期毎に所定の導通角θp2で導通するように、制御部6から制御信号Vp2が印加される。
【0026】
第2の切り替え回路3bの下段の半導体スイッチング素子9において、ダイオード10及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11の接続関係は第1の切り替え回路3aと同じであり、ダイオード10のアノードが第2のコイル5の一端に接続される点が異なっている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のゲートには、電源2の負側の半周期毎に所定の導通角θn2で導通するように、制御部6から制御信号Vn2が印加される。
【0027】
図2は電力供給装置1の動作の一例を説明するためのタイムチャートであり、それぞれ(A)が電源2の電圧、(B)がVp1、(C)がVn1、(D)がVp2、(E)がVn2、(F)が第1のコイル4の電圧、(G)が第2のコイル5の電圧の波形を示している。図2に示すように、電源2の正の半周期(図2(A)参照)において、制御部6は制御信号Vp1を出力し、第1の切り替え回路3aの上段の半導体スイッチング素子8を所定の導通角θp1の時間だけ導通させる(図2(B)参照)。電源2の負の半周期において、制御部6は、第1の切り替え回路3aの下段の半導体スイッチング素子9を所定の導通角θn1の時間だけ導通させる(図2(C)参照)。
【0028】
図2(F)に示すように、第1のコイル4には、電源2の正の半周期では導通角θp1に応じて電源2の正側の電圧が印加され、電源2の負の半周期では導通角θn1に応じて電源2の負側の電圧が印加される。これにより、電源2からの電力が第1の切り替え回路3aを介して第1のコイル4に供給される。第1のコイル4に図示しない被加熱物が配置されている場合には、この被加熱物が誘導加熱される。
【0029】
同様に、第2のコイル5では、電源2の正側の半周期(図2(A)参照)において、制御部6は制御信号Vp2を出力し、第2の切り替え回路3bの上段の半導体スイッチング素子8を所定の導通角θp2の時間だけ導通させる(図2(D)参照)。そして、電源2の負の半周期において、制御部6は、第2の切り替え回路3bの下段の半導体スイッチング素子9を所定の導通角θn2の時間だけ導通させる(図2(E)参照)。
従って、図2(G)に示すように、第2のコイル5には、電源2の正の半周期では導通角θp2に応じて電源2の正側の電圧が印加され、電源2の負の半周期では導通角θn1に応じて電源2の負側の電圧が印加される。これにより、電源2からの電力が第2の切り替え回路3bを介して第2のコイル5に供給される。第2のコイル5に図示しない被加熱物が配置されている場合には、この被加熱物が誘導加熱される。
【0030】
電力供給装置1によれば、単一の電源2から発生する電力を切り替え部3を介して、第1及び2のコイル4,5に供給できるようになる。この際、逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の一対からなる第1及び第2の第1の切り替え回路3a,3bの各絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11のゲートに印加されるゲート信号の導通角θp1,θn1,θp2,θn2を制御することによって、第1のコイル4及び第2のコイル5に印加される電力の調整ができる。本発明の電力供給装置1の切り替え部3は、電源2と負荷となるコイル4,5との間に挿入されており、高周波誘導加熱装置や溶解炉装置に応用することができる。電源2の負荷は、コイル4,5に限らず種々の負荷に適用することができる。
【0031】
(電力供給装置1の変形例1)
本発明の電力供給装置1の切り替え部3は、電源2と負荷となるコイル4,5との間に挿入されており、高周波誘導加熱装置や溶解炉装置に応用することができる。電源2の負荷は、コイル4,5に限らず種々の負荷に適用することができる。一例として、電源2の負荷をn個のコイルとした電力供給装置1の変形例について説明する。
図3は、本発明の電力供給装置の変形例1aの構成を示す回路図である。図3に示すように、電力供給装置1aは、電源2と電源2に接続される切り替え部3とを含んで構成されている。切り替え部3には、n個のコイル14(14〜14)が接続されている。つまり、電力供給装置1aは、切り替え部3によって負荷となるコイル14〜14に電力を供給するように構成されている。
【0032】
切り替え部3は、第1のコイル14を駆動する第1の切り替え回路3a,第2のコイル14を駆動する第2の切り替え回路3b,・・・,第nのコイル14を駆動する第nの切り替え回路3nと、制御部6と、から構成されている。
【0033】
第1〜第nの切り替え回路3a〜3nのそれぞれは、何れも逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の一対から構成されている。つまり、第1〜第nの切り替え回路3a〜3nでは、半導体スイッチング素子8,9の対をn組使用している。第1〜第nの切り替え回路3a〜3nの上段の半導体スイッチング素子8が、電源2の正側の半周期の導通を制御する。一方、第1〜第nの切り替え回路3a〜3nの下段の半導体スイッチング素子9が、電源2の負側の半周期の導通を制御する。
【0034】
制御部6は、電源2の正側の半周期において、第1〜第nの切り替え回路3a〜3nの上段の半導体スイッチング素子8が、所定の導通角θp1,θp2,〜θpnで導通するように、制御信号Vp1,p2,〜Vpnを上段の半導体スイッチング素子8に出力する。
【0035】
制御部6は、電源2の負側の半周期において、第1〜第nの切り替え回路3a〜3nの下段の半導体スイッチング素子9が、所定の導通角θn1,θn2,〜θnnで導通するように、制御信号Vn1,n2,〜Vnnを下段の半導体スイッチング素子9に出力する。
【0036】
本発明の電力供給装置の変形例1aは、第1〜第nの切り替え回路3a〜3nが、それぞれ対応する第1〜第nのコイル14〜14に直列接続されている。半導体スイッチング素子8が、制御部6から送出される制御信号Vp1,p2,〜Vpnによって所定の導通角θp1,θp2,〜θpnで導通し半導体スイッチング素子9が、制御部6から送出される制御信号Vn1,n2,〜Vnnによって所定の導通角θn1,θn2,〜θnnで導通する。これにより、電源2から供給される電力が第1〜第nのコイル14〜14に分配される。
【0037】
(電力供給装置1の変形例2)
電源2の周波数が互いに異なる2つの周波数からなる電力供給装置1の変形例について説明する。
図4は、本発明の電力供給装置の別の変形例1bの構成を示す回路図である。図4に示す電力供給装置1bが図1に示す電力供給装置1と異なるのは、図1に示す電力供給装置1の単一周波数の電源2を、第1の周波数と第2の周波数を出力する2周波電源20に代えた構成にした点である。2周波電源20は、第1の周波数を出力する低周波電源21と、第2の周波数を出力する高周波電源22と、インダクタンス23と、コンデンサ24等を含んで構成されている。2周波電源20は、低周波電源21と高周波電源22とが重畳されてなる電源である。低周波電源21と高周波電源22とは、通電制御部25によって各出力が制御される。低周波電源21の一端はインダクタンス23を介して切り替え部3の一端に接続されると共に、高周波電源22の一端はコンデンサ24を介して切り替え部3の一端に接続される。低周波電源21の他端及び高周波電源22の他端は、第1及び第2のコイル4,5の他端と接続される。他の構成は、図1に示す電力供給装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0038】
低周波電源21の第1周波数は、例えば50〜60Hzの商用交流周波数から1kHz程度の周波数である。高周波電源22の第2周波数は、例えば1kHz〜400kHz程度の周波数である。
【0039】
電力供給装置1bによれば、1台の2周波電源20で第1及び第2のコイル4,5の誘導加熱を行うことができると共に、さらに、2周波電源20から低周波電力及び高周波電力が出力されるので、被加熱物の内部を低周波電源21で誘導加熱し、被加熱物の表面を高周波電源22で誘導加熱することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の電力供給装置1によれば、切り替え部3は、ダイオード10及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11の直列接続を逆並列接続した対が第1及び第2コイル4,5に直列接続する回路構成を有している。逆並列接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11の各ゲート電極に印加されるゲート信号によって、単一の電源2から供給される電力が第1及び第2コイル4,5に供給される。
【0041】
これにより、本発明の電力供給装置1によれば、単一の電源2から供給される電力を機械式スイッチではなく、ダイオード10及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11の直列接続からなる半導体スイッチング素子を逆並列接続した半導体スイッチング素子8,9の一対で行うことができる。このため、切り替え部3の小型化を図ることができる。この切り替え部3では、機械式スイッチを用いた切り替え回路で必要な磨耗部品等が不要となり、その結果メンテナンスも不要、つまりメンテナンスフリーとなる。
【0042】
本発明の電力供給装置1の切り替え部3は、スイッチング素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ11を使用しているので、100kHzに及ぶ周波数で動作させることができる。つまり、切り替え部3は高速で動作する。これは、従来のサイリスタを用いた切り替え回路の動作周波数である10kHzの10倍の速さである。
【0043】
(電力供給装置1の応用例1)
図5は、電力供給装置1の負荷を溶接用電極とした例を示す回路図である。図5に示す電力供給装置1は、図1に示している負荷のコイル4,5を第1及び第2の溶接用電極15,16とした場合を示している。第1の切り替え回路3aが第1の溶接用電極15に直列接続され、第2の切り替え回路3bが第2の溶接用電極16に直列接続されている。従って、電源2の電力が、切り替え部3によって第1の溶接用電極15及び第2の溶接用電極16に供給される。これにより、第1の溶接用電極15に挟まれる被加工物の抵抗溶接ができると共に、第2の溶接用電極16に挟まれる被加工物の抵抗溶接ができる。
【0044】
(電力供給装置1bの応用例)
図6は、電力供給装置1bの負荷を溶接用電極とした例を示す回路図である。図6に示す電力供給装置1は、図4に示している負荷のコイル4,5を第1及び第2の溶接用電極15,16に置き換えた場合を示している。第1の切り替え回路3aが第1の溶接用電極15に直列接続され、第2の切り替え回路3bが第2の溶接用電極16に直列接続されている。従って、電源2の電力が、切り替え部3によって第1の溶接用電極15及び第2の溶接用電極16に供給される。これにより、第1の溶接用電極15に挟まれる被加工物の抵抗溶接ができると共に、第2の溶接用電極16に挟まれる被加工物の抵抗溶接ができ、さらに、2周波電源20から低周波電力及び高周波電力が出力されるので、被溶接物の溶接箇所の表面表面を高周波電力で誘導加熱することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電力供給装置について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電力供給装置30の構成を示す回路図である。 図7に示す電力供給装置30が、図1に示す電力供給装置1と異なるのは、コイル4,5の他端と交流電源2の他端との間にそれぞれ、上記した逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の対からなる切り替え回路3a2,3b2がさらに接続される点にある。
具体的には、コイル4と接続される第1の切り替え回路3aは、交流からなる電源2の一端とコイル4の一端との間に接続される第1の切り替え回路3a1と、コイル4の他端と交流電源2の他端との間に接続される第1の切り替え回路3a2とからなる。
一方、コイル5と接続される第2の切り替え回路3bは、交流からなる電源2の一端とコイル5の一端との間に接続される第2の切り替え回路3b1と、コイル5の他端と交流からなる電源2の他端との間に接続される第2の切り替え回路3b2とからなる。
【0046】
図1に示す電力供給装置1にさらに追加される第1及び第2の切り替え回路3a2,3b2は、何れも図1に示す第1の切り替え回路3aと同じ構成であり、逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の対からなる。
【0047】
図7に示すように、第1の切り替え回路3a1,3a2の上側の半導体スイッチング素子8は、電源2が正の周期に導通するように接続されている。第1の切り替え回路3a1,3a2の上側の半導体スイッチング素子8において、トランジスタ11のゲートには制御部6から制御信号Vp1が印加されている。これにより、第1の切り替え回路3a1,3a2の上側の半導体スイッチング素子8は、電源2が正の周期に所定の導通角θp1で導通する。
【0048】
一方、第1の切り替え回路3a1,3a2の下側の半導体スイッチング素子9は、電源2が負の周期に導通するように接続されている。第1の切り替え回路3a1,3a2の下側の半導体スイッチング素子9において、トランジスタ11のゲートには制御部6から制御信号Vn1が印加されている。これにより、第1の切り替え回路3a1,3a2の下側の半導体スイッチング素子9は、電源2が負の周期に所定の導通角θn1で導通する。
【0049】
第2の切り替え回路3bも、第1の切り替え回路3aと同様に動作する。つまり、第2の切り替え回路3b1,3b2の上側の半導体スイッチング素子8において、トランジスタ11のゲートには制御部6から制御信号Vp2が印加されている。これにより、第2の切り替え回路3b1,3b2の上側の半導体スイッチング素子8は、電源2が正の周期に所定の導通角θp2で導通する。
【0050】
一方、第2の切り替え回路3b1,3b2の下側の半導体スイッチング素子9において、トランジスタ11のゲートには制御部6から制御信号Vn1が印加されている。これにより、第2の切り替え回路3b1,3b2の下側の半導体スイッチング素子9は、電源2が負の周期に所定の導通角θn1で導通する。
【0051】
本発明の電力供給装置30に用いる制御装置6は、電力供給装置1の制御装置6と同じ構成でよい。これにより、電力供給装置30は、図2のタイムチャートで示すVp1,Vn1,Vp2,Vn2によって第1のコイル4と第2のコイル5に印加する電力が制御される。従って、電力供給装置30は、電源2の電力を、Vp1,Vn1,Vp2,Vn2の制御、つまり所定の導通角θp1,θn1,θp2,θn2を制御して、第1のコイル4と第2のコイル5に印加する電力を制御することができる。
【0052】
本発明の電力供給装置30によれば、各コイル4,5の他端と電源2との間に、さらに、第1及び第2の切り替え回路3a2,3b2が接続されている。このため、負荷となる各コイル4,5の両端を、電源2と接続するとき以外は電気的に絶縁できるという利点が生じる。
さらに、本発明の電力供給装置30によれば、逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の一対が4組必要になる。つまり、電力供給装置1では逆並列接続された半導体スイッチング素子8,9の対が2組必要であったのに対して2倍必要になる。さらに、電力供給装置30によれば、第1の切り替え回路3aにおいて、コイル4の一端に接続される半導体スイッチング素子8,9の対3a1と、コイル4の他端に接続される半導体スイッチング素子8,9の対3a2は、電源2に直列接続されるので、トランジスタ11の耐圧は、本発明の電力供給装置1に用いたトランジスタ11の約1/2で済むので、より安価なトランジスタ11を使用できるという利点が生じる。
【0053】
本発明の電力供給装置30の構成は、電力供給装置1ばかりではなく、電力供給装置1a,1bにも適用することができる。
【0054】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。上述した実施形態における、切り替え部3の構成、電源2、電源2の周波数、コイル4,5のような負荷等は目的に応じて、適宜に設計することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,1a,1b,30:電力供給装置
2:電源
3:切り替え部
3a,3a1,3a2:第1の切り替え回路
3b,3b1,3b2:第2の切り替え回路
4:第1のコイル
5:第2のコイル
6:制御部
8,9:半導体スイッチング素子
10:ダイオード
11:三端子のスイッチング素子
12:フリーホイーリングダイオード
14:n個のコイル(14〜14
15:第1の溶接用電極
16:第2の溶接用電極
20:2周波電源
21:低周波電源
22:高周波電源
23:インダクタンス
24:コンデンサ
25:通電制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の交流電源と、該交流電源と該交流電源の第1〜第nの負荷との間に接続される切り替え部と、を備え、
上記切り替え部は、第1〜第nの切り替え回路と制御部とを備え、
上記第1〜第nの切り替え回路のそれぞれは、逆並列接続された半導体スイッチング素子の一対から構成され、
上記半導体スイッチング素子の一対の一端が、上記交流電源の一端と上記各負荷の一端との間に直列接続され、該各負荷の他端が、上記交流電源の他端に接続され、
上記半導体スイッチング素子の一対のそれぞれは、ダイオードとトランジスタとの直列接続からなることを特徴とする、電力供給装置。
【請求項2】
前記各負荷の他端と前記交流電源の他端との間にさらに、逆並列接続された半導体スイッチング素子の一対からなる切り替え回路が接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記トランジスタは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、MOSFET及びバイポーラトランジスタの何れかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記負荷が、コイルであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記負荷が、溶接用電極であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−186858(P2011−186858A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52399(P2010−52399)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】