説明

電力制御用光結合素子およびこの電力制御用光結合素子を用いた電子機器

【課題】負荷信号の駆動を細やかに制御し、消費電力を低減する。
【解決手段】マイコン側に接続された発光ダイオード11と、受光素子21およびプッシュプル回路を備えたIGBTゲート制御部20と、交流制御のための双方向スイッチ部30とからなり、双方向スイッチ部30は、エミッタ同士を接続するとともに、各ゲートにプッシュプル回路の出力を接続した第1IGBT31および第2IGBT32と、アノード同士を接続した第1FRD33および第2FRD34とからなり、第1IGBT31のコレクタと第1FRD33のカソード、及び第2IGBT32のコレクタと第2FRD34のカソードとをそれぞれ接続し、第1IGBT31および第2IGBT32のエミッタ同士の接続点と、第1FRD33および第2FRD34のアノード同士の接続点とを信号線で接続することにより、出力側の交流電流のON/OFF制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC(交流)制御用光結合素子およびこの光結合素子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の負荷制御装置の一例を示す回路図である。
【0003】
図7に示すものは交流電源と電力制御素子とを用いて構成された負荷制御装置の従来例であり、ここではソリッドステートリレーを使用した負荷制御装置を例に挙げて説明を行う。なお、ソリッドステートリレーとは、ゲート制御式双方向3端子サイリスタや逆阻止3端子サイリスタ等の電力半導体デバイスを用いた半導体無接点リレーをいい、一旦ONすると、ON・OFFを制御する制御信号を印加しなくても、開閉部を流れる電流が0Aになるまで、オン状態を保持する特徴がある。
【0004】
図7に示すソリッドステートリレー110は、電気信号を光に変換する発光素子(主にガリウム砒素LED(Light Emitting Diode)やガリウムアルミニウム砒素LED)111と、光を電気信号に変換する受光素子(主にゲートに光が当たると導通するフォトゲート制御式双方向3端子サイリスタ)112と、電力制御素子(主にゲート制御式双方向3端子サイリスタ)113とから成っている。制御電流Iが、発光素子111とこの発光素子111に直列に接続された電流制限抵抗120とを流れることにより発光素子111が発光すると、受光素子112が導通し、電力制御素子113のゲートにトリガ電流が流れ、電力制御素子113が点弧する。これにより負荷130に電流が流れ、負荷130が動作する。
【0005】
出力側には交流電流140が流れているため、やがて電流は0Aへ向かうが、この時、入力信号が無ければサイリスタ部(受光素子112および電力制御素子113)を流れる電流が0Aとなるため、受光素子112および電力制御素子113はOFFとなる。
【0006】
このようにして、入力光信号により交流電流のON/OFFを制御する。
【0007】
また、近年、あらゆる機器の省エネ化が進むにつれ、負荷で消費する電力にも注目することになり、交流負荷を対象とした低消費電力での負荷制御の要望が高まっている。例えば、トランジスターを逆直列または逆並列に接続した半導体双方向スイッチの、各トランジスターのゲート・コレクタ間にツェナーダイオードとダイオードの逆直列回路を接続することにより、半導体双方向スイッチに両方向に発生するスパイク電圧を抑制できるようにした半導体双方向スイッチ用スパイク電圧抑制回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−111398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のソリッドステートリレーによる負荷制御では、交流電流のON/OFF制御はできるものの、交流電流そのものの制御はできなかった。
【0009】
また、従来の負荷制御装置の他の例である上記特許文献1に開示されている半導体双方向スイッチ用スパイク電圧制御回路によれば、双方向スイッチによる回路構成が提案されているが、負荷の状態によって駆動を細やかに制御することが難しく、また入力制御信号は、通常、マイコンなどの小信号回路より供給されるため、直流小信号回路と交流大電流回路とを電気的に分離し、負荷のスイッチングノイズなどによる誤動作を防ぐ必要があることから光による絶縁が必要であった。
【0010】
本発明は係る実情に鑑みてなされたもので、負荷信号の駆動を細やかに制御し、消費電力を低減することができる電力制御用光結合素子およびこの電力制御用光結合素子を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の電力制御用光結合素子は、1次側である入力側の入力信号を2次側である出力側へ出力する、光結合部としての発光ダイオードを入力側に備えており、さらに、この発光ダイオードの出力に基づき交流負荷を制御する制御部を出力側に備えている。
【0012】
このような電力制御用光結合素子において、本発明では、前記制御部が、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))とダイオードとの組合せからなる双方向スイッチ部を有するものであってもよい。例えば、図1に示すように、本発明の電力制御光結合素子10は、入力側の入力信号を出力側へ出力する発光ダイオード11、受光素子21を備えたIGBTゲート制御部20、および第1IGBT31と第2IGBT32とを備えた双方向スイッチ部30から構成されている。
【0013】
また、前記IGBTの代わりに電界効果トランジスター(FET(field−effect transistor))を用いてもよく、例えば、図6に示すように、双方向スイッチ部が、第1FET35と第2FET36とを備えているものであってもよい。
【0014】
また、前記制御部のダイオードが、高速用整流ダイオード(FRD(Fast Recovery Diodes))からなるものであってもよい。例えば、図1に示すように、双方向スイッチ部30に、第1FRD33と第2FRD34とを備えている。
【0015】
また、前記光結合部の1次側前段回路として、周波数変調回路を備えていてもよい。例えば、図4に示すように、発光ダイオード11は周波数変調回路12に並列に接続されている。
【0016】
さらに、前記周波数変調回路12に2次側の周波数信号がフィードバックされていてもよい。例えば、図4に示すように、電力制御用光結合素子10の出力端子と周波数変調回路12とが、光結合素子13および周波数検出回路14を介して接続されている。
【0017】
またさらに、図4に示すように、前記周波数変調回路12は発振回路12aを備えており、フィードバックされた前記2次側の周波数信号に基づいてパルス幅変調(PWM (Pulse Width Modulation))波形を作成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電力制御用光結合素子によれば、1次側の入力信号を2次側へ出力する光結合部と、該光結合部の出力に基づき交流負荷を制御する制御部とを備えているため、交流出力を制御する際に、消費電流を低減することができる。また、前記制御部を、IGBTとダイオードとの組合せからなる双方向スイッチ部を有する構成、またはFETとダイオードとの組合せからなる双方向スイッチ部を有する構成としたので、負荷信号の駆動を細やかに制御することができる。
【0019】
また、前記光結合部の1次側前段回路として、周波数変調回路を備えた構成としたので、用途・負荷容量による周波数の変更を任意に、かつ容易に行うことができる。また、前記周波数変調回路に2次側の周波数信号をフィードバックする構成としたので、負荷で消費される消費電力をさらにきめ細かく制御することができる。さらに、前記周波数変調回路に発振回路を備えており、フィードバックした2次側の周波数信号に基づいてPWM波形を作成するように構成したので、負荷で消費される消費電力をさらにきめ細かく制御することができる。
【0020】
また、本発明の電子機器によれば、交流出力を制御する際に、電力制御用光結合素子における消費電流を低減することができるので、その結果として電子機器の消費電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の電力制御用光結合素子の実施例1を示す回路図である。
【0023】
本発明の電力制御用光結合素子10は、発光ダイオード11を備えた光結合部と、プッシュプル回路を備えたIGBTゲート制御部20と、交流制御のための双方向スイッチ部30とから構成されている。
【0024】
前記IGBTゲート制御部20は、発光ダイオード11から出力された光を受信する受光素子21と、この受光素子21に接続されたアンプ(AMP)26と、このAMP26に接続されたインターフェース25と、このインターフェース25に接続されたプッシュプル回路とから構成されている。プッシュプル回路は、2個のトランジスタ(第1Tr22および第2Tr23)と抵抗(RG24)とから構成されている。そして、コレクタが制御電源部に接続された第1Tr22のエミッタと、コレクタがアース電位に接続された第2Tr23のエミッタとが接続されており、このエミッタ同士の接続点にRG24の一方の端子が接続されている。また、第1Tr22および第2Tr23のベースには、一方の端子が制御部電源に接続されたインターフェース25の他方の端子が接続されている。
【0025】
双方向スイッチ部30は、エミッタ同士が接続された2個のトランジスタ(第1IGBT31および第2IGBT32)と、アノード同士が接続された2個のダイオード(第1FRD33および第2FRD34)とから構成されており、第1IGBT31および第2IGBT32のゲート端子に前記RG24の他方の端子が接続されている。また、第1IGBT31のコレクタと第1FRD33のカソードとが接続されており、第2IGBT32のコレクタと第2FRD34のカソードとが接続されている。また、第1IGBT31および第2IGBT32のエミッタ同士の接続点と、第1FRD33および第2FRD34のアノード同士の接続点とが信号線で接続されており、第1IGBT31および第2IGBT32のエミッタ同士の接続点には、IGBTゲート制御部20の第2Tr23のコレクタが接続されている。さらに、第1IGBT31のコレクタおよび第1FRD33のカソードの接続点と、第2IGBT32のコレクタおよび第2FRD34のカソードの接続点との間に、負荷41と交流電源42とが接続された構成となっている。すなわち、本実施例1では、双方向スイッチ部30の2個のダイオードには、IGBTと同様の耐圧および応答速度をもつFRD(ファーストリカバリーダイオード)を使用している。
【0026】
このような回路構成を有しているため、発光ダイオード11への入力信号がHレベルであれば第1Tr22がON状態、第2Tr23がOFF状態となり、第1IGBT31および第2IGBT32のゲートへ電荷が供給され、第1IGBT31および第2IGBT32が共にON状態となる。一方、発光ダイオード11への入力信号がLレベルであれば第1Tr22がOFF状態、第2Tr23がON状態となり、第1IGBT31および第2IGBT32のゲートへの電荷供給が停止され、第1IGBT31および第2IGBT32が共にOFF状態となる。
【0027】
次に、電力制御用光結合素子10のON/OFF動作について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図2は、交流電源42から出力される交流電流の双方向スイッチ部30内での電流経路を示す説明図であり、図3は、交流電源42の出力電流波形を示す説明図である。
【0029】
本実施例1の電力制御用光結合素子10においては、出力側に交流電源42が接続されているため、第1IGBT31および第2IGBT32が共にON状態のとき(すなわち、発光ダイオード11への入力信号がHレベルであるとき)、図2に示すように、交流電源42の出力が図3に示すAの部分では、双方向スイッチ部30の一方の端子30aから、第1IGBT31および第2FRD34を通って、他方の端子30bへ電流Aが流れ、交流電源42の出力が図3に示すB部分では、他方の端子30bから、第2IGBT32および第1FRD33を通って、一方の端子30aに電流Bが流れる結果、負荷41を駆動することができる。一方、第1IGBT31および第2IGBT32が共にOFF状態のときは(すなわち、発光ダイオード11への入力信号がLレベルであるときは)、電力制御用光結合素子10はOFF状態となり、負荷41には電流は流れない。すなわち、発光ダイオード11への入力信号のH/Lを切り換えることで、交流電流のON/OFF動作が可能となっている。従って、抵抗43を介して発光ダイオード11に接続されているマイコン44からの制御信号を、特定の周期のパルス信号に変調してから発光ダイオード11に送ることにより、出力側の消費電力制御を行うことが可能である。具体的には、出力側の交流電源42の周波数(50Hzや60Hz)よりも早い周期(数百Hzから数kHz)の入力信号を発光ダイオード11へ送り、第1IGBT31および第2IGBT32を高速でON/OFF動作させることにより、出力側の交流電流のON/OFFを繰り返し制御することで、トータルの消費電力を低減することが可能となる。
【0030】
本実施例1の電力制御用光結合素子10によれば、入出力間が電気的に絶縁されており、マイコンからの信号を直結することができるため、出力側の電位変動等のノイズに影響されること無く、安定した消費電力制御を行うことができる。また、用途の変更や負荷容量による周波数の変更を任意、かつ容易に行うことが可能である。
【実施例2】
【0031】
図4は、本発明の電力制御用光結合素子10の実施例2を示す回路図である。
【0032】
本実施例2の電力制御用光結合素子10は、上記実施例1に示す電力制御用光結合素子に、出力交流電流の周期を検出して電力制御用光結合素子にフィードバックするフィードバック部と、フィードバックされた周期に基づいてパルス幅変調波形を作成する周波数変調回路とを追加したものである。
【0033】
すなわち、発光ダイオード11と抵抗43との間に、周波数変調回路12を設けるとともに、この周波数変調回路12の直流電源ラインL2と、双方向スイッチ部30の両出力端に接続された交流電源ラインL2との間に、光結合回素子(フォトカプラ)13と交流電源の周波数を検出する周波数検出回路14とが接続された構成となっている。電力制御用光結合素子10の出力側と入力側とを接続する交流電源ラインL1と直流電源ラインL2とは、光結合素子13を介して非接触で接続されているため、ノイズなどの影響を受けにくく、電力制御用光結合素子10の動作は安定している。
【0034】
本実施例2の電力制御用光結合素子10によれば、フィードバックした周期を元に、周波数変調回路12内に設けられている発振回路12aからの出力(例えば、三角波等)を変調して、出力側交流電流の周期に対応したPWM制御波形を作成し、発光ダイオード11の制御に利用することができるので、負荷41で消費される消費電力をさらにきめ細かく制御することが可能である。
【0035】
図5は、図4に示す電力制御用光結合素子10において用いられる電流波形の一例を示す説明図である。図5中の実線の波形は、発振回路12aから出力されたのこぎり波を示しており、破線の波形は、直流電源ラインL2から周波数変調回路12へ出力される電流(出力電流)を示しており、太い実線のパルス波形は、PWM制御波形を示している。
【0036】
さらに、PWM制御波形の周波数や、デューティ比を調整することで、負荷動作の強弱制御もでき、負荷を備える電子機器の他のパラメータによって負荷動作を制御することも可能である。
【0037】
次に、双方向スイッチ部の他の例について説明する。
【0038】
図6は、本発明の電力制御用光結合素子を構成する双方向スイッチ部の他の例を示す回路図である。
【0039】
前述した実施例1および実施例2では、双方向スイッチ部を構成するトランジスタとしてIGBTを例に挙げて説明したが、電圧や電流によってはIGBTの代わりにFET(第1FET35および第2FET36)を用いても同等の効果を得ることができる。
【0040】
上記構成の電力制御用光結合素子10により、交流出力を制御する際に、消費電流を低減することができ、またマイコン制御可能とすることで、決めこまやかな制御を行うことができる。
【0041】
また、上記構成の電力制御用光結合素子10を電子機器に搭載すれば、交流出力を制御する際に、電力制御用光結合素子における消費電流を低減することができるので、その結果として電子機器の消費電流を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の電力制御用光結合素子および電子機器は、負荷として電磁弁、ファンを備えた冷蔵庫、エアコン、自動販売機などの電子機器での使用に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の電力制御用光結合素子の実施例1を示す回路図である。
【図2】交流電源から出力される交流電流の双方向スイッチ部内での電流経路を示す説明図である。
【図3】交流電源の出力電流波形を示す説明図である。
【図4】本発明の電力制御用光結合素子の実施例2を示す回路図である。
【図5】図4に示す電力制御用光結合素子において用いられる電流波形の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の電力制御用光結合素子を構成する双方向スイッチ部の他の例を示す回路図である。
【図7】従来の負荷制御装置の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0044】
10 電力制御用光結合素子
11 発光ダイオード
20 IGBTゲート制御部
21 受光素子
22 第1Tr
23 第2Tr
24 RG
25 インターフェース
26 AMP
30 双方向スイッチ部
31 第1IGBT
32 第2IGBT
33 第1FRD
34 第2FRD
41 負荷
42 交流電源
43 抵抗
44 マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側に接続されたマイコンからの信号にもとづき2次側に接続された交流負荷を制御する電力制御用光結合素子において、
1次側の入力信号を2次側へ出力する光結合部と、該光結合部の出力に基づき交流負荷を制御する制御部とを備えてなることを特徴とする電力制御用光結合素子。
【請求項2】
前記制御部が、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとダイオードとの組合せからなる双方向スイッチ部を有するものである請求項1記載の電力制御用光結合素子。
【請求項3】
前記制御部が、電界効果トランジスターとダイオードとの組合せからなる双方向スイッチ部を有するものである請求項1記載の電力制御用光結合素子。
【請求項4】
前記ダイオードが、高速用整流ダイオードからなるものである請求項2または請求項3記載の電力制御用光結合素子。
【請求項5】
前記光結合部の1次側前段回路として、周波数変調回路を備えてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電力制御用光結合素子。
【請求項6】
前記周波数変調回路に2次側の周波数信号がフィードバックされる請求項5記載の電力制御用光結合素子。
【請求項7】
前記周波数変調回路に発振回路を備えており、フィードバックされた前記2次側の周波数信号に基づいてパルス幅変調波形が作成される請求項6記載の電力制御用光結合素子。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電力制御用光結合素子を用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−33723(P2006−33723A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213142(P2004−213142)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】