説明

電力制御装置

【課題】
軽負荷時にサイリスタの点弧失敗による明るさのちらつきが発生するのを防止する電力制御装置を提供する。
【解決手段】
調光装置は、自己消弧形制御素子Q1、Q2を備えた第1の位相制御回路PC1と、サイリスタT1、T2を備えた第2の位相制御回路PC2と、交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路PC1の自己消弧形制御素子Q1、Q2を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路PC2のサイリスタT1、T2に対して点弧所要時間だけ連続し、かつ、交流電圧半波の終了前に少なくともリセット時間を確保して終了する短時間トリガー信号を供給するとともに、自己消弧形制御素子Q1、Q2をオンさせるように構成された制御手段CCとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路とサイリスタを備えた第2の位相制御回路とを備えた電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路とサイリスタを備えた第2の位相制御回路とを並列接続して交流電源と負荷との間に直列に介在させて、交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、その導通がほぼ飽和したときに第2の位相制御回路のサイリスタにトリガー信号を供給してこれを点弧させることによって順位相制御を行わせるように構成した調光装置等の電力制御装置は、既知である(例えば、特許文献1の請求項5および図12参照。)。
【0003】
特許文献1によれば、順位相制御の開始時に傾斜制御が行われるので、負荷や負荷回路に直列に挿入されたリアクタからの音響ノイズの発生が抑制されるとともに、傾斜制御後は、抵抗が相対的に小さいサイリスタのオンにより負荷電流が主としてサイリスタ側を流れるので、調光装置の発熱が少なくなる。
【特許文献1】特開平6−338395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す従来技術においては、軽負荷の場合、サイリスタが点弧するのに十分なトリガー電流が流れないために、サイリスタがオンしないときがあるので、これを回避するべくサイリスタのトリガー信号を交流電圧半波の終端まで継続させるように構成している。
【0005】
ところが、上記従来技術においては、交流電圧の極性が反転して次の半波になっても、サイリスタが引続きオンしてしまうことがあり、このときに負荷に明るさのちらつきが発生するという問題がある。これに対しては、既知のように負荷と並列にダミー抵抗器を接続すれば、上記のように交流電圧半波の終端まで継続するトリガー信号を供給しなくても、軽負荷時にサイリスタを確実にオンさせることができる。しかし、このような構成では、電力損失が増大するとともにコストアップになるという問題がある。
【0006】
本発明は、軽負荷時にサイリスタの点弧失敗による明るさのちらつきが発生するのを防止した電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の電力制御装置は、交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と;交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御するサイリスタを備えた第2の位相制御回路と;交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対して点弧所要時間だけ連続し、かつ、交流電圧半波の終了以前に少なくともリセット時間を確保して終了する短時間トリガー信号を供給するとともに、自己消弧形制御素子をオンさせるように構成された制御手段と;を具備していることを特徴としている。
【0008】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。本発明の電力制御装置は、位相制御回路およびこれを直接制御する制御手段を構成要件とするパワー回路部分いわゆる調光ユニットの構成に関するものであり、実際には照明を演出する調光制御回路部分を付加して使用されることが多い。しかし、本発明は、このような組み合わせに限定されるものではない。
【0009】
<第1の位相制御回路について> 第1の位相制御回路は、自己消弧形制御素子を備えていて、後述する制御手段により制御されて交流電圧半波の所望位相で順位相制御による位相制御を開始する。自己消弧形制御素子としては、例えばIGBT、MOSFET、SITなどを用いることができる。そして、順位相制御の際に、電流の立ち上がりを傾斜的に増加させる、いわゆる傾斜制御、換言すればリニア形のオン動作を行うものとする。
【0010】
交流電源電圧を位相制御するための回路構成は、特定の回路に限定されない。
【0011】
例えば、一対の自己消弧形制御素子を逆極性に直列接続し、一対の自己消弧形制御素子のそれぞれにダイオードを逆極性に並列接続した構成やダイオードブリッジの対向する一対の頂点間に一つの自己消弧形制御素子を接続した構成などを用いることができる。
【0012】
<第2の位相制御回路について> 第2の位相制御回路は、交流電源ラインに挿入されて、交流電圧半波の所望位相において、第1の位相制御回路に引続いて後述する制御手段によってオン動作制御されるサイリスタを備えている。なお、交流電源電圧を位相制御するための回路構成は、特定の回路に限定されない。
【0013】
典型的には、一対のサイリスタを逆並列接続した構成などを用いることができる。
【0014】
<制御手段について> 制御手段は、第1および第2の位相制御回路を以下説明するように協調して制御する。すなわち、交流電圧半波の所望位相において、まず第1の位相制御回路を、その自己消弧形制御素子を傾斜制御することにより動作させ、次にその導通すなわち負荷電流がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに短時間トリガー信号を供給して位相制御動作を行わせる。なお、本発明において、「短時間トリガー信号」とは、サイリスタの点弧に要する時間だけ連続するが、交流電圧半波の終了より以前に、トリガー信号を停止した時からサイリスタが開成するまでに要する時間であるリセット時間を少なくとも確保できる程度の相対的に持続時間の短いトリガー信号をいう。
【0015】
また、制御手段は、短時間トリガー信号をサイリスタに供給するとともに、少なくともこのときには自己消弧形制御素子をオンさせる。
【0016】
制御手段の上記の構成に伴って第1の位相制御回路は、サイリスタの短時間トリガー信号が供給される間オフされるとともに、短時間トリガー信号の終了とほぼ同時に再びオンしてもよい。または、傾斜制御に引続いてサイリスタの短時間トリガー信号が供給される間も継続しオンしていてもよい。なぜなら、自己消弧形制御素子は、その導通時の電圧降下がサイリスタのそれより大きいので、オンしている間でもサイリスタをオン制御することができるからである。
【0017】
<本発明の作用について> 本発明においては、上記の構成を具備していることにより、第1および第2の位相制御回路が制御手段によって制御されて互いに協調的に動作して位相制御を行う。すなわち、交流電圧半波において、最初第1の位相制御回路が傾斜動作により作動して負荷電流の位相制御を開始する。第1の位相制御回路において、自己消弧形制御素子の導通すなわち負荷電流がほぼ飽和すると、次に第2の位相制御回路のサイリスタに対して制御手段から短時間トリガー信号が供給される。負荷が小さい、すなわち軽負荷でなければ、サイリスタは、短時間トリガー信号が供給されたときにオンする。サイリスタがオンすると、たとえ自己消弧形制御素子が継続してオンしていたとしても、負荷電流は、導通時の電圧降下が自己消弧形制御素子のそれより小さい第2の位相制御回路のサイリスタ中を流れる。
【0018】
交流電圧半波が終了して、その極性が反転したときには、既に短時間トリガー信号が終了していて、しかもリセット時間も経過しているので、サイリスタは自動的に、しかも確実にオフする。
【0019】
交流電圧の極性が反転して次の半波になると、再び上記と同じ動作が反対極性の交流電圧半波においても繰り返される。そうして、負荷の位相制御すなわち調光が行われる。
【0020】
次に、軽負荷の場合の位相制御について説明する。すなわち、このような場合には、サイリスタに供給されるのは短時間トリガー信号なので、サイリスタが自己保持電流に達しないために、オンしないことがある。しかしながら、このような場合であっても、第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子が傾斜制御動作に引続いてオンしているかまたは、短時間トリガー信号終了と同時に再びオンするので、自己消弧形制御素子が代わって位相制御を行う。既述のように自己消弧形制御素子がオン時の電圧降下がサイリスタのそれより大きいが、軽負荷時なので、発熱は問題にならない。
【0021】
以上説明した本発明の特長を整理すると、以下のとおりである。
【0022】
1.軽負荷時にサイリスタがオンしなくても、自動的に自己消弧形制御素子が代わって位相制御を行う。したがって、サイリスタがオンしないことによる明るさのちらつき発生を防止できる。
【0023】
2.トリガー信号が短時間トリガー信号であるため、交流電圧の極性反転時にサイリスタが連続オン動作するのを防止できる。したがって、サイリスタの連続オン動作による明るさのちらつき発生を防止できる。
【0024】
3.その他の特徴
【0025】
(1)定格電流値の比較的小さな自己消弧形制御素子を採用できる。自己消弧形制御素子は、傾斜制御によるオン動作および軽負荷時にサイリスタがオンしないときに代わって位相制御を行うだけなので、第1の位相制御回路が担当する負荷電流を小さく設定することができる。したがって、定格電流値の比較的小さな自己消弧形制御素子を採用できる。
【0026】
(2)負荷が音響ノイズを発生しない。第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子による傾斜制御により、負荷電流の立ち上がりが緩やかに(di/dtが小さく)なり、負荷が音響ノイズを発生しなくなる。
【0027】
(3)自己消弧形制御素子が破損しにくい。自己消弧形制御素子を常に最大瞬間許容電流値以下で使用できるので、自己消弧形制御素子が破損しにくい。
【0028】
(4)軽負荷時におけるサイリスタをオンさせるために負荷と並列に接続するダミー抵抗が不要になる。
【0029】
請求項2の発明の電力制御装置は、交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と;交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御するサイリスタを備えた第2の位相制御回路と;位相制御された出力に対応した信号を直接的又は間接的に検出する検出手段と;交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対してトリガー信号を供給するとともに、検出手段により検出された信号が所定値以下のときには、第1の位相制御回路のみにより位相制御を行わせるように構成された制御手段と;を具備していることを特徴としている。
【0030】
<第1の位相制御手段について> 第1の位相制御手段は、後述する制御手段により制御されて交流電圧の位相制御の立上り時および軽負荷時の位相制御全体を担当する。
【0031】
<第2の位相制御手段について> 第2の位相制御手段は、交流電圧の位相制御の立上り後に負荷電流の通流を担当し、軽負荷時には作動しないように構成されている。
【0032】
<検出手段について> 検出手段は、負荷電流を検出するもの、調光信号又は出力電力を検出するもの等、位相制御された出力に対応した信号を直接的又は間接的に検出できるものを許容する。さらには、負荷電流を検出するもので構成されたときであっても、その具体的な手段は特定の構成に限定されるものではない。例えば、電流変成器、電流検出用抵抗器、半導体電流検出器などを適宜用いることができる。さらに、負荷電流検出手段の挿入位置は、負荷電流を検出可能であれば特定の回路位置に限定されない。例えば、調光装置の出力端と第1および第2の位相制御回路との間に直列的に挿入することが望ましい。しかし、要すれば、一対の電流検出手段を第1および第2の位相制御回路のそれぞれに直列に接続することにより分散して配設することもできる。
【0033】
<制御手段について> 制御手段は、第1および第2の位相制御回路をそれぞれ制御する点は請求項1の発明におけるのと同様であるが、第2の位相制御回路のサイリスタに供給するトリガー信号は、請求項1の発明におけるのと同様な短時間トリガー信号であるのが好ましいが、特許文献1におけるのと同様な交流電圧半波の終端近くまで連続するトリガー信号であっても、リセット期間が確保されていればよい。
【0034】
また、制御手段は、検出手段の検出データに基づいて求めた負荷の大きさが所定値以下すなわち軽負荷のときには、第1の位相制御回路のみを動作させる。ここで、サイリスタに対するトリガー信号を供給しないことで、第2の位相制御回路を動作させないものであっても良く、例えばそのサイリスタにトリガー信号を供給させて、サイリスタと自己消弧形制御素子の動作開始電圧の違いにより、実質的に第1の位相制御回路のみを動作させるものであっても良い。また、第1の位相制御回路を動作させるためには、自己消弧形制御素子に対する駆動信号を供給するが、傾斜制御に連続して駆動信号を供給し続けてもよいし、短時間の遮断期間の後に駆動信号を供給してもよい。さらに、「検出手段により検出された信号が所定値以下のとき」とは、負荷の大きさの度合いと相関し、所定値は所望により適宜設定することができる。検出手段が負荷電流を検出するものにあっては、定格電流の20%以下に設定するのが実用上比較的妥当な値である。
【0035】
さらに、制御手段は、軽負荷以外の負荷の時で傾斜制御以外のときには、軽負荷時と同様に第1の位相制御回路を制御することができる。しかし、所望により第1の位相制御回路を動作させなくてもよい。
【0036】
<本発明の作用について> 本発明は、以上の構成を具備していることにより、負荷の程度の如何にかかわらず、制御手段による制御により位相制御の立上り時には第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子により傾斜制御が行われ、その導通がほぼ飽和したときに第2の位相制御回路のサイリスタがオンするので、サイリスタがオンして以後の負荷電流の通流を担当して、位相制御が行われる。
【0037】
次に、軽負荷時の動作について説明する。すなわち、検出手段で検出された検出データが予め設定した値以下のときには、第2の位相制御回路のサイリスタは実質的に動作しない。また、同時に第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子に対して駆動信号を供給する。その結果、軽負荷時には、第1の位相制御回路のみで位相制御が行われる。したがって、サイリスタの点弧失敗による明るさのちらつき発生を防止できる。また、自己消弧形制御素子は、前述のとおりサイリスタより導通時の電圧降下が大きいが、軽負荷なので、発熱による実用上の問題はない。
【0038】
以上説明した本発明の特長を整理すると、以下のとおりである。
【0039】
1.軽負荷時にサイリスタをオンさせないで、自己消弧形素子を備えた第1の位相制御回路により位相制御を行うので、サイリスタがオンしないことによる明るさのちらつき発生を防止できる。
【0040】
2.第1の位相制御回路の自己消弧形素子による位相制御は、軽負荷時のみであるから、発熱による実用上の問題はない。
【0041】
3.その他の特徴
【0042】
(1)定格電流値の比較的小さな自己消弧形制御素子を採用できる。自己消弧形制御素子は、傾斜制御によるオン動作および軽負荷時の位相制御を行うだけなので、第1の位相制御回路が担当する負荷電流を小さく設定することができる。
【0043】
したがって、定格電流値の比較的小さな自己消弧形制御素子を採用できる。
【0044】
(2)負荷が音響ノイズを発生しない。第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子による傾斜制御により、負荷電流の立ち上がりが緩やかに(di/dtが小さく)なり、負荷が音響ノイズを発生しなくなる。
【0045】
(3)自己消弧形制御素子が破損しにくい。自己消弧形制御素子を常に最大瞬間許容電流値以下で使用できるので、自己消弧形制御素子が破損しにくい。
【0046】
(4)軽負荷時におけるサイリスタをオンさせるために負荷と並列に接続するダミー抵抗が不要になる。
【発明の効果】
【0047】
請求項1の発明によれば、自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と、サイリスタを備えた第2の位相制御回路と、交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対して点弧所要時間だけ連続し、かつ、交流電圧半波の終了前に少なくともリセット時間を確保して終了する短時間トリガー信号を供給するとともに、自己消弧形制御素子をオンさせるように構成された制御手段とを具備していることにより、軽負荷時にサイリスタの点弧失敗による明るさのちらつきが発生するのを防止する電力制御装置を提供することができる。
【0048】
請求項2の発明によれば、交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と;交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御するサイリスタを備えた第2の位相制御回路と;位相制御された出力に対応した信号を直接的又は間接的に検出する検出手段と;交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対してトリガー信号を供給するとともに、検出手段により検出された信号が所定値以下のときには、第1の位相制御回路のみにより位相制御を行わせるように構成された制御手段と;を具備していることにより、軽負荷時にサイリスタの点弧失敗による明るさのちらつきが発生するのを防止する電力制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0050】
図1および図2は、本発明の電力制御装置の第1の実施の形態としての調光装置を示し、図1は回路ブロック図、図2は各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図である。本実施の形態は、請求項1の発明に対応する。図1において、ASは交流電源、DMは調光装置、ILは負荷である。
【0051】
交流電源ASは、商用交流電源などからなる。
【0052】
調光装置DMは、第1の位相制御回路PC1、第2の位相制御回路PC2および制御手段CCからなり、入力端が交流電源ASの両極から延在する一対の交流電源ラインl1、l2および負荷ILを介して交流電源ASに接続する。
【0053】
第1の位相制御回路PC1は、一方の交流電源ラインl1に直列に挿入されて、交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えている。本実施の形態においては、一対の自己消弧形制御素子Q1、Q2および一対のダイオードD1、D2からなる。そして、一対の自己消弧形制御素子Q1、Q2は、例えばIGBTからなり、互いに逆極性に、かつ、交流電源ラインl1に直列に接続している。
【0054】
また、一対のダイオードD1、D2は、それぞれの自己消弧形制御素子Q1、Q2に逆並列に接続している。
【0055】
第2の位相制御回路PC2は、同様に一方の交流電源ラインl1に直列に挿入され、したがって第1の位相制御回路PC1に並列に接続して、交流電圧を位相制御するサイリスタを備えている。本実施の形態においては、一対のサイリスタT1、T2からなる。そして、一対のサイリスタT1、T2は、互いに逆並列接続している。
【0056】
制御手段CCは、マイコンを含んで構成され、交流電源ASから付勢されて作動して、第1および第2の位相制御回路PC1、PC2が協調し合うように制御する。すなわち、電源電圧半波に対して最初に第1の位相制御回路PC1による傾斜制御による位相制御を行わせる。自己消弧形制御素子Q1、Q2の導通すなわち負荷電流がほぼ飽和したら、第2の位相制御回路PC2のサイリスタT1、T2に対して短時間トリガー信号を供給してサイリスタT1、T2をオンさせると、第1の位相制御回路PC1に代わって第2の位相制御回路PC2が位相制御を行う。
【0057】
負荷ILは、白熱電球からなる。
【0058】
次に、図2を参照して、本実施の形態における調光装置の回路動作について説明する。なお、図2において、(a)は交流電源電圧波形、(b)は自己消弧制御素子の駆動信号電流波形、(c)は短時間トリガー信号電流波形、(d)は位相制御出力電圧波形、をそれぞれ概念的に示している。
【0059】
すなわち、図2(a)に示す正弦波の交流電圧半波の所望位相で自己消弧形制御素子Q1の制御端子回路に図2(b)に示す正極性の駆動信号電流のうち最初の前縁が傾斜している第1の信号部分Aを流すと、自己消弧形制御素子Q1が第1の信号部分Aの傾斜にしたがって傾斜動作を開始して、負荷電流が交流電源ACの図1において上側の極、交流電源ラインl1、自己消弧形制御素子Q1、ダイオードD2、負荷IL、交流電源ラインl2および交流電源ACの図1において下側の極の経路を負荷電流が順次増加しながら流れ、位相制御の立上り時の傾斜動作が行われる。
【0060】
負荷電流がほぼ飽和すると、制御手段CCは、次に第1の信号部分Aを停止すると同時に図2(c)に示す短時間トリガー信号電流をサイリスタT1のゲート回路に流す。これにより、今度はサイリスタT1がオンするので、図2(d)に示す位相制御出力電圧が負荷ILに印加され、これに伴って負荷電流が第1の位相制御回路PC1から第2の位相制御回路PC2のサイリスタT1へ代わるが、それ以外は上記の経路を流れる。
【0061】
短時間トリガー信号電流が終了すると、サイリスタT1は、オン状態を維持する。そして、制御手段CCは、第1の位相制御回路PC1の自己消弧形制御素子Q1の駆動信号電流を、図2(b)の第2の部分Bに示すように、再び流すので、自己消弧形制御素子Q1は、再度オンする。しかし、自己消弧形制御素子Q1に並列接続するサイリスタT1の電圧降下の方が小さいので、負荷電流は自己消弧形制御素子Q1に流れない。
【0062】
したがって、軽負荷時に短時間トリガー信号電流によってサイリスタT1がオンしないときがあっても、サイリスタT1に代わって自己消弧形制御素子Q1が負荷電流を流す。
【0063】
そうして、交流電圧が極性反転して反対極性の半波が交流電源ラインl1、l2間に印加されると、今度は第1の位相制御回路PC1の自己消弧形制御素子Q2およびダイオードD1がオンし、第2の位相制御回路PC2のサイリスタT2がオンするが、図2の右半分に示されているように、上記と同様に動作する。その結果、交流電圧それぞれの極性の半波ごとに位相制御が行われる。
【0064】
図3は、本発明の電力制御装置に係る調光装置の第2の実施形態を示す各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図である。なお、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本実施の形態は、請求項1の発明に対応する。
【0065】
すなわち、本実施の形態は、第1の位相制御回路PC1の自己消弧形制御素子Q1に対する駆動信号電流の図2における第1の部分Aと第2の部分Bが連続している点で異なる。なお、回路動作は、第1の実施の形態におけるのと基本的に同様である。
【0066】
図4および図5は、本発明の電力制御装置としての調光装置における第3の実施の形態を示し、図1は回路ブロック図、図2は各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図である。なお、各図において、図1および図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本実施の形態は、請求項2の発明に対応する。
【0067】
すなわち、本実施の形態においては、検出手段として負荷電流検出手段CDを具備しており、その検出データは、制御手段CCに制御入力する。負荷電流検出手段CDは、電流変成器からなり、第1および第2の位相制御回路PC1、PC2と負荷ILとの間において交流電源ラインl1に磁気結合している。そして、負荷電流を検出して、後述する制御手段CCに制御入力する。
【0068】
そうして、負荷電流が所定値以下であると、図6に示すフローチャートのように、制御手段CCは、第2の位相制御回路PC2のサイリスタT1、T2に対するトリガー信号電流の供給を停止する。そのため、第1の位相制御回路PC1の自己消弧形制御素子Q1、Q2が代わって位相制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の電力制御装置に係る調光装置の第1の実施形態を示す回路ブロック図
【図2】同じく各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図
【図3】本発明の電力制御装置に係る調光装置の第2の実施形態を示す各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図
【図4】本発明の電力制御装置に係る調光装置の第3の実施形態を示す回路ブロック図
【図5】同じく各部の動作タイミングを説明する電圧・電流波形図
【図6】同じく位相制御回路の動作フローを示すチャート図
【符号の説明】
【0070】
AS…交流電源、CC…制御手段、DM…調光装置、IL…負荷、l1、l2…交流電源ライン、PC1…第1の位相制御回路、PC2…第2の位相制御回路、Q1、Q2…自己消弧形制御素子、T1、T2…サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と;
交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御するサイリスタを備えた第2の位相制御回路と;
交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対して点弧所要時間だけ連続し、かつ、交流電圧半波の終了以前に少なくともリセット時間を確保して終了する短時間トリガー信号を供給するとともに、自己消弧形制御素子をオンさせるように構成された制御手段と;
を具備していることを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御する自己消弧形制御素子を備えた第1の位相制御回路と;
交流電源ラインに挿入されて交流電圧を位相制御するサイリスタを備えた第2の位相制御回路と;
位相制御された出力に対応した信号を直接的又は間接的に検出する検出手段と;
交流電圧半波の所望位相で第1の位相制御回路の自己消弧形制御素子を傾斜制御により動作させ、次にその導通がほぼ飽和状態になったときに、第2の位相制御回路のサイリスタに対してトリガー信号を供給するとともに、検出手段により検出された信号が所定値以下のときには、第1の位相制御回路のみにより位相制御を行わせるように構成された制御手段と;
を具備していることを特徴とする電力制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−25475(P2006−25475A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198998(P2004−198998)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】