説明

電力変換システム、電力変換システムの設計方法及びプログラム

【課題】複数の電力変換装置を直列に組み合わせて構成した電力変換システムにおいて、各電力変換装置への入力電圧をバランスさせるための専用の電圧バランス回路が不要とする。
【解決手段】直流電力変換システム10は、複数の電力変換ユニット100を含み、複数の電力変換ユニット100はそれぞれ、直流電力が入力される入力端子と、前記入力された直流電力を、所定の直流電力に変換する変換回路と、前記変換回路により変換された前記所定の直流電力を出力する出力端子と、をそれぞれ備える複数の電力変換装置を含み、記電力変換ユニットごとに含まれる前記複数の電力変換装置の入力端子をそれぞれ直列接続すると共に、当該複数の電力変換装置の出力端子をそれぞれ並列接続し、前記複数の電力変換ユニット100の入力端子をそれぞれ並列接続すると共に、前記複数の電力変換ユニット100の出力端子をそれぞれ直列接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換システム、電力変換システムの設計方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の高密度化が進んでおり、特に100V以下ではこうした高密度化された電力変換装置が多数開発されている。そして、高電圧(例えば数百V以上)の電力変換装置を構成する場合には、こうした100V以下の電力変換装置を複数直列に組み合わせて構成することが提案されている。
【0003】
図11には、48V/48V(入力電圧/出力電圧)の絶縁型DC/DC変換装置200を8台直列に組み合わせて構成した従来例に係る384V/384Vの直流電力変換システムの一例を示した。図11に示される8台の絶縁型DC/DC変換装置200はそれぞれ入力電圧(48V)を出力電圧(48V)に変換(制御)して出力する機能を有しており、各絶縁型DC/DC変換装置200の入力端子を直列接続すると共に、その出力端子も直列接続して直流電力変換システムを構成している。
【0004】
図11の直流電力変換システムにおいて、実際には直列接続した各絶縁型DC/DC変換装置の入力電圧が均一化しない(バランスしない)ことにより、一部の絶縁型DC/DC変換装置200に過電圧が生じ故障する可能性があった。そこで、図12に示すように、直流電力変換システムに各絶縁型DC/DC変換装置200の入力電圧をバランスさせるための電圧バランス回路202を設けることが考えられている。なお、こうした電圧バランス回路202を設ける構成は下記の特許文献1にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−193614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電圧バランス回路は電力変換システムの出力には寄与しないため、電圧バランス回路を設けるとエネルギー的、空間的な損失が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであって、その目的の1つは、複数の電力変換装置を直列に組み合わせて構成した電力変換システムにおいて、各電力変換装置への入力電圧をバランスさせるための専用の電圧バランス回路を不要とした電力変換システムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的の1つは、効率が高い電力変換システムを設計することができる電力変換システムの設計方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換システムは、第1乃至第N次(Nは2以上の整数)の電力変換ユニットを含む電力変換システムであって、前記第1次の電力変換ユニットは、直流電力が入力される入力端子と、前記入力された直流電力を、所定の直流電力に変換する変換回路と、前記変換回路により変換された前記所定の直流電力を出力する出力端子と、を含み、前記第i(iは2以上N以下の任意の整数)次の電力変換ユニットはそれぞれ、複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットを含み、前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続した場合には前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各出力端子を直列接続し、前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続した場合には前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各出力端子を並列接続し、前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続した場合には前記第i次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続し、前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続した場合には前記第i次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電力変換システムは、複数の電力変換ユニットを含む電力変換システムであって、前記複数の電力変換ユニットはそれぞれ、直流電力が入力される入力端子と、前記入力された直流電力を、所定の直流電力に変換する変換回路と、前記変換回路により変換された前記所定の直流電力を出力する出力端子と、をそれぞれ備える複数の電力変換装置を含み、前記電力変換ユニットごとに含まれる前記複数の電力変換装置の入力端子をそれぞれ直列接続すると共に、当該複数の電力変換装置の出力端子をそれぞれ並列接続し、前記複数の電力変換ユニットの入力端子をそれぞれ並列接続すると共に、前記複数の電力変換ユニットの出力端子をそれぞれ直列接続したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記電力変換装置は、絶縁型電力変換装置であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電力変換システムの設計方法は、設計対象の電力変換システムの入力電圧と出力電圧を設定するステップと、前記入力電圧の因数により当該入力電圧を除した入力電圧の分割値と、前記出力電圧の因数により当該出力電圧を除した出力電圧の分割値とを算出する算出ステップと、前記入力電圧の分割値と、前記出力電圧の分割値との組み合わせに基づいて特定した電力変換装置の電力密度を、当該特定した電力変換装置について予め定められた特性データに基づいて演算する演算ステップと、前記入力電圧の因数と前記出力電圧の因数とを順次変化させて前記算出ステップと前記演算ステップとを繰り返し実行した後に、前記演算ステップにより演算された電力密度が最大となる入力電圧の分割値と出力電圧の分割値との組み合わせに対応した電力変換装置を決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプログラムは、設計対象の電力変換システムの入力電圧と出力電圧を設定するステップと、前記入力電圧の因数により当該入力電圧を除した入力電圧の分割値と、前記出力電圧の因数により当該出力電圧を除した出力電圧の分割値とを算出する算出ステップと、前記入力電圧の分割値と、前記出力電圧の分割値との組み合わせに基づいて特定した電力変換装置の電力密度を、当該特定した電力変換装置について予め定められた特性データに基づいて演算する演算ステップと、前記入力電圧の因数と前記出力電圧の因数とを順次変化させて前記算出ステップと前記演算ステップとを繰り返し実行した後に、前記演算ステップにより演算された電力密度が最大となる入力電圧の分割値と出力電圧の分割値との組み合わせに対応した電力変換装置を決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、複数の電力変換装置を直列に組み合わせて構成した電力変換システムにおいて、各電力変換装置への入力電圧をバランスさせるための専用の電圧バランス回路が不要となる。こうすることで、専用の電力バランス回路を設けた場合に比べて、効率の向上、小型化、部品点数の削減を実現できる。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、電力変換システムに要求される入力電圧と出力電圧とを複数個の組み合わせにより構成可能な電力変換装置のうち電力密度または変換効率が高い電力変換装置を選択することにより、高電力密度または高変換効率の電力変換システムを設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る直流電力変換システムを備えた高電圧直流給電システムの構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る直流電力変換システムの構成図である。
【図3】絶縁型DC/DC変換ユニットの構成図である。
【図4】384V(入力/96V(出力)の直流電力変換システムの一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る直流電力変換システムの構成図である。
【図6】絶縁型DC/DC変換ユニットの構成図である。
【図7】第3の実施形態に係る直流電力変換システムの構成図である。
【図8】コンピュータのハードウェア構成図である。
【図9】電力変換装置データの一例を示す図である。
【図10】直流電力変換システムの構成を決定する処理のフローチャートである。
【図11】従来例に係る電力変換システムの一例を示す図である。
【図12】従来例に係る電圧バランス回路を設けた電力変換システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、第1の実施形態に係る直流電力変換システム10を備えた高電圧直流給電システム1の構成図を示した。図1に示されるように、高電圧直流給電システム1は、1又は複数の電源ユニット20が並列に接続されて構成される。
【0019】
電源ユニット20は、AC/DC変換器30、コンデンサ40、及びDC/DC変換器として機能する本実施形態に係る直流電力変換システム10を含む。AC/DC変換器30は、交流電源4から入力される交流電力(例えば200V)を所定電圧(例えば384V)の直流電力に変換して直流電力変換システム10に出力する。直流電力変換システム10は、AC/DC変換器30から入力された直流電力を所定電圧(例えば384V)に変換(制御)して出力する。そして、電源ユニット20から出力された直流電力は、配電盤6を介して複数の負荷8に供給される。図1には、配電盤6を1つ、負荷8を複数示したが、配電盤6や負荷8の数は図1に示されている態様に限定されるものではない。以下、直流電力変換システム10の詳細について説明する。
【0020】
図2には、本実施形態に係る直流電力変換システム10の構成図を示した。図2に示されるように、直流電力変換システム10は、複数(n台)の絶縁型DC/DC変換ユニット100を含み構成されている。
【0021】
絶縁型DC/DC変換ユニット100は、第1の電圧(V1:AC/DC変換器30からの入力電圧であり、例えば384V)の直流電力を第2の電圧(V2:例えば48V)の直流電力に変換して出力する機能を有する。そして、本実施形態に係る直流電力変換システム10では、各絶縁型DC/DC変換ユニット100の入力端子を並列接続すると共に、各絶縁型DC/DC変換ユニット100の出力端子を直列接続している。ここで直流電力変換システム10に要求される出力電圧を384V(Vout)とすると、絶縁型DC/DC変換ユニット100の接続台数は8台(n=Vout/V2)となる。
【0022】
次に、絶縁型DC/DC変換ユニット100の詳細について説明する。
【0023】
図3には、絶縁型DC/DC変換ユニット100の構成図を示した。図3に示されるように、絶縁型DC/DC変換ユニット100は、複数(m台)の絶縁型DC/DC変換装置200から構成されている。
【0024】
絶縁型DC/DC変換装置200は、直流電力の入力を受け付ける入力端子、所定の入力電圧(V3:例えば48V)の直流電力を所定の出力電圧(V2:絶縁型DC/DC変換ユニット100の出力電圧に等しく、例えば48V)の直流電力に変換する変換回路、及び変換回路により変換された直流電力を出力する出力端子を有する。そして、本実施形態に係る絶縁型DC/DC変換ユニット100では、各絶縁型DC/DC変換装置200の入力端子を直列接続すると共に、各絶縁型DC/DC変換装置200の出力端子を並列接続している。ここで絶縁型DC/DC変換ユニット100の入力電圧を384V(Vin)とすると、絶縁型DC/DC変換装置200の接続台数は8台(m=Vin/V3)となる。
【0025】
以上の構成に係る絶縁型DC/DC変換ユニット100においては、各絶縁形DC/DC変換装置200の入力電圧V3は、それぞれの絶縁形DC/DC変換装置200の有する出力インピーダンスに比例して電圧V1を分圧する。ある特定の絶縁形DC/DC変換装置200の出力電流が増加すると、それに対応する絶縁形DC/DC変換装置200の入力電圧V3が減少し、その影響により他の絶縁形DC/DC変換装置200の入力電圧V3が上昇し出力電流が増加する、という動作を繰り返すため、入力電圧V3は自動的にバランスすることとなる。また、過負荷が生じる状況においては上記の動作に絶縁形DC/DC変換装置200の有する垂下特性が加わるが、垂下特性も出力電流が増加するに従い入力電圧V3を減少させる動作であることから、絶縁形DC/DC変換装置200のそれぞれの入力電圧V3は同様に自動的にバランスすることとなる。
【0026】
以上の動作により、絶縁型DC/DC変換ユニット100には電圧バランス回路を別途設ける必要がない。そして、絶縁型DC/DC変換ユニット100の入力電圧は共通であり電圧バランス回路は不要であるから、直流電力変換システム10には電圧バランス回路を設ける必要がない。このように、本発明によれば、電力バランス回路を設けることなく、絶縁型DC/DC変換装置200の単体出力の総和(例えば絶縁型DC/DC変換装置200の単体出力を300Wとしたときに、64台の総和である約20kW)を出力する直流電力変換システム10を実現できる。
【0027】
なお、第1の実施形態においては、絶縁形DC/DC変換装置200が第1次の電力変換ユニット、絶縁型DC/DC変換ユニット100が第1次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続、出力端子を並列接続して構成された第2次の電力変換ユニット、直流電力変換システム10が第2次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続、出力端子を直列接続して構成された第3次の電力変換ユニットとなる。
【0028】
以上の直流電力変換システム10によれば、電力バランス回路を設けた場合の電力損失がないため、電力バランス回路を設けた場合に比べて効率を向上できる。
【0029】
以上の直流電力変換システム10によれば、電力バランス回路を設けるスペースがないため、電力バランス回路を設けた場合に比べて小型化が可能である。
【0030】
以上の直流電力変換システム10によれば、電力バランス回路を設ける必要がないため、電力バランス回路を設けた場合に比べて部品点数を削減することができ、よりコストを抑えることができる。
【0031】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、絶縁型DC/DC変換装置200、絶縁型DC/DC変換ユニット100、AC/DC変換器30における入力電圧や出力電圧の組み合わせは任意であり、上記の実施形態に限定されない。具体例として、図4には、48V(入力)/48V(出力)の絶縁型DC/DC変換装置200で構成した、384V(入力)/96V(出力)の直流電力変換システム15の一例を示した。
【0032】
また、本実施形態では、48V/48Vの絶縁型DC/DC変換装置200を用いた例を説明したが、電圧レベルや変圧比は任意であり、最大効率(または密度)を有する絶縁型DC/DC変換装置200を複数組み合わせることで、任意の効率(又は密度)の電力変換システムを構成することができる。
【0033】
次に、他の実施形態について説明する。図5には、第2の実施形態に係る直流電力変換システム11の構成図を示した。図5に示されるように、直流電力変換システム11は、複数(n台)の絶縁型DC/DC変換ユニット101を含み構成されている。なお、直流電力変換システム11も直流電力変換システム10と入力電圧及び出力電圧の設定は同じであることとする。
【0034】
絶縁型DC/DC変換ユニット101は、第1の電圧(V4:AC/DC変換器30からの入力電圧をn台で分圧した電圧値であり、例えば384/8=48V)の直流電力を第2の電圧(V5:例えば384V)の直流電力に変換して出力する機能を有する。そして、本実施形態に係る直流電力変換システム10では、各絶縁型DC/DC変換ユニット101の入力端子を直列接続すると共に、各絶縁型DC/DC変換ユニット101の出力端子を並列接続している。
【0035】
図6には、絶縁型DC/DC変換ユニット101の構成図を示した。図6に示されるように、絶縁型DC/DC変換ユニット101は、複数(m台)の絶縁型DC/DC変換装置200から構成されている。
【0036】
絶縁型DC/DC変換装置200は、直流電力の入力を受け付ける入力端子、所定の入力電圧(V4:例えば48V)の直流電力を所定の出力電圧(V6:例えば48V)の直流電力に変換する変換回路、及び変換回路により変換された直流電力を出力する出力端子を有する。そして、本実施形態に係る絶縁型DC/DC変換ユニット101では、各絶縁型DC/DC変換装置200の入力端子を並列接続すると共に、各絶縁型DC/DC変換装置200の出力端子を直列接続している。ここで絶縁型DC/DC変換ユニット101の出力電圧を384V(Vout)とすると、絶縁型DC/DC変換装置200の接続台数は8台(m=Vout/V6)となる。
【0037】
なお、第2の実施形態においては、絶縁形DC/DC変換装置200が第1次の電力変換ユニット、絶縁型DC/DC変換ユニット101が第1次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続、出力端子を直列接続して構成された第2次の電力変換ユニット、直流電力変換システム10が第2次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続、出力端子を並列接続して構成された第3次の電力変換ユニットとなっている。
【0038】
次に、図7には、第3の実施形態に係る直流電力変換システム12の構成図を示した。図7に示される直流電力変換システム12は、第1〜6次の電力変換ユニットから構成されており、第1次の電力変換ユニット250A(基本素子)に入力電圧が48V、出力電圧が12Vの絶縁形DC/DC変換装置を用いた場合の一構成例である。なお、直流電力変換システム12も直流電力変換システム10と入力電圧及び出力電圧の設定は同じであることとする。
【0039】
図7(A)には、第2次の電力変換ユニット250Bの構成例を示した。図7(A)に示されるように、第2次の電力変換ユニット250Bは、第1次の電力変換ユニット250Aを4つ含み、第1次の電力変換ユニット250Aの入力端子を並列接続し、出力端子を直列接続して構成される。第2次の電力変換ユニット250Bの入力電圧は48V、出力電圧は48Vとなる。
【0040】
図7(B)には、第3次の電力変換ユニット250Cの構成例を示した。図7(B)に示されるように、第3次の電力変換ユニット250Cは、第2次の電力変換ユニット250Bを4つ含み、第2次の電力変換ユニット250Bの入力端子を直列接続し、出力端子を並列接続して構成される。第3次の電力変換ユニット250Cの入力電圧は192V、出力電圧は48Vとなる。
【0041】
図7(C)には、第4次の電力変換ユニット250Dの構成例を示した。図7(C)に示されるように、第4次の電力変換ユニット250Dは、第3次の電力変換ユニット250Cを4つ含み、第4次の電力変換ユニット250Dの入力端子を並列接続し、出力端子を直列接続して構成される。第4次の電力変換ユニット250Dの入力電圧は192V、出力電圧は192Vとなる。
【0042】
図7(D)には、第5次の電力変換ユニット250Eの構成例を示した。図7(D)に示されるように、第5次の電力変換ユニット250Eは、第4次の電力変換ユニット250Dを2つ含み、第4次の電力変換ユニット250Dの入力端子を直列接続し、出力端子を並列接続して構成される。第5次の電力変換ユニット250Eの入力電圧は384V、出力電圧は192Vとなる。
【0043】
図7(E)には、第6次の電力変換ユニット250F(直流電力変換システム12)の構成例を示した。図7(E)に示されるように、第6次の電力変換ユニット250Fは、第5次の電力変換ユニット250Eを2つ含み、第5次の電力変換ユニット250Eの入力端子を並列接続し、出力端子を直列接続して構成される。第6次の電力変換ユニット250Fの入力電圧は384V、出力電圧は384Vとなる。
【0044】
本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば、入力電圧Vin、出力電圧Voutの電力変換ユニットを、入力電圧Va、出力電圧Vbの絶縁形DC/DC変換装置(第1次の電力変換ユニット)を用いて構成する場合に、Vin/Va=A、Vout/Vb=Bを算出し、A=α1α2・・・αn(α1〜αnはAを因数分解したもの)、B=β1β2・・・βm(β1〜βmはBを因数分解したものであり、nとmの差は1以下である)を求め、第2次以降の電力変換ユニットを例えば以下のように構成することとしてよい。
【0045】
まず、n≧mである場合には、第2次の電力変換ユニットは、第1次の電力変換ユニットをα1(Aの1番目の因数)個含み、第1次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続、出力端子を並列接続して構成することとしてよい。そして、第3次の電力変換ユニットは、第2次の電力変換ユニットをβ1(Bの1番目の因数)個含み、第2次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続、出力端子を直列接続して構成することとしてよい。さらに、第4次の電力変換ユニットは、第3次の電力変換ユニットをα2(Aの2番目の因数)個含み、第3次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続、出力端子を並列接続して構成することとしてよい。以上の規則で、第2i(i=1〜n)次の電力ユニットを第2i−1次の電力ユニットをαi個用いて、その入力端子を直列接続するとともに出力端子を並列接続して構成し、第2j+1(j=1〜m)次の電力ユニットを第2j次の電力ユニットをβj個用いて、その入力端子を並列接続するとともに出力端子を直列接続して構成することにより、高効率の小型の絶縁形DC/DC変換装置を用いて所望の入力電圧及び出力電圧の大型の電力変換システムを実現することができる。
【0046】
また、m≧nである場合には、第2次の電力変換ユニットは、第1次の電力変換ユニットをβ1(Bの1番目の因数)個含み、第1次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続、出力端子を直列接続して構成することとしてよい。そして、第3次の電力変換ユニットは、第2次の電力変換ユニットをα1(Aの1番目の因数)個含み、第2次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続、出力端子を並列接続して構成することとしてよい。さらに、第4次の電力変換ユニットは、第3次の電力変換ユニットをβ2(Bの2番目の因数)個含み、第3次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続、出力端子を直列接続して構成することとしてよい。以上の規則で、第2j(j=1〜m)次の電力ユニットを第2j−1次の電力ユニットをβj個用いて、その入力端子を並列接続するとともに出力端子を直列接続して構成し、第2i+1(i=1〜n)次の電力ユニットを第2i次の電力ユニットをαi個用いて、その入力端子を直列接続するとともに出力端子を並列接続して構成することにより、高効率の小型の絶縁形DC/DC変換装置を用いて所望の入力電圧及び出力電圧の大型の電力変換システムを実現することができる。なお、n=mである場合には、上述した規則のうちいずれを用いてもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係る直流電力変換システムを設計する方法及び当該方法を実装したプログラムを実行するコンピュータについて説明する。
【0048】
図8には、プログラムを実行するコンピュータ300のハードウェア構成図を示した。図8に示されるように、コンピュータ300は、制御部302、記憶部304、表示制御部306、入力受付部308を備え、各部はバス310を介して相互にデータ通信可能に接続される。
【0049】
制御部302は、CPU(Central Processing Unit)を含み、記憶部304に記憶されたプログラムに基づいて、各種の演算処理を実行するとともにコンピュータ300の各部を制御する。
【0050】
記憶部304は、コンピュータ300のオペレーティングシステム等の制御プログラムや本実施形態に係る設計アプリケーションプログラムやデータを記憶するほか、制御部302のワークメモリとしても用いられる。プログラムは、光ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の情報記憶媒体に格納された状態でコンピュータ300に供給されてもよいし、インターネット等のデータ通信手段を介してコンピュータ300に供給されてもよい。
【0051】
表示制御部306は、コンピュータ300に内蔵、又は外部接続された液晶ディスプレイ等の表示手段と接続し、表示手段にコンピュータ300における情報処理の結果(画面)を表示させる。
【0052】
入力受付部308は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段と接続し、入力手段からユーザの情報入力を受け付ける。
【0053】
図9には、記憶部304に記憶される電力変換装置のデータ(電力変換装置データ)の一例を示した。図9に示される電力変換装置データには、電力変換装置の識別情報(デバイスID)、入力電圧、出力電圧、定格出力電力、変換効率、デバイス体積、ヒートシンク体積の情報がそれぞれ関連付けて記憶される。なお、ヒートシンク体積は、定格出力と変換効率から計算される発熱量に基づいて演算した値を用いることとしてよい。
【0054】
図10には、コンピュータ300により行われる、直流電力変換システムの構成を決定する処理のフローチャートを示した。
【0055】
図10に示されるように、コンピュータ300は、ユーザから受け付けたデータに基づいて、設計対象の直流電力変換システムの入力電圧Vin及び出力電圧Voutを設定する(S1001)。
【0056】
まず、コンピュータ300は、記憶部304に記憶される電力変換装置データを参照して、入力電圧Vin及び出力電圧Voutを満足する電力変換装置の電力密度を算出する(S1002)。ここで、電力密度は、定格出力電力/(デバイス体積+ヒートシンク体積)により算出することとしてよい。
【0057】
次に、コンピュータ300は、入力電圧Vinの因数(X1〜Xn)を求める(S1003)。ここで、X1<X2<・・・<Xnとし、X1〜XnはVin/Xnが閾値(例えば電力変換装置の最小の入力電圧)以上であるという条件を満たすように決定することとしてよい。
【0058】
さらにコンピュータ300は、出力電圧の因数(Y1〜Ym)を求める(S1004)。ここで、Y1<Y2<・・・<Ymとし、Y1〜YmはVin/Ymが閾値(例えば電力変換装置の最小の出力電圧)以上であるという条件を満たすように決定することとしてよい。
【0059】
コンピュータ300は、iに初期値として1を設定し(S1005)、jに初期値として1を設定し(S1006)、記憶部304に記憶される電力変換装置データを参照して、Vin/Xiを入力電圧、Vout/Yjを出力電圧とした電力変換装置の電力密度を算出する(S1007)。jがmに達していない場合には(S1008:N)、jをインクリメントして(S1009)、S1007に戻り、jがmに達した場合には(S1008:Y)、iがnに達したか否かを判定する(S1010)。ここで、iがnに達していない場合には(S1010:N)、iをインクリメントして(S1011)、S1007に戻り、iがnに達した場合には(S1010:Y)、S1002及びS1007で算出された電力密度のうち最大の電力密度を抽出する(S1012)。
【0060】
コンピュータ300は、S1012で抽出された電力密度に対応する電力変換装置を特定し(S1013)、当該特定された電力変換装置を第1次の電力変換ユニットとして直流電力変換システムの構成を決定し(S1014)、処理を終了する。
【0061】
なお、S1013における構成の決定処理では、S1011で抽出された最大の電力密度に対応する因数X及び因数Yに基づき、例えば、X個の第1次の電力変換ユニットの入力端子を直列接続するとともに出力端子を並列接続して第2次の電力変換ユニットを構成し、Y個の第2次の電力変換ユニットの入力端子を並列接続するとともに出力端子を直列接続して、直流電力変換システムを構成することとしてよい。
【0062】
以上説明した直流電力変換システムの設計方法によれば、ユーザの所望する入力電圧及び出力電圧の直流電力変換システムを、限られた種類の電力変換装置の組み合わせにより実現することができる。このように直流電力変換システムを電力変換装置の組み合わせにより設計することで、直流電力変換システムを要求される仕様に合わせて個別に設計する場合に比べて、設計や生産に係る負荷やコストを小さくすることができる。
【0063】
また、上記の実施形態では、電力密度が最大の電力変換装置を用いて電力変換ユニットを構成する例を示したが、変換効率が最大の電力変換装置を用いて電力変換ユニットを構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 高電圧直流給電システム、4 交流電源、6 配電盤、8 負荷、10,11,12,15 直流電力変換システム、20 電源ユニット、30 AC/DC変換器、40 コンデンサ、100,101 絶縁型DC/DC変換ユニット、200 絶縁型DC/DC変換装置、202 電圧バランス回路、250A 第1次の電力変換ユニット、250B 第2次の電力変換ユニット、250C 第3次の電力変換ユニット、250D 第4次の電力変換ユニット、250E 第5次の電力変換ユニット、250F 第6次の電力変換ユニット、300 コンピュータ、302 制御部、304 記憶部、306 表示制御部、308 入力受付部、310 バス。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第N次(Nは2以上の整数)の電力変換ユニットを含む電力変換システムであって、
前記第1次の電力変換ユニットは、
直流電力が入力される入力端子と、
前記入力された直流電力を、所定の直流電力に変換する変換回路と、
前記変換回路により変換された前記所定の直流電力を出力する出力端子と、を含み、
前記第i(iは2以上N以下の任意の整数)次の電力変換ユニットはそれぞれ、
複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットを含み、
前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続した場合には前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各出力端子を直列接続し、前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続した場合には前記複数の前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各出力端子を並列接続し、
前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続した場合には前記第i次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続し、前記第(i−1)次の電力変換ユニットの各入力端子を直列接続した場合には前記第i次の電力変換ユニットの各入力端子を並列接続した
ことを特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
複数の電力変換ユニットを含む電力変換システムであって、
前記複数の電力変換ユニットはそれぞれ、
直流電力が入力される入力端子と、
前記入力された直流電力を、所定の直流電力に変換する変換回路と、
前記変換回路により変換された前記所定の直流電力を出力する出力端子と、をそれぞれ備える複数の電力変換装置を含み、
前記電力変換ユニットごとに含まれる前記複数の電力変換装置の入力端子をそれぞれ直列接続すると共に、当該複数の電力変換装置の出力端子をそれぞれ並列接続し、
前記複数の電力変換ユニットの入力端子をそれぞれ並列接続すると共に、前記複数の電力変換ユニットの出力端子をそれぞれ直列接続した
ことを特徴とする電力変換システム。
【請求項3】
前記電力変換装置は、絶縁型電力変換装置である
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
設計対象の電力変換システムの入力電圧と出力電圧を設定するステップと、
前記入力電圧の因数により当該入力電圧を除した入力電圧の分割値と、前記出力電圧の因数により当該出力電圧を除した出力電圧の分割値とを算出する算出ステップと、
前記入力電圧の分割値と、前記出力電圧の分割値との組み合わせに基づいて特定した電力変換装置の電力密度を、当該特定した電力変換装置について予め定められた特性データに基づいて演算する演算ステップと、
前記入力電圧の因数と前記出力電圧の因数とを順次変化させて前記算出ステップと前記演算ステップとを繰り返し実行した後に、前記演算ステップにより演算された電力密度又は変換効率が最大となる入力電圧の分割値と出力電圧の分割値との組み合わせに対応した電力変換装置を決定する決定ステップと、を含む
ことを特徴とする電力変換システムの設計方法。
【請求項5】
設計対象の電力変換システムの入力電圧と出力電圧を設定するステップと、
前記入力電圧の因数により当該入力電圧を除した入力電圧の分割値と、前記出力電圧の因数により当該出力電圧を除した出力電圧の分割値とを算出する算出ステップと、
前記入力電圧の分割値と、前記出力電圧の分割値との組み合わせに基づいて特定した電力変換装置の電力密度を、当該特定した電力変換装置について予め定められた特性データに基づいて演算する演算ステップと、
前記入力電圧の因数と前記出力電圧の因数とを順次変化させて前記算出ステップと前記演算ステップとを繰り返し実行した後に、前記演算ステップにより演算された電力密度又は変換効率が最大となる入力電圧の分割値と出力電圧の分割値との組み合わせに対応した電力変換装置を決定する決定ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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