説明

電力変換器の制御装置および制御方法

【課題】複数のスイッチング素子を含む電力変換器において、動作モードに応じてスイッチング速度を制御することによって、サージ電圧抑制およびスイッチング損失低減の両立を図る。
【解決手段】電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4を独立にオンオフ制御して、直流電源10,20および負荷30の間で電力変換を実行する第1の動作モードと、スイッチング素子S1〜S4のうちの2個ずつを共通にオンオフ制御して、直流電源10または20と負荷30の間で電力変換を実行する第2の動作モードとを有する。スイッチング素子S1〜S4の各々のターンオンおよびターンオフ時におけるスイッチング速度は、動作モードに応じて制御される。具体的には、第2の動作モードにおけるスイッチング速度は、第1の動作モードにおけるスイッチング速度よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換器の制御装置および制御方法に関し、より特定的には、電力変換器を構成する電力用半導体スイッチング素子のスイッチング速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)のオンオフ制御によって直流電源と負荷との間で電力変換を実行する電力変換器が一般的に用いられている。このような、電力変換器には、複数の動作モードを有するものが知られている。
【0003】
特開2008−54477号公報(特許文献1)には、複数の直流電源からの複数の電圧を入力として複数の直流電圧を出力する電圧変換装置が記載されている。特許文献1に記載の電力変換装置では、エネルギ蓄積手段(コイル)の端子と、複数の入力電位および複数の出力電位との接続を切替えることによって動作モードが切替えられる。そして、動作モードには、2つの直流電源から並列に負荷へ電力を供給するモードが含まれる。
【0004】
特開2010−57288号公報(特許文献2)には、第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットを備えた電力供給装置として、当該蓄電ユニット間の直流接続と並列接続とを切替えるスイッチを設けた構成が記載されている。すなわち、特許文献2の電力供給装置は、第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットが直列に接続される動作モードと、並列に接続される動作モードとを有している。
【0005】
また、電力変換器を構成するスイッチング素子の駆動回路として、ゲート抵抗を切替えることによって、ターンオフおよびターンオン時における制御電極の電圧または電流(代表的には、ゲート電圧)の変化速度、すなわち、スイッチング速度を可変に制御する構成が、特開2002−125363号公報(特許文献3)および特開2006−222593号公報(特許文献4)等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−54477号公報
【特許文献2】特開2010−57288号公報
【特許文献3】特開2002−125363号公報
【特許文献4】特開2006−222593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の動作モードを有する電力変換器では、動作モードに応じて、スイッチング素子の制御態様が変化するケースが予想される。特に、一部の動作モードにおいて、複数のスイッチング素子の一部を共通にオンオフ制御する場合には、同時に複数個のスイッチング素子で電力損失が発生することになるため、電力変換器の効率低下が懸念される。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、複数のスイッチング素子を含むように構成された電力変換器において、動作モードに応じてスイッチング速度を制御することによって、サージ電圧抑制およびスイッチング損失低減の両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面では、複数のスイッチング素子を含む電力変換器の制御装置であって、複数のスイッチング素子の各々に対応して設けられた駆動制御回路と、制御回路とを含む。駆動制御回路は、対応するスイッチング素子の制御電極の駆動速度を制御する。制御回路は、複数のスイッチング素子の各々を独立にオンオフ制御する第1のモードと、複数のスイッチング素子のうちの少なくとも2個のスイッチング素子を共通にオンオフ制御する第2のモードとを選択する。駆動制御回路は、第2のモードにおける駆動速度を、第1のモードにおける駆動速度よりも高くする。
【0010】
好ましくは、電力変換器は、負荷と電気的に接続される電源配線上の出力電圧を制御するように、第1および第2の直流電源と電源配線との間で直流電圧変換を実行するように構成される。複数のスイッチング素子は、第1から第4のスイッチング素子を有する。第1のスイッチング素子は、第1のノードおよび電源配線の間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第1のノードおよび第2のノードの間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第2の直流電源の負極端子と電気的に接続された第3のノードと、第2のノードとの間に電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第1の直流電源の負極端子および第3のノードの間に電気的に接続される。電力変換器は、第2のノードおよび第1の直流電源の正極端子の間に電気的に接続された第1のリアクトルと、第1のノードおよび第2の直流電源の正極端子の間に電気的に接続された第2のリアクトルとをさらに含む。
【0011】
さらに好ましくは、電力変換器は、第1のモードにおいて、第1から第4のスイッチング素子の制御によって、第1および第2の直流電源が電源配線に対して並列に電気的に接続された状態で直流電圧変換を実行するように動作する。
【0012】
また、さらに好ましくは、電力変換器は、第2のモードにおいて、第1および第2のスイッチング素子のオンオフを共通に制御するとともに、第3および第4のスイッチング素子のオンオフを共通に制御することによって、第1の直流電源と電源配線との間で直流電圧変換を実行する。
【0013】
あるいは、さらに好ましくは、電力変換器は、第2のモードにおいて、第1および第4のスイッチング素子のオンオフを共通に制御するとともに、第2および第3のスイッチング素子のオンオフを共通に制御することによって、第2の直流電源と電源配線との間で直流電圧変換を実行する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、第1のモードから第2のモードへの切替の際には、複数のスイッチング素子の制御を切替えた後に、駆動制御回路における駆動速度を上昇させる。
【0015】
あるいは好ましくは、、制御装置は、第2のモードから第1のモードへの切替の際には、駆動制御回路における駆動速度を低下させた後に、複数のスイッチング素子の制御を切替える。
【0016】
この発明の他の局面では、複数のスイッチング素子を含む電力変換器の制御方法であって、電力変換器は、複数のスイッチング素子の各々を独立にオンオフ制御する第1のモードと、複数のスイッチング素子のうちの少なくとも2個のスイッチング素子を共通にオンオフ制御する第2のモードとを有する。制御方法は、第1のモードで電力変換器が動作しているときに、複数のスイッチング素子の各々に対応して設けられた駆動制御回路による対応するスイッチング素子の制御電極の駆動速度を第1の速度に制御するステップと、第2のモードで電力変換器が動作しているときに、駆動制御回路による駆動速度を、第1の速度よりも高い第2の速度に制御するステップとを含む。
【0017】
好ましくは、制御方法は、第1のモードから第2のモードへの切替を指示するステップと、第1のモードから第2のモードへの切替が指示されたときに、複数のスイッチング素子の制御を切替えるステップと、複数のスイッチング素子の制御を切替えた後に、駆動制御回路による駆動速度を第1の速度から第2の速度へ上昇させるステップとをさらに含む。
【0018】
また好ましくは、制御方法は、第2のモードから第1のモードへの切替を指示するステップと、第1のモードから第2のモードへの切替が指示されたときに、駆動制御回路による駆動速度を第2の速度から第1の速度へ低下させるステップと、駆動速度を低下させた後に、複数のスイッチング素子の制御を切替えるステップとをさらに含む。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、複数のスイッチング素子を含むように構成された電力変換器において、動作モードに応じてスイッチング速度を制御することによって、サージ電圧抑制およびスイッチング損失低減の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態による電力変換器の制御装置を含む電源システムの構成例を示す回路図である。
【図2】図1に示した負荷の構成例を示す概略図である。
【図3】図1に示された電力変換器の動作モードを説明するための図表である。
【図4】直流電源の特性の一例を示す概念図である。
【図5】パラレル接続モードにおける第1の回路動作を説明する回路図である。
【図6】パラレル接続モードにおける第2の回路動作を説明する回路図である。
【図7】パラレル接続モードにおける第1の直流電源に対するDC/DC変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図8】パラレル接続モードにおける第2の直流電源に対するDC/DC変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図9】シリーズ接続モードにおける回路動作を説明する回路図である。
【図10】シリーズ接続モードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する回路図である。
【図11】パラレル接続モードにおける負荷側からの等価回路を示すブロック図である。
【図12】第1の電源の制御動作例を説明するための波形図である。
【図13】第2の電源の制御動作例を説明するための波形図である。
【図14】電圧源として動作する電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図15】電流源として動作する電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図16】パラレル接続モードにおける各制御データの設定を説明する図表である。
【図17】シリーズ接続モードにおける負荷側からの等価回路を示すブロック図である。
【図18】シリーズ接続モードにおける制御動作例を説明するための波形図である。
【図19】シリーズ接続モードにおける電源の制御ブロックの構成例を示す図である。
【図20】シリーズ接続モードにおける各制御データの設定を説明する図表である。
【図21】比較例として示される電力変換器の回路図である。
【図22】比較例の電力変換器の単独電源モードでの動作を説明するための第1の回路図である。
【図23】比較例の電力変換器の単独電源モードでの動作を説明するための第2の回路図である。
【図24】本発明の実施の形態による電力変換装置において各スイッチング素子に対して設けられる駆動制御回路の構成例を説明する回路図である。
【図25】スイッチング素子におけるゲート抵抗とスイッチング速度との関係を説明するための動作波形図が示される。
【図26】本実施の実施の形態による電力変換器50を構成するスイッチング素子の単独電源モードにおけるターンオフ時の動作波形である。
【図27】本実施の形態による電力変換器における動作モードの遷移図である。
【図28】パラレル接続モードから単独電源モードへの切替時の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図29】単独電源モードからパラレル接続モードへの切替時の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0022】
(電力変換器の回路構成)
図1は、本発明の実施の形態による電力変換器の制御装置を含む電源システムの構成例を示す回路図である。
【0023】
図1を参照して、電源システム5は、直流電源10と、直流電源20と、負荷30と、電力変換器50とを備える。
【0024】
本実施の形態において、直流電源10および20の各々は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池、あるいは、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。直流電源10および直流電源20は、「第1の直流電源」および「第2の直流電源」にそれぞれ対応する。
【0025】
直流電源10および20は、同種および同容量の直流電源によって構成することも可能であり、特性および/または容量が異なる直流電源によって構成することも可能である。
【0026】
電力変換器50は、直流電源10および直流電源20と、負荷30との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電源配線PL上の直流電圧(以下、出力電圧Voとも称する)を電圧指令値Vo*に従って制御するように構成される。
【0027】
負荷30は、電力変換器50の出力電圧Voを受けて動作する。電圧指令値Vo*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。電圧指令値Vo*は、負荷30の状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10
,20の充電電力を発生可能に構成されてもよい。
【0028】
電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。また、スイッチング素子S1〜S4は、図示しない制御信号に応答して、オンオフを制御することが可能である。
【0029】
スイッチング素子S1は、電源配線PLおよびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源20の正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。リアクトルL1はノードN2と直流電源10の正極端子との間に接続される。
【0030】
スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。ノードN3は、直流電源20の負極端子と電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線GLの間に電気的に接続される。接地配線GLは、負荷30および、直流電源10の負極端子と電気的に接続される。
【0031】
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10および直流電源20の各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10に対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源20に対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
【0032】
そして、第1の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10および電源配線PLの間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって、直流電源20および電源配線PLの間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
【0033】
制御装置40は、負荷30への出力電圧Voを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、図1では図示を省略しているが、直流電源10の電圧(以下、V[1]と表記する)および電流(以下、I[1]と表記する)、直流電源20の電圧(以下、V[2]と表記する)および電流(I[2]と表記する)、ならびに、出力電圧Voの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源10および20の温度(以下、T[1]およびT[2]と表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。
【0034】
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
【0035】
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源10,20の充電電力として用いることができる。
【0036】
なお、モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源10,20を充電することも可能である。
【0037】
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
【0038】
(動作モードの説明)
次に、電力変換器50の動作モードについて説明する。
【0039】
図3を参照して、電力変換器50は、直流電源10および20の両方を使用する動作モードと、直流電源10または20の一方のみを使用する動作モード(以下、「単独電源モード」とも称する)とを有する。
【0040】
2電源を使用するモードは、負荷30に対して直流電源10および20が並列にDC/DC変換を実行する動作モード(以下、「パラレル接続モード」とも称する)と、負荷30に対して直流電源10および20を直列に接続してDC/DC変換を実行する動作モード(以下、「シリーズ接続モード」とも称する)とを含む。特に、電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4の制御によって、パラレル接続モードおよびシリーズ接続モードを切替えて動作することが可能である。
【0041】
単独電源モードは、直流電源10のみを使用するモードと、直流電源20のみを使用するモードとを有する。
【0042】
図4は、直流電源10および20の特性の一例を示す概念図である。図4には、横軸にエネルギ、縦軸に電力をプロットした、いわゆるラゴンプロットが示される。一般的に、直流電源の出力パワーおよび蓄積エネルギはトレードオフの関係にあるため、高容量型のバッテリでは高出力を得ることが難しく、高出力型のバッテリでは蓄積エネルギを高めることが難しい。
【0043】
したがって、直流電源10,20は、一方が、蓄積エネルギが高い、いわゆる高容量型の電源で構成されるのに対して、他方が、出力パワーが高い、いわゆる高出力型の電源で構成されることが好ましい。このようにすると、高容量型の電源に蓄積されたエネルギを平準的に長期間使用する一方で、高出力型の電源をバッファとして使用して、高容量型の電源による不足分を出力することができる。
【0044】
図4の例では、直流電源10が高容量型の電源で構成される一方で、直流電源20は高出力型の電源で構成される。したがって、直流電源10の動作領域110は、直流電源20の動作領域120と比較して、出力可能な電力範囲が狭い。一方で、動作領域120は、動作領域110と比較して、蓄積可能なエネルギ範囲が狭い。
【0045】
負荷30の動作点101では、高パワーが短時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点101は、ユーザのアクセル操作による急加速時に対応する。これに対して、
負荷30の動作点102では、比較的低パワーが長時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点102は、継続的な高速定常走行に対応する。
【0046】
動作点101に対しては、主に、高出力型の直流電源20からの出力によって対応することができる。一方で、動作点102に対しては、主に、高容量型の直流電源10からの出力によって対応することができる。これにより、電動車両では、高容量型のバッテリに蓄積されたエネルギを長時間に亘って使用することによって、電気エネルギによる走行距離を延ばすことができるとともに、ユーザのアクセル操作に対応した加速性能を速やかに確保することができる。
【0047】
また、直流電源がバッテリによって構成される場合には、低温時に出力特性が低下する可能性や、高温時に劣化進行を抑制するために充放電が制限される可能性がある。特に、電動車両では、搭載位置の差異によって、直流電源10,20の間に温度差が発生するケースも生じる。したがって、電源システム5では、直流電源10,20の状態(特に温度)に応じて、あるいは、上述したような負荷30の要求に応じて、いずれか一方の直流電源のみを使用した方が、効率的であるケースが存在する。単独電源モードを設けることによって、これらのケースに対応することができる。
【0048】
すなわち、本実施の形態による電源システム5では、直流電源10,20および/または負荷30の状態に応じて、図3に示した、パラレル接続モード、シリーズ接続モード、単独電源モード(直流電源10または20)のうちのいずれかの動作モードが選択される。
【0049】
次に、各動作モードにおける電力変換器50の動作について説明する。まず、電力変換器50のパラレル接続モードでの回路動作について説明する。
【0050】
(パラレル接続モードでの回路動作および制御)
図5および図6に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して並列に接続することができる。ここで、並列接続モードでは、直流電源10の電圧V[1]と直流電源20の電圧V[2]との高低に応じて等価回路が異なってくる。
【0051】
図5(a)に示されるように、V[2]>V[1]のときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図5(b)に示される。
【0052】
図5(b)を参照して、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0053】
一方、図6(a)に示されるように、V[1]>V[2]のときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10および20が並列に接続される。このときの等価回路が図6(b)に示される。
【0054】
図6(b)を参照して、直流電源20および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10および電源配線PLの間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0055】
次に、図7および図8を用いて、電力変換器50のパラレル接続モードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
【0056】
図7には、パラレル接続モードにおける直流電源10に対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
【0057】
図7(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路150が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0058】
これに対して、図7(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10のエネルギとともに出力するための電流経路151が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0059】
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図7(a)の電流経路150および図7(b)の電流経路151が交互に形成される。
【0060】
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10に対して構成される。図7に示されるDC/DC変換動作では、直流電源20への電流流通経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0061】
このようなDC/DC変換において、直流電源10の電圧V[1]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(1)式に示す関係が成立する。(1)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる期間のデューティ比をDaとする。
【0062】
Vo=1/(1−Da)・V[1] …(1)
図8には、パラレル接続モードにおける直流電源20に対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
【0063】
図8(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路160が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0064】
これに対して、図8(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源20のエネルギとともに出力するための電流経路161が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0065】
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図8(a)の電流経路160および図8(b)の電流経路161が交互に形成される。
【0066】
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源20に対して構成される。図8に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10を含む電流経路がないため、直流電源10および20は互いに非干渉である。すなわち、直流電源10および20に対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0067】
このようなDC/DC変換において、直流電源20の電圧V[2]と、電源配線PLの出力電圧Voとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる期間のデューティ比をDbとする。
【0068】
Vo=1/(1−Db)・V[2] …(2)
(単独電源モードでの動作)
図7および図8における回路動作は、単独電源モードにおける動作と共通する。直流電源10を使用する単独電源モードにおいては、図7(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源20を不使用とする一方で、直流電源10および負荷30の間で双方向の直流電圧変換を実行することができる。
【0069】
同様に、直流電源20を使用する単独電源モードにおいては、図8(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10を不使用とする一方で、直流電源20および負荷30の間で双方向の直流電圧変換を実行することができる。
【0070】
(シリーズ接続モードでの回路動作)
次に、図9および図10を用いて、電力変換器50のシリーズ接続モードでの回路動作について説明する。
【0071】
図9(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20を電源配線PLに対して直列に接続することができる。このときの等価回路が図9(b)に示される。
【0072】
図9(b)を参照して、シリーズ接続モードでは、直列接続された直流電源10および20と電源配線PLとの間では、スイッチング素子S2,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S4のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
【0073】
次に、図10を用いて、シリーズ接続モードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する。
【0074】
図10(a)を参照して、直流電源10,20を直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路170,171が形成される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0075】
これに対して、図10(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、図10(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路172が形成される。電流経路172により、直列接続された直流電源10,20からのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電源配線PLへ出力される。この結果、直列接続された直流電源10,20に対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0076】
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図10(a)の電流経路170,171および図10(b)の電流経路172が交互に形成される。
【0077】
シリーズ接続モードのDC/DC変換では、直流電源10の電圧V[1]、直流電源20の電圧V[2]、および、電源配線PLの出力電圧Voの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
【0078】
Vo=1/(1−Dc)・(V[1]+V[2]) …(3)
ただし、V[1]およびV[2]が異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、図10(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、図10(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路173を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路174を介して、差分の電流が流れる。
【0079】
次に、電力変換器50の各動作モードでの制御動作について説明する。まず、図11〜図16を用いて、パラレル接続モードにおける制御動作を説明する。
【0080】
(パラレル接続モードにおける制御動作)
図11には、パラレル接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
【0081】
図11を参照して、パラレル接続モードでは、直流電源10と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS1と、直流電源20と負荷30との間で直流電力変換を実行する電源PS2とは、負荷30に対して並列に電力を授受する。電源PS1は、図7に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。同様に、電源PS1は、図8に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。
【0082】
すなわち、電源PS1は、直流電源10の電圧V[1]および出力電圧Voの間で、式(1)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。同様に、電源PS2は、直流電源10の電圧V[2]および出力電圧Voの間で、式(2)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。
【0083】
パラレル接続モードでは、両方の電源で共通の制御(出力電圧Voの電圧制御)を同時に実行すると、負荷側で、電源PS1およびPS2が並列接続される形になるため、回路が破綻する可能性がある。したがって、電源PS1および電源PS2の一方の電源が、出力電圧Voを制御する電圧源として動作する。そして、電源PS1および電源PS2の他方の電源は、当該電源の電流を電流指令値に制御する電流源として動作する。各電源PS1,PS2での電圧変換比は、電圧源または電流源として動作するように制御される。
【0084】
電源PS1を電流源とし電源PS2を電圧源として制御した場合には、直流電源10の電力P[1]、直流電源20の電力P[2]、負荷30の電力Poおよび、電流源における電流指令値Ii*の間には、下記(4)式の関係が成立する。
【0085】
P[2]=Po−P[1]=Po−V[1]・Ii* …(4)
直流電源10の電圧V[1]の検出値に応じて、P*=V[1]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電流源を構成する直流電源10の電力P[1]を電力指令値Pi*に制御できる。
【0086】
これに対して、電源PS2を電流源とし電源PS1を電圧源として制御した場合には、下記(5)式の関係が成立する。
【0087】
P[1]=Po−P[2]=Po−V[2]・Ii* …(5)
同様に、電流源を構成する直流電源20の電力P[2]についても、P*=V[2]・Ii*が一定になるように電流指令値Ii*を設定すれば、電力指令値Pi*に制御できる。
【0088】
図12には直流電源10に対応する電源PS1の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
【0089】
図12を参照して、電源PS1でのデューティ比Da(式(1)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図14)または電流源として動作するための電流フィードバック制御(図15)によって算出される。なお、図12中では、デューティ比Daを示す電圧信号を、同一の符号Daで示している。
【0090】
電源PS1の制御パルス信号SDaは、デューティ比Daと、周期的なキャリア信号25との比較に基づくパルス幅変調(PWM)制御によって生成される。一般的に、キャリア信号25には、三角波が用いられる。キャリア信号25の周期は、各スイッチング素子のスイッチング周波数に相当し、キャリア信号25の振幅は、Da=1.0に対応する電圧に設定される。
【0091】
制御パルス信号SDaは、デューティ比Daを示す電圧が、キャリア信号25の電圧よりも高いときに論理ハイレベル(以下、Hレベル)に設定される一方で、キャリア信号25の電圧よりも低いときに論理ローレベル(以下、Lレベル)に設定される。制御パルス信号/SDaは、制御パルス信号SDaの反転信号である。デューティ比Daが高くなると、制御パルス信号SDaのHレベル期間が長くなる。反対に、デューティ比Daが低くなると、制御パルス信号SDaのLレベル期間が長くなる。
【0092】
したがって、制御パルス信号SDaは、図7に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。すなわち、制御パルス信号SDaのHレベル期間で下アーム素子がオンされる一方で、Lレベル期間で下アーム素子がオフされる。一方、制御パルス信号/SDaは、図7に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0093】
図13には直流電源20に対応する電源PS2の具体的な制御動作例を説明するための波形図が示される。
【0094】
図13を参照して、電源PS2においても、電源PS1と同様のパルス幅変調制御によって、デューティ比Db(式(2)参照)に基づいて、制御パルス信号SDbおよび、その反転信号/SDbが生成される。したがって、制御パルス信号SDbは、図8に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。制御パルス信号/SDbは、図8に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0095】
なお、デューティ比Dbは、電源PS1が電圧源として動作するときには、電源PS2が電流源として動作するための電流フィードバック制御(図15)によって算出される。反対に、デューティ比Dbは、電源PS1が電流源として動作するときには、電源PS2が電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図14)によって算出される。
【0096】
図14には、電圧源として動作する電源の制御ブロック201の構成例が示される。
図14を参照して、制御ブロック201は、電圧指令値Vo*と、出力電圧Voの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、電圧源として動作する電源PS1またはPS2の伝達関数に相当する。
【0097】
図15には、電流源として動作する電源の制御ブロック202の構成例が示される。
図15を参照して、制御ブロック202は、電流指令値Ii*と、電流制御される直流電源10または20の電流Iiとの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DiFFとの和に従って、電流制御のためのデューティ比指令値Diを生成する。伝達関数Hiは、電流源として動作する電源PS2またはPS1の伝達関数に相当する。
【0098】
図16には、パラレル接続モードにおける各制御データの設定が示される。図16の左欄には、電源PS1(直流電源10)を電流源とし電源PS2(直流電源20)を電圧源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
【0099】
図16の左欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源10の電流I[1]となる。なお、電圧制御によって制御される電圧は、電源PS1,PS2のいずれを電圧源としても出力電圧Voである。
【0100】
図14中の伝達関数Hvは、図8に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図15中の伝達関数Hiは、図7に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
【0101】
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(6)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(7)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。
【0102】
DvFF=(Vo−V[2])/Vo …(6)
DiFF=(Vo−V[1])/Vo …(7)
デューティ比Da(Da=Di)に応じて、図12に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Dv)に応じて、図13に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
【0103】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電流制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電圧制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。
【0104】
スイッチング素子S1は、図7および図8の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。すなわち、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの少なくとも一方がHレベルの期間でHレベルに設定される。そして、制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの両方がLレベルの期間でLレベルに設定される。
【0105】
この結果、スイッチング素子S1は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0106】
スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、図8の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0107】
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0108】
また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源20)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0109】
図16の右欄には、電源PS1(直流電源10)を電圧源とし電源PS2(直流電源20)を電流源として制御した場合の各制御データの設定が示される。
【0110】
図16の右欄を参照して、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、電源PS1(直流電源10)のデューティ比Daに用いられるとともに、電流制御のためのデューティ比指令値Diが、電源PS2(直流電源20)のデューティ比Dbに用いられる。電流制御によって制御される電流Iiは、直流電源20の電流I[2]となる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。
【0111】
図14中の伝達関数Hvは、図7に示した直流電源10に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、図15中の伝達関数Hiは、図8に示した直流電源20に対応する昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。
【0112】
電圧制御におけるフィードフォワード制御量DvFFは、下記(8)式に示すように、出力電圧Voと直流電源20の電圧V[1]との電圧差に応じて設定される。また、電流制御におけるフィードフォワード制御量DiFFは、下記(9)式に示すように、出力電圧Voと直流電源10の電圧V[2]との電圧差に応じて設定される。
【0113】
DvFF=(Vo−V[1])/Vo …(8)
DiFF=(Vo−V[2])/Vo …(9)
デューティ比Da(Da=Dv)に応じて、図12に示した制御パルス信号SDaおよび/SDaが生成される。同様に、デューティ比Db(Db=Di)に応じて、図13に示した制御パルス信号SDbおよび/SDbが生成される。
【0114】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、電源PS1の電圧制御のための制御パルス信号と、電源PS2の電流制御のための制御信号パルスの論理和をとる態様で設定される。したがって、スイッチング素子S1〜S4の制御信号SG1〜SG4は、図16の左欄と同様に生成される。
【0115】
パラレル接続モードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、図5に示したV[2]>V[1]のときの動作と、図6に示したV[1]>V[2]の動作とが、自然に切替えられる。さらに、各動作において、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、電源PS1,PS2のそれぞれにおいて、デューティ比Da,Dbに従った直流電圧変換が実行できる。
【0116】
パラレル接続モードでは、出力電圧Voの制御ととともに、一方の直流電源の電流制御によって、直流電源10,20の出力電力を制御することが可能である。したがって、パラレル接続モードでは、直流電源10,20の電力管理性が向上する。また、直流電源10,20を並列に用いるので、負荷30からの充放電要求への対応性にも優れる。
【0117】
(単独電源モードでの制御動作)
上述のように、直流電源10を使用する単独電源モードにおいては、図7(a),(b)に示すスイッチング動作が実行される。したがって、図14に示した制御ブロック201によって、出力電圧Voを電圧指令値に制御するように、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、直流電源10のデューティ比Daに用いられる。そして、制御信号SG1〜SG4は、直流電源10の電圧制御のための制御パルス信号SDa,/SDaに従って制御される。具体的には、上アーム素子に対応するスイッチング素子S1,S2の制御信号SG1,SG2は制御パルス信号/SDaに従って設定され、下アーム素子に対応するスイッチング素子S3,S4の制御信号SG3,SG4は制御パルス信号SDaに従って設定される。
【0118】
また、直流電源20を使用する単独電源モードにおいては、図8(a),(b)に示すスイッチング動作が実行される。したがって、図14に示した制御ブロック201によって、出力電圧Voを電圧指令値に制御するように、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、直流電源20のデューティ比Dbに用いられる。そして、制御信号SG1〜SG4は、直流電源20の電圧制御のための制御パルス信号SDb,/SDbに従って制御される。具体的には、上アーム素子に対応するスイッチング素子S1,S4の制御信号SG1,SG4は制御パルス信号/SDbに従って設定され、下アーム素子に対応するスイッチング素子S2,S3の制御信号SG2,SG3は制御パルス信号SDbに従って設定される。
【0119】
単独電源モードによって、上述したように、いずれか一方の直流電源のみを使用した方が、効率的であるケースに対応することができる。
【0120】
(シリーズ接続モードにおける制御動作)
次に、図17〜図20を用いて、シリーズ接続モードにおける制御動作を説明する。
【0121】
図17には、シリーズ接続モードにおける負荷側から見た等価回路が示される。
図17を参照して、シリーズ接続モードでは、負荷30に対して、電源PS1および電源PS2が直列に接続される。このため、電源PS1およびPS2を流れる電流は共通となる。したがって、出力電圧Voを制御するためには、電源PS1およびPS2は、共通に電圧制御されることが必要である。
【0122】
直列接続された電源PS1およびPS2は、図10に示した直流電圧変換動作を実行する昇圧チョッパ回路に相当する。すなわち、電源PS1,PS2は、直流電源10,20の電圧V[1]およびV[2]の和と、出力電圧Voとの間で、式(3)に示した電圧変換比による直流電圧変換機能を有する。
【0123】
シリーズ接続モードでは、直流電源10の電力P[1]および直流電源20の電力P[2]を直接制御することはできない。直流電源10の電力P[1]および電圧V[1]と、直流電源20の電力P[2]および電圧V[2]との間には、下記(10)式の関係が成立する。なお、電力P[1]および電力P[2]の和が、負荷30の電力Poとなる点(Po=P[1]+P[2])は、パラレル接続モードと同様である。
【0124】
P[1]:P[2]=V[1]:V[2] …(10)
図18を参照して、電源PS1,PS2に共通のデューティ比Dc(式(3)参照)は、電圧源として動作するための電圧フィードバック制御(図19)によって算出される。なお、図18中では、デューティ比Dcを示す電圧信号を、同一の符号Dcで示している。
【0125】
制御パルス信号SDcは、図12および図13と同様のパルス幅変調制御によって、デューティ比Dc(式(3)参照)に基づいて生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。制御パルス信号SDcは、図10に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。一方、制御パルス信号/SDcは、図10に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子のオンオフを制御する信号に対応する。
【0126】
図19には、シリーズ接続モードにおける制御ブロック203の構成例が示される。
図19を参照して、制御ブロック203は、出力電圧Voの電圧指令値Vo*と、出力電圧Voの偏差をPI(比例積分)演算したフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量DvFFとの和に従って、電圧制御のためのデューティ比指令値Dvを生成する。伝達関数Hvは、直列接続された電源PS1,PS2の伝達関数に相当する。
【0127】
図20には、シリーズ接続モードにおける各制御データの設定が示される。
図20を参照して、図19に示した電圧制御のためのデューティ比指令値Dvが、デューティ比Dcに用いられる。電圧制御によって制御される電圧は、出力電圧Voである。図19中の伝達関数Hvは、図10に示した昇圧チョッパ回路の伝達関数に相当する。また、フィードフォワード制御量DvFFは、下記(11)に示すように、直列接続された電源電圧V[1]+V[2]と、出力電圧Voとの電圧差に応じて設定される。
【0128】
DvFF=(Vo−(V[2]+V[1]))/Vo …(11)
デューティ比Dc(Dc=Dv)に応じて、図18に示した制御パルス信号SDcおよび/SDcが生成される。
【0129】
スイッチング素子S1〜S4のオンオフをそれぞれ制御するための制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDcおよび/SDcに従って、図10に示した昇圧チョッパ回路を制御するように設定される。
【0130】
シリーズ接続モードでは、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10および20が直列に接続される。したがって、制御信号SG3は、Hレベルに固定される。
【0131】
スイッチング素子S1は、図10の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号/SDcが制御信号SG1として用いられる。また、スイッチング素子S2,S4は、図10の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、制御パルス信号SDcが制御信号SG2,SG4として用いられる。
【0132】
シリーズ接続モードでは、V[1]+V[2]と出力電圧Voとの間での直流電圧変換が実行されるため、チョッパ回路のデューティ比が、パラレル接続モードよりも低くなる。したがって、直流電源10,20の蓄積エネルギ(SOC:State of Charge)が低下して、電圧V[1],V[2]が低下しても、直流電圧変換を実行できる。したがって、直流電源10,20の蓄積エネルギを効率的に使い切る観点から有利である。また、シリーズ接続モードにおいておよびパラレル接続モードの間では、同一電力を入出力する際の電流は、シリーズ接続モードの方が小さくなる。したがって、シリーズ接続モードは、効率面から有利である。
【0133】
(電力変換器のスイッチング速度制御)
このように、電力変換器50は、複数のスイッチング素子S1〜S4の制御によって、負荷電力への対応性および電力管理性が向上するパラレル接続モード、効率および蓄積エネルギの活用性に優れたシリーズ接続モード、ならびに、一方の直流電源のみを使用した方が効率的であるケースに対応するための単独電源モードを使い分けることができる。
【0134】
単独電源モードでは、2個ずつのスイッチング素子が共通にオンオフ制御されるため、スイッチング素子における電力損失の増大が懸念される。具体的には、直流電源10を使用する単独電源モードでは、スイッチング素子S1,S2が共通にオンオフ制御されるとともに、スイッチング素子S3,S4が共通にオンオフ制御される(図7参照)。同様に、直流電源20を使用する単独電源モードでは、スイッチング素子S1,S4を共通にオンオフ制御するとともに、スイッチング素子S2,S3が共通にオンオフ制御される(図8参照)。一方で、パラレル接続モードでは、スイッチング素子S1〜S4の各々が独立にオンオフ制御される。すなわち、電力変換器50では、パラレル接続モードが「第1のモード」に対応し、単独電源モードが「第2のモード」に対応する。
【0135】
図21には、直流電源10,20を並列に使用可能な比較例として示される電力変換器50♯の構成が示される。
【0136】
図21を参照して、比較例の電力変換器50♯は、チョッパ回路6,7を有する。チョッパ回路6は、直流電源10と、負荷30と接続された電源配線PLとの間で双方向のDC/DC変換を実行する。チョッパ回路6は、スイッチング素子S1,S2およびリアクトルL1を含む。
【0137】
チョッパ回路7は、直流電源20と、負荷30と接続された電源配線PLとの間で双方向のDC/DC変換を実行する。チョッパ回路7は、スイッチング素子S3,S4およびリアクトルL2を含む。
【0138】
このように、電力変換器50♯は、本実施の形態による電力変換器50とは異なり、直流電源10および20のそれぞれに対して独立にチョッパ回路6,7が設けられた構成となっている。チョッパ回路6および7は、独立に制御することができる。
【0139】
たとえば、図14および図15と同様に、チョッパ回路6,7は、直流電源10,20の一方が電圧源として動作するとともに、他方が電流源として動作するように制御される。たとえば、チョッパ回路6は、図15と同様に、出力電圧Voを電圧指令値Vo*と一致させるための電圧制御を実行する。これにより、電圧制御のためのデューティ比Da(制御パルス信号SDa,/SDa)に従って、スイッチング素子S1,S2が制御される。これに対して、チョッパ回路7は、図14と同様に、電流I[2]を電流指令値Ii*と一致させるための電流制御を実行する。これにより、電流制御のためのデューティ比Db(制御パルス信号SDa,/SDa)に従って、スイッチング素子S3,S4が制御される。
【0140】
このように、電力変換器50♯では、チョッパ回路6,7を並列に動作させることによって、電力変換器50のパラレル接続モードと同様に、直流電源10,20と負荷30との間で並列にDC/DC変換を実行することができる。さらに、電力変換器50♯は、チョッパ回路6または7のみを動作させることによって、直流電源10または20を用いる単独電源モードを実現することができる。
【0141】
図22および図23には、電力変換器50♯の単独電源モードでの動作を説明するための回路図が示される。図22および図23には、直流電源10を用いる単独電源モードにおけるチョッパ回路6の動作が示される。
【0142】
図22を参照して、チョッパ回路6では、上アーム素子であるスイッチング素子S1をオフする一方で下アーム素子としてスイッチング素子S2をオンすることによって、リアクトルL1に電磁エネルギを蓄えるための電流経路181が形成される。
【0143】
図23を参照して、チョッパ回路6では、下アーム素子(スイッチング素子S2)をオフする一方で、上アーム素子(スイッチング素子S1)をオンすることによって、負荷30に電力を供給するための電流経路182を形成するこができる。
【0144】
このように、チョッパ回路6では、1個ずつのスイッチング素子を交互にオンオフすることによって、直流電源10を用いる単独電源モードを実現することができる。同様に、チョッパ回路7においても、スイッチング素子S3(上アーム素子)およびスイッチング素子S4(下アーム素子)を交互にオンオフすることによって、直流電源20を用いる単独電源モードを実現することができる。
【0145】
したがって、単独電源モードによる電力変換を比較すると、本実施の形態による電力変換器50は、電流経路に2個ずつのスイッチング素子があり、比較例の電力変換器50♯と比較して、損失が増大(約2倍)することが懸念される。このため、本実施の形態による電力変換器50では、各スイッチング素子S1〜S4のスイッチング速度を、動作モードに応じて制御する。
【0146】
図24は、本発明の実施の形態による電力変換装置において各スイッチング素子に対して設けられる駆動制御回路の構成例を説明する回路図である。
【0147】
図24を参照して、駆動制御回路300は、スイッチング素子400の制御電極の電圧または電流を駆動することによって、制御信号SGに応答してスイッチング素子400のオンオフを制御する。スイッチング素子400は、スイッチング素子S1〜S4を包括的に示すものであり、制御信号SGは、制御信号SG1〜SG4を包括的に示すものである。
【0148】
スイッチング素子400は、IGBTとして例示される。スイッチング素子400は、「制御電極」であるゲート(G)の電圧に応じた電流I(S)を、端子間(コレクタ(C)およびエミッタ(E)の間)に流すように構成される。具体的には、スイッチング素子400は、ゲート電圧V(G)が所定の閾値電圧よりも高いとオンし、低いとオフする。また、スイッチング素子400の端子間電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)をV(S)と表記する。スイッチング素子400のオン時には、V(S)=0である一方で、スイッチング素子400のオフ時にはV(S)>0である。サージ電圧等によってV(S)が過大になると、素子故障が発生する虞がある。
【0149】
駆動制御回路300は、制御信号SGがHレベルのときには、スイッチング素子400をオンするためにゲート(G)を電圧Vhに駆動する一方で、制御信号SGがLレベルのときには、スイッチング素子400をオフするためにゲート(G)を電圧Vlに駆動する。たとえば、電圧Vhは、12(V)〜15(V)程度であり、電圧Vlは、接地電圧(GND)〜−15(V)程度である。
【0150】
駆動制御回路300は、駆動スイッチ305,306と、ゲート抵抗切替スイッチ307と、ゲート抵抗のための抵抗素子308および309とを有する。駆動スイッチ305は、電圧Vhを供給する電圧源301とノードNaとの間に設けられる。駆動スイッチ306は、電圧Vlを供給する電圧源302とノードNaとの間に設けられる。駆動スイッチ305は、制御信号SGのHレベル時にオンする。駆動スイッチ306は、制御信号SGのLレベル時(すなわち、SGを反転した信号/SGのHレベル時)にオンする。
【0151】
抵抗素子308は、ノードNaおよびNgの間に接続される。ゲート抵抗切替スイッチ307および抵抗素子309は、ノードNaおよびNgの間に、抵抗素子308と並列に接続される。
【0152】
ゲート抵抗切替スイッチ307のオフ時には、抵抗素子308のみがノードNaおよびNgの間に接続される。一方、ゲート抵抗切替スイッチ307のオン時には、抵抗素子308および309が、ノードNaおよびNgの間に並列に接続される。したがって、ゲート抵抗切替スイッチ307のオン時におけるゲート抵抗は、ゲート抵抗切替スイッチ307のオフ時におけるゲート抵抗よりも低い。
【0153】
駆動制御回路300のノードNgおよびNeは、スイッチング素子400のゲート(G)およびエミッタ(E)とそれぞれ電気的に接続される。スイッチング素子400のゲート・エミッタ間にはゲート容量Cgが存在する。
【0154】
制御信号SGがHレベルのときには、駆動スイッチ305がオンすることによって、ゲート容量Cgが電圧Vhへ充電される。これにより、ゲート電圧V(G)の上昇に応じて、スイッチング素子400がオンする。一方で、制御信号SGがLレベルのときには、駆動スイッチ306がオンすることによって、ゲート容量Cgが電圧Vlへ放電される。これにより、ゲート電圧V(G)の低下に応じて、スイッチング素子400がオフする。
【0155】
スイッチング素子400のターンオンおよびターンオフは、制御電極の電圧または電流(IGBTではゲート電圧)によって制御される。駆動制御回路300による制御電極(ゲート)の駆動速度が高く、ゲート電圧V(G)の変化速度が高い場合には、スイッチング素子400は、短時間でターンオンまたはターンオフする。すなわち、スイッチング速度が高くなる。反対に、駆動制御回路300による制御電極(ゲート)の駆動速度が低く、ゲート電圧V(G)の変化速度が低い場合には、スイッチング素子400のターンオンまたはターンオフには一定の時間を要する。すなわち、スイッチング速度が低くなる。
【0156】
図25は、スイッチング素子におけるゲート抵抗とスイッチング速度との関係を説明するためのターンオフ時の動作波形図が示される。図25(a)には、ゲート抵抗切替スイッチ307のオフ時、すなわちゲート抵抗が高い場合の動作波形が示される。一方で、図25(b)には、ゲート抵抗切替スイッチ307のオン時、すなわち、ゲート抵抗が低い場合の動作波形が示される。
【0157】
図25の(a),(b)を参照して、ターンオフ時には、ゲート電圧V(G)=Vhの状態から、駆動制御回路300によって、ゲート電圧V(G)が電圧Vlへ向けて駆動される。
【0158】
ゲート電圧V(G)が所定の閾値電圧Vthよりも低くなるのに応じて、スイッチング素子400はターンオフを開始する。これにより、端子間電圧V(S)が上昇を始めるとともに、電流I(S)が減少する。完全にターンオフした状態では、ゲート電圧V(G)=Vlであるとともに、電流I(S)=0となる。そして、端子間電圧V(S)は、スイッチング素子400が遮断する電圧レベル(最終値)に達する。ターンオフの過程で、端子間電圧V(S)は、サージ電圧の発生によって最終値よりも高くなる。素子故障を回避するためには、サージ電圧を低減することにより、V(S)の瞬間的な最大値を抑制する必要がある。
【0159】
図25(a)に示されるように、ゲート抵抗が高い場合には、ターンオフ時のゲート電圧V(S)の変化速度が低くなる。この結果、電流I(S)の変化も緩やかになるため、サージ電圧が抑制される。一方で、電流I(S)=0となって完全にターンオフされるまでに時間を要するので、スイッチング損失(Plsの積分値)が大きくなる。
【0160】
これに対して、図25(b)に示されるように、ゲート抵抗が低い場合には、ターンオフ時のゲート電圧V(S)の変化速度が高くなる。この結果、電流I(S)の変化が急になるため、サージ電圧が大きくなる。すなわち、端子間電圧V(S)の最大値も、ゲート抵抗が低い場合と比較して大きくなる。一方、電流I(S)=0となって完全にターンオフされるまでの時間が短縮されるので、スイッチング損失(Plsの積分値)は小さくなる。
【0161】
このように、ゲート抵抗が高く、ゲート電圧の変化速度(すなわち、スイッチング速度)が低い場合には、サージ電圧が抑制される一方で、スイッチング損失が増大する。これに対して、ゲート抵抗が低く、ゲート電圧の変化速度(すなわち、スイッチング速度)が高い場合には、サージ電圧が大きくなる一方で、スイッチング損失が減少する。駆動制御回路300は、ゲート抵抗切替スイッチ307のオンオフに応じて、スイッチング素子400のスイッチング速度を可変に制御することによって、サージ電圧およびスイッチング損失を調整できる。
【0162】
図26は、本実施の実施の形態による電力変換器50を構成するスイッチング素子の単独電源モードにおけるターンオフ時の動作波形である。図26には、直流電源10のみを使用する単独電源モードにおける、スイッチング素子S3およびS4のペアのターンオフ時の波形が代表的に示される。
【0163】
図26を参照して、時刻t1以前では、制御信号SG3,SG4がHレベルに設定されて、スイッチング素子S3,S4はオンしている。したがって、スイッチング素子S3,S4の端子間電圧V(S3),V(S4)は零である。この状態では、図7(a)の電流経路150が形成されている。
【0164】
時刻t1において、制御信号SG3,SG4がHレベルからLレベルに変化することにより、スイッチング素子S3,S4に共通にターンオフが指示される。これにより、駆動スイッチ306(図24)がオンすることによってゲート電圧が低下するのに応じて、スイッチング素子S3,S4がターンオフを開始する。これに応じて、電圧V(S3)およびV(S4)が均等に上昇する。
【0165】
時刻t2では、V(S3)=V(S4)=Vo/2に達する。これにより、ダイオードD3,D4がオンするので、図7(a)の電流経路150に代わって、図7(b)に示した電流経路151が形成される。これに応じて、スイッチング素子S3,S4の電流I(S3),I(S4)が減少するのに伴って、スイッチング素子S3,S4にサージ電圧が発生する。この結果、電圧V(S3),V(S4)がさらに上昇する。時刻t3において、I(S3)=I(S4)=0に達する。
【0166】
時刻t3〜t4において、リアクトルL2には電位が発生しないため、スイッチング素子S4の電圧V(S4)は、Vo−V[2]へ収束する。このため、スイッチング素子S3の電圧V(S3)は、Vo−(Vo−V[2])=V[2]へ収束する。
【0167】
時刻t2〜t3の期間に発生するサージ電圧は、時刻t2における電圧Vo/2に重畳される。なぜなら、直列接続された2個のスイッチング素子S3,S4によって、出力電圧Voを遮断するからである。
【0168】
これに対して、図23に示した比較例の電力変換器50♯では、単一のスイッチング素子によって出力電圧Voを遮断するため、ターンオフ時のサージ電圧は、出力電圧Voに重畳される。このため、電力変換器50の単独電源モードでは、ターンオフの際のサージ電圧発生時におけるスイッチング素子の端子間電圧が、比較例の電力変換器50♯と比較して低く抑えられる。言い換えると、電力変換器50の単独電源モードでは、サージ電圧の許容量(電圧)が、電力変換器50♯と比較して、Vo/2大きくなる。
【0169】
したがって、単独電源モードでは、スイッチング速度を高くして、スイッチング損失の低下を図る。これにより、ターンオフ時のサージ電圧が大きくなるが、Vo/2分のマージンがあるため、端子間電圧が耐圧を超えることが避けられる。この結果、2個のスイッチング素子が共通にオンオフすることによるスイッチング損失の増大が抑制される。
【0170】
これに対して、パラレル接続モードでは、各スイッチング素子S1〜S4が独立に制御されるため、単一のスイッチング素子によって出力電圧Voおよびサージ電圧の和を遮断する必要がある。このため、スイッチング速度を抑える必要がある。
【0171】
したがって、単独電源モードでは、駆動制御回路300(図24)によって、各スイッチング素子S1〜S4のスイッチング速度を、2電源モード(パラレル接続モードおよびシリーズ接続モード)よりも低下させる。具体的には、単独電源モードでは、ゲート抵抗切替スイッチ307をオンすることによってゲート抵抗を低くする一方で、2電源モードでは、ゲート抵抗切替スイッチ307をオンすることによってゲート抵抗を高くする。
【0172】
なお、図20に示されるように、シリーズ接続モードでは、スイッチング素子S2,S4が共通にオンオフを制御されるため、スイッチング素子S2,S4については、理論上は、単独電源モードと同様に、スイッチング速度を低下できる可能性がある。しかしながら、シリーズ接続モードでは、スイッチング素子S1は、単独でオンオフ制御される。このため、単一のスイッチング素子で出力電圧Voおよびサージ電圧の和を遮断することになるスイッチング素子S1のスイッチング速度を低下することは困難である。スイッチング素子間でスイッチング速度が異なると、デッドタイムの調整等が困難となることが懸念される。したがって、シリーズ接続モードにおいては、各スイッチング素子S1〜S4のスイッチング速度は、単独電源モードと同等に低下させるのではなく、パラレル接続モードと同等とすることが好ましい。
【0173】
図27には、電力変換器50における動作モードの遷移図が示される。
図27を参照して、直流電源10,20および/または負荷30の状態に応じて、単独電源モード、パラレル接続モードおよびシリーズ接続モードの間で、動作モードが切替えられる。
【0174】
シリーズ接続モードでは、電圧V[1]+V[2]および出力電圧Voの間で直流電圧変換が実行される。一方で、パラレル接続モードおよび単独電源モードでは、電圧V[1],V[2]と出力電圧Voとの間で直流電圧変換が実行される。したがって、単独電源モードが選択される場合には、デューティ比の大幅な変化を防止するために、単独電源モードおよびシリーズ接続モードとの間で動作モードが直接遷移することは避けることが好ましい。
【0175】
図28および図29には、このような動作モードの切替時における、駆動制御回路によるスイッチング速度制御に関連する処理が示される。
【0176】
図28には、パラレル接続モードが選択されている期間中における制御処理が示される。図28に示した制御処理は、パラレル接続モードの選択時に所定周期毎に実行される。
【0177】
図28を参照して、制御装置40は、ステップS100により、パラレル接続モードから単独電源モードへの切替が指示されているか否かを判定する。制御装置40は、動作モードの切替が不要であり、パラレル接続モードを維持する場合(S100のNO判定時)には、ステップS110に処理を進めて、ゲート抵抗切替スイッチ307をオフする。これにより、ゲート抵抗は高く設定されるので、各スイッチング素子が独立にオンオフ制御されるパラレル接続モードでは、スイッチング素子の制御電極(ゲート)の駆動速度、すなわち、スイッチング速度が低く抑えられる。
【0178】
これに対して、制御装置40は、単独電源モードへの切替が指示されたたとき(S100のYES判定時)には、ステップS120に処理を進めて、動作モードの切替を実行する。具体的には、スイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御(デューティ制御)のための演算処理を、単独電源モードへ切替える。
【0179】
さらに、制御装置40は、ステップS120によってスイッチング素子のデューティ制御を切替えた後に、ステップS130により、駆動制御回路300のゲート抵抗切替スイッチ307をオフからオンに変化させる。これにより、各スイッチング素子S1〜S4のゲート抵抗が低下して、スイッチング速度が高くなる。したがって、単独電源モードでは、2個ずつ共通にオンオフ制御されるスイッチング素子S1〜S4のスイッチング損失を抑制できる。
【0180】
パラレル接続モードによるオンオフ制御の下でスイッチング速度を高めると、サージ電圧の増大によって、端子間電圧が過大となる虞がある。したがって、スイッチング素子のオンオフ制御(デューティ制御)を単独電源モードへ切替えが完了した後に、駆動制御回路300によってスイッチング速度を上昇させる。これにより、過電圧の発生による素子故障をより確実に回避できる。
【0181】
図29には、単独電源モードが選択されている期間中における制御処理が示される。図29に示した制御処理は、単独電源モードの選択時に所定周期毎に実行される。
【0182】
図29を参照して、制御装置40は、ステップS200により、単独電源モードからパラレル接続モードへの切替が指示されているか否かを判定する。制御装置40は、動作モードの切替が不要であり、単独電源モードを維持する場合(S200のNO判定時)には、ステップS210に処理を進めて、ゲート抵抗切替スイッチ307をオンする。これにより、ゲート抵抗が低く設定されるので、複数個ずつのスイッチング素子が共通に制御される単独電源モードでは、スイッチング損失を抑制するために、スイッチング速度が高められる。
【0183】
これに対して、制御装置40は、パラレル接続モードへの切替が指示されたたとき(S200のYES判定時)には、ステップS220に処理を進めて、動作モードの切替に先立って、駆動制御回路300内のゲート抵抗切替スイッチ307をオンからオフに変化させる。これにより、各スイッチング素子S1〜S4のゲート抵抗が上昇して、スイッチング速度が低下する。さらに、制御装置40は、スイッチング速度を低下させた後に、ステップS230により、スイッチング素子のオンオフ制御(デューティ制御)のための演算処理をパラレル接続モードへ切替える。
【0184】
これにより、スイッチング速度が高い状態の下で、パラレル接続モードに従って、スイッチング素子S1〜S4が独立にオンオフ制御されることを防止できる。これにより、過電圧の発生による素子故障をより確実に回避できる。
【0185】
以上説明したように、本実施の形態による電力変換器50によれば、複数個のスイッチング素子が共通にオンオフ制御される動作モード(単独電源モード)では、サージ電圧の許容量が増加することを利用して、スイッチング速度を上昇させることによりスイッチング損失の抑制を図ることができる。一方で、各スイッチング素子が独立にオンオフ制御される動作モード(特に、パラレル接続モード)では、スイッチング速度を抑制してサージ電圧による過電圧の発生を防止することができる。これにより、複数のスイッチング素子を含むように構成された電力変換器において、動作モードに応じてスイッチング速度を制御することによって、サージ電圧抑制およびスイッチング損失低減の両立を図ることができる。
【0186】
なお、本実施の形態では、電力変換器(コンバータ)の構成としてチョッパ回路を例示したが、本発明の適用はチョッパ回路に限定されるものではない。すなわち、任意の個数の複数のスイッチング素子によって構成された電力変換器であって、複数個のスイッチング素子が共通にオンオフ制御される動作モードを有するものであれば、その回路構成は任意とすることができる。
【0187】
また、スイッチング速度を制御するための駆動制御回路についても、図24に例示された回路構成に限定されるものではなく、スイッチング速度を切替えるための任意の回路構成を適用することが可能である。
【0188】
さらに、負荷30は、直流電圧Voによって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電動車両の走行用電動機を含むように負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような場合に限定されるものではない。
【0189】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、複数の電力用半導体スイッチング素子を含んで構成される電力変換器の制御に用いることができる。
【符号の説明】
【0191】
5 電源システム、6,7 チョッパ回路、10,20 直流電源、15 配線、25 キャリア信号、30 負荷、32 インバータ、35 モータジェネレータ、36 動力伝達ギヤ、37 駆動輪、40 制御装置、50 電力変換器、101,102 動作点、110,120 動作領域、150,151,160,161,170,171,172,173,174 電流経路、201,202,203 制御ブロック、300 駆動制御回路、301,302 電圧源、305,306 駆動スイッチ、307 ゲート抵抗切替スイッチ、308,309 抵抗素子(ゲート抵抗)、400,S1〜S4 電力用半導体スイッチング素子、Cg ゲート容量、D1〜D4 逆並列ダイオード、Da,Db,Dc デューティ比、Di,Dv デューティ比指令値、DiFF,DvFF フィードフォワード制御量、G ゲート、SG,SG1〜SG4 制御信号、GL 接地配線、Hi,Hv 伝達関数、I[1],I[2] 電流、Ii* 電流指令値、Vo* 電圧指令値、L1,L2 リアクトル、N1,N2,N3,Na,Ng ノード、PL 電源配線、PS1,PS2 電源、Pls スイッチング損失、Rg1,Rg2 抵抗値、SDa(/SDa),SDb(/SDb),SDc(/SDc) 制御パルス信号、V(G) ゲート電圧、V[1],V[2] 電圧(直流電源)、Vh、Vl 電圧(オンオフ)、V(S),V(S3),V(S4) 端子間電圧、Vo 出力電圧、Vth 閾値電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を含む電力変換器の制御装置であって、
前記複数のスイッチング素子の各々に対応して設けられた、対応する前記スイッチング素子の制御電極の駆動速度を制御するための駆動制御回路と、
前記複数のスイッチング素子の各々を独立にオンオフ制御する第1のモードと、前記複数のスイッチング素子のうちの少なくとも2個のスイッチング素子を共通にオンオフ制御する第2のモードとを選択するための制御回路とを備え、
前記駆動制御回路は、前記第2のモードにおける前記駆動速度を、前記第1のモードにおける前記駆動速度よりも高くする、電力変換器の制御装置。
【請求項2】
前記電力変換器は、負荷と電気的に接続される電源配線上の出力電圧を制御するように、第1および第2の直流電源と前記電源配線との間で直流電圧変換を実行するように構成され、
前記複数のスイッチング素子は、
第1のノードおよび前記電源配線の間に電気的に接続された第1のスイッチング素子と、
第2のノードおよび前記第1のノードの間に電気的に接続された第2のスイッチング素子と、
前記第2の直流電源の負極端子と電気的に接続された第3のノードおよび前記第2のノードの間に電気的に接続された第3のスイッチング素子と、
前記第1の直流電源の負極端子および前記第3のノードの間に電気的に接続された第4のスイッチング素子とを含み、
前記電力変換器は、
前記第2のノードおよび前記第1の直流電源の正極端子の間に電気的に接続された第1のリアクトルと、
前記第1のノードおよび前記第2の直流電源の正極端子の間に電気的に接続された第2のリアクトルとをさらに含む、請求項1記載の電力変換器の制御装置。
【請求項3】
前記電力変換器は、前記第1のモードにおいて、前記第1から第4のスイッチング素子の制御によって、前記第1および第2の直流電源が前記電源配線との間で並列に前記直流電圧変換を実行するように動作する、請求項2記載の電力変換器の制御装置。
【請求項4】
前記電力変換器は、前記第2のモードにおいて、前記第1および第2のスイッチング素子のオンオフを共通に制御するとともに、前記第3および第4のスイッチング素子のオンオフを共通に制御することによって、前記第1の直流電源と前記電源配線との間で直流電圧変換を実行する、請求項2記載の電力変換器の制御装置。
【請求項5】
前記電力変換器は、前記第2のモードにおいて、前記第1および第4のスイッチング素子のオンオフを共通に制御するとともに、前記第2および第3のスイッチング素子のオンオフを共通に制御することによって、前記第2の直流電源と前記電源配線との間で直流電圧変換を実行する、請求項2記載の電力変換器の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1のモードから前記第2のモードへの切替の際には、前記複数のスイッチング素子の制御を切替えた後に、前記駆動制御回路における前記駆動速度を上昇させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2のモードから前記第1のモードへの切替の際には、前記駆動制御回路における前記駆動速度を低下させた後に、前記複数のスイッチング素子の制御を切替える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
【請求項8】
複数のスイッチング素子を含む電力変換器の制御方法であって、
前記電力変換器は、前記複数のスイッチング素子の各々を独立にオンオフ制御する第1のモードと、前記複数のスイッチング素子のうちの少なくとも2個のスイッチング素子を共通にオンオフ制御する第2のモードとを有し、
前記制御方法は、
前記第1のモードで前記電力変換器が動作しているときに、前記複数のスイッチング素子の各々に対応して設けられた駆動制御回路による対応する前記スイッチング素子の制御電極の駆動速度を第1の速度に制御するステップと、
前記第2のモードで前記電力変換器が動作しているときに、前記駆動制御回路による前記駆動速度を、前記第1の速度よりも高い第2の速度に制御するステップとを備える、電力変換器の制御方法。
【請求項9】
前記第1のモードから前記第2のモードへの切替を指示するステップと、
前記第1のモードから前記第2のモードへの切替が指示されたときに、前記複数のスイッチング素子の制御を切替えるステップと、
前記複数のスイッチング素子の制御を切替えた後に、前記駆動制御回路による前記駆動速度を前記第1の速度から前記第2の速度へ上昇させるステップとをさらの備える、請求項8記載の電力変換器の制御方法。
【請求項10】
前記第2のモードから前記第1のモードへの切替を指示するステップと、
前記第1のモードから前記第2のモードへの切替が指示されたときに、前記駆動制御回路による前記駆動速度を前記第2の速度から前記第1の速度へ低下させるステップと、
前記駆動速度を低下させた後に、前記複数のスイッチング素子の制御を切替えるステップとをさらに備える、請求項8記載の電力変換器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−93923(P2013−93923A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232770(P2011−232770)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】