説明

電力変換装置および電力供給システム

【課題】直流電力を現在設定されている出力周波数の交流電力に変換して出力するものであって、出力周波数に変化を与える際に、この変化の量をより短い間隔で設定することが可能となる電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流電力を、現在設定されている出力周波数の交流電力に変換して出力する電力変換装置であって、前記出力周波数に変化を与える動作として、変化付与動作を実行する変化付与部を備え、前記変化付与部は、前記変化を与えておくべき変化付与期間を、前記交流電力の周期より短い複数の区間に区切り、前記変化の量を、該区間ごとに設定する電力変換装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置、およびこれを用いた電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流の電力系統に連系して、分散電源(太陽光発電システムなど)が発生させた電力を電力系統に供給するパワーコンディショナ(以下「パワコン」と略記することがある)が広く利用されている。なおパワコンは、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置の一形態と見ることができる。
【0003】
パワコンは、分散電源が発生させた直流電力を、予め設定された出力周波数の交流電力に変換し、電力系統に出力する機能を有している。なお電力系統に出力される電力を、電力系統における電力に整合させるべく、この出力周波数は一般的に、電力系統における電力の周波数とほぼ一致するように設定される。
【0004】
ところでパワコンの使用にあたっては、単独運転状態(単独運転がなされている状態)の発生に留意する必要がある。単独運転は、例えば電力系統が停電しているにも関わらず、分散電源が電力供給を継続することである。安全性の観点などから、単独運転は極力回避されるべきであり、また単独運転状態が発生した場合には、分散電源を電力系統から速やかに切り離すといった措置が必要となる。
【0005】
そのため電力変換装置の多くは、単独運転状態が発生したかを検出する(単独運転を検出する)手段が設けられており、単独運転状態が発生した場合には、分散電源を電力系統から切り離すようになっている。なお各特許文献には、各種手法により、単独運転を検出するものが開示されている。
【0006】
また単独運転を検出する手法の方式としては、受動的方式や能動的方式が挙げられる。能動的方式は、例えば、意図的に正常時の電力系統に整合しないようにした(誤差を与えておいた)電力を電力系統へ出力し、電力系統での電力がこれに追従するかどうかを見ることにより、単独運転を検出する方式である。能動的方式によれば、受動的方式では単独運転が検出されない状態、例えば、分散電源の発電量と電力系統上の負荷電力量が釣り合っている平衡状態であっても、単独運転を検出することが可能となる。
【0007】
能動的方式である手法の一つとして、出力周波数に変化(意図的な誤差)を与えておき、電力系統における電力の周波数がこの変化に追従したことを検出することにより、単独運転を検出する手法(以下、便宜的に「周波数変化付与手法」と称する)が挙げられる。周波数変化付与手法によれば、単独運転状態の発生が疑われる状況となったとき(例えば、一定条件を満たす電気的変動が検出されたとき)に、出力周波数に変化を与えるようにする。
【0008】
そして電力系統における電力の周波数がこの変化に追従せず、正常周波数範囲を逸脱しなければ、単独運転状態は発生していないと判別される。逆に電力系統における電力の周波数がこの変化に追従し、正常周波数範囲を逸脱すれば、単独運転状態が発生していると判別される。正常周波数範囲は、例えば50Hzの電力系統の場合、50±2Hzの範囲(電力系統が正常な状態では、逸脱することが無いと想定される範囲)とされる。
【0009】
単独運転状態が発生していなければ、出力周波数の変化が電力系統に与える影響は微小であるため、電力系統における電力の周波数は正常周波数範囲を逸脱しないが、そうでなければ、電力系統における電力の周波数は当該変化に追従し、正常周波数範囲を逸脱することになる。そのため周波数変化付与手法によれば、単独運転を検出することが可能となっている。
【0010】
なお出力周波数の変化量が小さ過ぎると、単独運転状態が発生していたとしても、電力系統における電力の周波数を、正常周波数範囲から逸脱させる(当該範囲の外側に追い出す)ことができない。そのため周波数変化付与手法においては、単独運転状態が発生しているときには、電力系統における電力の周波数が正常周波数範囲を確実に逸脱するようにするべく、出力周波数の変化量は、ある程度の大きさ(例えば最大時に3.5Hz程度)としておく必要がある。
【0011】
但し、出力周波数を一気に大きく変化させると、変化付与の前後で出力周波数が急に大きく変化する。そのため単独運転状態が発生していない場合、例えば出力電力と電力系統における電力との位相差が非常に大きくなることで、分散電源側に過電流が発生し、電力系統や電力系統に接続された負荷への電力供給に大きな乱れが生じるおそれがある。
【0012】
従って、出力周波数に変化を与える際には、最大量の変化を一気に与えるのではなく、変化量を徐々に変えるよう配慮される。これにより、出力周波数の変化を緩やかにし、上述した不具合を極力抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許3424443号公報
【特許文献2】特開2003−180036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで単独運転状態の検出速度に着目すると、従来であれば、それほどの迅速な検出は要求されていなかった。より具体的には、受動的方式の場合は約0.5秒以内、能動的方式の場合は約1.0秒以内での検出が要求されているに過ぎなかった。そのため、先述した周波数変化付与手法を適用する場合であっても、出力周波数をそれほど急速に変化させる必要はなく、出力電力の1周期或いはそれ以上の間隔で(例えば出力波形のゼロクロスに合わせて)、変化量を徐々に変えるようにすれば十分であった。
【0015】
ところが近年、電力系統に連系される分散電源が大幅に増大する傾向にあり、単独運転が安全性等に及ぼす影響は大きくなってきている。このような事情もあり、パワコンにおいて、単独運転をより速やかに検出して適切に対処する機能を設けることが、今後は強く要望されると見込まれる。より具体的には、今後は、約0.1秒(50Hzの波形における5周期程度)以内に単独運転を検出することが、要望されると見込まれる。
【0016】
そのため周波数変化付与手法を適用する場合、出力周波数に対して、ある程度の大きさの変化をごく短時間で与えることが必要となる。その結果、出力電力の1周期或いはそれ以上の間隔で変化量を変えるようにするだけでは、出力周波数の変化を十分緩やかにすることができない。従って、出力周波数の変化をより緩やかにするための方策が、非常に強く望まれる。この方策の一例としては、当該変化の量を、より短い間隔で徐々に増大させることが考えられる。
【0017】
また周波数変化付与手法を用いて、単独運転を極めて速やかに検出させることに重点を置く場合は、出力周波数の変化の量を、極めて短時間のうちにある程度の大きさに設定する必要がある。このような種々の状況を考慮すれば、パワコンにおいて、出力周波数の変化の量が、より短い間隔で設定されるようになっていることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る電力変換装置は、直流電力を、現在設定されている出力周波数の交流電力である、出力電力に変換して出力する電力変換装置であって、前記出力周波数に変化を与える変化付与部を備え、前記変化付与部は、前記変化を与えておくべき変化付与期間を、前記出力電力の周期より短い複数の区間に区切り、前記変化の量を、該区間ごとに設定する構成とする。
【0019】
本構成によれば、出力周波数の変化の量がより短い間隔で設定される。そのため、例えば同じ期間内に出力周波数に所定量の変化を与えるにあたって、交流電力の1周期或いはそれ以上の間隔で徐々に変化の量(変化量)を変える場合に比べ、より少しずつ段階的に変化量を変えることが可能となる。
【0020】
また電力系統に連系し、該電力系統における電力の周波数に応じて出力周波数を設定して、前記出力電力を該電力系統に出力する上記構成の電力変換装置であって、単独運転状態の発生の有無を判別する単独運転判別部を備え、前記単独運転判別部は、前記出力周波数に前記変化が与えられた状況下で、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かに基づいて、単独運転状態の発生の有無を判別する構成としてもよい。この場合の前記変化に追従したか否かの判別を、上述の区間ごとに行うことも可能である。
【0021】
本構成によれば、先述した周波数変化付与方式を採用して、単独運転状態の発生を検出することが可能となる。例えば、この単独運転状態の発生検出を、出力電力の一周期以内において行うようにすることも可能である。
【0022】
また上記構成において、前記変化付与部は、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かが判別されるまで、該変化の量を前記区間ごとに段階的に増大させる構成としてもよい。
【0023】
また上記構成において、前記変化付与部は、変化付与期間において、前記変化の量が所定の最大量に達するまでは、該変化の量を前記区間ごとに段階的に増大させ、該変化の量が該最大量に達した後は、該変化の量を該区間ごとに段階的に減少させる構成としてもよい。
【0024】
本構成によれば、出力周波数に所定の最大量の変化を与えるにあたり、出力周波数に与える変化を出来るだけ緩やかにしつつ、これを実現することが可能となる。
【0025】
また上記構成において、前記変化付与部は、単独運転状態の発生が疑われる状況となる度に、前記出力周波数に前記変化を与えるための付与動作を行うものであり、前記単独運転判別部は、前記付与動作が行われる度に、単独運転状態の発生の有無を判別する構成としてもよい。
【0026】
また上記構成において、電圧指令波形を算出し、出力する電圧の波形の目標が該電圧指令波形となるようにインバータ回路を制御することで、前記電力系統における電圧波形と略一致する波形の電圧を出力する、上記構成の電力変換装置であって、前記変化付与部は、前記電圧指令波形における周波数を変えることにより、前記変化を与えるものであり、前記単独運転判別部は、前記電圧指令波形と、検出された前記電力系統における電圧波形との差分に基づいて、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かを判別する構成としてもよい。
【0027】
また上記構成において、電圧指令波形を算出し、出力する電圧の波形の目標が該電圧指令波形となるようにインバータ回路を制御することで、前記電力系統における電圧波形と略一致する波形の電圧を出力する、上記構成の電力変換装置であって、出力する電流の波形の目標となる電流指令波形を決定するものであり、前記電圧指令波形は、検出された前記電力系統における電圧波形と、前記インバータ回路から該電力系統へ前記電流指令波形の電流が流れるときの電圧降下に対応した波形と、を合わせることで算出されるものであり、前記変化付与部は、前記電流指令波形における周波数を変えることにより、前記変化を与えるものであり、前記単独運転判別部は、前記電流指令波形と、検出された前記電力系統における電圧波形との差分に基づいて、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かを判別する構成としてもよい。
【0028】
また上記構成において、前記複数の区間の各々は、前記出力電力における2π未満の一定の位相角ごとに区切られた区間である構成としてもよい。本構成によれば、各区間の幅が一定の位相角とはなっていない場合に比べ、出力電力の波形を滑らかにすることが可能となる。
【0029】
また本発明に係る電力供給システムは、上記構成に係る電力変換装置と、前記直流電力を発生させる直流電源と、を備え、前記直流電力を交流電力に変換して、前記電力系統に供給する構成とする。本構成によれば、上記構成に係る電力変換装置の利点を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
上述した通り、本発明に係る電力変換装置によれば、出力周波数の変化の量がより短い間隔で設定される。そのため、例えば同じ期間内に出力周波数に所定量の変化を与えるにあたって、交流電力の1周期或いはそれ以上の間隔で徐々に変化量を変える場合に比べ、より少しずつ段階的に変化量を変えることが可能となる。また本発明に係る電力供給システムによれば、本発明に係る電力変換装置の利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るパワコンの構成図(電力系統に連系した状態)である。
【図2】連系状態制御動作のフローチャートである。
【図3】単独運転判別動作のフローチャートである。
【図4】変化付与パターンの内容を示す説明図である。
【図5】出力周波数に変化が与えられたときの出力電圧の波形を示すグラフである。
【図6】出力電圧の波形に関する説明図である。
【図7】出力周波数の変化の状況に関する説明図である。
【図8】本実施形態に係るパワコン制御装置の構成図である。
【図9】別形態の単独運転判別動作のフローチャートである。
【図10】出力周波数への変化の付与に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態について、交流の電力系統に連系するパワーコンディショナ(パワコン)を挙げて、以下に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態のパワコンの構成図(電力系統に連系した状態)を表している。本図に示すように、パワコン1は端子T1およびT2を有しており、端子T1には直流電源2が接続され、端子T2には既存の電力系統が接続されている。なお直流電源2は、例えば太陽光発電システムであり、直流電力を発生させるものである。直流電源2は、電力系統から見れば分散電源の一つに相当する。
【0034】
また電力系統は、電力配線に系統電源3や電力系統の遮断に用いられる系統遮断機4などが接続され形成されている。なお本実施形態での電力系統は、50Hz(正常周波数範囲は50±2Hz)の商用電源を伝送するものとする。電力系統には、電力系統から電力供給を受ける負荷5(各種電気機器など)も接続される。また電力系統については、他の形態(例えば60Hzの商用電源を伝送するもの)であっても同様に考えることができる。
【0035】
[パワコンの構成等について]
次にパワコン1の構成等について説明する。図1に示すようにパワコン1は、ダイオード11、コンデンサ12、インバータ回路14、インダクタ15、コンデンサ16、電流検出回路17、電圧検出回路18、連系リレー19、およびパワコン制御装置20などを備えている。
【0036】
直流電源2から送出された電力は、各素子(11、12)によって状態が整えられ、インバータ回路14に届けられる。インバータ回路14は、受取った電力を交流に変換し、後段側に送出する。なおインバータ回路14は、パワコン制御装置20から受取ったゲート信号Sgに応じて動作する。
【0037】
インバータ回路14から送出された電力は、インダクタ15やコンデンサ16によって波形が整えられ、連系リレー19を介して、電力系統に出力される。なお以降、パワコン1から電力系統に出力される電力(或いは電圧、電流)を、便宜的に、「出力電力」(或いは「出力電圧」、「出力電流」)と称する。また出力電力(交流電力)の周波数を、「出力周波数」と称する。
【0038】
連系リレー19は、パワコン制御装置20から受取ったリレー切替信号Srに応じて、開閉が切替えられる。通常は、連系リレー19は閉じられており、パワコン1および直流電源2が電力系統に連系されるが、連系リレー19が開かれると、当該連系は解除される。
【0039】
また電流検出回路17は、端子T2を流れる電流の値を、継続的に検出する回路である。電流検出回路17によって検出された電流値の情報は、電流検出信号Idとして、パワコン制御装置20に伝送される。
【0040】
電圧検出回路18は、端子T2の両極間における電圧の値を、継続的に検出する回路である。電圧検出回路18によって検出された電圧値の情報は、電圧検出信号Vdとして、パワコン制御装置20に伝送される。
【0041】
なお以降、電力系統における電力(或いは電圧、電流)を、便宜的に、「系統電力」(或いは「系統電圧」、「系統電流」)と称する。また系統電力(交流電力)の周波数を、「系統周波数」と称する。パワコン制御装置20は、電流検出信号Idや電圧検出信号Vdを継続的に受取ることにより、系統電力、系統電圧、および系統電流を継続的に検出することが可能となっている。
【0042】
パワコン制御装置20は、受取った電流検出信号Idおよび電圧検出信号Vdに基づいて、各種の演算処理などを実行し、適切な動作がなされるようにパワコン1を制御する装置である。パワコン制御装置20は、ゲート信号Sgを送出してインバータ回路14を制御するとともに、リレー切替信号Srを送出して連系リレー19を制御する。
【0043】
ここで出力電力などは、所定の連系規定に準拠している必要がある。すなわち、パワコン1の出力に係る高調波電圧の歪率や力率などが規定の範囲内に収まることや、出力電流の波形を正弦波とすること等が必要とされる。また電力系統の電力状態を乱さぬように、出力電力が、この系統電力と整合するように(つまり、交流の周波数、位相、および電圧振幅などが略一致するように)なっていることも必要とされる。
【0044】
パワコン制御装置20は、通常時、このような条件が満たされるように、電流検出信号Idおよび電圧検出信号Vdに基づいて電圧指令波形を算出する。そしてパワコン制御装置20は、この電圧指令波形に基づいてゲート信号Sgを生成して送出し、インバータ回路14をPWM[Pulse Width Modulation]方式によって制御する。すなわちパワコン制御装置20は、出力する電圧の波形の目標がこの電圧指令波形となるように、インバータ回路14を制御する。これによりパワコン1は、電力系統における電圧波形と略一致する波形の電圧を、電力系統へ出力するようになっている。このようにしてパワコン1は、系統電力と整合するように調整された出力電力を、電力系統へ出力する。なお、出力電力が系統電力と整合するように、電圧指令波形を算出する手法自体については、既に各種の手法が知られている。
【0045】
なお交流の周波数に着目すると、パワコン制御装置20は、電流検出信号Idおよび電圧検出信号Vdの少なくとも一方に基づいて、系統周波数を検出する。そしてパワコン制御装置20は、この検出結果や、電流が流れることによる電圧降下などを考慮して電圧指令波形を算出し、この算出結果に応じてインバータ回路14を制御する。その結果、通常時は、この検出される系統周波数と一致するように、出力周波数が間接的に設定されることとなる。
【0046】
[連系状態制御動作について]
ところで単独運転状態が発生したときは、パワコン1における電力系統への連系を、速やかに解除させる必要がある。そこでパワコン制御装置20は、上述したようなインバータ回路14の制御に並行して、単独運転状態が発生したか否かに応じてパワコン1と電力系統との連系状態を適切に制御するための、連系状態制御動作を実行するようになっている。以下、この連系状態制御動作について、図2に示すフローチャートを参照しながら、より詳細に説明する。
【0047】
パワコン制御装置20は、通常時、電流検出信号Idもしくは電圧検出信号Vdに基づいて、電力系統に基準レベルを超える電気的変動が生じたかを、継続的に監視するようになっている(ステップS1)。なおここでの「電気的変動」は、例えば、電圧低下、周波数変化率の変化、位相跳躍、および高調波電圧の変化のうちの、一つまたは複数が該当する。
【0048】
単独運転状態が発生する原因としては、例えば落雷の影響による電力系統の遮断が考えられる。そしてこのような電力系統の遮断が生じたとき、少なくとも一時的に、上述したような電気的変動が生じる。このことから、当該電気的変動がある程度のレベルを超えたときは、単独運転状態の発生が疑われることになる。上述した「基準レベル」は、単独運転状態の発生が疑われる程度のレベルに設定されている。
【0049】
しかしながら、単独運転状態が発生していなくても、何らかの原因により、電気的変動が基準レベルを超える可能性がある。すなわち、基準レベルを超える電気的変動が検出されたときは、単独運転状態の発生が疑われるものの、単独運転状態が発生していないことも考えられる。
【0050】
そこで、基準レベルを超える電気的変動が検出された場合(ステップS1のY)、パワコン制御装置20は、予め定められた単独運転判別動作を実行し、単独運転状態が発生したか否かを判別することとする(ステップS2)。単独運転判別動作は、単独運転状態の発生の有無を、短時間に精度良く判別するための動作であり、具体的内容については改めて説明する。
【0051】
単独運転判別動作の実行により、単独運転状態が発生したと判別された場合(ステップS3のY)、パワコン装置20は、連系リレー19を開くためのリレー切替信号Srを、連系リレー19に送出し、連系リレー19を開いた状態に制御する。これにより、パワコン1の電力系統への連系が解除され、単独運転が停止される(ステップS4)。
【0052】
一方、単独運転判別動作の実行により、単独運転状態は発生していないと判別された場合(ステップS3のN)、パワコン1の電力系統への連系を解除させる必要は無い。そのためパワコン装置20は、連系リレー19を開くこととせず、ステップS1の動作に戻る。上述した一連の連系状態制御動作を実行することにより、パワコン装置20は、単独運転状態の発生の有無を短時間に精度良く判別し、この判別の結果に応じた適切な処置を行うようになっている。
【0053】
[単独運転判別動作について]
単独運転判別動作(ステップS2)は、既に説明した周波数変化付与手法を用いて、単独運転状態の発生の有無を判別する動作である。この単独運転判別動作の具体的な内容について、図3に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0054】
単独運転判別動作の開始に伴い、パワコン制御装置20は、変化付与パターンに従った、出力周波数への変化の付与(付与動作)を開始する(ステップS12)。先述した通り出力周波数は、通常時においては、系統周波数と一致するように設定されるが、単独運転判別動作の実行時においては、変化付与パターンに従った変化が、単独運転を検出するための意図的な誤差として与えられる。
【0055】
ここで「変化付与パターン」は、予めパワコン制御装置20に登録されている情報であり、出力周波数にどのように変化を与えるか(変化量を変えていくか)を示すものである。変化付与パターンは、具体的には、図4に示す内容に設定されている。
【0056】
なお図4において、例えば「第3区間」は、単独運転判別動作の開始時を基準(位相角を0とする)とした場合における、出力電力の位相角が「4π/8〜6π/8」である期間を指している。また図4によれば、「第3区間」における出力周波数の変化量は「1.0(Hz)」であることを示している。
【0057】
図4に示す通り変化付与パターンによれば、出力電力の2周期分(0〜32π/8)についての変化量が決められている。そして前半の1周期分は、2π/8の位相角(一定の位相角)ごとに区切られている。換言すれば図4に示すように、第1区間から第8区間の各区間に区切られている。そして第1区間から第8区間においては、区間が更新されるごとに、変化量が0.5Hzずつ徐々に増大するように設定されている。
【0058】
一方、後半の1周期分も、2π/8の位相角ごとに区切られている。換言すれば図4に示すように、第9区間から第16区間の各区間に区切られている。そして第9区間から第16区間においては、区間が更新されるごとに、変化量が0.5Hzずつ徐々に減少するように設定されている。
【0059】
図5に示すグラフは、変化付与パターンに従って出力周波数に変化を与えた場合における、出力電力の波形(出力電圧や出力電流の波形も同傾向である)の一例を表している。なお当該グラフにおいて、横軸は時間t、縦軸は電力yを示している。また図5に示す波形は、変化の付与の開始時において、位相が0、出力周波数が50Hz、振幅がWoであるとした場合の波形である。
【0060】
なお図5に示した波形における第i区間の電力yは、近似的に次の(1)式で表される。
y=Wo×sin{2πfi(t−ti)+φi} ・・・(1)
但し、fiは第i区間における出力周波数を、tiは第i区間の開始時(=第i−1区間の終了時)の時間を、φiは第i区間の開始時(=第i−1区間の終了時)の位相を、それぞれ表している。
【0061】
つまり図5に示した波形は、
y=Wo×sin(2π×50×t)の波形における位相角が0〜2π/8の部分(図6の1段目を参照)、
y=Wo×sin(2π×50.5×t)の波形における位相角が2π/8〜4π/8の部分(図6の2段目を参照)、
y=Wo×sin(2π×51×t)の波形における位相角が4π/8〜6π/8の部分(図6の3段目を参照)、
・・・、
y=Wo×sin(2π×50×t)の波形における位相角が30π/8〜32π/8の部分(図6の4段目を参照)
の各部分を、位相角が整合するように連結して形成された波形と見ることもできる。
【0062】
パワコン制御装置20は、単独運転判別動作の開始時において、その時点での出力電力の状態と変化付与パターンに基づいた必要な演算処理を実行し、図5に示すような波形をまず決定しておく。そしてその後、パワコン制御装置20は、出力電力を当該波形に合致させるように、ゲート信号Sgを送出する。これにより、変化付与パターンに従った、出力周波数への変化の付与が実現されることになる。
【0063】
また図4から明らかな通り、変化付与パターンは、出力電圧の1周期の間に、出力周波数を最大時で3.5Hz変化させるように設定されている。なおこの3.5Hz(変化の最大量)は、変化が付与される前に50Hz程度となっている出力周波数を、電力系統における正常周波数範囲(50±2Hz)から十分に逸脱させる値として設定されている。
【0064】
そしてパワコン制御装置20は、変化付与パターンに従って出力周波数に変化を与えるようにしつつ、検出される系統周波数が正常周波数範囲から逸脱したか(ステップS13)、および変化の付与を開始してから判別待機時間が経過したか(ステップS14)を監視する。なお判別待機時間は、出力周波数に最大量の変化が与えられるまでの時間より長い時間として、例えば出力電力の1周期(位相角0〜16π/8に相当)に設定されている。
【0065】
ここで出力周波数を変化させた場合、系統周波数は次の通りとなる。単独運転状態が発生しているとき、系統電力の状態は、出力電力の状態が支配的となる。そのため系統周波数は出力周波数の変化に追従し、出力周波数が電力系統における正常周波数範囲から逸脱したときには、系統周波数もこれに伴って当該正常周波数範囲から逸脱することになる。
【0066】
一方、単独運転状態が発生していないとき、系統電力の状態は、系統電源3等の影響が強く、出力電力の状態の影響を殆ど受けない。そのため系統周波数は出力周波数の変化に追従せず、出力周波数が電力系統における正常周波数範囲から逸脱しても、系統周波数が当該正常周波数範囲から逸脱することはない。
【0067】
そこでパワコン制御装置20は、系統周波数が電力系統の正常周波数範囲から逸脱したことを検出した場合には(ステップS13のY)、単独運転状態が発生したと判別し(ステップS15)、今回の単独運転判別動作を終了する。また一方で、系統周波数が当該正常周波数範囲から逸脱することなく、変化の付与を開始してから判別待機時間が経過した場合には(ステップS14のY)、パワコン制御装置20は、単独運転状態は発生していないと判別し(ステップS16)、今回の単独運転判別動作を終了する。
【0068】
上述したように、パワコン制御装置20は、出力電力の1周期分(概ね、20ms)という短い時間に、出力周波数に最大3.5Hzの変化を与えるようになっている。そのためパワコン制御装置20は、この短い時間に、単独運転状態が発生したか否かを判別することが可能となっている。
【0069】
ここで、出力電力の1周期内に、出力周波数に3.5Hzの変化を与えるにあたって、出力周波数がどのように変化するかを表すグラフを、図7に示す。なお当該グラフにおいて、横軸は出力電力の位相角を、縦軸は出力周波数を、それぞれ表している。
【0070】
出力周波数に与える変化の量を変える間隔が1周期であると仮定すると、図7に点線で示すように、1周期内に3.5Hzの変化を与えるためには、3.5Hz分の大きな変化を一気に与える必要がある。なおこの間隔が1周期より長い場合も同様である。このように、変化付与の前後で出力周波数が急激に変化すると、単独運転状態が発生していない場合、例えば出力電力と系統電力との位相差が非常に大きくなる。その結果、直流電源2側に過電流が発生し、電力系統や負荷5への電力供給に大きな乱れが生じるおそれがある。
【0071】
しかし本実施形態のパワコン1によれば、図7に実線で示すように、変化量は0.5Hzずつ徐々に増大あるいは減少させるようになっており、出力周波数の変化は比較的緩やかとなっている。このように本実施形態の場合は、出力電力の1周期より短い間隔で、出力周波数に与える変化の量を段階的に変えるようになっており、出力周波数の変化を緩やかなものとすることが可能となっている。
【0072】
また先述した通り、第1から第16までの各区間の幅は、一定の位相角(2π/8)となっている。そのためパワコン1によれば、各区間の幅が一定の位相角とはなっていない場合に比べると、出力電力の波形を滑らかにすることが可能となっている。
【0073】
[パワコン制御装置の具体的構成について]
パワコン制御装置20は、上述した動作を行うように構成されるが、その具体的形態については特に限定されない。例えば、必要な各処理を主にソフトウェア処理によって実現する構成であっても良く、主にハードウェア処理によって実現する構成であっても良い。本実施形態におけるパワコン制御装置20の構成は、一例として図8に示す構成であるとする。当該構成について以下に説明する。
【0074】
図8に示すようにパワコン制御装置20は、中央処理回路21、電流振幅設定回路22、乗算器23、減算器24、制御器25、加算器26、三角波生成回路27、PWMコンパレータ28、電圧振幅算出回路29、および乗算器30などを備えている。
【0075】
中央処理回路21は、電圧検出回路18から電圧検出信号Vdが入力されるようになっており、当該信号に応じた各種の処理を実行する回路である。中央処理回路21は、周波数が調節された周波数信号(振幅は単位量とする)を出力する。また中央処理回路21は、連系リレー19へリレー切替信号Srを出力する機能も有している。
【0076】
電流振幅設定回路22は、出力電流の振幅を設定する回路である。電流振幅設定回路22は、標準的な出力電流の振幅(電力系統に整合するよう決められた値)が記録されており、この振幅に設定された振幅信号を出力する。
【0077】
乗算器23は、中央処理回路21から出力された周波数信号と電流振幅設定回路22から出力された振幅信号を受取り、これらを乗じたもの(出力電流指令)の信号を出力する。なおこの出力電流指令の信号は、通常時、パワコン1が出力する電流の波形の目標となる、電流指令波形を表すことになる。また減算器24は、電流検出回路17から電流検出信号Idが入力されるようになっており、出力電流目標値の信号と電流検出信号Idとの差を出力する。また制御器25は、減算器24の出力を受取り、出力電流相当の電圧を表す信号を出力する。制御器25から出力されるこの信号は、通常時、インバータ回路14から電力系統へ電流指令波形の電流が流れるときの電圧降下に対応した波形を表すことになる。
【0078】
電圧振幅算出回路29は、電圧検出信号Vdが入力されるようになっており、当該信号に基づいて、電力系統における電圧波形の振幅を算出する。そして電圧振幅算出回路29は、この算出された振幅に設定された振幅信号を出力する。乗算器30は、中央処理回路21から出力された周波数信号と電圧振幅算出回路29から出力された振幅信号を受取り、これらを乗じて生成した信号を出力する。乗算器30から出力されるこの信号は、通常時、電力系統における電圧波形を表すことになる。
【0079】
加算器26は、制御器25の出力と乗算器30の出力を受取り、これらを加算したもの(インバータ操作量)の信号を出力する。加算器26の出力信号が表す波形、つまり制御器25と乗算器30の出力を合わせて得られる波形は、先述した電圧指令波形である。
【0080】
PWMコンパレータ28は、非反転入力端子に加算器26の出力が入力され、反転入力端子に三角波生成回路27が生成する基準三角波の信号が入力される。PWMコンパレータ28はこれらの比較結果に応じた信号を、ゲート信号Sgとしてインバータ回路14へ出力する。
【0081】
このような構成のパワコン制御装置20は、以下に示す通りに動作する。中央処理回路21は、電圧検出信号Vdを継続的に受取り、系統周波数を検出する。そして中央処理回路21は、この検出された系統周波数と一致するように周波数信号を生成し、乗算器23へ出力する。
【0082】
そして乗算器22からPWMコンパレータ28までの一連の回路は、周波数信号、電流検出信号Id、および電圧検出信号Vdを反映させて、インバータ回路14をPWM制御するためのゲート信号Sgを生成する。ゲート信号Sgは、周波数や電圧振幅などにおいて、出力電力が系統電力と整合するように調節される。
【0083】
また先述した連系状態制御動作(ステップS1〜S4)は、中央処理回路21が中心となって実行される。すなわち中央処理回路21が、電圧検出信号Vdを監視することにより、基準レベルを超える電気的変動が生じたかを監視する(ステップS1)。
【0084】
そして基準レベルを超える電気的変動が検出された場合(ステップS1のY)、中央処理回路21が単独運転判別動作(ステップS12〜S16)を実行する。このとき中央処理回路21は、ステップS12の動作として、周波数信号の周波数を変えることにより、電流指令波形および電圧指令波形の周波数を変え、間接的に、出力周波数に変化を与えるようにする。そして更に単独運転状態が発生したと判別したとき(ステップS3のY)、中央処理回路21は、パワコン1の電力系統への連系が解除されるように、リレー切替信号Srを連系リレー19に送出する(ステップS4)。
【0085】
[変形例等について]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。本発明はその主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えて実施することが可能である。なお本実施形態に対する変形例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【0086】
本実施形態に係る「変化付与パターン」は、図4に示す通りの内容となっているが、この内容は、パワコン1の仕様や用途などに応じて、種々改変することが可能である。例えば、各区間の幅(本実施形態では交流電における2π/8の位相各分)や、変化量の数値の符号(+−)やその最大値(本実施形態では3.5Hz)などを、他の値としておくことが可能である。
【0087】
また本実施形態では、各区間を、一定の位相角ごとに区切られた区間としているが、他の形態としても構わない。例えば各区間を、一定ではない(全部又は一部が変化する)位相角ごとに区切られた区間としても良く、一定或いは一定ではない時間ごとに区切られた区間としても良い。
【0088】
また本実施形態では、単独運転状態の発生を検出するため、系統周波数が電力系統の正常周波数範囲から逸脱したかを直接監視するようにしている(ステップS13を参照)。但し単独運転状態の発生を検出する手法としては、他の手法が採用されるようにしても構わない。例えばパワコン制御装置20が図8に示す構成となっている場合において、先述した電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形(つまり、電圧検出信号Vdが表す波形)との差分に着目する手法も採用され得る。このような手法が採用された単独運転判別動作の流れについて、図9に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0089】
中央処理回路21は、変化付与パターンに従った、出力周波数への変化の付与を開始する(ステップS22)。この変化の付与は、周波数信号の周波数を変えることにより、電流指令波形や電圧指令波形の周波数が変わることで、間接的に実現される。なおステップS22の動作の趣旨は、先述したステップS12の動作と同様である。
【0090】
そして中央処理回路21は、当該変化を与えるようにしつつ、電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形との差分が所定閾値を超えたか(ステップS23)、および変化の付与を開始してから判別待機時間が経過したか(ステップS24)を監視する。なお判別待機時間は、出力周波数に最大量の変化が与えられるまでの時間として、例えば出力電力の1周期以内(例えば、位相角6π/8)に設定されている。
【0091】
ここで系統周波数が出力周波数の変化に追従しない場合(つまり単独運転状態が発生していない場合)は、電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形のズレ(偏差)が大きくなり、これらの波形の差分も大きくなる。一方で、系統周波数が出力周波数の変化に追従する場合(つまり単独運転状態が発生している場合)は、このような波形のズレは大きくならず、これらの波形の差分も大きくならない。
【0092】
そこで中央処理回路21は、電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形の差分が所定の閾値を超えたことを検出した場合には(ステップS23のY)、単独運転状態は発生していないと判別し(ステップS25)、今回の単独運転判別動作を終了する。
【0093】
また一方で、当該差分が閾値を超えることなく、変化の付与を開始してから判別待機時間が経過した場合には(ステップS24のY)、中央処理回路21は、単独運転状態が発生したと判別し(ステップS26)、今回の単独運転判別動作を終了する。なおここでの閾値は、単独運転状態が発生した場合には、電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形の差分が当該閾値を超えないように、単独運転状態が発生していない場合には当該閾値を超えるように、予め適切に設定された値である。
【0094】
なお電力系統における電圧波形と比較する波形としては、上述したように、電圧指令波形や電流指令波形が挙げられるが、波形のズレ(偏差)がより明瞭になる(そのため、単独運転状態の検出がより容易となる)点で、電流指令波形を採用する方がより好ましい。またここで説明した単独運転判別動作(ステップS22〜S26)では、電圧指令波形(或いは電流指令波形)と、検出した電力系統における電圧波形の差分に基づいて、系統周波数が出力周波数の変化に追従したことを検出するようになっている。
【0095】
このように当該単独運転判別動作(ステップS22〜S26)も、単独運転状態が発生したときには、系統周波数が出力周波数の変化に追従し、単独運転状態が発生していないときには追従しないことを利用して、単独運転を検出するようになっている。この点は、先に説明した単独運転判別動作(ステップS12〜S16)と同様である。
【0096】
また本実施形態に係る「変化付与パターン」では、変化量の増減が規則的となるように(つまり、前半は徐々に増大するように、かつ、後半は徐々に減少するように)設定されているが、この増減が不規則となるように設定することも考えられる。
【0097】
このようにすれば、単独運転状態が発生していない場合、出力電力と系統電力の差分を示す波形は、負側あるいは正側に大きく偏った形状となる。また単独運転状態が発生した場合には、当該波形はこのように偏った形状とはならない。この違いを利用して、単独運転状態の発生の有無を判別することが可能である。
【0098】
また周波数の変化量については、系統周波数が出力周波数に付与された変化に追従したか否かが判別されるまで、当該変化量を区間ごとに段階的に増大させるようにしても良い。この場合、追従したと判別された後、当該変化量を増加或いは減少させるようにしても良く、そのままの量に維持させるようにしても良い。なお当該変化量を増加或いは減少させるにあたっては、当該変化量を増加或いは減少させる速さ(緩急)が変えられるようになっていても良い。
【0099】
例えば当該変化量を区間ごとに0.6Hzずつ増大させる場合であって、かつ、第4区間において追従したと判別される場合を想定する。この場合、図10に示す「増加パターン」(第5区間以降も変化量が増大する)、「継続パターン」(第5区間以降は変化量がそのまま維持される)、および「減少パターン」(第5区間以降は変化量が減少する)の何れが実現されるようにしても構わない。
【0100】
また本実施形態では、検出される系統周波数が電力系統の正常周波数範囲から逸脱したときに、直ちに単独運転状態が発生したと判別するようにしているが(ステップS13、S15を参照)、その代わりに、逸脱した状態が一定期間(例えば、1〜数周期程度)連続した場合に、単独運転状態が発生したと判別するようにしても構わない。このようにすれば、当該判別に要する時間はやや長くなるが、当該判別の精度をより向上させる(より慎重に判別されるようにする)ことが可能となる。
【0101】
また本実施形態では、単独運転状態が発生したと判別されたときに、直ちに電力系統への連系を解除させる(連系リレー19を開く)ようにしているが(ステップS3、S4を参照)、その代わりに、単独運転状態が発生したと判別されてから一定時間(例えば、0.1秒程度)経過した後に、電力系統への連系を解除させるようにしても構わない。
【0102】
また、単独運転状態が発生したと判別された場合、電力系統への連系を解除させるとともに、単独運転状態の発生を知らせるための報知信号が出力されるようにしても構わない。また更に、単独運転状態が発生したと判別された場合、パワコン1から電力系統に出力される電流の振幅を減衰させること等により、電力系統に出力される電力が小さくなるようにしても構わない。
【0103】
[その他]
以上までに説明した通り、本実施形態に係るパワコン1(電力変換装置)は、直流電源2が発生させた直流電力を、出力電力(現在設定されている出力周波数の交流電力)に変換して出力するものとなっており、更に、この出力周波数に変化を与える機能部(変化付与部)を備えている。
【0104】
この変化付与部は、前記変化を与えておくべき変化付与期間(出力電力の2周期分)を、前記出力電力の周期より短い複数の区間(幅が2π/8の位相角である区間)に区切り、前記変化の量を、該区間ごとに変える(設定する)ようになっている。より具体的には、前記変化の量が最大量(3.5Hz)に達するまでは、該変化の量を前記区間ごとに段階的に(0.5Hzずつ)増大させ、該変化の量が最大量に達した後は、該変化の量を該区間ごとに段階的に(0.5Hzずつ)減少させるようになっている。
【0105】
そのためパワコン1によれば、出力周波数に最大量の変化を与えるにあたり、出力周波数に与える変化を出来るだけ緩やかにしつつ、これを実現することが可能となっている。すなわち、出力電力の1周期或いはそれ以上の間隔で徐々に変化量を変える場合に比べ、より少しずつ段階的に変化量を変えることにより、出力周波数に与える変化をより緩やかにすることが可能となっている。また交流電力の1周期未満の時間で速やかに変化を捉えることが容易となり、その変化に応じて速やかに変化量を変える事が可能となっている。
【0106】
なおこのような変化付与部を備えるようにした電力変換装置は、これまでに説明したようにパワコンとするだけでなく、例えば、交流電力によって回転駆動するモータ(交流電力の周波数(出力周波数)によって回転数が決まる)に利用することも可能である。このようにすれば、出力周波数の変化を緩やかなものとして、回転のムラや振動によるエネルギー損失を、極力抑えることが可能となる。
【0107】
またパワコン1は、より具体的には、電力系統に連系し、この電力系統における電力の周波数と略一致するように出力周波数を設定して、出力電力をこの電力系統に出力するようになっており、更に、単独運転状態の発生の有無を判別する機能部(単独運転判別部)をも備えている。
【0108】
そして変化付与部は、出力周波数に、意図的な誤差としての変化を与えるものであり、単独運転判別部は、出力周波数に変化が与えられた状況下で、電力系統における電力の周波数がこの変化に追従したことを検出することにより、単独運転状態の発生の有無を判別するようになっている。
【0109】
また変化付与部は、基準レベルを超える電気的変動が検出されることによって、単独運転状態の発生が疑われる状況となる度に、出力周波数に変化を与えるための付与動作を行うようになっており(ステップS1を参照)、単独運転判別部は、この付与動作が行われる度に、単独運転状態の発生の有無を判別するようになっている。なおこの電気的変動が系統周波数の変動である場合、パワコン1は当該付与動作を行うことにより、この周波数の変化を早期に捉えて、当該変化を速やかに増進させることが可能であると言える。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。また上記説明では、電気的な量を表す指標として主に「電力」を用いたが、矛盾のない限り、「電圧」や「電流」と読み替えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、電力系統に連系するパワーコンディショナ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 パワーコンディショナ(電力変換装置)
2 直流電源(分散電源)
3 系統電源
4 系統遮断機
5 負荷
11 ダイオード
12 コンデンサ
14 インバータ回路
15 インダクタ
16 コンデンサ
17 電流検出回路
18 電圧検出回路
19 連系リレー
20 パワコン制御装置
21 中央処理回路
22 電流振幅設定回路
23 乗算器
24 減算器
25 制御器
26 加算器
27 三角波生成回路
28 PWMコンパレータ
29 電圧振幅算出回路
30 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を、現在設定されている出力周波数の交流電力である、出力電力に変換して出力する電力変換装置であって、
前記出力周波数に変化を与える変化付与部を備え、
前記変化付与部は、
前記変化を与えておくべき変化付与期間を、前記出力電力の周期より短い複数の区間に区切り、
前記変化の量を、該区間ごとに設定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
電力系統に連系し、該電力系統における電力の周波数に応じて前記出力周波数を設定して、前記出力電力を該電力系統に出力する請求項1に記載の電力変換装置であって、
単独運転状態の発生の有無を判別する単独運転判別部を備え、
前記単独運転判別部は、
前記出力周波数に前記変化が与えられた状況下で、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かに基づいて、単独運転状態の発生の有無を判別することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記変化付与部は、
前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かが判別されるまで、該変化の量を前記区間ごとに段階的に増大させることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記変化付与部は、
変化付与期間において、前記変化の量が所定の最大量に達するまでは、該変化の量を前記区間ごとに段階的に増大させ、
該変化の量が該最大量に達した後は、該変化の量を該区間ごとに段階的に減少させることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変化付与部は、
単独運転状態の発生が疑われる状況となる度に、前記出力周波数に前記変化を与えるための付与動作を行うものであり、
前記単独運転判別部は、
前記付与動作が行われる度に、単独運転状態の発生の有無を判別することを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
電圧指令波形を算出し、出力する電圧の波形の目標が該電圧指令波形となるようにインバータ回路を制御することで、前記電力系統における電圧波形と略一致する波形の電圧を出力する請求項2から請求項5の何れかに記載の電力変換装置であって、
前記変化付与部は、
前記電圧指令波形における周波数を変えることにより、前記変化を与えるものであり、
前記単独運転判別部は、
前記電圧指令波形と、検出された前記電力系統における電圧波形との差分に基づいて、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かを判別することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
電圧指令波形を算出し、出力する電圧の波形の目標が該電圧指令波形となるようにインバータ回路を制御することで、前記電力系統における電圧波形と略一致する波形の電圧を出力する請求項2から請求項5の何れかに記載の電力変換装置であって、
出力する電流の波形の目標となる電流指令波形を決定するものであり、
前記電圧指令波形は、
検出された前記電力系統における電圧波形と、前記インバータ回路から該電力系統へ前記電流指令波形の電流が流れるときの電圧降下に対応した波形と、を合わせることで算出されるものであり、
前記変化付与部は、
前記電流指令波形における周波数を変えることにより、前記変化を与えるものであり、
前記単独運転判別部は、
前記電流指令波形と、検出された前記電力系統における電圧波形との差分に基づいて、前記電力系統における電力の周波数が前記変化に追従したか否かを判別することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
前記複数の区間の各々は、
前記出力電力における2π未満の一定の位相角ごとに区切られた区間であることを特徴とする請求項2から請求項7の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8の何れかに記載の電力変換装置と、
前記直流電力を発生させる直流電源と、を備え、
前記直流電力を交流電力に変換して、前記電力系統に供給することを特徴とする電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−16159(P2012−16159A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149697(P2010−149697)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】