説明

電力変換装置および電気自動車

【課題】スイッチング素子を制御する回路基板の温度上昇を抑制することのできる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、リアクトル8、放熱板6b、スイッチング素子SWを収めたパワーモジュール22と、冷却器25、スイッチング素子を制御する回路を実装した回路基板3と断熱材31を備える。冷却器25は、パワーモジュール22と一体化しており、PEユニット20を構成する。放熱板6bは、一端が冷却器25に接続しており、リアクトル8の上部に位置する。断熱材31は、放熱板6bと回路基板3との間に配置されている。放熱板6bと回路基板3との間に配置された断熱材31が、リアクトルの熱による回路基板への影響を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車が普及し、DCコンバータやインバータなどの電力変換装置が電気自動車に搭載されるようになってきている。電気自動車の車両駆動用モータは大きなトルクを出力するため、必要とする電流も大きい。そのため、メインバッテリの電力をモータ駆動に適した電力に変換する電力変換装置も大電流を扱うことになり、発熱量が大きい。他方、車両用のデバイスにはコンパクト性も求められる。電気自動車用の電力変換装置には、熱対策とコンパクト性の両立が求められる。なお、電力変換装置は、典型的には、直流を交流に変換するインバータ、あるいは、インバータと、直流電力の電圧を異なる電圧に変換する電圧コンバータの組み合わせである。なお、本明細書における「電気自動車」には、ハイブリッド車と燃料電池車も含まれる。
【0003】
電力変換装置の中でも特に発熱源となるのは、スイッチング素子(IGBTなどのいわゆるパワートランジスタや、それに並列接続されるフリーホイールダイオードなどのパワー素子)と、リアクトルである。リアクトルは、よく知られているように、コイルを主体とする受動素子であり、電力変換装置にあっては、主に、パワートランジスタに入力される電流あるいはパワートランジスタの出力電流を平滑化するのに用いられる。大電流の電送経路は短い方がよいため、リアクトルはパワートランジスタなどの電子部品の近傍に配置される。
【0004】
パワートランジスタなどの部品と比較するとリアクトルはサイズが大きく、コンパクト性と放熱性を両立するのに工夫を要する。例えば特許文献1には、パワートランジスタとリアクトルを一つのケースにコンパクトに収めるとともに、リアクトルのコアをケースに接触させ、リアクトルの熱をケースに効率良く伝達して放熱する技術が提案されている。また、特許文献2には、リアクトルをスイッチング素子よりも冷媒の流れの下流側に配置し、リアクトルとスイッチング素子で構成されるデバイス全体の冷却効率を改善する技術が提案されている。さらに、特許文献3には、パワートランジスタとリアクトルを別々のケースに収容し、それぞれに放熱用の金属板を配置することで冷却効率を高める技術が開示されている。また、特許文献4には、スイッチング素子とリアクトルとそれらを冷却する冷却器をコンパクトに収めた電力変換装置が提案されている。その電力変換装置の冷却器は、平型の複数の冷媒通路を有しており、スイッチング素子を収めた複数の平型のパワーモジュールと冷媒通路が交互に積層した構造を有している。リアクトルは、最外側の隣接する2枚の冷媒通路に挟まれている。即ち、その電力変換装置では、リアクトルと複数のパワーモジュールがそれぞれ平型の冷媒通路にサンドイッチされている。なお、スイッチング素子をパワーモジュールとして他の回路(スイッチング素子を制御する回路など)と別体にするのは、スイッチング素子を集中的に冷却するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−113540号公報
【特許文献2】特開2010−277747号公報
【特許文献3】特開2011−078217号公報
【特許文献4】特開2010−225723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気自動車、特に、ハイブリッド車の高性能化が進み、搭載されるモータも高出力になってきている。電力変換装置もさらに大電流化が進み、これに伴い、これまで以上に高い冷却能力が求められている。その一方で、車載機器にはさらなるコンパクト性も求められる。他方、電力変換装置は、パワートランジスタなどのスイッチング素子をパッケージ化したパワーモジュールの他、パワーモジュール内のスイッチング素子を制御する回路を実装した回路基板を含む。回路基板は、パワーモジュールとの間の電力損失をできるだけ小さくするため、パワーモジュールの近傍に配置される(回路基板上の回路とスイッチング素子は、本来は一枚の基板上に実装することが好ましいが、発熱量の大きいスイッチング素子の冷却ために別々の基板に実装される)。電力変換装置全体をコンパクトにするため、回路基板は当然にリアクトルとも近接する。発明者らの検討によると、回路基板は、大きな発熱源とはならないが、パワーモジュールやリアクトルの発熱により雰囲気温度が上昇すると、回路基板への熱害も無視できなくなることが判明した。本明細書は、上記課題を解決する。本明細書が開示する技術は、電力変換装置において、スイッチング素子を制御する回路基板の温度上昇を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する技術は、冷却器がパワーモジュールだけでなくリアクトルと回路基板も冷却するが、リアクトルから冷却器への伝熱経路と回路基板から冷却器への伝熱経路を分離し、回路基板の周囲に熱が溜まり難くする。本明細書が開示する技術の一実施形態の電力変換装置は、リアクトルと、スイッチング素子を収めたパワーモジュールと、パワーモジュールと一体化している冷却器と、放熱板と、回路基板と、断熱材を備える。放熱板は、一端が冷却器に接続しているとともに、リアクトルの上部に位置する。放熱板は、リアクトルの輻射を受けるが、その熱は冷却器を通じて外部に放出される。スイッチング素子を制御する回路を実装した回路基板は、リアクトルと放熱板の上部に配置されている。さらに断熱材が、放熱板と回路基板との間に配置されている。放熱板と回路基板との間に配置した断熱材が、リアクトルからの熱輻射を受けた放熱板の熱の回路基板への影響を低減する。断熱材は、好ましくは、放熱板の回路基板側の面に設けられている。そのような配置は、リアクトルの熱を回路基板に届き難くする。なお、熱の伝達経路に関しては、主に部品を支持する部材が伝熱経路となり得るので、リアクトルを支持するブラケットが、上記の放熱板の機能を兼ね備えていてもよい。
【0008】
本明細書が開示する電力変換装置は、傾斜した上面を有するドライブトレインと組み合わせて電気自動車に搭載されることにも利点がある。即ち、電力変換装置は、PEユニットが低い側に位置しリアクトルが高い側に位置するように傾斜上面に固定されるとよい。リアクトルが高い側に位置すると、電力変換装置のケース内部の温かい空気はリアクトルの上方に集まる。しかし、上記の電力変換装置では、リアクトルの熱はリアクトルの下側から効率よく放熱されるので、ケース内部に残留する熱が少なくなり、リアクトル上方に熱がこもり難くなる。しかも、第2冷却器が電力変換装置の底部に位置するので、リアクトルやPEユニットとドライブトレインとの熱的干渉を遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の電力変換装置の側面図である。
【図2】実施例の電力変換装置の平面図である。
【図3】PEユニットの模式的斜視図である。
【図4】第1変形例の電力変換装置の側面図である。
【図5】第2変形例の電力変換装置の側面図である。
【図6】第3変形例の電力変換装置の側面図である。
【図7】第4変形例の電力変換装置の側面図である。
【図8】エンジンコンパートメント内のデバイスレイアウトを示す斜視図である。
【図9】電力変換装置を載せたドライブトレインの模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して実施例の電力変換装置10を説明する。図1は側面図であるが、理解を助けるために、図1は、ケース4とそのカバー2を断面で描き(ハッチングを付してある)、ケース内部の部品は側面図として描いてある。図2は平面図であるが、電力変換装置10の上方に位置するカバー2と回路基板3を取り外したところを描いてある。
【0011】
電力変換装置10は、電気回路的には、バッテリの電圧を変換する電圧コンバータと、直流を交流に変換するインバータからなる。電圧コンバータとインバータの電気回路は、具体的には、リアクトル8と、平滑化コンデンサ9と、複数のパワーモジュール22の内部のスイッチング素子SWと、パワーモジュール22内のスイッチング素子SWを制御する回路基板3で構成される。よく知られているように、リアクトルは、電力変換装置にあって、スイッチング素子とともに電圧変換回路を構成する。電圧コンバータもインバータも、パワートランジスタと還流ダイオードが並列接続したスイッチング回路を複数有する。スイッチング回路を構成するパワートランジスタや還流ダイオードがスイッチング素子SWに相当する。一つ又は2つのスイッチング回路が一つの独立した基板に搭載され、それを一つのパワーモジュール22と称する。なお、図1〜図3では、図面を理解し易くするために6個のパワーモジュールのみを描いてあるが、電力変換装置10はさらに多くのパワーモジュールを備えていてもよい。電力変換装置10を構成する他の部材としては、パワーモジュール22を冷却する冷却器25、第1ブラケット5、第2ブラケット6がある。冷却器25は、リアクトル8、及び、回路基板3も冷却する。また、第1ブラケット5は、回路基板3、冷却器25とパワーモジュール22のユニット(PEユニット)をケース4に対して支持する部材である。第2ブラケット6は、冷却器25とリアクトル8を連結する部材である。なお、第2ブラケット6は、冷却器25に対してリアクトル8を支持する。
【0012】
冷却器25とパワーモジュール22は一体化しており、それをPEユニット20と称する。PEユニット20について説明する。図3に、PEユニット20の模式的斜視図を示す。冷却器25では、2本のパイプ29a、29bが、複数の平型の冷媒通路21を貫いており、複数の冷媒通路21(冷却プレート)を、それらが平行に並ぶように支持している。2本のパイプ29a、29bと、夫々の冷媒通路21は、内部で通じており、一方のパイプ29aから供給される冷媒は、各冷媒通路21を通り、他方のパイプ29bから排出される。冷媒は、典型的には水、あるいはLLC(Long Life Coolant)でよい。スイッチング素子SWを収めたパワーモジュール22は、隣接する2枚の冷媒通路21の間に挟まれている。すなわち、PEユニット20は、平型の複数のパワーモジュール22と冷却器25の複数の平型冷媒通路21が交互に積層されて構成されたものである。PEユニット20では、平型のパワーモジュール22の両面を冷媒が通るので、スイッチング素子SWを効率よく冷却することができる。なお、各パワーモジュール22(スイッチング素子SW)からはリード線22aが伸びている。このリード線22aは、図1に示すように回路基板3に繋がっている。また、PEユニット20の後端に相当する平型冷媒通路を特に符号21eで表す。
【0013】
図1、図2に戻り電力変換装置10の内部構造の説明を続ける。平滑化コンデンサ9、PEユニット20、及び、回路基板3は、第1ブラケット5に支持される。リアクトル8は第2ブラケット6に支持される。平滑化コンデンサ9、PEユニット20、回路基板3、及び、リアクトル8は、いずれかのブラケットに支持されてケース4に収容される。第1ブラケット5は、ケース4の上方に固定され、カバー2で上から押さえられて固定される。図2によく示されているように、平面視すると、第1ブラケット5は、PEユニット20とリアクトル8を囲んでいる。
【0014】
図1に示すように、PEユニット20は、第1ブラケット5から下方に伸びる2本のステー5bに挟まれて固定される。すなわちPEユニット20は、その上方から第1ブラケット5に支持される。図1において左側のステー2bとPEユニット20の端部との間にはバネ13が嵌挿されており、このバネ13が、2本のステー5bの間でPEユニット20を付勢し、固定している。なお、バネ13は、冷媒通路21とパワーモジュール22を積層方向に押圧し、これによって冷媒通路21とパワーモジュール22はしっかりと密着することになり、パワーモジュール22の熱がよく冷媒通路21に伝達される。
【0015】
回路基板3には、パワーモジュール22内の素子を制御する回路が実装されている。回路基板3は、第1ブラケット5から上方に伸びるステー5aによって、PEユニット20とリアクトル8の上方に支持される。図1に示されているように、パワーモジュール22から伸びているリード線22aが回路基板3に繋がっている。
【0016】
リアクトル8は、第2ブラケット6(放熱板)によって支持される。第2ブラケット6は、ステー6aと覆い部6bから構成されており、第2ブラケット6の端部に相当するステー6aの端部が、PEユニット20の積層体の端部冷媒通路21eの端面に固定される。ステー6aの先端に覆い部6bが連なっている。覆い部6bは、リアクトル8のほぼ上半分を覆っている。覆い部6bの天井からステー6cが伸びており、リアクトル8はそのステー6cによって支持されている。なお、リアクトル8は、平行に並んだ2個のコイル(巻き線は1本)とそれらを貫通する1本のコアで構成されている。
【0017】
第1ブラケット5は、ステー5a、5bを含めて一枚の金属板からプレス加工で製造される。第2ブラケット6は、ステー6a、覆い部6b、及び、ステー6cを含めて、一枚の金属板からプレス加工で製造される。
【0018】
第2ブラケット6の覆い部6bの上面に断熱シート31(断熱材)が貼着されている。別言すれば、回路基板3と第2ブラケット6の覆い部6bの間に断熱シート31が配置される。断熱材は、例えばフェノールフォームで作られる。フェノールフォームの中でも特定の種(例えばA種フェノールフォームと呼ばれる材料)は、その熱熱伝導率が0.022[W/mK]以下である。この値は、乾燥空気の熱伝導率(0.0241[W/mK])よりも小さく、断熱性能が非常に高い。
【0019】
第2ブラケット6によって、PEユニット20とリアクトル8は、空隙を隔てて隣り合うように支持される。また、第1ブラケット5によって、PEユニット20の上方に回路基板3が支持される。図1によく示されているように、回路基板3は、リアクトル8の上方(覆い部6bの上方)に空隙及び断熱シート31を隔てて配置される。また、図1によく示されているように、第2ブラケット6は、冷却器25の端部冷媒通路21eとリアクトル8に接しているだけで他の部材には接していない。また、リアクトル8は、第2ブラケット6の覆い部6b(ステー6c)とバスバー7(後述)に接しているだけで他の部材には接していない。
【0020】
図2によく示されているように、PEユニット20とリアクトル8の側方に、4個の平滑化コンデンサ9が並んでいる。平滑化コンデンサ9は、リアクトル8を流れる電流を平滑化するためのものである。電圧の変換(昇圧、あるいは、降圧)は、リアクトル8に流れる電流をチョッピングすることによって達成される。チョッピングする毎にリアクトル8を流れる電流が脈動するが、平滑化コンデンサ9がその脈動を抑える。コンデンサ9も第1ブラケット5に支持されている。リアクトル8とコンデンサ9はバスバー7で電気的に接続されている。バスバー7は、リアクトル8の下方から出ており、リアクトル8の側方を通り、コンデンサ9に達している。
【0021】
電力変換装置10の構造の利点を説明する。電力変換装置10の冷却器25は、主としてパワーモジュール22を冷却するが、それ以外にも回路基板3とリアクトル8も冷却する。回路基板3の熱は、第1ブラケット5を通じて冷却器25へと伝わる。また、リアクトル8の熱は、第2ブラケット6を通じて冷却器25へと伝わる。特に、第2ブラケット6は、リアクトル8の熱を放出する放熱板の役割を果たす。第2ブラケット6は、その一端が冷却器25に連結しており、またその一部がリアクトル8の上部に位置している。なお、第1ブラケット5、第2ブラケット6は、ともに金属板で作られており熱伝導性がよい。第2ブラケット5と第2ブラケット6は相互に接触していないから、伝熱経路が交錯することがない。特に、リアクトル8の熱が、回路基板3まで伝わることはない。また、リアクトル8はその上方で回路基板3とも隣接するが、リアクトル8の上部は第2ブラケット6の覆い部6bで覆われているため、リアクトル8に熱せられた周囲の空気が回路基板3の周りへ流れていくことがない。さらに、リアクトル8とPEユニット20の間の空隙も、リアクトル8からの伝熱経路と回路基板3からの伝熱経路を分離することに寄与している。
【0022】
さらに、覆い部6bの上面には断熱シート31が貼着されている。断熱シート31(断熱材)が、第2ブラケット6(放熱板)と回路基板3との間に配置されている。より詳しくは、断熱シート31は、第2ブラケット6の回路基板3側の面に取り付けられている。断熱シート31は、覆い部6b(第2ブラケット6)と回路基板3の間を熱的に遮断する。特に、覆い部6b(第2ブラケット6)は、リアクトル8の熱を奪ってその温度が上昇するが、断熱シート31が覆い部6bの輻射熱を遮断し、回路基板3に放射されることを防止する。このように電力変換装置10では、リアクトル8と回路基板3の伝熱経路を分離しており、リアクトル8の熱が回路基板3に伝わり難い構造を実現している。即ち、上記した構造によって、回路基板3が熱的に保護される。
【0023】
次に、電力変換装置の変形例を説明する。図4は、第1変形例の電力変換装置110の側面図である。この電力変換装置110は、図1の電力変換装置10の構成に加え、リアクトル8と覆い部6bの内側との間に絶縁シート112を配置したものである。絶縁シート112を配置することによって、覆い部6bとリアクトル8の間の隙間を狭くすることができる。これによって、電力変換装置全体をコンパクトにすることができる。あるいは、覆い部6bとリアクトル8の間の隙間を狭くした分だけ、覆い部6bの厚みを厚くし、覆い部6bの熱伝導率を高めることができる。絶縁シート112は、熱伝導率の大きい材料で作られているとよい。
【0024】
図5は、第2変形例の電力変換装置210の側面図である。この電力変換装置210は、第2ブラケット6の覆い部6bの全体を断熱シート213で覆っている。その他の構成は図1の電力変換装置10と同じである。電力変換装置20は、リアクトル8を支持しているとともに覆っている覆い部6bの全体をさらに断熱シート231で覆うことによって、リアクトル8の熱をできるだけ覆い部6bの外側に漏れないようにしている。なお、温度の高い空気は上方に移動しようとするので、リアクトル8の下方は覆い部6b及び断熱シート231で覆わずともよい。さらに、本変形例では、リアクトル8の下面とケース4の底面の間に伝熱材を充填することも好適である。リアクトル8の熱を、第2ブラケット6だけでなく、伝熱材とケース4を使って発散することができる。
【0025】
図6は、第3変形例の電力変換装置310の側面図である。この電力変換装置310では、断熱シート331を、覆い部6bの上面ではなく、回路基板3とリアクトル8の間に位置する第1ブラケット5の一部の下面に貼着している。その他の構成は図1の電力変換装置10と同じである。断熱シート331を、回路基板3と覆い部6bの間であって第1ブラケット5の下面に貼着する構成であっても、覆い部6bの輻射熱を遮断できる。それによって、回路基板3を熱的に保護することができる。
【0026】
図7は、第4変形例の電力変換装置410の側面図である。この電力変換装置410では、冷却器に対してリアクトル8を支持する第2ブラケット6(放熱板)の覆い部406bが、容器状にリアクトル8を覆っているのではなく、リアクトル8をコの字状に覆っている例である。その他の構成は図1の電力変換装置10と同じである。断熱シート31は、コの字状の覆い部406bの上面、即ち、回路基板3側の面に貼着されている。図7の実施形態によっても、回路基板3を熱的に保護する効果が期待できる。
【0027】
図8、図9を参照して電力変換装置10(あるいは、電力変換装置110、210、310)を搭載した自動車90を説明する。自動車90は、エンジンEGとモータを搭載したハイブリッド車である。自動車90は、モータを駆動するため、電力変換装置10(インバータ)を搭載する。電力変換装置10は、エンジンEG、ドライブトレイン50とともに、エンジンコンパートメントEC内に搭載される。エンジンEGとドライブトレイン50は、ラジエータRTの後方に配置される。エンジンEGとドライブトレイン50は、横方向に並んで配置される。ドライブトレイン50の側方には、バッテリBTが配置される。ドライブトレイン50は、2個のモータMG1とMG2、及び、動力源(エンジンとモータ)の出力を車軸に伝達するトランスミッションTMを内蔵している。トランスミッションTMには、エンジンEGの出力軸も係合している。図9に示すように、ドライブトレイン50では、2個のモータMG1、MG2の出力シャフト51、52、及び、トランスミッションTMのメインシャフト53(エンジン出力軸に相当する)の合計3本の主たるシャフトが平行となっている。図9に示すように、モータMG1はやや上方に位置する。2個のモータMG1、MG2とトランスミッションTMは、3本のシャフトが車両の横方向(図中のY軸方向)に伸びる向きに配置される。2個のモータMG1、MG2とトランスミッションTMのそのような配置により、ドライブトレイン50は、車両前側(図中、X軸の正方向)が低く、車両後側(図中、X軸の負方向)が高くなっている傾斜上面50aを有している。その傾斜上面50aに電力変換装置10が固定されている。電力変換装置10は、PEユニット20が低い側(車両前側)に位置しリアクトル8が高い側(車両後側)に位置するように傾斜上面50aに固定される。そのため、冷却器25へ冷媒を通すパイプ29が、電力変換装置10の車両前側の側面から飛び出している。パイプ29には冷媒管55が連結されている。冷媒管55を通じて冷媒が冷却器25へ供給され、また冷却器25から排出される。
【0028】
電力変換装置10は、リアクトル8が高い側に位置し、その上に回路基板3が位置する。電力変換装置10内で熱い空気は、上方へ移動する。ここで、前述したように、リアクトル8はその上部が第2ブラケット6の覆い部6bに覆われており、さらにその覆い部6bの上面に断熱シート31(231、331)が配置されているので、リアクトル8が発する熱は覆い部6bの内側に留まり、その上方に位置する回路基板3の周りには達しない。従って、回路基板3が熱的に保護される。
【0029】
実施例の電力変換装置に関する留意点を述べる。PEユニット20は第1ブラケット5によって上方から支持されており、リアクトル8は第2ブラケット6によって上方から支持されている。PEユニット20とリアクトル8は、それらの側方から支持されていてもよい。PEユニット20と回路基板3は、第1ブラケット5を介してケース4に支持されており、ケース4から熱的に分離されている。リアクトル8は第2ブラケット6によってPEユニット20に対して支持されており、やはりケース4からは熱的に分離されている。
【0030】
熱の伝達経路に関しては、主に部品を支持する部材が伝熱経路となり得る。そこで、実施形態の電力変換装置の一態様では、冷却器と回路基板を支持するブラケットと、リアクトルを支持するブラケットを完全に分離し、伝熱経路を分離する。さらに、リアクトルの熱を冷却器へ伝達するブラケットと回路部品との間に断熱材を配置し、リアクトルの熱を回路部品に伝わり難くする。実施例の技術は、2個のブラケットと断熱材を採用することによってリアクトルと回路基板との伝熱経路を分離し、回路基板の温度上昇を抑制する。なお、「ブラケット」とは、一般に、部品(この場合はリアクトルなど)を固定する部材を示す語である。明細書にて説明する形状の他は、その形状に特段の制約はないことに留意されたい。
【0031】
本明細書が開示する電力変換装置の一態様は、リアクトルと、スイッチング素子を収めたパワーモジュールと、スイッチング素子を制御する回路を実装した回路基板を備える。ここでの「パワーモジュール」とは、電圧コンバータやインバータの回路の中から集中的に冷却したい素子(IGBTや還流ダイオード)を他の制御回路から独立させた基板を意味する。実施形態の電力変換装置の一態様は、冷却器と、第1及び第2ブラケットを備える。冷却器はパワーモジュールと一体化している。これは、冷却すべき最重要素子がスイッチング素子だからである。以下、スイッチング素子を収めたパワーモジュールとそれを冷却する第1冷却器が一体化したユニットを、パワー素子ユニット、略してPEユニットと称する。第1ブラケットは、回路基板を支持しているとともに、回路基板の下方に位置するようにPEユニットを支持する。第2ブラケットは、一端が冷却器に固定されており、回路基板の下方に位置するようにリアクトルを支持しているとともに、リアクトルの上部を覆っている。ここで、第1ブラケットと第2ブラケットは直接には接していない。なお、以下では、第2ブラケットにおいてリアクトルの上部を覆っている部分を「覆い部」と称する。そして、一実施形態の電力変換装置は、覆い部とその上方に位置する回路基板との間に、断熱材が配置される。
【0032】
一実施形態においては、回路基板の熱は、第1ブラケットを通じて冷却器へと伝わる。リアクトルの熱は、第2ブラケットを通じて冷却器へと伝わる。第1ブラケットと第2ブラケットは直接には接していないので、リアクトルの熱は回路基板への伝わり難くなる。また、リアクトルの熱によって周囲の空気も熱せられるが、第2ブラケットの覆い部がリアクトルの上部を覆っているので、加熱された空気は覆い部よりも上へは移動し難い。覆い部の上方には回路基板が配置されているが、リアクトルの熱によって加熱された空気は、回路基板には届き難い。その上さらに、回路基板と第2ブラケットの覆い部との間に断熱材を配したので、覆い部の輻射により回路基板が熱せられることが妨げられる。以上の構成により、回路基板の温度上昇が抑制される。
【0033】
断熱材は、その熱伝導率が空気の熱伝導率(乾燥空気の場合で0.0241[W/mK])よりも小さいものが好ましい。そのような断熱材の材料としては、例えば、フェノールフォームがある。
【0034】
本明細書が開示する電力変換装置さらに別の実施形態は、覆い部の内側とリアクトルとの間に絶縁シートが配置されているとよい。絶縁シートを配置することによって、覆い部とリアクトルの間の隙間を狭くすることができる。これによって、電力変換装置全体をコンパクトにすることができる。あるいは、覆い部とリアクトルの間の隙間を狭くした分だけ、覆い部の厚みを厚くし、覆い部の熱伝導率を高めることができる。
【0035】
冷却器の一態様は、複数の平型冷媒通路が平行に並んでいる構造を有している。そして、平型の複数のパワーモジュールの各々が、隣接する平型冷媒通路の間に挟まれており、積層体を構成している。このとき、第1ブラケットは、その積層体を両側から挟んで支持しているとよい。また、第2ブラケットの一端が、積層体の端に位置する平型冷媒通路に固定されているとよい。即ち、積層体の端に位置する平型冷媒通路が、リアクトルの冷却と回路基板の冷却に主に寄与する。他の平型冷媒通路は、パワー素子モジュール(スイッチング素子)の冷却専用とすることができる。パワー素子モジュールの冷却を担当する平型冷媒通路と、リアクトル/回路基板の冷却を担当する平型冷媒通路を分離することによって、伝熱シミュレーションが行い易くなり、熱的設計が容易になる。熱的設計が容易になるということは、精緻な熱的設計ができることを意味し、冷却効率向上が期待できる。
【0036】
断熱シートの材料の一例としてフェノールフォームを挙げたが、断熱シートはこれに限られるものではない。断熱シートは、その熱伝導率が空気の熱伝導率よりも小さいことが望ましいが、本明細書が開示する技術は、熱伝導率が空気の熱伝導率よりも大きい断熱シートの利用を除外するものではない。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
2:カバー
3:回路基板
4:ケース
5:第1ブラケット
6:第2ブラケット
6a、6c:ステー
6b:覆い部(放熱板)
7:バスバー
8:リアクトル
9:平滑化コンデンサ
10:電力変換装置
13:バネ
20:パワー素子ユニット(PEユニット)
21:冷媒通路
22:パワーモジュール
25:冷却器
31、231、331:断熱シート(断熱材)
50:ドライブトレイン
50a:傾斜上面
90:自動車
110、210、310:電力変換装置
112:絶縁シート
406:放熱板
EC:エンジンコンパートメント
EG:エンジン
MG1、MG2:モータ
TM:トランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置であって、
リアクトルと、
スイッチング素子を収めたパワーモジュールと、
パワーモジュールと一体化している冷却器と、
一端が冷却器に接続しているとともに、リアクトルの上部に位置している放熱板と、
リアクトルと放熱板の上部に配置されており、スイッチング素子を制御する回路を実装した回路基板と、
放熱板と回路基板との間に配置されている断熱材と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
断熱材は、放熱板の回路基板側の面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置であって、バッテリの電力を走行用モータに適した電力に変換するための電力変換装置と、
傾斜した上面を有するドライブトレインと、
を備えており、
電力変換装置が、パワーモジュールと冷却器のユニットが低い側に位置しリアクトルが高い側に位置するように前記傾斜上面に固定されていることを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110856(P2013−110856A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254092(P2011−254092)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】