電力変換装置及びそれを備えた移動体
【課題】電力変換装置の冷却性能の向上による電力変換装置の小型化にある。
【解決手段】熱伝導性を有する樹脂22に、インバータケース10内に配設された制御基板15に複数実装されると共に、発熱量が異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15と物理的に非接触状態で、発熱量の大きい電子部品或いは発熱量の大きい電子部品に設けられた放熱器23を埋め込み、樹脂22に熱伝達された発熱量の大きい電子部品の発熱をインバータケース10に熱伝達する。
【解決手段】熱伝導性を有する樹脂22に、インバータケース10内に配設された制御基板15に複数実装されると共に、発熱量が異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15と物理的に非接触状態で、発熱量の大きい電子部品或いは発熱量の大きい電子部品に設けられた放熱器23を埋め込み、樹脂22に熱伝達された発熱量の大きい電子部品の発熱をインバータケース10に熱伝達する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動機に供給される電力を制御する電力変換装置及びそれを備えた移動体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電動機を駆動源とする移動体、例えば電気自動車,ハイブリッド自動車などの電動車両においては、バッテリから電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置の小型化の検討が進められている。これは、電力変換装置の低価格化に伴う電動車両の低価格化,電力変換装置の軽量化に伴う電動車両の燃費の向上或いは一充電あたりの走行距離の向上,電動車両内における電力変換装置の実装スペースの縮小化などのためである。
【0003】電力変換装置は、密閉容器内に配設された基板に半導体素子などの電子部品が実装されて構成されている。また、電力変換装置は、電子部品の一部が自己の動作によって発熱し、電子部品の表面限界温度を超えることから、その電子部品の発熱を冷却できるように構成されている。例えば送風機からの冷却空気を密閉容器内に循環させ、電子部品の発熱を冷却するものや、冷却流体を各電子部品に分散対流させ、電子部品の発熱を冷却するものなどがある。
【0004】また、電子部品の冷却としては、従来より次の方法が知られている。例えば特開平8−125364号公報,特開2000−59058号公報に記載されたものでは、熱伝導性を有する部材を介して電子部品の表面に放熱部材を設け、電子部品の発熱を空気中に放熱している。特開平11−238985号公報に記載されたものでは、複数の電子部品の表面に単一の放熱部材を設け、複数の電子部品の発熱を空気中に放熱している。特開平10−209358号公報に記載されたものでは、熱伝導性を有する部材を介して電子部品が実装された基板の電子部品実装側とは反対側の面に冷却板を設け、電子部品の発熱を冷却板に伝達して冷却している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電力変換装置の小型化においては、電子部品の発熱量が変わらないので、熱的条件が厳しくなり、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品への熱影響が懸念される。小発熱量の電子部品への熱影響が大きい場合には、誤動作或いは寿命低下などに至る恐れもある。従って、電力変換装置における冷却性能の向上が望まれている。しかも、電力変換装置の小型化の観点から、電力変換装置を大型化或いは複雑化することなく実現できることが望ましい。
【0006】しかしながら、送風機からの冷却空気を密閉容器内に循環させる或いは冷却流体を各電子部品に分散対流させるという従来の技術では、密閉容器内に冷却媒体を導くための機構を密閉容器に設けなければならず、電力変換装置の大型化或いは複雑化を招く。冷却流体を用いるものにあっては、流体の漏れを防止するための機構を密閉容器に設けなければならず、電力変換装置の更なる大型化或いは複雑化を招く。
【0007】また、放熱部材を電子部品に設けるという従来の技術では、電子部品の発熱が密閉容器内部空間に伝熱し、密閉容器内部空間の温度を上昇させ、小発熱量の電子部品に熱影響を及ぼす。また、密閉容器内に放熱部材を設けるという従来の技術では、電力変換装置の大型化或いは複雑化を招く。さらに、高発熱量の複数の電子部品それぞれに放熱部材を設けるという従来の技術では、電力変換装置の更なる大型化或いは複雑化を招く。
【0008】さらに、電子部品は発熱量に係わらず密閉容器内の基板に分散して実装されているので、複数の電子部品に単一の放熱部材を設けるという従来の技術では、高発熱量の電子部品の発熱が小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品に伝達され易くなり、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品への熱影響が避けられない。また、上記の従来の技術と同様に、放熱部材による電力変換装置の大型化或いは複雑化が避けられない。
【0009】さらに、電子部品は発熱量に係わらず密閉容器内の同一の基板に実装されているので、基板の電子部品実装側とは反対側の面に冷却板を設けるという従来の技術では、高発熱量の電子部品の発熱が基板を介して小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品に伝達されるので、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品への熱影響が避けられない。
【0010】本発明の代表的な目的は、小型化を図った電力変換装置及びそれを備えた移動体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の基本的な特徴は、熱伝導性を有する絶縁樹脂を、密閉容器内に配設された基板に複数実装されると共に、発熱量が異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び基板と物理的に非接触状態で、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段を埋め込み、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の発熱或いは放熱手段に熱伝達された発熱を密閉容器に熱伝達する絶縁部材に熱伝達することにある。
【0012】絶縁樹脂は、熱伝導性を有する充填材が混入されたものであり、空気よりも熱伝導率が高いものである。具体的には、シリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材がウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂に混入されたものであり、基板表面から1mm以上の間隔を空けて密閉容器内面と接触するように、密閉容器と基板との間に充填されている。自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品自身或いはその電子部品に設けられた放熱手段は、基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する。従って、上記のように絶縁樹脂を充填することによって、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び基板と物理的に非接触状態で、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段を絶縁樹脂に埋め込むことができる。
【0013】自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品としては、例えばコンデンサなどに代表される容量素子,レギュレータICや変圧器などに代表される電圧制御用素子,マイコンチップに代表される演算処理用素子などがある。
【0014】密閉容器は、熱放熱性を有する金属製のもの或いは絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が一体形成されたもの若しくは絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が取り付けられたものである。冷却手段は、冷却媒体を流通させる流路或いは熱放熱性を有する部材で構成されたものである。
【0015】本発明によれば、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品(発熱量の大きい電子部品)の発熱のほとんどは、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品(発熱量の小さい電子部品)、基板及び密閉容器内部空間にはほとんど熱伝達されず、絶縁樹脂を介して密閉容器に効率よく熱伝達され、密閉容器から或いは冷却手段を介して外部に放熱される。従って、電力変換装置の冷却性能を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。電力変換装置は、例えば電動機に供給される電力を制御するものであり、例えば交流電力を直流電力に変換する整流装置,直流電力を交流電力に変換するインバータ装置,整流装置とインバータ装置の組み合せであって、入力された直流電力を所望の直流電力に変換するDC−DCコンバータ装置などがある。
【0017】本発明の実施例では、電動機を唯一の駆動源とする電気自動車,電動機及び内燃機関を駆動源とするハイブリッド自動車において、蓄電手段から出力された直流電力を交流電力に変換して電動機に供給するインバータ装置を例にとり説明する。尚、以下説明する本発明の実施例の構成は、インバータ装置に限らず、整流装置及びDC−DCコンバータ装置などにも適用できる。
【0018】図10乃至図12は、本発明の実施例であるインバータ装置が適用される自動車の構成例を示す。図10は、電動機を唯一の駆動源とする電気自動車の構成を示す。39は車体である。車体39の前部には、両端に車輪40a,40bを設けた車軸42が回転可能に取り付けられている。すなわち前輪が取り付けられている。車体39の後部には、両端に車輪41a,41bを設けた車軸43が回転可能に取り付けられている。すなわち後輪が取り付けられている。車軸42にはギア44を介して電動機1が機械的に接続されている。電動機1にはインバータ装置100が電気的に接続されており、バッテリ20から供給された直流電力が三相交流電力に変換され供給される。インバータ装置10には上位制御装置21が電気的に接続されており、アクセルの踏込みに対応する指令信号などが入力される。
【0019】図11は、電動機及び内燃機関を駆動源とするハイブリッド自動車の構成を示す。ハイブリッド自動車は、内燃機関と電動機を切り替えて一方の車輪を駆動するものである。車軸42にはギア44を介して内燃機関38が機械的に接続されている。内燃機関38には電動機1が機械的に接続されている。この他の構成は前例と同様であり、その説明は省略する。
【0020】図12は、内燃機関を主駆動源とし、電動機を副駆動源(アシスト用)とする電動四駆式の自動車の構成を示す。電動四駆式の自動車は、一方の車輪を内燃機関で駆動し、他方の車輪を電動機で駆動するものである。車軸42にはギア44を介して内燃機関38が機械的に接続されている。車軸43にはギア45を介して電動機1が機械的に接続されている。この他の構成は前例と同様であり、その説明は省略する。
【0021】図9は、前述した自動車に搭載されたインバータ装置の回路構成を示す。本例のインバータ装置100は、PWM(パルス・ワイド・モジュレーション)信号に基づいて半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)を制御し、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換して電動機1に供給するパルス幅変調方式のものであり、パワーモジュール部110と制御部120から構成されている。
【0022】このうち、パワーモジュール部110は、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換する部分であり、パワー半導体素子、例えばIGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラトランジスタ)を有するパワーモジュール3と、直流電力を一時的に蓄えるための容量素子であるコンデンサ13を備えている。
【0023】バッテリ20から出力された直流電力は、直流用の端子台12A,直流用のブスバー11Aを介してパワーモジュール3に入力される。パワーモジュール3では、パワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)によって入力された直流電力を三相交流電力に変換する。変換された三相交流電力は、交流用のブスバー11B,交流用の端子台12Bを介して電動機1に供給される。これにより、電動機1は駆動する。
【0024】制御部120は、パワーモジュール3におけるパワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)を制御する部分であり、ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17,制御電源18及びインターフェース回路19から構成されている。
【0025】インターフェース回路19は、アクセルの踏込みに対応する指令信号など上位制御装置21から出力された指令信号を受信するものであり、上位制御装置21から入力ポート46を介して入力された指令信号を受信する通信用レシーバIC19Aと、通信用レシーバIC19Aから出力された信号を絶縁するフォトカプラ19Bを備えている。センサ回路16は、例えばバッテリ20からインバータ装置100に供給される直流電力値、インバータ装置100から電動機1に供給される三相交流電力値、インバータ装置100内の温度値などを検出するものである。
【0026】計算機17は、マイコンチップに代表される演算処理用素子で構成されたものであり、インターフェース回路19から出力された信号、センサ回路16から出力された検出信号値などに基づいて演算処理を行い、PWM制御信号を出力するものである。ドライブ回路14は、計算機17から出力されたPWM制御信号を昇圧若しくは降圧し、パワーモジュール3におけるパワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)をさせるべくドライブ信号として出力するものである。
【0027】制御電源18は、ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17及びインターフェース回路19に駆動電力を供給するものであり、バッテリ20から供給された直流電力の電圧値を昇圧或いは降圧させるための電圧制御用素子であるレギュレータICと、レギュレータICの出力を安定化させるための容量素子であるコンデンサと、バッテリ20から絶縁した電源を作り出すための電圧制御用素子であり、一次巻線及び二次巻線を有するトランスと、トランスの一次巻線の電圧を二次巻線の電圧に基づいて変化させる手段と、トランスの二次巻線の出力を平滑化させるための整流素子及び容量素子であるダイオード及びコンデンサを備えている。
【0028】次に、前述したインバータ装置100の回路構成を適用した実際のインバータ装置100の構成を説明する。
【0029】図1,図2は、本発明の第1実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例のインバータ装置100は、密閉容器であるインバータケース10の同一内部空間内にパワーモジュール部及び制御部が構成されている。インバータケース10の底壁は他の部分よりも厚く形成されており、その部分には冷却器9,24が形成されている。冷却器9はパワーモジュール部、冷却器24は制御部にそれぞれ対応するものであり、冷却媒体、例えば冷却水,冷却空気を流通させるための流路である。
【0030】インバータケース10の内部空間の一方側には、パワーモジュール3,コンデンサ13,直流用の端子台12Aとパワーモジュール3及びコンデンサ13とを電気的に接続する直流用のブスバー11A,交流用の端子台12Bとパワーモジュール3とを電気的に接続する交流用の端子台11Bが配設されている。パワーモジュール3は、両面に積層銅箔が固着されると共に、片面に複数のパワー半導体素子2が半田付けされ、他面に金属基板5が半田付けされたセラミックス基板4をモジュールケース7で覆ったものである。
【0031】モジュールケース7には、パワー半導体素子2と電気的に接続された端子が設けられており、インバータケース10内に突出し、ブスバー11A,11Bと電気的に接続されている。ブスバー11A,11Bと電気的に接続された端子とパワー半導体素子2及びパワー半導体素子2同士の電気的な接続には、接続部材である金属ワイヤー6によるワイヤーボンディング方式が用いられている。モジュールケース7内においてセラミックス基板4のパワー半導体素子2側はシリコンゲルなど熱伝達率の小さい絶縁樹脂8によって封止されている。金属基板5はモジュールケース7の底部を密閉すると共に、冷却器9の形成位置に対応するインバータケース10の底壁に固定されている。これにより、パワー半導体素子2の発熱はセラミックス基板4,金属基板5を介してインバータケース10の冷却器9に熱伝達され、冷却器9を流通する冷却水によって冷却される。
【0032】インバータケース10の内部空間の他方側には、ドライブ回路14,インターフェース回路15,センサ回路16,計算機17及び制御電源18の構成電子部品を実装した制御基板15が配設されている。具体的には、制御基板15の冷却器24側面には、放熱器23を有する計算機17,制御電源18を構成するレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18Cを実装し、その本実施例では、発熱量の大きい電子部品を制御基板15の冷却器24側面に実装し、冷却器24側とは反対側の面には、ドライブ回路14を構成する半導体チップ,センサ回路16を構成する半導体チップ,インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19Bを実装している。尚、実装面は同一であっても構わない。
【0033】ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17,制御電源18及びインターフェース回路19を構成する電子部品は、自己の発熱量の大きさから2種類に別けることができる。すなわち計算機17を構成する半導体チップ,制御電源18を構成するレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18Cのように、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度(例えば85℃)よりも高い温度まで上昇する発熱量の大きい電子部品と、ドライブ回路14,センサ回路16を構成する半導体チップ,インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19Bのように、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度までしか上昇しない発熱量の小さい電子部品とに別けることができる。
【0034】制御基板15の冷却器24側面とインバータケース10との間の空間には、制御基板15の表面から1mm以上の間隔を空けて、柔軟性,高熱伝導性及び絶縁性を有する樹脂22が、インバータケース10の底壁(冷却器24が形成された壁)と物理的に接触した状態で充填されている。樹脂22には、センサ回路16及びドライブ回路14を構成する半導体チップ、インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19B及び制御基板15と物理的に非接触状態で、制御基板15の冷却器24側面に実装された制御電源18のレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18C及び計算機17に設けられた放熱器23の一部分が埋め込まれている。
【0035】樹脂22は、ウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂にシリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材が混入されたものであり、空気よりも熱伝導率が高い。また、絶縁性を有する樹脂22を用いるのは、樹脂22に埋め込まれている電子部品間の短絡、樹脂22に埋め込まれ、数ボルトから数百ボルトで動作する電子部品と自動車の筐体と同電位のインバータケース10との間の短絡を防ぐためである。
【0036】本実施例によれば、制御基板15に実装された各種の電子部品のうち、発熱量の大きい電子部品の一部分及びその電子部品に設けられた放熱手段を樹脂22に埋め込み、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15と樹脂22とを物理的に非接触にしたので、発熱量の大きい電子部品の発熱は、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15にはほとんど熱伝達されず、樹脂22を介して冷却器24にほとんど熱伝達される。従って、発熱量の大きい電子部品の発熱を効率よく冷却することができるので、インバータ装置の冷却性能を向上させることができる。これにより、発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、インバータ装置を小型化することができる。インバータ装置の小型化は、インバータ装置の低価格化や軽量化にもつながり、電気自動車やハイブリッド自動車の低価格化、燃費の向上或いは一充電あたりの走行距離の向上、インバータ装置の実装スペースの縮小化などにもつながる。
【0037】また、本実施例によれば、発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、発熱量の小さい電子部品の誤動作及び寿命低下によるインバータ装置の性能の低下及び寿命低下を抑制することができる。従って、インバータ装置を小型化しても信頼性を確保することができる。
【0038】また、本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24に熱伝達する熱伝達部材として、電子部品の形状,大きさ及びインバータケース10の内部空間の大きさに左右されることがなく、簡単に自己の形状や大きさを可変とすることができると共に、柔軟性を有する樹脂22を用いたので、インバータ装置を大型化或いは複雑化させることがないし、発熱量の大きい電子部品が制御基板15に分散して実装されていても、各電子部品毎に対応して熱伝達手段を施す必要がなく、発熱量の大きい電子部品をひとまとめにして簡単に熱伝達手段を施すことができる。尚、本実施例の熱伝達部材は、密閉性が要求されるものに対しては特に有効な手段である。
【0039】また、本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24に熱伝達する熱伝達部材として、空気よりも熱伝導率の大きい樹脂22、具体的にはシリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材が混入された樹脂22を用いたので、樹脂22に熱伝達された熱がインバータケース10の内部空間にほとんど熱伝達されることがない。従って、インバータ装置の冷却性能をさらに向上させることができる。また、インバータケース10の内部空間から発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、インバータ装置の性能の低下及び寿命低下をさらに抑制することができる。
【0040】また、本実施例によれば、発熱量の高い電子部品を制御基板15の冷却器24側に実装し、その反対側に発熱量の小さい電子部品を実装したので、熱伝達構造を簡単に構成することができる。また、発熱量の小さい電子部品から発熱量の高い電子部品を遠ざけることができるので、発熱量の高い電子部品から発熱量の小さい電子部品への熱影響をさらに抑制することができ、インバータ装置の性能の低下及び寿命低下をさらに抑制することができる。さらに、発熱量の高い電子部品から冷却器24までの熱伝達経路を短縮することができるので、発熱量の高い電子部品の発熱の逃げを抑制してその発熱を確実に冷却器24に熱伝達させることができ、インバータ装置の冷却性能をさらに向上することができる。
【0041】また、本実施例では、モジュールケース7及びコンデンサ13を樹脂22と物理的に接触させたので、パワーモジュール部の発熱はインバータケース10の内部空間に熱伝達されることなく樹脂22を介して冷却器24に放熱される。従って、パワーモジュール部から制御部への熱影響を抑制することができる。これにより、インバータケース10の内部の同一空間にパワーモジュール部及び制御部を構成することができると共に、パワーモジュール部及び制御部を密接させることができ、インバータ装置を小型化することができる。
【0042】図3は、本発明の第2実施例であるインバータ装置の構成を示す。前例と同様の部分には同符号を付し、その説明を省略する。前述した第1実施例では、インバータケースの同一内部空間にパワーモジュール部及び制御部が設けられた例について説明した。これに対して本実施例では、インバータケース10の内部空間が水平方向に2分割され、その一方側にパワーモジュール部、他方側に制御部が設けられている。尚、パワーモジュール部のコンデンサ13は制御部と同じ内部空間に設けられている。このため、インバータケース10は一つの密閉容器ではなく、複数の部材が組み合せによって形成されている。
【0043】インバータケース10は、冷却器9,24が形成された底壁10aと、底部が金属基板5で密閉されていると共に、上部が開放され、かつ底壁10aの冷却器9と対応する位置に設けられたモジュールケース7と、モジュールケース7以外の底壁10a部分を囲むように底壁10aに設けられた側壁10bと、モジュールケース7の上部及び側壁10bによって囲まれた部分の上部を覆う上壁10cによって形成されている。モジュールケース7の制御部と対向する側壁は、インバータケース10の内部空間を水平方向に2分割する敷居34を兼ねている。モジュールケース7の制御部と対向する側壁を除く側壁は、側壁10bと共にインバータケース10の側壁を形成している。
【0044】直流用の端子台12Aと電気的に接続された直流用のブスバー11Aはモジュールケース7の側壁を貫通し、インバータケース10の制御部側の内部空間に突出し、コンデンサ13と電気的に接続されていると共に、モジュールケース7の側壁に埋設された端子と電気的に接続されている。敷居34の下部は、コンデンサ13の下方を通って制御部側に延びている。敷居34の下部の制御部側に延びた部分には、制御部とパワーモジュール部とを電気的に接続する配線37が埋設されている。配線37は、敷居34の下部の制御部側に延びた部分の先端から樹脂22の中を通って制御基板15側に延び、制御基板15と電気的に接続されている。
【0045】本実施例によれば、インバータケース10の一部をモジュールケース7を用いて構成したので、構成部品点数を減らすことができる。また、制御部とパワーモジュール部との電気的な接続を、敷居34の下部の制御部側に延びた部分に埋設した配線37を用いて行ったので、これまで制御部とパワーモジュール部との電気的な接続に用いていたコネクタなどの部品を減らすことができる。従って、インバータ装置の低価格化を図ることができる。
【0046】また、本実施例によれば、インバータケース10の一部をモジュールケース7を用いて構成したので、パワー半導体素子2を封止する絶縁樹脂8と樹脂22とを同一の製造プロセスにおいて硬化することができる。従って、インバータ装置の製造プロセスを減らすことができる。これにより、インバータ装置の低価格化を図ることができる。
【0047】図4は、本発明の第3実施例であるインバータ装置の構成を示す。前述した第1及び第2実施例では、パワーモジュール部と制御部を同一のインバータケースで構成する例について説明した。これに対して本実施例では、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成している。すなわち本実施例では、パワーモジュール部をインバータケース10で構成し、制御部を制御基板用ケース25で構成している。
【0048】インバータケース10の底壁には冷却器が形成されている。冷却器は、第1実施例で説明したものと同様に構成されている。インバータケース10の内部空間にはパワーモジュール,コンデンサ及びブスバーが収納されている。パワーモジュール,コンデンサ及びブスバーは、第1実施例で説明したものと同様に構成されている。
【0049】制御基板用ケース25の底壁には冷却器24が形成されている。本実施例の冷却器24は、板状の放熱部材であると共に、制御基板用ケース25の底壁の外周表面から下方側に突出するように、制御基板用ケース25の底壁の外周表面に複数並設された放熱フィンである。制御基板用ケース25の内部空間には制御基板15が設けられている。制御基板15には、ドライブ回路14,インターフェース回路19,センサ回路16,計算機17及び制御電源18を構成する各種の電子部品が実装されている。制御基板15に実装された各種の電子部品は、第1実施例で説明したものと同様に配置されている。
【0050】制御基板15と制御基板用ケース25の底壁との間の空間には樹脂22が充填されている。樹脂22は、第1実施例で説明したものと同様のものであり、制御基板用ケース25の底壁(冷却器24が形成された壁)と物理的に接触した状態で充填されている。樹脂22には、センサ回路16及びドライブ回路14を構成する半導体チップ、インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19B,制御基板15と物理的に非接触状態で、制御基板15の冷却器24側面に実装された制御電源18のレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18C及び計算機17に設けられた放熱器23の一部分が埋め込まれている。制御部とパワーモジュール部との間は配線37によって電気的に接続されている。
【0051】本実施例によれば、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成、すなわちパワーモジュール部をインバータケース10で構成し、制御部を制御基板用ケース25で構成しているので、パワーモジュール部から制御部への熱影響を抑制することができ、インバータ装置の冷却性能を向上させることができる。
【0052】また、本実施例によれば、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成しているので、制御部を小型化することができ、電気自動車やハイブリッド自動車内における制御部の配置性を向上させることができる。例えば車体前部のフロントグリルの内側、運低室内の座席の下又はダッシュボード内、トランクルーム内などへの取り付けが可能となる。
【0053】図5は、本発明の第4実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例は前述の第3実施例の改良例であり、冷却媒体である外気を冷却器24に導くダクト26を制御基板用ケース25の底壁に設けたものである。ダクト26は制御基板用ケース25の底壁に対して取付可能に構成されている。このため、制御基板用ケース25の底壁には、ダクト26を水平方向両端から挟持して固定する金具27が設けられている。また、制御基板用ケース25の底壁には、ダクト26との合体時の気密性を向上させると共に、ダクト26に設けられた環状の凹凸部と合致する環状の凹凸部が形成されている。
【0054】また、制御基板用ケース25の底壁に形成された環状の凹凸部とダクト26に形成された環状の凹凸部には、相対向する環状の凹部が形成されている。制御基板用ケース25の底壁に形成された環状の凹部とダクト26に形成された環状の凹部との間には、制御基板用ケース25の底壁とタグト26との間の気密性をさらに向上させるために、環状の凹部に沿ってゴム製の環状のOリング28が設けられている。
【0055】本実施例によれば、冷却媒体を冷却器24に導くダクト26を設けたので、制御部の設置箇所の雰囲気に関わらず、外気などの冷却媒体を吸入し、冷却媒体を冷却器24に導くことができる。従って、制御部の設置箇所の条件に左右されず常に制御部を冷却することができ、制御部の配置性及び冷却性能をさらに向上させることができる。
【0056】図6は、本発明の第5実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例は前述の第1実施例の改良例である。本実施例では、発熱量の大きい電子部品と熱的に接触する樹脂22を、樹脂22よりも熱伝導性の小さい樹脂から形成した板状の断熱ブロック31で、発熱量の大きい電子部品の発熱量の大きさに応じて分離している。具体的には、発熱量の大きい電子部品のうち、最も発熱量の大きい電子部品(例えば計算機17の放熱器23)の周囲に存在する樹脂22と、他の電子部品の周囲に存在する樹脂22とを、樹脂22よりも熱伝導性の小さい断熱ブロック31で分離している。
【0057】本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱量の大きさに応じて断熱ブロック31で樹脂22を分離したので、発熱量の大きい電子部品の中でも発熱量の大きい電子部品の発熱は断熱ブロック31によって遮断され、樹脂22を介して発電量の大きい電子部品の中でも発熱量の小さい電子部品に熱伝達され難くなり、そのほとんどが樹脂22を介して冷却器24に熱伝達される。従って、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24にさらに効率よく熱伝達することができるので、インバータ装置の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0058】図7は,本発明の第6実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例では、冷却器9を下部に有するモジュールケース7と、上部に冷却器24を有する制御基板用ケース25とを、その両者間に空隙32を設けて積層一体化構造としている。モジュールケース7内の構成は、前例で説明したものと同様である。制御基板用ケースは、第3実施例で説明したものを180度回転させたもの、すなわち上下反対になっており、その内部構成も第3実施例のものが上下反対になったものである。空隙32は、モジュールケース7或いは制御基板用ケース25のいずか一方に突起部を設けることにより形成することができる。本実施例では制御基板用ケース25の下部に突起部33を設けている。
【0059】冷却器9は、冷却媒体を流通させるための流路であり、厚みのある壁材に形成され、モジュールケース7の下部を密閉する金属基板5に固着されている。冷却器24は、板状の放熱部材であると共に、制御基板用ケース25の上壁の外周表面から上方側に突出するように、制御基板用ケース25の上壁の外周表面に複数並設された放熱フィンであり、第3実施例で説明したものと同様に構成されたものである。
【0060】空隙32には、モジュールケース7から空隙32に突出した端子及び制御基板用ケース25から空隙32に突出したコネクタ35と電気的に接続された電力用配線基板36が設けられている。コネクタ35は、モジュールケース3側と制御基板用ケース25側とを電気的に接続するためのものであり、制御基板用ケース25側に設けられた接続部材である。
【0061】本実施例によれば、制御基板用ケース25の下部に突起部33を設け、この突起部33を介してモジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層させたので、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間に空隙32が形成されると共に、モジュールケース7と制御基板用ケース25との接触面積を最小限とすることができる。従って、モジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層構造としても、発熱量の大きいパワーモジュール部から制御部への熱伝達を抑制することができる。
【0062】また、本実施例によれば、モジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層して一体化したので、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動装置を小型化することができる。従って、電気自動車やハイブリッド自動車などを低価格にすることができる。
【0063】さらに、本実施例によれば、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間の空隙32に、モジュールケース7側と制御基板用ケース25側とを電気的に接続するための電力用配線基板36を配置したので、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間の電気的な配線が短くなり、インバータ装置を小型化することができると共に、低価格にすることができる。
【0064】図8は、前述の第1乃至第6実施例のいずれかで説明したインバータ装置の自動車への取付例を示す。ここでは、制御基板用ケース25の壁面に空冷式の冷却器29、すなわち複数枚並設された放熱部材としての板状の放熱フィン30が制御基板用ケース25の壁面に対して垂直に設けられているインバータ装置の取付例を説明する。
【0065】本実施例では、制御基板用ケース25の壁面に設けられた放熱部材としての放熱フィン30が自動車の移動面(地面)に対して垂直となるように、かつ外気の流入方向に対向するように、すなわち自動車の移動方向を向くように、制御基板用ケース25を自動車に取り付けている。取り付け場所としては、外気の流入が可能な場所、例えばエンジンルームなどが好ましいが、運転席や荷台、車輪の一部の周囲を覆う車体部分に取り付けてもよい。
【0066】本実施例によれば、制御基板用ケース25の壁面に設けられた放熱部材としての板状の放熱フィン30が自動車の移動面(地面)に対して垂直になるように、かつ外気の流入方向に対向するように、制御基板用ケース25を自動車に取り付けたので、流入した外気が放熱部材としての板状の放熱フィン30を自動車の移動面(地面)側から上方に向かって滑らかにながれるようになり、外気との熱交換効率を向上させることができる。従って、インバータ装置の冷却性能を向上されることができる。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、電力変換装置の冷却性能を向上させることができるので、電力変換装置を小型化することができる。従って、小型化を図った電力変換装置及びそれを備えた移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図2】図1のII−II矢視断面図。
【図3】本発明の第2実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第3実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第4実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第5実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第6実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図8】インバータ装置の自動車への取付例を示す立体平面。
【図9】インバータ装置の回路構成を示すブロック図。
【図10】電気自動車の構成を示す平面図。
【図11】ハイブリッド自動車の構成を示す平面図。
【図12】電動四駆式自動車の構成を示す平面図。
【符号の説明】
1…電動機、2…パワー半導体素子、3…パワーモジュール、4…セラミックス基板、5…金属基板、6…金属ワイヤー、7…モジュールケース、8…絶縁樹脂、9,24,29…冷却器、10…インバータケース、11…ブスバー、12…端子台、13…コンデンサ、14…ドライブ回路、15…制御基板、16…センサ回路、17…計算機、18…制御電源、19…インターフェース回路、20…バッテリ、21…上位制御装置、22…樹脂、23…放熱器、25…制御基板用ケース、26…ダクト、27…金具、28…Oリング、30…放熱フィン、31…断熱ブロック、32…空隙、33…突起部、34…敷居、35…コネクタ、36…配線基板、37…配線。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動機に供給される電力を制御する電力変換装置及びそれを備えた移動体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電動機を駆動源とする移動体、例えば電気自動車,ハイブリッド自動車などの電動車両においては、バッテリから電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置の小型化の検討が進められている。これは、電力変換装置の低価格化に伴う電動車両の低価格化,電力変換装置の軽量化に伴う電動車両の燃費の向上或いは一充電あたりの走行距離の向上,電動車両内における電力変換装置の実装スペースの縮小化などのためである。
【0003】電力変換装置は、密閉容器内に配設された基板に半導体素子などの電子部品が実装されて構成されている。また、電力変換装置は、電子部品の一部が自己の動作によって発熱し、電子部品の表面限界温度を超えることから、その電子部品の発熱を冷却できるように構成されている。例えば送風機からの冷却空気を密閉容器内に循環させ、電子部品の発熱を冷却するものや、冷却流体を各電子部品に分散対流させ、電子部品の発熱を冷却するものなどがある。
【0004】また、電子部品の冷却としては、従来より次の方法が知られている。例えば特開平8−125364号公報,特開2000−59058号公報に記載されたものでは、熱伝導性を有する部材を介して電子部品の表面に放熱部材を設け、電子部品の発熱を空気中に放熱している。特開平11−238985号公報に記載されたものでは、複数の電子部品の表面に単一の放熱部材を設け、複数の電子部品の発熱を空気中に放熱している。特開平10−209358号公報に記載されたものでは、熱伝導性を有する部材を介して電子部品が実装された基板の電子部品実装側とは反対側の面に冷却板を設け、電子部品の発熱を冷却板に伝達して冷却している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電力変換装置の小型化においては、電子部品の発熱量が変わらないので、熱的条件が厳しくなり、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品への熱影響が懸念される。小発熱量の電子部品への熱影響が大きい場合には、誤動作或いは寿命低下などに至る恐れもある。従って、電力変換装置における冷却性能の向上が望まれている。しかも、電力変換装置の小型化の観点から、電力変換装置を大型化或いは複雑化することなく実現できることが望ましい。
【0006】しかしながら、送風機からの冷却空気を密閉容器内に循環させる或いは冷却流体を各電子部品に分散対流させるという従来の技術では、密閉容器内に冷却媒体を導くための機構を密閉容器に設けなければならず、電力変換装置の大型化或いは複雑化を招く。冷却流体を用いるものにあっては、流体の漏れを防止するための機構を密閉容器に設けなければならず、電力変換装置の更なる大型化或いは複雑化を招く。
【0007】また、放熱部材を電子部品に設けるという従来の技術では、電子部品の発熱が密閉容器内部空間に伝熱し、密閉容器内部空間の温度を上昇させ、小発熱量の電子部品に熱影響を及ぼす。また、密閉容器内に放熱部材を設けるという従来の技術では、電力変換装置の大型化或いは複雑化を招く。さらに、高発熱量の複数の電子部品それぞれに放熱部材を設けるという従来の技術では、電力変換装置の更なる大型化或いは複雑化を招く。
【0008】さらに、電子部品は発熱量に係わらず密閉容器内の基板に分散して実装されているので、複数の電子部品に単一の放熱部材を設けるという従来の技術では、高発熱量の電子部品の発熱が小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品に伝達され易くなり、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品への熱影響が避けられない。また、上記の従来の技術と同様に、放熱部材による電力変換装置の大型化或いは複雑化が避けられない。
【0009】さらに、電子部品は発熱量に係わらず密閉容器内の同一の基板に実装されているので、基板の電子部品実装側とは反対側の面に冷却板を設けるという従来の技術では、高発熱量の電子部品の発熱が基板を介して小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品に伝達されるので、高発熱量の電子部品から小発熱量の電子部品或いは非発熱の電子部品への熱影響が避けられない。
【0010】本発明の代表的な目的は、小型化を図った電力変換装置及びそれを備えた移動体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の基本的な特徴は、熱伝導性を有する絶縁樹脂を、密閉容器内に配設された基板に複数実装されると共に、発熱量が異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び基板と物理的に非接触状態で、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段を埋め込み、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の発熱或いは放熱手段に熱伝達された発熱を密閉容器に熱伝達する絶縁部材に熱伝達することにある。
【0012】絶縁樹脂は、熱伝導性を有する充填材が混入されたものであり、空気よりも熱伝導率が高いものである。具体的には、シリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材がウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂に混入されたものであり、基板表面から1mm以上の間隔を空けて密閉容器内面と接触するように、密閉容器と基板との間に充填されている。自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品自身或いはその電子部品に設けられた放熱手段は、基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する。従って、上記のように絶縁樹脂を充填することによって、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び基板と物理的に非接触状態で、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段を絶縁樹脂に埋め込むことができる。
【0013】自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品としては、例えばコンデンサなどに代表される容量素子,レギュレータICや変圧器などに代表される電圧制御用素子,マイコンチップに代表される演算処理用素子などがある。
【0014】密閉容器は、熱放熱性を有する金属製のもの或いは絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が一体形成されたもの若しくは絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が取り付けられたものである。冷却手段は、冷却媒体を流通させる流路或いは熱放熱性を有する部材で構成されたものである。
【0015】本発明によれば、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品(発熱量の大きい電子部品)の発熱のほとんどは、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品(発熱量の小さい電子部品)、基板及び密閉容器内部空間にはほとんど熱伝達されず、絶縁樹脂を介して密閉容器に効率よく熱伝達され、密閉容器から或いは冷却手段を介して外部に放熱される。従って、電力変換装置の冷却性能を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。電力変換装置は、例えば電動機に供給される電力を制御するものであり、例えば交流電力を直流電力に変換する整流装置,直流電力を交流電力に変換するインバータ装置,整流装置とインバータ装置の組み合せであって、入力された直流電力を所望の直流電力に変換するDC−DCコンバータ装置などがある。
【0017】本発明の実施例では、電動機を唯一の駆動源とする電気自動車,電動機及び内燃機関を駆動源とするハイブリッド自動車において、蓄電手段から出力された直流電力を交流電力に変換して電動機に供給するインバータ装置を例にとり説明する。尚、以下説明する本発明の実施例の構成は、インバータ装置に限らず、整流装置及びDC−DCコンバータ装置などにも適用できる。
【0018】図10乃至図12は、本発明の実施例であるインバータ装置が適用される自動車の構成例を示す。図10は、電動機を唯一の駆動源とする電気自動車の構成を示す。39は車体である。車体39の前部には、両端に車輪40a,40bを設けた車軸42が回転可能に取り付けられている。すなわち前輪が取り付けられている。車体39の後部には、両端に車輪41a,41bを設けた車軸43が回転可能に取り付けられている。すなわち後輪が取り付けられている。車軸42にはギア44を介して電動機1が機械的に接続されている。電動機1にはインバータ装置100が電気的に接続されており、バッテリ20から供給された直流電力が三相交流電力に変換され供給される。インバータ装置10には上位制御装置21が電気的に接続されており、アクセルの踏込みに対応する指令信号などが入力される。
【0019】図11は、電動機及び内燃機関を駆動源とするハイブリッド自動車の構成を示す。ハイブリッド自動車は、内燃機関と電動機を切り替えて一方の車輪を駆動するものである。車軸42にはギア44を介して内燃機関38が機械的に接続されている。内燃機関38には電動機1が機械的に接続されている。この他の構成は前例と同様であり、その説明は省略する。
【0020】図12は、内燃機関を主駆動源とし、電動機を副駆動源(アシスト用)とする電動四駆式の自動車の構成を示す。電動四駆式の自動車は、一方の車輪を内燃機関で駆動し、他方の車輪を電動機で駆動するものである。車軸42にはギア44を介して内燃機関38が機械的に接続されている。車軸43にはギア45を介して電動機1が機械的に接続されている。この他の構成は前例と同様であり、その説明は省略する。
【0021】図9は、前述した自動車に搭載されたインバータ装置の回路構成を示す。本例のインバータ装置100は、PWM(パルス・ワイド・モジュレーション)信号に基づいて半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)を制御し、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換して電動機1に供給するパルス幅変調方式のものであり、パワーモジュール部110と制御部120から構成されている。
【0022】このうち、パワーモジュール部110は、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換する部分であり、パワー半導体素子、例えばIGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラトランジスタ)を有するパワーモジュール3と、直流電力を一時的に蓄えるための容量素子であるコンデンサ13を備えている。
【0023】バッテリ20から出力された直流電力は、直流用の端子台12A,直流用のブスバー11Aを介してパワーモジュール3に入力される。パワーモジュール3では、パワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)によって入力された直流電力を三相交流電力に変換する。変換された三相交流電力は、交流用のブスバー11B,交流用の端子台12Bを介して電動機1に供給される。これにより、電動機1は駆動する。
【0024】制御部120は、パワーモジュール3におけるパワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)を制御する部分であり、ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17,制御電源18及びインターフェース回路19から構成されている。
【0025】インターフェース回路19は、アクセルの踏込みに対応する指令信号など上位制御装置21から出力された指令信号を受信するものであり、上位制御装置21から入力ポート46を介して入力された指令信号を受信する通信用レシーバIC19Aと、通信用レシーバIC19Aから出力された信号を絶縁するフォトカプラ19Bを備えている。センサ回路16は、例えばバッテリ20からインバータ装置100に供給される直流電力値、インバータ装置100から電動機1に供給される三相交流電力値、インバータ装置100内の温度値などを検出するものである。
【0026】計算機17は、マイコンチップに代表される演算処理用素子で構成されたものであり、インターフェース回路19から出力された信号、センサ回路16から出力された検出信号値などに基づいて演算処理を行い、PWM制御信号を出力するものである。ドライブ回路14は、計算機17から出力されたPWM制御信号を昇圧若しくは降圧し、パワーモジュール3におけるパワー半導体素子のスイッチング動作(ON・OFF動作)をさせるべくドライブ信号として出力するものである。
【0027】制御電源18は、ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17及びインターフェース回路19に駆動電力を供給するものであり、バッテリ20から供給された直流電力の電圧値を昇圧或いは降圧させるための電圧制御用素子であるレギュレータICと、レギュレータICの出力を安定化させるための容量素子であるコンデンサと、バッテリ20から絶縁した電源を作り出すための電圧制御用素子であり、一次巻線及び二次巻線を有するトランスと、トランスの一次巻線の電圧を二次巻線の電圧に基づいて変化させる手段と、トランスの二次巻線の出力を平滑化させるための整流素子及び容量素子であるダイオード及びコンデンサを備えている。
【0028】次に、前述したインバータ装置100の回路構成を適用した実際のインバータ装置100の構成を説明する。
【0029】図1,図2は、本発明の第1実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例のインバータ装置100は、密閉容器であるインバータケース10の同一内部空間内にパワーモジュール部及び制御部が構成されている。インバータケース10の底壁は他の部分よりも厚く形成されており、その部分には冷却器9,24が形成されている。冷却器9はパワーモジュール部、冷却器24は制御部にそれぞれ対応するものであり、冷却媒体、例えば冷却水,冷却空気を流通させるための流路である。
【0030】インバータケース10の内部空間の一方側には、パワーモジュール3,コンデンサ13,直流用の端子台12Aとパワーモジュール3及びコンデンサ13とを電気的に接続する直流用のブスバー11A,交流用の端子台12Bとパワーモジュール3とを電気的に接続する交流用の端子台11Bが配設されている。パワーモジュール3は、両面に積層銅箔が固着されると共に、片面に複数のパワー半導体素子2が半田付けされ、他面に金属基板5が半田付けされたセラミックス基板4をモジュールケース7で覆ったものである。
【0031】モジュールケース7には、パワー半導体素子2と電気的に接続された端子が設けられており、インバータケース10内に突出し、ブスバー11A,11Bと電気的に接続されている。ブスバー11A,11Bと電気的に接続された端子とパワー半導体素子2及びパワー半導体素子2同士の電気的な接続には、接続部材である金属ワイヤー6によるワイヤーボンディング方式が用いられている。モジュールケース7内においてセラミックス基板4のパワー半導体素子2側はシリコンゲルなど熱伝達率の小さい絶縁樹脂8によって封止されている。金属基板5はモジュールケース7の底部を密閉すると共に、冷却器9の形成位置に対応するインバータケース10の底壁に固定されている。これにより、パワー半導体素子2の発熱はセラミックス基板4,金属基板5を介してインバータケース10の冷却器9に熱伝達され、冷却器9を流通する冷却水によって冷却される。
【0032】インバータケース10の内部空間の他方側には、ドライブ回路14,インターフェース回路15,センサ回路16,計算機17及び制御電源18の構成電子部品を実装した制御基板15が配設されている。具体的には、制御基板15の冷却器24側面には、放熱器23を有する計算機17,制御電源18を構成するレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18Cを実装し、その本実施例では、発熱量の大きい電子部品を制御基板15の冷却器24側面に実装し、冷却器24側とは反対側の面には、ドライブ回路14を構成する半導体チップ,センサ回路16を構成する半導体チップ,インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19Bを実装している。尚、実装面は同一であっても構わない。
【0033】ドライブ回路14,センサ回路16,計算機17,制御電源18及びインターフェース回路19を構成する電子部品は、自己の発熱量の大きさから2種類に別けることができる。すなわち計算機17を構成する半導体チップ,制御電源18を構成するレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18Cのように、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度(例えば85℃)よりも高い温度まで上昇する発熱量の大きい電子部品と、ドライブ回路14,センサ回路16を構成する半導体チップ,インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19Bのように、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度までしか上昇しない発熱量の小さい電子部品とに別けることができる。
【0034】制御基板15の冷却器24側面とインバータケース10との間の空間には、制御基板15の表面から1mm以上の間隔を空けて、柔軟性,高熱伝導性及び絶縁性を有する樹脂22が、インバータケース10の底壁(冷却器24が形成された壁)と物理的に接触した状態で充填されている。樹脂22には、センサ回路16及びドライブ回路14を構成する半導体チップ、インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19B及び制御基板15と物理的に非接触状態で、制御基板15の冷却器24側面に実装された制御電源18のレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18C及び計算機17に設けられた放熱器23の一部分が埋め込まれている。
【0035】樹脂22は、ウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂にシリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材が混入されたものであり、空気よりも熱伝導率が高い。また、絶縁性を有する樹脂22を用いるのは、樹脂22に埋め込まれている電子部品間の短絡、樹脂22に埋め込まれ、数ボルトから数百ボルトで動作する電子部品と自動車の筐体と同電位のインバータケース10との間の短絡を防ぐためである。
【0036】本実施例によれば、制御基板15に実装された各種の電子部品のうち、発熱量の大きい電子部品の一部分及びその電子部品に設けられた放熱手段を樹脂22に埋め込み、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15と樹脂22とを物理的に非接触にしたので、発熱量の大きい電子部品の発熱は、発熱量の小さい電子部品及び制御基板15にはほとんど熱伝達されず、樹脂22を介して冷却器24にほとんど熱伝達される。従って、発熱量の大きい電子部品の発熱を効率よく冷却することができるので、インバータ装置の冷却性能を向上させることができる。これにより、発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、インバータ装置を小型化することができる。インバータ装置の小型化は、インバータ装置の低価格化や軽量化にもつながり、電気自動車やハイブリッド自動車の低価格化、燃費の向上或いは一充電あたりの走行距離の向上、インバータ装置の実装スペースの縮小化などにもつながる。
【0037】また、本実施例によれば、発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、発熱量の小さい電子部品の誤動作及び寿命低下によるインバータ装置の性能の低下及び寿命低下を抑制することができる。従って、インバータ装置を小型化しても信頼性を確保することができる。
【0038】また、本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24に熱伝達する熱伝達部材として、電子部品の形状,大きさ及びインバータケース10の内部空間の大きさに左右されることがなく、簡単に自己の形状や大きさを可変とすることができると共に、柔軟性を有する樹脂22を用いたので、インバータ装置を大型化或いは複雑化させることがないし、発熱量の大きい電子部品が制御基板15に分散して実装されていても、各電子部品毎に対応して熱伝達手段を施す必要がなく、発熱量の大きい電子部品をひとまとめにして簡単に熱伝達手段を施すことができる。尚、本実施例の熱伝達部材は、密閉性が要求されるものに対しては特に有効な手段である。
【0039】また、本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24に熱伝達する熱伝達部材として、空気よりも熱伝導率の大きい樹脂22、具体的にはシリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材が混入された樹脂22を用いたので、樹脂22に熱伝達された熱がインバータケース10の内部空間にほとんど熱伝達されることがない。従って、インバータ装置の冷却性能をさらに向上させることができる。また、インバータケース10の内部空間から発熱量の小さい電子部品への熱影響を抑制することができるので、インバータ装置の性能の低下及び寿命低下をさらに抑制することができる。
【0040】また、本実施例によれば、発熱量の高い電子部品を制御基板15の冷却器24側に実装し、その反対側に発熱量の小さい電子部品を実装したので、熱伝達構造を簡単に構成することができる。また、発熱量の小さい電子部品から発熱量の高い電子部品を遠ざけることができるので、発熱量の高い電子部品から発熱量の小さい電子部品への熱影響をさらに抑制することができ、インバータ装置の性能の低下及び寿命低下をさらに抑制することができる。さらに、発熱量の高い電子部品から冷却器24までの熱伝達経路を短縮することができるので、発熱量の高い電子部品の発熱の逃げを抑制してその発熱を確実に冷却器24に熱伝達させることができ、インバータ装置の冷却性能をさらに向上することができる。
【0041】また、本実施例では、モジュールケース7及びコンデンサ13を樹脂22と物理的に接触させたので、パワーモジュール部の発熱はインバータケース10の内部空間に熱伝達されることなく樹脂22を介して冷却器24に放熱される。従って、パワーモジュール部から制御部への熱影響を抑制することができる。これにより、インバータケース10の内部の同一空間にパワーモジュール部及び制御部を構成することができると共に、パワーモジュール部及び制御部を密接させることができ、インバータ装置を小型化することができる。
【0042】図3は、本発明の第2実施例であるインバータ装置の構成を示す。前例と同様の部分には同符号を付し、その説明を省略する。前述した第1実施例では、インバータケースの同一内部空間にパワーモジュール部及び制御部が設けられた例について説明した。これに対して本実施例では、インバータケース10の内部空間が水平方向に2分割され、その一方側にパワーモジュール部、他方側に制御部が設けられている。尚、パワーモジュール部のコンデンサ13は制御部と同じ内部空間に設けられている。このため、インバータケース10は一つの密閉容器ではなく、複数の部材が組み合せによって形成されている。
【0043】インバータケース10は、冷却器9,24が形成された底壁10aと、底部が金属基板5で密閉されていると共に、上部が開放され、かつ底壁10aの冷却器9と対応する位置に設けられたモジュールケース7と、モジュールケース7以外の底壁10a部分を囲むように底壁10aに設けられた側壁10bと、モジュールケース7の上部及び側壁10bによって囲まれた部分の上部を覆う上壁10cによって形成されている。モジュールケース7の制御部と対向する側壁は、インバータケース10の内部空間を水平方向に2分割する敷居34を兼ねている。モジュールケース7の制御部と対向する側壁を除く側壁は、側壁10bと共にインバータケース10の側壁を形成している。
【0044】直流用の端子台12Aと電気的に接続された直流用のブスバー11Aはモジュールケース7の側壁を貫通し、インバータケース10の制御部側の内部空間に突出し、コンデンサ13と電気的に接続されていると共に、モジュールケース7の側壁に埋設された端子と電気的に接続されている。敷居34の下部は、コンデンサ13の下方を通って制御部側に延びている。敷居34の下部の制御部側に延びた部分には、制御部とパワーモジュール部とを電気的に接続する配線37が埋設されている。配線37は、敷居34の下部の制御部側に延びた部分の先端から樹脂22の中を通って制御基板15側に延び、制御基板15と電気的に接続されている。
【0045】本実施例によれば、インバータケース10の一部をモジュールケース7を用いて構成したので、構成部品点数を減らすことができる。また、制御部とパワーモジュール部との電気的な接続を、敷居34の下部の制御部側に延びた部分に埋設した配線37を用いて行ったので、これまで制御部とパワーモジュール部との電気的な接続に用いていたコネクタなどの部品を減らすことができる。従って、インバータ装置の低価格化を図ることができる。
【0046】また、本実施例によれば、インバータケース10の一部をモジュールケース7を用いて構成したので、パワー半導体素子2を封止する絶縁樹脂8と樹脂22とを同一の製造プロセスにおいて硬化することができる。従って、インバータ装置の製造プロセスを減らすことができる。これにより、インバータ装置の低価格化を図ることができる。
【0047】図4は、本発明の第3実施例であるインバータ装置の構成を示す。前述した第1及び第2実施例では、パワーモジュール部と制御部を同一のインバータケースで構成する例について説明した。これに対して本実施例では、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成している。すなわち本実施例では、パワーモジュール部をインバータケース10で構成し、制御部を制御基板用ケース25で構成している。
【0048】インバータケース10の底壁には冷却器が形成されている。冷却器は、第1実施例で説明したものと同様に構成されている。インバータケース10の内部空間にはパワーモジュール,コンデンサ及びブスバーが収納されている。パワーモジュール,コンデンサ及びブスバーは、第1実施例で説明したものと同様に構成されている。
【0049】制御基板用ケース25の底壁には冷却器24が形成されている。本実施例の冷却器24は、板状の放熱部材であると共に、制御基板用ケース25の底壁の外周表面から下方側に突出するように、制御基板用ケース25の底壁の外周表面に複数並設された放熱フィンである。制御基板用ケース25の内部空間には制御基板15が設けられている。制御基板15には、ドライブ回路14,インターフェース回路19,センサ回路16,計算機17及び制御電源18を構成する各種の電子部品が実装されている。制御基板15に実装された各種の電子部品は、第1実施例で説明したものと同様に配置されている。
【0050】制御基板15と制御基板用ケース25の底壁との間の空間には樹脂22が充填されている。樹脂22は、第1実施例で説明したものと同様のものであり、制御基板用ケース25の底壁(冷却器24が形成された壁)と物理的に接触した状態で充填されている。樹脂22には、センサ回路16及びドライブ回路14を構成する半導体チップ、インターフェース回路19を構成する通信用レシーバIC19A,フォトカプラ19B,制御基板15と物理的に非接触状態で、制御基板15の冷却器24側面に実装された制御電源18のレギュレータIC18A,コンデンサ18B,トランス18C及び計算機17に設けられた放熱器23の一部分が埋め込まれている。制御部とパワーモジュール部との間は配線37によって電気的に接続されている。
【0051】本実施例によれば、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成、すなわちパワーモジュール部をインバータケース10で構成し、制御部を制御基板用ケース25で構成しているので、パワーモジュール部から制御部への熱影響を抑制することができ、インバータ装置の冷却性能を向上させることができる。
【0052】また、本実施例によれば、パワーモジュール部と制御部とを別々のケースで構成しているので、制御部を小型化することができ、電気自動車やハイブリッド自動車内における制御部の配置性を向上させることができる。例えば車体前部のフロントグリルの内側、運低室内の座席の下又はダッシュボード内、トランクルーム内などへの取り付けが可能となる。
【0053】図5は、本発明の第4実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例は前述の第3実施例の改良例であり、冷却媒体である外気を冷却器24に導くダクト26を制御基板用ケース25の底壁に設けたものである。ダクト26は制御基板用ケース25の底壁に対して取付可能に構成されている。このため、制御基板用ケース25の底壁には、ダクト26を水平方向両端から挟持して固定する金具27が設けられている。また、制御基板用ケース25の底壁には、ダクト26との合体時の気密性を向上させると共に、ダクト26に設けられた環状の凹凸部と合致する環状の凹凸部が形成されている。
【0054】また、制御基板用ケース25の底壁に形成された環状の凹凸部とダクト26に形成された環状の凹凸部には、相対向する環状の凹部が形成されている。制御基板用ケース25の底壁に形成された環状の凹部とダクト26に形成された環状の凹部との間には、制御基板用ケース25の底壁とタグト26との間の気密性をさらに向上させるために、環状の凹部に沿ってゴム製の環状のOリング28が設けられている。
【0055】本実施例によれば、冷却媒体を冷却器24に導くダクト26を設けたので、制御部の設置箇所の雰囲気に関わらず、外気などの冷却媒体を吸入し、冷却媒体を冷却器24に導くことができる。従って、制御部の設置箇所の条件に左右されず常に制御部を冷却することができ、制御部の配置性及び冷却性能をさらに向上させることができる。
【0056】図6は、本発明の第5実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例は前述の第1実施例の改良例である。本実施例では、発熱量の大きい電子部品と熱的に接触する樹脂22を、樹脂22よりも熱伝導性の小さい樹脂から形成した板状の断熱ブロック31で、発熱量の大きい電子部品の発熱量の大きさに応じて分離している。具体的には、発熱量の大きい電子部品のうち、最も発熱量の大きい電子部品(例えば計算機17の放熱器23)の周囲に存在する樹脂22と、他の電子部品の周囲に存在する樹脂22とを、樹脂22よりも熱伝導性の小さい断熱ブロック31で分離している。
【0057】本実施例によれば、発熱量の大きい電子部品の発熱量の大きさに応じて断熱ブロック31で樹脂22を分離したので、発熱量の大きい電子部品の中でも発熱量の大きい電子部品の発熱は断熱ブロック31によって遮断され、樹脂22を介して発電量の大きい電子部品の中でも発熱量の小さい電子部品に熱伝達され難くなり、そのほとんどが樹脂22を介して冷却器24に熱伝達される。従って、発熱量の大きい電子部品の発熱を冷却器24にさらに効率よく熱伝達することができるので、インバータ装置の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0058】図7は,本発明の第6実施例であるインバータ装置の構成を示す。本実施例では、冷却器9を下部に有するモジュールケース7と、上部に冷却器24を有する制御基板用ケース25とを、その両者間に空隙32を設けて積層一体化構造としている。モジュールケース7内の構成は、前例で説明したものと同様である。制御基板用ケースは、第3実施例で説明したものを180度回転させたもの、すなわち上下反対になっており、その内部構成も第3実施例のものが上下反対になったものである。空隙32は、モジュールケース7或いは制御基板用ケース25のいずか一方に突起部を設けることにより形成することができる。本実施例では制御基板用ケース25の下部に突起部33を設けている。
【0059】冷却器9は、冷却媒体を流通させるための流路であり、厚みのある壁材に形成され、モジュールケース7の下部を密閉する金属基板5に固着されている。冷却器24は、板状の放熱部材であると共に、制御基板用ケース25の上壁の外周表面から上方側に突出するように、制御基板用ケース25の上壁の外周表面に複数並設された放熱フィンであり、第3実施例で説明したものと同様に構成されたものである。
【0060】空隙32には、モジュールケース7から空隙32に突出した端子及び制御基板用ケース25から空隙32に突出したコネクタ35と電気的に接続された電力用配線基板36が設けられている。コネクタ35は、モジュールケース3側と制御基板用ケース25側とを電気的に接続するためのものであり、制御基板用ケース25側に設けられた接続部材である。
【0061】本実施例によれば、制御基板用ケース25の下部に突起部33を設け、この突起部33を介してモジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層させたので、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間に空隙32が形成されると共に、モジュールケース7と制御基板用ケース25との接触面積を最小限とすることができる。従って、モジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層構造としても、発熱量の大きいパワーモジュール部から制御部への熱伝達を抑制することができる。
【0062】また、本実施例によれば、モジュールケース7と制御基板用ケース25とを積層して一体化したので、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動装置を小型化することができる。従って、電気自動車やハイブリッド自動車などを低価格にすることができる。
【0063】さらに、本実施例によれば、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間の空隙32に、モジュールケース7側と制御基板用ケース25側とを電気的に接続するための電力用配線基板36を配置したので、モジュールケース7と制御基板用ケース25との間の電気的な配線が短くなり、インバータ装置を小型化することができると共に、低価格にすることができる。
【0064】図8は、前述の第1乃至第6実施例のいずれかで説明したインバータ装置の自動車への取付例を示す。ここでは、制御基板用ケース25の壁面に空冷式の冷却器29、すなわち複数枚並設された放熱部材としての板状の放熱フィン30が制御基板用ケース25の壁面に対して垂直に設けられているインバータ装置の取付例を説明する。
【0065】本実施例では、制御基板用ケース25の壁面に設けられた放熱部材としての放熱フィン30が自動車の移動面(地面)に対して垂直となるように、かつ外気の流入方向に対向するように、すなわち自動車の移動方向を向くように、制御基板用ケース25を自動車に取り付けている。取り付け場所としては、外気の流入が可能な場所、例えばエンジンルームなどが好ましいが、運転席や荷台、車輪の一部の周囲を覆う車体部分に取り付けてもよい。
【0066】本実施例によれば、制御基板用ケース25の壁面に設けられた放熱部材としての板状の放熱フィン30が自動車の移動面(地面)に対して垂直になるように、かつ外気の流入方向に対向するように、制御基板用ケース25を自動車に取り付けたので、流入した外気が放熱部材としての板状の放熱フィン30を自動車の移動面(地面)側から上方に向かって滑らかにながれるようになり、外気との熱交換効率を向上させることができる。従って、インバータ装置の冷却性能を向上されることができる。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、電力変換装置の冷却性能を向上させることができるので、電力変換装置を小型化することができる。従って、小型化を図った電力変換装置及びそれを備えた移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図2】図1のII−II矢視断面図。
【図3】本発明の第2実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第3実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第4実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第5実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第6実施例であるインバータ装置の構成を示す断面図。
【図8】インバータ装置の自動車への取付例を示す立体平面。
【図9】インバータ装置の回路構成を示すブロック図。
【図10】電気自動車の構成を示す平面図。
【図11】ハイブリッド自動車の構成を示す平面図。
【図12】電動四駆式自動車の構成を示す平面図。
【符号の説明】
1…電動機、2…パワー半導体素子、3…パワーモジュール、4…セラミックス基板、5…金属基板、6…金属ワイヤー、7…モジュールケース、8…絶縁樹脂、9,24,29…冷却器、10…インバータケース、11…ブスバー、12…端子台、13…コンデンサ、14…ドライブ回路、15…制御基板、16…センサ回路、17…計算機、18…制御電源、19…インターフェース回路、20…バッテリ、21…上位制御装置、22…樹脂、23…放熱器、25…制御基板用ケース、26…ダクト、27…金具、28…Oリング、30…放熱フィン、31…断熱ブロック、32…空隙、33…突起部、34…敷居、35…コネクタ、36…配線基板、37…配線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に複数実装されると共に、発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、前記発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び前記基板と物理的に非接触状態で、前記発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段が埋め込まれ、かつ自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の発熱或いは前記放熱手段に熱伝達された発熱を前記密閉容器に熱伝達する絶縁樹脂とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に実装された複数の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、前記基板表面から1mm以上の間隔を空けて前記密閉容器内面と接触するように、前記密閉容器と前記基板との間に充填された絶縁樹脂とを有し、前記樹脂は、前記複数の電子部品のうち、前記基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する電子部品の一部分或いは電子部品に設けられた放熱手段を埋め込み、前記基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する電子部品の発熱或いは前記放熱手段に熱伝達された発熱を前記密閉容器に熱伝達することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に実装されると共に、容量素子,電圧制御用素子,演算処理用素子を含む複数の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、少なくとも前記容量素子,前記電圧可変用素子を除く前記複数の電子部品及び前記基板と物理的に非接触状態で、少なくとも前記容量素子,前記電圧制御用素子の一部分及び前記演算処理用素子に設けられた放熱手段が埋め込まれ、かつ少なくとも前記容量素子,前記電圧制御用素子の発熱及び前記放熱手段に熱伝達された前記演算処理用素子の発熱を前記密閉容器に熱伝達する絶縁樹脂とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載された電力変換装置において、前記制御部を構成する前記密閉容器内に前記パワーモジュール部が構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】請求項4に記載された電力変換装置において、前記パワーモジュール部は、前記半導体素子を収納する容器と容量素子を有し、前記容器と前記容量素子は、前記絶縁樹脂と物理的に接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】請求項4に記載された電力変換装置において、前記密閉容器は、水平方向或いは上下方向に仕切られていると共に、その一方側に前記素子部が配置され、その他方側に前記制御部が配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】請求項1乃至3のいずれかに記載された電力変換装置において、前記制御部を構成する密閉容器とは別の密閉容器で前記パワーモジュール部を構成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】請求項7に記載された電力変換装置において、前記パワーモジュールを構成する密閉容器と前記制御部を構成する密閉容器は、水平方向或いは上下方向に近接或いは隣接して配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、空気よりも熱伝導率が高いものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、熱伝導性を有する充填材が混入されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、シリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材がウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂に混入されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、前記絶縁樹脂に埋め込まれた電子部品の発熱量の大きさに応じて、前記絶縁樹脂よりも熱伝導率の小さい部材で分離されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂に埋め込まれた電子部品のうち、発熱量の最も大きい電子部品の周囲に存在する前記絶縁樹脂とその他の電子部品の周囲に存在する前記絶縁樹脂は、前記絶縁樹脂よりも熱伝導率の小さい分離部材によって分離されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記密閉容器は、熱放熱性を有する金属製のもの或いは前記絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が一体形成されたもの若しくは前記絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が取り付けられたものであって、前記冷却手段は、冷却媒体を流通させる流路或いは熱放熱性を有する部材で構成されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】胴体と、前記胴体に回転可能に取り付けられた回転体と、前記回転体を駆動すると共に、外部電源或いは前記胴体に取り付けられた内部電源からの供給電力によって駆動される電動機と、前記電源から前記電動機に供給される電力を制御する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項16】車体と、前記車体に回転可能に取け付けられた前後輪と、前記前後輪のいずれか一方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項17】車体と、前記車体に回転可能に取り付けられた前後輪と、前記前後輪のいずれか一方を駆動する内燃機関と、前記内燃機関に代わって前後輪のいずれか一方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項18】車体と、前記車体に回転可能に取り付けられた前後輪と、前記前後輪の一方を駆動する内燃機関と、前記前後輪の他方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項19】請求項16乃至18のいずれかに記載された移動体において、前記車体は、運転操作機器が収納された運転室,前記内燃機関が収納された機関室,物品を載置できる荷台,前記前後輪の少なくとも一部の周囲を覆う部分を有し、前記電力変換装置は、前記運転室,前記機関室,前記荷台,前記覆い部分のいずれかに取り付けられていることを特徴とする移動体。
【請求項20】請求項16乃至18のいずれかに記載された移動体において、前記電力変換装置は、外面の一面に対してほぼ垂直に設けられ、かつ複数枚並設された板状の放熱部材を有すると共に、前記放熱部材が前記車体の移動方向を向き、かつ外気が前記放熱部材間を前記車体の移動面側から上方に向かって流れるように前記車体に取り付けられていることを特徴とする移動体。
【請求項1】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に複数実装されると共に、発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、前記発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも低い温度に上昇する電子部品及び前記基板と物理的に非接触状態で、前記発熱量の異なる少なくとも2種類の電子部品のうち、自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の一部分或いはその電子部品に設けられた放熱手段が埋め込まれ、かつ自己の発熱によって電子部品の表面限界温度よりも高い温度に上昇する電子部品の発熱或いは前記放熱手段に熱伝達された発熱を前記密閉容器に熱伝達する絶縁樹脂とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に実装された複数の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、前記基板表面から1mm以上の間隔を空けて前記密閉容器内面と接触するように、前記密閉容器と前記基板との間に充填された絶縁樹脂とを有し、前記樹脂は、前記複数の電子部品のうち、前記基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する電子部品の一部分或いは電子部品に設けられた放熱手段を埋め込み、前記基板表面から1mm以上の高さ寸法を有する電子部品の発熱或いは前記放熱手段に熱伝達された発熱を前記密閉容器に熱伝達することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】電力制御用の半導体素子を有するパワーモジュール部と、前記半導体素子の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、密閉容器と、前記密閉容器内に配設された基板と、前記基板に実装されると共に、容量素子,電圧制御用素子,演算処理用素子を含む複数の電子部品と、熱伝導性を有すると共に、少なくとも前記容量素子,前記電圧可変用素子を除く前記複数の電子部品及び前記基板と物理的に非接触状態で、少なくとも前記容量素子,前記電圧制御用素子の一部分及び前記演算処理用素子に設けられた放熱手段が埋め込まれ、かつ少なくとも前記容量素子,前記電圧制御用素子の発熱及び前記放熱手段に熱伝達された前記演算処理用素子の発熱を前記密閉容器に熱伝達する絶縁樹脂とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載された電力変換装置において、前記制御部を構成する前記密閉容器内に前記パワーモジュール部が構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】請求項4に記載された電力変換装置において、前記パワーモジュール部は、前記半導体素子を収納する容器と容量素子を有し、前記容器と前記容量素子は、前記絶縁樹脂と物理的に接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】請求項4に記載された電力変換装置において、前記密閉容器は、水平方向或いは上下方向に仕切られていると共に、その一方側に前記素子部が配置され、その他方側に前記制御部が配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】請求項1乃至3のいずれかに記載された電力変換装置において、前記制御部を構成する密閉容器とは別の密閉容器で前記パワーモジュール部を構成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】請求項7に記載された電力変換装置において、前記パワーモジュールを構成する密閉容器と前記制御部を構成する密閉容器は、水平方向或いは上下方向に近接或いは隣接して配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、空気よりも熱伝導率が高いものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、熱伝導性を有する充填材が混入されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、シリカ製或いはセラミックス製の粒子状或いは箔状の無機充填材がウレタン系樹脂或いはシリコン系樹脂に混入されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂は、前記絶縁樹脂に埋め込まれた電子部品の発熱量の大きさに応じて、前記絶縁樹脂よりも熱伝導率の小さい部材で分離されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記絶縁樹脂に埋め込まれた電子部品のうち、発熱量の最も大きい電子部品の周囲に存在する前記絶縁樹脂とその他の電子部品の周囲に存在する前記絶縁樹脂は、前記絶縁樹脂よりも熱伝導率の小さい分離部材によって分離されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】請求項1乃至8のいずれかに記載された電力変換装置において、前記密閉容器は、熱放熱性を有する金属製のもの或いは前記絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が一体形成されたもの若しくは前記絶縁樹脂が接触する壁に冷却手段が取り付けられたものであって、前記冷却手段は、冷却媒体を流通させる流路或いは熱放熱性を有する部材で構成されたものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】胴体と、前記胴体に回転可能に取り付けられた回転体と、前記回転体を駆動すると共に、外部電源或いは前記胴体に取り付けられた内部電源からの供給電力によって駆動される電動機と、前記電源から前記電動機に供給される電力を制御する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項16】車体と、前記車体に回転可能に取け付けられた前後輪と、前記前後輪のいずれか一方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項17】車体と、前記車体に回転可能に取り付けられた前後輪と、前記前後輪のいずれか一方を駆動する内燃機関と、前記内燃機関に代わって前後輪のいずれか一方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項18】車体と、前記車体に回転可能に取り付けられた前後輪と、前記前後輪の一方を駆動する内燃機関と、前記前後輪の他方を駆動する電動機と、前記電動機に供給される駆動電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置から前記電動機に供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置とを備え、前記電力変換装置は、請求項1乃至14のいずれかに記載された電力変換装置であることを特徴とする移動体。
【請求項19】請求項16乃至18のいずれかに記載された移動体において、前記車体は、運転操作機器が収納された運転室,前記内燃機関が収納された機関室,物品を載置できる荷台,前記前後輪の少なくとも一部の周囲を覆う部分を有し、前記電力変換装置は、前記運転室,前記機関室,前記荷台,前記覆い部分のいずれかに取り付けられていることを特徴とする移動体。
【請求項20】請求項16乃至18のいずれかに記載された移動体において、前記電力変換装置は、外面の一面に対してほぼ垂直に設けられ、かつ複数枚並設された板状の放熱部材を有すると共に、前記放熱部材が前記車体の移動方向を向き、かつ外気が前記放熱部材間を前記車体の移動面側から上方に向かって流れるように前記車体に取り付けられていることを特徴とする移動体。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図11】
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【公開番号】特開2002−369550(P2002−369550A)
【公開日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−174960(P2001−174960)
【出願日】平成13年6月11日(2001.6.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年6月11日(2001.6.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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