説明

電力変換装置

【課題】従来よりも構成を小規模とし、コストを低減できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電源から供給される電力を変換して出力する電力変換部21と、電力変換部21を構成するスイッチング素子Q1〜Q6(スイッチング素子群)を駆動制御するコントローラ22とを有する電力変換装置20において、スイッチング素子Q1〜Q6はセンス電流を出力するセンス端子S1〜S6を備え、センス端子S1〜S6には抵抗器R1〜R6を接続し、コントローラ22は、電力変換部21に内蔵されるとともに、センス電流と抵抗器R1〜R6の両端にかかるセンス電圧の相関関係を記録する記録媒体と、検出するセンス電圧から相関関係に従って得られるセンス電流に基づいて発電電動機30(出力機器)の作動状態を制御する機器制御手段とを有する。この構成によれば、従来では必要であった保護回路や電流センサが不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換部と制御部を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、電動機に流れる電流を電流センサで検出し、許容値を超える電流が所定頻度以上に発生した場合に異常を検出する異常検出装置の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。この技術によれば、制御部(例えばマイコンやコントローラ等)は、ノイズ等によって電流が一時的に許容値を超えるような場合には異常とせず、持続的に許容値を超えるような場合に異常と判別する。なお、特許文献1に具体的な記載はないが、一時的とはいえ電流が許容値を超えるためにスイッチング素子を保護するための保護回路を備えなければならない。
【0003】
コストを低減する方法として、センス端子を備えたスイッチング素子を用い、AD変換による過電流検出の遅れを防止するためにアナログ回路で構成した過電流検出回路の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。この技術によれば、過電流を検出したらスイッチング素子を高速に遮断できるようにするため、センス端子に流れる電流が許容値を超えるかで判別する構成となっている。ただし、センス端子に流れる電流は温度に依存する特性があるため、当該温度による電流値の補償を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−309097号公報
【特許文献2】特開2008−136335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2のいずれの技術にせよ、スイッチング素子を保護するための保護回路を備える必要がある。また、特許文献1の技術では、電流センサを別個に備えなければならない。したがって、構成が大規模になり、コストが嵩むという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、従来よりも構成を小規模とし、コストを低減できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、電源から供給される電力を変換して出力機器に出力する電力変換部と、前記電力変換部を構成するスイッチング素子群を駆動制御する制御部とを有する電力変換装置において、前記スイッチング素子群の各スイッチング素子はセンス電流を出力するセンス端子を備え、前記センス端子には抵抗器を接続し、
前記制御部は、前記電力変換部に内蔵されるとともに、前記センス電流と前記抵抗器の両端にかかるセンス電圧との相関関係を記録する記録媒体と、検出する前記センス電圧から前記相関関係に従って得られる前記センス電流に基づいて前記出力機器の作動状態を制御する機器制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、「電源」には電源自身のほか、コンバータ等を含む。「出力機器」は電力変換部から出力する電力を受けて作動可能な任意の機器を適用できる。例えば、回転機(すなわち発電機,電動機,発電電動機等)、電力系統、負荷等のうちで一以上が該当する。「スイッチング素子(群)」にはスイッチング機能を有する任意の半導体素子を用いることができ、例えばIGBTやパワートランジスタ等が該当する。
【0009】
この構成によれば、制御部は電力変換部に内蔵されるため、センス端子に接続する抵抗器の両端にかかるセンス電圧を直接的に制御部に入力する。制御部に備える過電流制御手段は、まず入力したセンス電圧に対応するセンス電流を求める。具体的には、記録媒体に記録された相関関係の情報に基づいて決定する。相関関係の情報は任意に規定してよく、例えばデータテーブル形式で表す方法や、関数形式で表す方法等がある。こうして得られたセンス電流に基づいて、機器制御手段は出力機器の作動状態を制御する。作動状態の制御は出力機器によって異なり、例えば回転機の場合はトルクや回転数等の制御が該当する。したがって、従来技術では必要であった保護回路や電流センサが不要となるので、従来よりも構成を小規模にすることができ、コストを低減できる。なお、スイッチング素子はセンス端子を備えていれば任意の素子を適用でき、例えばIGBTやパワーMOSFET等の半導体素子が該当する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記出力機器が回転機である場合には、前記機器制御手段は前記センス電流に従って前記出力機器のトルクおよび回転数のうち一方または双方を制御することを特徴とする。この構成によれば、電流センサが不要となるので、コストを低減できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、検出する前記センス電圧が所定範囲外の前記センス電流になると、前記スイッチング素子群を保護するための制御を行う過電流制御手段を有することを特徴とする。この構成によれば、所定範囲外のセンス電流になると、過電流制御手段はスイッチング素子群を保護するための制御を行う。例えば、スイッチング素子群の駆動を停止させる制御や、スイッチング素子群の駆動を低下させる制御などが該当する。したがって、保護回路や電流センサが不要となるので、従来よりも構成を小規模にすることができ、コストを低減できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記過電流制御手段は、前記スイッチング素子群の駆動を停止させる制御を行うか、または、前記スイッチング素子群の駆動を低下させる制御を行うことを特徴とする。この構成によれば、過電流制御手段はスイッチング素子群の駆動を停止させる制御を行うか、スイッチング素子群の駆動を低下させる制御を行う。いずれの制御にせよスイッチング素子に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記過電流制御手段は、前記センス電流が通常限界値を超えると前記スイッチング素子群の駆動を低下させる制御を行い、さらに前記センス電流が許容値を超えると前記スイッチング素子群の駆動を停止させる制御を行うことを特徴とする。この構成によれば、センス電流が通常限界値(すなわち通常の駆動制御によって流れる電流の限界値)を超えるか、さらに許容値(すなわちスイッチング素子に流せ得る上限値)を超えるかに応じて段階的にスイッチング素子群の制御を行う。段階的に制御することで、スイッチング素子に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記記録媒体には、対象となるスイッチング素子にかかるゲート電圧および温度のうち一方または双方に対応して、前記センス電流と前記センス電圧との相関関係を記録することを特徴とする。この構成によれば、センス電流とセンス電圧との相関関係は、複数のゲート電圧について各電圧ごとに記録したり、複数の温度について各温度ごとに記録したりする。電力変換部を構成する各スイッチング素子の特性に合わせて、ゲート電圧および温度のうち一方または双方に対応した相関関係を記録すればよい。こうすればスイッチング素子の依存性に対応することができるようになり、使用環境に応じたセンス電流をより正確に求めることができる。したがって、どのような使用環境でもスイッチング素子群の保護を的確に行うことができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記制御部は、前記ゲート電圧および前記温度のうち一方または双方を入力し、当該入力した情報に基づいて前記センス電流を特定することを特徴とする。この構成によれば、ゲート電圧および温度のうち一方または双方を直接的に制御部に入力する。温度は検出器が出力する信号内容に依存し、温度に相関する電圧(例えば25[℃]のときに1.5[V]等)であったり、温度自体のデータ(例えば25[℃]のときに25を表すデジタルデータ等)であったりする。使用環境に応じたセンス電流をより正確に求めることができるので、スイッチング素子群の保護を的確に行うことができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記記録媒体には、前記センス電流と前記センス電圧との相関関係を示す特性線に関する情報を記録することを特徴とする。この構成によれば、センス電流とセンス電圧との相関関係を特性線で表し、当該特性線に関する情報を記録媒体に記録する。特性線は直線や曲線で表すことができるので、特性線に関する情報は関数を特定する情報となる。データテーブルでは情報量が多くなるが、関数は必要な情報量を少なくできる。したがって、記録媒体に必要な記録容量を少なく抑えることができ、ひいてはコストを低く抑えることができる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記機器制御手段および前記過電流制御手段が行う制御に関する情報を外部装置に報知する報知手段を有することを特徴とする。この構成によれば、報知手段は制御に関する情報を外部装置に報知する。制御に関する情報は任意に設定でき、例えばセンス電流,センス電圧,ゲート電圧,温度等のような各情報のうちで一以上の情報が該当する。こうすれば、外部装置は電力変換装置の状態を把握することができ、次に電力変換装置に対する指令を行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電力変換装置の構成例を示す模式図である。
【図2】スイッチング素子を中心とする接続例を示す回路図である。
【図3】コントローラの構成例を示す模式図である。
【図4】センス電流とセンス電圧との相関関係の一例を示すグラフ図である。
【図5】ゲート電圧および温度ごとの相関関係を示すグラフ図である。
【図6】センス電流制御処理の手続き例を示すフローチャートである。
【図7】相電流に対するセンス電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図8】過電流が生じる場合の措置を説明するグラフ図である。
【図9】過電流が生じる場合の措置を説明するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。また、連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば「スイッチング素子Q1〜Q6」は、「スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6」を意味する。出力機器には、エンジン始動および発電の双方が行える車両用の発電電動機を適用した例について説明する。
【0020】
まず図1には、電力変換装置の構成例を模式図で示す。図1に示す電力変換装置20は、コンバータ回路10を経て供給される電力を変換して発電電動機30に出力する機能を有する。この電力変換装置20は、電力変換部21、コントローラ22、絶縁部23,24等を有する。コンバータ回路10と電力変換装置20との間には、平滑用のコンデンサC2が接続される。このコンデンサC2は、コンバータ回路10から入力される直流電源電圧の電位変動を低減する。
【0021】
コンバータ回路10は、第1電源E1(例えばバッテリ等)から平滑用のコンデンサC1を介して供給される直流電圧V1(例えば12ボルト等)を、電力変換装置20で必要とする直流電圧V10(例えば650ボルト等)に変換して出力する機能を有する。このコンバータ回路10の構成や作動等は周知であるので図示および説明を省略する。
【0022】
電力変換装置20は、給電機能と送電機能とを切り換え可能に備える。給電機能は、第1電源E1からコンバータ回路10を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換し、発電電動機30に供給する機能である。送電機能は、発電電動機30が発電した三相交流電力を整流し、コンバータ回路10を介して第1電源E1に還流する機能である。
【0023】
電力変換部21は、駆動回路M1〜M6、スイッチング素子Q1〜Q6、ダイオードD1〜D6、抵抗器R1〜R6などを有する。図示を省略した感温ダイオードDθ1〜Dθ6は後述する(図2を参照)。駆動回路M1〜M3、スイッチング素子Q1〜Q3、ダイオードD1〜D3、抵抗器R1〜R3などは上アーム側に配置される。駆動回路M4〜M6、スイッチング素子Q4〜Q6、ダイオードD4〜D6、抵抗器R4〜R6などは下アーム側に配置される。
【0024】
駆動回路M1〜M6は、制御電源50から電圧の供給を受けて作動する。駆動回路M1〜M6は第1電源E1から制御(例えば降圧電源)された電源から供給を受けて作動しても良い。この駆動回路M1〜M6は、コントローラ22から個別に伝達される制御信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号等)に従って、対応するスイッチング素子Q1〜Q6の制御端子(例えばゲート端子等)に駆動信号を出力する。なお、駆動回路M1〜M3が制御端子Pi1〜Pi3を介して受ける電圧と、駆動回路M4〜M6が制御端子Pi4〜Pi6を介して受ける電圧とでは基準電位が異なる。これは、半導体スイッチング素子(例えばIGBT)の所定端子(例えばエミッタ端子)を基準としてゲート電圧を形成するためである。制御端子Pi1〜Pi3から、後述するスイッチング素子Q1〜Q3のセンス端子Ps1〜Ps3の間も基準電位が異なるので、絶縁を確保するために絶縁素子(または高耐圧素子)が必要である。
【0025】
「スイッチング素子群」に相当するスイッチング素子Q1〜Q6には、例えばセンス電流を出力するセンス端子S1〜S6を備えたIGBTを用いる。センス端子Ps4〜Ps6と共通電位G2との間には、それぞれ抵抗器R4〜R6を接続する。抵抗器R1〜R3はそれぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q3のエミッタ端子と接続される。共通電位G2は電力変換装置20内で共通する電位(同電位グランド)であって、当該電力変換装置20がグランドG1と接続された場合にはアースと同電位になる。共通電位G2は一般的にアースと同電位でないので、グランドG1とは異なる図記号を用いて図示する。ここで、図1では図示を簡単にするために一部の素子を省略したので、図2を参照しながらスイッチング素子Q1〜Q6の具体的な接続例を説明する。
【0026】
図2には、スイッチング素子Qnを中心とする接続例を示す。nに1〜6のいずれかの数値を適用すると、図1に示すスイッチング素子Q1〜Q6のいずれか一のスイッチング素子に対応する。このことは以下の記載でも同様とする。言い換えれば、スイッチング素子Qnはスイッチング素子Q1〜Q6を代表して説明する回路素子であり、図示する他の回路素子も同様である。ただし、上アームのスイッチング素子Q1〜Q3は共通電位G2には接続されない(図1を参照)。
【0027】
図1で図示を省略した回路素子は、スイッチング素子Qnの温度を検出する感温ダイオードDθnである。感温ダイオードDθnは、アノード側を制御電源50に接続し、カソード側を共通電位G2に接続する。感温ダイオードDθnには制御電源50から定電流が供給され、感温ダイオードDθnの両端にかかる電圧が温度θnに相関する。一例として、感温ダイオードDθnにかかる電圧が2[V]であれば、スイッチング素子Qnの温度が20[℃]であることを示す。
【0028】
抵抗器Rnの両端にかかるセンス電圧Vsenは、センス端子Snを流れるセンス電流Isnと相関関係がある。この相関関係については後述する(図4,図5を参照)。上述したセンス電圧Vsen、温度θn、スイッチング素子Qnのゲート端子に印加されるゲート電圧Vgn、スイッチング素子Qnのコレクタ端子とエミッタ端子との間に生じる端子間電圧Vcenなどは、コントローラ22に入力される(図3を参照)。
【0029】
図1に戻って、ダイオードD1〜D6は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列接続される。これらのダイオードD1〜D6は、いずれもフリーホイールダイオードとして機能する。
【0030】
電力変換部21内の回路素子は、一点鎖線で囲って示すように三相(本例ではU相,V相,W相)に分けられ、コントローラ22によって相ごとに作動が制御される。U相は、駆動回路M1,M4、スイッチング素子Q1,Q4、ダイオードD1,D4、抵抗器R1,R4などで構成される。V相は、駆動回路M2,M5、スイッチング素子Q2,Q5、ダイオードD2,D5、抵抗器R2,R5などで構成される。W相は、駆動回路M3,M6、スイッチング素子Q3,Q6、ダイオードD3,D6、抵抗器R3,R6などで構成される。U相のスイッチング素子Q1,Q4は、直列接続されてハーフブリッジを構成する。V相のスイッチング素子Q2,Q5と、W相のスイッチング素子Q3,Q6とについても同様に、直列接続されてハーフブリッジを構成する。ハーフブリッジの各接続点と発電電動機30の三相端子とは、線路Ku,Kv,Kwによって相ごとに接続されている。線路KuにはU相電流Iuが流れ、線路KvにはV相電流Ivが流れ、線路KwにはW相電流Iuが流れる(図7を参照)。
【0031】
「制御部」に相当するコントローラ22は、電力変換装置20に内蔵され、コンバータ回路10や電力変換装置20等の動作を司る。例えば、絶縁部23,24を介して入力される信号情報に基づいて、コンバータ回路10や電力変換装置20等を制御するための制御信号(例えばPWM信号等)を出力する。入力される信号情報には、例えば外部ECU(すなわち外部の制御装置)から伝達される指令信号(例えばトルク指令,回転数指令等)や、発電電動機30側に備えられた回転角センサ40等の検出信号などが該当する。また、外部ECUに対し絶縁部23を介して信号情報を出力したり、回転角センサ40に対し絶縁部24および信号変換部25を介して信号(例えば励磁信号や検出信号等)を入出力する。
【0032】
コントローラ22の構成例を示す図3を参照しながら説明する。図3に示すコントローラ22は、記録媒体22a,機器制御手段22b,過電流制御手段22c,報知手段22dなどを有する。記録媒体22aには、図2に示すセンス電流Isnとセンス電圧Vsenとの相関関係を記録する。具体的にどのような情報を記録するのかについては後述する(図4,図5を参照)。この相関関係を記録できる限りにおいて、記録媒体22aには任意の媒体を用いてよい。例えば、ROM,EEPROM,光磁気ディスク等が該当する。
【0033】
機器制御手段22bは、センス電流Is1〜Is6に基づいて発電電動機30の作動状態(例えば回転数等)を制御する。過電流制御手段22cは、センス電圧Vse1〜Vse6が所定範囲外となるセンス電流Is1〜Is6を検出すると、スイッチング素子Q1〜Q6を保護するための制御を行う。報知手段22dは、スイッチング素子Q1〜Q6を保護する制御を行うとき、保護に関する情報を外部ECUに報知する。
【0034】
上述した機能を果たす限りにおいて、コントローラ22は任意に構成してよい。例えば、CPU(マイコンを含む)によってソフトウェア制御を行う構成としてもよく、IC(LSIやゲートアレイ等を含む)やトランジスタ等の電子部品を用いてハードウェア制御を行う構成としてもよい。
【0035】
再び図1に戻って、絶縁部23,24には、例えば光電素子(例えばフォトカプラ等)、磁気結合素子(トランスやコイル等)、容量性素子(例えばコンデンサ)などのうちで一の素子を用いる。発電電動機30は、エンジン始動および発電の双方を行う。回転角センサ40には、発電電動機30に備えるロータの回転角や回転位置を検出可能なセンサ、例えばレゾルバを用いる。
【0036】
制御電源50は、第2電源E2から供給される直流電圧V2(例えば5ボルト等)を、コントローラ22や駆動回路M1〜M6等で必要とする電圧や電流に変換して出力する機能を有する。この制御電源50の構成や作動等は周知であるので図示および説明を省略する。第2電源E2には、第1電源E1と同様に、例えばバッテリを用いる。制御電源50および第2電源E2はグランドG1にアースされている。
【0037】
記録媒体22aに記録する相関関係について、図4,図5を参照しながら説明する。なお、説明にあたっては図2に示す符号を用いる。まず図4には、センス電流Isnを縦軸とし、センス電圧Vsenを横軸とする相関関係をグラフで示す。ただし、スイッチング素子(IGBT)の動作特性は、ゲート電圧Vgnや素子自体の温度θn等に依存するため、ゲート電圧Vgnが15[V]、温度θnが150[℃]のときの例である。
【0038】
計測は、スイッチング素子Q1〜Q6を電力変換部21に組み込む前に、予め計測装置等を用いて行う。計測する対象は全てのスイッチング素子が望ましいが、個体差が少なくほぼ同じ動作特性を示すスイッチング素子を一種類とするときは種類ごとを対象としてもよい。具体的には、スイッチング素子に所定のセンス電流Isnが流れるように条件設定し、当該条件設定におけるセンス電圧Vsenを電圧計で計測する。さらには、スイッチング素子の入出力端子間(例えばコレクタ端子とエミッタ端子との間)を流れる電流を電流計で計測するのが望ましい。スイッチング素子に流すセンス電流Isnの大きさは任意であるが、スイッチング素子にとって許容範囲の限界値(通常限界値や許容値)を含めて複数点について計測する。計測点数が多いほど、計測対象のスイッチング素子にかかる動作特性を正確に特定し易くなる。
【0039】
図4には11点を計測した例を示し、各計測点を黒丸でプロットしている。こうして計測したデータに基づいて、スイッチング素子(IGBT)の動作特性を表す特性線Xを決定する。特性線Xを決定するにあたって、特定の関数(例えば一次関数,双曲線関数,逆双曲線関数,対数曲線等)を用いて近似線を求め得る数学的手法(例えば最小二乗法や回帰分析等)を適用してもよい。記録媒体22aには、上述したゲート電圧Vgnおよび温度θnのうち一方または双方のほか、関数を特定する情報を記録すればよいのでデータ量が少なく抑えられる。なお、記録媒体22aには、計測したデータ自体の情報のみを記録してもよく、特定の関数に関する情報とともに記録してもよい。さらには、センス電流Isnに対応して、スイッチング素子の入出力端子間を流れる電流(すなわち発電電動機30に流れる電流)や、発電電動機30の作動状態(例えばトルクおよび回転数のうち一方または双方)などを併せて記録するのが望ましい。
【0040】
図4にはゲート電圧Vgnが15[V]、温度θnが150[℃]のときの例を示したが、ゲート電圧Vgnが15[V],14[V],13[V]、温度θnが−40[℃],150[℃]のときの例を図5に示す。すなわち、図5には6つの特性線X1〜X6を示す。特性線X1〜X3は温度θnが−40[℃]の変化を示し、特性線X4〜X6は温度θnが150[℃]の変化を示す。変化させるのは、ゲート電圧Vgnおよび温度θnのうち一方または双方でよい。このように様々のゲート電圧Vgnおよび温度θnについて計測し、特定の関数に関する情報および計測したデータ自体の情報のうち一方または双方を記録媒体22aに記録しておく。ゲート電圧Vgnや温度θnの点数は、記録媒体22aに記録可能な範囲においてできるだけ多いほうが望ましい。
【0041】
上述した電力変換装置20において、コントローラ22で実行される制御の一つであるセンス電流制御について図6〜図9を参照しながら説明する。図6にフローチャートで示すセンス電流制御処理は、コントローラ22が作動しているときに繰り返し実行される。なお、図6中のステップST10〜ST16は機器制御手段22bを具体化した一例であり、ステップST17〜ST19は過電流制御手段22cを具体化した一例であり、ステップST20は報知手段22dを具体化した一例である。図7には相電流に対するセンス電圧の変化を示す。図8,図9には過電流が生じる場合の措置の一例を示す。
【0042】
図6に示すセンス電流制御処理において、まず発電電動機30に行う回転制御にかかる回転角を取得し〔ステップST10〕、取得した回転角に基づいて電流が流れているスイッチング素子を特定する〔ステップS11〕。スイッチング素子Q1〜Q6の中からステップS11で特定したスイッチング素子Qnについてゲート電圧Vgn,温度θn,センス電圧Vsen等の情報を入力する〔ステップST12〕。
【0043】
ステップST10〜ST12の処理を行う背景は図7に示す通りである。すなわち図7に示すように、U相電流Iu,V相電流Iv,W相電流Iwが流れている場合、コントローラ22はパルス幅変調波形PWMによる制御を行うので、下アームのスイッチング素子Q4〜Q6にかかるセンス電圧Vse4〜Vse6を検出できるのはパルス幅変調波形PWMがオンとなったときに限られる。例えばスイッチング素子Q4についてはセンス電圧Vse4で示すように、回転角としての電気角が30度から60度まで、90度から120度まで、150度から180度までである。スイッチング素子Q5についてはセンス電圧Vse5で示すように、電気角が150度から180度まで、210度から240度まで、270度から300度までである。スイッチング素子Q6についてはセンス電圧Vse6とについてはセンス電圧Vse6で示すように、電気角が270度から300度まで、330度から0度まで、30度から60度までである。
【0044】
図6に戻って、ステップST12で入力した情報のうち、ゲート電圧Vgnおよび温度θnに基づいて記録媒体22aに記録された特性線Xを特定する〔ステップST13〕。また、ステップST12で入力したセンス電圧Vsenと、ステップST13で特定した特性線Xとに基づいて、現在流れているセンス電流Isnを求める〔ステップST14〕。例えば図8に示す特性線XをステップST13で特定した場合は、センス電圧VsenがVxであれば、センス電流IsnとしてIxが求められる。
【0045】
ステップST14で求めたセンス電流Isnに基づいて、発電電動機30の作動状態(例えばトルクおよび回転数のうち一方または双方)が目標値と異なるか否かを判別する〔ステップST15〕。目標値はセンス電流Isnと対比させる作動状態の数値を設定する。なお、センス電流Isnに対応するスイッチング素子の入出力端子間を流れる電流を記録媒体22aに記録している場合には、当該入出力端子間を流れる電流と対比させる作動状態の数値を設定してもよい。もし発電電動機30の作動状態が目標値と同じならば(NO)、後述するステップST17に進む。「目標値と同じ」とは、目標値と同一値であるか否かを判断してもよく、目標値から一定範囲内(例えば目標値を基準として数%の範囲内)に収まっているか否かを判断してもよい。
【0046】
一方、発電電動機30の作動状態が目標値と異なれば(YES)、当該目標値に近づくようにパルス幅変調波形PWMのデューティ比を変更してスイッチング素子Q1〜Q6を駆動する制御を行い〔ステップST16〕、後述するステップST17に進む。デューティ比をどの程度変更すべきかは制御対象(作動状態)によって変わり、具体的な制御内容については周知であるので説明を省略する。
【0047】
次に、ステップST14で求めたセンス電流Isnが許容範囲内か否かを判別する〔ステップST17〕。許容範囲は、スイッチング素子Q1〜Q6と発電電動機30とで通常は異なる。また、後述するステップST18,ST19の一方または双方のいずれを実行するかによって、許容範囲内か否かの判別を行う際の対象値(通常限界値または許容値)が変わる。通常限界値は、通常の駆動制御によってスイッチング素子Q1〜Q6に流れる電流の限界値を意味する。許容値は、スイッチング素子Q1〜Q6に流せる電流の限界値(上限値)を意味する。ステップST18,ST19の双方を実行する場合は、通常限界値に達する前は通常限界値を適用し、通常限界値に達した後は許容値を適用する。
【0048】
もしセンス電流Isnが許容範囲内であれば(YES)、スイッチング素子Q1〜Q6および発電電動機30の双方が正常に作動しているので、そのままステップST20に進む。一方、センス電流Isnが許容範囲外であれば(NO)、ステップS11で特定したスイッチング素子Qnに過電流が流れていると考えられる。そのため、発電電動機30に出力する平均の出力電圧が下がるようにスイッチング素子Q1〜Q6を駆動する制御〔ステップST18〕、およびスイッチング素子Q1〜Q6の駆動を全て停止させる制御〔ステップST19〕のうち一方または双方を行ってステップST20に進む。そして、制御に関する情報を外部ECUに報知し〔ステップST20〕、センス電流制御処理をリターンする。報知を行う情報は任意に設定でき、例えばセンス電流Isn,センス電圧Vsen,ゲート電圧Vgn,温度θn等のような各情報のうちで一以上の情報が該当する。
【0049】
ここで、ステップST18,ST19の具体的な制御内容について、図8,図9を参照しながら説明する。図8,図9には、図6のステップST13で図5に示す特性線X5を特定した例を示す。図8と図9とでは、通常限界値と許容値との間における措置が異なる。通常限界値は、図9に示すセンス電流Idwおよびセンス電圧Vdwが該当する。許容値は、図8および図9に示すセンス電流Imaxおよびセンス電圧Vmaxが該当する。
【0050】
まず図8に従う措置は、ステップST18,ST19のいずれか一方を実行する。すなわち、ステップST14で求めたセンス電流Isnがセンス電流Imaxを超えてクロスハッチで示す範囲内になると、発電電動機30に出力する平均の出力電圧が下がるようにスイッチング素子Q1〜Q6を駆動するか(ステップST18)、あるいはスイッチング素子Q1〜Q6の駆動を全て停止させる(ステップST19)。いずれを行うにせよスイッチング素子Q1〜Q6に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0051】
図9に従う措置は、ステップST18,ST19の双方を実行する。すなわち、ステップST14で求めたセンス電流Isnがセンス電流Idwを超えて斜線ハッチで示す範囲内になると、発電電動機30に出力する平均の出力電圧が下がるようにスイッチング素子Q1〜Q6を駆動する(ステップST18)。さらに、センス電流Isnがセンス電流Imaxを超えてクロスハッチの範囲内になると、スイッチング素子Q1〜Q6の駆動を全て停止させる(ステップST19)。こうして段階的に制御することで、スイッチング素子Q1〜Q6に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0052】
上述した実施の形態によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、コントローラ22(制御部)は電力変換部21に内蔵されるため、センス端子Sn(S1〜S6)に接続する抵抗器Rn(R1〜R6)の両端にかかるセンス電圧Vsen(Vse1〜Vse6)を直接的にコントローラ22に入力する(図1,図2を参照)。コントローラ22に備える機器制御手段22bは、入力したセンス電圧Vsenに対応するセンス電流Isn(Is1〜Is6)を求める(図6のステップST10〜ST14を参照)。もしセンス電流Isnが目標値と異なると、機器制御手段22bはセンス電流Isn(Is1〜Is6)に基づいて発電電動機30(出力機器)の作動状態を制御する構成とした(図6のステップST15,ST16を参照)。この構成によれば、センス電流Isnに基づいてスイッチング素子の入出力端子間を流れる電流を推測でき、従来技術では必要であった保護回路や電流センサが不要となる。したがって、従来よりも構成を小規模にすることができ、コストを低減できる。
【0053】
請求項2に対応し、機器制御手段22bはセンス電流Isnに従って発電電動機30のトルクおよび回転数のうち一方または双方を制御する構成とした(図6のステップST15,ST16を参照)。この構成によれば、センス電流Isnに基づいて制御でき、電流センサが不要となるので、コストを低減できる。
【0054】
請求項3に対応し、センス電流Isnが所定範囲外になると、過電流制御手段22cはスイッチング素子Q1〜Q6を保護するための制御を行う構成とした(図6のステップST17〜ST19を参照)。この構成によれば、センス電流Isnを監視していればよく、保護回路や電流センサが不要となるので、従来よりも構成を小規模にすることができ、コストを低減できる。
【0055】
請求項4に対応し、過電流制御手段22cは、スイッチング素子Q1〜Q6の駆動を停止させる制御を行うか、あるいはスイッチング素子Q1〜Q6の駆動を低下させる制御を行う構成とした(図6のステップST18,ST19および図8,図9を参照)。この構成によれば、いずれの制御を行うにせよ、スイッチング素子Q1〜Q6に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0056】
請求項5に対応し、過電流制御手段22cは、センス電流Isnが通常限界値を超えるとスイッチング素子Q1〜Q6の駆動を低下させる制御を行い、さらにセンス電流Isnが許容値を超えるとスイッチング素子Q1〜Q6の駆動を停止させる制御を行う構成とした(図6のステップST18,ST19および図8,図9を参照)。この構成によれば、段階的に制御することで、スイッチング素子Q1〜Q6に過電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0057】
請求項6に対応し、記録媒体22aには、電力変換部21を構成する各スイッチング素子の特性に合わせて、ゲート電圧および温度のうち一方または双方に対応した相関関係を記録する構成とした。この構成によれば、スイッチング素子Q1〜Q6の依存性に対応し、使用環境に応じたセンス電流Isnをより正確に求められる。したがって、どのような使用環境でもスイッチング素子Q1〜Q6の保護を的確に行うことができる。
【0058】
請求項7に対応し、ゲート電圧Vgnおよび温度θnのうち一方または双方を直接的にコントローラ22に入力してセンス電流Isnを特定する構成とした(図1,図2,図6を参照)。この構成によれば、使用環境に応じたセンス電流Isnをより正確に求められるので、スイッチング素子Q1〜Q6の保護を的確に行うことができる。
【0059】
請求項8に対応し、記録媒体22aには、センス電流Isnとセンス電圧Vsenとの相関関係を示す特性線に関する情報を記録する構成とした(図4,図5を参照)。この構成によれば、記録媒体22aに必要な記録容量を少なく抑えることができ、ひいてはコストを低く抑えることができる。
【0060】
請求項9に対応し、報知手段22dは、機器制御手段22bおよび過電流制御手段22cが行う制御に関する情報を外部ECU(外部装置)に報知する構成とした(図6のステップST20を参照)。この構成によれば、外部ECUは電力変換装置20の状態を把握することができ、次に電力変換装置20に対する指令を行える。
【0061】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0062】
上述した実施の形態では、スイッチング素子Q1〜Q6にはIGBTを適用したが(図1を参照)、スイッチング機能およびセンス端子を有する他のスイッチング素子を適用してもよい。他のスイッチング素子としては、パワーMOSFETなどのようなパワートランジスタ、SiCパワー素子、GTOなどが該当する。また、回転角センサ40にはレゾルバを適用したが(図1を参照)、回転体(例えばロータ等)の正確な回転角や回転位置等を検出可能な任意のセンサ(例えばアブソリュート形のロータリエンコーダ等)を適用してもよい。さらに、スイッチング素子Qnの温度を検出する感温素子には感温ダイオードDθnを適用したが(図2を参照)、スイッチング素子Qnの温度を検出可能な他の感温素子(例えばサーミスタ,熱電対,ピンフォトダイオード等)を適用してもよい。いずれにせよ単に素子の違いに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
上述した実施の形態では、出力機器としての発電電動機30を適用したが(図1を参照)、電力変換装置20で変換された電力を受けて作動する他の出力機器を適用してもよい。他の出力機器には、例えば電動機,電力系統,負荷等のうちで一以上が該当する。いずれの出力機器にせよ単に機器の違いに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
上述した実施の形態では、三相の発電電動機30に合わせて電力変換装置20の電力変換部21を三相で構成し、6のスイッチング素子Q1〜Q6を備えた(図1を参照)。この形態に代えて、電力変換部21を三相で構成するものの、上下アームのうち一方のアームに相当する3のスイッチング素子を備えてもよい。また、発電電動機30等の出力機器が三相以外の相数(例えば単相,二相,四相以上)であるときは、その相数に対応した数のスイッチング素子を備えてもよい。いずれにせよ単にスイッチング素子群を構成するスイッチング素子の数の違いに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
上述した実施の形態では、スイッチング素子Q1〜Q6とダイオードD1〜D6とは別体に構成したが(図1,図2を参照)、いずれも半導体であるので一体化した素子を用いてもよい。さらに感温ダイオードDθ1〜Dθ6を一体化した素子を用いてもよい。同様にして、上述した実施の形態ではコンバータ回路10は電力変換装置20の外部に備える構成としたが(図1を参照)、電力変換装置20に内蔵する構成としてもよい。単に形態が別体か一体かの違いに過ぎず、機能は同じであるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
上述した実施の形態では、ゲート電圧Vgnおよび温度θnが異なるごとに特性線Xを決定した(図4,図5を参照)。この形態に代えて、ゲート電圧Vgnのみが異なるごとに特性線Xを決定したり、温度θnのみが異なるごとに特性線Xを決定したりしてもよい。さらには、ゲート電圧Vgnおよび温度θnの組み合わせを除き、ゲート電圧Vgn,温度θn,端子間電圧Vcenのうち二以上を組み合わせて、組み合わせた各要素が異なるごとに特性線Xを決定してもよい。スイッチング素子の特性に応じて、特性線Xを決定するにあたって最適な基準を選択するのが望ましい。こうすればスイッチング素子の特性に適した特性線Xを決定することができ、スイッチング素子Q1〜Q6に過電流が流れるのをより確実に防止することができる。
【0067】
上述した実施の形態では、特性線X(X1〜X6)に基づいて、入力したセンス電圧Vsenからセンス電流Isnを求めた(図5,図6のステップST14を参照)。記録媒体22aに計測データ(センス電圧やセンス電流等)のみを記録した場合において、入力したセンス電圧Vsenが記録された計測データ以外の値であるときは、記録された計測データのうち最も近い二のデータを補間して求めてよい。このことは、ゲート電圧Vgnや温度θnごとに決定した特性線Xについてもあてはまる。ある程度の誤差は生じるが、補間した値で制御できるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
上述した実施の形態では、電力変換部21に備えるスイッチング素子Q1〜Q6や(図1を参照)、コントローラ22に備える記録媒体22aについて(図3を参照)、いずれも交換不能に構成した。この形態に代えて、スイッチング素子Q1〜Q6や記録媒体22aを交換可能に構成してもよい。こうすれば、性能劣化や故障等が生じたスイッチング素子を容易に交換することができる。また、新たに交換するスイッチング素子についてセンス電流と前記センス電圧との相関関係を示す特性線に関する情報を記録した記録媒体22aに交換することで、交換後のスイッチング素子に合わせた制御が行える。
【符号の説明】
【0069】
10 コンバータ回路
20 電力変換装置
21 電力変換部
22 コントローラ(制御部)
22a 記録媒体
22b 機器制御手段
22c 過電流制御手段
22d 報知手段
23,24 絶縁部
30 発電電動機
40 回転角センサ
50 制御電源
E1 第1電源(電源)
E2 第2電源
Mn(M1,M2,M3,M4,M5,M6) 駆動回路
Qn(Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6) スイッチング素子
Dn(D1,D2,D3,D4,D5,D6) ダイオード
Rn(R1,R2,R3,R4,R5,R6) 抵抗器
Sn(S1,S2,S3,S4,S5,S6) センス端子
Vsen(Vse1,Vse2,Vse3,Vse4,Vse5,Vse6) センス電圧
Isn(Is1,Is2,Is3,Is4,Is5,Is6) センス電流
θn(θ1,θ2,θ3,θ4,θ5,θ6) 温度
X,X1,X2,X3,X4,X5,X6 特性線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電力を変換して出力機器に出力する電力変換部と、前記電力変換部を構成するスイッチング素子群を駆動制御する制御部とを有する電力変換装置において、
前記スイッチング素子群の各スイッチング素子はセンス電流を出力するセンス端子を備え、
前記センス端子には抵抗器を接続し、
前記制御部は、前記電力変換部に内蔵されるとともに、前記センス電流と前記抵抗器の両端にかかるセンス電圧との相関関係を記録する記録媒体と、検出する前記センス電圧から前記相関関係に従って得られる前記センス電流に基づいて前記出力機器の作動状態を制御する機器制御手段と、を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記出力機器が回転機である場合には、前記機器制御手段は前記センス電流に従って前記出力機器のトルクおよび回転数のうち一方または双方を制御することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
検出する前記センス電圧が所定範囲外の前記センス電流になると、前記スイッチング素子群を保護するための制御を行う過電流制御手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記過電流制御手段は、前記スイッチング素子群の駆動を停止させる制御を行うか、または、前記スイッチング素子群の駆動を低下させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記過電流制御手段は、前記センス電流が通常限界値を超えると前記スイッチング素子群の駆動を低下させる制御を行い、さらに前記センス電流が許容値を超えると前記スイッチング素子群の駆動を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記記録媒体には、対象となるスイッチング素子にかかるゲート電圧および温度のうち一方または双方に対応して、前記センス電流と前記センス電圧との相関関係を記録することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ゲート電圧および前記温度のうち一方または双方を入力し、当該入力した情報に基づいて前記センス電流を特定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記記録媒体には、前記センス電流と前記センス電圧との相関関係を示す特性線に関する情報を記録することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記機器制御手段および前記過電流制御手段が行う制御に関する情報を外部装置に報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−15597(P2011−15597A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159995(P2009−159995)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】