説明

電力変換装置

【課題】電源と負荷との間で絶縁を確保しながら電力供給を行いつつ、負荷に高すぎる電圧が供給されることを防ぐことが可能な電力変換装置を得る。
【解決手段】電力変換装置101は、入力電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧回路11と、分圧電圧を第1の直流電圧に変換する昇圧回路12と、分圧電圧を第2の直流電圧に変換する昇圧回路13と、第1および第2の直流電圧を負荷202に供給する電力伝達用絶縁回路14とを備え、電力伝達用絶縁回路14は、キャパシタC5と、スイッチ素子Q3,Q4を含み第1の直流電圧をキャパシタC5に供給する入力スイッチ部21と、スイッチ素子Q5,Q6を含み第2の直流電圧をキャパシタC5に供給する入力スイッチ部22と、スイッチ素子Q7,Q8を含みキャパシタC5に蓄えられた電力を出力する出力スイッチ部23とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に出力電圧調整機能を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の交流電力を用いて電気自動車(EV:Electric Vehicle)およびプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
すなわち、電気自動車およびプラグイン方式のハイブリッドカーの特長の一つは、家庭用コンセント等の外部電源を用いて主電池である車載バッテリを充電できることである。そして、AC100VまたはAC200Vの家庭用コンセントを用いて車載バッテリを充電するには、交流電圧(AC)をバッテリ用の直流電圧(DC)に変換するためのAC/DCコンバータが必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、スイッチングによりデューティ比を変えることで、出力する直流電圧の昇圧が可能なAC/DCコンバータが開示されている。当該AC/DCコンバータによれば、昇圧回路において、AC入力に対して全波整流を行った後、スイッチングによる昇圧チョッパ制御によってリアクトルに蓄積されたエネルギーの放出をオンオフすることで、昇圧されたDC出力を得る。また、このオンオフの制御により、リアクトルに流れる電流の波形を入力電圧の波形と相似形となるように制御すれば、当該AC/DCコンバータの電力変換時における力率の改善を行うことができる。
【0005】
また、下記特許文献2には、AC/DCコンバータに用いられる電源装置用絶縁回路が開示されている。当該電源装置用絶縁回路は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、上記整流回路から供給される直流電流に残存する脈流成分を低減する第1のコンデンサと、上記第1のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第1のスイッチ回路と、上記第1のスイッチ回路から供給される電流を蓄積する第2のコンデンサと、上記第2のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第2のスイッチ回路と、上記第2のスイッチ回路から供給される電流を保持するとともに負荷側に放出する第3のコンデンサとを備える。また、オンとなる時間がオフとなる時間よりも短く設定された方形波によって構成されるコントロール信号φ1、および上記コントロール信号φ1と相補的にオンするとともにオフ時間がオフ時間よりも短く設定されたコントロール信号φ2を生成するゲートコントロール回路を備える。上記コントロール信号φ1により上記第1のスイッチ回路の開閉を行い、上記コントロール信号φ2により上記第2のスイッチ回路の開閉を行なう。このような構成により、大きな容積を占める電源トランスを使用することなく交流電圧を直流電圧に変換し、かつ交流電源側と負荷側とを電気的に絶縁することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−304670号公報
【特許文献2】特許第3595329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたAC/DCコンバータでは、入力された交流電圧を昇圧チョッパ回路によって昇圧し、昇圧された直流電圧として負荷に出力する。よって、この直流電圧は入力された交流電圧のピーク電圧より高い値となり、交流電圧の大きさによっては、負荷に大きすぎる電圧が印加されてしまうことがあった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された電源装置用絶縁回路を用いれば、電源側と負荷側との絶縁を行いつつ、電源側から負荷側へ直流電力の伝送を行うことができる。しかし、当該電源装置用絶縁回路によって昇圧回路が昇圧した直流電力を伝達したとしても、電源側の電圧と負荷側の電圧とは同じ電圧値となるので、昇圧回路が大きすぎる電圧を出力した場合は、負荷に大きすぎる電圧が印加されてしまう。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みて成されたものであり、電力入力側と負荷との絶縁を確保しながら負荷に直流電力の供給を行いつつ、負荷に高すぎる電圧が供給されることを防ぐことが可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る電力変換装置は、入力電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、入力電圧を分圧して第1の分圧電圧および第2の分圧電圧を生成する分圧回路と、前記第1の分圧電圧を第1の直流電圧に変換する第1変換部と、前記第2の分圧電圧を第2の直流電圧に変換する第2変換部と、前記第1変換部および前記第2変換部と、前記負荷とを絶縁しながら、前記第1の直流電圧および前記第2の直流電圧を前記負荷に供給する電力伝達用絶縁回路と、を備え、前記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する蓄電素子と、前記第1変換部と前記蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子、および前記第1変換部と前記蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、前記第1の直流電圧を前記蓄電素子に供給するための第1入力スイッチ部と、前記第2変換部と前記蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子、および前記第2変換部と前記蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第2の直流電圧を前記蓄電素子に供給するための第2入力スイッチ部と、前記蓄電素子の第1端と前記負荷との間に接続された第5のスイッチ素子、および前記蓄電素子の第2端と前記負荷との間に接続された第6のスイッチ素子を含み、前記蓄電素子に蓄えられた電力を前記負荷に供給するための出力スイッチ部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
第1の態様に係る電力変換装置によれば、分圧回路が入力電圧を分圧し、第1の分圧電圧と第2の分圧電圧とを生成する。第1変換部は第1の分圧電圧を第1の直流電圧に変換する。第2変換部は第2の分圧電圧を第2の直流電圧に変換する。電力伝達用絶縁回路においては、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子は、双方がオンオフすることで第1の直流電圧によって蓄電素子に電力を供給するか、第1変換部と蓄電素子とを絶縁するかを切り替える。また、第3のスイッチ素子および第4のスイッチ素子は、双方がオンオフすることで第2の直流電圧によって蓄電素子に電力を供給するか、第2変換部と蓄電素子とを絶縁するかを切り替える。そして、第5のスイッチ素子および第6のスイッチ素子は、双方がオンオフすることで蓄電素子に蓄えられた電力を負荷に供給するか、蓄電素子と負荷とを絶縁するかを切り替える。つまり、第1変換部の出力および第2変換部の出力を絶縁しながら第1の直流電圧と第2の直流電圧とを共通の蓄電素子に印加することにより、電力を蓄えることができる。よって、蓄電素子から負荷に出力される電圧は分圧回路が分圧した分圧電圧に基づいているため、入力電圧を分圧しない回路に比べ低い電圧となる。したがって、入力電圧が高い場合であっても、負荷に高すぎる電圧が印加されるのを防ぐことが可能となる。さらに、入力電圧を分圧することで、第1変換部、第2変換部、および電力伝達用絶縁回路に印加される電圧が低くなるので、入力電圧の分圧を行わない電力変換装置に比べ装置に用いられる素子に必要な耐圧性能を低くすることができる。
【0012】
第2の態様に係る電力変換装置によれば、第1の態様に係る電力変換装置において特に、前記電力伝達用絶縁回路は、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオンであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオフである状態とした後、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオンである状態とする第1スイッチ動作と、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオンであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオフである状態とした後、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオンである状態とする第2スイッチ動作と、を選択的に行うことを特徴とする。
【0013】
第2の態様に係る電力変換装置によれば、電力伝達用絶縁回路は、第1スイッチ動作を行うことで、第1変換部と負荷との間を絶縁しながら、第1変換部から入力された電力を負荷に供給することができる。また、第2スイッチ動作を行うことで、第2変換部と負荷との間を絶縁しながら、第2変換部から入力された電力を負荷に供給することができる。そして、第1スイッチ動作と第2スイッチ動作とを選択的に行うことで、第1変換部の出力側と第2変換部の出力側との短絡を防ぎ、第1変換部または第2変換部に電流が逆流するなどの誤作動を防ぐことが可能である。
【0014】
本発明の第3の態様に係る電力変換装置は、第2の態様に係る電力変換装置において特に、前記電力伝達用絶縁回路は、前記第1スイッチ動作と前記第2スイッチ動作とを交互に行うことを特徴とする。
【0015】
第3の態様に係る電力変換装置によれば、第1スイッチ動作と第2スイッチ動作とを交互に行うことで、第1変換部が出力した直流電圧を負荷に出力する動作と第2変換部が出力した直流電圧を負荷に出力する動作とを早い周期で切り替えることができる。よって、各スイッチ素子のスイッチング周波数を高くすることができ、当該装置に用いられる蓄電素子に蓄える電力量が小さくて済む。したがって、電気容量の小さな蓄電素子を用いることで、当該装置の小型化および低コスト化が可能である。
【0016】
本発明の第4の態様に係る電力変換装置は、第1から第3のいずれか一つの態様に係る電力変換装置において特に、前記第1変換部は、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオンである期間に、前記第1の直流電圧を前記第1入力スイッチ部に出力し、前記第2変換部は、前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオンである期間に、前記第2の直流電圧を前記第2入力スイッチ部に出力することを特徴とする。
【0017】
第4の態様に係る電力変換装置によれば、第1変換部が第1の直流電圧を出力するときは、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子はオンであるので、電力伝達用絶縁回路へ第1変換部が出力する電力を蓄える蓄電素子などを用いなくても負荷に電力を供給することができる。また、電力伝達用絶縁回路へ第1変換部が出力する電力を蓄える蓄電素子を用いる場合にも、大きな電気容量の蓄電素子を必要としない。第2変換部が第2の直流電圧を出力するときは、第3のスイッチ素子および第4のスイッチ素子はオンであるので、電力伝達用絶縁回路へ第2変換部が出力する電力を蓄える蓄電素子などを用いなくても負荷に電力を供給することができる。また、電力伝達用絶縁回路へ第2変換部が出力する電力を蓄える蓄電素子を用いる場合にも、大きな電気容量の蓄電素子を必要としない。したがって、電気容量の小さな蓄電素子を用いることで、当該装置の小型化および低コスト化が可能である。
【0018】
本発明の第5の態様に係る電力変換装置は、第1から第4のいずれか一つの態様に係る電力変換装置において特に、前記第1変換部および第2変換部はそれぞれ、前記分圧回路が生成する電圧が印加されるリアクトルと、オンすることで前記リアクトルに流れる電流が前記電力伝達用絶縁回路に供給されないように流れ、オフすることで前記リアクトルに流れる電流が前記電力伝達用絶縁回路に供給されるように流れ、オンからオフに切り替わることで前記リアクトルに誘導電圧を発生させる変換スイッチ素子と、を含み、前記第1変換部が含む前記リアクトルに発生した前記誘導電圧を前記第1の直流電圧とし、前記第2変換部が含む前記リアクトルに発生した前記誘導電圧を前記第2の直流電圧とし、前記第1変換部および前記第2変換部の一方において前記変換スイッチ素子がオフのとき、他方の前記変換スイッチ素子はオンとなることを特徴とする。
【0019】
第5の態様に係る電力変換装置によれば、第1変換部および第2変換部は、変換スイッチ素子のオンとオフとを切り替えることで、リアクトルに誘導電圧を発生させ、当該誘導電圧に基づいた電圧を、第1の直流電圧または第2の直流電圧として出力することができる。そして、第1変換部と第2変換部とが有する変換スイッチ素子は、一方がオンのとき他方がオフとなるため、同時にオンとはならない。よって、第1変換部と第2変換部とには、リアクトルに誘導電圧を発生させるための電流が増加する時期がずれるので、当該電力変換装置に入力される電流の脈動成分が大きくなるのを抑制することができ、当該電力変換装置で発生する損失を低減し、かつ力率を改善することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源と負荷との絶縁を確保しながら負荷に直流電力の供給を行いつつ、負荷に高すぎる電圧が供給されることを防ぐことが可能な電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を概略的に示した図である。
【図2】分圧回路と各昇圧回路とに入力される電流および電圧の向きを表した図である。
【図3】各スイッチ素子の状態と各昇圧回路の動作との関係を示したタイムチャートである。
【図4】各入力スイッチ部の動作を交互に行わない例を示したタイムチャートである。
【図5】各スイッチ素子の状態と各昇圧回路の動作との関係の変形例を示したタイムチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る電力変換装置の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一または相応する要素を示すものとする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置101の構成を概略的に示した図である。電力変換装置101は、整流回路10、分圧回路11、昇圧回路12,13、電力伝達用絶縁回路14、およびキャパシタC3,C4,C6を備える。分圧回路11は、キャパシタC1、およびキャパシタC2を含む。昇圧回路12は、巻線L1、スイッチ素子Q1、およびダイオードD1を含む。昇圧回路13は、巻線L2、スイッチ素子Q2、およびダイオードD2を含む。電力伝達用絶縁回路14は、入力スイッチ部21,22、出力スイッチ部23、およびキャパシタC5を含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Q3,Q4、およびダイオードD3,D4を含む。入力スイッチ部22は、スイッチ素子Q5,Q6、およびダイオードD5,D6を含む。出力スイッチ部23は、スイッチ素子Q7,Q8、およびダイオードD7,D8を含む。スイッチ素子Q1〜Q8は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0024】
電力変換装置101は、交流電源201から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷202に供給する。負荷202は、例えば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用のバッテリである。
【0025】
整流回路10は、例えば、ダイオードブリッジを含み、交流電源201から受けた交流電力を全波整流して分圧回路11へ出力する。
【0026】
図2は、分圧回路11と昇圧回路12,13とに入力される電流および電圧の向きを表した図である。分圧回路11は、整流回路10が整流した入力電圧V0を受け、直列に接続されたキャパシタC1とキャパシタC2とに電力を蓄積させつつ、入力電圧をキャパシタC1の両端電圧V1とキャパシタC2の両端電圧V2とに分圧する。整流回路10から出力された電流I0は、巻線L1に流れる電流I1と、巻線L2に流れる電流I2とに分かれて昇圧回路12,13に流れる。
【0027】
分圧回路11によって分圧された電圧を直流電圧に変換する変換部である昇圧回路12および昇圧回路13は、いわゆる昇圧チョッパ回路である。巻線L1は、キャパシタC1の第1端とスイッチ素子Q1のコレクタの間に接続される。スイッチ素子Q1は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、巻線L1、およびダイオードD1を介してキャパシタC3の第1端に接続されたコレクタと、キャパシタC1の第2端およびキャパシタC3の第2端に接続されたエミッタとを有する。
【0028】
そして、昇圧回路12は、制御部15からの制御信号を受け、スイッチ素子Q1がオンである状態とオフである状態とを切り替えることで、キャパシタC1の両端電圧V1に基づいた昇圧を行い、電力伝達用絶縁回路14の入力スイッチ部21およびキャパシタC3に昇圧された電圧を出力する。このとき、ダイオードD1は、電流がキャパシタC3から巻線L1に逆流することを防ぐ。
【0029】
また、巻線L2は、キャパシタC2の第1端とスイッチ素子Q2のコレクタの間に接続される。スイッチ素子Q2は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、巻線L2、およびダイオードD2を介してキャパシタC4の第1端に接続されたコレクタと、キャパシタC2の第2端およびキャパシタC4の第2端に接続されたエミッタとを有する。
【0030】
昇圧回路13は、制御部15からの制御信号を受け、スイッチ素子Q2がオンである状態とオフである状態とを切り替えることで、キャパシタC2の両端電圧V2に基づいた昇圧を行い、電力伝達用絶縁回路14の入力スイッチ部22およびキャパシタC4に昇圧された電圧を出力する。このとき、ダイオードD2は、電流がキャパシタC4から巻線L2に逆流することを防ぐ。
【0031】
入力スイッチ部21は、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4とによって昇圧回路12が昇圧した電圧を受ける。スイッチ素子Q3は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、昇圧回路12に接続されるコレクタと、キャパシタC5の第1端に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD3は、スイッチ素子Q3と並列に接続されており、ダイオードD3のアノードはスイッチ素子Q3のエミッタに接続され、ダイオードD3のカソードはスイッチ素子Q3のコレクタに接続される。スイッチ素子Q4は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、キャパシタC5の第2端に接続されるコレクタと、昇圧回路12に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD4は、スイッチ素子Q4と並列に接続されており、ダイオードD4のアノードはスイッチ素子Q4のエミッタに接続され、ダイオードD4のカソードはスイッチ素子Q4のコレクタに接続される。
【0032】
入力スイッチ部21のスイッチ素子Q3,Q4は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオン状態であるとき、入力スイッチ部21は、昇圧回路12が出力する電力およびキャパシタC3が蓄えた電力をキャパシタC5に供給する。また、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオフ状態であるとき、昇圧回路12およびキャパシタC3と、キャパシタC5とを絶縁する。
【0033】
そして、ダイオードD3はスイッチ素子Q3のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q3を保護している。ダイオードD4はスイッチ素子Q4のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q4を保護している。
【0034】
入力スイッチ部22は、スイッチ素子Q5とスイッチ素子Q6とによって昇圧回路13が昇圧した電圧を受ける。スイッチ素子Q5は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、昇圧回路13に接続されるコレクタと、キャパシタC5の第1端に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD5は、スイッチ素子Q5と並列に接続されており、ダイオードD5のアノードはスイッチ素子Q5のエミッタに接続され、ダイオードD5のカソードはスイッチ素子Q5のコレクタに接続される。スイッチ素子Q6は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、キャパシタC5の第2端に接続されるコレクタと、昇圧回路13に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD6は、スイッチ素子Q6と並列に接続されており、ダイオードD6のアノードはスイッチ素子Q6のエミッタに接続され、ダイオードD6のカソードはスイッチ素子Q6のコレクタに接続される。
【0035】
入力スイッチ部22のスイッチ素子Q5,Q6は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオン状態であるとき、入力スイッチ部22は、昇圧回路13が出力する電力およびキャパシタC4が蓄えた電力をキャパシタC5に供給する。また、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオフ状態であるとき、昇圧回路13およびキャパシタC4と、キャパシタC5とを絶縁する。
【0036】
そして、ダイオードD5はスイッチ素子Q5のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q5を保護している。ダイオードD6はスイッチ素子Q6のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q6を保護している。
【0037】
出力スイッチ部23は、キャパシタC5に蓄えられた電力を負荷202に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部23において、スイッチ素子Q7は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、キャパシタC5の第1端に接続されるコレクタと、キャパシタC6の第1端に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD7は、スイッチ素子Q7と並列に接続されており、ダイオードD7のアノードはスイッチ素子Q7のエミッタに接続され、ダイオードD7のカソードはスイッチ素子Q7のコレクタに接続される。スイッチ素子Q8は、制御部15からの制御信号を受けるゲートと、キャパシタC6の第2端に接続されるコレクタと、キャパシタC5の第2端に接続されるエミッタとを有している。ダイオードD8は、スイッチ素子Q8と並列に接続されており、ダイオードD8のアノードはスイッチ素子Q8のエミッタに接続され、ダイオードD8のカソードはスイッチ素子Q8のコレクタに接続される。
【0038】
出力スイッチ部23のスイッチ素子Q7,Q8は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8の双方がオン状態であるとき、出力スイッチ部23は、キャパシタC5が蓄えた電力をキャパシタC6ならびに負荷202に供給する。また、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8の双方がオフ状態であるとき、入力スイッチ部21ならびに入力スイッチ部22、およびキャパシタC5と、キャパシタC6および負荷202とを絶縁する。
【0039】
そして、ダイオードD7はスイッチ素子Q7のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q7を保護している。ダイオードD8はスイッチ素子Q8のスイッチングにより発生する逆流電流からスイッチ素子Q8を保護している。
【0040】
図3は、各スイッチ素子の状態と昇圧回路12,13の動作との関係を示したタイムチャートである。電圧V0は、交流電源201から入力された交流電圧が整流回路10によって整流された電圧であるので、全波整流波である。電圧V1および電圧V2は、分圧回路11によって電圧V0を分圧した電圧であるので、電圧V0の増減に応じて変動している。キャパシタC1およびキャパシタC2に同じ諸元のキャパシタを用いた場合、電圧V1および電圧V2は、電圧V0の半分の値となる。
【0041】
そして、電圧V1が昇圧回路12に印加されることによって、巻線L1に流れる電流である電流I1が発生する。スイッチ素子Q1がオン状態のとき、電流I1は巻線L1、およびスイッチ素子Q1を介する経路に流れる。このとき、電流I1により巻線L1に磁束が発生し、巻線L1に磁気エネルギーが蓄積される。
【0042】
スイッチ素子Q1がオフ状態のとき、巻線L1に蓄積された磁気エネルギーによって巻線L1に誘導電圧が発生する。この誘導電圧により昇圧回路12は、出力電圧を昇圧して出力する。このとき、電流I1は、コンデンサC3と入力スイッチ部21とに供給される。コンデンサC3によって昇圧回路12の出力電圧は平滑化され、入力スイッチ部21に、昇圧された直流電圧が出力される。
【0043】
つまり、昇圧回路12は、スイッチ素子Q1のオンオフが切り替わることで、いわゆる昇圧チョッパ回路として動作し、昇圧された直流電圧を出力する。この直流電圧の昇圧率は、スイッチ素子Q1のデューティ比によって制御される。また、昇圧回路12が動作する際、電流I1は電圧V1の増減に追随しつつ、スイッチ素子Q1がオン状態である期間で増加し、オフ状態である期間で減少する波形となる。このときのスイッチ素子Q1におけるスイッチングの周波数は、例えば数kHzから数十kHzである。
【0044】
また、昇圧回路13は昇圧回路12と同様に、いわゆる昇圧チョッパ回路として動作することで、入力スイッチ部22に昇圧された直流電圧を出力する。この直流電圧の昇圧率は、スイッチ素子Q2のデューティ比によって制御される。また、昇圧回路13が動作する際、電流I2は電圧V2の増減に追随しつつ、スイッチ素子Q2がオン状態である期間で増加し、オフ状態である期間で減少する波形となる。このときのスイッチ素子Q2におけるスイッチングの周波数は、例えば数kHzから数十kHzである。
【0045】
そして、電流I0は、電流I1および電流I2とキャパシタC1およびキャパシタC2を充電する電流との和であるので、キャパシタC1およびキャパシタC2を充電する電流が十分に小さければ、電流I0の波形は電圧V0の増減に追随するような波形となる。図3に示したように、スイッチ素子Q1がオン状態である期間とスイッチ素子Q2がオン状態である期間とをずらせば、電流I1の脈動成分のピークと電流I2の脈動成分のピークがずれるので、電流I0の脈動成分は抑制される。
【0046】
図3を参照して、制御部15は、スイッチ素子Q3,Q4の双方をオン状態、かつスイッチ素子Q5〜Q8の全てをオフ状態とし、入力スイッチ部21によって昇圧回路12が出力する電力およびキャパシタC3に蓄えられた電力をキャパシタC5に供給する第1入力スイッチ制御を行う。そして次に、制御部15は、スイッチ素子Q7,Q8の双方をオン状態、かつスイッチ素子Q3〜Q6の全てをオフ状態とし、キャパシタC5に蓄えられた電力を、出力スイッチ部23によってキャパシタC6および負荷202に供給する出力スイッチ制御を行う。このように、電力伝達用絶縁回路14は、第1入力スイッチ制御と出力スイッチ制御とを切り替えることで各スイッチ素子を動作させ、昇圧回路12と負荷202との間を絶縁しながら、昇圧回路12が出力した電力を負荷202に伝達する。
【0047】
図3に示したスイッチ動作においては、スイッチ素子Q1がオフ状態に切り替わったとき、スイッチ素子Q3,Q4の双方がオン状態に切り替わっている。昇圧回路12は、いわゆる昇圧チョッパ回路であるので、スイッチ素子Q1がオン状態からオフ状態に切り替わった直後が最も出力する電流が大きくなる。よって、昇圧回路12から直流電圧が出力され、その出力電流が大きいときに、スイッチ素子Q3,Q4の双方がオン状態となるので、キャパシタC3に蓄える必要のある電力の量は小さくなる。
【0048】
また、制御部15は、スイッチ素子Q5,Q6の双方をオン状態、かつスイッチ素子Q3,Q4およびスイッチ素子Q7,Q8の全てをオフ状態とし、入力スイッチ部22によって昇圧回路13が出力する電力およびキャパシタC4に蓄えられた電力をキャパシタC5に供給する第2入力スイッチ制御を行う。そして次に、制御部15は、スイッチ素子Q7,Q8の双方をオン状態、かつスイッチ素子Q3〜Q6の全てをオフ状態とし、キャパシタC5に蓄えられた電力を、出力スイッチ部23によってキャパシタC6および負荷202に供給する出力スイッチ制御を行う。このように、電力伝達用絶縁回路14は、第2入力スイッチ制御と出力スイッチ制御とを切り替えることで各スイッチ素子を動作させ、昇圧回路13と負荷202との間を絶縁しながら、昇圧回路13が出力した電力を負荷202に伝達する。
【0049】
図3に示したスイッチ動作においては、スイッチ素子Q2がオフ状態に切り替わったとき、スイッチ素子Q5,Q6の双方がオン状態に切り替わっている。昇圧回路13は、いわゆる昇圧チョッパ回路であるので、スイッチ素子Q2がオン状態からオフ状態に切り替わった直後が最も出力する電流が大きくなる。よって、昇圧回路13から直流電圧が出力され、その出力電流が大きいときに、スイッチ素子Q5,Q6の双方がオン状態となるので、キャパシタC4に蓄える必要のある電力の量は小さくなる。
【0050】
そして、電力伝達用絶縁回路14において電力の伝達を行うとき、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオンである期間と、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオンである期間は重複しないように、制御部15は各スイッチを制御する。つまり、昇圧回路12が出力する電力を負荷202に伝達する動作と昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達する動作とは選択的に行われる。
【0051】
また、第1入力スイッチ制御を行う期間TA、第2入力スイッチ制御を行う第2の期間TB、および出力スイッチ制御を行う期間TCの間には、それぞれスイッチ素子Q3〜Q8の全てがオフである期間TDを設ける。よって、各スイッチ素子のオン状態とオフ状態との切り替えが瞬時に行われない場合であっても、昇圧回路12、昇圧回路13、および負荷202の間の絶縁が確保される。
【0052】
以上のように、電力変換回路101は、入力電圧を分圧回路11によって分圧し、分圧した電圧を昇圧回路12,13によって直流電圧に変換する。そして、電力伝達用絶縁回路14が、昇圧回路12,13と負荷202との間を絶縁しながら、昇圧回路12,13が出力した電力を負荷202に伝達することができる。
【0053】
入力スイッチ部21のスイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4がオン状態であるとき、昇圧回路12が出力する電力およびキャパシタC3が蓄えた電力がキャパシタC5に供給される。このとき、キャパシタC5の電位はキャパシタC3の電位と同じになる。また、入力スイッチ部22のスイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6がオン状態であるとき、昇圧回路13が出力する電力およびキャパシタC4が蓄えた電力がキャパシタC5に供給される。このとき、キャパシタC5の電位はキャパシタC4の電位と同じになる。ここで、キャパシタC3の電位およびキャパシタC4の電位は異なるが、入力スイッチ部21、入力スイッチ部22および出力スイッチ部23により、キャパシタC5の電位はフローティング状態となる。すなわち、キャパシタC5の電位がキャパシタC3の電位と同じになるとき、キャパシタC5の電位は、キャパシタC4および負荷202に対してフローティング状態となる。また、キャパシタC5の電位がキャパシタC4の電位と同じになるとき、キャパシタC5の電位は、キャパシタC3および負荷202に対してフローティング状態となる。したがって、入力スイッチ部21から出力される電圧および入力スイッチ部22から出力される電圧を、キャパシタC5の両端に印加することができる。
【0054】
また、昇圧回路12,13が昇圧する電圧は分圧回路11によって分圧された電圧である。したがって、分圧を行わず電力の変換を行う回路に比べ出力電圧を低く出力するように制御することができる。例えば、交流電源201が200Vの交流電圧であり、ピーク電圧が約280Vであった場合、分圧回路11により電圧V1と電圧V2とを電圧V0の半分の電圧に分圧した場合、電圧V1と電圧V2のピーク電圧は約140Vとなる。この場合、昇圧回路12,13が出力する電圧は140Vの電圧を昇圧した電圧となり、分圧を行わない昇圧回路が出力する電圧の約半分になる。
【0055】
すなわち、キャパシタC5から負荷202に出力される電圧は分圧回路11が分圧した分圧電圧に基づいているため、入力電圧を分圧しない回路に比べ低い電圧となる。したがって、入力電圧が高い場合であっても、負荷に高すぎる電圧が印加されるのを防ぐことが可能となる。さらに、入力される電圧を低くすることで、昇圧回路12,13、および電力伝達用絶縁回路14に印加される電圧が低くなるので、分圧を行わない電力変換装置に比べ装置に用いられる素子に必要な耐圧性能を低くすることが可能である。
【0056】
さらにいえば、出力する電圧を低くする方法として昇圧回路12,13の代わりに降圧チョッパ回路または昇降圧チョッパ回路を用いる方法もあるが、これらの方法を用いると降圧または昇降圧を行うためのスイッチ素子の切り替えにより、入力電流が遮断され回路の力率が悪化する。それに対して、昇圧回路12,13を用いる電力変換装置101においては、入力電流は遮断されず、入力電流は入力電圧の増減に追随するように増減する波形となる。よって、本発明の電力変換装置に昇圧チョッパ回路を用いた場合、出力電圧を低く抑えながら力率の悪化を防ぐことができる。
【0057】
また、昇圧回路12が出力する電力を負荷202に伝達する動作と昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達する動作とは選択的に行われるので、昇圧回路12と昇圧回路13との短絡を防ぎ、昇圧回路12または昇圧回路13に電流が逆流するなどの誤作動を防ぐことが可能である。
【0058】
さらに、昇圧回路12が直流電圧を出力するときに、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオン状態であれば、キャパシタC3に蓄える必要のある電力の量は小さくなる。また昇圧回路13が直流電圧を出力するときに、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオン状態であれば、キャパシタC4に蓄える必要のある電力の量は小さくなる。したがって、キャパシタC3およびキャパシタC4に静電容量の小さなキャパシタを用いることで、装置の小型かおよび低コスト化が可能である。
【0059】
また、スイッチ素子Q1がオフ状態である期間とスイッチ素子Q2がオフ状態である期間とをずらすことで、電力変換装置101に入力される電流の脈動成分を抑制することができる。したがって、電力変換装置101で発生する損失を低減し、かつ力率を改善することが可能である。
【0060】
なお、図3においては、昇圧回路12が出力する電力を負荷202に伝達する動作と昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達する動作とを交互に行う例を示したが、本発明はこれらの動作を交互に行う場合に限るものではない。図4は、各入力スイッチ部の動作を交互に行わない例を示したタイムチャートである。
【0061】
図4で示したスイッチ動作においては、入力スイッチ部21が電力を伝達する動作を二回連続で行った後、入力スイッチ部22が電力を伝達する動作を二回連続で行っている。昇圧回路12が出力する電力はキャパシタC3に蓄えられ、昇圧回路13が出力する電力はキャパシタC4に蓄えられるので、電力変換装置101は、昇圧回路12が出力する電力を負荷202に伝達する動作と昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達する動作とを交互に行わなくても、昇圧回路12および昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達することができる。
【0062】
ただし、図3に示すように昇圧回路12が出力する電力を負荷202に伝達する動作と昇圧回路13が出力する電力を負荷202に伝達する動作とを交互に行えば、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオンである状態と、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオンである状態とは、図4に示すように上記各動作を交互に行わないときよりも短い周期で切り替わる。よって、キャパシタC3およびキャパシタC4に蓄えられた電力がキャパシタC5を介して負荷202に供給される周期も短くなるので、キャパシタC3およびキャパシタC4に蓄える必要のある電力の量を小さくできる。したがって、キャパシタC3およびキャパシタC4に静電容量の小さなキャパシタを用いることで、装置の当該装置の小型化および低コスト化が可能である。
【0063】
図5は、各スイッチ素子の状態と昇圧回路12,13の動作との関係の変形例を示したタイムチャートである。
【0064】
図5に示すように、昇圧回路12,13の動作と、入力スイッチ部21,22および出力スイッチ部23における各スイッチ素子の駆動周波数およびタイミングとは、同期等の整合をとらない構成であってもよい。
【0065】
〈変形例〉
図6は、本発明の変形例に係る電力変換装置102の構成を概略的に示した図である。電力変換装置102は、整流回路10、分圧回路11、昇圧回路12,13、電力伝達用絶縁回路16、およびキャパシタC3,C4,C6を備える。分圧回路11は、キャパシタC1、およびキャパシタC2を含む。昇圧回路12は、巻線L1、スイッチ素子Q1、およびダイオードD1を含む。昇圧回路13は、巻線L2、スイッチ素子Q2、およびダイオードD2を含む。電力伝達用絶縁回路16は、入力スイッチ部21,22、出力スイッチ部23,24、およびキャパシタC5,C7を含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Q3,Q4、およびダイオードD3,D4を含む。入力スイッチ部22は、スイッチ素子Q5,Q6、およびダイオードD5,D6を含む。出力スイッチ部23は、スイッチ素子Q7,Q8、およびダイオードD7,D8を含む。出力スイッチ部24は、スイッチ素子Q9,Q10、およびダイオードD9,D10を含む。スイッチ素子Q1〜Q10は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0066】
本発明の変形例に係る電力変換装置102は、本発明の実施の形態において説明した電力変換装置101と同様に、交流電源201から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷202に供給する。負荷202は、例えば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用のバッテリである。
【0067】
そして、本発明の変形例に係る電力変換装置102においては、本発明の実施の形態において説明した電力変換装置101と同様に、整流回路10が、交流電源201から受けた交流電力を全波整流する。分圧回路11は全波整流された入力電圧を分圧し、昇圧回路12,13に分圧した電圧を出力する。昇圧回路12は、分圧された電圧に基づいて昇圧を行い、昇圧された直流電圧を電力伝達用絶縁回路16の入力スイッチ部21に出力する。昇圧回路13は、分圧された電圧に基づいて昇圧を行い、昇圧された直流電圧を電力伝達用絶縁回路16の入力スイッチ部22に出力する。
【0068】
入力スイッチ部21のスイッチ素子Q3,Q4は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオン状態であるとき、入力スイッチ部21は、昇圧回路12が出力する電力およびキャパシタC3が蓄えた電力をキャパシタC5に供給する。また、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の双方がオフ状態であるとき、昇圧回路12およびキャパシタC3と、キャパシタC5とを絶縁する。
【0069】
入力スイッチ部22のスイッチ素子Q5,Q6は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオン状態であるとき、入力スイッチ部22は、昇圧回路13が出力する電力およびキャパシタC4が蓄えた電力をキャパシタC7に供給する。また、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6の双方がオフ状態であるとき、昇圧回路13およびキャパシタC4と、キャパシタC7とを絶縁する。
【0070】
出力スイッチ部23は、キャパシタC5に蓄えられた電力を負荷202に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部23のスイッチ素子Q7,Q8は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8の双方がオン状態であるとき、出力スイッチ部23は、キャパシタC5が蓄えた電力をキャパシタC6および負荷202に供給する。また、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8の双方がオフ状態であるとき、入力スイッチ部21およびキャパシタC5と、キャパシタC6および負荷202とを絶縁する。
【0071】
出力スイッチ部24は、キャパシタC7に蓄えられた電力を負荷202に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部24のスイッチ素子Q9,Q10は、制御部15が出力する制御信号に従い、双方がオンである状態と双方がオフである状態とが切り替えられる。そして、スイッチ素子Q9およびスイッチ素子Q10の双方がオン状態であるとき、出力スイッチ部24は、キャパシタC7が蓄えた電力をキャパシタC6および負荷202に供給する。また、スイッチ素子Q9およびスイッチ素子Q10の双方がオフ状態であるとき、入力スイッチ部22およびキャパシタC7と、キャパシタC6および負荷202とを絶縁する。
【0072】
そして、出力スイッチ部23および出力スイッチ部24が出力した電力は、キャパシタC6に蓄えられることで平滑化され、負荷202には直流電圧が出力される。
【0073】
ここで、電力変換装置101と同様に、出力スイッチ部23のスイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8がオン状態であるとき、キャパシタC5が蓄えた電力がキャパシタC6に供給される。このとき、キャパシタC6の電位はキャパシタC5の電位と同じになる。また、出力スイッチ部24のスイッチ素子Q9およびスイッチ素子Q10がオン状態であるとき、キャパシタC7が蓄えた電力がキャパシタC6に供給される。このとき、キャパシタC6の電位はキャパシタC7の電位と同じになる。ここで、キャパシタC5の電位およびキャパシタC7の電位は異なるが、出力スイッチ部23および出力スイッチ部24により、キャパシタC6の電位はフローティング状態となる。すなわち、キャパシタC6の電位がキャパシタC5の電位と同じになるとき、キャパシタC6の電位は、キャパシタC7に対してフローティング状態となる。また、キャパシタC6の電位がキャパシタC7の電位と同じになるとき、キャパシタC6の電位は、キャパシタC5に対してフローティング状態となる。したがって、出力スイッチ部23から出力される電圧および出力スイッチ部24から出力される電圧を、キャパシタC6の両端に印加することができる。よって、電力伝達用絶縁回路16は、昇圧回路12,13と負荷202との間を絶縁しながら、昇圧回路12,13が出力した電力を負荷202に伝達することができる。
【0074】
以上のように、制御部15によって、スイッチ素子Q1〜Q10のオンオフを制御することで、電力変換装置102は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置101と同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明の実施の形態において、分圧回路11によって分圧された電圧を直流電圧に変換する変換部に、昇圧チョッパ回路を用いる例を説明したが、本発明において、当該変換部は昇圧チョッパ回路に限るものではない。例えば、昇降圧チョッパ回路または降圧チョッパ回路など、分圧された電圧を受け負荷202に印加すべき電圧レベルの直流電圧を出力できる他の回路であってもよい。
【0076】
また、本発明の実施の形態において、分圧回路11が入力された電圧を2つに分圧する例で説明したが、本発明において、分圧回路11は電圧を2つに分圧する回路に限るものではない。本発明に用いられる分圧回路は入力された電圧を3つ以上に分圧する回路であってもよい。その場合の電力変換装置において、3つ以上に分圧された分圧電圧を各変換部によって直流電圧に変換し、電力伝達用絶縁回路によって各変換部が出力した直流電圧をキャパシタC5等の共通の回路へ出力可能なものであればよい。
【0077】
また、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 整流回路
11 分圧回路
12,13 昇圧回路
14 電力伝達用絶縁回路
15 制御部
21,22 入力スイッチ部
23,24 出力スイッチ部
C1〜C7 キャパシタ
D1〜D10 ダイオード
Q1〜Q10 スイッチ素子
101,102 電力変換装置
201 交流電源
202 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、
入力電圧を分圧して第1の分圧電圧および第2の分圧電圧を生成する分圧回路と、
前記第1の分圧電圧を第1の直流電圧に変換する第1変換部と、
前記第2の分圧電圧を第2の直流電圧に変換する第2変換部と、
前記第1変換部および前記第2変換部と、前記負荷とを絶縁しながら、前記第1の直流電圧および前記第2の直流電圧を前記負荷に供給する電力伝達用絶縁回路と、
を備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する蓄電素子と、
前記第1変換部と前記蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子、および前記第1変換部と前記蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、前記第1の直流電圧を前記蓄電素子に供給するための第1入力スイッチ部と、
前記第2変換部と前記蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子、および前記第2変換部と前記蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第2の直流電圧を前記蓄電素子に供給するための第2入力スイッチ部と、
前記蓄電素子の第1端と前記負荷との間に接続された第5のスイッチ素子、および前記蓄電素子の第2端と前記負荷との間に接続された第6のスイッチ素子を含み、前記蓄電素子に蓄えられた電力を前記負荷に供給するための出力スイッチ部と、
を含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力伝達用絶縁回路は、
前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオンであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオフである状態とした後、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオンである状態とする第1スイッチ動作と、
前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオンであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオフである状態とした後、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオフであり、かつ前記第5のスイッチ素子および前記第6のスイッチ素子の双方がオンである状態とする第2スイッチ動作と、
を選択的に行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力伝達用絶縁回路は、前記第1スイッチ動作と前記第2スイッチ動作とを交互に行う、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1変換部は、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子の双方がオンである期間に、前記第1の直流電圧を前記第1入力スイッチ部に出力し、
前記第2変換部は、前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子の双方がオンである期間に、前記第2の直流電圧を前記第2入力スイッチ部に出力する、請求項1から3のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1変換部および第2変換部はそれぞれ、
前記分圧回路が生成する電圧が印加されるリアクトルと、
オンすることで前記リアクトルに流れる電流が前記電力伝達用絶縁回路に供給されないように流れ、オフすることで前記リアクトルに流れる電流が前記電力伝達用絶縁回路に供給されるように流れ、オンからオフに切り替わることで前記リアクトルに誘導電圧を発生させる変換スイッチ素子と、
を含み、
前記第1変換部が含む前記リアクトルに発生した前記誘導電圧を前記第1の直流電圧とし、
前記第2変換部が含む前記リアクトルに発生した前記誘導電圧を前記第2の直流電圧とし、
前記第1変換部および前記第2変換部の一方において前記変換スイッチ素子がオフのとき、他方の前記変換スイッチ素子はオンとなる、請求項1から4のいずれか一つに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157118(P2012−157118A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12663(P2011−12663)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】