説明

電力変換装置

【課題】チップをワイドバンドギャップ半導体によって構成した場合でも、該チップで発生する熱によって耐熱温度の低い部品が熱的な損傷を受けないような構成の電力変換装置を得る。
【解決手段】SiC半導体からなるチップ(21)の熱を放熱するためのヒートシンク(23)に該チップ(21)の熱を伝えるための銅基板(22)を、耐熱性接着剤からなる断熱部材(24)を介して、プリント基板(25,25)に接着固定する。該銅基板(22)とプリント基板(25,25)との間には、上記チップ(21)等からの熱放射を抑えるための遮熱板(26)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータや交流電圧を直流電圧に変換するコンバータなどの電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直流電圧を交流電圧に変換するインバータや交流電圧を直流電圧に変換するコンバータなどの電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されるように複数のスイッチング素子によって電力変換動作を行うものが知られている。また、上記特許文献1には、主スイッチング素子としてSiC半導体からなる素子を用いることで、PWM制御のキャリア周波数を高くすることができ、従来の構成に比べて効率改善できる点が開示されている。
【0003】
上述のSiC半導体などのようなワイドバンドギャップ半導体は、絶縁破壊電界が従来のSi半導体に比べて約10倍高いため、素子の高耐圧化が容易になり、同じ耐圧であれば、Si半導体の場合に比べてデバイスの厚みを薄くできるため、導通損失が小さく且つ小型の素子にすることができる。
【0004】
また、上記ワイドバンドギャップ半導体は、高速動作や高温(例えば300度)での動作が可能であるため、高速動作により装置全体の高効率化を図れるとともに、チップの小型化に伴う高温条件下でも動作することができ、これにより装置の小型化を図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−42529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようにワイドバンドギャップ半導体を用いることで、高温動作可能な素子を実現することができるが、この場合、素子の周辺にはドライバやCPUなどの周辺部品が配置されているため、ワイドバンドギャップ半導体からなる素子を小型化して温度が高くなると、これら周辺に位置する相対的に耐熱温度の低い部品が熱的な損傷を受ける可能性がある。
【0007】
そのため、上述のようにワイドバンドギャップ半導体によって素子を構成しても、周辺部品の温度上の制約を受けることになり、実質的に高温条件下での動作ができないという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チップをワイドバンドギャップ半導体によって構成した場合でも、該チップで発生する熱によって耐熱温度の低い部品が熱的な損傷を受けないような構成の電力変換装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明に係る電力変換装置では、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)の熱によって、耐熱温度の低い周辺部品(25)が熱的な損傷を受けないように、該周辺部品(25)と上記チップ(21)を含む耐熱温度の高いチップ部(20)との間を熱絶縁した。
【0010】
具体的には、第1の発明では、ワイドバンドギャップ半導体のチップ(21)と、該チップ(21)と同等以上の耐熱温度を有する部材(22,23)とによって構成されたチップ部(20)と、該チップ部(20)の周辺に位置し且つ上記チップ(21)よりも耐熱温度の低い周辺部品(25)と、を備えた電力変換装置を対象とする。そして、上記周辺部品(25)の温度が該周辺部品(25)の耐熱温度を超えないように上記チップ部(20)と該周辺部品(25)とを熱絶縁したものとする。
【0011】
ここで、上記熱絶縁とは、完全に伝熱を遮断するものではなく、伝熱を抑制するものも含む。
【0012】
この構成により、ワイドバンドギャップ半導体のチップ(21)と該チップ(21)と同等以上の耐熱温度を有する部材(22,23)とによって構成されたチップ部(20)の熱は、該チップ(21)よりも耐熱温度の低い周辺部品(25)への伝熱が抑制されるため、上記チップ(21)の熱によって周辺部品(25)が高温になり熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0013】
したがって、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)を高温条件下で動作させることが可能になり、該チップ(21)の小型化、高速動作化を図れる。
【0014】
上述の構成において、上記チップ部(20)は、上記チップ(21)の熱を放熱するための放熱手段(23)と、該放熱手段(23)にチップ(21)の熱を導くための伝熱部材(22)と、をさらに備え、上記伝熱部材(22)及び上記放熱手段(23)の少なくとも一方は、上記熱絶縁の手段としての断熱部材(24)を介して上記周辺部品(25)によって支持されているものとする(第2の発明)。
【0015】
こうすることで、上記チップ(21)で発生した熱は伝熱部材(22)を介して放熱手段(23)から放熱されるため、該チップ(21)の温度を効率良く下げることができる。しかも、上記周辺部品(25)に対して、断熱部材(24)によって伝熱部材(22)からの伝熱が抑制された状態で上記伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方が支持されるため、上記チップ(21)の熱によって該周辺部品(25)が高温になることなく上記伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方を確実に支持することができる。すなわち、周辺部品(25)が熱的な損傷を受けるのを防止しつつ、上記伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方を支持するための別の部材を省略することができ、これにより、装置全体の小型化及びコストの低減を図れる。
【0016】
ここで、上記断熱部材(24)は、上記周辺部品(25)と上記伝熱部材(22)及び上記放熱手段(23)の少なくとも一方とを接着するための耐熱性接着剤であるのが好ましい(第3の発明)。このように、断熱性の接着剤を用いることで、チップ(21)の熱によって伝熱部材(22)を介して周辺部品(25)が高温になるのを防止できるとともに、該周辺部品(25)に伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方を接着固定して支持できるようになる。なお、上記耐熱性接着剤としては、ポリイミド系やセラミック系のものなどが好ましい。
【0017】
また、上記熱絶縁の手段(26)は、上記チップ部(20)から上記周辺部品(25)への熱放射を抑制するように設けられた遮熱板(26)であるのが好ましい(第4の発明)。このように遮熱板(26)を設けることで、上記チップ部(20)からの熱放射も遮ることができ、周辺部品(25)の温度上昇を確実に抑えることができる。
【0018】
さらに、上記チップ部(20)と周辺部品(25)とは、ボンディングワイヤ(27)によって電気的に接続されているものとする(第5の発明)。これにより、チップ部(20)と周辺部品(25)とを電気的に接続するパターンなどの部材に比べて伝熱を抑えられるため、該周辺部品(25)の温度上昇を確実に抑えることができる。
【0019】
第6の発明では、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップを封入したパッケージ(41)と該パッケージ(41)の実装されるプリント基板(43)及び該基板(43)上の部品とを熱絶縁することで、プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度以下になるようにした。
【0020】
具体的には、第6の発明では、ワイドバンドギャップ半導体のチップを封入してなるパッケージ(41)と、該パッケージ(41)の端子(42)が接続されるパターン(44)が形成されたプリント基板(43)と、を備えた電力変換装置を対象とする。そして、上記チップの温度が、上記プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品のうち少なくとも一方の耐熱温度を超える場合でも、上記プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度以下になるように、上記パッケージ(41)とプリント基板(43)及び該基板(43)上の部品とを熱絶縁したものとする。
【0021】
この構成により、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップを封入したパッケージ(41)からプリント基板(43)や該基板(43)上の部品への伝熱を抑制することができ、該プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度を超えるのを確実に防止できる。ここで、上記Si半導体材料の動作可能な最高温度は、約150度であり、上記プリント基板(43)が樹脂製の基板の場合の耐熱温度は約130度である。
【0022】
上述のようなチップを封入したパッケージ(41)を備えた構成において、上記端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方は、上記プリント基板(43)の温度が該基板(43)の耐熱温度以下になるような放熱面積を有していて、上記熱絶縁の手段(42,44)は、上記放熱面積を有する少なくとも一方の部材であるのが好ましい(第7の発明)。
【0023】
これにより、上記パッケージ(41)内のチップで発生した熱は、十分な放熱面積を有する端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方から放熱されるため、プリント基板(43)の温度が該基板(43)の耐熱温度を超えるような高温まで上昇するのを確実に防止することができる。
【0024】
なお、放熱面積を大きくする具体的な構成として、上記端子(42)の場合には、長さを長くしたり、幅を広くしたり、または表面に凹凸を設けたりすることが考えられ、上記パターン(44)の場合には、幅等を広げて表面積を大きくすることが考えられる。
【0025】
また、上記熱絶縁の手段(46)は、上記端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方に向かって風を送る送風手段(46)であるのが好ましい(第8の発明)。このように、送風手段(46)によって端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方を冷却することで、チップの熱によってプリント基板(43)の温度が高温になるのをより確実に防止できる。
【0026】
さらに、上述の構成において、上記熱絶縁の手段(47)は、上記パッケージ(41)から上記プリント基板(43)への熱放射を抑制するように設けられた遮熱板(47)であってもよい(第9の発明)。これにより、上記パッケージ(41)からの熱放射によってプリント基板(43)の温度が上昇するのを確実に防止することができる。
【0027】
第10の発明では、ワイドバンドギャップ半導体のチップを有するパッケージ(41)を高耐熱性プリント基板(51)上に実装し、該高耐熱性プリント基板(51)に対して低耐熱性プリント基板(53)を熱的に分離することで、上記チップの熱による該低耐熱性プリント基板(53)の温度上昇を抑えるようにした。
【0028】
具体的には、第10の発明では、ワイドバンドギャップ半導体のチップを有するパッケージ(41)と、該パッケージ(41)の最高温度に耐えられるような耐熱温度の高い高耐熱性プリント基板(51)と、上記最高温度よりも耐熱温度の低い低耐熱性プリント基板(53)と、を備えた電力変換装置を対象とする。そして、上記パッケージ(41)と上記低耐熱性プリント基板(53)とを熱絶縁するように、上記高耐熱性プリント基板(51)上に上記パッケージ(41)を実装したものとする。
【0029】
この構成により、ワイドバンドギャップ半導体のチップが高温になっても、該チップを有するパッケージ(41)が実装されたプリント基板(51)は高耐熱性のものであるため、該プリント基板(51)が熱的な損傷を受けるのを防止できる。そして、このように上記パッケージ(41)は高耐熱性プリント基板(51)に実装されていて、該プリント基板(51)によって低耐熱性プリント基板(53)への伝熱が阻害されるため、該低耐熱性プリント基板(53)の温度が高温になるのを防止できる。
【0030】
上述の構成において、上記パッケージ(41)から低耐熱性プリント基板(53)への熱放射を抑制する遮熱板(54,55)を備えているのが好ましい(第11の発明)。こうすることで、上記パッケージ(41)からの熱放射によって上記低耐熱性プリント基板(53)が高温になるのを確実に防止できる。
【0031】
また、以上の構成において、ワイドバンドギャップ半導体からなる部品が実装されたプリント基板(61)は、実装される素子(66,67)の動作温度によって高温部(63)と低温部(62)とに分けられ、該高温部(63)と低温部(62)とを上記プリント基板(61)上で電気的に接続するパターン(64,64')には、伝熱抑制手段(64a,65)が設けられているものとする(第12の発明)。
【0032】
この構成により、プリント基板上(61)に、動作温度の高い素子(67)と動作温度の低い素子(66)とが実装され、両者がパターン(64)によって電気的に接続されている場合、該パターン(64)に伝熱抑制手段(64a,65)を設けることで、高温部(63)、すなわち該動作温度の高い素子(67)から低温部(62)、すなわち動作温度の低い素子(66)に熱が伝わって該低温部(62)の素子(66)が高温になるのを防止できる。
【0033】
上述の構成において、上記伝熱抑制手段(64)は、上記パターン(64)のうち相対的に熱抵抗の大きい部分(64a)であるのが好ましい(第13の発明)。このように、パターン(64)に相対的に熱抵抗の大きい部分(64a)を設けて伝熱抑制手段とすることで、上記高温部(63)から低温部(62)への伝熱を抑えることができ、該低温部(62)が高温になるのを防止できる。
【0034】
また、上記伝熱抑制手段(65)は、上記パターン(64)に上記高温部(63)から低温部(62)への熱伝導を阻害するように設けられた抵抗体(65)であってもよい(第14の発明)。このように抵抗体(65)を設けることによっても、上記高温部(63)から低温部(62)への熱伝導を阻害することができ、該低温部(62)が高温になるのを防止できる。
【0035】
第15の発明では、ワイドバンドギャップ半導体の素子(71)を駆動するためのドライバ部(72)もワイドバンドギャップ半導体によって構成した場合には、該素子(71)及びドライバ部(72)を同一のパッケージ(70)内に配設し、該パッケージ(70)と周辺部品(73,74)との間を熱絶縁することで、該周辺部品(73,74)が高温になるを防止するようにした。
【0036】
具体的には、第15の発明では、ワイドバンドギャップ半導体の素子(71)と、該素子(71)を駆動するためのドライバ部(72)とを備えた電力変換装置を対象とする。そして、上記ドライバ部(72)もワイドバンドギャップ半導体によって構成され、上記素子(71)とともに同一のパッケージ(70)内に配設されるとともに、上記パッケージ(70)とその周辺に位置する周辺部品(73,74)とを熱絶縁したものとする。
【0037】
この構成により、ワイドバンドギャップ半導体の素子(71)だけでなく、該素子(71)を駆動するためのドライバ部(72)もワイドバンドギャップ半導体によって構成し、それらを同一のパッケージ(70)内にまとめて、該パッケージ(70)と周辺部品(73,74)との間を熱絶縁することで、該周辺部品(73,74)をパッケージ(70)の熱から確実に保護できるとともに、通常、上記素子(71)の近くに配置されるドライバ部(72)の熱的な保護が不要になる。
【0038】
ここで、上記ワイドバンドギャップ半導体は、SiC半導体である(第16の発明)。このようにSiC半導体を用いることで、低損失で且つ高耐熱性の半導体チップ(13)が得られる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る電力変換装置によれば、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)を含む高温動作可能なチップ部(20)と、それよりも耐熱温度の低い周辺部品(25)との間を熱絶縁したため、該周辺部品(25)が上記チップ(21)の熱によって高温になるのを防止でき、該周辺部品(25)が熱的な損傷を受けるのを防止できる。したがって、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)を高温条件下で動作させることが可能になり、該チップ(21)の小型化、高速動作化を図れる。
【0040】
また、第2の発明によれば、上記チップ部(20)は、チップ(21)の熱を放熱するための放熱手段(23)と該放熱手段(23)にチップ(21)の熱を伝熱するための伝熱部材(22)とを有し、上記伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方は、断熱部材(24)を介して周辺部品(25)に支持されるため、該周辺部品(25)がチップ(21)の熱によって高温になるのを確実に防止しつつ上記伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方の支持構造を簡略化でき、装置全体の小型化及びコスト低減を図れる。
【0041】
また、第3の発明によれば、上記断熱部材(24)は、耐熱性接着剤であるため、該接着剤によって伝熱部材(22)及び放熱手段(23)の少なくとも一方は周辺部品(25)に確実に支持されるとともに、該伝熱部材(22)から周辺部品(25)への熱伝導が抑制されて、該周辺部品(25)が高温になるのを確実に防止できる。
【0042】
また、第4の発明によれば、上記チップ部(20)から上記周辺部品(25)への熱放射は遮熱板(26)によって抑制されるので、該チップ部(20)の熱によって周辺部品(25)が高温になるのを確実に防止できる。
【0043】
さらに、第5の発明によれば、上記チップ部(20)と周辺部品(25)とは、ボンディングワイヤ(27)によって電気的に接続されているため、該チップ部(20)と周辺部品(25)とを電気的に接続する部材を介して該チップ部(20)の熱で周辺部品(25)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0044】
第6の発明に係る電力変換装置によれば、プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度以下になるように、ワイドバンドギャップ半導体のチップを封入したパッケージ(41)から該パッケージ(41)の実装されたプリント基板(43)及び該基板(43)上の部品への伝熱を抑制するようにしたため、上記プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品が高温になって熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0045】
また、第7の発明によれば、上記パッケージ(41)の端子(42)及びプリント基板(43)上のパターン(44)の少なくとも一方が、該プリント基板(43)の温度が耐熱温度以下になるような放熱面積を有しているため、上記パッケージ(41)内のチップの熱は、端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方から放熱され、上記プリント基板(43)の温度を耐熱温度以下にすることができ、該基板(43)の熱的な損傷を防止できる。
【0046】
また、第8の発明によれば、上記端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方を冷却するための送風手段(46)を備えているため、該端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方からチップの熱を効率良く放熱することができ、上記プリント基板(43)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0047】
さらに、第9の発明によれば、上記パッケージ(41)から上記プリント基板(43)への熱放射を抑制するように遮熱板(47)が設けられているため、該プリント基板(43)が高温になるのをさらに確実に防止できる。
【0048】
第10の発明に係る電力変換装置によれば、ワイドバンドギャップ半導体のチップを有するパッケージ(41)を高耐熱性プリント基板(51)に実装することで、該パッケージ(41)から低耐熱性プリント基板(53)への伝熱を抑制するようにしたため、該低耐熱性プリント基板(53)が高温になって熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0049】
また、第11の発明によれば、上記パッケージ(41)から上記低耐熱性プリント基板(53)への熱放射を抑制するように遮熱板(54,55)が設けられているため、該低耐熱性プリント基板が高温になるのをより確実に防止できる。
【0050】
また、第12の発明によれば、ワイドバンドギャップ半導体を含む素子(66,67)が実装されたプリント基板(61)上において、実装される素子(66,67)の動作温度が高い高温部(63)と動作温度の低い低温部(62)とを接続するパターン(64)に伝熱抑制手段(64a,65)を設けたため、該パターン(64)を介して高温部(63)の熱により低温部(62)が高温になって熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0051】
また、第13の発明によれば、上記パターン(64)に相対的に熱抵抗の大きい部分(64a)を設けることで、高温部(63)の熱の伝導が該パターン(64)の熱抵抗の高い部分(64a)によって阻害され、低温部(62)が高温になるのを確実に防止できる。
【0052】
さらに、第14の発明によれば、上記パターン(64)に高温部(63)から低温部(62)への熱伝導を阻害するような抵抗体(65)を設けることで、該パターン(64)を介して高温部(63)の熱により低温部(62)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0053】
第15の発明に係る電力変換装置によれば、素子(71)と該素子(71)を駆動するためのドライバ部(72)とをワイドバンドギャップ半導体によって構成し、両者を同一のパッケージ(70)内にまとめるとともに、該パッケージ(70)と周辺部品(73,74)との間を熱絶縁したため、高温動作可能なワイドバンドギャップ半導体からなる部品(70)の熱がそれよりも耐熱温度の低い周辺部品(73,74)に伝わって、該周辺部品(73,74)に熱的な損傷を与えるのを防止できる。しかも、上記素子(71)の近くに配置されるドライバ部(72)の熱的な保護も不要になる。
【0054】
また、第16の発明によれば、ワイドバンドギャップ半導体はSiC半導体であり、小型で且つ高温動作可能な主スイッチング素子(13)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態1に係る電力変換装置の主回路の一例を示す回路図である。
【図2】チップの実装構造を概略的に示す断面図である。
【図3】実施形態1の変形例に係る図2相当図である。
【図4】実施形態2に係る電力変換装置の基板積層構造を概略的に示す断面図である。
【図5】実施形態3に係る図4相当図である。
【図6】実施形態3の変形例に係る図4相当図である。
【図7】実施形態4に係る電力変換装置の基板構造を概略的に示す上面図である。
【図8】実施形態4においてパターン上に抵抗体を設けた場合の図7相当図である。
【図9】(a)素子のみをSiCによって構成した場合、(b)素子及びドライバをSiCによって構成してパッケージングした場合、の熱絶縁の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0057】
《実施形態1》
−全体構成−
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(10)の回路の一例を示す。この電力変換装置(10)は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部(11)と、該コンバータ部(11)で変換された直流電圧を三相交流電圧に変換するためのインバータ部(12)とを備えていて、上記コンバータ部(11)が交流電源(1)に、上記インバータ部(12)が負荷としてのモータ(2)に、それぞれ接続されている。
【0058】
上記コンバータ部(11)及びインバータ部(12)は、複数の主スイッチング素子(13,13,…)を有していて、該主スイッチング素子(13,13,…)のスイッチング動作によって上記コンバータ部(12)で交流電圧から直流電圧への整流動作及び上記インバータ部(13)で直流電圧から三相交流電圧への電力変換動作が行われるようになっている。
【0059】
また、上記電力変換装置(10)には、上記コンバータ部(11)の出力電圧を平滑化するための2つのコンデンサ(14,14)が直列に接続された状態で、該コンバータ部(11)及びインバータ部(12)に対して並列に設けられている。
【0060】
上記コンバータ部(11)は、上記主スイッチング素子(13,13)によってハーフブリッジ型に組まれた回路を備えていて、上記直列に接続された2つのコンデンサ(14,14)の間に、交流電源(1)の一端が接続されている。これにより、上記コンバータ部(11)及びコンデンサ(14,14)は倍電圧回路を構成している。なお、本実施形態では、ハーフブリッジ型の倍電圧回路としているが、この限りではなく、フルブリッジ型の回路であってもよいし、同期整流を行う同期整流回路であってもよい。
【0061】
上記主スイッチング素子(13)は、導通損失が低く、高速動作及び高温動作が可能なSiCなどのワイドバンドギャップ半導体によって構成されている。上記主スイッチング素子(13)は、スイッチング動作できるものであれば、例えば図1に示すようなIGBTであってもよいし、ユニポーラ型トランジスタのMOSFETなどであってもよい。上記各主スイッチング素子(13)には、それぞれ、ダイオード(15)が逆並列に設けられている。
【0062】
なお、上記電力変換装置(10)は、上述のような構成に限らず、例えば、交流電圧から直流電圧への整流動作のみを行うコンバータ装置であってもよいし、直流電圧から交流電圧への電力変換のみを行うインバータ装置であってもよい。
【0063】
−チップの実装構造−
次に、上述のような構成の電力変換装置(10)において、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体によってチップを構成した場合の該チップの実装構造について以下で説明する。なお、ここでは、上記主スイッチング素子(13)をSiCなどのワイドバンドギャップ半導体によって構成した例について説明するが、この限りではなく、他の素子をワイドバンドギャップ半導体によって構成するようにしてもよい。
【0064】
上記SiCなどのワイドギャップ半導体からなるチップ(21)は、高温環境下でも動作可能であり、該チップ(21)は高温になるため、図2に示すように、伝熱部材としての銅基板(22)を介して放熱手段としてのヒートシンク(23)に接続されていて、該ヒートシンク(23)から上記チップ(21)の熱を放熱するように構成されている。すなわち、上記チップ(21)は、ヒートシンク(23)、銅基板(22)の順に積層された積層体の表面上に配設され、該積層体とチップ(21)とによって本発明のチップ部(20)が構成されている。
【0065】
また、上記銅基板(22)には、その側方に断熱部材(24)を介して例えば樹脂製のプリント基板(25,25)が配設されている。詳しくは、この断熱部材(24)は、ポリイミド系やセラミック系の耐熱接着剤であり、該接着剤によって上記プリント基板(25,25)は銅基板(22)に対して上面がほぼ面一になるように接着固定されている。なお、上記プリント基板(25)が第1の発明における周辺部品に相当する。
【0066】
これにより、上記銅基板(22)及びヒートシンク(23)の支持構造を別に設けることなく、上記プリント基板(25,25)によって支持できるため、部品点数削減による装置全体の小型化及びコスト低減を図れる。しかも、上記プリント基板(25,25)は、上記銅基板(22)に対して断熱部材(24)としての耐熱接着剤によって接着固定されているため、上記銅基板(22)を介してチップ(21)の熱によってプリント基板(25,25)が高温になるのを防止できる。なお、上述のように上記銅基板(22)及びヒートシンク(23)をプリント基板(25,25)によって支持するものに限らず、いずれか一方を別の支持部材によって支持するようにしてもよい。
【0067】
また、上記チップ部(20)と上記プリント基板(25,25)との間には、該チップ部(20)からの熱放射による該プリント基板(25,25)の温度上昇を抑えるための遮熱板(26,26,…)が設けられている。具体的には、上記遮熱板(26,26,…)は、上記チップ(21)の実装された銅基板(22)とプリント基板(25,25)との間、及び該プリント基板(25,25)とヒートシンク(23)との間に、それぞれ配設されていて、上記プリント基板(25,25)をチップ部(20)からの熱放射から保護するように構成されている。上記遮熱板(26,26,…)は、例えばセラミックなどのような耐熱性を有する部材が好ましいが、この限りではなく、上記チップ(20)から放射される熱を低減できるものであればどのようなものであってもよい。
【0068】
このように、上記遮熱板(26,26,…)を設けることで、上記チップ(21)の熱の影響によりプリント基板(25,25)が高温になるのを確実に防止することができ、該プリント基板(25,25)が熱的な損傷を受けるのを確実に防止できる。
【0069】
ここで、上述のような構成において、上記チップ(21)及び銅基板(22)と上記プリント基板(25)上のパターン(図示省略)とをそれぞれ電気的に接続するために、ボンディングワイヤ(27,27)を用いたワイヤボンドの構成が適用される。このボンディングワイヤ(27,27)によって接続することで、パターン等によって接続する場合に比べて上記チップ部(20)からプリント基板(25,25)への熱伝導を妨げることができるため、該プリント基板(25,25)の温度上昇を抑制することができる。したがって、該プリント基板(25,25)が高温になって熱的な損傷を受けるのをさらに確実に防止することができる。
【0070】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)を、銅基板(22)、ヒートシンク(23)の積層体上に実装してチップ部(20)を構成するとともに、上記銅基板(22)に対して耐熱接着剤(24,24)を介してプリント基板(25,25)を固定するようにしたため、上記チップ(21)の熱を銅基板(22)を介してヒートシンク(23)から効率良く放熱することができるとともに、上記プリント基板(25,25)の支持構造を別に設けることなく、上記銅基板(22)に支持させることができ、部品数削減による装置全体の小型化及び低コスト化を図れる。
【0071】
しかも、上記プリント基板(25,25)と銅基板(22)との間は、断熱部材としての耐熱接着剤(24)によって接着されているため、該銅基板(22)の熱がプリント基板(25,25)に伝わって該プリント基板(25,25)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0072】
また、上記チップ部(20)とプリント基板(25,25)との間には、遮熱板(26,26,…)が設けられているため、該チップ部(20)からの熱放射によって上記プリント基板(25,25)が高温になるのをさらに確実に防止することができる。
【0073】
−実施形態1の変形例−
この変形例は、上述の実施形態1とは異なり、上記図2の状態でパッケージングして、図3に示すように別の基板(33)上に端子(32)を介して接続した場合の構成例である。なお、パッケージ以外は、上記実施形態1とほぼ同じ内容なので、同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
図3に、この変形例に係る電力変換装置におけるチップの実装構造を示す。この実施形態では、上述のとおり、上記実施形態1におけるチップ(21)、銅基板(22)、プリント基板(25,25)、遮熱板(26,26,…)及びボンディングワイヤ(27,27)をパッケージ(31)内に収納していて、該パッケージ(31)の下側、すなわち上記銅基板(22)の下側にヒートシンク(23)が設けられている。
【0075】
そして、上記パッケージ(31)には、複数の端子(32,32,…)が設けられていて、該端子(32,32,…)が別の基板(33)に接続されている。なお、上記図3において、符号28は、ワイドバンドギャップ半導体のように高温動作のできない材料(例えばSi半導体)からなるチップである。
【0076】
これにより、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)を含むようにパッケージ化した場合でも、該パッケージ(31)内で他のチップ(28)が高温になるのを防止できるとともに、上記別の基板(33)にワイドバンドギャップ半導体からなるチップ(21)の熱が伝わって該基板(33)が高温になるのを確実に防止できる。
【0077】
《実施形態2》
この実施形態2は、上述の実施形態1とは異なり、上記チップ(21)の封入されたパッケージ(41)において、その内部で熱絶縁するのではなく、外部で基板(42)側への熱伝導を抑えるようにしたものである。
【0078】
詳しくは、図4に示すとおり、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップを封入したパッケージ(41)は、複数の端子(42,42,…)を介して例えば樹脂製のプリント基板(43)に接続されている。より詳しくは、上記プリント基板(43)の表面(図3において下面)には、パターン(44)が形成されていて、該パターン(44)に上記端子(42,42,…)が電気的に接続されている。
【0079】
一方、上記パッケージ(41)には、上記プリント基板(43)とは反対側にヒートシンク(45)が設けられていて、該ヒートシンク(45)によって上記チップの封入されたパッケージ(41)の熱を放熱するように構成されている。
【0080】
そして、上記パッケージ(41)の端子(42,42,…)は、該パッケージ(41)から該端子(42,42,…)を介して伝わる熱によって上記プリント基板(43)の温度が該基板(43)の耐熱温度を超えないように、また、該基板(43)上の周辺回路(48)等の部品が耐熱温度を超えないように、上記熱を効率良く放熱できるような形状になっている。
【0081】
すなわち、上記端子(42,42,…)は、その長さが長く形成されていたり、幅が広くなっていたり、表面に突起やリブなどが設けられたりして、表面積(放熱面積)が大きくなるように構成されている。
【0082】
これにより、上記パッケージ(41)の熱は上記端子(42,42,…)で効率良く放熱されるため、上記プリント基板(43)や該基板(43)上の部品(48)が高温になって熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0083】
また、上記プリント基板(43)上のパターン(44)も、該プリント基板(43)の温度が耐熱温度を超えないように放熱面積が大きくなっていて、これにより、上記パッケージ(41)の熱をパターン(44)からも効率良く放熱できるようになっている。
【0084】
なお、上述のような端子(42,42,…)の構成及びパターン(44)の構成は、両方の部材に適用するのがより効果的であるが、この限りではなく、どちらか一方のみに適用するようにしてもよい。
【0085】
さらに、上記端子(42,42,…)及びパターン(44)からの放熱の効率を向上するために、上述のような構成を有する端子(42,42,…)及びパターン(44)の少なくとも一方に風を当てる送風手段としてのファン(46)を設けるようにしてもよい。このファンは、上記端子(42,42,…)若しくはパターン(44)の冷却専用のファンであってもよいし、上記ヒートシンク(45)を冷却するためのファンを兼用するようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態1と同様、この実施形態でも、上記パッケージ(41)とプリント基板(43)との間に遮熱板(47)が設けられている。この遮熱板(47)を設けることで、該パッケージ(41)からの熱放射によって上記プリント基板(43)が高温になるのを確実に防止することができる。この遮熱板(47)は、上記実施形態1と同様、例えばセラミックなどのような耐熱性を有する部材が好ましいが、この限りではなく、上記パッケージ(41)から放射される熱を低減できるものであればどのようなものであってもよい。
【0087】
−実施形態2の効果−
上記実施形態2では、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップをパッケージ(41)に封入するとともに、該パッケージ(41)の端子(42)をプリント基板(44)のパターン(44)に電気的に接続し、該プリント基板(43)や該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度を超えないように該端子(42)及びパターン(44)の放熱面積を大きくして上記パッケージ(41)の熱を該端子(42)及びパターン(44)から放熱させるようにしたため、上記パッケージ(41)の熱によってプリント基板(43)が高温になり、熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0088】
また、上記端子(42)やパターン(44)に対して、ファン(46)によって風を当てるようにしたため、該端子(42)及びパターン(44)での放熱の効率を向上することができ、上記プリント基板(43)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0089】
さらに、上記パッケージ(41)とプリント基板(43)との間に、遮熱板(47)を設けることで、該パッケージ(41)からの熱放射によって上記プリント基板(43)が高温になるのをさらに確実に防止できる。
【0090】
《実施形態3》
この実施形態3は、上記実施形態2とは異なり、パッケージ(41)を直接、プリント基板(43)上に実装するのではなく、高耐熱性のプリント基板(51)に実装した状態で、低耐熱性のプリント基板(53)に端子(52)を介して接続するようにしたものである。なお、上記実施形態2と同じ構成については同じ符号を付し、異なる部分についてのみ以下で説明する。
【0091】
具体的には、図5に示すように、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体のチップが封入されたパッケージ(41)は、該ワイドバンドギャップ半導体の動作可能な温度よりも高い耐熱温度を有する高耐熱性プリント基板(51)に実装されている。このような高耐熱性プリント基板(51)としては、例えば高耐熱性の樹脂や金属基板などがある。
【0092】
そして、上述のようにパッケージ(41)の実装された高耐熱性プリント基板(51)は、複数の端子(52,52,…)を介して低耐熱性のプリント基板(53)に接続されている。この低耐熱性プリント基板(53)は、例えば一般的な樹脂製のプリント基板である。
【0093】
このように、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体の封入されたパッケージ(41)を、高耐熱性プリント基板(51)に実装し、上記低耐熱性プリント基板(53)と熱的に分離することで、該低耐熱性プリント基板(53)がパッケージ(41)の熱の影響を直接受けて高温になるのを防止することができる。
【0094】
さらに、上記図5に示すように、上記高耐熱性プリント基板(51)と低耐熱性プリント基板(53)との間に遮熱板(54)を設けることで、上記パッケージ(41)や高耐熱性プリント基板(51)からの熱放射を抑えることができ、これにより、上記低耐熱性プリント基板(53)が高温になって熱的な損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0095】
−実施形態3の効果−
上記実施形態3では、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップをパッケージ(41)に封入するとともに、該パッケージ(41)を高耐熱性のプリント基板(51)上に実装し、低耐熱性のプリント基板(53)とは端子(52)によって接続するようにしたため、上記パッケージ(41)の熱によって低耐熱性プリント基板(53)が高温になり、熱的な損傷を受けるのを防止できる。
【0096】
また、上記高耐熱性プリント基板(51)と低耐熱性プリント基板(53)との間に、遮熱板(54)を設けることで、パッケージ(41)及び高耐熱性プリント基板(51)からの熱放射によって上記低耐熱性プリント基板(53)が高温になるのをより確実に防止できる。
【0097】
−実施形態3の変形例−
この変形例は、上述の実施形態3とは異なり、上記低耐熱性プリント基板(53)と高耐熱性プリント基板(51)とを並べただけのものである。なお、基板(51,53)同士を並べたこと以外は、上記実施形態3とほぼ同じ構成なので、同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0098】
具体的には、図6に示すように、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなるチップの封入されたパッケージ(41)を高耐熱性プリント基板(51)上に実装するとともに、該高耐熱性プリント基板(51)に対して低耐熱性のプリント基板(53)を横に並べて配置する。なお、上記高耐熱性プリント基板(51)と低耐熱性プリント基板(53)との間は、例えばボンディングワイヤによって電気的に接続されている。
【0099】
そして、上記高耐熱性プリント基板(51)と低耐熱性プリント基板(53)との間には、上記パッケージ(41)及び高耐熱性プリント基板(51)からの熱放射によって該低耐熱性プリント基板(53)が高温になるの防止するための遮熱板(55)が設けられている。これにより、上記低耐熱性プリント基板(53)が上記パッケージ(41)からの熱放射によって熱的な損傷を受けるのを確実に防止できる。
【0100】
《実施形態4》
この実施形態4は、同じプリント基板(61)上での素子(66,67)の動作温度によって低温部(62)と高温部(63)とを構成し、且つ両者がパターン(64)によって接続されている場合、該高温部(63)で発生した熱がパターン(64)を介して低温部(62)に伝わって該低温部(62)が高温になるのを防止するものである。
【0101】
具体的には、図7に示すように、プリント基板(61)上に、複数の素子(66,67)が実装されている場合、その動作温度によって低温部(62)と高温部(63)とに分けられる。そして、両者が上記プリント基板(61)上に形成されたパターン(64)によって電気的に接続されている場合、該パターン(64)を介して上記高温部(63)の素子(67)の熱が低温部(62)の素子(66)に伝わって、該素子(66)の温度を上昇させることになる。
【0102】
特に、上記高温部(63)の素子(67)が、高温条件下でも動作可能なSiCなどのワイドバンドギャップ半導体によって構成されたパッケージ(41)であり、上記低温部(62)の素子(66)が高温条件下では動作できないSi半導体などによって構成されている場合には、該高温部(63)の素子(67)が高温になると、その熱は上記パターン(64)を介して低温部(62)の素子(66)に伝わり、該低温部(62)の素子(66)の温度が耐熱温度を超えてしまう場合がある。
【0103】
そのため、上記プリント基板(61)のパターン(64)を、熱抵抗が高くなるような形状にする。すなわち、上記図7に示すように、上記パターン(64)の途中の部分(64a)を蛇腹状に屈曲させて上記高温部(63)と低温部(62)との間のパターン(64)の長さをできるだけ長くすることで、該パターン(64)の熱抵抗を大きくする。
【0104】
これにより、上記高温部(63)から上記低温部(62)への伝熱が阻害されて、該低温部(63)の素子(66)の温度上昇が抑えられる。
【0105】
また、上述のように、パターン(64)自身の熱抵抗を大きくするものに限らず、図8に示すように、パターン(64')の途中に抵抗体(65)を設けるようにしてもよい。この抵抗体(65)は、パターン(64')に比べて熱抵抗の大きいもので、上記高温部(63)から低温部(62)への伝熱を妨げるように構成されている。
【0106】
−実施形態4の効果−
上記実施形態4では、同一のプリント基板(61)上に、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなる素子やSi半導体からなる素子などのように動作温度の異なる複数の素子(66,67)が実装されていて、相対的に動作温度の高い素子(67)からなる高温部(63)と動作温度の低い素子(66)からなる低温部(62)とがパターン(64)によって接続されている場合に、該パターン(64)の長さを長くしたり、途中に抵抗体(65)を設けたりすることで、上記高温部(63)と低温部(62)との間の熱抵抗を大きくすることができ、これにより、該高温部(63)の熱によって低温部(62)の温度上昇を抑えることができる。
【0107】
したがって、上記低温部(62)が高温になって熱的な損傷を受けるのを確実に防止することができる。
【0108】
《実施形態5》
この実施形態5は、上述の実施形態1〜4とは異なり、チップなどの素子(71)だけでなく、該素子(71)を駆動させるためのドライバ部(72)もSiCなどのワイドバンドギャップ半導体によって構成し、高温動作可能な素子(71)及びドライバ部(72)と、耐熱温度の低い周辺部品(73,74)との間を熱絶縁したものである。なお、ここでいう熱絶縁とは、完全に伝熱を遮断するものではなく、伝熱を抑制するものも含む。
【0109】
具体的には、上記実施形態1〜4のように、チップ(21)などの素子(71)だけをワイドバンドギャップ半導体によって構成し、他の部品との間の伝熱を抑制する(図9(a))のではなく、該素子(71)を駆動させるドライバ部(72')もワイドバンドギャップ半導体によって構成し、上記素子(71)及びドライバ部(72')を同一のパッケージ(70)内に収める。上記素子(71)を駆動させるドライバ部(72')は、損失等の観点から該素子(71)になるべく近い位置に設けるのが好ましいからである。
【0110】
そして、上記高温動作可能な部品からなるパッケージ(70)と、それ以外の耐熱温度の低い部品(図9の例では、CPU(73)や周辺回路(74)等)との間に熱絶縁(75)を設ける。この熱絶縁(75)は、例えば上述の実施形態1〜4のような構成であり、上記パッケージ(70)から耐熱温度の低い部品(73,74)への伝熱を妨げるように構成されている。
【0111】
−実施形態5の効果−
上記実施形態5では、チップ(21)などの素子(71)だけでなく、該素子(71)を駆動させるためのドライバ部(72')もSiCなどのワイドバンドギャップ半導体によって構成し、上記素子(71)及びドライバ(72')を同一のパッケージ(70)内に収納して、該パッケージ(70)と耐熱温度の低い部品(73,74)との間を熱絶縁するようにしたため、高温動作可能なワイドバンドギャップ半導体によって構成される部品(71,73')の熱が耐熱温度の低い部品(73,74)に伝わって該部品(73,74)が高温になるのを防止できる。
【0112】
したがって、上記耐熱温度の低い部品(73,74)が高温になって熱的な損傷を受けるのを確実に防止することができる。
【0113】
また、通常、上記素子(71)の近く配置されるドライバ部(72')を熱的に保護する必要がなくなるため、該ドライバ部(72’)のための伝熱制御手段を省略することができる。
【0114】
《その他の実施形態》
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0115】
上記各実施形態では、ワイドバンドギャップ半導体としてSiCを用いるようにしているが、この限りではなく、GaNなどSiよりも大きいバンドギャップの値の半導体材料であればどのような材料であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明したように、本発明における電力変換装置は、ワイドバンドギャップ半導体からなるチップなどの素子を有するものに特に有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 電力変換装置
20 チップ部
21 チップ
22 銅基板(伝熱部材)
23,45 ヒートシンク(放熱手段)
24 断熱部材
25,61 プリント基板
26,47,54,55 遮熱板
27 ボンディングワイヤ
41,70 パッケージ
42,52 端子
43 プリント基板
44,64 パターン
46 ファン
51 高耐熱性プリント基板
53 低耐熱性プリント基板
62 低温部
63 高温部
64a 熱抵抗の大きい部分
65 抵抗体
66,67,71 素子
72 ドライバ部
73 CPU(周辺部品)
74 周辺回路(周辺部品)
75 熱絶縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドバンドギャップ半導体のチップ(21)と、該チップ(21)と同等以上の耐熱温度を有する部材(22,23)とによって構成されたチップ部(20)と、該チップ部(20)の周辺に位置し且つ上記チップ(21)よりも耐熱温度の低い周辺部品(25)と、を備えた電力変換装置であって、
上記周辺部品(25)の温度が該周辺部品(25)の耐熱温度を超えないように上記チップ部(20)と該周辺部品(25)とを熱絶縁したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記チップ部(20)は、上記チップ(21)の熱を放熱するための放熱手段(23)と、該放熱手段(23)にチップ(21)の熱を導くための伝熱部材(22)と、をさらに備え、
上記伝熱部材(22)及び上記放熱手段(23)の少なくとも一方は、上記熱絶縁の手段としての断熱部材(24)を介して上記周辺部品(25)によって支持されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記断熱部材(24)は、上記周辺部品(25)と上記伝熱部材(22)及び上記放熱手段(23)の少なくとも一方とを接着するための耐熱性接着剤であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つにおいて、
上記熱絶縁の手段(26)は、上記チップ部(20)から上記周辺部品(25)への熱放射を抑制するように設けられた遮熱板(26)であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つにおいて、
上記チップ部(20)と周辺部品(25)とは、ボンディングワイヤ(27)によって電気的に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
ワイドバンドギャップ半導体のチップを封入してなるパッケージ(41)と、該パッケージ(41)の端子(42)が接続されるパターン(44)が形成されたプリント基板(43)と、を備えた電力変換装置であって、
上記チップの温度が、上記プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品のうち少なくとも一方の耐熱温度を超える場合でも、上記プリント基板(43)及び該基板(43)上の部品の温度が耐熱温度以下になるように、上記パッケージ(41)とプリント基板(43)及び該基板(43)上の部品とを熱絶縁したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方は、上記プリント基板(43)の温度が該基板(43)の耐熱温度以下になるような放熱面積を有していて、
上記熱絶縁の手段(42,44)は、上記放熱面積を有する少なくとも一方の部材であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項6において、
上記熱絶縁の手段(46)は、上記端子(42)及びパターン(44)の少なくとも一方に向かって風を送る送風手段(46)であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項6において、
上記熱絶縁の手段(47)は、上記パッケージ(41)から上記プリント基板(43)への熱放射を抑制するように設けられた遮熱板(47)であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
ワイドバンドギャップ半導体のチップを有するパッケージ(41)と、該パッケージ(41)の最高温度に耐えられるような耐熱温度の高い高耐熱性プリント基板(51)と、上記最高温度よりも耐熱温度の低い低耐熱性プリント基板(53)と、を備えた電力変換装置であって、
上記パッケージ(41)と上記低耐熱性プリント基板(53)とを熱絶縁するように、上記高耐熱性プリント基板(51)上に上記パッケージ(41)を実装したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10において、
上記パッケージ(41)から低耐熱性プリント基板(53)への熱放射を抑制する遮熱板(54,55)を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一つにおいて、
ワイドバンドギャップ半導体からなる部品が実装されたプリント基板(61)は、実装される素子(66,67)の動作温度によって高温部(63)と低温部(62)とに分けられ、該高温部(63)と低温部(62)とを上記プリント基板(61)上で電気的に接続するパターン(64,64')には、伝熱抑制手段(64a,65)が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項12において、
上記伝熱抑制手段(64)は、上記パターン(64)のうち相対的に熱抵抗の大きい部分(64a)であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項12において、
上記伝熱抑制手段(65)は、上記パターン(64)に上記高温部(63)から低温部(62)への熱伝導を阻害するように設けられた抵抗体(65)であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
ワイドバンドギャップ半導体の素子(71)と、該素子(71)を駆動するためのドライバ部(72)とを備えた電力変換装置であって、
上記ドライバ部(72)もワイドバンドギャップ半導体によって構成され、上記素子(71)とともに同一のパッケージ(70)内に配設されるとともに、
上記パッケージ(70)とその周辺に位置する周辺部品(73,74)とを熱絶縁したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一つにおいて、
上記ワイドバンドギャップ半導体はSiC半導体であることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−99855(P2012−99855A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22661(P2012−22661)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2006−237050(P2006−237050)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】