説明

電力変換装置

【課題】制御電源の喪失時においても平滑用コンデンサの放電制御が可能な電力変換装置を安価な回路構成で実現する。
【解決手段】電力変換装置100は、コンデンサモジュール130と、放電時に放電制御信号を出力する放電用マイコン304と、コンデンサモジュール130の両端間電圧に基づいて放電用マイコン304を動作させるための電源電圧を生成する電源回路306と、制御回路201からの制御信号または放電用マイコン304からの放電制御信号に基づいてIGBT210,220を動作させるための駆動信号を出力するパワードライバ302とを備える。放電制御信号に応じてIGBT210,220を動作させることで、コンデンサモジュール130からIGBT210,220を介してモータジェネレータ192へ電流を流すことにより、コンデンサモジュール130を放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置には、電力変換時のスイッチング動作等によって生じる直流電力の電圧変動を抑制して平滑化するための平滑用コンデンサが設けられている。こうした電力変換装置において、直流電源を電力変換装置から切り離して直流電源を遮断する際に、平滑用コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、メインコンタクタがオフされると、マイコン内の電動機制御手段がインバータ回路のスイッチング素子をスイッチングさせることにより、外部負荷に電流を流して平滑用コンデンサに溜まった電荷を放電させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、平滑用コンデンサの両端間に放電抵抗とスイッチング素子とを接続し、放電が必要な場合にのみ出力される放電信号に応じて、スイッチング素子を導通させて放電を開始する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−308704号公報
【特許文献2】特開2010−206909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、マイコンの電源が喪失した場合に平滑用コンデンサの放電が不可能になるという問題がある。一方、特許文献2に開示される技術では、平滑用コンデンサの放電時に流れる大電流に耐え得る高価な放電抵抗とスイッチング素子を搭載する必要があり、また放電時の放電抵抗による発熱を逃がすような構造を電力変換装置内に設ける必要もあるため、電力変換装置のコストアップにつながるという問題がある。
【0007】
上記のような従来の問題点に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、制御電源の喪失時においても平滑用コンデンサの放電制御が可能な電力変換装置を安価な回路構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電力変換装置は、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換素子と、直流電力を平滑化するためのコンデンサと、負荷の駆動時に電力変換素子の動作を制御するための制御信号を出力する制御回路と、コンデンサの放電時に電力変換素子の動作を制御するための放電制御信号を出力する放電制御手段と、コンデンサの両端間電圧に基づいて放電制御手段を動作させるための電源電圧を生成する電源回路と、制御信号または放電制御信号に基づいて電力変換素子を動作させるための駆動信号を出力するドライバ部とを備え、放電制御信号に応じて電力変換素子を動作させることで、コンデンサから電力変換素子を介して負荷へ電流を流すことにより、コンデンサを放電させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御電源の喪失時においても平滑用コンデンサの放電制御が可能な電力変換装置を安価な回路構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置を搭載したハイブリッド自動車の制御ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電力変換装置のブロック図である。
【図3】第1実施例における制御部の回路構成を示す図である。
【図4】第2実施例における制御部の回路構成を示す図である。
【図5】第1実施例における正常放電時の各信号のタイミングチャート例である。
【図6】第1実施例におけるコンタクタ異常時の各信号のタイミングチャート例である。
【図7】第1実施例における制御電源喪失時の各信号のタイミングチャート例である。
【図8】第1実施例における制御電源喪失かつコンタクタ異常時の各信号のタイミングチャート例である。
【図9】第2実施例における各信号のタイミングチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明は、自動車に搭載され、車載バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に対して適用可能である。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、純粋な電気自動車等に搭載される補機駆動用電機システムや車両駆動用電機システムなどにおいて、変換後の交流電力を補機駆動用モータや車両駆動用モータに出力する電力変換装置として好適である。しかし、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であれば、自動車に搭載されるものに限らず、いかなる形態の電力変換装置についても本発明を適用可能である。
【0012】
以下では、本発明による電力変換装置の代表例として、ハイブリッド自動車に搭載される電力変換装置に本発明を適用した場合の例について説明する。
【0013】
一般的なハイブリッド自動車は、電動機と内燃機関が主な動力源となっており、電動機は1ないし2以上搭載されていることが多い。本発明による電力変換装置は、こうしたハイブリッド自動車に搭載される車載電機システムにおける車載用電力変換装置、特に、車両駆動用インバータとして用いられる。この車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられており、車載電源を構成する車載バッテリ或いは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置を搭載したハイブリッド自動車の制御ブロック図である。図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEV110の駆動源及び発電源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEV110の駆動源及びHEV110の電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。モータジェネレータは1ないし2つ搭載されていることが一般的だが、2つ以上でも構わない。
【0015】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されている。前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
【0016】
前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータジェネレータ192とモータジェネレータ194とエンジン120の出力側が機械的に接続されている。変速機118は動力分配機構を備えており、これを介してエンジン120の出力側とモータジェネレータ192、194の出力側とが機械的に接続されている。変速機118の動力分配機能は、エンジン120とモータジェネレータ192,194とをそれぞれ機械的に接続したり切り離したりすることが出来る機能を有する。なお、変速機の種類によりモータジェネレータ192,194が変速機の内側に搭載されている場合もある。
【0017】
モータジェネレータ192,194は、回転子に永久磁石を備えた同期機、または電機子巻線を備えた誘導機である。固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置140,142によってそれぞれ制御されることにより、モータジェネレータ192,194の駆動が制御される。インバータ装置140,142にはバッテリ136が電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との相互において電力の授受が可能である。
【0018】
以上説明した図1の車載電機システムは、モータジェネレータ192及びインバータ装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備えており、HEV110の運転状態に応じてそれらを使い分けている。たとえば、エンジン120からの動力によってHEV110の駆動トルクをアシストする場合には、第2電動発電ユニットを発電ユニットとして用いてエンジン120の動力により発電を行い、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、たとえばHEV110の車速をアシストする場合には、第1電動発電ユニットを発電ユニットとして用いてエンジン120の動力により発電を行い、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
【0019】
また、図1の車載電機システムは、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192または194をモータとして動作させ、それによって生じる動力を用いてHEV110を駆動させることができる。このときモータジェネレータ192、194はバッテリ136に対する負荷として作用する。さらに、エンジン120の動力や前輪112からの動力によって第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを発電ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192または194を発電機として動作させ、それによって生じる電力を用いてバッテリ136の充電を行うこともできる。このときモータジェネレータ192、194はバッテリ136に対する電力供給源として作用する。
【0020】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機用のモータ195は、たとえばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136からインバータ装置144に直流電力が供給され、インバータ装置144で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ装置144は、インバータ装置140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。たとえば、モータ195の回転子の回転に対してインバータ装置144から進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、インバータ装置144からモータ195へ遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、回生制動状態の運転となる。このようなインバータ装置144の制御機能はインバータ装置140や142の制御機能と同様である。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ装置144の最大変換電力はインバータ装置140や142より小さいが、インバータ装置144の回路構成は基本的にインバータ装置140や142の回路構成と同じである。
【0021】
インバータ装置140、142および144とバッテリ136との間には、コンデンサモジュール130が接続されている。これらは電気的に互いに密接な関係にあり、さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また、一般的に電力変換装置では、その体積をできるだけ小さくすることが望まれている。これらの点から、以下で詳述する本実施形態に係る電力変換装置100は、インバータ装置140、142および144とコンデンサモジュール130とを共通の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い電力変換装置が実現できる。なお、インバータ装置140とバッテリ136の間には、バッテリ136からの直流電力を導通または遮断するための切替装置(不図示)が搭載されている。この切替装置は、たとえばコンタクタである。
【0022】
上記のように、インバータ装置140、142および144とコンデンサモジュール130とを一つの電力変換装置100として共通の筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策で効果がある。また、コンデンサモジュール130とインバータ装置140、142および144との間における接続回路のインダクタンスを低減できるため、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
【0023】
次に、インバータ装置140や142あるいはインバータ装置144の電気回路構成を説明する。ここでは、インバータ装置140や142あるいはインバータ装置144をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明する。インバータ装置140や142あるいはインバータ装置144は同様の構成で同様の作用を為し、同様の機能を有している。そのため、以下では代表例としてインバータ装置140の説明を行う。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置100のブロック図である。本実施形態に係る電力変換装置100は、インバータ装置140とコンデンサモジュール130とを備える。インバータ装置140は、パワーモジュール部203と制御部204とを有している。パワーモジュール部203は、上下アーム直列回路240を複数(図2の例では、三相交流モータであるモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3つ)有している。各上下アーム直列回路240は、バッテリ136に対して高電圧側に配置されており上アームとして動作するIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)210およびダイオード211と、低電圧側に配置されており下アームとして動作するIGBT220およびダイオード221とによって構成されている。各上下アーム直列回路240の中点部分は、交流端子を介して、モータジェネレータ192へと続く交流電力線に接続されている。制御部204は、パワーモジュール部203を駆動制御するための駆動信号を出力するドライバ回路202と、ドライバ回路202に駆動信号を出力させるための制御信号をモータジェネレータ駆動信号線252を介して供給する制御回路201とを有している。
【0025】
各上下アーム直列回路240を構成する上アームのIGBT210や下アームのIGBT220は、スイッチング用パワー半導体素子である。これらのパワー半導体素子が制御部204から出力された駆動信号に応じてスイッチング動作することで、バッテリ136から供給された直流電力が三相交流電力に変換される。この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。なお、スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTに替えてMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。この場合、ダイオード211やダイオード221は不要となる。
【0026】
コンデンサモジュール130は、IGBT210,220のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。コンデンサモジュール130の正極側コンデンサ電極にはバッテリ136の正極側が、コンデンサモジュール130の負極側コンデンサ電極にはバッテリ136の負極側が、それぞれ直流コネクタ(不図示)を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサモジュール130は、バッテリ136と上下アーム直列回路240に対して電気的に並列接続される。
【0027】
制御部204において、制御回路201は、他の制御装置やセンサ類などからの入力情報に基づいて、モータジェネレータ192の駆動時にIGBT210,220のスイッチング動作のタイミングに応じた制御信号を生成し、ドライバ回路202へ出力する。ドライバ回路202は、制御回路201から出力された制御信号に基づいて、IGBT210,220をスイッチング動作させるための駆動信号を生成し、パワーモジュール部203の各上下アーム直列回路240へ出力する。
【0028】
制御回路201は、IGBT210,220のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。このマイコンには、上記の入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値もしくは目標回転数値と、各上下アーム直列回路240からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値と、モータジェネレータ192の回転子の磁極位置とが入力される。なお、目標トルク値もしくは目標回転数値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。あるいは、マイコンの中で演算された値を目標トルク値や目標回転数値としても構わない。電流値は、電流センサ231から出力された検出信号に基づいて検出される。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ230から出力された検出信号に基づいて検出される。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
【0029】
制御回路201内のマイコンは、入力情報として入力された目標トルク値もしくは目標回転数値に基づいて、モータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算する。次に、演算されたd,q軸の電流指令値と、電流センサ231により検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいて、d,q軸の電圧指令値を演算する。そして、回転磁極センサ230により検出された磁極位置に基づいて、演算されたd,q軸の電圧指令値をU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。このようにして得られたU相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)を所定のキャリア波に基づいてパルス変換することで、マイコンはパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)制御信号としてモータジェネレータ駆動信号線252からドライバ回路202に出力する。なお、ここでは一般的なPWM変調方式による電動機の制御方法を例として説明したが、モータジェネレータ192を駆動させる制御信号はPWM変調方式によるものに限らず、いかなる制御方法に基づいて作成したものでも構わない。
【0030】
ドライバ回路202は、下アームを駆動する場合、制御回路201からのPWM制御信号を増幅し、これを駆動信号として、対応する下アームのIGBT220のゲート電極に出力する。また、上アームを駆動する場合、基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトして制御回路201からのPWM制御信号を増幅し、これを駆動信号として、対応する上アームのIGBT210のゲート電極に出力する。これにより、各IGBT210,220は、入力された駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0031】
また、ドライバ回路202は、上下アーム直列回路240における異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行うことで、上下アーム直列回路240を保護している。何らかの異常を検知すると、ドライバ回路202は、上下アーム直列回路240の動作を停止してその異常から上下アーム直列回路240を保護する。さらに、制御回路201のマイコンへ異常信号線251を介して所定の異常信号を伝達することで、異常が検知されたことを通知する。
【0032】
次に、以上のように構成される電力変換装置100におけるコンデンサモジュール130の放電制御に関して説明する。電力変換装置100は、バッテリ136から切り離されて直流電力が遮断されると、コンデンサモジュール130を放電するための放電制御を制御部204において行う。この放電制御を実現するための制御部204の回路構成例を、以下では第1実施例および第2実施例としてそれぞれ説明する。
【0033】
(第1実施例)
図3は、制御部204の第1実施例における回路構成を示す図である。図3に示すように、制御部204において制御回路201は、IGBT210,220のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイコン303を備えている。マイコン303は、前述のような演算処理を行うことにより、U相,V相,W相の各上下アームに対してPWM制御信号をそれぞれ生成する。マイコン303において生成された各PWM制御信号は、マイコン303から6本のモータジェネレータ駆動信号線252を介してドライバ回路202へそれぞれ出力される。
【0034】
HEV110のキースイッチがオフされると、マイコン303またはHEV110に搭載されている上位コントローラ(不図示)は、前述の切替装置の動作を制御することで、電力変換装置100をバッテリ136から切り離して直流電力を遮断する。このときマイコン303は、放電指令信号線311を介してパルス状の放電指令信号をドライバ回路202へ出力する。この放電指令信号は、ドライバ回路202に対してコンデンサモジュール130の放電を指令するための信号であり、放電の可否をパルス列の変化で表している。たとえば、バッテリ136からの直流電力が導通しているときには、放電不可であることを表す放電指令信号として、所定のパルス幅でデューティ比が60%(60%ON,40%OFF)のパルス列を連続的に出力する。一方、バッテリ136からの直流電力が遮断されると、放電可能であることを表す放電指令信号として、所定のパルス幅でデューティ比が40%(40%ON,60%OFF)のパルス列を連続的に出力する。なお、ここで挙げたパルス列はあくまで一例であるため、他のパルス列を放電指令信号として用いて放電の可否を表してもよい。
【0035】
また、先に図2で説明したように、モータジェネレータ192を駆動させるために制御回路201からドライバ回路202へ出力する制御信号は、PWM変調方式によるものに限らず、どんな種類の信号でも構わない。また、図3ではモータジェネレータ192が三相交流モータである場合について、制御回路201により生成される6種類のPWM制御信号を6本のモータジェネレータ駆動信号線252を介してドライバ回路202へそれぞれ出力する回路構成例を示している。しかし、モータジェネレータ192を単相交流モータ、または三相以外の複相交流モータとしてもよい。その場合、モータジェネレータ192の相数に応じて、制御回路201が生成する制御信号およびモータジェネレータ駆動信号線252の数を変更すればよい。
【0036】
ドライバ回路202は、各モータジェネレータ駆動信号線252に対して設けられた6つのフォトカプラ312と、ロジック回路301と、パワードライバ302と、放電用マイコン304と、電源回路306と、分圧抵抗307と、放電指令信号線311に対して設けられたフォトカプラ305と、異常信号線251に対して設けられたフォトカプラ308とを備える。
【0037】
制御回路201のマイコン303からモータジェネレータ駆動信号線252を介してドライバ回路202へ入力された各PWM制御信号は、フォトカプラ312を介してロジック回路301に入力される。ロジック回路301には、各PWM制御信号にそれぞれ対応して、前段側に6つのAND回路が設けられ、後段側に6つのOR回路が設けられている。前段側の各AND回路は、放電用マイコン304から放電切替信号線310を介して出力される放電切替信号に応じて、各PWM制御信号を通過または遮断するための論理演算をそれぞれ行う。後段側の各OR回路では、前段側のAND回路を通過した各PWM制御信号、または放電用マイコン304から放電制御信号線313を介して出力される各放電制御信号のいずれかをパワードライバ302へ出力するための論理演算をそれぞれ行う。
【0038】
パワードライバ302は、たとえば1つのICで構成されるものであり、ロジック回路301から出力された各PWM制御信号または各放電制御信号を増幅することで駆動信号を生成する。パワードライバ302によって生成された各駆動信号は、各上下アーム直列回路240のIGBT210,220にそれぞれ出力される。
【0039】
なお、図3ではパワードライバ302を1つのICで構成した例を示しているが、各上下アーム直列回路240に対してパワードライバ302を個別に設けることも可能である。その場合、モータジェネレータ192が図3に示すような三相交流モータであれば、ドライバ回路202内に3つのパワードライバ302が設置される。さらに、パワードライバ302を各IGBT210,220に対して個別に設けることも可能である。その場合、ドライバ回路202内に6つのパワードライバ302が設置される。
【0040】
一方、制御回路201のマイコン303から放電指令信号線311を介してドライバ回路202へ入力された放電指令信号は、フォトカプラ305を介して放電用マイコン304に入力される。この放電指令信号は、前述のようにパルス状の信号である。このようにパルス状の放電指令信号を用いることで、電源喪失等の原因により制御回路201においてマイコン303が正常に動作せず、そのためにパルス状ではない一定電圧の信号がマイコン303から放電指令信号として継続的に出力された場合に、マイコン303の異常を放電用マイコン304が認識できるようにしている。すなわち、マイコン303からの放電指令信号に基づいて、放電用マイコン304は制御回路201の動作状態を判断する。その結果、制御回路201が正常に動作していないと判断した場合、放電用マイコン304は放電制御信号を出力する。
【0041】
放電用マイコン304は、マイコン303から放電不可であることを表す前述のような放電指令信号が出力されているときには、放電切替信号線310を介してロジック回路301へ出力する放電切替信号をONにする。一方、マイコン303から放電可能であることを表す放電指令信号が出力されているときには、放電切替信号をOFFにすると共に、6本の放電制御信号線313を介して、U相,V相,W相の各上下アームに対する放電制御信号をロジック回路301へ出力する。これらの放電切替信号および放電制御信号に基づいて、ロジック回路301において前述のような論理演算が各PWM制御信号に対してそれぞれ行われる。
【0042】
なお、前述のようにして制御回路201の動作状態を判断した結果、マイコン303からパルス状の放電指令信号が出力されておらず、そのため制御回路201が正常に動作していないと判断した場合、放電用マイコン304は、上記の放電可能である場合と同様の動作を行う。すなわち、放電切替信号をOFFにすると共に、放電制御信号をロジック回路301へ出力する。
【0043】
放電用マイコン304を動作させるための電源電圧は、コンデンサモジュール130の両端間電圧を分圧抵抗307により分圧して得られた電圧に基づいて、電源回路306により生成される。そのため、バッテリ136からの直流電力が遮断された後でも、コンデンサモジュール130が放電されることでその両端間の電圧が一定の電圧以下になるまでの間は、放電用マイコン304を動作させて放電制御を行うことが可能である。
【0044】
コンデンサモジュール130の両端間には、コンデンサモジュール130と並列に接続されたLED232が配置されている。LED232は、コンデンサモジュール130が放電されたか否かを報知するためのものである。すなわち、コンデンサモジュール130の両端間の電圧が所定値以上である場合は、LED232が発光し、これにより未放電であることが報知される。一方、コンデンサモジュール130の両端間の電圧が所定値未満である場合は、LED232が発光しないため、放電済みであることが報知される。なお、LED232の代わりに他の発光素子を用いて、コンデンサモジュール130が放電されたか否かを報知するようにしてもよい。
【0045】
なお、放電用マイコン304は、上下アーム直列回路240から出力されるセンシング情報に基づいて、前述のような異常検知を行う。たとえば、各上下アーム直列回路240のIGBT210,220においてエミッタ電極に流れる電流の情報が、IGBT210,220に設けられた信号用エミッタ電極端子から出力され、センシング情報として放電用マイコン304に入力される。このセンシング情報に基づいて、放電用マイコン304は過電流検知を行う。いずれかのIGBTにおいて過電流が検知された場合、放電用マイコン304は放電切替信号をOFFにする。これに応じて、ロジック回路301において制御回路201からのPWM制御信号が遮断されることで、上下アーム直列回路240を過電流から保護する。
【0046】
また、分圧抵抗307によって分圧された電圧の情報は、センシング情報として放電用マイコン304に入力される。これに基づいて、放電用マイコン304はコンデンサモジュール130の両端間電圧を算出し、その算出結果に基づいて過電圧検知を行う。過電圧が検知された場合、放電用マイコン304は放電切替信号をOFFにする。これに応じて、ロジック回路301において制御回路201からのPWM制御信号を遮断することで、上下アーム直列回路240を過電圧から保護する。
【0047】
さらに、上下アーム直列回路240には温度センサ(不図示)が設けられており、この温度センサにより検出された上下アーム直列回路240の温度の情報がセンシング情報として放電用マイコン304に入力される。これに基づいて、放電用マイコン304は過温度検知を行う。過温度が検知された場合、放電用マイコン304は放電切替信号をOFFにする。これに応じて、ロジック回路301において制御回路201からのPWM制御信号を遮断することで、上下アーム直列回路240を過温度から保護する。
【0048】
放電用マイコン304は、異常検出時には以上説明したような動作を行うことにより、上下アーム直列回路240(ひいては、上下アーム直列回路240を含む電力変換装置100全体)を、過電流、過温度、過電圧等の異常から保護する。そして、フォトカプラ308および異常信号線251を介して制御回路201のマイコン303へ異常信号を出力することで、異常発生を通知する。
【0049】
また、放電用マイコン304は、センシング情報として放電用マイコン304に入力される電圧の情報に基づいて求めた放電中のコンデンサモジュール130の両端間の電圧に基づいて、正常に放電が行われているか否かを判断する。その結果、正常に放電が行われていないと判断すると、放電制御信号の出力を停止することで放電を中断する。
【0050】
なお、以上説明したような放電用マイコン304の機能をマイコン以外のICを用いて実現してもよい。さらに、任意の論理回路を書き込み可能なロジックデバイス、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを用いて、放電用マイコン304およびロジック回路301を一体的な構成として実現してもよい。
【0051】
以上説明した制御部204の第1実施例における放電シーケンスに応じたタイミングチャート例を図5〜8に示す。これらの各図において、符号401はマイコン303からの放電指令信号を示し、符号402、403は放電用マイコン304からの放電切替信号と放電制御信号をそれぞれ示している。また、符号404はコンデンサ電圧、すなわちコンデンサモジュール130の両端間の電圧を示し、符号405はコンタクタ状態、すなわちバッテリ136からの直流電力の導通状態を示している。
【0052】
なお、図5〜8の各タイミングチャートにおいて、放電指令信号401は、前述のようにデューティ比60%(60%ON,40%OFF)のパルス列信号により放電不可を表しているものとする。また、これとは反対に、デューティ比40%(40%ON,60%OFF)のパルス例信号により放電可能を表しているものとする。
【0053】
図5は、正常放電時の各信号のタイミングチャート例を示している。図5において、バッテリ136からの直流電力が導通しているときには、マイコン303から放電不可を示す放電指令信号401が出力されている。この放電指令信号401に応じて、放電用マイコン304は放電切替信号402をONとし、放電制御信号403をOFFとする。これにより、制御回路201からのPWM制御信号がロジック回路301からパワードライバ302へ出力され、各IGBT210,220がPWM制御信号に応じてスイッチング動作される。このときコンデンサモジュール130には電荷が蓄積されているため、コンデンサ電圧404はHiとなっている。また、コンタクタ状態405はCLOSEとなっている。
【0054】
符号501に示すタイミングにおいて、切替装置が開かれてバッテリ136からの直流電力が遮断されると、コンタクタ状態405はCLOSEからOPENに変化する。その後、符号502に示すタイミングにおいて、マイコン303からの放電指令信号401が放電不可から放電可能に変化すると、これに応じて放電用マイコン304は放電切替信号402をONからOFFに変化させる。これにより、制御回路201からのPWM制御信号がロジック回路301において遮断され、パワードライバ302へ出力されなくなる。さらに放電用マイコン304は、放電制御信号403をONとする。このとき出力される放電制御信号403は、モータジェネレータ192を駆動されない状態としつつ、コンデンサモジュール130に蓄積された電荷により流れる電流がモータジェネレータ192において消費されるように、各IGBT210,220をスイッチング動作させるための信号である。たとえば、モータジェネレータ192が追従できないような高速のPWM信号を、放電用マイコン304から放電制御信号403としてU相,V相,W相の各相についてそれぞれ出力することができる。このような高速のPWM信号の生成は、たとえば、モータジェネレータ192の最大回転速度よりも速い(高い)周波数で周期的に変化する基本波と所定周波数のキャリア波とを比較することで実現できる。
【0055】
以上説明したような放電制御信号を放電用マイコン304から出力することで、モータジェネレータ192を駆動させずに、コンデンサモジュール130から各IGBT210,220を介してモータジェネレータ192へ電流を流すことができる。その結果、HEV110の挙動に影響を及ぼすことなく、モータジェネレータ192によりコンデンサモジュール130を放電させることができる。
【0056】
上記のように放電制御信号403がONされてコンデンサモジュール130の放電が開始されると、コンデンサ電圧404はHiからLowへと次第に低下していく。符号503に示すタイミングにおいてコンデンサ電圧404が所定の電圧以下になると、電源回路306から放電用マイコン304への電源供給が不可能となり、放電用マイコン304が電源を喪失してその動作を停止する。これにより、放電制御信号403がOFFとなり、コンデンサモジュール130の放電が終了する。
【0057】
図6は、コンタクタ異常時の各信号のタイミングチャート例を示している。ここでは、溶着等を原因とするコンタクタ異常により切替装置が正常に動作せず、バッテリ136からの直流電力を遮断できない場合を想定する。図6において、バッテリ136からの直流電力が導通しているときには、各信号状態は図5と同じである。
【0058】
コンタクタ異常時には、コンタクタ状態405がCLOSEからOPENに変化していないにも関わらず、符号601に示すタイミングにおいてマイコン303からの放電指令信号401が放電不可から放電可能に変化する。これに応じて放電用マイコン304は、図5と同様に放電切替信号402をONからOFFに変化させると共に、放電制御信号403をONとしてコンデンサモジュール130の放電を開始しようとする。しかし、図5の場合とは異なり、コンタクタ状態405はCLOSEのまま変化しないため、コンデンサモジュール130は放電されず、コンデンサ電圧404はHiから一瞬だけ低下するものの、Lowまで低下することはない。このように、放電制御信号403をONしたにも関わらずコンデンサ電圧404が低下しないことを検知すると、放電用マイコン304はコンデンサモジュール130において正常に放電が行われていないと判断する。その場合、符号602に示すタイミングにおいて、放電制御信号403をOFFとしてコンデンサモジュール130の放電を停止する。
【0059】
上記のように放電を停止してから一定期間を経過した後、符号603に示すタイミングにおいて、放電用マイコン304は再び放電制御信号403をONとする。こうして放電用マイコン304は、IGBT210、211が高温破壊しないように一定の期間を設けてコンデンサモジュール130の放電を再試行する。しかし、コンタクタ状態405は依然としてCLOSEであるため、放電用マイコン304は先の場合と同様に、コンデンサモジュール130において正常に放電が行われていないと判断する。その結果、符号604に示すタイミングにおいて、放電制御信号403をOFFとしてコンデンサモジュール130の放電を停止する。放電用マイコン304は、コンデンサモジュール130の放電が正常に行われるまで、こうした動作を繰り返す。
【0060】
図7は、制御電源喪失時の各信号のタイミングチャート例を示している。ここでは、コンデンサモジュール130の放電を開始する前に、断線等の原因により制御回路201の電源が喪失し、マイコン303の動作が停止された場合を想定する。図7において、マイコン303が正常に動作している間の各信号状態は図5、6と同じである。
【0061】
符号701に示すタイミングにおいて制御回路201の電源が喪失すると、それまでマイコン303から出力されていた放電不可を示す放電指令信号401がOFF状態となる。このとき、HEV110に搭載されている上位コントローラ(不図示)は、制御回路201の電源が喪失されたことを検出すると、符号702に示すタイミングにおいて切替装置を開き、コンタクタ状態405をCLOSEからOPENに変化させてバッテリ136からの直流電力を遮断する。一方、放電用マイコン304は、放電指令信号401がOFFになったことを検知すると、符号703に示すタイミングにおいて放電切替信号402をONからOFFに変化させると共に、放電制御信号403をONとしてコンデンサモジュール130の放電を開始する。すると、図5の場合と同様に、コンデンサ電圧404はHiからLowへと次第に低下していく。その後、符号704に示すタイミングにおいてコンデンサ電圧404が所定の電圧以下になると、電源回路306から放電用マイコン304への電源供給が不可能となり、放電用マイコン304が電源を喪失してその動作を停止する。これにより、放電制御信号403がOFFとなり、コンデンサモジュール130の放電が終了する。
【0062】
図8は、制御電源喪失かつコンタクタ異常時の各信号のタイミングチャート例を示している。ここでは、コンデンサモジュール130の放電を開始する前に、図7の場合と同様に制御回路201の電源が喪失すると共に、図6の場合と同様にコンタクタ異常が発生した場合を想定する。図8において、マイコン303が正常に動作している間の各信号状態は図5〜7と同じである。
【0063】
符号801に示すタイミングにおいて制御回路201の電源が喪失すると、図7の場合と同様に、それまでマイコン303から出力されていた放電不可を示す放電指令信号401がOFF状態となる。しかし、コンタクタ状態405は図7の場合とは異なり、コンタクタ異常のためにCLOSEのままでOPENには変化しない。一方、放電用マイコン304は、放電指令信号401がOFFになったことを検知すると、符号802に示すタイミングにおいて放電切替信号402をONからOFFに変化させると共に、放電制御信号403をONとしてコンデンサモジュール130の放電を開始しようとする。しかし、図6の場合と同様に、このときコンデンサモジュール130は放電されないため、コンデンサ電圧404はHiから一瞬だけ低下するものの、Lowまで低下することはない。これを検知すると、放電用マイコン304は図6で説明したように、コンデンサモジュール130において正常に放電が行われていないと判断する。そして、符号803に示すタイミングにおいて、放電制御信号403をOFFとしてコンデンサモジュール130の放電を停止する。
【0064】
放電停止後に一定期間が経過すると、図6の場合と同様に、符号804に示すタイミングにおいて、放電用マイコン304は再び放電制御信号403をONとしてコンデンサモジュール130の放電を再試行する。しかし、コンタクタ状態405が依然としてCLOSEであるため、放電用マイコン304はコンデンサモジュール130において正常に放電が行われていないと判断し、符号805に示すタイミングにおいて放電制御信号403をOFFとしてコンデンサモジュール130の放電を停止する。その後、放電用マイコン304はこうした動作を繰り返す。
【0065】
第1実施例において、制御部204は、以上説明したような回路構成および放電シーケンスにより、コンデンサモジュール130の放電制御を行う。
【0066】
(第2実施例)
続いて、制御部204の第2実施例について説明する。図4は、制御部204の第2実施例における回路構成を示す図である。図3と図4を比較すると、第2実施例では、図3の放電用マイコン304およびロジック回路301に替えて、放電用IC420およびロジック回路を有する点が第1実施例と異なっている。それ以外の部分については、第1実施例と同様である。
【0067】
放電用IC420は、放電用マイコン304とは異なり、前述のような高速のPWM信号を放電制御信号として出力することができない。その代わりに放電用IC420は、予め決められた一定の信号パターンによる放電制御信号を、放電制御信号線431,432,433,434を介してそれぞれ出力する。この放電制御信号の信号パターンについては、後で図9により詳しく説明する。なお、放電切替信号線310を介して出力する放電切替信号については、放電用マイコン304と同様である。
【0068】
ロジック回路421は、前段側に6つのAND回路を有する点はロジック回路301と同様であるが、後段側のOR回路の数が4つである点がロジック回路301とは異なる。このうち3つのOR回路は、U相,V相,W相の各相における上アームの各IGBT210に対応してそれぞれ設けられている。残りの1つのOR回路は、U相,V相,W相のうちいずれか一相における下アームのIGBT220に対応して設けられている。放電用IC420から放電制御信号線431,432,433,434を介してそれぞれ出力された放電制御信号は、これら4つのOR回路にそれぞれ入力される。
【0069】
図9は、以上説明した制御部204の第2実施例における放電シーケンスに応じたタイミングチャート例を示している。図9では、放電用IC420から放電制御信号線431,432,433,434を介してそれぞれ出力される各放電制御信号を、符号411,412,413,414にそれぞれ示している。また、モータジェネレータ192に流れる電流を符号910に示しており、コンデンサ電圧、すなわちコンデンサモジュール130の両端間の電圧を符号404に示している。
【0070】
切替装置が開かれてバッテリ136からの直流電力が遮断されると、放電用IC420は符号901に示すタイミングにおいて、放電制御信号411および414をOFFからONに変化させる。すると、U相,V相,W相のうちいずれか一相における上アームのIGBT210と、他のいずれか一相における下アームのIGBT220とが導通し、コンデンサモジュール130が放電されてモータジェネレータ192に電流が流れる。これにより、モータジェネレータ電流910が上昇すると共に、コンデンサ電圧404が次第に低下する。
【0071】
その後、モータジェネレータ電流910がIGBT210、220の許容電流を越える前に、放電用IC420は符号902に示すタイミングにおいて、残りの放電制御信号412および413をOFFからONに変化させると共に、放電制御信号414をONからOFFに変化させる。すると、U相,V相,W相の全てにおいて上アームのIGBT210が導通し、モータジェネレータ電流910がモータジェネレータ192内を還流する。その結果、モータジェネレータ192が有する抵抗成分とインダクタンス成分により、モータジェネレータ電流910が徐々に低下していき、符号903に示すタイミングにおいて0Armsとなる。
【0072】
一方、コンデンサ電圧404は、電源回路306が放電用IC420へ電源供給を行うためにコンデンサモジュール130に蓄えられた電力を消費することで、HiからLowへと徐々に低下していく。その結果、符号904に示すタイミングにおいてコンデンサ電圧404が所定の電圧以下になると、電源回路306から放電用IC420への電源供給が不可能となり、放電用IC420が電源を喪失してその動作を停止する。これにより、放電制御信号411〜413がOFFとなり、コンデンサモジュール130の放電が終了する。
【0073】
第2実施例において、制御部204は、以上説明したような回路構成および放電シーケンスにより、コンデンサモジュール130の放電を制御する。
【0074】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
【0075】
(1)電力変換装置100は、バッテリ136から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷であるモータジェネレータ192へ供給するIGBT210,220と、バッテリ136からの直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール130と、モータジェネレータ192の駆動時にIGBT210,220の動作を制御するための制御信号を出力する制御回路201と、コンデンサモジュール130の放電時にIGBT210,220の動作を制御するための放電制御信号を出力する放電用マイコン304または放電用IC420と、コンデンサモジュール130の両端間電圧に基づいて放電用マイコン304または放電用IC420を動作させるための電源電圧を生成する電源回路306と、制御信号または放電制御信号に基づいてIGBT210,220を動作させるための駆動信号を出力するパワードライバ302とを備える。そして、放電制御信号に応じてIGBT210,220を動作させることで、コンデンサモジュール130からIGBT210,220を介してモータジェネレータ192へ電流を流すことにより、コンデンサモジュール130を放電させる。このようにしたので、電力変換装置100は、制御回路201の電源の喪失時においてもコンデンサモジュール130の放電制御が可能である。さらに、放電時に流れる大電流に耐え得る高価な放電抵抗やスイッチング素子が不要であり、放電時の放電抵抗による発熱を逃がすような構造も必要ないため、安価な回路構成とすることができる。
【0076】
(2)ロジック回路301,421は、放電制御信号を出力する際に放電用マイコン304または放電用IC420から出力される放電切替信号に応じて、制御回路201からパワードライバ302への制御信号の出力を遮断する。このようにしたので、コンデンサモジュール130の放電時において、放電用マイコン304または放電用IC420からの放電制御信号に応じてIGBT210,220が確実に動作するようにし、これらが制御回路201からの制御信号に応じて誤って動作するのを防止できる。
【0077】
(3)放電用マイコン304は、放電制御信号として、モータジェネレータ192の最大回転速度よりも速い周期で周期的に変化する基本波に基づくPWM信号を出力することができる。このようにすれば、モータジェネレータ192を駆動されない状態としつつ、コンデンサモジュール130からモータジェネレータ192に電流を流すことができる。そのため、HEV110の挙動に影響を及ぼすことなく、コンデンサモジュール130を放電させることができる。
【0078】
(4)放電用IC420は、放電制御信号として、上アームのIGBT210のいずれか一つと、下アームのIGBTのいずれか一つとを導通させ、その後、上アームのIGBTの全て、または下アームのIGBTの全てを導通させるための所定パターンの信号を出力する。このようにしたので、高速のPWM信号を放電制御信号として用いることなく、コンデンサモジュール130からモータジェネレータ192に電流を流してコンデンサモジュール130を放電させることができる。
【0079】
(5)制御回路201は、マイコン303により、コンデンサモジュール130の放電を指令するための放電指令信号を放電用マイコン304または放電用IC420へ出力する。放電用マイコン304と放電用IC420は、この放電指令信号に応じて放電制御信号を出力する。このようにしたので、コンデンサモジュール130の放電時に、制御回路201からの指令に応じて放電用マイコン304または放電用IC420から放電制御信号を確実に出力することができる。
【0080】
(6)放電用マイコン304および放電用IC420は、放電指令信号に基づいて制御回路201の動作状態を判断し、制御回路201が正常に動作していないと判断した場合に放電制御信号を出力する。このようにしたので、制御回路201が正常に動作していない場合にコンデンサモジュール130を確実に放電させることができる。
【0081】
(7)放電用マイコン304および放電用IC420は、コンデンサモジュール130の両端間電圧を算出し、その算出結果に基づいて過電圧検知を行うようにした。これにより、電力変換装置100において過電圧が発生した場合にはそれを検知し、電力変換装置100の保護を図ることができる。
【0082】
(8)LED232によりコンデンサモジュール130が放電されたか否かを報知するようにしたので、コンデンサモジュール130が放電されたか否かを目視で簡単に判断することができる。
【0083】
なお、以上説明した実施の形態では、放電用マイコン304または放電用IC420が出力する放電切替信号に応じて、ロジック回路301またはロジック回路421により制御回路201からパワードライバ302への放電制御信号を導通または遮断することとした。しかし、ロジック回路301、421以外のものを用いてこうした切替動作を実現してもよい。たとえば、放電切替信号に応じて動作するスイッチを設け、これにより制御回路201からの放電制御信号を導通または遮断することができる。その他にも、放電切替信号に応じて動作する様々な回路を用いて、コンデンサモジュール130の放電時における放電制御信号の切替動作を実現することができる。
【0084】
以上説明した実施の形態では、第2実施例として、ロジック回路421において3つのOR回路が各相における上アームの各IGBT210に対応してそれぞれ設けられており、1つのOR回路がいずれか一相における下アームのIGBT220に対応して設けられている例を説明した。また、全ての相において上アームのIGBT210を導通させることで、コンデンサモジュール130からの電流がモータジェネレータ192内を還流するようにし、これによってコンデンサモジュール130を放電させる例を説明した。しかし、これらにおいて上アームと下アームをそれぞれ入れ替えてもよい。その場合にも前述したのと同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
以上説明した実施形態や各実施例、各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
100 電力変換装置
110 ハイブリッド電気自動車
112 前輪
114 前輪車軸
116 前輪側デファレンシャルギア
118 変速機
120 エンジン
130 コンデンサモジュール
136 バッテリ
140,142,144 インバータ装置
192,194 モータジェネレータ
195 モータ
201 制御回路
202 ドライバ回路
203 パワーモジュール部
204 制御部
210,220 IGBT
211,221 ダイオード
230 回転磁極センサ
231 電流センサ
232 LED
240 上下アーム直列回路
301,421 ロジック回路
302 パワードライバ
303 マイコン
304 放電用マイコン
305,308,312 フォトカプラ
306 電源回路
307 分圧抵抗
420 放電用IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換素子と、
前記直流電力を平滑化するためのコンデンサと、
前記負荷の駆動時に前記電力変換素子の動作を制御するための制御信号を出力する制御回路と、
前記コンデンサの放電時に前記電力変換素子の動作を制御するための放電制御信号を出力する放電制御手段と、
前記コンデンサの両端間電圧に基づいて前記放電制御手段を動作させるための電源電圧を生成する電源回路と、
前記制御信号または前記放電制御信号に基づいて前記電力変換素子を動作させるための駆動信号を出力するドライバ部とを備え、
前記放電制御信号に応じて前記電力変換素子を動作させることで、前記コンデンサから前記電力変換素子を介して前記負荷へ電流を流すことにより、前記コンデンサを放電させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記放電制御信号を出力する際に前記放電制御手段から出力される放電切替信号に応じて、前記制御回路から前記ドライバ部への前記制御信号の出力を遮断する切替回路をさらに備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記1または2に記載の電力変換装置において、
前記負荷は交流モータであり、
前記放電制御手段は、前記放電制御信号として、前記交流モータの最大回転速度よりも速い周期で周期的に変化する基本波に基づくPWM信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記1または2に記載の電力変換装置において、
前記負荷は交流モータであり、
前記電力変換素子は、高電圧側に配置された複数の上アーム電力変換素子と、低電圧側に配置された複数の下アーム電力変換素子とを含み、
前記放電制御手段は、前記放電制御信号として、前記上アーム電力変換素子のいずれか一つと、前記下アーム電力変換素子のいずれか一つとを導通させ、その後、前記上アーム電力変換素子の全て、または前記下アーム電力変換素子の全てを導通させるための所定パターンの信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記コンデンサの放電を指令するための放電指令信号を前記放電制御手段へ出力し、
前記放電制御手段は、前記放電指令信号に応じて前記放電制御信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、
前記放電制御手段は、前記放電指令信号に基づいて前記制御回路の動作状態を判断し、前記制御回路が正常に動作していないと判断した場合に前記放電制御信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記放電制御手段は、前記コンデンサの両端間電圧を算出し、その算出結果に基づいて過電圧検知を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記コンデンサが放電されたか否かを報知するための報知手段をさらに備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記報知手段は、発光素子により構成されることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110821(P2013−110821A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252807(P2011−252807)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】