説明

電力変換装置

【課題】1台の電力変換装置で、定格容量を低減することなく異なる電圧クラスを出力することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】交流電源1が1次巻線に接続され、3K(Kは2以上の整数)個の2次巻線を有する入力変圧器2と、前記2次巻線に1対1で接続され、所望の周波数の単相交流電圧を出力するK個の単位インバータ5を用いて各々3相の相電圧を出力するようにした3台の電力変換部3とで構成する。電力変換部3は、K個の単位インバータの出力を直列接続する直列接続モードと、K個の単位インバータの略半数の出力を直列接続した直列接続体同士を並列接続する並列接続モードに切り替えられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定格出力電圧を変更することが可能な電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多相の交流電力を出力する電力変換装置の一つとして、電力変換装置の大容量化、高電圧化を目的とし、また出力波形を改善するために、単相インバータの出力側を直列接続して各相を構成することにより多重化したものが知られている。
【0003】
各種試験電源用、またその他一般産業用向け等の電力変換装置として、単相インバータの出力側を直列接続して各相を構成することにより多重化した装置が安定した運転ができるような提案がなされている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268999号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された電力変換装置は高調波が少なく、例えば多相の交流電動機を介したファン、ポンプ、コンプレッサー等の試験用電源に多数使用されている。この時、電圧クラスが異なる交流電動機が存在する場合は電圧クラス毎に電力変換装置を準備する必要があり、試験設備のコストアップ、設置場所の確保が困難等の問題があった。また、単にコンバータ等の出力電圧制御によって可変電圧を得るようにすると、電流容量が一定となるため、低い電圧を出力したとき、電力変換装置の容量が低減してしまうという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、1台の電力変換装置で、定格容量を低減することなく異なる電圧クラスを出力することが可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電力変換装置は、交流電源が1次巻線に接続され、3K(Kは2以上の整数)個の2次巻線を有する入力変圧器と、前記2次巻線に1対1で接続され、所望の周波数の単相交流電圧を出力するK個の単位インバータを用いて各々3相の相電圧を出力するようにした3台の電力変換部とから成り、前記電力変換部は、前記K個の単位インバータの出力を直列接続する直列接続モードと前記K個の単位インバータの略半数の出力を直列接続した直列接続体同士を並列接続する並列接続モードに切り替えられるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、1台の電力変換装置で、定格容量を低減することなく異なる電圧クラスを出力することが可能な電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施例1に係る電力変換装置の回路構成図である。
【図2】電力変換装置各相に単相セルインバータ6個を持つPWMパターンの図である。
【図3】電力変換装置各相に単相セルインバータ3個を持つPWMパターンの図である。
【図4】この発明の実施例2に係る電力変換装置の回路構成図である。
【図5】この発明の実施例3に係る電力変換装置の主要部分の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1に係る電力変換装置を図1乃至図3を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る電力変換装置の回路構成図である。交流電源1から入力変圧器2に高圧の3相交流電圧が供給される。入力変圧器2は各々複数個の絶縁された2次巻線を有する2次巻線群2U1、2U2、2V1、2V2、2W1、2W2を有しており、2次巻線群2U1、2U2からU相電力変換器3Uに、2次巻線群2V1、2V2からV相電力変換器3Vに、そして2次巻線群2W1、2W2からW相電力変換器3Wに交流電力が供給される。U相電力変換器3U、V相電力変換器3V、W相電力変換器3Wは各々所望の周波数で互いに120°位相のずれた単相の交流電圧を出力し、その一端を中性点として互いに接続し、他端は各々交流電動機4の各端子に接続する。すなわち、U相電力変換器3U、V相電力変換器3V、及びW相電力変換器3Wで3相の電力変換器を構成している。以下、U相電力変換器3Uの内部構成について説明する。尚、V相電力変換器3V及びW相電力変換器3Wの内部構成はU相電力変換器3Uと基本的に同一構成であるのでこれらの説明は省略する。
【0013】
U相電力変換器3Uは単位インバータ5U1〜5U6を有している。これらの単位インバータは内部構成の図示は省略するが、3相入力―単相出力のインバータであり、通常は直流を介して交流―交流変換を行っている。単位インバータ5U1、5U2、5U3の各々には2次巻線群2U1の各々の2次巻線から給電され、これらの単相出力は図示するように直列に接続されている。同様に、単位インバータ5U4、5U5、5U6の各々には2次巻線群2U2の各々の2次巻線から給電され、これらの単相出力は図示するように直列に接続されている。単位インバータ5U1の出力の一端は他相の単位インバータ5V1、5W1の出力の一端と接続され、中性点を形成している。単位インバータ5U3の出力の一端と単位インバータ5U4の出力の一端とは開閉器6Uを介して接続されている。そして単位インバータ5U6の出力の一端は開閉器7Uを介して交流電動機4のU相端子に接続されている。
【0014】
単位インバータ5U1の出力の一端(中性点)と単位インバータ5U4の出力の一端とは開閉器8Uを介して接続されている。そして、単位インバータ5U3の出力の一端は、開閉器9U及びバランスリアクトル10Uを介して単位インバータ5U6の出力の一端に接続され、バランスリアクトル10Uの中点は交流電動機4のU相端子に接続されている。 次に動作について説明する。単位インバータ5U1〜5U6、5V1〜5V6、5W1〜5W6を全て直列に繋いだ場合、すなわち図1において開閉器6U、6V、6W及び7U、7V、7WをONにし、他の開閉器をOFFにした場合は、従来の単位インバータ6個分の出力電圧を合算した電圧を出力する電力変換装置となる。この接続を直列接続モードと呼称する。
【0015】
これに対し、開閉器6U、6V、6W及び7U、7V、7WをOFFにし、開閉器8U、8V、8W及び9U、9V、9WをONにした場合は、例えばU相においては単位インバータ5U1、5U2、5U3の直列接続体の合成出力と単位インバータ5U4、5U5、5U6の直列接続体の合成出力とは、バランスリアクトル10Uを介して並列接続された状態となって交流電動機4のU相電圧を与える。V相、W相についても同様となる。この接続を並列接続モードと呼称する。この並列接続モードにおいては、前述の直列接続モードに対し、定格出力電圧が半分、定格出力電流が倍の電力変換装置を得ることが可能となる。
【0016】
並列接続モードの場合、U相電力変換部3U、V相電力変換部3V及びW相電力変換部3Wの各々の直列接続体の出力側には、電流アンバランスを抑制するためのバランスリアクトル10U、10V及び10Wを夫々設ける。但し、電流アンバランスが問題とならない場合にはこれらのバランスリアクトル10U、10V及び10Wは省略することも可能である。
【0017】
また図1においては、入力変圧器2の2次側を、例えばU相では、2次巻線群2U1と2次巻線群2U2に分け、3巻線を1つの群として位相変位を持たせ、直列接続モードにおいても並列接続モードにおいても同様の多相整流回路を成立させている。但し必ずしもこのようにする必要はなく、入力変圧器2の2次巻線の位相シフトは自由に選定することも可能である。
【0018】
直列接続モードの場合のPWMパターンの一例を図2に示す。図示するように、この例では、12個の搬送波であるPWMパターン用三角波20を、プラス側及びマイナス側に同じ数だけシフトさせ、電圧基準正弦波30との比較によって各々の単位インバータの単相インバータを構成するスイッチング素子のオンオフを制御する。並列接続モードの場合は、図3に示すように直列接続体の単位インバータの直列数である3の2倍の数の6個のPWMパターン用三角波を、プラス側及びマイナス側に同じ数だけシフトさせて、電圧基準正弦波31の比較を行うことによって各単位インバータの単相インバータを構成するスイッチング素子のオンオフを制御する。並列接続モードの場合は、並列回路となっているので、例えば単位インバータ5U1、5U2、5U3のスイッチングパターンと単位インバータ5U4、5U5、5U6のスイッチングパターンとは同一とすることが好ましい。このため、並列接続モードの場合は同じパターンのゲート信号を2組並列に送るようにPWMパターンを図2の状態から図3の状態に切り替えるようにする。
【実施例2】
【0019】
図4は本発明の実施例2に係る電力変換装置の回路構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係る電力変換装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、入力変圧器2Aの各2次巻線群に属す2次巻線の個数を3個から2個に変更し、これに伴い各相の単位インバータの台数を6台から4台に変更した点である。
【0020】
この実施例2の動作は実施例1の場合と全く同一である。実施例1においては、直列接続モードでは単位インバータ6台分を加算した相電圧を出力し、並列接続モードではこの半分の出力電圧となったが、この実施例2では、直列接続モードでは単位インバータ4台分を加算した相電圧を出力し、並列接続モードではこの半分の出力電圧となる。
【0021】
この実施例2では実施例1に対して各相の単位インバータの数を減らす例を説明したが、逆に各相の単位インバータの数を増やす構成も明らかに成立する。従って、各相の単位インバータの数を適切に選定することによって、例えば6kV/3kV出力の電力変換装置や4kV/2kV出力の電力変換装置を得ることが可能となる。
【実施例3】
【0022】
図5は本発明の実施例3に係る電力変換装置の主要部分の回路構成図である。ここで主要部分とはU相電力変換部のことであり、その他の部分の図示は省略している。この実施例3の各部について、図1の本発明の実施例1に係る電力変換装置のU相電力変換部の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例3が実施例1と異なる点は、単位インバータ5U7、5U8及び5U9を追加し、単位インバータ6台構成から9台構成に変更した点、開閉器11U、12U、13Uを追加することによって3組の単位インバータを並列接続可能な構成とした点、これに対応してバランスリアクトル10Uをバランスリアクトル10UA、10UB、10UCの3台に変更した点である。
【0023】
この実施例3において、U相で言えば、開閉器6U、7U及び11UをONにし、他の開閉器をOFFにした場合は、従来の単位インバータ9個分の出力電圧を合算した電圧を出力する電力変換装置となる。図示を省略したが、V相、W相についても同様となる(直列接続モード)。
【0024】
これに対し、開閉器6U、7U、11UをOFFにし、開閉器8U、9U、12U、13UをONにした場合は、U相において単位インバータ5U1、5U2、5U3の直列接続体の合成出力、単位インバータ5U4、5U5、5U6の直列接続体の合成出力及び単位インバータ5U7、5U8、5U9の直列接続体の合成出力が、夫々バランスリアクトル10UA、10UB及び10UCを介して並列接続された状態となって交流電動機4のU相電圧を与える。図示を省略したが、V相、W相についても同様となる(並列接続モード)。
【0025】
この実施例3の並列接続モードにおいては、直列接続モードに対し、定格出力電圧が3分の1、定格出力電流が3倍の電力変換装置を得ることが可能となる。
【0026】
尚、並列接続モードの場合、電流アンバランスが問題とならない場合にはバランスリアクトルを省略可能であることは実施例1の場合と同様である。
【0027】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0028】
例えば、実施例1で単位インバータが18台の場合、実施例2で単位インバータが12台の場合を説明したが、単位インバータの数はKを2以上の整数として任意の3K個であれば良い。K=1の場合は直列接続体の直列数は1となる。尚、K=3の場合のように各相の電力変換部の単位インバータ数が奇数となる場合は、並列接続モードにおける一方の直列接続体の単位インバータの台数を(K−1)台の2分の1とする。そして、他方の直列接続体の単位インバータの台数をこれより1台多い台数とすれば良い。尚、この場合には直列接続モードに対して並列接続モードの定格電圧が、K=3のとき3分の1、K=5のとき5分の2のように2分の1以下となってしまうので注意が必要である。
【0029】
また、実施例3の場合は各相の電力変換部の単位インバータ数が3台以上でないと成立しないので、Kは3以上である必要がある。この場合も各相の電力変換部の単位インバータ数が3の倍数でない場合、並列接続モードにおける直列接続体の単位インバータの台数を適切に選定することによって3倍の電流容量を得ることが可能となるが、電圧が3分の1以下となってしまうので注意が必要である。
【0030】
また、実施例3において、バランスリアクトル10UA、10UB及び10UCの各々を短絡する開閉器を設ければ、開閉器の切り替えによってバランスリアクトルの有無の切り替えを行うことができる。
【0031】
更に、実施例3において、例えば開閉器8U、開閉器11U及び開閉器7UをONとし、他の開閉器をOFFとすれば、電流容量は変わらないが、直列接続モードに対して定格電圧が3分の2の電力変換装置を得ることが可能となる。
【0032】
また、実施例の電力変換装置の適用分野は交流電動機等の試験設備という説明を行ったがこれに限定されることはない。一般産業設備の交流電動機の駆動装置に適用する場合であっても、設備改造など周囲の条件が変化したとき、定格出力電圧を変えることが可能な電力変換装置はそのフレキシブルな機能を十分発揮できる。
【符号の説明】
【0033】
1 交流電源
2、2A 入力変圧器
2U1、2U2、2V1、2V2、2W1、2W2、2AU1、2AU2、2AV1、2AV2、2AW1、2AW2 2次巻線群
3U、3UA、3UB U相電力変換部
3V、3VA V相電力変換部
3W、3WA W相電力変換部
4 交流電動機
5U1、5U2、5U3、5U4、5U5、5U6、5U7、5U8、5U9、5V1、5V2、5V3、5V4、5V5、5V6、5W1、5W2、5W3、5W4、5W5、5W6 単位インバータ
6U、6V、6W 開閉器
7U、7V、7W 開閉器
8U、8V、8W 開閉器
9U、9V、9W 開閉器
10U、10V、10W、10UA、10UB、10UC バランスリアクトル
11U、11V、11W 開閉器
12U、12V、12W 開閉器
13U、13V、13W 開閉器
20、21 PWMパターン用三角波
30、31 電圧基準正弦波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源が1次巻線に接続され、3K(Kは2以上の整数)個の2次巻線を有する入力変圧器と、
前記2次巻線に1対1で接続され、所望の周波数の単相交流電圧を出力するK個の単位インバータを用いて各々3相の相電圧を出力するようにした3台の電力変換部とから成り、
前記電力変換部は、
前記K個の単位インバータの出力を直列接続する直列接続モードと
前記K個の単位インバータの略半数の出力を直列接続した直列接続体同士を並列接続する並列接続モードに切り替えられるように構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
交流電源が1次巻線に接続され、3K(Kは3以上の整数)個の2次巻線を有する入力変圧器と、
前記2次巻線に1対1で接続され、所望の周波数の単相交流電圧を出力するK個の単位インバータを用いて各々3相の相電圧を出力するようにした3台の電力変換部とから成り、
前記電力変換部は、
前記K個の単位インバータの出力を直列接続する直列接続モードと
前記K個の単位インバータの略3分の1の数の出力を直列接続した直列接続体同士を並列接続する並列接続モードに切り替えられるように構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記並列接続モードにおいては、前記直列接続体の各々の出力側にバランスリアクトルを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記並列接続モードにおいては、前記直列接続体の各々のゲートパターンが同一となるようにゲートパターンを切り替えるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記並列接続モードにおいては、各々の前記直列接続体の単位インバータの直列数の2倍の数の搬送波であるPWMパターン用三角波を、プラス側及びマイナス側に同じ数だけシフトさせ、電圧基準正弦波と比較することによってPWM変調して、前記単位インバータをスイッチングさせるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記入力変圧器の2次巻線は、前記直列接続体の単位インバータの直列数と同数の群を作り、その群毎に2次巻線間の位相をシフトさせて入力側の高調波を低減させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換装置は交流電動機を試験するための電源装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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