説明

電力変換装置

【課題】電源電圧を安定化して、高周波駆動に対応可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数のハイサイドトランジスタユニットmhは、各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子OUTと上側電源ラインLPの間に、電気的に並列に、かつ制御端子が独立して設けられる。複数のハイサイドゲートドライブ回路10H_U1〜U3は、対応する複数のハイサイドトランジスタユニットmhu1〜3にゲートドライブ信号を出力する。複数のハイサイド電源回路14H_U1〜U3は、対応するハイサイドゲートドライブ回路10H_U1〜U3に電源電圧VDDH_U1〜U3を供給する。下側アームについても同様に、複数のローサイドトランジスタユニットに分割される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的な電力変換装置(インバータ)2rの回路図である。電力変換装置2rは、モータをはじめとする負荷4を駆動するために利用される。電力変換装置2は、各相(U〜W)ごとに設けられたハイサイドトランジスタMH(U〜W)およびローサイドトランジスタML(U〜W)と、各相のハイサイドトランジスタMH(U〜W)を駆動するゲートドライブ回路10H、ローサイドトランジスタML(U〜W)を駆動するゲートドライブ回路10L、ゲートドライブ回路10H、10Lに対して電源電圧VDDH、VDDLを供給する電源回路14と、ゲートドライブ回路10H、10Lに対する制御指令S1を生成するコントローラ12と、を備える。
【0003】
図2は、本発明者らが検討した電力変換装置2rのレイアウトの断面図である。電力変換装置2rは、3つのカードに分けて構成される。コントローラカード30には、主としてコントローラ12および電源回路14が搭載される。ゲートドライブカード32には、ゲートドライブ回路10H、10Lが搭載される。出力段カード34には、U,V,W相のハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLが搭載される。
【0004】
コントローラカード30とゲートドライブカード32それぞれにはコネクタCN1、CN2が設けられ、コントローラカード30とゲートドライブカード32は、配線WR1を介して電気的に接続される。制御指令S1および電源電圧VDDH、VDDLは、この配線WR1を介して伝送される。
【0005】
ゲートドライブ回路10HとハイサイドトランジスタMHU〜MHWの間、ゲートドライブ回路10LとローサイドトランジスタMLU〜MLWの間は、制御信号ピン36を介して接続される。ゲートドライブ回路10から出力されるゲートドライブ信号S2は、制御信号ピン36を介してハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLのゲートに入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−125588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2のレイアウトでは、コントローラ12とハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタMLとの電気的な距離が離れているため、コントローラ12とゲートドライブ回路10H、10Lとの間の電源電圧VDDH、VDDLの供給経路(電源ラインともいう)に、無視できない寄生インピーダンス成分、すなわちインダクタンス成分や抵抗成分が存在する。電源電圧VDDH、VDDLは、寄生インピーダンス成分が大きいほど不安定になる。
【0008】
近年、フォークリフトをはじめとする産業用車両では、インバータの高周波化(高速化)がトレンドとなっているが、そのためにはゲートドライブ回路10に対する電源電圧VDDH、VDDLが安定化される必要がある。図2のレイアウトを採用する場合、電源電圧VDDH、VDDLを安定化するために、ゲートドライブ回路10H、10Lの電源端子それぞれの直近に、大容量の平滑化コンデンサを接続する必要がある。大容量の平滑化コンデンサは、コスト、面積、発熱等の観点から望ましくない。
【0009】
特許文献1には、インバータなどのゲート駆動回路が開示されている。特許文献1の技術では、スイッチング素子(ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタ)、ゲート駆動回路、保護回路、それらに電源電圧を供給する電源回路が、単一モジュール化されている。この構成によれば電源回路とゲート駆動回路の電気的な距離が近くなるため、寄生インピーダンスは低減することができる。しかしながら、単一の電源回路によって、ゲート駆動回路、保護回路等すべてのブロックに対する電源電圧を生成する必要があるため、やはり大容量の平滑化コンデンサが必要となる。また、産業用車両を用途とするインバータでは、大容量化(高出力化)が求められるところ、すべてのユニットを単一モジュール化することは、熱設計の観点から困難である。さらに、単一モジュール化すると、トランジスタのスイッチングノイズが大きくなり、誤動作が問題となる。
【0010】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、特許文献1とは別のアプローチによって、電源電圧を安定化して高周波駆動に対応可能な電力変換装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、電力変換装置に関する。電力変換装置は、上側電源ラインと、下側電源ラインと、複数のハイサイドトランジスタユニットと、複数のローサイドトランジスタユニットと、それぞれがハイサイドトランジスタユニットごとに設けられ、対応するハイサイドトランジスタユニットにゲートドライブ信号を出力する複数のハイサイドゲートドライブ回路と、それぞれがローサイドトランジスタユニットごとに設けられ、対応するローサイドトランジスタユニットにゲートドライブ信号を出力する複数のローサイドゲートドライブ回路と、それぞれがハイサイドゲートドライブ回路ごとに設けられ、対応するハイサイドゲートドライブ回路に電源電圧を供給する複数のハイサイド電源回路と、それぞれがローサイドゲートドライブ回路ごとに設けられ、対応するローサイドゲートドライブ回路に電源電圧を供給する複数のローサイド電源回路と、を備える。
複数のハイサイドトランジスタユニットは、各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と上側電源ラインの間に、電気的に並列に、かつ制御端子が独立して設けられる。複数のローサイドトランジスタユニットは、各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と下側電源ラインの間に、電気的に並列に、かつ制御端子が独立して設けられる。
【0012】
この態様によると、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタをそれぞれ複数のトランジスタユニットに分割し、トランジスタユニットごとに、ゲートドライブ回路および電源回路を分割して構成することにより、分割しない場合に比べて柔軟なレイアウトが可能となる。その結果、電源回路からゲートドライブ回路に供給される電源電圧の供給経路(電源ライン)のインピーダンスを小さくでき、また電源回路もトランジスタユニットごとに分割されているため、小さな平滑化コンデンサでも電源電圧を安定化することが可能となり、ひいては高周波駆動に対応できる。
【0013】
複数のハイサイドトランジスタユニット、複数のローサイドトランジスタユニット、複数のハイサイドゲートドライブ回路、複数のローサイドゲートドライブ回路、複数のハイサイド電源回路、複数のローサイド電源回路は、同一のレイヤにレイアウトされてもよい。
この場合、ゲートドライブ回路と対応する電源回路を同一レイヤに隣接して配置することができ、プリント基板上の短い配線で電源電圧を供給することができる。
【0014】
レイヤは、複数の基板に分割されてもよい。各基板には、ハイサイドトランジスタユニット、それと対応するハイサイドゲートドライブ回路、それと対応するハイサイド電源回路、ローサイドトランジスタユニット、それと対応するローサイドゲートドライブ回路、それと対応するローサイド電源回路のセットが少なくともひとつ搭載されてもよい。
【0015】
レイヤは、複数の基板に分割されてもよい。各基板には、(1)同相の複数のハイサイドトランジスタユニット、それらと対応する複数のハイサイドゲートドライブ回路、それらと対応する複数のハイサイド電源回路のセットと、(2)同相の複数のローサイドトランジスタユニット、それらと対応する複数のローサイドゲートドライブ回路、それらと対応する複数のローサイド電源回路のセットの少なくとも一方が搭載されてもよい。
基板を複数に分割すると、それを増減することができ、負荷に応じて電力変換装置の容量を設計するのが容易となる。
【0016】
基板は、金属ベース基板であってもよい。金属ベース基板を用いることで放熱性を高めることができる。
【0017】
複数のハイサイドトランジスタユニット、複数のローサイドトランジスタユニット、複数のハイサイドゲートドライブ回路、複数のローサイドゲートドライブ回路は、第1レイヤに搭載され、複数のハイサイド電源回路、複数のローサイド電源回路は、第2レイヤに搭載されてもよい。各ハイサイド電源回路からそれぞれに対応するハイサイドゲートドライブ回路に対する電源電圧、各ローサイド電源回路からそれぞれに対応するローサイドゲートドライブ回路に対する電源電圧は、第1レイヤと第2レイヤを接続する低インピーダンス配線を介して供給されてもよい。ハイサイド電源回路およびローサイド電源回路はそれぞれ、対応する低インピーダンス配線の近傍に配置され、ハイサイドゲートドライブ回路およびローサイドゲートドライブ回路はそれぞれ、対応する低インピーダンス配線の近傍に配置されてもよい。
2つのレイヤに分けて構成した場合であっても、ゲートドライブ回路と電源回路を互いにオーバーラップする位置に配置して低インピーダンス配線で接続すれば、電源電圧の供給経路、つまり電源ラインのインピーダンスを下げることができる。
【0018】
上述の電流変換装置の利点によって、産業用車両に好適に利用することが可能となる。そこである態様において、電力変換装置はフォークリフトに搭載され、モータに電力を供給してもよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源電圧を安定化することができ、高周波駆動に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一般的な電力変換装置(インバータ)のレイアウトの回路図である。
【図2】本発明者らが検討した電力変換装置の断面図である。
【図3】実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す等価回路図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、電力変換装置のレイアウトを示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は、フォークリフトの構成を示す図である。
【図6】変形例に係る電力変換装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
図3は、実施の形態に係る電力変換装置2の構成を示す等価回路図である。電力変換装置2は、フォークリフトをはじめとする産業用車両に搭載され、荷役用のモータや、車輪用のモータを駆動する。
【0025】
電力変換装置2は、上側電源ラインLPと、下側電源ラインLNと、複数のハイサイドトランジスタユニットmhと、複数のローサイドトランジスタユニットmlと、複数のハイサイドゲートドライブ回路10Hと、複数のローサイドゲートドライブ回路10Lと、コントローラ12と、複数のハイサイド電源回路14H、複数のローサイド電源回路14Lと、主電源回路16と、を備える。
【0026】
本実施の形態では、三相モータが負荷の例を説明するが、負荷は特に限定されない。U相、V相、W相は同様に構成されるため、以下ではU相に着目して説明する。
【0027】
複数のハイサイドトランジスタユニットmhu1〜mhu3のセットは、各相ごとに設けられる。各ハイサイドトランジスタユニットmhuは、対応する相(U)の出力端子OUTUと上側電源ラインLPの間に、電気的に並列に、かつ制御端子(ゲート、ベース)が独立して設けられる。ハイサイドトランジスタユニットmhは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタなどで構成される。各トランジスタには、環流ダイオード(フライホイールダイオード、フリーホイールダイオード、ともいう)が設けられる。
【0028】
複数のローサイドトランジスタユニットmlu1〜mlu3のセットも同様に、各相ごとに設けられる。各ローサイドトランジスタユニットmluは、対応する相(U)の出力端子OUTUと下側電源ラインLNの間に、電気的に並列に、かつ制御端子(ゲート、ベース)が独立して設けられる。各相のトランジスタユニットの個数は3個に限定されず、モータ4に応じて決めればよい。
【0029】
コントローラ12は、ハイサイドトランジスタユニットmhおよびローサイドトランジスタユニットmlを駆動するための制御指令S1H、S1Lを生成する。主電源回路16は、安定化された電源電圧VDDを生成する。この電源電圧VDDは、コントローラ12に供給されるとともに、複数のハイサイド電源回路14H、ローサイド電源回路14Lそれぞれに供給される。
【0030】
複数のハイサイドゲートドライブ回路10H_U1〜U3はそれぞれ、ハイサイドトランジスタユニットmhu1〜3ごとに設けられる。i番目のハイサイドゲートドライブ回路10H_Uiは、コントローラ12からの制御指令S1Hに応じて、対応するハイサイドトランジスタユニットmhhiの制御端子に、ゲートドライブ信号S2Hを出力する。
【0031】
複数のローサイドゲートドライブ回路10L_U1〜U3はそれぞれ、ローサイドトランジスタユニットmlu1〜3ごとに設けられる。i番目のローサイドゲートドライブ回路10L_Uiは、コントローラ12からの制御指令S1Lに応じて、対応するローサイドトランジスタユニットmluiの制御端子に、ゲートドライブ信号S2Lを出力する。
【0032】
ハイサイド電源回路14H_U1〜U3はそれぞれ、ハイサイドゲートドライブ回路10H_U1〜U3ごとに設けられる。i番目のハイサイド電源回路14H_Uiは、電源電圧VDDにもとづき、対応するハイサイドゲートドライブ回路10H_Uiに供給すべき電源電圧VDDH_Uiを生成する。
ローサイド電源回路14L_U1〜U3はそれぞれ、ローサイドゲートドライブ回路10L_U1〜U3ごとに設けられる。i番目のローサイド電源回路14L_Uiは、電源電圧VDDにもとづき、対応するローサイドゲートドライブ回路10L_Uiに供給すべき電源電圧VDDL_Uiを生成する。
【0033】
V相、V相も同様に構成される。以上が電力変換装置2の回路構成である。続いてそのレイアウトについて説明する。
【0034】
図4(a)〜(c)は、電力変換装置2のレイアウトを示す図である。図4(a)は、電力変換装置2の断面図である。電力変換装置2は、2つのレイヤで構成される。第2レイヤL2の基板には、コントローラ12が搭載される。残りのユニット、つまり複数のハイサイドトランジスタユニットmh、複数のローサイドトランジスタユニットml、複数のハイサイドゲートドライブ回路10H、複数のローサイドゲートドライブ回路10L、複数のハイサイド電源回路14H、複数のローサイド電源回路14Lは、第1レイヤL1にレイアウトされる。放熱等の観点から、第1レイヤL1の基板18は、金属ベース基板とすることが好ましい。
【0035】
第1レイヤL1は単一の基板18で構成されてもよいが、複数の基板18に分割されてもよい。図4(b)、(c)は、分割された基板18のレイアウトを示す図である。図4(b)では、ひとつの基板18には、ハイサイドトランジスタユニットmh、それと対応するハイサイドゲートドライブ回路10H、それと対応するハイサイド電源回路14H、ハイサイドトランジスタmhと対をなすローサイドトランジスタユニットml、それと対応するローサイドゲートドライブ回路10L、それと対応するローサイド電源回路14Lのセットが搭載される。ひとつの基板18に複数のセットが搭載されてもよい。たとえばひとつの基板18に、同相の3つのハイサイドトランジスタユニットmh、3つのローサイドトランジスタユニットmlと、それらに対応するゲートドライブ回路、電源回路を搭載してもよい。
【0036】
図4(c)では、ひとつの基板18には、(1)同相の複数のハイサイドトランジスタユニットmh、それらと対応する複数のハイサイドゲートドライブ回路10H、それらと対応する複数のハイサイド電源回路14Hのセットが搭載される。または、ひとつの基板18には、(2)同相の複数のローサイドトランジスタユニットml、それらと対応する複数のローサイドゲートドライブ回路10L、それらと対応する複数のローサイド電源回路14Lのセットが搭載される。
【0037】
同相のローサイドトランジスタユニットmlの個数が多い場合、図4(c)の基板18をさらに分割してもよい。
【0038】
以上が実施の形態に係る電力変換装置2の構成である。
電力変換装置2では、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタはそれぞれ複数のトランジスタユニットmh、mlに分割され、トランジスタユニットmh、mlごとに、ハイサイドゲートドライブ回路10H、ローサイドゲートドライブ回路10Lが複数に分割され、またハイサイド電源回路14H、ローサイド電源回路14Lも複数に分割される。これにより分割しない場合に比べて柔軟なレイアウトが可能となり、図4(a)に示すように、ハイサイド電源回路14H_U1〜U3からハイサイドゲートドライブ回路10H_U1〜U3に供給される電源電圧VDDH_U1〜U3それぞれの電源ラインのインピーダンスを小さくできる。同様にローサイド電源回路14L_U1〜U3からローサイドゲートドライブ回路10L_U1〜U3に供給される電源電圧VDDL_U1〜U3それぞれの電源ラインのインピーダンスを小さくできる。これにより、小さな平滑化コンデンサでも、電源電圧VDDH_U1〜U3、VDDL_U1〜U3を安定化でき、ひいては高周波駆動に対応できる。V相、W相についても同様である。
【0039】
またトランジスタユニットごとに電源回路14が分割されるため、各電源回路14ごとの消費電力を、図1の構成にくらべて大幅に低減でき、発熱を分散させることができる。これにより図1の構成で必要であった大型なヒートシンクを小型化、あるいは無くすことができる。
【0040】
また、複数のトランジスタユニットに分割されるため、各トランジスタユニットで発生するスイッチングノイズを、分割されない場合よりも小さくできる。したがって、特許文献1に記載の技術に比べて、ノイズによる誤動作を抑制できる。
【0041】
さらに、図2では3層構造であったものが2層構造となるため、振動に対する耐性を高めることができる。また、一番下のレイヤにコントローラ12と主電源回路16以外の大部分のユニットが搭載されるため、重心を低くでき、振動に対する耐性を高めることができる。
【0042】
続いて上述の電力変換装置2の用途を説明する。上述の利点によって、電力変換装置2は、産業用車両に要求される仕様を満たすことが可能となる。たとえば電力変換装置2は、高周波化が進み、かつ耐振動性が要求されるフォークリフトに好適に利用できる。
【0043】
図5(a)、(b)は、フォークリフトの構成を示す図である。図5(a)に示すように、フォークリフト1は、本体60、フォーク62、昇降体64、マスト66、車輪68を備える。マスト66は本体60の全方に設けられる。昇降体64は、油圧ポンプ(不図示)などの動力源によって駆動され、マスト66に沿って昇降する。昇降体64には、荷物を支持するためのフォーク62が取り付けられている。
【0044】
図5(b)は、フォークリフト1の電気系統の構成を示す図である。フォークリフト1は、2系統のモータM1、M2を備える。第1モータM1は、車輪68を回転させるための車輪用モータであり、第2モータM2は、昇降体64を昇降させる油圧アクチュエータを制御するための荷役用モータである。電力変換装置2_1、2_2はそれぞれ、電池80から直流電圧を受け、それを3相交流信号に変換し、対応するモータM1、M2へと供給する。電池80、電力変換装置2_1、2_2、モータM1、M2は、本体60に固定される。電力変換装置2_1、2_2は、別個のモジュールであってもよいし、単一のモジュールとして構成されてもよい。
【0045】
上述の電力変換装置は、その耐振動性、高周波サージの耐性などに鑑みて、このようなフォークリフト1に好適に利用できる。
【0046】
実施の形態では、三相モータを駆動する電力変換装置2について説明したが、本発明は駆動対象のモータは三相に限定されず、DCモータや多相モータに適用可能である。また、実施の形態では、電力変換装置2に直接的にモータ4が接続される場合を説明したが、電力変換装置2とモータ4の間に、別の変換装置あるいはその他の回路ブロックが挿入されていてもよい。
【0047】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0048】
図6は、変形例に係る電力変換装置2aの断面図である。この変形例では、ハイサイド電源回路14H、ローサイド電源回路14Lが、第2レイヤL2にレイアウトされる。
各ハイサイド電源回路14Hから、それぞれに対応するハイサイドゲートドライブ回路10Hに対する電源電圧VDDH、ならびに、各ローサイド電源回路14Lからそれぞれに対応するローサイドゲートドライブ回路10Lに対する電源電圧VDDLは、第1レイヤL1と第2レイヤL2を接続する低インピーダンス配線40を介して供給される。低インピーダンス配線40としては、ブスバー、ピン、リード、コネクタ、ケーブルなど、大きな断面積を有する低インピーダンスの導体が利用できる。
【0049】
ハイサイド電源回路14Hおよびローサイド電源回路14Lはそれぞれ、対応する低インピーダンス配線40の近傍に配置される。またハイサイドゲートドライブ回路10Hおよびローサイドゲートドライブ回路10Lもそれぞれ、対応する低インピーダンス配線40の近傍に配置される。レイアウトの効率の観点から、対応するハイサイドゲートドライブ回路10Hとハイサイド電源回路14H同士は、少なくとも部分的にオーバーラップして配置することが望ましい。対応するローサイドゲートドライブ回路10Lとローサイド電源回路14L同士も同様である。
【0050】
この変形例によれば、電源ラインとしてプリント基板上の配線よりも低いインピーダンスを有する導体を利用することにより、図4(a)のレイアウトと同様に、電源電圧VDDH、VDDLの電源ラインのインピーダンスを下げることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…フォークリフト、2…電力変換装置、4…モータ、6…電源、10H…ハイサイドゲートドライブ回路、10L…ローサイドゲートドライブ回路、12…コントローラ、14H…ハイサイド電源回路、14L…ローサイド電源回路、16…主電源回路、18…基板、30…コントローラカード、32…ゲートドライブカード、34…出力段カード、36…制御信号ピン、40…低インピーダンス配線、mh…ハイサイドトランジスタユニット、ml…ローサイドトランジスタユニット、LP…上側電源ライン、LN…下側電源ライン、S1…制御指令、S2…ゲートドライブ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側電源ラインと、
下側電源ラインと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記上側電源ラインの間に、電気的に並列に、かつ制御端子が独立して設けられた複数のハイサイドトランジスタユニットと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記下側電源ラインの間に、電気的に並列に、かつ制御端子が独立して設けられた複数のローサイドトランジスタユニットと、
それぞれが前記ハイサイドトランジスタユニットごとに設けられ、対応するハイサイドトランジスタユニットにゲートドライブ信号を出力する複数のハイサイドゲートドライブ回路と、
それぞれが前記ローサイドトランジスタユニットごとに設けられ、対応するローサイドトランジスタユニットにゲートドライブ信号を出力する複数のローサイドゲートドライブ回路と、
それぞれが前記ハイサイドゲートドライブ回路ごとに設けられ、対応するハイサイドゲートドライブ回路に電源電圧を供給する複数のハイサイド電源回路と、
それぞれが前記ローサイドゲートドライブ回路ごとに設けられ、対応するローサイドゲートドライブ回路に電源電圧を供給する複数のローサイド電源回路と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記複数のハイサイドトランジスタユニット、前記複数のローサイドトランジスタユニット、前記複数のハイサイドゲートドライブ回路、前記複数のローサイドゲートドライブ回路、前記複数のハイサイド電源回路、前記複数のローサイド電源回路は、同一のレイヤにレイアウトされることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記レイヤは、複数の基板に分割されており、
各基板には、ハイサイドトランジスタユニット、それと対応するハイサイドゲートドライブ回路、それと対応するハイサイド電源回路、ローサイドトランジスタユニット、それと対応するローサイドゲートドライブ回路、それと対応するローサイド電源回路のセットが少なくともひとつ搭載されることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記レイヤは、複数の基板に分割されており、
各基板には、(1)複数のハイサイドトランジスタユニット、それらと対応する複数のハイサイドゲートドライブ回路、それらと対応する複数のハイサイド電源回路のセットと、(2)複数のローサイドトランジスタユニット、それらと対応する複数のローサイドゲートドライブ回路、それらと対応する複数のローサイド電源回路のセットの少なくとも一方が搭載されることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記基板は、金属ベース基板であることを特徴とする請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記複数のハイサイドトランジスタユニット、前記複数のローサイドトランジスタユニット、前記複数のハイサイドゲートドライブ回路、前記複数のローサイドゲートドライブ回路は、第1レイヤに搭載され、
前記複数のハイサイド電源回路、前記複数のローサイド電源回路は、第2レイヤに搭載され、
各ハイサイド電源回路からそれぞれに対応するハイサイドゲートドライブ回路に対する電源電圧、各ローサイド電源回路からそれぞれに対応するローサイドゲートドライブ回路に対する電源電圧は、前記第1レイヤと前記第2レイヤを接続する低インピーダンス配線を介して供給され、
前記ハイサイド電源回路および前記ローサイド電源回路はそれぞれ、対応する前記低インピーダンス配線の近傍に配置され、
前記ハイサイドゲートドライブ回路および前記ローサイドゲートドライブ回路はそれぞれ、対応する前記低インピーダンス配線の近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
フォークリフトに搭載され、モータに電力を供給することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115870(P2013−115870A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257803(P2011−257803)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】