電力変換装置
【課題】より小型化可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、複数の半導体モジュール2と複数の冷媒流路11とを積層した積層体10を備える。半導体モジュール2のパワー端子21の突出側には電子機器3が配置されている。半導体モジュール2の本体部20と電子機器3との間に、パワー端子21に接続した複数のバスバー4が介在している。また、半導体モジュール2を電子機器3に電気的に接続する接続部5が形成されている。バスバー4には、正極バスバー4aと負極バスバー4bとがある。正極バスバー4aと負極バスバー4bとは、パワー端子21の突出方向(Z方向)に所定間隔をおいて対向配置されている。接続部5は、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して、冷媒流路11の長手方向(Y方向)に隣接する位置に配置されている。
【解決手段】電力変換装置1は、複数の半導体モジュール2と複数の冷媒流路11とを積層した積層体10を備える。半導体モジュール2のパワー端子21の突出側には電子機器3が配置されている。半導体モジュール2の本体部20と電子機器3との間に、パワー端子21に接続した複数のバスバー4が介在している。また、半導体モジュール2を電子機器3に電気的に接続する接続部5が形成されている。バスバー4には、正極バスバー4aと負極バスバー4bとがある。正極バスバー4aと負極バスバー4bとは、パワー端子21の突出方向(Z方向)に所定間隔をおいて対向配置されている。接続部5は、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して、冷媒流路11の長手方向(Y方向)に隣接する位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、コンデンサ等の電子機器あるいは直流電源等の外部機器とを電気的に接続する接続部を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば直流電力と交流電力との間で電力変換をするための電力変換装置として、図12、図13に示すごとく、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール91と、該半導体モジュール91を冷却する複数の冷却管92とを積層した積層体90を備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
個々の半導体モジュール91は、半導体素子を内蔵した本体部910と、該本体部910から突出したパワー端子93及び制御端子94を備える。パワー端子93には、直流電源(図示しない)の正電極に接続される正極端子93aと、直流電源の負電極に接続される負極端子93bと、交流負荷に接続される交流端子93cとがある。正極端子93aには正極バスバー96aが接続され、負極端子93bには負極バスバー96bが接続されている。また、交流端子93cには交流バスバー96cが接続されている。
【0004】
半導体モジュール91の制御端子94には制御回路基板95が取り付けられている。この制御回路基板95に形成した制御回路が半導体モジュール91のスイッチング動作を制御することにより、正極端子93aと負極端子93bとの間に印加される直流電圧を交流電圧に変換し、交流端子93cから出力する。
【0005】
また、電力変換装置9は、平滑コンデンサ等の電子機器97を備える。正極バスバー96aおよび負極バスバー96bは、接続部99において、電子機器97の接続端子98に接続されている。すなわち、バスバー96a,96bと接続端子98とを重ね合わせ、ボルト990を使って、これらを締結してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−114966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の電力変換装置9は、電子機器97の側面970付近に接続部99が設けられているため、パワー端子93の突出方向(Z方向)から見た場合に、接続部99の一部が、電子機器97の側面970よりも外側に突出しやすかった。そのため、電力変換装置9が大きくなりやすいという問題があった。
【0008】
Z方向から見た場合に接続部99が電子機器97に全て隠れるように、電子機器97と積層体90との間に接続部99移動しようとしても、これらの間には空きスペースが殆どないため、移動することができなかった。そのため従来の電力変換装置9は、接続部99を電子機器97の側面970付近に配置せざるを得なかった。その結果、接続部99の一部が側面970よりも外側に突出してしまい、装置全体を小型化しにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、より小型化可能な電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体素子を内蔵した本体部からパワー端子が突出した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体に対して上記パワー端子の突出側に配置された電子機器と、
上記本体部と上記電子機器との間に介在し、上記パワー端子に接続した複数のバスバーと、
上記半導体モジュールを上記電子機器または外部機器に電気的に接続する接続部とを備え、
該複数のバスバーには、直流電流が流れる正極バスバーと負極バスバーとがあり、
上記正極バスバーと上記負極バスバーとは、上記パワー端子の突出方向に所定間隔をおいて互いに対向配置され、上記正極バスバーの主面と上記負極バスバーの主面とは上記突出方向にそれぞれ直交しており、
上記接続部は、上記電子機器と上記積層体との間において、上記正極バスバー及び上記負極バスバーに対して上記冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置においては、上記接続部を、上記電子機器と上記積層体との間において、正極バスバー及び負極バスバーに対して冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置してある。このようにすると、電子機器と積層体との間の空間を有効活用でき、電力変換装置を小型化することが可能になる。
【0012】
すなわち、上記電力変換装置においては、正極バスバーと負極バスバーを、所定間隔をおいて対向配置することにより、バスバーに付く寄生インダクタンスを低減している。このように、所定間隔をおいて2つのバスバーを対向配置すると、バスバーの主面に垂直な方向(上記突出方向)における、2つのバスバーの合計の長さが長くなりやすい。また、上記電力変換装置は、2つのバスバーを電子機器と積層体との間に配置してある。そのため、電子機器と積層体との間において、正極バスバー及び負極バスバーに対して上記長手方向に隣接する位置に、空間が形成されやすい。上記電力変換装置では、この空間に接続部を配置したため、いわゆるデッドスペースを有効利用でき、電力変換装置を小型化することが可能になる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、より小型化可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、電力変換装置の断面図であって、図2のC−C断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB−B断面図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図5】実施例1における、フレーム内に積層体を固定した状態での、電力変換装置の平面図。
【図6】図5に示すフレームに被制御バスバーと端子台を配置した状態での、電力変換装置の平面図。
【図7】実施例2における、電力変換装置の断面図。
【図8】実施例2における、接続部の分解側面図。
【図9】実施例3における、電力変換装置の断面図。
【図10】実施例3における、電力変換装置の回路図。
【図11】実施例4における、電力変換装置の断面図。
【図12】従来例における、電力変換装置の側面図。
【図13】図12のD矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記電子機器は、リアクトルやコンデンサとすることができる。また、上記外部機器は、三相交流モータや直流電源とすることができる。
【0016】
上記電力変換装置は複数の上記接続部を備え、該複数の接続部は、上記積層体の積層方向に配列していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、複数の接続部を、電子機器と積層体との間に形成された上記空間に配置できる。そのため、複数の接続部を備える場合でも、電力変換装置を小型化することができる。
【0017】
また、上記接続部は、ナットをインサートした端子台を備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴にボルトを挿入して、上記端子台の上記ナットに螺合するよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記端子台のナットにボルトを螺合することにより、上記電子機器または外部機器の接続端子と上記バスバーとを接続することができる。
また、圧入ナットを用いることもできるが、上述のように端子台を用いる場合は、ナットを貫通穴に圧入する必要がないため、電力変換装置の製造工程を簡易化することができる。
【0018】
また、上記接続部は圧入ナットを備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴に上記圧入ナットが圧入され、上記貫通穴にボルトを挿入して上記圧入ナットに螺合するよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ボルトを上記圧入ナットに螺合することにより、上記電子機器または外部機器の接続端子と上記バスバーとを接続することができる。
また、圧入ナットは比較的小型なので、電子機器と積層体との間に形成された上記空間が充分に広くない場合でも、該空間に接続部(圧入ナット)を配置することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
電力変換装置に係る実施例について、図1〜図6を用いて説明する。本例の電力変換装置1は、図1、図5に示すごとく、複数の半導体モジュール2と複数の冷媒流路11とを積層した積層体10を備える。図1に示すごとく、半導体モジュール2は、半導体素子23を内蔵した本体部20を有する。この本体部20からパワー端子21が突出している。また、冷媒流路11は、冷却管110の内部に形成されている。冷媒流路11には、半導体モジュール2を冷却する冷媒16が流れる。
【0020】
積層体10に対してパワー端子21の突出側には、電子機器3が配置されている。本体部20と電子機器3との間に、パワー端子21に接続した複数のバスバー4(4a〜4c)が介在している。また、半導体モジュール2を、電子機器3に電気的に接続する接続部5が形成されている。
【0021】
複数のバスバー4には、直流電流が流れる正極バスバー4aと負極バスバー4bとがある。正極バスバー4aと負極バスバー4bとは、パワー端子21の突出方向(Z方向)に所定間隔をおいて対向配置されている。また、正極バスバー4aの主面と負極バスバー4bの主面とは突出方向(Z方向)にそれぞれ直交している。
接続部5は、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して冷媒流路11の長手方向(Y方向)に隣接する位置に配置されている。
【0022】
本例の電力変換装置1は、電力自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。また、本例の電力変換装置1は、直流電源7(図4参照)の直流電圧を昇圧するDC−DCコンバータである。電子機器3内には、コンデンサ31と複数のリアクトル30とが収納されている。
【0023】
図1に示すごとく、パワー端子21には、直流電流が流れる正極端子21aおよび負極端子21bと、被制御電流I(図4参照)が流れる被制御端子21cとがある。正極端子21aには正極バスバー4aが接続され、負極端子21bには負極バスバー4bが接続されている。また、被制御端子21cには被制御バスバー4cが取り付けられている。正極バスバー4aと、負極バスバー4bと、被制御バスバー4cとは、Z方向に所定間隔をおいて互いに平行に配置されている。Z方向において、被制御バスバー4cは本体部20に最も近い位置に配置されており、正極バスバー4aは本体部20から最も遠い位置に配置されている。負極バスバー4bは、正極バスバー4aと被制御バスバー4cの間に位置している。
【0024】
半導体モジュール2は、パワー端子21の他に、複数の制御端子22を備える。この制御端子22に、制御回路基板17が取り付けられている。制御回路基板17が、半導体モジュール2の下アーム側半導体素子23b(図4参照)のスイッチング動作を制御することにより、被制御電流Iをリアクトル30に流したり、遮断したりする。これにより、リアクトル30の自己誘導を利用して、直流電源7の電圧を昇圧している。
【0025】
被制御バスバー4cは、Z方向における電子機器3側に突出したバスバー側端子40を備える。電子機器3は、Z方向における積層体10側に突出した機器側端子32を備える。バスバー側端子40と機器側端子32には貫通穴18が形成されている。また、本例の接続部5は、ナット53をインサートした樹脂製の端子台52を備える。端子台52は、バスバー側端子40に隣接配置されている。そして、バスバー側端子40と機器側端子32とを重ね合わせ、ボルト51を貫通穴18に挿入してナット53に螺合してある。このようにして、電子機器3と被制御バスバー4cとを、接続部5において電気的に接続している。
【0026】
接続部5は上述したように、電子機器3と積層体10との間に介在している。また、接続部5は、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して、Y方向に隣接する位置に設けられている。
【0027】
Z方向から見た場合に、接続部5は、冷却管110の端面115の間に位置している。また、Z方向から見た場合に、接続部5は、後述する一対の連結管19の間に位置している。さらに、X方向から見た場合に、端子台52は、半導体モジュール2の本体部20に対してZ方向における電子機器3側に位置している。また、X方向から見た場合に、端子台52は、被制御端子21cに対してZ方向における電子機器3側に位置している。
また、ボルト51は、貫通穴18にY方向に挿入され、ナット53に螺合している。
【0028】
一方、図5に示すごとく、本例では積層体10を、平面視略四角形状のフレーム12内に固定してある。積層体10の積層方向(X方向)に直交する、フレーム12の壁部121,122のうち、一方の壁部121と積層体10との間には弾性部材15(板ばね)が介在している。この弾性部材15の弾性力を使って、積層体10を他方の壁部122に向けて押圧し、積層体10をフレーム12内に固定している。
なお、本例では一方の壁部121と積層体10との間に弾性部材15を配置したが、他方の壁部122と積層体10との間に弾性部材15を配置してもよい。この場合、積層体10は、一方の壁部121に向けて押圧されることになる。
【0029】
また、複数の冷却管110は、Y方向における両端部にて、連結管19によって接続されている。積層体10を構成する複数の冷却管110のうち、X方向の一端に位置する冷却管110aには、冷媒16を導入するための導入パイプ13と、冷媒16を導出するための導出パイプ14とが取り付けられている。導入パイプ13から冷媒16を導入すると、冷媒16は連結管19を通って全ての冷却管110を流れ、導出パイプ14から導出する。これにより、半導体モジュール2を冷却するようになっている。
【0030】
また、図6に示すごとく、本例の電力変換装置1は、複数の被制御バスバー4cを備える。これら複数の被制御バスバー4cは、Y方向における両端部を樹脂製の封止部材6(6a,6b)によって封止され、一体化してバスバーモジュール60となっている。封止部材6はフレーム12に固定されている。
【0031】
個々の被制御バスバー4cは、板状本体部43と、該板状本体部43からZ方向に立設した複数の突部41と、板状本体部43にZ方向へ貫通形成した複数の端子挿通穴42とを備える。突部41と被制御端子21cとを重ね合わせ(図3参照)、その先端面を溶接することにより、これら突部41と被制御端子21cとを電気的に接続してある。また、突部41と被制御端子21cとを溶接した状態では、正極端子21a、負極端子21b、被制御端子21cが端子挿通穴42内を通っている。
【0032】
また、個々の被制御バスバー4cは上記バスバー側端子40を備える。バスバー側端子40は、2つの封止部材6a,6bのうち一方の封止部材6a付近において、板状本体部43からZ方向に突出するよう形成されている(図1参照)。そして、バスバー側端子40に隣接する位置に、端子台52が配置されている。端子台52はX方向に延びる棒状に形成され、その両端をフレーム12に固定してある。端子台52には複数のナット53がインサートされている。
【0033】
また、図1、図2に示すごとく、負極バスバー4bは、板状に形成された本体部460と、該本体部460に形成された櫛歯状部461と、本体部460にZ方向へ貫通形成された穴部462とを備える。櫛歯状部461は、負極端子21bに溶接されている。
【0034】
上述したように、半導体モジュール2の正極端子21aと負極端子21bは、被制御バスバー4cの端子挿通穴42内を通っている。正極端子21aは、負極バスバー4bの上記穴部462内をも通っている。
【0035】
正極バスバー4aは、板状に形成された本体部450と、該本体部450に形成された櫛歯状部451とを備える。櫛歯状部451は、正極端子21aに溶接されている。正極バスバー4aと負極バスバー4bは、絶縁樹脂80によって一部を封止され、一体化されている。正極バスバー4aと負極バスバー4bは、絶縁樹脂80を介して封止部材6b上に載置されている。
【0036】
また、正極バスバー4aと負極バスバー4bは、それぞれ出力端子45,46を備える。この出力端子45,46から、電力変換装置1(DC−DCコンバータ)によって昇圧された直流電圧を出力している。
【0037】
次に、本例の電力変換装置1の回路図の説明をする。本例の電力変換装置1は、18個の半導体素子23(IGBT素子)を備える。半導体素子23は、それぞれ半導体モジュール2の本体部20内に封止されている。また、半導体素子23には、正極バスバー4aに接続した上アーム側半導体素子23aと、負極バスバー4bに接続した下アーム側半導体素子23bとがある。上アーム側半導体素子23aのコレクタ端子は、上記正極端子21aに接続している。また、下アーム側半導体素子23bのエミッタ端子は、上記負極端子21bに接続している。上アーム側半導体素子23aのエミッタ端子と下アーム側半導体素子23bのコレクタ端子は、それぞれ上記被制御端子21cに接続している。被制御端子21cは、被制御バスバー4cと接続部5とを介して、リアクトル30の一方の端子300に接続している。リアクトル30の他方の端子310は、直流電源7の正電極79に接続している。また、直流電源7に、コンデンサ31(フィルタコンデンサ)が並列接続されている。
【0038】
半導体素子23のゲート端子(制御端子22)には、制御回路基板17(図1参照)が接続している。制御回路基板17が、複数の半導体素子23のスイッチング動作を制御することにより、複数のリアクトル30に、位相を互いにずらしつつ被制御電流Iを流している。これにより、正極バスバー4aと負極バスバー4bとの間に加わる電圧の時間的変動を小さくし、平滑コンデンサCの負担を減らしつつ、直流電源7の直流電圧を昇圧している。
【0039】
本例の作用効果について説明する。図1に示すごとく、本例では接続部5を、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置してある。このようにすると、電子機器3と積層体10との間の空間Sを有効活用でき、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0040】
すなわち、本例の電力変換装置1においては、正極バスバー4aと負極バスバー4bを、Z方向に所定間隔をおいて対向配置することにより、バスバー4a,4bに付く寄生インダクタンスを低減している。このように、所定間隔をおいて2つのバスバー4a,4bを対向配置すると、バスバー4a,4b全体のZ方向における長さが長くなりやすい。また、本例では2つのバスバー4a,4bを電子機器3と積層体10との間に配置してある。そのため、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4aおよび負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に、空間Sが形成されやすい。本例では、この空間Sに接続部5を配置したため、いわゆるデッドスペースを有効利用でき、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0041】
また、図2、図3に示すごとく、本例の電力変換装置1は複数の接続部5を備える。この複数の接続部5は、X方向に配列している。
このようにすると、複数の接続部5を、電子機器3と積層体10との間に形成された空間Sに配置できる。そのため、複数の接続部5を備える場合でも、電力変換装置1を小型化することができる。
【0042】
また、図1、図2に示すごとく、接続部5は、ナット53をインサートした端子台52を備える。そして、被制御バスバー4aに貫通穴18が形成されている。この貫通穴18にボルト51を挿入して、端子台52のナット53に螺合するよう構成されている。
このようにすると、端子台52のナット53にボルト51を螺合することにより、電子機器3の接続端子(機器側端子32)と被制御バスバー4とを接続することができる。
また、図2に示すごとく、端子台52には複数のナット53がインサートされているため、端子台52を1個取り付けただけで、複数のナット53を空間Sに配置することが可能になる。そのため、複数のナット53を個別に取り付ける必要がなくなり、製造工程が簡易になる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、より小型化可能な電力変換装置を提供することができる。
【0044】
なお、上記実施例においては、冷媒流路11を冷却管110内に形成し、該冷却管110を半導体モジュール2に接触させた例を示したが、本例の電力変換装置1は、これに限られるものではない。すなわち、例えば、上記半導体モジュール2に直接、冷媒16が接触するように冷媒流路11を設けることもできる。
【0045】
(実施例2)
本例は、接続部5の構造を変更した例である。図7、図8に示すごとく、本例の接続部5は圧入ナット50を備える。また、被制御バスバー4cは、実施例1と同様に、Z方向における電子機器3側に突出したバスバー側端子40を備える。電子機器3は、Z方向における積層体10側に突出した機器側端子32を備える。これらバスバー側端子40と機器側端子32には貫通穴18が形成されている。バスバー側端子40に形成した貫通穴18に圧入ナット50が圧入されている。
【0046】
そして、ボルト51を貫通穴18に挿入し、圧入ナット50に螺合することにより、機器側端子32とバスバー側端子40とを締結している。これにより、半導体モジュール2の被制御端子21cと電子機器3とを電気的に接続するようになっている。なお、圧入ナット50は、ボルト51を挿入する際に金属粉が外部へ出ないように、袋ナットとなっている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0047】
本例の作用効果について説明する。圧入ナット50は比較的小型なので、電子機器3と積層体10との間に形成された空間Sが充分に広くない場合でも、空間Sに接続部5(圧入ナット50)を配置することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施例3)
本例は、電力変換装置1をインバータとして構成した例である。図9、図10に示すごとく、本例では、接続部5を電子機器3に接続せず、外部機器(三相交流モータ70)に接続してある。
【0049】
本例では図10に示すごとく、正極バスバー4aと負極バスバー4bとを直流電源7に接続している。そして、半導体素子23をスイッチング動作させることにより、直流電源7の直流電力を交流電力に変換し、得られた交流電力を使って三相交流モータ70を駆動している。また、本例の電子機器3内にはコンデンサ31が収納されている。電子機器3(コンデンサ31)は、正極バスバー4aと負極バスバー4bとに接続している。コンデンサ31によって、正極バスバー4aと負極バスバー4bとの間に加わる直流電圧を平滑化している。
【0050】
本例の電力変換装置1は、実施例1と同様に、上アーム側半導体素子23aと、下アーム側半導体素子23bとの、2種類の半導体素子23を備える。上アーム側半導体素子23aのコレクタ端子は正極バスバー4aに接続され、下アーム側半導体素子23bのエミッタ端子は負極バスバー4bに接続されている。また、上アーム側半導体素子23aのエミッタ端子と下アーム側半導体素子23bのコレクタ端子とは、それぞれ被制御端子21cに接続している。被制御端子21cは、被制御バスバー4cおよび接続部5を介して、外部機器(三相交流モータ70)の接続端子71に接続している。被制御バスバー4cには、半導体素子23の制御によって生じる被制御電流I(交流電流)が流れる。
【0051】
図9に示すごとく、本例の接続部5は、実施例1と同様に、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置されている。また、接続部5は、実施例1と同様に端子台52を備える。
【0052】
被制御バスバー4cは、Z方向に突出したバスバー側端子40を備える。外部機器の接続端子71の先端部710は折り曲げられ、バスバー側端子40に密着している。また、接続端子71の先端部710とバスバー側端子40には貫通穴18が形成されている。この貫通穴18にボルト51を挿入し、端子台52のナット53に螺合することにより、先端部710とバスバー側端子40とを締結している。また、接続端子71は、Y方向における、端子台52とは反対側に延出している。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0053】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、半導体モジュール2を外部機器(三相交流モータ70)に接続する場合においても、電子機器3と積層体10との間の空間Sを有効利用することができ、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0054】
(実施例4)
本例は、接続部5の構造を変更した例である。図11に示すごとく、本例では、負極バスバー4bと電子機器3(コンデンサ31)とを、接続部5において接続してある。接続部5は、実施例1と同様に、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4aおよび負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置されている。本例の負極バスバー4bは、櫛歯状部461付近からY方向に延出する延出部465を備える。この延出部465の先端はZ方向に折り曲げられ、電子機器3に接続するためのバスバー側端子40となっている。
【0055】
また、本例では、図11に示す接続部5に対してX方向にずれた位置に、別の接続部(図示しない)が複数個、配置されている。この複数個の接続部のうち一部の接続部において、正極バスバー4aと電子機器3とが接続されている。また、他の接続部において、被制御バスバー4cと外部機器とが接続されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0056】
本例の作用効果について説明する。本例では、被制御バスバー4cと外部機器とを接続する接続部5だけでなく、正極バスバー4aや負極バスバー4bを電子機器3と接続する接続部5をも、電子機器3と積層体10との間に配置することができる。そのため、電子機器3と積層体10との間の空間Sをより有効に利用することが可能になり、電力変換装置1を小型化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0057】
1 電力変換装置
10 積層体
11 冷媒流路
110 冷却管
2 半導体モジュール
3 電子機器
4 バスバー
4a 正極バスバー
4b 負極バスバー
4c 被制御バスバー
5 接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、コンデンサ等の電子機器あるいは直流電源等の外部機器とを電気的に接続する接続部を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば直流電力と交流電力との間で電力変換をするための電力変換装置として、図12、図13に示すごとく、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール91と、該半導体モジュール91を冷却する複数の冷却管92とを積層した積層体90を備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
個々の半導体モジュール91は、半導体素子を内蔵した本体部910と、該本体部910から突出したパワー端子93及び制御端子94を備える。パワー端子93には、直流電源(図示しない)の正電極に接続される正極端子93aと、直流電源の負電極に接続される負極端子93bと、交流負荷に接続される交流端子93cとがある。正極端子93aには正極バスバー96aが接続され、負極端子93bには負極バスバー96bが接続されている。また、交流端子93cには交流バスバー96cが接続されている。
【0004】
半導体モジュール91の制御端子94には制御回路基板95が取り付けられている。この制御回路基板95に形成した制御回路が半導体モジュール91のスイッチング動作を制御することにより、正極端子93aと負極端子93bとの間に印加される直流電圧を交流電圧に変換し、交流端子93cから出力する。
【0005】
また、電力変換装置9は、平滑コンデンサ等の電子機器97を備える。正極バスバー96aおよび負極バスバー96bは、接続部99において、電子機器97の接続端子98に接続されている。すなわち、バスバー96a,96bと接続端子98とを重ね合わせ、ボルト990を使って、これらを締結してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−114966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の電力変換装置9は、電子機器97の側面970付近に接続部99が設けられているため、パワー端子93の突出方向(Z方向)から見た場合に、接続部99の一部が、電子機器97の側面970よりも外側に突出しやすかった。そのため、電力変換装置9が大きくなりやすいという問題があった。
【0008】
Z方向から見た場合に接続部99が電子機器97に全て隠れるように、電子機器97と積層体90との間に接続部99移動しようとしても、これらの間には空きスペースが殆どないため、移動することができなかった。そのため従来の電力変換装置9は、接続部99を電子機器97の側面970付近に配置せざるを得なかった。その結果、接続部99の一部が側面970よりも外側に突出してしまい、装置全体を小型化しにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、より小型化可能な電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体素子を内蔵した本体部からパワー端子が突出した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体に対して上記パワー端子の突出側に配置された電子機器と、
上記本体部と上記電子機器との間に介在し、上記パワー端子に接続した複数のバスバーと、
上記半導体モジュールを上記電子機器または外部機器に電気的に接続する接続部とを備え、
該複数のバスバーには、直流電流が流れる正極バスバーと負極バスバーとがあり、
上記正極バスバーと上記負極バスバーとは、上記パワー端子の突出方向に所定間隔をおいて互いに対向配置され、上記正極バスバーの主面と上記負極バスバーの主面とは上記突出方向にそれぞれ直交しており、
上記接続部は、上記電子機器と上記積層体との間において、上記正極バスバー及び上記負極バスバーに対して上記冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置においては、上記接続部を、上記電子機器と上記積層体との間において、正極バスバー及び負極バスバーに対して冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置してある。このようにすると、電子機器と積層体との間の空間を有効活用でき、電力変換装置を小型化することが可能になる。
【0012】
すなわち、上記電力変換装置においては、正極バスバーと負極バスバーを、所定間隔をおいて対向配置することにより、バスバーに付く寄生インダクタンスを低減している。このように、所定間隔をおいて2つのバスバーを対向配置すると、バスバーの主面に垂直な方向(上記突出方向)における、2つのバスバーの合計の長さが長くなりやすい。また、上記電力変換装置は、2つのバスバーを電子機器と積層体との間に配置してある。そのため、電子機器と積層体との間において、正極バスバー及び負極バスバーに対して上記長手方向に隣接する位置に、空間が形成されやすい。上記電力変換装置では、この空間に接続部を配置したため、いわゆるデッドスペースを有効利用でき、電力変換装置を小型化することが可能になる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、より小型化可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、電力変換装置の断面図であって、図2のC−C断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB−B断面図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図5】実施例1における、フレーム内に積層体を固定した状態での、電力変換装置の平面図。
【図6】図5に示すフレームに被制御バスバーと端子台を配置した状態での、電力変換装置の平面図。
【図7】実施例2における、電力変換装置の断面図。
【図8】実施例2における、接続部の分解側面図。
【図9】実施例3における、電力変換装置の断面図。
【図10】実施例3における、電力変換装置の回路図。
【図11】実施例4における、電力変換装置の断面図。
【図12】従来例における、電力変換装置の側面図。
【図13】図12のD矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記電子機器は、リアクトルやコンデンサとすることができる。また、上記外部機器は、三相交流モータや直流電源とすることができる。
【0016】
上記電力変換装置は複数の上記接続部を備え、該複数の接続部は、上記積層体の積層方向に配列していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、複数の接続部を、電子機器と積層体との間に形成された上記空間に配置できる。そのため、複数の接続部を備える場合でも、電力変換装置を小型化することができる。
【0017】
また、上記接続部は、ナットをインサートした端子台を備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴にボルトを挿入して、上記端子台の上記ナットに螺合するよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記端子台のナットにボルトを螺合することにより、上記電子機器または外部機器の接続端子と上記バスバーとを接続することができる。
また、圧入ナットを用いることもできるが、上述のように端子台を用いる場合は、ナットを貫通穴に圧入する必要がないため、電力変換装置の製造工程を簡易化することができる。
【0018】
また、上記接続部は圧入ナットを備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴に上記圧入ナットが圧入され、上記貫通穴にボルトを挿入して上記圧入ナットに螺合するよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ボルトを上記圧入ナットに螺合することにより、上記電子機器または外部機器の接続端子と上記バスバーとを接続することができる。
また、圧入ナットは比較的小型なので、電子機器と積層体との間に形成された上記空間が充分に広くない場合でも、該空間に接続部(圧入ナット)を配置することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
電力変換装置に係る実施例について、図1〜図6を用いて説明する。本例の電力変換装置1は、図1、図5に示すごとく、複数の半導体モジュール2と複数の冷媒流路11とを積層した積層体10を備える。図1に示すごとく、半導体モジュール2は、半導体素子23を内蔵した本体部20を有する。この本体部20からパワー端子21が突出している。また、冷媒流路11は、冷却管110の内部に形成されている。冷媒流路11には、半導体モジュール2を冷却する冷媒16が流れる。
【0020】
積層体10に対してパワー端子21の突出側には、電子機器3が配置されている。本体部20と電子機器3との間に、パワー端子21に接続した複数のバスバー4(4a〜4c)が介在している。また、半導体モジュール2を、電子機器3に電気的に接続する接続部5が形成されている。
【0021】
複数のバスバー4には、直流電流が流れる正極バスバー4aと負極バスバー4bとがある。正極バスバー4aと負極バスバー4bとは、パワー端子21の突出方向(Z方向)に所定間隔をおいて対向配置されている。また、正極バスバー4aの主面と負極バスバー4bの主面とは突出方向(Z方向)にそれぞれ直交している。
接続部5は、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して冷媒流路11の長手方向(Y方向)に隣接する位置に配置されている。
【0022】
本例の電力変換装置1は、電力自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。また、本例の電力変換装置1は、直流電源7(図4参照)の直流電圧を昇圧するDC−DCコンバータである。電子機器3内には、コンデンサ31と複数のリアクトル30とが収納されている。
【0023】
図1に示すごとく、パワー端子21には、直流電流が流れる正極端子21aおよび負極端子21bと、被制御電流I(図4参照)が流れる被制御端子21cとがある。正極端子21aには正極バスバー4aが接続され、負極端子21bには負極バスバー4bが接続されている。また、被制御端子21cには被制御バスバー4cが取り付けられている。正極バスバー4aと、負極バスバー4bと、被制御バスバー4cとは、Z方向に所定間隔をおいて互いに平行に配置されている。Z方向において、被制御バスバー4cは本体部20に最も近い位置に配置されており、正極バスバー4aは本体部20から最も遠い位置に配置されている。負極バスバー4bは、正極バスバー4aと被制御バスバー4cの間に位置している。
【0024】
半導体モジュール2は、パワー端子21の他に、複数の制御端子22を備える。この制御端子22に、制御回路基板17が取り付けられている。制御回路基板17が、半導体モジュール2の下アーム側半導体素子23b(図4参照)のスイッチング動作を制御することにより、被制御電流Iをリアクトル30に流したり、遮断したりする。これにより、リアクトル30の自己誘導を利用して、直流電源7の電圧を昇圧している。
【0025】
被制御バスバー4cは、Z方向における電子機器3側に突出したバスバー側端子40を備える。電子機器3は、Z方向における積層体10側に突出した機器側端子32を備える。バスバー側端子40と機器側端子32には貫通穴18が形成されている。また、本例の接続部5は、ナット53をインサートした樹脂製の端子台52を備える。端子台52は、バスバー側端子40に隣接配置されている。そして、バスバー側端子40と機器側端子32とを重ね合わせ、ボルト51を貫通穴18に挿入してナット53に螺合してある。このようにして、電子機器3と被制御バスバー4cとを、接続部5において電気的に接続している。
【0026】
接続部5は上述したように、電子機器3と積層体10との間に介在している。また、接続部5は、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対して、Y方向に隣接する位置に設けられている。
【0027】
Z方向から見た場合に、接続部5は、冷却管110の端面115の間に位置している。また、Z方向から見た場合に、接続部5は、後述する一対の連結管19の間に位置している。さらに、X方向から見た場合に、端子台52は、半導体モジュール2の本体部20に対してZ方向における電子機器3側に位置している。また、X方向から見た場合に、端子台52は、被制御端子21cに対してZ方向における電子機器3側に位置している。
また、ボルト51は、貫通穴18にY方向に挿入され、ナット53に螺合している。
【0028】
一方、図5に示すごとく、本例では積層体10を、平面視略四角形状のフレーム12内に固定してある。積層体10の積層方向(X方向)に直交する、フレーム12の壁部121,122のうち、一方の壁部121と積層体10との間には弾性部材15(板ばね)が介在している。この弾性部材15の弾性力を使って、積層体10を他方の壁部122に向けて押圧し、積層体10をフレーム12内に固定している。
なお、本例では一方の壁部121と積層体10との間に弾性部材15を配置したが、他方の壁部122と積層体10との間に弾性部材15を配置してもよい。この場合、積層体10は、一方の壁部121に向けて押圧されることになる。
【0029】
また、複数の冷却管110は、Y方向における両端部にて、連結管19によって接続されている。積層体10を構成する複数の冷却管110のうち、X方向の一端に位置する冷却管110aには、冷媒16を導入するための導入パイプ13と、冷媒16を導出するための導出パイプ14とが取り付けられている。導入パイプ13から冷媒16を導入すると、冷媒16は連結管19を通って全ての冷却管110を流れ、導出パイプ14から導出する。これにより、半導体モジュール2を冷却するようになっている。
【0030】
また、図6に示すごとく、本例の電力変換装置1は、複数の被制御バスバー4cを備える。これら複数の被制御バスバー4cは、Y方向における両端部を樹脂製の封止部材6(6a,6b)によって封止され、一体化してバスバーモジュール60となっている。封止部材6はフレーム12に固定されている。
【0031】
個々の被制御バスバー4cは、板状本体部43と、該板状本体部43からZ方向に立設した複数の突部41と、板状本体部43にZ方向へ貫通形成した複数の端子挿通穴42とを備える。突部41と被制御端子21cとを重ね合わせ(図3参照)、その先端面を溶接することにより、これら突部41と被制御端子21cとを電気的に接続してある。また、突部41と被制御端子21cとを溶接した状態では、正極端子21a、負極端子21b、被制御端子21cが端子挿通穴42内を通っている。
【0032】
また、個々の被制御バスバー4cは上記バスバー側端子40を備える。バスバー側端子40は、2つの封止部材6a,6bのうち一方の封止部材6a付近において、板状本体部43からZ方向に突出するよう形成されている(図1参照)。そして、バスバー側端子40に隣接する位置に、端子台52が配置されている。端子台52はX方向に延びる棒状に形成され、その両端をフレーム12に固定してある。端子台52には複数のナット53がインサートされている。
【0033】
また、図1、図2に示すごとく、負極バスバー4bは、板状に形成された本体部460と、該本体部460に形成された櫛歯状部461と、本体部460にZ方向へ貫通形成された穴部462とを備える。櫛歯状部461は、負極端子21bに溶接されている。
【0034】
上述したように、半導体モジュール2の正極端子21aと負極端子21bは、被制御バスバー4cの端子挿通穴42内を通っている。正極端子21aは、負極バスバー4bの上記穴部462内をも通っている。
【0035】
正極バスバー4aは、板状に形成された本体部450と、該本体部450に形成された櫛歯状部451とを備える。櫛歯状部451は、正極端子21aに溶接されている。正極バスバー4aと負極バスバー4bは、絶縁樹脂80によって一部を封止され、一体化されている。正極バスバー4aと負極バスバー4bは、絶縁樹脂80を介して封止部材6b上に載置されている。
【0036】
また、正極バスバー4aと負極バスバー4bは、それぞれ出力端子45,46を備える。この出力端子45,46から、電力変換装置1(DC−DCコンバータ)によって昇圧された直流電圧を出力している。
【0037】
次に、本例の電力変換装置1の回路図の説明をする。本例の電力変換装置1は、18個の半導体素子23(IGBT素子)を備える。半導体素子23は、それぞれ半導体モジュール2の本体部20内に封止されている。また、半導体素子23には、正極バスバー4aに接続した上アーム側半導体素子23aと、負極バスバー4bに接続した下アーム側半導体素子23bとがある。上アーム側半導体素子23aのコレクタ端子は、上記正極端子21aに接続している。また、下アーム側半導体素子23bのエミッタ端子は、上記負極端子21bに接続している。上アーム側半導体素子23aのエミッタ端子と下アーム側半導体素子23bのコレクタ端子は、それぞれ上記被制御端子21cに接続している。被制御端子21cは、被制御バスバー4cと接続部5とを介して、リアクトル30の一方の端子300に接続している。リアクトル30の他方の端子310は、直流電源7の正電極79に接続している。また、直流電源7に、コンデンサ31(フィルタコンデンサ)が並列接続されている。
【0038】
半導体素子23のゲート端子(制御端子22)には、制御回路基板17(図1参照)が接続している。制御回路基板17が、複数の半導体素子23のスイッチング動作を制御することにより、複数のリアクトル30に、位相を互いにずらしつつ被制御電流Iを流している。これにより、正極バスバー4aと負極バスバー4bとの間に加わる電圧の時間的変動を小さくし、平滑コンデンサCの負担を減らしつつ、直流電源7の直流電圧を昇圧している。
【0039】
本例の作用効果について説明する。図1に示すごとく、本例では接続部5を、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置してある。このようにすると、電子機器3と積層体10との間の空間Sを有効活用でき、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0040】
すなわち、本例の電力変換装置1においては、正極バスバー4aと負極バスバー4bを、Z方向に所定間隔をおいて対向配置することにより、バスバー4a,4bに付く寄生インダクタンスを低減している。このように、所定間隔をおいて2つのバスバー4a,4bを対向配置すると、バスバー4a,4b全体のZ方向における長さが長くなりやすい。また、本例では2つのバスバー4a,4bを電子機器3と積層体10との間に配置してある。そのため、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4aおよび負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に、空間Sが形成されやすい。本例では、この空間Sに接続部5を配置したため、いわゆるデッドスペースを有効利用でき、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0041】
また、図2、図3に示すごとく、本例の電力変換装置1は複数の接続部5を備える。この複数の接続部5は、X方向に配列している。
このようにすると、複数の接続部5を、電子機器3と積層体10との間に形成された空間Sに配置できる。そのため、複数の接続部5を備える場合でも、電力変換装置1を小型化することができる。
【0042】
また、図1、図2に示すごとく、接続部5は、ナット53をインサートした端子台52を備える。そして、被制御バスバー4aに貫通穴18が形成されている。この貫通穴18にボルト51を挿入して、端子台52のナット53に螺合するよう構成されている。
このようにすると、端子台52のナット53にボルト51を螺合することにより、電子機器3の接続端子(機器側端子32)と被制御バスバー4とを接続することができる。
また、図2に示すごとく、端子台52には複数のナット53がインサートされているため、端子台52を1個取り付けただけで、複数のナット53を空間Sに配置することが可能になる。そのため、複数のナット53を個別に取り付ける必要がなくなり、製造工程が簡易になる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、より小型化可能な電力変換装置を提供することができる。
【0044】
なお、上記実施例においては、冷媒流路11を冷却管110内に形成し、該冷却管110を半導体モジュール2に接触させた例を示したが、本例の電力変換装置1は、これに限られるものではない。すなわち、例えば、上記半導体モジュール2に直接、冷媒16が接触するように冷媒流路11を設けることもできる。
【0045】
(実施例2)
本例は、接続部5の構造を変更した例である。図7、図8に示すごとく、本例の接続部5は圧入ナット50を備える。また、被制御バスバー4cは、実施例1と同様に、Z方向における電子機器3側に突出したバスバー側端子40を備える。電子機器3は、Z方向における積層体10側に突出した機器側端子32を備える。これらバスバー側端子40と機器側端子32には貫通穴18が形成されている。バスバー側端子40に形成した貫通穴18に圧入ナット50が圧入されている。
【0046】
そして、ボルト51を貫通穴18に挿入し、圧入ナット50に螺合することにより、機器側端子32とバスバー側端子40とを締結している。これにより、半導体モジュール2の被制御端子21cと電子機器3とを電気的に接続するようになっている。なお、圧入ナット50は、ボルト51を挿入する際に金属粉が外部へ出ないように、袋ナットとなっている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0047】
本例の作用効果について説明する。圧入ナット50は比較的小型なので、電子機器3と積層体10との間に形成された空間Sが充分に広くない場合でも、空間Sに接続部5(圧入ナット50)を配置することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施例3)
本例は、電力変換装置1をインバータとして構成した例である。図9、図10に示すごとく、本例では、接続部5を電子機器3に接続せず、外部機器(三相交流モータ70)に接続してある。
【0049】
本例では図10に示すごとく、正極バスバー4aと負極バスバー4bとを直流電源7に接続している。そして、半導体素子23をスイッチング動作させることにより、直流電源7の直流電力を交流電力に変換し、得られた交流電力を使って三相交流モータ70を駆動している。また、本例の電子機器3内にはコンデンサ31が収納されている。電子機器3(コンデンサ31)は、正極バスバー4aと負極バスバー4bとに接続している。コンデンサ31によって、正極バスバー4aと負極バスバー4bとの間に加わる直流電圧を平滑化している。
【0050】
本例の電力変換装置1は、実施例1と同様に、上アーム側半導体素子23aと、下アーム側半導体素子23bとの、2種類の半導体素子23を備える。上アーム側半導体素子23aのコレクタ端子は正極バスバー4aに接続され、下アーム側半導体素子23bのエミッタ端子は負極バスバー4bに接続されている。また、上アーム側半導体素子23aのエミッタ端子と下アーム側半導体素子23bのコレクタ端子とは、それぞれ被制御端子21cに接続している。被制御端子21cは、被制御バスバー4cおよび接続部5を介して、外部機器(三相交流モータ70)の接続端子71に接続している。被制御バスバー4cには、半導体素子23の制御によって生じる被制御電流I(交流電流)が流れる。
【0051】
図9に示すごとく、本例の接続部5は、実施例1と同様に、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4a及び負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置されている。また、接続部5は、実施例1と同様に端子台52を備える。
【0052】
被制御バスバー4cは、Z方向に突出したバスバー側端子40を備える。外部機器の接続端子71の先端部710は折り曲げられ、バスバー側端子40に密着している。また、接続端子71の先端部710とバスバー側端子40には貫通穴18が形成されている。この貫通穴18にボルト51を挿入し、端子台52のナット53に螺合することにより、先端部710とバスバー側端子40とを締結している。また、接続端子71は、Y方向における、端子台52とは反対側に延出している。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0053】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、半導体モジュール2を外部機器(三相交流モータ70)に接続する場合においても、電子機器3と積層体10との間の空間Sを有効利用することができ、電力変換装置1を小型化することが可能になる。
【0054】
(実施例4)
本例は、接続部5の構造を変更した例である。図11に示すごとく、本例では、負極バスバー4bと電子機器3(コンデンサ31)とを、接続部5において接続してある。接続部5は、実施例1と同様に、電子機器3と積層体10との間において、正極バスバー4aおよび負極バスバー4bに対してY方向に隣接する位置に配置されている。本例の負極バスバー4bは、櫛歯状部461付近からY方向に延出する延出部465を備える。この延出部465の先端はZ方向に折り曲げられ、電子機器3に接続するためのバスバー側端子40となっている。
【0055】
また、本例では、図11に示す接続部5に対してX方向にずれた位置に、別の接続部(図示しない)が複数個、配置されている。この複数個の接続部のうち一部の接続部において、正極バスバー4aと電子機器3とが接続されている。また、他の接続部において、被制御バスバー4cと外部機器とが接続されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0056】
本例の作用効果について説明する。本例では、被制御バスバー4cと外部機器とを接続する接続部5だけでなく、正極バスバー4aや負極バスバー4bを電子機器3と接続する接続部5をも、電子機器3と積層体10との間に配置することができる。そのため、電子機器3と積層体10との間の空間Sをより有効に利用することが可能になり、電力変換装置1を小型化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0057】
1 電力変換装置
10 積層体
11 冷媒流路
110 冷却管
2 半導体モジュール
3 電子機器
4 バスバー
4a 正極バスバー
4b 負極バスバー
4c 被制御バスバー
5 接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵した本体部からパワー端子が突出した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体に対して上記パワー端子の突出側に配置された電子機器と、
上記本体部と上記電子機器との間に介在し、上記パワー端子に接続した複数のバスバーと、
上記半導体モジュールを上記電子機器または外部機器に電気的に接続する接続部とを備え、
該複数のバスバーには、直流電流が流れる正極バスバーと負極バスバーとがあり、
上記正極バスバーと上記負極バスバーとは、上記パワー端子の突出方向に所定間隔をおいて互いに対向配置され、上記正極バスバーの主面と上記負極バスバーの主面とは上記突出方向にそれぞれ直交しており、
上記接続部は、上記電子機器と上記積層体との間において、上記正極バスバー及び上記負極バスバーに対して上記冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、複数の上記接続部を備え、該複数の接続部は、上記積層体の積層方向に配列していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、上記接続部は、ナットをインサートした端子台を備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴にボルトを挿入して、上記端子台の上記ナットに螺合するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、上記接続部は圧入ナットを備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴に上記圧入ナットが圧入され、上記貫通穴にボルトを挿入して上記圧入ナットに螺合するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
半導体素子を内蔵した本体部からパワー端子が突出した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷媒が流れる複数の冷媒流路とを積層した積層体と、
該積層体に対して上記パワー端子の突出側に配置された電子機器と、
上記本体部と上記電子機器との間に介在し、上記パワー端子に接続した複数のバスバーと、
上記半導体モジュールを上記電子機器または外部機器に電気的に接続する接続部とを備え、
該複数のバスバーには、直流電流が流れる正極バスバーと負極バスバーとがあり、
上記正極バスバーと上記負極バスバーとは、上記パワー端子の突出方向に所定間隔をおいて互いに対向配置され、上記正極バスバーの主面と上記負極バスバーの主面とは上記突出方向にそれぞれ直交しており、
上記接続部は、上記電子機器と上記積層体との間において、上記正極バスバー及び上記負極バスバーに対して上記冷媒流路の長手方向に隣接する位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、複数の上記接続部を備え、該複数の接続部は、上記積層体の積層方向に配列していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、上記接続部は、ナットをインサートした端子台を備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴にボルトを挿入して、上記端子台の上記ナットに螺合するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、上記接続部は圧入ナットを備え、上記複数のバスバーのうち一部のバスバーに、該バスバーの板厚方向に貫通した貫通穴が形成され、該貫通穴に上記圧入ナットが圧入され、上記貫通穴にボルトを挿入して上記圧入ナットに螺合するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−99168(P2013−99168A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241375(P2011−241375)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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