説明

電力用碍子形遮断器

【課題】長尺状の碍子の上方に水平に接続された遮断部またはコンデンサを内蔵する碍子形遮断器が、地震動、特に鉛直方向の振動によって破損することを防止する。
【解決手段】架台2と、前記架台2上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の垂直碍子1bと、その上方に遮断部またはコンデンサを内蔵した水平碍子1aが備わっている碍子形遮断器1において、架台2と固定座6の間に複数の可動板7を有し、可動板7は、架台2の外縁側において、その一端が蝶番で固定され、他端が可動自在に固定座6を、接続部材を介して支え、可動板7の可動端にバネ11及びダンパー10を備え、可動板7の振動を吸収するように構成された免震装置4により、鉛直方向の振動を免震化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架台から鉛直方向に立設された長尺状の碍子の先端に遮断部を備えた高圧及び超高圧電力用碍子形遮断器に係り、特に耐震性を向上させた碍子形遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、変電所に設けられる碍子形遮断器は、架台上に鉛直に立設された長尺状の碍子と、その上方に遮断部やコンデンサ等を内蔵した碍子が水平方向に備わっている。これらは通常、ある一定の地震波に対して耐えられるような設計となっている。
【0003】
碍子は、他の金属構造物に比べて機械的強度が弱い。そのため、碍子形遮断器において、鉛直方向の碍子の根元部分は水平方向の揺動に、水平方向に分岐する碍子の接続する根元の部分は鉛直方向の振動にそれぞれ弱く、大きな地震による振動で破壊される場合がある。この背景により、特許文献1で、水平方向の地震エネルギーを吸収し免震化する免震装置を備えた碍子設備が開示されている。
【0004】
この例ではバネ、ダンパー、レールが一方向に並べられた免震構造を単位構造として、同構造を2段にし、バネの方向がそれぞれX軸、Y軸方向となるように構成している。これにより、水平方向のX軸、Y軸それぞれの振動を吸収し、上方の碍子機器への地震波の入力を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−210074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例では水平方向に設けられたバネ、ダンパー、レールにより、上方の碍子機器がX軸及びY軸方向に可動となり、それぞれ水平方向への振動エネルギーを吸収する。しかし、鉛直方向には可動ではなく免震構造を有さないため振動エネルギーを吸収することができない。
【0007】
碍子形遮断器は鉛直方向の碍子の他に、遮断部及びコンデンサを内蔵する水平方向の碍子を有する。このため、特に直下型地震が発生した場合には、鉛直方向の加速度が大きくなり、鉛直方向振動によるこれらへの荷重がモーメントとして根元部分へかかることで破壊につながる。つまり、上記従来技術では鉛直方向の振動に対する免震対策が実施できないため、鉛直方向の地震波についても、免震化する構造が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の碍子形遮断器では以下の手段を採用する。すなわち、本発明に係る碍子形遮断器は、架台と、前記架台上に設置された免震装置と、前記免震装置上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、前記長尺状の碍子の上方に水平方向に接続された遮断部またはコンデンサを内蔵した碍子を備えて構成する。前記免震装置は、前記架台と前記長尺状の碍子の固定座の間に、前記長尺状の碍子の中心軸に対し放射状に配置された3つ以上の可動板を有する。前記可動板は、前記架台の外縁側において、その一端が蝶番等の可動接続部材により固定され、他端が可動自在に前記固定座を、ボールジョイント等の角度可変な1つの接続部材を介して支え、前記架台と前記可動板の可動端の間に設けられたバネ及びダンパーによって、前記可動板が、前記固定座及びその上方構造と一体となって、上下動及び揺動を許容し吸収するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
架台から立ち上がった碍子形遮断器の下部に、遮断器全体の上下動または揺動を吸収するような構造を設けることにより、遮断器全体に伝播する振動を免震化する。また、この免震装置により、鉛直振動の碍子への伝播を低減し、碍子形遮断器の水平方向要素を接続する碍子根元部分の破損を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の碍子形遮断器を示した正面図である。
【図2】本発明の碍子形遮断器に用いる免震装置について、実施例1の構成を示した平面図である。
【図3】図2に示した免震装置の正面図である。
【図4】図2に示した免震装置のA−A断面図である。
【図5】図4に示した免震装置のB−B断面図である。
【図6】本発明の碍子形遮断器に用いる免震装置について、実施例2の構成を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る碍子形遮断器の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、碍子形遮断器1は、基礎3に固定設置された架台2から免震装置4を介して垂直に立ち上がった垂直碍子1bと、その上方両端に固定された遮断部やコンデンサを内蔵した水平碍子1aにより構成される。
【0013】
水平碍子1aにはその両端に高圧の引込線12が接続される。引込線12はある一定の張力を持つが、碍子形遮断器1の振動による鉛直及び水平方向への運動を制限するものではない。
【0014】
架台2は鉄骨を組んだ構成であり、その高さは例えば1〜3m程度である。水平碍子1a及び垂直碍子1bは磁器セラミックス製であり、これにより構成される碍子形遮断器1の高さは例えば4〜7m程度である。
【0015】
架台2の内部には遮断部の操作器(不図示)が設置される。操作器(不図示)と水平碍子1a内の遮断部(不図示)は、垂直碍子1b内を伸びる絶縁ロッド(不図示)により連結される。図4に示すように、架台2と垂直碍子1bとの間には、装置の気密を確保するためベローズ20が配され、このベローズ20を介して絶縁ロッド21が設けられる。また、架台2と垂直碍子1bとの間には、ベローズ20を囲むように免震装置4が配される。
【0016】
免震装置4は、基礎3から架台2を介して伝播した地震波に対し遮断器に作用する過大な衝撃力を緩和する。図2〜5には免震装置の詳細が示されている。図2は免震装置の平面図、図3は図2に示されている可動板7のうち1枚の構成を示す正面図、図4は図2のA−A断面図、図5は図4のB−B断面図をそれぞれ示している。
【0017】
図2〜図4に示すように、免震装置4は下板5、固定座6及び、下板5と固定座6を接続する可動板7により構成される。下板5は架台2に、固定座6は垂直碍子1bにそれぞれ接続されている。下板5及び固定座6には中央に絶縁ロッド21が貫通する穴が形成されている。これらの穴はベローズ20により気密を保持しつつ連結されている。可動板7は下板5と固定座6との間に4枚設けられており、それぞれ下板5と固定座6に接続している。固定座6には垂直碍子1bが接続されるが、この固定座6の形状は碍子のフランジ形状にあわせ方形、円形等の形を取り得る。
【0018】
図2〜図4に示すように、可動板7はその一端に軸受7aを有し、下板5はその各辺の外縁に沿って軸受5aを備えている。可動板7は軸受7aと軸受5aにおいて、軸9を介して下板5に接続され、下板5の中央付近に配される可動板7の他端は上下方向に可動自在となっている。また、可動板7はその曲げ方向に対する断面係数を増加させ強度を増すために、補強材7bを備えている。
【0019】
図5に示すとおり、下板5と可動板7の可動端との間には、ダンパー10及びバネ11が設けられている。ダンパー10はピストン16とシリンダ17により構成され、シリンダ17中には例えば絶縁油のような粘性液体が満たされている。
【0020】
ピストン16とシリンダ17はそれぞれ可動板7と下板5に固定されている。バネ11はバネ接続金具18及び19によって、両端を下板5と可動板7の両方に接続されている。バネ11は伸長及び収縮が可能で、可動板7の可動端を下板5に対して一定の位置に復元する機能を持つ。
【0021】
ダンパー10の作用により、バネ11による可動板7の鉛直方向の加速度が制動される。ダンパー10及びバネ11は可動板7の中心線に対し左右対称となるように配置され、可動板7の可動端に均等にバネ力及びダンパーの制動力が加わるように構成されている。
【0022】
図5に示すとおり、可動板7と固定座6との間には、可動板7の中心線上にボールジョイント8が備わっている。ボールジョイント8はジョイント13、ジョイント金具14及びジョイント受15により構成される。ジョイント13は固定座6、ジョイント受15は可動板7にそれぞれ固定され、ジョイント金具14を介して組み合わせることにより、可動板7と固定座6とを接続している。ボールジョイント8は各々の可動板7に1つずつ取り付けられていて、可動板7と固定座6とがなす角度を制限することなく接続している。
【0023】
地震による鉛直方向の振動が基礎3から架台2を介して免震装置4に伝播した場合、垂直碍子1bとその上方構造の慣性により、4ヶ所に設けられている可動板7の可動端が振動にあわせて一様に上下に動作する。このとき、可動板7の可動端の振動は、ダンパー10及びバネ11の免震作用によって吸収される。
【0024】
上記作用によって、固定座6に接続された垂直碍子1bと上方構造に伝播する振動が抑制されることにより、上方の水平碍子1aにかかる加速度は低減され、水平碍子1aの接続根元部分への荷重が低減されて免震効果を得る。
【0025】
地震による水平方向の振動が基礎3から架台2を介して免震装置4に伝播した場合、振動は図3に示す軸受5a、軸9、軸受7aを介し可動板7へ伝播し、ボールジョイント8、固定座6を介し垂直碍子1bへと伝播する。垂直碍子1bとその上方構造は慣性により免震装置4に対し一定の角度に傾く様に運動する。
【0026】
このとき、振動方向に並んだある可動板7及び対向する可動板7が対となり、一方の可動板7の可動端が下側へ動作し他方の可動端が上側へ動作することにより、固定座6は垂直碍子1bとその上方構造の傾きに従って傾く。
【0027】
すなわち、前記垂直碍子1bとその上方構造は振り子状に振動するが、このときの傾きとなる運動は免震装置4において、可動板7の可動端の上下運動へと変換される。この上下運動はダンパー10及びバネ11の免震作用により吸収されるため、前記垂直碍子1bとその上方構造の振り子運動は、免震装置4により加速度が低減される。
【0028】
以上の作用により、垂直碍子1bの固定座6へと接続される側の根元部分にかかる曲げ荷重は低減され、免震効果を得る。上述のとおり、架台2と垂直碍子1bとの間に免震装置4を備えた碍子形遮断器1は、鉛直方向及び水平方向への振動に対し免震効果を有し、垂直碍子1bとその上方構造への振動が低減される。これにより結果垂直碍子1bの根元部分及び水平碍子1aの接続根元部分への負荷が低減され、碍子の破損を防止することができる。
【実施例2】
【0029】
図6に、本発明の第2の実施例を示す。なお、実施例1と同様の部分については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施例は、可動板7、バネ11等により構成される可動部分を3ヶ所とし、軸9が、軸線9Aを延長したときに形成される正三角形の各辺の中央に位置するように構成する。固定座6は3つのボールジョイント8により3点支持される。ボールジョイント8による支持点の位置の関係上、固定座6の形状は円形が望ましい。
【0031】
以上の構成により、実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。また部品点数が減ることにより、組立上の工数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 碍子形遮断器
2 架台
4 免震装置
7 可動板
8 ボールジョイント
9 軸
10 ダンパー
11 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、前記架台上に設置された免震装置と、前記免震装置上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、前記長尺状の碍子の上方に水平方向に接続された遮断部またはコンデンサを内蔵した碍子とを備えた碍子形遮断器において、前記免震装置が、前記架台と前記長尺状の碍子の固定座の間に、前記長尺状の碍子の中心軸に対し放射状に配置された3つ以上の可動板を有し、前記可動板は、前記架台の外縁側において、その一端が可動接続部材により固定され、他端が可動自在に前記固定座を、角度可変な1つの接続部材を介して支え、前記架台と前記可動板の可動端の間に設けられたバネ及びダンパーによって、前記可動板が、前記固定座及びその上方構造と一体となって、上下動及び揺動を許容し吸収するように構成されていることを特徴とする碍子形遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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