説明

電力管理装置、電力管理プログラム、及び、電力分配システム

【課題】 実質的に二酸化炭素を排出することなく電動車両に対する充電を行わせることができる電力管理装置等を提供する。
【解決手段】 電力管理装置14は、電力系統から供給された系統電力が電動車両EVに充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、住宅の発電装置16から電動車両EVに発電電力が充電された場合にはカウンタ値を保持し、電動車両EVから分電盤11に放電したことに応じてカウンタ値を減算する。カウンタ値が所定の目標値となるまで電動車両EVから分電盤11に放電する。所定の目標値が零に設定され、全体動作制御部108は、カウンタ値が零となるまで電動車両EVから分電盤11に放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や電動車両で使用される電力を管理する電力管理装置、電力管理プログラム、及び、電力分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を搭載した住宅システムは、例えば特許文献1に記載された発明が知られている。この特許文献1には以下の動作が記載されている。予想太陽光発電量、車両用蓄電池の予想充電量を算出して、充電が必要な場合に太陽光発電を車両用蓄電池へ供給する。また、予想太陽光発電量の方が予想充電量より多い場合には、余剰電力を住宅負荷へ供給する。予想太陽光発電量が、予想充電量と住宅負荷を加算した電力量より大きい場合に、余剰電力を住宅用蓄電池へ供給する。さらに余剰電力がある場合に売電する。
【0003】
しかしながら、電気自動車が充電器に接続されているときに、太陽電池が十分に発電しているとは限らないために、系統電力を用いて充電する場合もある。これを回避するため、特許文献1は、住宅側にも蓄電池を搭載し、太陽電池の発電電力を一時的に住宅側蓄電池に充電した後、電気自動車が充電器に接続された際の充電電力を、住宅側蓄電池からの放電によって行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010―268576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように住宅側に蓄電池を備える方法では、電気自動車以外に高価な蓄電池を設置する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、実質的に系統電力を利用することなく電動車両に対する充電を行わせることができる電力管理装置、電力管理プログラム、及び、電力分配システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る電力管理装置は、電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、住宅の発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段と、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、前記カウンタ値が所定の目標値となるまで前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御する制御手段をさらに備えること特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様に係る電力管理装置は、上記第2の態様の電力管理装置に対し、前記所定の目標値が零に設定され、前記制御手段は、前記カウンタ値が零となるまで前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様に係る電力管理装置は、上記第2の態様の電力管理装置に対し、 前記電動車両の走行距離を取得する走行距離取得手段をさらに備え、前記系統電力の単位電力量当たりの二酸化炭素排出量を示す二酸化炭素排出係数と、目標となる前記電動車両の単位走行距離当たりの二酸化炭素排出量に対応したカウンタ値とが予め設定され、前記充電量積算手段は、前記系統電力の前記電動車両の蓄電池への充電量に前記二酸化炭素排出係数を乗算して得た値を前記走行距離取得手段により取得した走行距離で除算した値を、前記カウンタ値に加算し、前記制御手段は、目標となる前記電動車両の単位走行距離当たりの二酸化炭素排出量に対応したカウンタ値となるまで、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様に係る電力管理装置は、上記第2の態様の電力管理装置に対し、前記制御手段は、前記発電装置の翌日の発電電力量及び前記住宅の翌日の需要電力量の予測を行い、前記電動車両の蓄電池が満充電になると予測される場合にのみ、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の態様に係る電力管理装置は、上記第5の態様の電力管理装置に対し、前記制御手段は、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電する放電量の上限値を、前記発電装置の翌日の発電電力量から前記住宅の翌日の需要電力量を差し引いた余剰電力量とすることを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の態様に係る電力管理装置は、上記第5又は第6の態様の電力管理装置に対し、前記系統電力の単位電力量当たりの二酸化炭素排出量を示す二酸化炭素排出係数が予め設定され、前記制御手段は、前記二酸化炭素排出係数に前記充電電力量及び前記放電電力量を乗算した二酸化炭素排出量をカウンタ値とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の態様に係る電力管理装置は、上記第5又は第6の態様の電力管理装置に対し、前記系統電力の単位電力量当たりの電気料金を示す電力料金係数及び前記発電装置による発電電力の単位電力量当たりの売電料金を示す売電料金係数が予め設定され、前記発電電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じて当該発電電力に前記売電料金係数を乗算してカウンタ値を加算し、前記系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じて当該系統電力に前記電力料金係数を乗算してカウンタ値を加算することを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、前記カウンタ値又は前記カウンタ値に相当する情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、 前記充電量積算手段は、前記カウンタ値を、複数の電動車両に対する充電量に応じて加算し、前記放電量積算手段は、前記カウンタ値を、複数の電動車両に対する放電量に応じて減算することを特徴とする。
【0017】
本発明の第11の態様に係る電力管理プログラムは、電力管理装置に内蔵されたコンピュータによって実行される電力管理プログラムであって、前記コンピュータを、電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、住宅の発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段、として機能させる。
【0018】
本発明の第12の態様に係る電力管理プログラムは、電力を発電する発電部と、前記発電部により発電された発電電力、電力系統から供給された系統電力、電動車両の蓄電池により充放電された充放電電力とを分配する電力分配部と、前記電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、前記発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段と、前記電動車両の蓄電池から放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段とを含む電力管理部と、前記電力管理部により算出されたカウンタ値に基づいて、前記電力分配部の動作を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カウンタ値の加減により電動車両のための実質的に排出した二酸化炭素を提示でき、二酸化炭素を排出することなく電動車両に対する充電を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態として示す電力分配システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおける電力分配を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態として示す電力分配システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおける電力管理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態として示す電力分配システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおけるCO2排出係数を示す図である。
【図7】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおける次回の走行日時を示す図である。
【図8】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおけるCO2排出カウンタを示す図である。
【図9】本発明の実施形態として示す電力分配システムのシミュレーション結果としての電力量の変化を示す図である。
【図10】本発明の実施形態として示す電力分配システムのシミュレーション結果としての電動車両の充電量を示す図である。
【図11】本発明の実施形態として示す電力分配システムのシミュレーション結果としてのCO2排出カウンタ値を示す図である。
【図12】本発明の実施形態として示す電力分配システムのシミュレーション結果としてのCO2排出量を示す図である。
【図13】本発明の実施形態として示す電力分配システムの他の構成を示すブロック図である。
【図14】比較例としての回路構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施形態として示す電力分配システムにおける回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本発明の実施形態として示す電力分配システムは、例えば図1に示すように構成される。この電力分配システムは、電動車両EVが走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないものの、実際には系統電源から充電する際にCO2を排出している点に着目し、優先して太陽電池から充電し、不足分を系統電源から充電する。電力分配システムは、系統電源から電動車両EVに充電した場合には、この後に、太陽電池による充電電力を電動車両EVから住宅に放電する。これにより、電力分配システムは、実質的に、CO2排出量の収支をゼロ(±0)にするものである。
【0023】
この電力分配システムは、電力系統20に接続された住宅10と電動車両EVとを電力線で接続可能としたものである。住宅10には、分電盤11、複数の負荷機器12(1〜n)、充放電コンバータ13、電力管理装置14、通信部15、及び、発電装置16が配置されている。
【0024】
充放電コンバータ13は、電力ケーブルを介して電動車両EVと電気的に接続される。充放電コンバータ13は、電動車両EVと接続された場合に、電力管理装置14の制御に従って、当該電動車両EVとの間で電力を授受する。充放電コンバータ13は、DC−DC変換回路と、AC−DC変換回路とを含む。充放電コンバータ13は、住宅10に適した電圧と電動車両EVの蓄電池に適した電圧との間でAC/DC変換を行う。例えば、住宅10に適した電圧は100Vの交流電圧である。例えば、電動車両EVにおける蓄電池の充放電に適した電圧は300V〜400Vの直流電圧である。
【0025】
分電盤11は、負荷機器12、充放電コンバータ13、発電装置16、及び、電力系統20と接続されている。分電盤11は、分岐回路やリレー、ブレーカ等を備える。分電盤11は、電力系統20から供給された系統電力を分岐して、負荷機器12に供給する。また、分電盤11は、電動車両EVの蓄電池に対して充電を行う場合に、充放電コンバータ13に電力を供給する。更に、分電盤11は、電動車両EVの蓄電池から放電された電力が充放電コンバータ13を介して供給された場合、当該蓄電池から放電された電力を負荷機器12等に分岐する。更に、分電盤11は、発電装置16によって発電電力が生成された場合に、当該発電電力を負荷機器12や充放電コンバータ13に分岐することができる。なお、分電盤11は、発電装置16による発電電力を電力系統20に対して供給できてもよく、できなくてもよい。
【0026】
負荷機器12は、住宅10における各種の家電機器である。
【0027】
通信部15は、電力管理装置14及び電動車両EVと接続される。通信部15は、電動車両EVと住宅10との間で情報を送受信する。
【0028】
電力管理装置14は、負荷機器12と発電装置16と電力系統20と電動車両EVとの間で授受される電力を管理する。特に、この電力管理装置14は、電動車両EVにおいて電力系統20から供給された系統電力分をプラスカウントし、電動車両EVから放電した電力をマイナスカウントして、電動車両EVのカウンタ値(CO2排出カウンタ値)を“0”にする。
【0029】
図2に示すように、住宅10には、系統電源20aと接続され、当該系統電源20aから供給された系統電力P1が供給される。この系統電力P1は、分電盤11により分岐して、負荷機器12用の電力P2と、電動車両EV用の電力P3となる。このような系統電源20aから供給された電力は、電力系統20の稼働によって生じる二酸化炭素(CO2)分だけ、プラスカウントする。
【0030】
住宅10の発電装置16の発電電力は、分電盤11により分岐し、負荷機器12用の発電電力P4と、電動車両EV用の電力P5となる。この発電装置16により発電した電力は、その電力生成によってCO2が発生しないので、カウント値の変更はない。
【0031】
また、発電装置16の発電電力の一部電力P6は、分電盤11から分岐して、住宅10から電力系統20へ供給(売電)可能である。この電力系統20への供給電力は、電力系統20のCO2の発生を低減させるため、マイナスカウントできる。
【0032】
更に、電動車両EVから住宅10の負荷機器12への放電電力P7は、住宅10における必要電力を減らして電力系統20からの電力P3を低減させる結果として電力系統20のCO2の発生を低減させるため、マイナスカウントできる。
【0033】
このような電力分配システムは、住宅10と電動車両EVとの間で授受される電力を制御することによって、当該授受される電力に応じたCO2排出カウンタ値を調整する(制御手段)。電力分配システムは、当該CO2排出カウンタ値が所定の目標値となるまで電動車両EVの蓄電池から住宅10に放電するよう制御する。
【0034】
電力管理装置14は、CO2排出カウンタ値の所定の目標値を“0”に設定してもよい。この場合、電力管理装置14は、カウンタ値が零となるまで電動車両EVの蓄電池から住宅10に放電するよう制御する。また、電力管理装置14は、カウンタ値の所定の目標値を、電動車両EVの1kmの走行距離当たりのCO2量が目標値となるまで放電してもよい。
【0035】
このような電力分配システムにおける具体的な構成及び動作を図3に示す。
【0036】
図3に示す電力分配システムにおいて、電動車両EVが住宅10の駐車場に入庫すると、電動車両EVの蓄電池32を充電するために、電動車両EVとEV用充放電器13Aとが接続される。このEV用充放電器13Aは、上述した充放電コンバータ13と同様の機能を有する。なお、EV用充放電器13Aは、住宅10とは別体のEV用充放電器13Aによって構成されているが、充放電コンバータ13のように住宅10内に設置していてもよい。この状態において、住宅10と電動車両EVとは、通信線又は無線通信によって情報の授受が可能となる。
【0037】
EV用充放電器13Aは、電動車両EVが入庫したことに応じ、電動車両EVと接続状態が“オン状態”であることを示す接続情報を電力管理装置14に供給する(動作(1))。また、電動車両EVは、EV側コントローラ31によって、蓄電池情報を電力管理装置14に送信する。この蓄電池情報には、蓄電池32の電池残量、宅外充電量を含む。蓄電池32の電池残量は、例えば充電レベル(例えば、SOC:State Of Charge)が挙げられる。宅外充電量は、図示しない電気スタンドでの充電量である。
【0038】
また、この電力分配システムにおいては、スケジュール入力部14bによって、電動車両EVの利用スケジュールが登録される(動作(2))。この電動車両EVの利用スケジュールは、次に電動車両EVを利用する日時等である。スケジュール入力部14bは、ユーザが操作するインターフォン等と兼用したタッチパネルや、各種のリモコン、携帯電話、操作盤であってもよい。また、スケジュール入力部14bは、ユーザの電動車両EVの利用履歴に基づいて電動車両EVの利用パターンを推測するものであってもよい。
【0039】
電力管理装置14は、動作(1)において取得した接続情報、蓄電池情報、動作(2)によって入力した電動車両EVの利用スケジュールに基づいて、電動車両EVの蓄電池32に対する充電動作(動作(3)、(4))、又は、放電動作(動作(5))を行う。
【0040】
例えば翌日に電動車両EVが走行する場合、電力管理装置14は、系統電源20aから充電電力を取り出し、当該充電電力を蓄電池32に充電する(動作(3))。発電装置16によって発電して、余剰電力が発生している場合、電力管理装置14は、パワーコンディショナ16Aを介して、余剰電力によって電動車両EVの蓄電池32を充電する(動作(4))。このとき、電力管理装置14は、CO2排出カウンタをプラスカウントする。
【0041】
例えば翌日に電動車両EVが走行しない場合、電力管理装置14は、電動車両EVの蓄電池32からの放電電力を住宅10に供給する。このとき、電力管理装置14は、CO2排出カウンタをマイナスカウントする。
【0042】
電力管理装置14は、その機能的な構成が、図4のようになる。電力管理装置14は、第1電力取得部101、第2電力取得部102、第3電力取得部103、電力余剰判断部104を有する。また、電力管理装置14は、CO2排出量計算部105、CO2排出係数記憶部106、CO2排出量カウンタ107、全体動作制御部108、次回走行日時記憶部109、充放電制御部110を含む。この電力管理装置14は、記憶部や通信I/F回路、CPU及びプログラムを含むコンピュータであり、CPUがプログラムを実行する。これにより、電力管理装置14のプログラムは、後述するように、電力管理装置14のコンピュータに電力やCO2排出量の収支を管理する手順を実行させる。
【0043】
第1電力取得部101は、パワーコンディショナ16Aと分電盤11との間に設けられた発電電力センサ16aと接続されている。第1電力取得部101は、発電装置16の発電電力を取得する。
【0044】
第2電力取得部102は、分電盤11と負荷機器12との間に設けられた宅内使用電力センサ11aと接続されている。第2電力取得部102は、分電盤11から負荷機器12に取り出されている宅内使用電力を取得する。
【0045】
第3電力取得部103は、分電盤11とEV用充放電器13Aとの間に設けられた充放電電力センサ11bと接続されている。第3電力取得部103は、分電盤11とEV用充放電器13Aとの間で授受されている充放電電力を取得する。
【0046】
電力余剰判断部104は、第1電力取得部101により取得された発電電力と第2電力取得部102により取得された宅内使用電力との差を算出し、余剰電力量を判断する。
【0047】
CO2排出量計算部105は、第3電力取得部103により取得された充放電電力に基づいて電動車両EVのCO2排出量を計算する。CO2排出量計算部105は、充放電電力とCO2排出係数記憶部106によって記憶されているCO2排出係数とを乗算して、CO2排出量を計算する。
【0048】
CO2排出係数は、1kWhの電力量当たりのCO2排出量(kg)である。このCO2排出係数は、電力系統20によって電力を発生させている時間帯によって変動する。このCO2排出係数は、例えば、0.2や0.5といった値となる。
【0049】
CO2排出量計算部105は、分電盤11から充放電コンバータ13に系統電力が供給された場合に、当該系統電力に応じて電動車両EVのCO2排出量を増加させる。このとき、CO2排出量計算部105は、CO2排出量カウンタ107によってCO2排出カウンタ値をプラスカウントさせる。
【0050】
一方、CO2排出量計算部105は、EV用充放電器13Aから分電盤11に放電電力が供給された場合に、当該放電電力に応じて電動車両EVのCO2排出量を減少させる。このとき、CO2排出量計算部105は、CO2排出量カウンタ107によってCO2排出カウンタ値をマイナスカウントさせる。
【0051】
更に、CO2排出量計算部105は、電力余剰判断部104から余剰電力量が供給される。余剰電力が分電盤11からEV用充放電器13Aに供給されて電動車両EVを充電している場合、電力系統20のCO2排出は発生しない。したがって、CO2排出量計算部105は、余剰電力によって電動車両EVが充電されている場合、CO2排出量の増加を行わない。この結果、CO2排出量カウンタ107によるCO2排出カウンタ値の増加は行われない。
【0052】
このようなCO2排出量計算部105、CO2排出係数記憶部106、CO2排出量カウンタ107は、充電量積算手段、放電量積算手段として機能する。
【0053】
全体動作制御部108は、電力分配システムによる充放電動作の全体を制御する。この全体動作制御部108は、後述するフローチャートに示すような動作を行うことによって、CO2排出量の収支を所定の目標値となるように充放電を制御する。
【0054】
また、この電力分配システムにおいて、CO2排出カウンタ値又はCO2排出カウンタ値に相当するCO2排出量や電力量を表示する表示手段を備えていてもよい。これにより、CO2排出に関する情報をユーザに提示できる。
【0055】
次回走行日時記憶部109は、スケジュール入力部14bから次回の走行日時が供給され、記憶する。次回走行日時記憶部109は、全体動作制御部108の制御に応じて、次回の走行日時情報が読み出される。
【0056】
充放電制御部110は、全体動作制御部108の制御に従って、EV用充放電器13Aに充放電制御信号を供給する。
【0057】
つぎに、上述した電力管理装置14によって電動車両EVによるCO2排出量の収支を所定の目標値となるように充放電制御する動作する手順について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、この動作においては、図6に示すようなCO2排出係数、図7に示すような次回の走行日時、図8に示すようなCO2排出カウンタ値が設定されているものとする。
【0058】
この動作は、電動車両EVが住宅10に接続されたことを検出したことに応じて、ステップS1が開始される。ステップS1において、電力管理装置14は、全体動作制御部108によって、翌日に電動車両EVが走行しないか否かを判定する。翌日に電動車両EVが走行する場合にはステップS3に処理を進め、そうでない場合にはステップS2に処理を進める。このとき、全体動作制御部108は、スケジュール入力部14bの入力によって次回走行日時記憶部109に記憶された次回の走行日時を読み出す。この次回の走行日時は、例えば図7のようになる。
【0059】
通常、発電電力の余剰のよる電動車両EVの蓄電池32に対する充電ができない場合に、系統電力によって充電を行う時間帯は、予め決められている。このステップS1における翌日とは、上記の予め決められている通常充電時間帯を挟み、当該通常充電時間帯の終了時刻以降に出庫する場合を意味している。
【0060】
次のステップS2においては、電動車両EVを放電させず、電動車両EVの出庫時刻までに、電動車両EVの蓄電池32が所定の目標値となるまで充電を行う。このとき、充放電制御部110は、電動車両EVに充電を行う充放電制御信号をEV用充放電器13Aに供給する。EV用充放電器13Aは、充放電制御信号に応じて分電盤11から系統電力を取り出して、電動車両EVに供給する。また、発電電力から宅内使用電力を差し引いた余剰電力を求める。充電電力が余剰電力で賄えない場合、系統電力を分電盤11からEV用充放電器13Aに供給する。
【0061】
このとき、第3電力取得部103は、充放電電力センサ11bによって分電盤11からEV用充放電器13Aに供給される充放電電力を検出する。CO2排出量計算部105は、検出された充放電電力に対してCO2排出係数を乗算してCO2排出量を計算し、CO2排出量カウンタ107のCO2排出カウンタ値を増加させる。このCO2排出係数は、例えば図6のようなテーブルがCO2排出係数記憶部106に記憶されている。また、CO2排出量カウンタ107は、図8に示すような値が格納されている。
【0062】
なお、このステップS2は、電動車両EVの出庫時刻まで通常充電時間帯の間で充電できるのであれば、通常充電時間帯の開始時刻まで待機し、充電を行う。電動車両EVが出庫するまでに充電が完了しない場合には、通常充電時間帯の開始時刻以前に充電を行なってもよい。このとき、充電電力には系統電力を利用しているので、第3電力取得部103により取得した充電電力にCO2排出係数を乗算してCO2排出量を計算し、CO2排出量を計算してCO2排出カウンタ値をさらに積算することとなる。
【0063】
また、ステップS2において、電動車両EVの出庫時刻までの期間における発電電力の余剰電力分の予測を行い、可能な限り発電電力を使って充電できるように充電スケジュールを設定してもよい。このため、全体動作制御部108には、発電電力と宅内使用電力を予測する発電量・宅内電力負荷予測部14aという機能を追加する。
【0064】
更に、ステップS2において、電動車両EVの蓄電池32を系統電力で充電すると同時に、発電装置16による発電が行われている場合、充電電力から発電電力を差し引いた電力についてのみ系統電力を使用してもよい。このとき、電力管理装置14は、系統電力の使用分のみCO2を排出しているとみなして、CO2排出量を計算してCO2排出カウンタ値を更新する。
【0065】
ステップS3において、全体動作制御部108は、電力余剰判断部104からの余剰電力量に基づいて、現在に発電電力の余剰があるか否かを判定する。この発電電力の余剰電力は、第1電力取得部101により取得した発電電力と第2電力取得部102により検出した宅内使用電力との差によって電力余剰判断部104によって判断される。
【0066】
発電装置16が発電している最中であって、発電電力が住宅10の負荷機器12の電力よりも上回っている場合、電力余剰判断部104は、発電電力に余剰があると判断する。一方、発電装置16が発電していない場合や、発電電力が住宅10の負荷機器12の電力よりも下回っている場合、電力余剰判断部104は、発電電力に余剰がないと判断する。発電電力に余剰がある場合にはステップS4に処理を進め、発電電力に余剰がない場合にはステップS5に処理を進める。
【0067】
ステップS4においては、発電余剰電力と同じ大きさの電力で電動車両EVを充電する。このとき、充放電制御部110は、発電電力の余剰分を電動車両EVに充電する充放電制御信号をEV用充放電器13Aに供給する。EV用充放電器13Aは、発電電力の余剰分を分電盤11から取り出して、電動車両EVに充電する。このとき、電力管理装置14は、系統電力を使用していなく、電動車両EVから放電をしている状態ではないので、CO2排出カウンタ値の更新は行わない。
【0068】
ステップS5〜ステップS10は、電動車両EVの蓄電池32の放電によって、電動車両EVが消費する電力のCO2排出分をマイナスにするための動作である。
【0069】
ステップS5において、全体動作制御部108は、電動車両EVの電池残量が所定の値以上あるか否かを判定する。この電動車両EVの電池残量の所定値は、スケジュールが変更されて、急にユーザが電動車両EVを利用する場合においても、走行可能な電池残量が設定されている。
【0070】
このとき、全体動作制御部108は、電動車両EVから蓄電池情報としての電池残量を取得する。電池残量が所定値以上の場合にはステップS6に処理を進め、そうでない場合にはステップS1に処理を戻して、電動車両EVの蓄電池32の充放電をしない。
【0071】
ステップS6において、電力管理装置14は、所定時刻における翌日の発電余剰電力量を計算する。このとき、発電量・宅内電力負荷予測部14aによって、発電装置16の発電電力量及び宅内使用電力量を予測する。そして、全体動作制御部108は、予測された発電電力量から宅内使用電力を差し引いた発電電力の余剰電力量を計算する。
【0072】
このとき、発電量・宅内電力負荷予測部14aは、発電装置16による発電電力の実績値と宅内使用電力の実績値を常に参照しながら、外部から天気予報を取得し、各予測値の時系列情報を出力する。
【0073】
次のステップS7において、全体動作制御部108は、ステップS7にて計算された翌日の余剰電力量が、電動車両EVの蓄電池32の空き容量よりも大きいか否かを判定する。これにより、翌日に発生する余剰電力を電動車両EVに全て充電可能であるかの判定を行う。電動車両EVの蓄電池32の空き容量の方が大きい場合にはステップS8に処理を進め、そうでない場合には電動車両EVの放電を行わない。
【0074】
ステップS8において、全体動作制御部108は、CO2排出量カウンタ107を参照して、CO2排出カウンタ値がプラス(正値)であるか否かを判定する。これにより、電動車両EVから放電を行うべきか否かを判断する。CO2排出カウンタ値がプラスである場合にはステップS9に処理を進め、そうでない場合には電動車両EVの放電を行わない。
【0075】
ステップS9において、全体動作制御部108は、電動車両EVから住宅10に放電を行うと共にCO2排出カウンタ値をマイナスさせる。このとき、全体動作制御部108は、充放電制御部110を制御して、充放電制御部110からEV用充放電器13Aに、電動車両EVから放電する充放電制御信号を出力させる。これに応じ、EV用充放電器13Aは、電動車両EVの蓄電池32から電力を放電させ、分電盤11に供給する。また、第3電力取得部103は、EV用充放電器13Aから分電盤11への放電電力を、充放電電力センサ11bを介して取得する。CO2排出量計算部105は、放電電力にCO2排出係数を乗算してCO2減算量を計算し、CO2排出カウンタ値をマイナスさせる。
【0076】
次のステップS10において、電力管理装置14は、電動車両EVの蓄電池32から住宅10に対する放電電力量が、ステップS6にて計算された余剰電力量以上に達したか否かを判定する。電動車両EVからの放電電力量が余剰電力量以上に達していない場合にはステップS8からの動作を繰り返す。電動車両EVからの放電電力量が余剰電力量以上に達した場合には電動車両EVの蓄電池32の放電を停止して、ステップS1に処理を戻す。これにより、電動車両EVから放電する放電量の上限値を、発電電力の余剰分とする。電動車両EVからの放電によってCO2排出カウンタ値が“0”となった場合には、ステップS8からステップS1に処理を戻し、電動車両EVからの放電を停止する。
【0077】
なお、このステップS6においては、翌日の余剰電力量で判断するとしたが、次回の走行日時までの複数日に亘る余剰電力量を演算してもよい。この場合、次回走行時までの複数日にわたって発電量・宅内電力負荷予測部14aが余剰電力を計算し、十分に電動車両EVの蓄電池32を満充電にできると判断した場合には、電池残量が所定の目標値よりも低い場合でも、電動車両EVから放電を行ってもよい。例えば発電電力が少ない日(曇りの日)の夕方に電動車両EVから放電することによって、系統電力の利用ピークを減少させる効果がある。なお、このような制御を、外部の系統電力監視システムからの指令によって行なってもよい。
【0078】
また、上述した動作においては、CO2排出量に代えて、単に電力量で制御を行っても良い。これは、時間帯によってCO2排出係数が変わらない場合には、電動車両EVにより電力量の収支を0にすることと効果が変わらないためである。
【0079】
以上のように、この電力分配システムによれば、ステップS2のように、電力系統から供給された系統電力が電動車両EVに充電されたことに応じてCO2排出カウンタ値を加算する。また、この電力分配システムは、ステップS4のように、住宅10から電動車両EVに発電電力が充電された場合にはCO2排出カウンタ値を保持する。これにより、充電量積算手段を実現する。また、この電力分配システムによれば、ステップS9のように、電動車両EVから住宅10に放電したことに応じてCO2排出カウンタ値を減算する放電量積算手段を実現する。
【0080】
また、この電力分配システムによれば、ステップS8〜S10のように、CO2排出カウンタ値が所定の目標値となるまで電動車両EVから住宅10に放電するよう制御する制御手段を実現する。
【0081】
更に、この電力分配システムによれば、ステップS8のように、CO2排出カウンタ値の所定の目標値を零に設定しておき、CO2排出カウンタ値が零となるまで電動車両EVから住宅10に放電する。
【0082】
このような電力分配システムによれば、住宅10側に大きな蓄電池を備えることなく、実質的に二酸化炭素を排出することなく電動車両EVに対する充電を行うことができる。また、この電力分配システムによれば、電動車両EVへの充電をCO2の排出なしに行うことができる。
【0083】
このように動作する電力分配システムによるシミュレーション結果を、図9乃至図12に示す。
【0084】
このシミュレーション結果は、図10に示すように、電動車両EVの蓄電池32が満充電に近い状態において、電動車両EVの走行時間帯、通常充電時間帯、電動車両EVの走行時間帯があり、その後に、使用する予定がない状況において演算された結果である。具体的には、このシミュレーション結果は、8日間の充放電の様子を示しており、1日目、2日目、8日目に電動車両EVが走行している。
【0085】
図9は、発電電力(PV)使用量、売却電力、EV放電電力、宅内使用電力としての負荷電力、購入電力である系統電力、EV充電電力、発電電力であるPV発電量の変化を示す。図10は、電動車両EVの蓄電池32の充電量の変化を示す。図11は、CO2排出カウンタ値の変化を示す。
【0086】
図9によれば、走行時間帯後の期間T1においては、その後に更に走行時間帯があるため、住宅10から電動車両EVの蓄電池32に対して系統電力による充電が行われた(EV充電動作(1))。このため、図10の期間T1に示すように、通常充電時間帯において電動車両EVの蓄電池32の充電量は満充電となる。図11の期間T1に示すように、通常充電時間帯は深夜に設定されているため、系統電力を電動車両EVに充電することに応じてCO2排出カウンタ値はプラスカウントされる。
【0087】
電動車両EVへの充電後の走行時間帯後に、電動車両EVが住宅10に接続されると、電力分配システムは、翌日の走行予定がない。このため、図10に示すように、当該翌日の発電電力において発電電力の余剰分がある期間T2に、電動車両EVへの充電動作(2)を行う。この電動車両EVへの充電動作(2)により、図10の電動車両EVの充電量は、増加する。図11のCO2排出カウンタ値は、変化しない。
【0088】
図9に示す期間T3は、発電電力の余剰分が少ないが電動車両EVへの充電動作(3)が行われる。図10に示す電動車両EVの充電量の増加はわずかなものとなる。図11のCO2排出カウンタ値は、変化しない。
【0089】
図9に示す期間T4は、発電電力の余剰分が大きく、当該発電電力の余剰分によって電動車両EVへの充電動作(4)が行われる。この結果、図10の電動車両EVの充電量は満充電に近くなる。図11のCO2排出カウンタ値は、変化しない。
【0090】
図9に示す期間T5となると、期間T4の充電によって電動車両EVの蓄電池32の空き容量が少なく、翌日の発電電力の余剰分が大きくなることが予想された結果、電動車両EVから住宅10への放電動作(1)が行われる。図10の電動車両EVの充電量は、発電電力の余剰分だけ減少する。図11のCO2排出カウンタ値は、この放電動作(1)によって減少するが、所定の目標値としての“0”には達していない。
【0091】
図9に示す期間T6となると、発電電力の余剰分が大きく、当該発電電力の余剰分によって電動車両EVへの充電動作(5)が行われる。この結果、図10の電動車両EVの充電量は満充電に近くなる。図11のCO2排出カウンタ値は、変化しない。
【0092】
図9に示す期間T7となると、期間T6の充電によって電動車両EVの蓄電池32の空き容量が少なく、翌日の発電電力の余剰分が大きくなることが予想された結果、電動車両EVから住宅10への放電動作(2)が行われる。この放電動作(2)によって、図10に示す電動車両EVの充電量及び図11のCO2排出カウンタ値が減少する。翌日の発電電力の余剰分を放電するよりも、CO2排出カウンタ値が“0”となる方が先となったので、放電動作(2)は終了する。
【0093】
図9に示す期間T8となると、発電電力の余剰分が大きく、当該発電電力の余剰分によって電動車両EVへの充電動作(6)が行われる。この結果、図10の電動車両EVの充電量は満充電に近くなる。図11のCO2排出カウンタ値は、変化しない。
【0094】
以上のように、この電力分配システムによれば、図5の動作を行うことによって、CO2排出カウンタ値が所定の目標値としての“0”となるよう電動車両EVへの充放電動作を制御できる。
【0095】
また、図12に、発電装置16のサイズ[kWh]を変化させた場合のシミュレーション結果を示す。
【0096】
発電装置16が小さい場合、夜間のみ電力系統20から住宅10へ充電した場合、発電装置16の余剰電力を住宅10に充電した場合、発電装置16の余剰電力と電動車両EVの放電電力を使用した場合では共に、年間のCO2排出量は、3.0トンを超える。
【0097】
発電装置16のサイズが5000kWhの場合、夜間のみ電力系統20から住宅10へ充電した場合及び発電装置16の余剰電力を住宅10に充電した場合には、年間のCO2排出量は1.5トン程度となる。発電装置16の余剰電力と電動車両EVの放電電力を使用した場合では年間のCO2排出量は、1.5トンを超える。
【0098】
発電装置16のサイズが10000kWhの場合、発電装置16の発電電力によって住宅10における宅内使用電力が全て賄え、CO2排出量はマイナスとなる。
【0099】
一方、電動車両EVへの充電動作を夜間充電のみに設定すると、発電装置16は使用できないため発電装置16のサイズに依存せず、年間のCO2排出量は0.5トン程度となる。発電装置16の余剰電力のみを電動車両EVに充電すると、発電装置16のサイズが年間で5000kWh、10000kWhとなっても、CO2排出量は0にはならない。しかし、図5のフローチャートに従って発電装置16の余剰電力を電動車両EVに充電する動作と、電動車両EVの電力を住宅10に放電する動作を組み合わせることによって、電動車両EVにおけるCO2排出量の収支をプラスマイナスで“0”にできる。
【0100】
更に、この電力分配システムは、CO2排出カウンタ値の目標値を“0”以外に設定することができる。例えば、電動車両EVの1kmの走行距離当たりのCO2量が目標値となるまで放電してもよい。
【0101】
この場合、電力管理装置14は、電動車両EVの走行距離を取得する走行距離取得手段をさらに備える。電力管理装置14は、電動車両EVとの間の通信によって電動車両EVの走行距離を取得する。そして、電力管理装置14は、上述したように系統電力の単位電力量当たりのCO2排出量を示すCO2排出係数と、目標となる電動車両EVの単位走行距離当たりのCO2排出量に対応したCO2排出カウンタ値とを予め設定しておく。この状態で、電力管理装置14は、系統電力の電動車両EVへの充電量にCO2排出係数を乗算して得た値を走行距離で除算した値を、CO2排出カウンタ値に加算する。一方、電力管理装置14は、目標となる電動車両EVの単位走行距離当たりのCO2排出量に対応したCO2排出カウンタ値となるまで、電動車両EVから住宅10に放電するよう制御する。
【0102】
これにより、電力分配システムは、CO2排出量を“0”まではしなくても、電動車両EVが走行する距離当たりのCO2排出量を低減するよう動作できる。
【0103】
つぎに、上述した電力分配システムの他の形態について説明する。
【0104】
この電力分配システムは、図13に示すように、複数の電動車両EV1,・・・,EVnを備えていてもよい。複数の電動車両EVは、EV用充放電器13Aに接続されている。この電力分配システムにおいて、電力管理装置14は、CO2排出カウンタ値を、複数の電動車両EVに対する充電量に応じて加算し、複数の電動車両EVに対する放電量に応じて減算する。そして、電力管理装置14は、各電動車両EVのCO2排出量を合算し、総合したCO2排出量が“0”になるように制御を行う。
【0105】
このような電力分配システムは、電力管理装置14が、通信等を介して各電動車両EVを識別する。電力管理装置14は、各電動車両EVに対応する複数のCO2排出カウンタ値を有し、各CO2排出カウンタ値の記憶しているCO2排出量を合算する。これにより、この電力分配システムは、複数の電動車両EVを通じてCO2排出量を所定の目標値にすることができる。
【0106】
なお、翌日の発電電力の余剰分を充電できるかどうかの判断は、複数の電動車両EVのスケジュールを参照して、複数台の電動車両EVに充電できると判断してもよい。また、EV用充放電器13Aは、複数の充電ポートを有し、複数台に同時に充放電できる構成としてもよい。このとき、各電動車両EVへの充放電力の計測は、センサ及び電力管理装置14に代えて、EV用充放電器13Aが行うとしてもよい。
【0107】
更に、複数の電動車両EVが存在し、各電動車両EVのCO2排出量を合算した総合的なCO2排出量がゼロになるように制御を行う場合に、充放電量の少ない電動車両EVを優先して放電動作を行わせてもよい。これにより、電動車両EVの蓄電池劣化を抑制する。
【0108】
更にまた、充放電動作による蓄電池32の劣化を抑制するために、電動車両EVのトータルの充電量(生産されてから充電電力の積算値)が所定の値を超えた電動車両EVでは放電動作を禁止してもよい。また、各電動車両EVのトータルの充電量の比を計算して、所定値よりも比が大きくなった場合には、トータルの充電量の大きい電動車両EVには放電動作を行わせないなどの制御を行ってもよい。これにより、電動車両EVの放電動作による蓄電池の劣化が過度に進まないようにする。
【0109】
なお、トータルの充電量に代えて、放電量の積算値としてもよい。これにより、住宅10への放電動作による劣化を、各電動車両EVで均等に負担することができる。また、トータルの充電量に代えて、トータルの充電量と積算走行距離との比としてもよい。これは、住宅10への放電動作による劣化が、電動車両EVの走行距離に応じて劣化するためである。
【0110】
また、上述した実施形態では、一軒の住宅10に一台の電力管理装置14でCO2排出量の管理と充放電制御を行う例を示したが、複数の住宅10にまたがって、複数の電動車両EVのCO2排出量を合算して制御を行なっても良い。これは、家族が複数の場所に離れて居住しているが、電動車両EVを共有していたり、お互いの家を行き来して電動車両EVの充電を行う際でも、複数台でCO2排出量を0に調整できる。さらに、例えば同一車種の電動車両EVのオーナーグループなどで、共同してCO2排出量を0に調整したり、その場合に特にCO2削減に貢献したユーザに景品などのインセンティブを与えたりしてもよい。
【0111】
また、電力分配システムは、ユーザが住宅10以外の場所で充電を行った際のCO2排出を加味して本制御を行ってもよい。この電力分配システムは、住宅10外で充電した場合の充電電力を積算しておき、住宅10側に電動車両EVから通知する。電動車両EVが充放電器に接続された際に、住宅外充電時におけるCO2排出量を排出量カウンタに積算する。
【0112】
つぎに、上述した電力分配システムにおいて、図14に示すパワーコンディショナ16A、分電盤11、EV用充放電器13Aの一般的な回路構成に代えて、図15に示すように構成することが望ましい。
【0113】
図15は、パワーコンディショナ16AのDC/DCコンバータ161とDC/ACコンバータ162との間に、EV用充放電器13A、電動車両EVの蓄電池32を接続している。DC/DCコンバータ161は、発電電力を住宅10用の電圧に変換して、EV用充放電器13Aに供給する。EV用充放電器13Aの双方向DC/DCコンバータ132は、住宅10用の電圧を充電用の電圧に昇圧して、電動車両EVの蓄電池32に供給する。双方向DC/DCコンバータ132は、電動車両EVの放電電力の電圧を、住宅10用の電圧に降圧して、パワーコンディショナ16AのDC/ACコンバータ162に供給する。
【0114】
このような構成により、発電装置16の発電電力は、DC/DCコンバータ161、双方向DC/DCコンバータ132を介して電動車両EVに充電できる。一方、電動車両EVの放電電力は、双方向DC/DCコンバータ132、DC/ACコンバータ162を介して分電盤11に供給できる。
【0115】
一方、比較例としての図14の構成では、発電装置16の発電電力は、DC/DCコンバータ161、DC/ACコンバータ162によって住宅10用の交流電力に変換されて、分電盤11に供給される。その後に、電動車両EVへの充電電力は、EV用充放電器13Aの双方向DC/ACコンバータ131によって直流電力に変換され、双方向DC/DCコンバータ132によって昇圧されて、電動車両EVに充電される。一方、電動車両EVからの放電電力は、双方向DC/DCコンバータ132によって住宅10用に降圧され、双方向DC/ACコンバータ131によって交流電力に変換されて、分電盤11に供給される。
【0116】
このように、電力分配システムは、発電装置16の直流電力を分電盤11を介さずに直接的にEV用充放電器13Aに供給する回路構成に変更することで、電動車両EVの充放電に要する電力ロスを削減する。
【0117】
系統電力を用いて電動車両EVに充電を行う場合には、図14,図15の両構成ともに双方向DC/ACコンバータと双方向DC/DCコンバータを介して充電を行うので、電力回路における損失は変わらない。しかし、発電装置16の発電余剰電力を用いて電動車両EVに充電を行う場合には、図14では一旦交流電力に変換してからさらに直流電力に変換する際に電力ロスを生じる。これに対し、図15の構成例では、電力ロスが少ない。
【0118】
このように、図5のように発電装置16の発電時における余剰電力によって電動車両EVの充電を行う電力分配システムによれば、高効率に電力変換を行うことができる。
【0119】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0120】
本実施形態では、電動車両EVの充放電電力に対してCO2排出係数を乗算してCO2排出量を演算して、CO2排出カウンタ値を増減させたが、CO2排出量以外の指標を用いてもよい。例えば、CO2排出係数に代えて、電気料金単価を、カウンタ値を変更する指標にしてもよい。この場合、電力管理装置14は、電動車両EVに系統電力を充電した場合には充電電力に電気料金単価を乗算して電気料金を求め、カウンタ値を増加させる。一方、電力管理装置14は、住宅10から電動車両EVに電力を放電した場合には放電電力に電気料金単価を乗算して電気料金を求め、カウンタ値を減少させる。
【0121】
また、太陽光発電装置といった発電装置16による余剰電力分を電動車両EVに充電する場合には売電単価を用い、余剰電力分以上に電動車両EVに充電する場合には超過した電力に電気料金単価を用いる。発電装置16によって発電がなされていない場合には、電気料金単価を用いる。これにより、発電電力が電動車両EVに充電されたことに応じて当該発電電力に売電料金係数を乗算してカウンタ値を加算できる。また、系統電力が電動車両EVに充電されたことに応じて当該系統電力に電力料金係数を乗算してカウンタ値を加算できる。
【符号の説明】
【0122】
EV 電動車両
10 住宅
11 分電盤(電力分配部)
13 充放電コンバータ(電力分配部)
13A EV用充放電器(電力分配部)
14 電力管理装置(充電量積算手段、放電量積算手段、走行距離取得手段、電力管理部)
16 発電装置(発電部)
32 蓄電池
105 CO2排出量計算部(充電量積算手段、放電量積算手段)
106 CO2排出係数記憶部(充電量積算手段、放電量積算手段)
107 CO2排出量カウンタ(充電量積算手段、放電量積算手段)
108 全体動作制御部
110 充放電制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、住宅の発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段と、
前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段と
を備えることを特徴とする電力管理装置。
【請求項2】
前記カウンタ値が所定の目標値となるまで前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御する制御手段をさらに備えること特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記所定の目標値が零に設定され、
前記制御手段は、前記カウンタ値が零となるまで前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記電動車両の走行距離を取得する走行距離取得手段をさらに備え、
前記系統電力の単位電力量当たりの二酸化炭素排出量を示す二酸化炭素排出係数と、目標となる前記電動車両の単位走行距離当たりの二酸化炭素排出量に対応したカウンタ値とが予め設定され、
前記充電量積算手段は、前記系統電力の前記電動車両の蓄電池への充電量に前記二酸化炭素排出係数を乗算して得た値を前記走行距離取得手段により取得した走行距離で除算した値を、前記カウンタ値に加算し、
前記制御手段は、目標となる前記電動車両の単位走行距離当たりの二酸化炭素排出量に対応したカウンタ値となるまで、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発電装置の翌日の発電電力量及び前記住宅の翌日の需要電力量の予測を行い、前記電動車両の蓄電池が満充電になると予測される場合にのみ、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電するよう制御することを特徴とする請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電する放電量の上限値を、前記発電装置の翌日の発電電力量から前記住宅の翌日の需要電力量を差し引いた余剰電力量とすることを特徴とする請求項5に記載の電力管理装置。
【請求項7】
前記系統電力の単位電力量当たりの二酸化炭素排出量を示す二酸化炭素排出係数が予め設定され、
前記二酸化炭素排出係数に前記充電電力量及び前記放電電力量を乗算した二酸化炭素排出量をカウンタ値とすることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電力管理装置。
【請求項8】
前記系統電力の単位電力量当たりの電気料金を示す電力料金係数及び前記発電装置による発電電力の単位電力量当たりの売電料金を示す売電料金係数が予め設定され、
前記発電電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じて当該発電電力に前記売電料金係数を乗算してカウンタ値を加算し、前記系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じて当該系統電力に前記電力料金係数を乗算してカウンタ値を加算することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電力管理装置。
【請求項9】
前記カウンタ値又は前記カウンタ値に相当する情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項10】
前記充電量積算手段は、前記カウンタ値を、複数の電動車両に対する充電量に応じて加算し、
前記放電量積算手段は、前記カウンタ値を、複数の電動車両に対する放電量に応じて減算すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項11】
電力管理装置に内蔵されたコンピュータによって実行される電力管理プログラムであって、前記コンピュータを、
電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、住宅の発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段、
前記電動車両の蓄電池から前記住宅に放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段、
として機能させるための電力管理プログラム。
【請求項12】
電力を発電する発電部と、
前記発電部により発電された発電電力、電力系統から供給された系統電力、電動車両の蓄電池により充放電された充放電電力とを分配する電力分配部と、
前記電力系統から供給された系統電力が電動車両の蓄電池に充電されたことに応じてカウンタ値を加算し、前記発電装置から前記電動車両の蓄電池に発電電力が充電された場合には前記カウンタ値を保持する充電量積算手段と、前記電動車両の蓄電池から放電したことに応じて前記カウンタ値を減算する放電量積算手段とを含む電力管理部と、
前記電力管理部により算出されたカウンタ値に基づいて、前記電力分配部の動作を制御する制御部と
を備えることを特徴とする電力分配システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−110881(P2013−110881A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254883(P2011−254883)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】