電力系統負荷周波数制御システム及びプログラム
【課題】発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制する。
【解決手段】実施形態の地域要求電力配分手段は、時間幅調整手段を備えている。前記時間幅調整手段は、前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出する。前記時間幅調整手段は、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。前記時間幅調整手段は、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【解決手段】実施形態の地域要求電力配分手段は、時間幅調整手段を備えている。前記時間幅調整手段は、前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出する。前記時間幅調整手段は、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。前記時間幅調整手段は、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統負荷周波数制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の需要(負荷)は、季節的・時間的・瞬間的に時々刻々絶えず変動している。電力系統の負荷変動は、変化幅の小さい種々の振動と周期を持った脈動成分や、不規則な変動成分が重畳したものと考えられる。負荷変動の成分は、数分周期までの微小変動分のサイクリック分と、数分から10数分程度までの短周期変動分のフリンジ分と、10数分以上の長周期変動分のサステンド分との3成分に主に分けられる。
【0003】
サイクリック分のような極めて短周期の成分は系統の負荷特性より、また、それ以上の数分程度の周期変動の成分はガバナフリー運転する発電所の調速機の特性を適正にすれば、自動的に調整される。それ以上の長い周期成分は、電力会社の中央給電指令所において、それぞれの周期成分を対象とした制御分担が行われている。
【0004】
フリンジ分のような変動周期が10数分までの負荷変動は、サイクリック分に比べ変動量が大きいため、ガバナフリー運転だけでは調整しきれない。このため、負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)により、周波数偏差、電力変動量を検出して発電機の出力を調整する。
【0005】
変動周期がそれ以上の長い負荷変動のサステンド分は、負荷変動がかなり大きく、1日の負荷曲線によって支配される変化の一部と考えることができる。このように大きな負荷変動をもつサステンド分を調整する場合、負荷周波数制御だけでは発電所の出力変化能力が不足したり、発電所間の経済的な負荷配分が問題となってくる。このため、サステンド分のような長周期の負荷変動に対しては、発電所の経済運用が主体となり、経済負荷配分制御(ELD:Economic Load Dispatch)による給電調整を行う。
【0006】
これらの負荷周波数制御システム、ならびに経済負荷配分制御システムは、電力会社における中央給電指令所の最重要機能である。各システムの最大の目的は、負荷周波数制御(LFC)においては連系線潮流、系統周波数を一定に維持することであり、経済負荷配分制御(ELD)においては最経済となるような運用計画を行うことである。
【0007】
負荷周波数制御(LFC)は、中央給電指令所にて系統の周波数や他系統との連系線潮流の変化に応じて各発電機(発電ユニット)の出力調整の指令を行う。この出力調整の指令は全ての発電ユニットのうち、速い出力変動を行っても問題とならない石油焚き火力発電ユニットや水力ユニットには出される。また、出力調整の指令は、原子力ユニットや石炭焚き火力ユニット、更には運用上の理由で出力変動を避けたい発電ユニットには一般的に出されない。
【0008】
負荷周波数制御(LFC)では、このように中央給電指令所から指令が出されるため、実際に出力が変化するまでには、通常、数十秒程度の遅れがある。
【0009】
負荷周波数制御(LFC)は、主に、定周波数制御(FFC:Flat Frequency Control)、定連系電力制御(FTC:Flat Tie line Control)及び周波数バイアス連系線電力制御(TBC:Tie line Bias Control)の3方式に分けることができる。
【0010】
定周波数制御(FFC)は、周波数変化量(ΔF)を検出して、これを少なくするように発電機の出力を調整し、系統周波数のみを規定値に保とうとする方式である。
【0011】
定連系電力制御(FTC)は、連系線潮流変化量(ΔPT)を検出して、これを少なくするように発電機の出力を調整し、連系線潮流のみを規定値に保とうとする方式である。
【0012】
周波数バイアス連系線電力制御(TBC)は、周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とを検出し、これらから地域要求電力(AR)を算出し、その量に応じて発電機の出力を調整する方式である。
【0013】
以下、日本の殆どの電力会社にて行われている周波数バイアス連系線電力制御(TBC)の一例を説明する。
【0014】
周波数バイアス連系線電力制御(TBC)は、各電力会社の中央給電指令所から、各発電機に対して出力調整のために発電機指令を行う方式であり、以下の手順[1]〜[6]にて行われている。
【0015】
[1]周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とに基づいて、地域要求電力(AR)を(1)式に示すように算出する。
【0016】
AR=−K・ΔF+ΔPT ・・・・・(1)
ここで、K:系統定数、 ΔPT:自系統に流入する潮流がプラス方向。
【0017】
なお、地域要求電力(AR)が正の値のとき、系統全体として発電機の出力を上げる必要がある。また、地域要求電力(AR)が負の値のとき、系統全体として発電機の出力を下げる必要がある。
【0018】
[2]地域要求電力(AR)をフィルタリングする際には、過去の地域要求電力(AR)を用いて指数平滑等によるフィルタリングを行い、地域要求電力(AR)を低速機(例、出力変化速度の遅い火力機)と高速機(例、出力変化速度の速い水力機)にて分担する。なお、フィルタリングする方法に代えて、地域要求電力(AR)を周波数分解し、短い周期成分を低速機に分担させ、長い周期成分を高速機に分担させる方法を用いてもよい。
【0019】
[3]フィルタリング、または周波数分解した地域要求電力(AR)を各発電機へ配分する際には、低速機、高速機別に負荷周波数制御が行われている全ての発電機に対して、その発電機の出力変化速度比あるいは、出力余裕比等にて配分する。
【0020】
[4]各発電機の目標指令値は、配分された地域要求電力(AR)と、経済負荷配分制御(ELD)にて時間毎に算出されたELD値とを足し合わせる等の演算により算出される。また、目標指令値には、ある基準値以上を逸脱しないように上下限値が設けられている場合もある。
【0021】
[5]各発電機は、中央給電指令所から受けた目標指令値に応じて出力を調整する。その結果、系統周波数、並びに連系線潮流が変化し、周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)が生じる。
【0022】
[6]手順[1]に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特許第3930218号公報
【特許文献2】特開2007−306770号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「電力システム工学」 丸善 ISBN4-621-04636-5(P104)
【非特許文献2】「電気工学ハンドブック」 電気学会 ISBN4-88686-012-5(P970〜P975)
【非特許文献3】電気学会技術報告第869号 「電力系統における常時及び緊急時の負荷周波数制御」 電気学会 電力・エネルギー部門 電力系統技術委員会(P133〜P141)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、以上のような負荷周波数制御(LFC)は、通常は何の問題もないが、本発明者の検討によれば、場合によっては地域要求電力(AR)の配分残が生じる可能性があることから、この配分残の発生を抑制し得るように改良の余地がある。
【0026】
例えば、上記手順[3]において、フィルタリング、または周波数分解した地域要求電力(AR)を各発電機に配分するが、LFCの対象となる発電機台数が少ない場合や、それらの発電機の余力(現在出力と最大出力の差、または現在出力と最小出力の差)が少ない場合には、地域要求電力(AR)を配分しきれずに配分残が生じる可能性がある。なお、配分残が生じた場合、配分残の量に応じて制御性能を低下させてしまう。
【0027】
また、発電機の特性に応じて周波数分解した地域要求電力(AR)に対し、LFCの対象の発電機が多数台の高速機と少数台の低速機とからなる運転体制のように、偏った運転体制の場合には、低速機側は調整台数と調整余力が小さいために、地域要求電力(AR)を配分しきれず、配分残が生じる可能性がある。なお、少数台の高速機と多数台の低速機とからなる運転体制の場合も同様に、高速機側は調整台数と調整余力が小さいために、地域要求電力(AR)の配分残が生じる可能性がある。これらの配分残は、前述した通り、配分残の量に応じて制御性能を低下させてしまう。
【0028】
まとめると、負荷周波数制御(LFC)においては、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合には、地域要求電力(AR)の配分残を生じさせる可能性があることから、配分残の発生を抑制し得るように改良の余地がある。
【0029】
本発明が解決しようとする課題は、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制し得る負荷周波数制御システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
実施形態の負荷周波数制御システムは、周波数変化量検出手段、連系線潮流変化量検出手段、地域要求電力算出手段、周波数分解手段、地域要求電力配分手段、目標指令値算出手段及び指令値伝送手段を備えている。
【0031】
前記周波数変化量検出手段は、電力系統の周波数変化量を検出する。
【0032】
前記連系線潮流変化量検出手段は、前記電力系統の連系線潮流変化量を検出する。
【0033】
前記地域要求電力算出手段は、前記周波数変化量及び前記連系線潮流変化量に基づいて地域要求電力を算出する。
【0034】
前記周波数分解手段は、前記算出した地域要求電力を周波数分解する。
【0035】
前記地域要求電力配分手段は、前記周波数分解した地域要求電力を発電機毎に配分する。
【0036】
前記目標指令値算出手段は、前記配分された地域要求電力と経済負荷配分制御によって算出された経済負荷配分スケジュール値とから目標指令値を算出する。
【0037】
前記指令値伝送手段は、前記算出した目標指令値を前記発電機に伝送する。
【0038】
ここで、前記地域要求電力配分手段は、時間幅調整手段を備えている。
【0039】
前記時間幅調整手段は、前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出する。
【0040】
前記時間幅調整手段は、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【0041】
前記時間幅調整手段は、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】各実施形態に共通した負荷周波数制御システムの構成を示す模式図である。
【図2】各実施形態に共通した負荷周波数制御の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図3】各実施形態に共通したAR配分部の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図4】各実施形態の概要を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】同実施形態におけるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】同実施形態におけるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】同実施形態におけるAR配分処理を示す模式図である。
【図9】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示す模式図である。
【図11】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示す模式図である。
【図13】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下に計算機を一例として述べた装置は、ハードウェア構成、又はハードウェア資源とソフトウェアとの組合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワーク又はコンピュータ読取り可能な記憶媒体から当該装置のコンピュータにインストールされ、当該装置の機能を実現させるためのプログラムが用いられる。
【0044】
図1は各実施形態に共通した負荷周波数制御システムの構成を示す模式図であり、図2は各実施形態に共通した負荷周波数制御の処理内容を説明するためのフローチャートであり、図3は各実施形態に共通したAR配分部の処理内容を説明するためのフローチャートである。図1に示すように、電力系統1は、データ検出部10及びn台の発電機G1,G2,…,Gnを有し、他系統3に連系線4を介して連系されている。各発電機G1,G2,…,Gnは、検出用の信号線11と制御用の信号線12を介して、計算機2内のn個の発電機出力信号入力部201,202,…,20nとn個の指令値伝送部231,232,…,23nとに個別に接続されている。計算機(コンピュータ)2は、マンマシンインタフェースであるMMI5、n個の発電機出力信号入力部201,202,…,20n、n個の指令値伝送手段231,232,…,23n、n個の目標指令値算出部221,222,…,22n、AR計算部24、AR分解部25、AR配分部26、発電端総需要計算部27、オンライン予測需要部28、前日運転計画部29及びELDスケジュール計算部30を備えている。
【0045】
発電機出力信号入力部201,202,…,20nは、各発電機G1,G2,…,Gnの出力の値を示す発電機出力信号を個別に目標指令値算出部221,222,…,22nに伝送する。なお、これら発電機出力信号は発電端総需要計算部27にも伝送される。
【0046】
発電端総需要計算部27は、発電機出力信号入力部201,202,…,20nからの発電機出力信号を取り込んで発電端総需要を計算する。計算された発電端総需要は、オンライン予測需要部28に入力される。
【0047】
オンライン予測需要部28は、入力された発電端総需要に基づいてオンライン予測需要をELDスケジュール計算部30に入力する。また、前日運転計画部29は、予め設定された前日運転計画をELDスケジュール計算部30に入力する。
【0048】
すなわち、図2に示すように、オンライン予測需要及び前日運転計画からなる運用データがELDスケジュール計算部30に入力される(ステップS100)。
【0049】
一方、データ検出部10は、電力系統1の周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とを検出する。検出された周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)は、信号線13を介してAR計算部24に入力される。
【0050】
AR計算部24は、入力された周波数変化量(ΔF)及び連系線潮流変化量(ΔPT)に基づいて(1)式に示したように地域要求電力(AR)を算出する(ステップS200)。算出されたARは、AR分解部25に入力される。
【0051】
AR分解部25は、当該算出されたARを周波数分解し、当該ARの周波数分解結果をAR配分部26及びELDスケジュール計算部30に入力する(ステップS300)。
【0052】
ELDスケジュール計算部30は、入力されたARの周波数分解結果と、ステップS100で入力されたオンライン予測需要及び前日運転計画とに基づき、経済負荷配分制御によってELDスケジュール値(以下、ELD値という)を計算し、このELD値を目標指令値算出部221,222,…,22nに入力する(ステップS400)。
【0053】
一方、AR配分部26は、ステップ300で入力された周波数分解結果に基づき、周波数分解した地域要求電力(AR)を発電機毎に配分するように、当該地域要求電力(AR)の変動周期成分の周期に応じて、各発電機G1,G2,…,Gnに対する地域要求電力(AR)の配分量を算出する(ステップS500)。
【0054】
このステップS500では、詳しくは図3に示すように、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から短周期成分(例、数10秒〜1又は2分周期)を抽出し(ステップE1:Yes)、当該抽出した短周期成分を各発電機G1,G2,…,Gnのうちの高速機(例、水力機)に分担させるように、高速機の配分量を算出している(ステップE2)。
【0055】
また、ステップS500では、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から中周期成分(例、1又は2分超〜数分周期)を抽出し(ステップE3:Yes)、当該抽出した中周期成分を各発電機G1,G2,…,Gnのうちの低速機(例、火力機)に分担させるように、低速機の配分量を算出している(ステップE4)。
【0056】
さらに、ステップS500では、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から長周期成分(例、数分周期超)を抽出し(ステップE3:No)、当該抽出した長周期成分をELD値に上乗せするように、ELD値の補正量を算出している(ステップE5)。当該算出された配分量及びELD補正量は、目標指令値算出部221,222,…,22nに入力される。
【0057】
目標指令値算出部221,222,…,22nは、各発電機G1,G2,…,Gnの発電機出力信号と、AR配分部26から入力されたAR値と、ELDスケジュール計算部30から入力されたELD値とに基づいて目標指令値を個別に算出し(ステップS600)、これら目標指令値を個別に指令値伝送手段231,232,…,23nを介して(ステップS700)、各発電機G1,G2,…,Gnに伝送する(ステップS800)。
【0058】
以上が各実施形態に共通した負荷周波数制御の概要である。以下、各実施形態の概要を順次述べる。各実施形態は、図4に示す如き、AR配分部26によるステップS500のAR配分処理において、発電機の優先モードの選択ステップA、周波数帯域の調整モードの選択ステップB、周波数帯域自動調整モードの実行ステップC、周波数帯域手動調整モードの実行ステップD、配分量・補正量の算出ステップE、高速機優先モードの実行ステップH、低速機優先モードの実行ステップLからなる各ステップのうち、2つ以上のステップを実施する形態である。なお、ステップEは、全ての実施形態で実施される。
【0059】
第1の実施形態は、配分量・補正量の算出ステップE、及び高速機優先モードの実行ステップHを実施する形態である。但し、変形例として、配分量・補正量の算出ステップE、低速機優先モードの実行ステップLを実施してもよい。
【0060】
第2の実施形態は、周波数帯域自動調整モードの実行ステップC、及び配分量・補正量の算出ステップEを実施する形態である。但し、変形例として、第1の実施形態で述べた実行ステップH又はLを更に実施してもよい。
【0061】
第3の実施形態は、発電機の優先モードの選択ステップA及び配分量・補正量の算出ステップEと、ステップAで選択された実行ステップH又はLを実施する形態である。但し、変形例として、第2の実施形態で述べた実行ステップCを更に実施してもよい。
【0062】
第4の実施形態は、周波数帯域の調整モードの選択ステップB、ステップBで選択された実行ステップC又はD、及び配分量・補正量の算出ステップEを実施する形態である。但し、変形例として、第1の実施形態で述べた実行ステップH又はLを更に実施してもよく、これに加え、第3の実施形態で述べた選択ステップAを更に実施してもよい。
【0063】
以上が各実施形態の概要である。以下、各実施形態を具体的に順次説明する。
【0064】
<第1の実施形態:調整余力に応じたAR配分手法>
図5乃至図7は第1の実施形態に係るAR配分部26によるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
負荷周波数制御(LFC)を行う場合、周波数分解した地域要求電力(AR)を高速機や低速機の発電機に配分する。しかしながら、並列するLFC対象発電機の調整余力(最大出力と現在出力の差、または最小出力と現在出力の差)が配分すべき地域要求電力(AR)よりも小さい場合、地域要求電力(AR)が配分しきれず、配分残となる。
【0066】
そこで、本実施形態では、例えば高速機が分担すべきAR配分量に対して、高速機の調整余力が小さい場合、図8に示すように、調整しきれない配分量を低速機のAR配分量に加算する構成となっている。また同様に、本実施形態では低速機が分担すべきAR配分量に対して、低速機の調整余力が小さい場合は、調整しきれない配分量をELD補正量に換算する構成としている。
【0067】
具体的には、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値(経済負荷配分スケジュール値)に上乗せし、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分(高速機の配分残)を低速機に配分し、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分(低速機の配分残)をELD値に更に上乗せする高速機優先配分機能をもっている。
【0068】
なお、AR配分部26において、高速機、低速機の配分残、ならびに上げ、下げの調整余力は、以下の(2)〜(21)式に示すように、算出可能となっている。
【数1】
【0069】
【数2】
【0070】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0071】
AR配分部26は、図3に示したように、配分量・補正量の算出ステップEを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値に上乗せする。
【0072】
続いて、AR配分部26は、図5に示したように、高速機優先モードの実行ステップHを実行する。すなわち、AR配分部26は、(2)〜(11)式及び図6に示すように、高速機の配分残を算出する(ステップH1、H1−1〜H1−11)。
【0073】
ステップH1の後、AR配分部26は、高速機残の有無を判定し(ステップH2)、高速機残が無ければ(高速機残=0のとき)、処理を終了する。
【0074】
ステップH2の判定の結果、高速機残があれば、AR配分部26は、高速機残を低速機配分量に加算する(ステップH3)。
【0075】
ステップH3の後、AR配分部26は、(12)〜(21)式及び図7に示すように、低速機の配分残を算出する(ステップH4、H4−1〜H4−11)。
【0076】
ステップH4の後、AR配分部26は、低速機残の有無を判定し(ステップH5)、低速機残が無ければ(低速機残=0のとき)、処理を終了する。
【0077】
ステップH5の判定の結果、低速機残があれば、AR配分部26は、低速機残を更にELD補正量に加算する(ステップH6)。
【0078】
上述したように本実施形態によれば、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分をELD値に上乗せし、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を低速機に配分し、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分をELD値に更に上乗せする構成により、高速機、ならびに低速機の調整余力に応じて地域要求電力(AR)を配分することができる。従って、発電機の調整余力が少ない場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制でき、配分残を少なくして、制御性能を高めることが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、高速機が分担すべきAR配分量に対して、高速機の調整余力が小さい場合に、調整しきれない配分量を低速機のAR配分量に加算する方法を示したが、配分量の加算順序はこの方法に限定されない。例えば、配分量の加算順序は、図9及び図10に示すように、低速機にて調整しきれない配分量を高速機のAR配分量に加算する方法としてもよい。この場合、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値(経済負荷配分スケジュール値)に上乗せし、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分(低速機の配分残)を高速機に配分し、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分(高速機の配分残)をELD値に更に上乗せする低速機優先配分機能を有するようにすればよい。なお、図9中、低速機の配分残の算出ステップL1は、前述した算出ステップH4と同様に実行すればよい。また、高速機の配分残の算出ステップL4は、前述した算出ステップH1と同様に実行すればよい。
【0080】
また、高速機及び低速機は、火力発電機、水力発電機などの発電機に限定されるものではなく、電力の充放電が可能な二次電池(蓄電池、充電式電池等)の電力貯蔵装置などにも適用可能である。
【0081】
<第2の実施形態:運転体制に応じたAR配分手法>
図11は第2の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0082】
負荷周波数制御(LFC)を行う場合、第1の実施形態と同様、周波数分解したARを高速機や低速機の発電機に配分することになるが、LFC対象発電機の並列台数は常に固定(決められた発電機が対象)となる訳ではなく、季節や時間帯、または需要変動に応じて中央給電指令所の運転員が発電機の選定、ならびに台数を調整している。そのため、低速機、高速機の発電機の台数がどちらかに偏った場合などは、調整余力に差が生じる可能性がある。例えば、LFC対象発電機の並列台数が、高速機は多数台+低速機は少数台になるように、運転体制が偏ってしまうような場合、低速機側は調整台数も調整余力も小さくなることで、地域要求電力(AR)を十分に配分しきれず、配分残が生じる可能性がある。逆に、高速機は少数台+低速機は多数台の場合も同様であり、高速機側にて配分残が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、高速機、ならびに低速機の運転体制に応じて、分担すべき地域要求電力(AR)の周波数帯域を変更する。
【0083】
基本的には、高速機の調整余力が低速機の調整余力に比べ大きくなれば、高速機が分担すべき周波数帯域の時間幅を広げる(低速機が分担すべき周波数帯域の時間幅を狭める)するようにする。即ち、調整余力の小さい低速機は周波数帯域の時間幅を小さくし、比較的に長い周波数帯域を持たせることで、ゆっくりとした変動周期を分担することにする。これにより、調整余力の小さい場合でも配分残が発生しにくくする。逆も同様であり、低速機の調整余力が高速機の余力に比べ大きくなれば、調整余力の小さい高速機は周波数帯域の時間幅を小さくするようにする。
【0084】
具体的には、AR配分部26は、以下の機能(f2-1)〜(f2-4)をもっている。なお、このうち3つの機能(f2-1)〜(f2-3)は、時間幅調整機能を構成している。
【0085】
(f2-1) 発電機G1〜Gnのうちの高速機の調整余力(全ての高速機余力の総和)と発電機G1〜Gnのうちの低速機の調整余力(全ての低速機余力の総和)とを算出する機能。
【0086】
(f2-2) 高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする機能。
【0087】
(f2-3) 低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする機能。
【0088】
(f2-4) AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする機能。
【0089】
尚、周波数帯域の時間幅の調整条件は(22)〜(33)式に示す通りである。
【数3】
【0090】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図11を参照しながら説明する。
【0091】
始めに、AR配分部26は、周波数帯域自動調整モードの実行ステップCを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25が周波数分解した地域要求電力(AR)が0以上か否かを判定し(ステップC1)、否の場合にはステップC7に進む。
【0092】
ステップC1の判定の結果、地域要求電力(AR)が0以上のとき、AR配分部26は、前述した(10)式、(20)式及び(22)式に基づいて、全ての高速機上げ余力の総和と、全ての低速機上げ余力の総和とを算出する(ステップC2)。
【0093】
しかる後、AR配分部26は、ステップC2の算出結果と、所定の重み係数とを用いて高速機の調整余裕量を(22)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC3)。
【0094】
高速機の調整余裕量が閾値以上のとき(高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(23)〜(24)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を大きくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を小さくする(ステップC4)。
【0095】
ステップC3の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、ステップC2の算出結果と、所定の重み係数とを用いて低速機の調整余裕量を(25)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC5)。
【0096】
低速機の調整余裕量が閾値以上のとき(低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(26)〜(27)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を小さくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を大きくする(ステップC6)。
【0097】
一方、ステップC1の判定の結果、地域要求電力(AR)が負の値のとき、AR配分部26は、前述した(11)式、(21)式及び(28)式に基づいて、全ての高速機下げ余力の総和と、全ての低速機下げ余力の総和とを算出する(ステップC7)。
【0098】
しかる後、AR配分部26は、ステップC7の算出結果と、所定の重み係数とを用いて高速機の調整余裕量を(28)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC8)。
【0099】
高速機の調整余裕量が閾値以上のとき(高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(29)〜(30)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を大きくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を小さくする(ステップC9)。
【0100】
ステップC8の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、ステップC7の算出結果と、所定の重み係数とを用いて低速機の調整余裕量を(31)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC10)。
【0101】
低速機の調整余裕量が閾値以上のとき(低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(32)〜(33)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を小さくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を大きくする(ステップC11)。
【0102】
以上により、周波数帯域自動調整モードの実行ステップCが完了する。
【0103】
続いて、AR配分部26は、図3に示したように、配分量・補正量の算出ステップEを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分をステップCで調整した時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする。
【0104】
上述したように本実施形態によれば、高速機の調整余力と低速機の調整余力とを算出し、高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を当該時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする構成により、発電機の運転体制に応じて分担すべき地域要求電力(AR)を配分することができる。従って、偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制でき、制御残を少なくして、制御性能を高めることが可能となる。
【0105】
また、本実施形態では、高速機、ならびに低速機の上げ、下げ余力を判断基準としたが、これに限らず、例えば図12に示すように、高速機、ならびに低速機のLFC対象発電機台数を判断基準としてもよい。この場合、AR配分部26は、高速機の調整余裕台数を高速機台数−低速機台数として算出し(ステップC21)、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC22)。高速機の調整余裕台数が閾値以上のとき、AR配分部26は、ステップC4と同様に各成分a,bの周波数帯域の時間幅を調整する(ステップC23)。また、ステップC22の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、低速機の調整余裕台数を低速機台数−高速機台数として算出し(ステップC24)、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC25)。低速機の調整余裕台数が閾値以上のとき、AR配分部26は、ステップC6と同様に各成分a,bの周波数帯域の時間幅を調整する(ステップC26)。
【0106】
また、本実施形態は、第1の実施形態のステップH又はLと組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、第1の実施形態の配分量・補正量の算出ステップEよりも先行して、周波数自動調整モードの実行ステップCを実行すればよい。
【0107】
また、本実施形態は、第1の実施形態と同様、高速機、低速機は火力発電機、水力発電機などの発電機に限定されるものではなく、電力の充放電が可能な二次電池(蓄電池、充電式電池等)の電力貯蔵装置などにも適用可能である。
【0108】
<第3の実施形態:配分残の優先割り付け手法>
図13は第3の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0109】
第1の実施形態では、高速機の配分残を低速機の配分量に加算する、または逆に低速機の配分残を高速機の配分量に加算する方法を示し、この加算順序も限定されるものではないことも示した。これらを踏まえ、本実施形態では、低速機と高速機のどちらに優先的に配分残を配分量に加算させるかを任意に選択できる機能をAR配分部26を備えた形態としている。なお、実際の運用においては、中央給電指令所における運用者が任意に選択できるように切り替えモードを有するようにすればよい。
【0110】
具体的には、AR配分部26は、第1の実施形態の機能に加え、以下の各機能(f3-1)〜(f3-4)を備えている。
【0111】
(f3-1) 予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択するモード選択機能。
【0112】
(f3-2) 高速機優先モードの選択により高速機優先配分機能(ステップH)を動作させる機能。
【0113】
(f3-3) 低速機優先モードの選択により低速機優先配分機能(ステップL)を動作させる機能。
【0114】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図13を参照しながら説明する。
【0115】
始めに、AR配分部26は、発電機の優先モードの実行ステップAを実行する。すなわち、AR配分部26は、例えば高速機に優先的に配分残を割り付けるか否かの問い合わせを表示部(図示せず)に画面表示させ(ステップA1)、操作者の操作に応じて、高速機に優先的に配分残を割り付ける場合には高速機優先モードを選択し(ステップA2)、否の場合には低速機優先モードを選択する(ステップA3)。
【0116】
続いて、AR配分部26は、ステップA2で高速機優先モードが選択された場合には、共通のステップEの後、図5乃至図8に示したステップHの処理を実行する。
【0117】
また、AR配分部26は、ステップA3で低速機優先モードが選択された場合には、共通のステップEの後、図9及び図10に示したステップLの処理を実行する。
【0118】
上述したように本実施形態によれば、予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択し、周波数分解した地域要求電力の短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せした後、選択した高速機優先モード又は低速機優先モードに応じて、配分しきれなかった周期成分を別種の発電機又は経済負荷配分スケジュール値に配分する構成により、第1の実施形態の効果に加え、高速機、ならびに低速機のどちらに優先的に配分残を割り付けるかを任意に選択することができる。従って、運転状況に沿った運用が可能となる。
【0119】
また、本実施形態は、第2の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、共通の配分量・補正量の算出ステップEよりも先行して、周波数自動調整モードの実行ステップCを実行すればよい。
【0120】
<第4の実施形態:周波数帯域の選択手法>
図14は第4の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0121】
第2の実施形態では、並列する発電機の運転体制によって周波数帯域を自動的に調整する方法について示した。但し、運転状況によっては運用者の考えによる周波数帯域の調整が必要であり、手動による調整機能が必要となる。そこで、本実施形態では、運用者が任意に周波数帯域を自動調整するか手動調整するかを選択できる機能をAR配分部26が備えた形態としている。
【0122】
具体的には、AR配分部26は、第2の実施形態の各機能に加え、以下の各機能(f4-1)〜(f4-3)を備えている。
【0123】
(f4-1) 予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択するモード選択機能。
【0124】
(f4-2) 自動調整モードの選択により時間幅調整機能(前述した機能(f2-1)〜(f2-3))を動作させる機能。
【0125】
(f4-3) 手動調整モードの選択により動作し、操作者の操作に応じて、高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整する手動調整モード実行機能。
【0126】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図14を参照しながら説明する。
【0127】
始めに、AR配分部26は、周波数帯域の調整モードの実行ステップBを実行する。すなわち、AR配分部26は、例えば周波数帯域を自動設定するか否かの問い合わせを表示部(図示せず)に画面表示させ(ステップB1)、操作者の操作に応じて、周波数帯域を自動設定する場合には周波数帯域自動調整モードを選択し(ステップB2)、否の場合には周波数帯域手動調整モードを選択する(ステップB3)。
【0128】
続いて、AR配分部26は、ステップB2で周波数帯域自動調整モードが選択された場合には、図11又は図12に示した処理を実行し、しかる後、共通のステップEを実行する。
【0129】
また、AR配分部26は、ステップB3で周波数帯域手動調整モードが選択された場合には、操作者の操作に応じて、高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整し、しかる後、共通のステップEを実行する。
【0130】
上述したように本実施の形態によれば、予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択し、選択した調整モードに応じて周波数帯域の時間幅を調整し、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を当該時間幅に応じて抽出し、各成分を配分する構成により、第2の実施形態の効果に加え、地域要求電力(AR)を周波数分解する際の時間幅を任意に決めることができる。従って、運用者の考えに沿った運用が可能となる。
【0131】
また、本実施形態は、第1の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、共通のステップEの実行後、第1の実施形態で述べた高速機優先モードの実行ステップH又は低速機優先モードの実行ステップLを実行すればよい。
【0132】
さらに、本実施形態は、第1の実施形態に加え、第3の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、図4に示したように、各ステップA,B,C(又はD),E,H(又はL)を実行すればよい。
【0133】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、配分しきれない周期成分を調整余力の大きい別種の発電機に配分する構成により、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制することができる。
【0134】
なお、上記の各実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0135】
また、この記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であっても良い。
【0136】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が上記実施形態を実現するための各処理の一部を実行しても良い。
【0137】
さらに、各実施形態における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0138】
また、記憶媒体は1つに限らず、複数の媒体から上記の各実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成は何れの構成であっても良い。
【0139】
なお、各実施形態におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上記の各実施形態における各処理を実行するものであって、パソコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であっても良い。
【0140】
また、各実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0141】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1…電力系統、2…計算機、3…他系統、4…連系線、5…MMI(マンマシンインターフェース)、201〜20n…発電機出力入力部、211〜21n…発電機情報入力部、221〜22n…目標指令値算出部、231…23n…指令値伝送手段、24…AR計算部、25…AR分解部、26…AR配分部、27…発電端総需要計算部、28…オンライン予測需要部、29…前日運転計画部、30…ELDスケジュール計算部、311〜31n…出力変化量算出処理の起動タイミング。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統負荷周波数制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の需要(負荷)は、季節的・時間的・瞬間的に時々刻々絶えず変動している。電力系統の負荷変動は、変化幅の小さい種々の振動と周期を持った脈動成分や、不規則な変動成分が重畳したものと考えられる。負荷変動の成分は、数分周期までの微小変動分のサイクリック分と、数分から10数分程度までの短周期変動分のフリンジ分と、10数分以上の長周期変動分のサステンド分との3成分に主に分けられる。
【0003】
サイクリック分のような極めて短周期の成分は系統の負荷特性より、また、それ以上の数分程度の周期変動の成分はガバナフリー運転する発電所の調速機の特性を適正にすれば、自動的に調整される。それ以上の長い周期成分は、電力会社の中央給電指令所において、それぞれの周期成分を対象とした制御分担が行われている。
【0004】
フリンジ分のような変動周期が10数分までの負荷変動は、サイクリック分に比べ変動量が大きいため、ガバナフリー運転だけでは調整しきれない。このため、負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)により、周波数偏差、電力変動量を検出して発電機の出力を調整する。
【0005】
変動周期がそれ以上の長い負荷変動のサステンド分は、負荷変動がかなり大きく、1日の負荷曲線によって支配される変化の一部と考えることができる。このように大きな負荷変動をもつサステンド分を調整する場合、負荷周波数制御だけでは発電所の出力変化能力が不足したり、発電所間の経済的な負荷配分が問題となってくる。このため、サステンド分のような長周期の負荷変動に対しては、発電所の経済運用が主体となり、経済負荷配分制御(ELD:Economic Load Dispatch)による給電調整を行う。
【0006】
これらの負荷周波数制御システム、ならびに経済負荷配分制御システムは、電力会社における中央給電指令所の最重要機能である。各システムの最大の目的は、負荷周波数制御(LFC)においては連系線潮流、系統周波数を一定に維持することであり、経済負荷配分制御(ELD)においては最経済となるような運用計画を行うことである。
【0007】
負荷周波数制御(LFC)は、中央給電指令所にて系統の周波数や他系統との連系線潮流の変化に応じて各発電機(発電ユニット)の出力調整の指令を行う。この出力調整の指令は全ての発電ユニットのうち、速い出力変動を行っても問題とならない石油焚き火力発電ユニットや水力ユニットには出される。また、出力調整の指令は、原子力ユニットや石炭焚き火力ユニット、更には運用上の理由で出力変動を避けたい発電ユニットには一般的に出されない。
【0008】
負荷周波数制御(LFC)では、このように中央給電指令所から指令が出されるため、実際に出力が変化するまでには、通常、数十秒程度の遅れがある。
【0009】
負荷周波数制御(LFC)は、主に、定周波数制御(FFC:Flat Frequency Control)、定連系電力制御(FTC:Flat Tie line Control)及び周波数バイアス連系線電力制御(TBC:Tie line Bias Control)の3方式に分けることができる。
【0010】
定周波数制御(FFC)は、周波数変化量(ΔF)を検出して、これを少なくするように発電機の出力を調整し、系統周波数のみを規定値に保とうとする方式である。
【0011】
定連系電力制御(FTC)は、連系線潮流変化量(ΔPT)を検出して、これを少なくするように発電機の出力を調整し、連系線潮流のみを規定値に保とうとする方式である。
【0012】
周波数バイアス連系線電力制御(TBC)は、周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とを検出し、これらから地域要求電力(AR)を算出し、その量に応じて発電機の出力を調整する方式である。
【0013】
以下、日本の殆どの電力会社にて行われている周波数バイアス連系線電力制御(TBC)の一例を説明する。
【0014】
周波数バイアス連系線電力制御(TBC)は、各電力会社の中央給電指令所から、各発電機に対して出力調整のために発電機指令を行う方式であり、以下の手順[1]〜[6]にて行われている。
【0015】
[1]周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とに基づいて、地域要求電力(AR)を(1)式に示すように算出する。
【0016】
AR=−K・ΔF+ΔPT ・・・・・(1)
ここで、K:系統定数、 ΔPT:自系統に流入する潮流がプラス方向。
【0017】
なお、地域要求電力(AR)が正の値のとき、系統全体として発電機の出力を上げる必要がある。また、地域要求電力(AR)が負の値のとき、系統全体として発電機の出力を下げる必要がある。
【0018】
[2]地域要求電力(AR)をフィルタリングする際には、過去の地域要求電力(AR)を用いて指数平滑等によるフィルタリングを行い、地域要求電力(AR)を低速機(例、出力変化速度の遅い火力機)と高速機(例、出力変化速度の速い水力機)にて分担する。なお、フィルタリングする方法に代えて、地域要求電力(AR)を周波数分解し、短い周期成分を低速機に分担させ、長い周期成分を高速機に分担させる方法を用いてもよい。
【0019】
[3]フィルタリング、または周波数分解した地域要求電力(AR)を各発電機へ配分する際には、低速機、高速機別に負荷周波数制御が行われている全ての発電機に対して、その発電機の出力変化速度比あるいは、出力余裕比等にて配分する。
【0020】
[4]各発電機の目標指令値は、配分された地域要求電力(AR)と、経済負荷配分制御(ELD)にて時間毎に算出されたELD値とを足し合わせる等の演算により算出される。また、目標指令値には、ある基準値以上を逸脱しないように上下限値が設けられている場合もある。
【0021】
[5]各発電機は、中央給電指令所から受けた目標指令値に応じて出力を調整する。その結果、系統周波数、並びに連系線潮流が変化し、周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)が生じる。
【0022】
[6]手順[1]に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特許第3930218号公報
【特許文献2】特開2007−306770号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「電力システム工学」 丸善 ISBN4-621-04636-5(P104)
【非特許文献2】「電気工学ハンドブック」 電気学会 ISBN4-88686-012-5(P970〜P975)
【非特許文献3】電気学会技術報告第869号 「電力系統における常時及び緊急時の負荷周波数制御」 電気学会 電力・エネルギー部門 電力系統技術委員会(P133〜P141)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、以上のような負荷周波数制御(LFC)は、通常は何の問題もないが、本発明者の検討によれば、場合によっては地域要求電力(AR)の配分残が生じる可能性があることから、この配分残の発生を抑制し得るように改良の余地がある。
【0026】
例えば、上記手順[3]において、フィルタリング、または周波数分解した地域要求電力(AR)を各発電機に配分するが、LFCの対象となる発電機台数が少ない場合や、それらの発電機の余力(現在出力と最大出力の差、または現在出力と最小出力の差)が少ない場合には、地域要求電力(AR)を配分しきれずに配分残が生じる可能性がある。なお、配分残が生じた場合、配分残の量に応じて制御性能を低下させてしまう。
【0027】
また、発電機の特性に応じて周波数分解した地域要求電力(AR)に対し、LFCの対象の発電機が多数台の高速機と少数台の低速機とからなる運転体制のように、偏った運転体制の場合には、低速機側は調整台数と調整余力が小さいために、地域要求電力(AR)を配分しきれず、配分残が生じる可能性がある。なお、少数台の高速機と多数台の低速機とからなる運転体制の場合も同様に、高速機側は調整台数と調整余力が小さいために、地域要求電力(AR)の配分残が生じる可能性がある。これらの配分残は、前述した通り、配分残の量に応じて制御性能を低下させてしまう。
【0028】
まとめると、負荷周波数制御(LFC)においては、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合には、地域要求電力(AR)の配分残を生じさせる可能性があることから、配分残の発生を抑制し得るように改良の余地がある。
【0029】
本発明が解決しようとする課題は、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制し得る負荷周波数制御システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
実施形態の負荷周波数制御システムは、周波数変化量検出手段、連系線潮流変化量検出手段、地域要求電力算出手段、周波数分解手段、地域要求電力配分手段、目標指令値算出手段及び指令値伝送手段を備えている。
【0031】
前記周波数変化量検出手段は、電力系統の周波数変化量を検出する。
【0032】
前記連系線潮流変化量検出手段は、前記電力系統の連系線潮流変化量を検出する。
【0033】
前記地域要求電力算出手段は、前記周波数変化量及び前記連系線潮流変化量に基づいて地域要求電力を算出する。
【0034】
前記周波数分解手段は、前記算出した地域要求電力を周波数分解する。
【0035】
前記地域要求電力配分手段は、前記周波数分解した地域要求電力を発電機毎に配分する。
【0036】
前記目標指令値算出手段は、前記配分された地域要求電力と経済負荷配分制御によって算出された経済負荷配分スケジュール値とから目標指令値を算出する。
【0037】
前記指令値伝送手段は、前記算出した目標指令値を前記発電機に伝送する。
【0038】
ここで、前記地域要求電力配分手段は、時間幅調整手段を備えている。
【0039】
前記時間幅調整手段は、前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出する。
【0040】
前記時間幅調整手段は、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【0041】
前記時間幅調整手段は、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】各実施形態に共通した負荷周波数制御システムの構成を示す模式図である。
【図2】各実施形態に共通した負荷周波数制御の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図3】各実施形態に共通したAR配分部の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図4】各実施形態の概要を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】同実施形態におけるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】同実施形態におけるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】同実施形態におけるAR配分処理を示す模式図である。
【図9】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示す模式図である。
【図11】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】同実施形態におけるAR配分処理の変形例を示す模式図である。
【図13】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係るAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下に計算機を一例として述べた装置は、ハードウェア構成、又はハードウェア資源とソフトウェアとの組合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワーク又はコンピュータ読取り可能な記憶媒体から当該装置のコンピュータにインストールされ、当該装置の機能を実現させるためのプログラムが用いられる。
【0044】
図1は各実施形態に共通した負荷周波数制御システムの構成を示す模式図であり、図2は各実施形態に共通した負荷周波数制御の処理内容を説明するためのフローチャートであり、図3は各実施形態に共通したAR配分部の処理内容を説明するためのフローチャートである。図1に示すように、電力系統1は、データ検出部10及びn台の発電機G1,G2,…,Gnを有し、他系統3に連系線4を介して連系されている。各発電機G1,G2,…,Gnは、検出用の信号線11と制御用の信号線12を介して、計算機2内のn個の発電機出力信号入力部201,202,…,20nとn個の指令値伝送部231,232,…,23nとに個別に接続されている。計算機(コンピュータ)2は、マンマシンインタフェースであるMMI5、n個の発電機出力信号入力部201,202,…,20n、n個の指令値伝送手段231,232,…,23n、n個の目標指令値算出部221,222,…,22n、AR計算部24、AR分解部25、AR配分部26、発電端総需要計算部27、オンライン予測需要部28、前日運転計画部29及びELDスケジュール計算部30を備えている。
【0045】
発電機出力信号入力部201,202,…,20nは、各発電機G1,G2,…,Gnの出力の値を示す発電機出力信号を個別に目標指令値算出部221,222,…,22nに伝送する。なお、これら発電機出力信号は発電端総需要計算部27にも伝送される。
【0046】
発電端総需要計算部27は、発電機出力信号入力部201,202,…,20nからの発電機出力信号を取り込んで発電端総需要を計算する。計算された発電端総需要は、オンライン予測需要部28に入力される。
【0047】
オンライン予測需要部28は、入力された発電端総需要に基づいてオンライン予測需要をELDスケジュール計算部30に入力する。また、前日運転計画部29は、予め設定された前日運転計画をELDスケジュール計算部30に入力する。
【0048】
すなわち、図2に示すように、オンライン予測需要及び前日運転計画からなる運用データがELDスケジュール計算部30に入力される(ステップS100)。
【0049】
一方、データ検出部10は、電力系統1の周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)とを検出する。検出された周波数変化量(ΔF)と連系線潮流変化量(ΔPT)は、信号線13を介してAR計算部24に入力される。
【0050】
AR計算部24は、入力された周波数変化量(ΔF)及び連系線潮流変化量(ΔPT)に基づいて(1)式に示したように地域要求電力(AR)を算出する(ステップS200)。算出されたARは、AR分解部25に入力される。
【0051】
AR分解部25は、当該算出されたARを周波数分解し、当該ARの周波数分解結果をAR配分部26及びELDスケジュール計算部30に入力する(ステップS300)。
【0052】
ELDスケジュール計算部30は、入力されたARの周波数分解結果と、ステップS100で入力されたオンライン予測需要及び前日運転計画とに基づき、経済負荷配分制御によってELDスケジュール値(以下、ELD値という)を計算し、このELD値を目標指令値算出部221,222,…,22nに入力する(ステップS400)。
【0053】
一方、AR配分部26は、ステップ300で入力された周波数分解結果に基づき、周波数分解した地域要求電力(AR)を発電機毎に配分するように、当該地域要求電力(AR)の変動周期成分の周期に応じて、各発電機G1,G2,…,Gnに対する地域要求電力(AR)の配分量を算出する(ステップS500)。
【0054】
このステップS500では、詳しくは図3に示すように、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から短周期成分(例、数10秒〜1又は2分周期)を抽出し(ステップE1:Yes)、当該抽出した短周期成分を各発電機G1,G2,…,Gnのうちの高速機(例、水力機)に分担させるように、高速機の配分量を算出している(ステップE2)。
【0055】
また、ステップS500では、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から中周期成分(例、1又は2分超〜数分周期)を抽出し(ステップE3:Yes)、当該抽出した中周期成分を各発電機G1,G2,…,Gnのうちの低速機(例、火力機)に分担させるように、低速機の配分量を算出している(ステップE4)。
【0056】
さらに、ステップS500では、AR配分部26が、入力された周波数分解結果から長周期成分(例、数分周期超)を抽出し(ステップE3:No)、当該抽出した長周期成分をELD値に上乗せするように、ELD値の補正量を算出している(ステップE5)。当該算出された配分量及びELD補正量は、目標指令値算出部221,222,…,22nに入力される。
【0057】
目標指令値算出部221,222,…,22nは、各発電機G1,G2,…,Gnの発電機出力信号と、AR配分部26から入力されたAR値と、ELDスケジュール計算部30から入力されたELD値とに基づいて目標指令値を個別に算出し(ステップS600)、これら目標指令値を個別に指令値伝送手段231,232,…,23nを介して(ステップS700)、各発電機G1,G2,…,Gnに伝送する(ステップS800)。
【0058】
以上が各実施形態に共通した負荷周波数制御の概要である。以下、各実施形態の概要を順次述べる。各実施形態は、図4に示す如き、AR配分部26によるステップS500のAR配分処理において、発電機の優先モードの選択ステップA、周波数帯域の調整モードの選択ステップB、周波数帯域自動調整モードの実行ステップC、周波数帯域手動調整モードの実行ステップD、配分量・補正量の算出ステップE、高速機優先モードの実行ステップH、低速機優先モードの実行ステップLからなる各ステップのうち、2つ以上のステップを実施する形態である。なお、ステップEは、全ての実施形態で実施される。
【0059】
第1の実施形態は、配分量・補正量の算出ステップE、及び高速機優先モードの実行ステップHを実施する形態である。但し、変形例として、配分量・補正量の算出ステップE、低速機優先モードの実行ステップLを実施してもよい。
【0060】
第2の実施形態は、周波数帯域自動調整モードの実行ステップC、及び配分量・補正量の算出ステップEを実施する形態である。但し、変形例として、第1の実施形態で述べた実行ステップH又はLを更に実施してもよい。
【0061】
第3の実施形態は、発電機の優先モードの選択ステップA及び配分量・補正量の算出ステップEと、ステップAで選択された実行ステップH又はLを実施する形態である。但し、変形例として、第2の実施形態で述べた実行ステップCを更に実施してもよい。
【0062】
第4の実施形態は、周波数帯域の調整モードの選択ステップB、ステップBで選択された実行ステップC又はD、及び配分量・補正量の算出ステップEを実施する形態である。但し、変形例として、第1の実施形態で述べた実行ステップH又はLを更に実施してもよく、これに加え、第3の実施形態で述べた選択ステップAを更に実施してもよい。
【0063】
以上が各実施形態の概要である。以下、各実施形態を具体的に順次説明する。
【0064】
<第1の実施形態:調整余力に応じたAR配分手法>
図5乃至図7は第1の実施形態に係るAR配分部26によるAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
負荷周波数制御(LFC)を行う場合、周波数分解した地域要求電力(AR)を高速機や低速機の発電機に配分する。しかしながら、並列するLFC対象発電機の調整余力(最大出力と現在出力の差、または最小出力と現在出力の差)が配分すべき地域要求電力(AR)よりも小さい場合、地域要求電力(AR)が配分しきれず、配分残となる。
【0066】
そこで、本実施形態では、例えば高速機が分担すべきAR配分量に対して、高速機の調整余力が小さい場合、図8に示すように、調整しきれない配分量を低速機のAR配分量に加算する構成となっている。また同様に、本実施形態では低速機が分担すべきAR配分量に対して、低速機の調整余力が小さい場合は、調整しきれない配分量をELD補正量に換算する構成としている。
【0067】
具体的には、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値(経済負荷配分スケジュール値)に上乗せし、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分(高速機の配分残)を低速機に配分し、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分(低速機の配分残)をELD値に更に上乗せする高速機優先配分機能をもっている。
【0068】
なお、AR配分部26において、高速機、低速機の配分残、ならびに上げ、下げの調整余力は、以下の(2)〜(21)式に示すように、算出可能となっている。
【数1】
【0069】
【数2】
【0070】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0071】
AR配分部26は、図3に示したように、配分量・補正量の算出ステップEを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値に上乗せする。
【0072】
続いて、AR配分部26は、図5に示したように、高速機優先モードの実行ステップHを実行する。すなわち、AR配分部26は、(2)〜(11)式及び図6に示すように、高速機の配分残を算出する(ステップH1、H1−1〜H1−11)。
【0073】
ステップH1の後、AR配分部26は、高速機残の有無を判定し(ステップH2)、高速機残が無ければ(高速機残=0のとき)、処理を終了する。
【0074】
ステップH2の判定の結果、高速機残があれば、AR配分部26は、高速機残を低速機配分量に加算する(ステップH3)。
【0075】
ステップH3の後、AR配分部26は、(12)〜(21)式及び図7に示すように、低速機の配分残を算出する(ステップH4、H4−1〜H4−11)。
【0076】
ステップH4の後、AR配分部26は、低速機残の有無を判定し(ステップH5)、低速機残が無ければ(低速機残=0のとき)、処理を終了する。
【0077】
ステップH5の判定の結果、低速機残があれば、AR配分部26は、低速機残を更にELD補正量に加算する(ステップH6)。
【0078】
上述したように本実施形態によれば、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分をELD値に上乗せし、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を低速機に配分し、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分をELD値に更に上乗せする構成により、高速機、ならびに低速機の調整余力に応じて地域要求電力(AR)を配分することができる。従って、発電機の調整余力が少ない場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制でき、配分残を少なくして、制御性能を高めることが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、高速機が分担すべきAR配分量に対して、高速機の調整余力が小さい場合に、調整しきれない配分量を低速機のAR配分量に加算する方法を示したが、配分量の加算順序はこの方法に限定されない。例えば、配分量の加算順序は、図9及び図10に示すように、低速機にて調整しきれない配分量を高速機のAR配分量に加算する方法としてもよい。この場合、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を抽出し、短周期成分を発電機G1〜Gnのうちの高速機に配分し、中周期成分を発電機G1〜Gnのうちの低速機に配分し、長周期成分をELD値(経済負荷配分スケジュール値)に上乗せし、中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分(低速機の配分残)を高速機に配分し、短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分(高速機の配分残)をELD値に更に上乗せする低速機優先配分機能を有するようにすればよい。なお、図9中、低速機の配分残の算出ステップL1は、前述した算出ステップH4と同様に実行すればよい。また、高速機の配分残の算出ステップL4は、前述した算出ステップH1と同様に実行すればよい。
【0080】
また、高速機及び低速機は、火力発電機、水力発電機などの発電機に限定されるものではなく、電力の充放電が可能な二次電池(蓄電池、充電式電池等)の電力貯蔵装置などにも適用可能である。
【0081】
<第2の実施形態:運転体制に応じたAR配分手法>
図11は第2の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0082】
負荷周波数制御(LFC)を行う場合、第1の実施形態と同様、周波数分解したARを高速機や低速機の発電機に配分することになるが、LFC対象発電機の並列台数は常に固定(決められた発電機が対象)となる訳ではなく、季節や時間帯、または需要変動に応じて中央給電指令所の運転員が発電機の選定、ならびに台数を調整している。そのため、低速機、高速機の発電機の台数がどちらかに偏った場合などは、調整余力に差が生じる可能性がある。例えば、LFC対象発電機の並列台数が、高速機は多数台+低速機は少数台になるように、運転体制が偏ってしまうような場合、低速機側は調整台数も調整余力も小さくなることで、地域要求電力(AR)を十分に配分しきれず、配分残が生じる可能性がある。逆に、高速機は少数台+低速機は多数台の場合も同様であり、高速機側にて配分残が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、高速機、ならびに低速機の運転体制に応じて、分担すべき地域要求電力(AR)の周波数帯域を変更する。
【0083】
基本的には、高速機の調整余力が低速機の調整余力に比べ大きくなれば、高速機が分担すべき周波数帯域の時間幅を広げる(低速機が分担すべき周波数帯域の時間幅を狭める)するようにする。即ち、調整余力の小さい低速機は周波数帯域の時間幅を小さくし、比較的に長い周波数帯域を持たせることで、ゆっくりとした変動周期を分担することにする。これにより、調整余力の小さい場合でも配分残が発生しにくくする。逆も同様であり、低速機の調整余力が高速機の余力に比べ大きくなれば、調整余力の小さい高速機は周波数帯域の時間幅を小さくするようにする。
【0084】
具体的には、AR配分部26は、以下の機能(f2-1)〜(f2-4)をもっている。なお、このうち3つの機能(f2-1)〜(f2-3)は、時間幅調整機能を構成している。
【0085】
(f2-1) 発電機G1〜Gnのうちの高速機の調整余力(全ての高速機余力の総和)と発電機G1〜Gnのうちの低速機の調整余力(全ての低速機余力の総和)とを算出する機能。
【0086】
(f2-2) 高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする機能。
【0087】
(f2-3) 低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする機能。
【0088】
(f2-4) AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする機能。
【0089】
尚、周波数帯域の時間幅の調整条件は(22)〜(33)式に示す通りである。
【数3】
【0090】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図11を参照しながら説明する。
【0091】
始めに、AR配分部26は、周波数帯域自動調整モードの実行ステップCを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25が周波数分解した地域要求電力(AR)が0以上か否かを判定し(ステップC1)、否の場合にはステップC7に進む。
【0092】
ステップC1の判定の結果、地域要求電力(AR)が0以上のとき、AR配分部26は、前述した(10)式、(20)式及び(22)式に基づいて、全ての高速機上げ余力の総和と、全ての低速機上げ余力の総和とを算出する(ステップC2)。
【0093】
しかる後、AR配分部26は、ステップC2の算出結果と、所定の重み係数とを用いて高速機の調整余裕量を(22)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC3)。
【0094】
高速機の調整余裕量が閾値以上のとき(高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(23)〜(24)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を大きくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を小さくする(ステップC4)。
【0095】
ステップC3の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、ステップC2の算出結果と、所定の重み係数とを用いて低速機の調整余裕量を(25)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC5)。
【0096】
低速機の調整余裕量が閾値以上のとき(低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(26)〜(27)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を小さくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を大きくする(ステップC6)。
【0097】
一方、ステップC1の判定の結果、地域要求電力(AR)が負の値のとき、AR配分部26は、前述した(11)式、(21)式及び(28)式に基づいて、全ての高速機下げ余力の総和と、全ての低速機下げ余力の総和とを算出する(ステップC7)。
【0098】
しかる後、AR配分部26は、ステップC7の算出結果と、所定の重み係数とを用いて高速機の調整余裕量を(28)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC8)。
【0099】
高速機の調整余裕量が閾値以上のとき(高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(29)〜(30)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を大きくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を小さくする(ステップC9)。
【0100】
ステップC8の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、ステップC7の算出結果と、所定の重み係数とを用いて低速機の調整余裕量を(31)式の左辺に示すように算出し、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC10)。
【0101】
低速機の調整余裕量が閾値以上のとき(低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合に相当)、AR配分部26は、(32)〜(33)式に示すように、高速機に配分される短周期成分aの周波数帯域の時間幅を小さくすると共に、低速機に配分される中周期成分bの周波数帯域の時間幅を大きくする(ステップC11)。
【0102】
以上により、周波数帯域自動調整モードの実行ステップCが完了する。
【0103】
続いて、AR配分部26は、図3に示したように、配分量・補正量の算出ステップEを実行する。すなわち、AR配分部26は、AR分解部25により周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分をステップCで調整した時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする。
【0104】
上述したように本実施形態によれば、高速機の調整余力と低速機の調整余力とを算出し、高速機の調整余力が低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、低速機の調整余力が高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を当該時間幅に応じて抽出し、短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せする構成により、発電機の運転体制に応じて分担すべき地域要求電力(AR)を配分することができる。従って、偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制でき、制御残を少なくして、制御性能を高めることが可能となる。
【0105】
また、本実施形態では、高速機、ならびに低速機の上げ、下げ余力を判断基準としたが、これに限らず、例えば図12に示すように、高速機、ならびに低速機のLFC対象発電機台数を判断基準としてもよい。この場合、AR配分部26は、高速機の調整余裕台数を高速機台数−低速機台数として算出し(ステップC21)、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC22)。高速機の調整余裕台数が閾値以上のとき、AR配分部26は、ステップC4と同様に各成分a,bの周波数帯域の時間幅を調整する(ステップC23)。また、ステップC22の判定の結果、否の場合には、AR配分部26は、低速機の調整余裕台数を低速機台数−高速機台数として算出し(ステップC24)、この算出結果が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップC25)。低速機の調整余裕台数が閾値以上のとき、AR配分部26は、ステップC6と同様に各成分a,bの周波数帯域の時間幅を調整する(ステップC26)。
【0106】
また、本実施形態は、第1の実施形態のステップH又はLと組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、第1の実施形態の配分量・補正量の算出ステップEよりも先行して、周波数自動調整モードの実行ステップCを実行すればよい。
【0107】
また、本実施形態は、第1の実施形態と同様、高速機、低速機は火力発電機、水力発電機などの発電機に限定されるものではなく、電力の充放電が可能な二次電池(蓄電池、充電式電池等)の電力貯蔵装置などにも適用可能である。
【0108】
<第3の実施形態:配分残の優先割り付け手法>
図13は第3の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0109】
第1の実施形態では、高速機の配分残を低速機の配分量に加算する、または逆に低速機の配分残を高速機の配分量に加算する方法を示し、この加算順序も限定されるものではないことも示した。これらを踏まえ、本実施形態では、低速機と高速機のどちらに優先的に配分残を配分量に加算させるかを任意に選択できる機能をAR配分部26を備えた形態としている。なお、実際の運用においては、中央給電指令所における運用者が任意に選択できるように切り替えモードを有するようにすればよい。
【0110】
具体的には、AR配分部26は、第1の実施形態の機能に加え、以下の各機能(f3-1)〜(f3-4)を備えている。
【0111】
(f3-1) 予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択するモード選択機能。
【0112】
(f3-2) 高速機優先モードの選択により高速機優先配分機能(ステップH)を動作させる機能。
【0113】
(f3-3) 低速機優先モードの選択により低速機優先配分機能(ステップL)を動作させる機能。
【0114】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図13を参照しながら説明する。
【0115】
始めに、AR配分部26は、発電機の優先モードの実行ステップAを実行する。すなわち、AR配分部26は、例えば高速機に優先的に配分残を割り付けるか否かの問い合わせを表示部(図示せず)に画面表示させ(ステップA1)、操作者の操作に応じて、高速機に優先的に配分残を割り付ける場合には高速機優先モードを選択し(ステップA2)、否の場合には低速機優先モードを選択する(ステップA3)。
【0116】
続いて、AR配分部26は、ステップA2で高速機優先モードが選択された場合には、共通のステップEの後、図5乃至図8に示したステップHの処理を実行する。
【0117】
また、AR配分部26は、ステップA3で低速機優先モードが選択された場合には、共通のステップEの後、図9及び図10に示したステップLの処理を実行する。
【0118】
上述したように本実施形態によれば、予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択し、周波数分解した地域要求電力の短周期成分を高速機に配分し、中周期成分を低速機に配分し、長周期成分を経済負荷配分スケジュール値に上乗せした後、選択した高速機優先モード又は低速機優先モードに応じて、配分しきれなかった周期成分を別種の発電機又は経済負荷配分スケジュール値に配分する構成により、第1の実施形態の効果に加え、高速機、ならびに低速機のどちらに優先的に配分残を割り付けるかを任意に選択することができる。従って、運転状況に沿った運用が可能となる。
【0119】
また、本実施形態は、第2の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、共通の配分量・補正量の算出ステップEよりも先行して、周波数自動調整モードの実行ステップCを実行すればよい。
【0120】
<第4の実施形態:周波数帯域の選択手法>
図14は第4の実施形態に係るAR配分部26のAR配分処理を説明するためのフローチャートである。
【0121】
第2の実施形態では、並列する発電機の運転体制によって周波数帯域を自動的に調整する方法について示した。但し、運転状況によっては運用者の考えによる周波数帯域の調整が必要であり、手動による調整機能が必要となる。そこで、本実施形態では、運用者が任意に周波数帯域を自動調整するか手動調整するかを選択できる機能をAR配分部26が備えた形態としている。
【0122】
具体的には、AR配分部26は、第2の実施形態の各機能に加え、以下の各機能(f4-1)〜(f4-3)を備えている。
【0123】
(f4-1) 予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択するモード選択機能。
【0124】
(f4-2) 自動調整モードの選択により時間幅調整機能(前述した機能(f2-1)〜(f2-3))を動作させる機能。
【0125】
(f4-3) 手動調整モードの選択により動作し、操作者の操作に応じて、高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整する手動調整モード実行機能。
【0126】
次に、以上のように構成されたAR配分部26の動作について図14を参照しながら説明する。
【0127】
始めに、AR配分部26は、周波数帯域の調整モードの実行ステップBを実行する。すなわち、AR配分部26は、例えば周波数帯域を自動設定するか否かの問い合わせを表示部(図示せず)に画面表示させ(ステップB1)、操作者の操作に応じて、周波数帯域を自動設定する場合には周波数帯域自動調整モードを選択し(ステップB2)、否の場合には周波数帯域手動調整モードを選択する(ステップB3)。
【0128】
続いて、AR配分部26は、ステップB2で周波数帯域自動調整モードが選択された場合には、図11又は図12に示した処理を実行し、しかる後、共通のステップEを実行する。
【0129】
また、AR配分部26は、ステップB3で周波数帯域手動調整モードが選択された場合には、操作者の操作に応じて、高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整し、しかる後、共通のステップEを実行する。
【0130】
上述したように本実施の形態によれば、予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択し、選択した調整モードに応じて周波数帯域の時間幅を調整し、周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を当該時間幅に応じて抽出し、各成分を配分する構成により、第2の実施形態の効果に加え、地域要求電力(AR)を周波数分解する際の時間幅を任意に決めることができる。従って、運用者の考えに沿った運用が可能となる。
【0131】
また、本実施形態は、第1の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、共通のステップEの実行後、第1の実施形態で述べた高速機優先モードの実行ステップH又は低速機優先モードの実行ステップLを実行すればよい。
【0132】
さらに、本実施形態は、第1の実施形態に加え、第3の実施形態と組み合わせてもよい。この場合、AR配分部26は、図4に示したように、各ステップA,B,C(又はD),E,H(又はL)を実行すればよい。
【0133】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、配分しきれない周期成分を調整余力の大きい別種の発電機に配分する構成により、発電機の調整余力が少ない場合又は偏った運転体制の場合に、地域要求電力の配分残の発生を抑制することができる。
【0134】
なお、上記の各実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0135】
また、この記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であっても良い。
【0136】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が上記実施形態を実現するための各処理の一部を実行しても良い。
【0137】
さらに、各実施形態における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0138】
また、記憶媒体は1つに限らず、複数の媒体から上記の各実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成は何れの構成であっても良い。
【0139】
なお、各実施形態におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上記の各実施形態における各処理を実行するものであって、パソコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であっても良い。
【0140】
また、各実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0141】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1…電力系統、2…計算機、3…他系統、4…連系線、5…MMI(マンマシンインターフェース)、201〜20n…発電機出力入力部、211〜21n…発電機情報入力部、221〜22n…目標指令値算出部、231…23n…指令値伝送手段、24…AR計算部、25…AR分解部、26…AR配分部、27…発電端総需要計算部、28…オンライン予測需要部、29…前日運転計画部、30…ELDスケジュール計算部、311〜31n…出力変化量算出処理の起動タイミング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の周波数変化量を検出する周波数変化量検出手段と、
前記電力系統の連系線潮流変化量を検出する連系線潮流変化量検出手段と、
前記周波数変化量及び前記連系線潮流変化量に基づいて地域要求電力を算出する地域要求電力算出手段と、
前記算出した地域要求電力を周波数分解する周波数分解手段と、
前記周波数分解した地域要求電力を発電機毎に配分する地域要求電力配分手段と、
前記配分された地域要求電力と経済負荷配分制御によって算出された経済負荷配分スケジュール値とから目標指令値を算出する目標指令値算出手段と、
前記算出した目標指令値を前記発電機に伝送する指令値伝送手段と
を備えた負荷周波数制御システムであって、
前記地域要求電力配分手段は、
前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出し、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする時間幅調整手段を備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記自動調整モードの選択により前記時間幅調整手段を動作させる手段と、
前記手動調整モードの選択により動作し、操作者の操作に応じて、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整する手動調整モード実行手段と、
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記低速機に配分し、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする高速機優先配分手段
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記高速機に配分し、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする低速機優先配分手段と、
予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記高速機優先モードの選択により前記高速機優先配分手段を動作させる手段と、
前記低速機優先モードの選択により前記低速機優先配分手段を動作させる手段と、
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記高速機に配分し、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする低速機優先配分手段
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の負荷周波数制御システムの一部分として動作するコンピュータに用いられるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記地域要求電力算出手段、前記周波数分解手段、前記地域要求電力配分手段、前記目標指令値算出手段、前記指令値伝送手段、として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
電力系統の周波数変化量を検出する周波数変化量検出手段と、
前記電力系統の連系線潮流変化量を検出する連系線潮流変化量検出手段と、
前記周波数変化量及び前記連系線潮流変化量に基づいて地域要求電力を算出する地域要求電力算出手段と、
前記算出した地域要求電力を周波数分解する周波数分解手段と、
前記周波数分解した地域要求電力を発電機毎に配分する地域要求電力配分手段と、
前記配分された地域要求電力と経済負荷配分制御によって算出された経済負荷配分スケジュール値とから目標指令値を算出する目標指令値算出手段と、
前記算出した目標指令値を前記発電機に伝送する指令値伝送手段と
を備えた負荷周波数制御システムであって、
前記地域要求電力配分手段は、
前記発電機のうちの高速機の調整余力と前記発電機のうちの低速機の調整余力とを算出し、前記高速機の調整余力が前記低速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくし、前記低速機の調整余力が前記高速機の調整余力よりも閾値以上に大きい場合には、当該低速機が分担する周波数帯域の時間幅を大きくする一方、当該高速機が分担する周波数帯域の時間幅を小さくする時間幅調整手段を備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
予め自動調整モード又は手動調整モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記自動調整モードの選択により前記時間幅調整手段を動作させる手段と、
前記手動調整モードの選択により動作し、操作者の操作に応じて、前記高速機が分担する周波数帯域の時間幅と、前記低速機が分担する周波数帯域の時間幅とを調整する手動調整モード実行手段と、
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記低速機に配分し、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする高速機優先配分手段
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記地域要求電力配分手段は、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記高速機に配分し、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする低速機優先配分手段と、
予め高速機優先モード又は低速機優先モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記高速機優先モードの選択により前記高速機優先配分手段を動作させる手段と、
前記低速機優先モードの選択により前記低速機優先配分手段を動作させる手段と、
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の負荷周波数制御システムにおいて、
前記周波数分解した地域要求電力の短周期成分、中周期成分及び長周期成分を前記時間幅に応じて抽出し、前記短周期成分を前記高速機に配分し、前記中周期成分を前記低速機に配分し、前記長周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に上乗せし、前記中周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった中周期成分を前記高速機に配分し、前記短周期成分を配分しきれなかった場合には当該配分しきれなかった短周期成分を前記経済負荷配分スケジュール値に更に上乗せする低速機優先配分手段
を更に備えたことを特徴とする負荷周波数制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の負荷周波数制御システムの一部分として動作するコンピュータに用いられるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記地域要求電力算出手段、前記周波数分解手段、前記地域要求電力配分手段、前記目標指令値算出手段、前記指令値伝送手段、として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−34324(P2013−34324A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169493(P2011−169493)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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