説明

電力装置

【課題】DC/DCコンバータよりもバッテリ側においてノイズを抑制すると共にノイズの車体への伝播を抑制する。
【解決手段】DC/DCコンバータ26の端子と低圧バッテリ24の正極とをシールド線30の芯線32によって接続し、DC/DCコンバータ26が接地された筐体27と低圧バッテリ24の負極とを芯線32と略同一のインピーダンスのシールド線30のシールド部34によって接続し、シールド部34に比してインピーダンスが高いハイインピーダンス部材40を低圧バッテリ24の負極と車体28とに介在させる。これにより、低圧系のコモンモードノイズを抑制することができると共にノイズ電流の車体28への伝播を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接地線で金属製の車体に接地された金属製の筐体に収納されたインバータと、接地線で金属製の車体に接地された金属製の筐体に収納されたモータと、をシールド線によって接続した装置において、シールド線のシールド層を高周波リアクトルを介してモータまたはインバータの筐体に接続するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、こうした構成により、シールド層に生じる高周波の電位変動を高周波リアクトルによって熱エネルギに変換して吸収し、高周波の電位変動が筐体,接地線を介して車体に伝播するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−80215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の構成の他に、負極が接地線によって車体に接地された低圧バッテリや、インバータなどが接続された高圧系の電力を降圧して低圧バッテリ側に供給するDC/DCコンバータなどを備えるものでは、モータとインバータとをシールド線で接続するだけでは、DC/DCコンバータで発生したノイズが電子機器や低圧バッテリなどを介して車体に伝播されるという課題があった。
【0005】
本発明の電力装置は、DC/DCコンバータよりもバッテリ側においてノイズを抑制すると共にノイズの車体への伝播を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電力装置は、
バッテリと、筐体に収納されて前記バッテリよりも電圧が高い高圧系の電力を降圧して前記バッテリ側に供給するDC/DCコンバータと、を備え、車載された電力装置において、
前記DC/DCコンバータの端子と前記バッテリの正極とがシールド線の芯線によって接続され、前記DC/DCコンバータが接地された前記筐体と前記バッテリの負極とが前記シールド線の芯線と略同一のインピーダンスの前記シールド線のシールド部によって接続され、前記バッテリの負極と車体とが前記シールド部に比してインピーダンスが高くなるよう接続されてなる、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電力装置では、DC/DCコンバータの端子(出力ライン)とバッテリの正極とをシールド線の芯線によって接続し、DC/DCコンバータが接地された筐体とバッテリの負極とをシールド線の芯線と略同一のインピーダンスのシールド線のシールド部によって接続し、バッテリの負極と車体とをシールド部に比してインピーダンスが高くなるよう接続する。したがって、シールド線の芯線とシールド部とのインピーダンスを略同一にすることにより、コモンモードノイズを抑制することができ、バッテリの負極と車体とをシールド部に比してインピーダンスが高くなるよう接続することにより、ノイズの車体への伝播を抑制することができる。ここで、後者については、シールド部に比してインピーダンスが高いハイインピーダンス部材をバッテリの負極と車体とに介在させる、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としての電力装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】DC/DCコンバータ26と低圧系のノイズの伝播の様子を説明するための回路図である。
【図3】各周波数についてのノイズレベルの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としての電力装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電力装置20は、例えば同期発電電動機として構成されたモータ12やモータ12を駆動するためのインバータ14,例えば定格電圧が200Vのリチウムイオン二次電池などの二次電池として構成されてインバータ14を介してモータ12と電力をやりとり可能な高圧バッテリ16などと共に電気自動車やハイブリット自動車などに搭載され、図示するように、例えば定格電圧が12Vの鉛蓄電池などの高圧バッテリ16より電圧が低い二次電池として構成された低圧バッテリ24と、高圧バッテリ16やインバータ14側の電力を降圧して低圧バッテリ24側に供給するDC/DCコンバータ26と、を備える。なお、モータ12は金属製の筐体13に収納されており、インバータ14やDC/DCコンバータ26は金属製の筐体27に収納されており、高圧バッテリ16は金属製の筐体16に収納されている。また、筐体13や筐体15,低圧バッテリ24の負極,筐体27などは導電ラインによって金属製の車体28に接地されている。以下、DC/DCコンバータ26よりもインバータ14や高圧バッテリ16側を高圧系といい、DC/DCコンバータ26よりも低圧バッテリ24側を低圧系という。
【0012】
DC/DCコンバータ26は、図示しないが、スイッチング回路のスイッチング素子のスイッチングによって高圧系の電力を直流から交流に変換し、変換した電力をトランスによって降圧し、降圧した電力を整流回路によって整流して低圧系に供給できるように構成されている。
【0013】
実施例の電力装置20では、DC/DCコンバータ26の端子(出力ライン)と低圧バッテリ24の正極とは、内側から順に芯線32,絶縁体,シールド部(例えば、編組線など)34,保護被覆の順に形成されたシールド線30の芯線32によって接続されている。また、DC/DCコンバータ26が接地された筐体27と低圧バッテリ24の負極とは、芯線32と略同一(同一または予め定められた許容範囲内)のインピーダンスで且つ芯線32に対する静電シールドとしての機能を有するシールド部34によって接続されている。さらに、低圧バッテリ24の負極と車体28との間の導電ラインには、芯線32やシールド部34に比してインピーダンスが高い部材(以下、ハイインピーダンス部材(例えば、フェライトコアやインダクタなど)40が設けられている。このハイインピーダンス部材40は、直流分への影響を抑制するために、抵抗成分の比較的小さい部材を用いることが好ましい。加えて、実施例では、ライトや音響機器などの電子機器38の一方の端子が芯線32やシールド部34に比してインピーダンスが高い(例えば、芯線32やシールド部34に比して長さが長い)ケーブル36によってリレーボックス(ヒューズやレジスタなどを有する)37を介して芯線32に接続されていると共に、電子機器38の他方の端子が導電ラインによって車体28に接地されている。
【0014】
図2は、DC/DCコンバータ26と低圧系のノイズの伝播の様子を説明するための回路図である。図2から解るように、DC/DCコンバータ26から低圧系に出力されるノイズ電流は、芯線32を介して低圧バッテリ24の正極に入力されて更に低圧バッテリ24の負極からシールド部34を介して筐体27に入力される。しかし、芯線32とシールド部34とではノイズ電流の方向が逆になり、また、実施例では、芯線32とシールド部34とのインピーダンスが略同一になるようにしたから、芯線32のノイズ電流とシールド部34のノイズ電流とは互いに打ち消されることになり、低圧系のコモンモードノイズを抑制することができる。しかも、低圧バッテリ24の負極と車体28とにハイインピーダンス部材40を介在させることにより、低圧バッテリ24を介して車体28にノイズ電流が伝播されるのをより抑制することができ、ケーブル36のインピーダンスが芯線32やシールド部34のインピーダンスに比して高くなるようにすることにより、芯線32から電子機器38を介して車体28にノイズ電流が伝播されるのを抑制することができる。これらより、ノイズ電流のループが形成されるのを抑制することができ、電磁ノイズを抑制することができる。参考のために、各周波数についてのノイズレベルの一例を図3に示す。図中、実線は、DC/DCコンバータ26と低圧バッテリ24とをシールド線30によって接続すると共にハイインピーダンス部材40を低圧バッテリ24の負極と車体28とに介在させる実施例の場合を示し、破線は、DC/DCコンバータ26と低圧バッテリ24とをシールド線ではなく通常のケーブルによって接続すると共にハイインピーダンス部材40を低圧バッテリ24の負極と車体28とに介在させない比較例の場合を示す。実施例の場合、図3から明らかなように、比較例に比してノイズが低減されている。
【0015】
また、実施例の電力装置20では、実施例の筐体13と車体28との間の導電ライン,筐体15と車体28との間の導電ライン,筐体27と車体28との間の導電ラインには、それぞれ、ハイインピーダンス部材40と同様のハイインピーダンス部材42,44,46が設けられている。これにより、筐体13や筐体15,筐体27から車体28にノイズ電流が伝播されるのをより抑制することができる。
【0016】
以上説明した実施例の電力装置20によれば、DC/DCコンバータ26の端子と低圧バッテリ24の正極とをシールド線30の芯線32によって接続し、DC/DCコンバータ26が接地された筐体27と低圧バッテリ24の負極とを芯線32と略同一のインピーダンスのシールド線30のシールド部34によって接続し、シールド部34に比してインピーダンスが高いハイインピーダンス部材40を低圧バッテリ24の負極と車体28とに介在させるから、低圧系のコモンモードノイズを抑制することができると共にノイズ電流の車体28への伝播を抑制することができる。
【0017】
実施例の電力装置20では、シールド部34に比してインピーダンスが高いハイインピーダンス部材40を低圧バッテリ24の負極と車体28とに介在させるものとしたが、低圧バッテリ24の負極と車体28とをシールド部34に比してインピーダンスが高くなるよう接続するものであればよく、例えば、シールド部34に比してインピーダンスが高い(例えば、芯線32やシールド部34に比して長さが長い)ケーブルによって低圧バッテリ24の負極と車体28とを接続するものなどとしてもよい。
【0018】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、低圧バッテリ24が「バッテリ」に相当し、DC/DCコンバータ26が「DC/DCコンバータ」に相当し、シールド線30の芯線32が「芯線」に相当し、シールド線30のシールド部34が「シールド部」に相当し、ハイインピーダンス部材40が「ハイインピーダンス部材」に相当する。
【0019】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、電力装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
12 モータ、13 筐体、14 インバータ、15 筐体、16 高圧バッテリ、20 電力装置、24 低圧バッテリ、26 DC/DCコンバータ、27 筐体、28 車体、30 シールド線、32 芯線、34 シールド部、36 ケーブル、38 電子機器、40,42,44,46 ハイインピーダンス部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、筐体に収納されて前記バッテリよりも電圧が高い高圧系の電力を降圧して前記バッテリ側に供給するDC/DCコンバータと、を備え、車載された電力装置において、
前記DC/DCコンバータの端子と前記バッテリの正極とがシールド線の芯線によって接続され、前記DC/DCコンバータが接地された前記筐体と前記バッテリの負極とが前記シールド線の芯線と略同一のインピーダンスの前記シールド線のシールド部によって接続され、前記バッテリの負極と車体とが前記シールド部に比してインピーダンスが高くなるよう接続されてなる、
ことを特徴とする電力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−187702(P2011−187702A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51707(P2010−51707)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】