説明

電力貯蔵デバイスセルおよび電力貯蔵デバイスセルモジュール

【課題】扁平面に面圧を印加した場合に扁平巻回電極の変形および破損が生じ難く、長期にわたり高い電池性能および安定性を維持する電力貯蔵デバイスセル等の提供。
【解決手段】扁平巻回電極4は、集電箔に電極活物質が塗布された正極8および負極9と、セパレータ11とを重ねて扁平な形状に巻回されている。正極及び負極周縁部はそれぞれ、辺縁部間が積層方向に電気的に接続され、正極端子及び負極端子が接続されている。外装容器6は、扁平巻回電極と、正極端子−正極周縁部間の接続部12と、負極端子−負極周縁部間の接続部13とを収納する。外装容器と、扁平巻回電極及び一対の前記接続部との間には、緩衝材5が設けられ、緩衝材は、接続部を覆う部分のほうが、扁平部を覆う部分よりも厚くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどの扁平巻回形の電力貯蔵デバイスセル、またはその複数のセルを直列に接続したモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
扁平巻回形で容器に収納された電力貯蔵デバイスセルとしては、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどがある。リチウムイオン電池は、正極にコバルト、ニッケル、マンガンなどの酸化物を、負極にカーボン材料を用いたものであり、リチウムイオンをカーボン負極に挿入・脱離させることによって充放電を行う。電気二重層キャパシタは、セパレータを挟んで互いに対向する分極性電極(正極および負極)を設け、電解液中において分極性電極の表面に形成される電気二重層の静電容量を利用したものである。さらに、新しい電気二重層キャパシタとして、電気二重層キャパシタの負極にリチウムイオンをドープしたリチウムイオンキャパシタが開発されている。
【0003】
これらの電力貯蔵デバイスセルは安価でコンパクトに構成できるが、出力電圧が2〜4V程度と、アルミ電解コンデンサの出力電圧の400Vに比べて低いので、一般に直列に接続して出力電圧を上げたモジュールとして使用される。
【0004】
扁平巻回形の電力貯蔵デバイスセルに用いられる電極は、厚さが10〜50μm程度の帯状の正極集電箔および負極集電箔の両面に正極電極層および負極電極層を塗布してセルロースやオレフィン系の樹脂繊維などでできた多孔質な帯状のセパレータを介して、扁平形状の巻回軸芯を中心として数m〜数十m巻回されたものである。このように構成された扁平巻回形の電力貯蔵デバイスセルは、短冊状の電極を数十枚積み重ねられた積層形の電力貯蔵デバイスセルに比べて、短時間で製造することができるので量産性や、コストの点で有利である。
【0005】
このような扁平巻回形の電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタは、省エネルギーの観点からモータの回生エネルギーを貯蔵する応用が期待されており、100Aを超える大電流充放電の繰り返し特性が求められている。大電流が流れると電流の二乗と内部抵抗に比例して電力損失が発生し、充放電効率が悪化する。また、この電力損失がそのまま発熱となるため、品質を維持するためには熱伝導体である集電箔から速やかに放熱する必要がある。そのため、集電抵抗を小さくするとともに、集電箔の熱を外部に効率よく放熱するため正極および負極に、巻回軸方向に沿って互いに反対方向にセパレータから突出した電極層が塗布されていない辺縁部を設け、この辺縁部でそれぞれ正極端子および負極端子を重ねて溶接した扁平巻回形電池の構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
扁平巻回電極の外装には金属容器またはプラスチックフィルムに金属を貼り合わせたラミネートフィルムが使用される。ラミネートフィルムは金属容器と比較して薄く軽量であるため、電力貯蔵デバイスセルの重量当たりの容量が向上する利点がある。
【0007】
ただし、ラミネートフィルムは剛性が低く外部からの衝撃に弱くなるため、外装材に巻回素子を収容し封入する前に電池素子内に樹脂層を形成、または樹脂を充填することで衝撃から保護する扁平巻回型の電力貯蔵デバイスセル構成が開示されている(例えば特許文献2参照)。また、正極または負極となる集電箔とセパレータが交互に積層された電池要素の少なくとも一方の面に弾性体が配置された構造が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
扁平巻回形の電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタセルおよびモジュールは、扁平巻回電極の扁平面に対し垂直な方向に面圧を一定以上加えることで接触抵抗を低減し性能の安定化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−040501号公報
【特許文献2】特開2000−173641号公報
【特許文献3】特開2004−103415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、扁平巻回電極の巻回時のズレや緩みといった状況や、巻回形状を保持するテープ、または電極端子の溶接部位により扁平巻回電極の扁平面に生じる凹凸によって扁平面にかかる面圧が均一にならずに局所的に面圧が過剰に印加される問題点があり、その結果、過剰に面圧を受けた部位では電極層の剥離やセパレータの破損が生じるおそれがある。また、それらの凹凸を有するセルを使用したモジュールにおいて、セルの扁平面どうしが重なるよう積層した構造の場合には、各セルにかかる面圧がより不均一となるおそれがある。
【0011】
さらに、巻回芯材を有さない扁平巻回形電極は面圧を受けた際に屈曲部分が変形し、電極層およびセパレータが伸びや折れを受けて破損するおそれがある。
【0012】
セパレータが破損した場合や、電極より剥離した電極片がセパレータを貫通した場合には短絡を引き起こし発熱やセル性能の急激な低下が起きる。
【0013】
特許文献1のように電極層が塗布されていない電極周縁部に端子を重ねて溶接する構成では、扁平巻回形電極と集電端子の溶接によって生じる凹凸が外装材に破損を与えるおそれがあり、外装材が破損した場合には封入した電解液が漏れ出したり、セル内に不純物が混入したりする。特に、アルミラミネートフィルムによる外装を用いた場合には外装が破損する可能性が大きい。特許文献3の構成は巻回形ではなく積層形のため一様に比較はできないが、弾性体は電極の平坦部を保護するが、端子溶接部位を保護しておらず外装を傷つけるおそれがあった。また、特許文献2の構成では外部からの衝撃に対し扁平巻回電極は保護されるが、面圧を印加した際に内部の凹凸を緩和出来ず内部で短絡が生じるおそれがあった。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、扁平面に面圧を印加した場合に扁平巻回電極の変形および破損が生じ難く、長期にわたり高い電池性能および安定性を維持する電力貯蔵デバイスセルおよびモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明の電力貯蔵デバイスセルは、扁平巻回電極と、正極端子及び負極端子と、外装容器とを備え、前記扁平巻回電極は、集電箔両面に電極活物質が塗布された帯状の正極および負極と、これらの間に挟まれた電気絶縁性を有する帯状のセパレータとを重ねて扁平な形状に巻回されたものであり、前記正極および負極にはそれぞれ、電極活物質が形成されていない辺縁部が設けられ、それら辺縁部は、前記セパレータから巻回軸方向に相互に反対方向に突出しており、巻回された前記扁平巻回電極において、扁平部の両側に位置して、正極周縁部及び負極周縁部を形成しており、前記正極周縁部及び負極周縁部はそれぞれ、対応する各辺縁部間が積層方向に電気的に接続されているとともに、前記正極端子及び負極端子が接続されており、前記外装容器は、その内部に、電解液と共に、前記扁平巻回電極と、正極端子−正極周縁部間の接続部と、負極端子−負極周縁部間の接続部とを収納し、前記外装容器と、前記扁平巻回電極及び一対の前記接続部との間には、緩衝材が設けられており、前記緩衝材は、前記接続部を覆う部分のほうが、前記扁平部を覆う部分よりも厚くなっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記構成の電力貯蔵デバイスセル、または電力貯蔵デバイスセルモジュールにおいて、接触抵抗を低減しセル性能の安定化を図るためにセルの扁平面に面圧を印加した際に扁平巻回電極の変形および破損が生じ難く、長期にわたり高い電池性能および安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電力貯蔵デバイスセルを説明するための平面模式図である。
【図2】本発明に係る電力貯蔵デバイスセルの扁平巻回電極を説明するための斜視模式図である。
【図3】本発明に係る電力貯蔵デバイスセルの扁平巻回電極の製造工程を説明するための模式図である。
【図4】図1のA−A’線断面を示す模式的断面図である。
【図5】図1のB−B’線断面を示す模式的断面図である。
【図6】図2の端子−周縁部間の溶接部の拡大模式図である。
【図7】本発明に係る電力貯蔵デバイスセルモジュールを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。なお、図面は説明の理解のしやすさを優先し、簡略化して記載されており、寸法及び形状は必ずしも正確ではない。
【0019】
図1は、本発明を電気二重層キャパシタに適用した一例としての実施の形態に係る電力貯蔵デバイスセルの平面模式図である。なお、本発明は、電気二重層キャパシタに限るものではなく、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタなどであっても同様に実施することができる。
【0020】
本実施の形態の電力貯蔵デバイスセル1には扁平巻回電極4および電解液が外装容器6に封入されている。セルの体積当たりの容量を高め、また内部の水分を除去するため、外装容器内を脱気した後に電解液を封入しても良い。本実施の形態では、外装容器6にはガス放出弁7が取り付けられており、これらの部品は必ずしも必要ではないが、運転時に発生するガスによるセル内圧の上昇が抑制される効果が得られる。
【0021】
電力貯蔵デバイスセル内に封入される電解質については、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタによって異なるが、一般的に用いられている材料をそのまま用いることができ、電気二重層キャパシタの場合には、例えばカチオンとアニオンの組み合わせで、カチオンが4級アンモニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウム、または1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムで、アニオンがBF4−、PF6−、ClO4−、またはCF3SO3−の塩や、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム(DMPI)のAlCl4−やBF4−などの塩などが用いられており、溶媒として炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、スルフォラン、炭酸ジエチル、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリルから選ばれる一種またはこれらの二種以上の混合溶媒などが用いられている。なお、本実施の形態において電解液とは、これらを含んだ液状の電解質溶液のことを意味する。
【0022】
図2に示すように正極集電箔の周縁部(後述する辺縁部の巻回状態の部分)14と負極集電箔の周縁部(後述する辺縁部の巻回状態の部分)15は溶接部12および13にてそれぞれ積層方向に超音波溶接で接続されており、さらには正極集電箔の周縁部14は正極端子2と、負極集電箔の周縁部15は負極端子3とそれぞれ超音波溶接で接続されている。積層された集電箔と電極端子とが電気的に接続された構造であるため、集電抵抗が低下するとともに、内部の集電箔で発生した熱が速やかに電極端子を経由して電力貯蔵デバイスセルの外部へ伝達することができるので、セルの放熱特性を向上させることができる。
【0023】
正極集電箔には厚さ20〜30μm程度のアルミ箔が、負極集電箔には厚さ20μm程度のアルミ箔もしくは厚さ10〜20μm程度の銅箔などが用いられる。正極端子2としては、厚さ0.3〜1mm程度のアルミやステンレスが、負極端子3としては、厚さ0.3〜1mm程度のアルミやニッケルメッキした銅が用いられる。これらの金属箔や電流端子の厚さは取り出す電流の大きさによって選択され、電流が大きくなるほど抵抗を低減する必要があるため厚い素材が用いられる。
【0024】
本実施の形態においては、図6(a)のように正極端子2又は負極端子3等の集電端子17は1枚のアルミ板を折り曲げて正極側集電箔の周縁部14や負極側集電箔の周縁部15等の集電箔周縁部18を挟持した構造をとるが、図6(b)のように複数枚の集電端子17により集電箔周縁部18を挟持しても良く、また図6(c)のように挟持することなく集電端子17を集電箔周縁部18と接合しても良い。さらに集電箔は積層された全てが接合されている必要はないが、速やかに熱伝導を行うためには複数枚の集電箔が集電端子17と接合されていると良い。集電端子17の溶接は超音波溶接またはスポット溶接にて行うため、正極端子−正極周縁部間の溶接部12や、負極端子−負極周縁部間の溶接部13には、溶接痕が残ることとなる。
【0025】
電力貯蔵デバイスセル1のA−A’断面を図4に示す。扁平巻回電極4および外装材料6との間には緩衝材5が設けられている。緩衝材5は扁平巻回電極4の扁平面と正極集電箔周縁部14及び負極集電箔周縁部15とを被覆しており、これらが外装容器6と直接接触しない構造をとる。緩衝材5は、正極端子−正極周縁部間の溶接部12、および負極端子−負極周縁部間の溶接部13と接する部位では扁平巻回電極の扁平面に接する部位よりも厚い構造をとる。
【0026】
集電端子―集電箔間の溶接部では集電端子と集電箔の材料を重ね合わせることにより生じる段差に加え、溶接時に生じる溶接痕の鋭利な凹凸により外装容器を傷付ける可能性があり、それらを被覆することで外装容器は保護される。特に、ラミネートフィルムを使用した場合には緩衝材を有さない構造では外装容器の破損が生じやすく、またセルを減圧した状態で封止した場合、外装容器が扁平巻回電極と密着するためより顕著に破損が起きる。
【0027】
緩衝材の材質は軟質で電解液を吸着しないクローズドポアを有する合成樹脂多孔材料、または細孔を有さない合成樹脂材料としても良い。例えばクロロプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムなどを使用できる。
【0028】
緩衝材は厚みが増加するほどセルが有する凹凸を良好に平坦化出来るが、一方で緩衝材を厚くすることでセル体積が増加し、体積当たりの容量が低下する。そのため緩衝材は扁平巻回電極の扁平面と接する領域では50μm〜5mmの厚みであることが好ましい。
【0029】
扁平巻回電極の製造工程における電極積層構造を図3に示すが、正極8と負極9の間には絶縁性のセパレータ11が設置される。正極集電箔および負極集電箔は電極活物質が両面に塗工されており、電極活物質が形成されていない辺縁部を巻回軸方向に対して互いに反対方向に前記セパレータより突出させる。
【0030】
電力貯蔵デバイスセル1のB−B’断面を図5に示すが、巻回芯材16を中心に扁平巻回電極4は構成されている。巻回芯材は、扁平巻回するときにのみ用いて、完成セルの時点で抜かれてしまう場合が多いが、それを残しても良いし、巻回時に使用した巻回芯材を抜き取った後、新たに別の芯材を挿入しても良い。
【0031】
セパレータ11は天然パルプ、天然セルロース、溶剤紡糸セルロース、バクテリアセルロースなどのセルロース系や、ガラス繊維、非フィブリル化有機繊維を含有する不織布のほか、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリアゾ化合物、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが用いられる。厚さは、15μmから50μm程度、気孔率(空隙率)は50体積%から80体積%程度で、平均気孔径が数μmから数十μmのものが用いられている。平均気孔径については様々なものがあり、同じ材料でも目付け密度で簡単に変化させることができる。
【0032】
巻回芯材16は扁平面にかかる面圧に対し変形量が少ない、剛性の高い扁平な樹脂板または金属板からなる材料を用いることが出来る。但し、金属板を使用する場合は正負極間で短絡が生じないよう、金属板表面に導電性を有さない材料で被覆するか、正負の両極と接触しない大きさとする必要がある。用いられる金属板にはアルミニウムや銅、ステンレス等がある。樹脂板を使用する場合はポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド等が使用できる。
【0033】
正極電極層および負極電極層の材料については、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタによって異なるが、一般的に用いられている材料をそのまま用いることができ、電気二重層キャパシタの場合には、活性炭微粒子に導電材としてカーボンブラックを添加し、増粘剤とバインダーを添加してペースト化して塗布し乾燥したものを用いることができる。その厚さは、用途によって異なるが、10〜100μm程度が好ましい。
【0034】
図7に、電力貯蔵デバイスセルモジュールの構造例を示す。電力貯蔵デバイスセルモジュール19は、複数の上述した電力貯蔵デバイスセル1を、出力電圧を大きくするために直列接続したものであり、電力貯蔵デバイスセル1の扁平面同士が接触する形で積層されている。但し、電力貯蔵デバイスセルモジュールの構造はセルを積層させた構造に限定されず、例えば平面状に配置して接続しても良い。平面状に配置した場合、モジュール面積が大きくなるため面圧の印加が困難になるが、放熱は有利になる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、扁平巻回電極の巻回時のズレや緩みといった状況や巻回形状を保持するテープにより生じる凹凸や、電極端子の溶接部位により生じる凹凸を緩衝材によって被覆することで、セルの扁平面にかかる面圧を均一にし、面圧の不均一さに由来した電極層の剥離やセパレータの破損を防止することができる。加えて、扁平巻回電極の端子溶接箇所と接する部位の緩衝材を扁平巻回電極の扁平部と接する部位の緩衝材よりも厚く構成することで、端子溶接によって生じる金属の鋭利な凹凸が緩衝材で被覆されて外装を傷つけることが抑制されるので、セルの破損に伴う電解液の漏出や不純物の混入による性能の低下も防止することができる。そして、これらの好適な作用は、扁平巻回電極の扁平面に対し垂直な方向に面圧を一定以上加えても、各部の損傷を防止できることを意味し、すなわち、扁平面への面圧付与による接触抵抗の低減を確実に確保することができる。このように、本実施の形態では、接触抵抗を低減しセル性能の安定化を図るためにセルの扁平面に面圧を印加した際に扁平巻回電極の変形および破損が生じ難く、長期にわたり高い電池性能および安定性を維持することができる。
【0036】
また、緩衝材は、クローズドポアを有する合成樹脂多孔材料、または、細孔を有しない合成樹脂材料で構成することで、緩衝材が電解液を吸着することを回避し、セル内に封入した電解液を扁平巻回電極に保持し、余剰な電解液の添加を不要とすることができる。
【0037】
また、剛性のある巻回芯材を設けることで扁平巻回電極の厚み方向の変形が低減されるため、扁平巻回電極は屈曲部分で電極層およびセパレータが伸びや折れを受けて破損することを防止することもできる。
【0038】
さらに、それぞれ電力貯蔵デバイスセルの正極端子と、隣接する他の電力貯蔵デバイスセルの負極端子とが隣接するように複数配列され、それら正極端子と負極端子とが接続された構成では、セルの扁平面どうしが重なるよう積層したモジュール構造としても、緩衝材によりデバイスセルの扁平面は平坦であり、いずれのセルにも面圧は均一に印加されるため、セルの破損を低減することができる。
【0039】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0040】
1 電力貯蔵デバイスセル、2 正極端子、3 負極端子、4 扁平巻回電極、5 緩衝材、6 外装容器、7 ガス放出弁、8 正極電極、9 負極電極、11 セパレータ、12 正極端子−正極周縁部間の溶接部(接続部)、13 負極端子−負極周縁部間の溶接部(接続部)、14 正極周縁部、15 負極周縁部、16 巻回芯材、17 集電端子、18 電極周縁部、19 電力貯蔵デバイスセルモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平巻回電極と、正極端子及び負極端子と、外装容器とを備え、
前記扁平巻回電極は、集電箔両面に電極活物質が塗布された帯状の正極および負極と、これらの間に挟まれた電気絶縁性を有する帯状のセパレータとを重ねて扁平な形状に巻回されたものであり、
前記正極および負極にはそれぞれ、電極活物質が形成されていない辺縁部が設けられ、それら辺縁部は、前記セパレータから巻回軸方向に相互に反対方向に突出しており、巻回された前記扁平巻回電極において、扁平部の両側に位置して、正極周縁部及び負極周縁部を形成しており、
前記正極周縁部及び負極周縁部はそれぞれ、対応する各辺縁部間が積層方向に電気的に接続されているとともに、前記正極端子及び負極端子が接続されており、
前記外装容器は、その内部に、電解液と共に、前記扁平巻回電極と、正極端子−正極周縁部間の接続部と、負極端子−負極周縁部間の接続部とを収納し、
前記外装容器と、前記扁平巻回電極及び一対の前記接続部との間には、緩衝材が設けられており、
前記緩衝材は、前記接続部を覆う部分のほうが、前記扁平部を覆う部分よりも厚くなっている
電力貯蔵デバイスセル。
【請求項2】
前記緩衝材は、クローズドポアを有する合成樹脂多孔材料、または、細孔を有しない合成樹脂材料である請求項1の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項3】
前記扁平巻回電極は、巻回芯材を有している請求項1または2の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項4】
前記巻回芯材は、扁平な樹脂板または金属板で構成されている請求項3の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項5】
複数の電力貯蔵デバイスセルを備え、
前記電力貯蔵デバイスセルは上記請求項1乃至4の何れか一項の電力貯蔵デバイスセルであり、
前記複数の電力貯蔵デバイスセルは、一の電力貯蔵デバイスセルの正極端子と、隣接する他の電力貯蔵デバイスセルの負極端子とを接続するようにして設けられている
電力貯蔵デバイスセルモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243839(P2012−243839A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110175(P2011−110175)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】