電力送受電システム
【課題】電力の過不足が生じる時に、電力の送受電を行う対象車両が、極力、互いに無駄なルートを走行せずに出会うことができるように、充電要求車両と放電要求車両とのペアリングを行う電力送受電システムを提供する。
【解決手段】情報センター13が、データベース43に、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、各車両の現在位置、進行方向及び目的地に関する情報を記録しておく。従って、データベース43に記録された情報に基づいて、各車両が、将来、走行する道路を予測することができる。このため、同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが可能になる。この結果、ペアリングされる充電要求車両及び放電要求車両とも、極端な迂回ルートを取らずに、送受電を行う相手車両に出会うことが可能になる。
【解決手段】情報センター13が、データベース43に、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、各車両の現在位置、進行方向及び目的地に関する情報を記録しておく。従って、データベース43に記録された情報に基づいて、各車両が、将来、走行する道路を予測することができる。このため、同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが可能になる。この結果、ペアリングされる充電要求車両及び放電要求車両とも、極端な迂回ルートを取らずに、送受電を行う相手車両に出会うことが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と情報センターとが通信を行い、充電要求を有する充電要求車両と放電要求を有する放電要求車両とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とする電力送受電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載バッテリに充電した電力によって走行する、いわゆる電気自動車が普及しつつある。しかし、このような電気自動車は、走行途中で電力が不足したり、過充電によって電池が劣化したりするという特有の課題を有している。
【0003】
そのため、特許文献1には、自車両の電力が不足している場合には、路側電源装置や他車両などの車両外部から電磁波などを媒介にして電力の供給を受け、逆に、電力に余裕がある場合には、車両外部に電力を供給するための電力供給システムが開示されている。すなわち、例えば、特許文献1の電力供給システムでは、自車両のバッテリの残存容量が低下したとき、その自車両の車載電源装置は、電力要求信号を周囲の路側電源装置、または他車両に向けて送信する。その際、自車両の周辺に路側電源装置、または電力を送信可能な他車両が存在していれば、路側電源装置或いは他車両は、自車両からの電力要求信号に応答して、電力の送信を行う。この結果、自車両は、路側電源装置又は他車両から電力の供給を受けることができ、バッテリの残存容量を増加させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、電力を送電する車両と、電力を受電する車両と、これらの車両との情報通信を管理する情報管理センターとからなる電力供給システムが記載されている。情報管理センターは、各車両の情報を管理するとともに、電力を送電する車両となり得る車両及び電力を受電する車両となり得る車両が、それぞれ複数存在する場合、それらの中から相対距離が最も短くなるなどの条件に基づいて、電力を送電する車両及び電力を受電する車両を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210843号公報
【特許文献2】特開2005−168085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された電力供給システムでは、バッテリの残存容量が低下したときに自車両が電力要求信号を送信するが、その電力要求信号の到達範囲内に、電力を提供可能な他車両が存在しなければ、他車両からの電力の送信を受けることはできない。実際のところ、自車両のバッテリ電力が不足したときに、ちょうど良いタイミングで電力を提供可能な他車両に出会うことを常に期待することは難しいと考えられる。
【0007】
また、特許文献2に記載された電力供給システムでは、情報管理センターが、単に相対距離が最も短いとの条件によって、電力を送電する車両と電力を受電する車両との組合せを決定する。このため、例えば、全く異なる方向に向かって走行している車両同士が、現在、たまたま近い距離に存在するとの理由で、電力を送電する車両及び電力を受電する車両として決定されることが起こりえる。この場合、少なくともいずれか一方の車両は、電力の送受電のため、本来の目的地に向かうルートから大きく外れたルートを走行せざるをえなくなる。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、電力の過不足が生じる時に、電力の送受電を行う対象車両が、極力、互いに無駄なルートを走行せずに出会うことができるように、充電要求車両と放電要求車両とのペアリングを行う電力送受電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載の電力送受電システムは、各車両と情報センターとが通信を行い、充電要求車両と放電要求車両とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とするものであって、
情報センターは、
各車両との通信により、各車両の、充電要求又は放電要求、現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報を取得し、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、取得した情報を記録しておくデータベースと、
データベースに記録されている充電要求車両と放電要求車両との中から、各々の車両の現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報に基づいて、それぞれ同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出する抽出手段と、
抽出手段によって抽出されたペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、それぞれ送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報を生成して送信する情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の電力送受電システムによれば、情報センターが、データベースに、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、各車両の現在位置、進行方向及び目的地に関する情報を記録しておく。従って、データベースに記録された情報に基づいて、各車両が、将来、走行する道路を予測することができる。このため、同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが可能になる。この結果、ペアリングされる充電要求車両及び放電要求車両とも、極端な迂回ルートを取らずに、送受電を行う相手車両に出会うことが可能になる。
【0011】
さらに、ペアリングされた充電要求車両と放電要求車両に対しては、送受電が行われるべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信されるので、それぞれの車両は、相手車両と出会うために必要な情報を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載したように、情報センターは、情報送信手段によって、ペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信された後、充電要求車両と放電要求車両との双方から承認応答が得られたとき、送信した情報に従って送受電が行われることを確定することが好ましい。
【0013】
例えば、自車両が普通乗用車であって、送受電の相手車両として大型車両が抽出されたとすると、このような大型車両を対象として走行しながら充放電する場合、自車両の運転者は前方を見づらくなったり、後方確認を行いにくくなったりする。このため、自車両の運転者は、自車両と同等以下のサイズの車両を相手車両として希望することも考えられる。このような観点から、請求項2に記載のように、一旦、充放電を行うべき送受電エリアや相手車両に関する情報を提示する。そして、提示された情報を見たそれぞれの車両の乗員から、承認応答が得られた場合に、送信した情報に従って送受電が行われることを確定することが好ましい。
【0014】
請求項3に記載したように、情報送信手段による充電要求車両へ送信される情報には予測充電量が含まれ、放電要求車両へ送信される情報には予測放電量が含まれることが好ましい。このようにすれば、今回の送受電により、どの程度の電力が充電可能であるか、あるいは、どの程度の電力が放電されるかを、充電要求車両及び放電要求車両の乗員が知ることができ、その上で、送受電の実行を承認するか否かを判断することができる。
【0015】
請求項4に記載したように、送受電を行うべき送受電エリアは、特定の複数の道路に対応付けて予め複数個所に定められており、抽出手段は、その予め定められた送受電を行うべき送受電エリアのいずれかを、同時期に走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが好ましい。例えば、充電要求車両と放電要求車両とが隊列を形成して走行しながら送受電を行う場合、その際の走行速度は比較的低くなる場合が多いと考えられる。そのため、極力、周囲の交通の妨げとならないように、送受電を行う送受電エリアを、例えば、送受電専用の走行車線を有する道路や、複数車線を有する特定の道路に予め対応付けて定めておくことが好ましい。
【0016】
請求項5に記載したように、抽出手段は、車両が、目的地に達するための本来の走行ルートに対して、送受電を行う送受電エリアとなる特定の道路を走行した場合の走行ルートによる走行距離の増加の程度が、所定の閾値以下である場合に、ペアリング車両として抽出するようにすることが好ましい。これにより、充電要求車両及び放電要求車両が、送受電を行うため、本来の目的地に向かうルートから大きく外れたルートを走行せざるをえなくなるような状況の発生を防止することができる。
【0017】
請求項6に記載したように、各車両の目的地が設定されたとき、その目的地までのルートを算出するルート算出手段と、車両に搭載されたバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、充電量検出手段によって検出された現在のバッテリ充電量を基準として、ルート算出手段によって算出されたルートを車両が走行したときのバッテリ充電量の収支を考慮して、バッテリ充電量の変化を予測する予測手段と、を備え、予測手段によって予測されるバッテリ充電量の変化により、バッテリ充電量が不足あるいは過剰となることが想定される場合に、情報センターのデータベースに、充電要求車両あるいは放電要求車両として記録することが好ましい。このように、走行ルートに基づいてバッテリ充電量の変化を予測することにより、各車両が充電要求を持つか、放電要求を持つか、あるいはそのような充放電が不要であるのかを事前に判断することができる。このため、情報センターにおいても、事前にペアリング車両の抽出を行うことができる。従って、例えば、バッテリの充電量が所定値以下や所定値以上となったタイミングで、充電又は放電要求を送信する場合に比較して、時間的な余裕を持ってペアリング車両の抽出を行うことができるので、適切なペアリング車両が抽出されないといった事態の発生を回避できる可能性を高めることができる。
【0018】
請求項7に記載したように、情報センターのデータベースには、予測手段により予測されるバッテリ充電量の変化に基づいて算出される要求充電量及び要求放電量に関する情報も記録され、抽出手段は、要求充電量及び要求放電量も考慮してペアリング車両を抽出するようにしても良い。これにより、要求充電量と要求放電量がより近い車両同士をペアリング車両として抽出することが可能になる。ただし、必ずしも要求充電量と要求放電量とが同等である必要はなく、例えば、要求充電量の所定割合以上の充電が可能な要求放電量を持った放電要求車両をペアリング車両として抽出するようにしても良い。
【0019】
請求項8に記載したように、情報センターのデータベースには、充電要求車両において、要求充電量が必要となるエリアに関する情報、及び放電要求車両において、要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も記録され、抽出手段は、要求充電量が必要となるエリアに関する情報及び要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も考慮してペアリング車両を抽出することが好ましい。これにより、適切なタイミングで送受電を行うことができるペアリング車両を抽出することができ、各車両のバッテリの過放電や過充電を防止することができる。
【0020】
請求項9に記載したように、情報送信手段は、送受電を行うべき送受電エリアにおける充放電スケジュールをペアリング車両の少なくとも一方に送信し、ペアリング車両は、その充放電スケジュールを満足するように、ペアリング車両間で送受電が行われるときの走行速度、車間距離、及び無線による電力の送受電のためのアンテナの角度の少なくとも1つを調整することが好ましい。このようにすれば、情報センターにて計画された充放電量が実現されるように、送受電エリアを走行する間に、充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態における電力送受電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】各車両に搭載された電力送受電装置の構成を示す構成図である。
【図3】車載バッテリの充放電特性を示す特性図である。
【図4】電力送受電アンテナを構成するコイルの中心位置、及びコイルの上下左右の範囲を判別するためのマーキングの例を示す図である。
【図5】車両の走行予定ルートを複数の区間に分け、それぞれの区間においておける車載バッテリの充放電量を算出する際に考慮される、各道路の高度変化に伴う車両の位置エネルギーの変化や、荷物の積み下ろしや人の乗降による重量変化や、路面摩擦係数による走行抵抗の変化などを示す図である。
【図6】車両が、経由地及び目的地を設定するとともに、経由地や目的地において、荷物の積み降ろしや人の乗降を計画したルートを走行する場合に、各区間における電力(エネルギー)の消費と発電をどのように推定するかを説明するための説明図である。
【図7】車両が、車両外部との間で電力の送受電が全く行われないまま、図6に示すルートを走行した場合に、各区間での電力の消費と発電によるバッテリ電圧の総合的な変化をエネルギー収支線として示した図である。
【図8】図7に示すエネルギー収支線に対して、車車間送受電により車載バッテリの充電を行い、かつインフラ設備との間で車載バッテリの放電を行った場合の、エネルギー収支線を示している。
【図9】情報センターの構成を示す図である。
【図10】(a)、(b)は、それぞれ、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録される項目の一例を示す図である。
【図11】車車間送受電の相手車両を決定するまでの処理を示したフローチャートである。
【図12】ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。
【図13】図12とともに、ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。
【図14】ペアリング車両を決定するため、まず、候補車両を選定する処理を示すフローチャートである。
【図15】候補車両の中から、ペアリング車両を決定するための処理を示すフローチャートである。
【図16】ペアリング車両を決定するための具体的な処理を説明するための説明図である。
【図17】ユーザの要望を考慮しつつペアリング車両を決定する処理を示すフローチャートである。
【図18】ペアリング車両として決定された充電要求車両と放電要求車両とが、送受電エリアの開始地点で相互に出会い、送受電処理を実行するための処理を示すフローチャートである。
【図19】送受電の準備処理及び送受電処理の詳細について示したフローチャートである。
【図20】充放電スケジュールについて説明するための説明図である。
【図21】充放電処理の異常発生を監視し、異常が生じたときに、どのような対策を施すかについて示したフローチャートである。
【図22】送受電エリアに、隊列走行を行っている複数のペアリング車両が存在している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における電力送受電システム10の全体構成を概略的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、電力送受電システム10は、各車両11に搭載された電力送受電装置12(車両11aに搭載された電力送受電装置12a、および、車両11bに搭載された電力送受電装置12b)と、各電力送受電装置12と無線通信回線を介して通信可能に構成された情報センター13とからなる。
【0024】
まず、各車両11に搭載された電力送受電装置12の構成について図2を参照しながら説明する。なお、電力送受電装置12は、各車両11とも共通に構成される。
【0025】
電力送受電装置12は、メインコントローラ14を中心として、電力制御装置15、測位装置16、表示装置17、車載スピーカ18、記憶装置19、アンテナ駆動装置20、走行情報検出センサ21、電力送受電アンテナ23、車両センター間情報通信アンテナ24、車両インフラ間情報通信アンテナ25、車車間情報通信アンテナ26、これら情報通信アンテナ24〜26を介して通信される通信データの処理回路27、走行制御装置29、地図記憶装置30、及び入力装置31などから構成される。
【0026】
メインコントローラ14は、CPU(図示せず)を主体として構成され、電力送受電装置12の動作全般を制御する。例えば、メインコントローラ14は、車載バッテリ22の充放電が必要となることが予測されるときに、情報センター13との情報通信を通じて、充放電が行われるべき対象(インフラ又は車両)や、その充放電場所に関する情報を取得する。そして、メインコントローラ14は、車両11が充放電場所に達して、実際に車載バッテリ22の充放電が行われるときに、充放電が適切に実施されるように、車両の走行状態や電力送受電アンテナ23の向きなどを制御する。
【0027】
電力制御装置15は、電力送受電処理回路及び電力変換処理回路などを備える。電力制御装置15は、車載バッテリ22の充放電のため、後述する電力送受電アンテナ23を介して自車両11aと他車両11bとの間で行われる電力の送受電において、当該送受電に用いる周波数に適合するように電力送受電処理回路の設定(回路定数など)を変更し、共鳴周波数を設定する。また、電力制御装置15は、電力変換処理回路によって、外部から受電した電力を車載バッテリ22に充電するために適切な電圧(大きさ、波形)に変換する。
【0028】
さらに、電力制御装置15は、バッテリ状態監視装置28により車載バッテリ22の各セルの充電状態を監視しつつ、各セルについて充電制御を行う。これにより、各セルの充電バランスを整え、車載バッテリ22を安定して動作させることができる。また、電力制御装置15は、各セルの充電バランスや温度などに異常が生じた場合には、異常情報をメインコントローラ14に出力する。
【0029】
車載バッテリ22は、例えば図3に示すような充放電特性(充電特性および放電特性)を有している。即ち、車載バッテリ22は、充電後の電圧値として許容される最大の電圧値(図3の最大許容電圧値Vmax)と放電後の電圧値として許容される最少の電圧値(図3の最小許容電圧値Vmin)との間で、電圧がほぼ線形的に遷移する領域(線形遷移領域)を有している。
【0030】
電力制御装置15は、車載バッテリ22の充電状態が、最大許容電圧値Vmaxを上回りそうになると、所定の警告動作を実行する。具体的には、電力制御装置15は、車載バッテリ22への充電の停止や、車載バッテリ22の放電の開始を実施する。合わせて、そのような充電停止や放電開始に関して、表示装置17による表示出力や車載スピーカ18による音声出力によって、車両11の運転者に警告する。
【0031】
また、電力制御装置15は、車載バッテリ22の電圧が最少許容電圧値Vminを下回りそうになったときにも、所定の警告動作を実行する。具体的には、電力制御装置15は、車載バッテリ22の放電の停止や、可能であればモータの回生動作により車載バッテリ22への充電の開始を実施する。合わせて、そのような放電停止や充電開始に関して、表示装置17による表示出力や車載スピーカ18による音声出力によって、車両11aの運転者に警告する。
【0032】
測位装置16は、測位用衛星(例えばGPS衛星やGLONASS衛星)から送信された衛星信号を受信し、その衛星信号から自車両11aの現在位置や進行方向を算出するものである。また、測位装置16は、衛星信号から自車両11aの現在位置や進行方向を算出するものに加えて、あるいは代えて、図示しない速度センサやジャイロセンサなどからの検出値に基づいて自車両11aの進行方向や現在位置を算出するものであっても良い。
【0033】
表示装置17は、例えば液晶ディスプレイで構成され、メインコントローラ14から入力された表示指令信号に基づいて、その表示指令に応じた各種の情報を表示する。例えば、表示装置17には、目的地を設定したときに、その目的地までのルートを表示したり、そのルートを走行したときの車載バッテリ22の充放電量に基づき予測されるバッテリ電圧の変化を、エネルギー収支線により表示したりする。また、表示装置17には、他車両やインフラとの送受電位置や、送受電状況が表示される。その他にも、表示装置17には、車載バッテリ22の残存容量、航続可能距離など、ユーザに有用な情報が表示される。
【0034】
車載スピーカ18は、図示しない音声コントローラを介してメインコントローラ14に接続されており、メインコントローラ14から出力された音声出力指令信号に基づいて、その音声出力指令に応じた各種の音声情報を出力する。記憶装置19は、メモリやハードディスクドライブなどの各種の記憶媒体で構成され、各種のデータや情報を記憶する。
【0035】
アンテナ駆動装置20は、コイル状の電力送受電アンテナ23の指向方向を、上下左右に所定角度範囲内で変更するものである。この電力送受電アンテナ23の中心部には、LEDなどからなる発光装置が設置されている。この発光装置は、電力送受電アンテナ23の中心部から当該電力送受電アンテナ23の指向方向に向かうスポット状の光を発する。これにより、アンテナ駆動装置20によって電力送受電アンテナ23の指向方向を変更する場合に、その変更前後の指向方向を容易に確認することができる。
【0036】
電力送受電アンテナ23は、自車両11aが有する電力(自車両11aの車載バッテリ22に蓄積されている電力)を他車両11bに送電したり、他車両11bが有する電力(他車両11bの車載バッテリ22に蓄積されている電力)を自車両11aにて受電したりするものである。この電力送受電アンテナ23として、図2に示すように、自車両11aの前部(例えば、前部バンパーの上部)に設置された前部送受電アンテナ23aと、後部(例えば、後部トランクのドア内)に設置された後部送受電アンテナ23bと、左側部(例えば、左側ドア内)に設置された左側部送受電アンテナ23cと、右側部(例えば、右側ドア内)に設置された右側部送受電アンテナ23dとが設けられている。これら電力送受電アンテナ23による電力の送電および受電は、電磁波を媒介として、共鳴誘導によって行われる。
【0037】
なお、この電力送受電アンテナ23には、図4に示すような、コイルの中心位置、及びコイルの上下左右の範囲を判別するためのマーキングが設けられている。このマーキングは、人の目には見えないが、赤外線で検出できる塗料や表面処理を行うことによって、車両の外観を損なわないようにすると良い。ただし、無線による電力の送受電を行う車両であることが分かるように、マーキングを外部から視認可能に設けても良い。このようなマーキングを設けることにより、自車両11aの電力送受電アンテナ23と他車両11bの電力送受電アンテナ23とが対向するように、容易にアンテナ角度の調整を行うことができる。
【0038】
また、電力送受電アンテナ23は、車車間における電力の送受電だけでなく、各地の道路沿いに設置される図示しない電力送受電設備との間で電力の送受電を行う際にも用いられる。つまり、電力送受電装置12は、他車両との間のみならず、各地にインフラ設備として設置されている電力送受電装置との間でも電力の送受電を可能とするものである。
【0039】
車両センター間情報通信アンテナ24は、車両11と情報センター13との間で各種の情報を無線通信回線を介して送受信(送信および受信)するものである。車両インフラ間情報通信アンテナ25は、車両11が、インフラ設備としての電力送受電装置との間で電力の送受電を行う際に、必要となる情報を送受信するためのものである。
【0040】
車車間情報通信アンテナ26は、各車両11間で各種の情報を無線によって送受信するものである。この車車間情報通信アンテナ26によって送受信される情報には、例えば、各車両11に設定された車両ID、各車両11の現在位置情報、相手車両の車両イメージ、プレートナンバー、電力送受電アンテナ23に関する情報、他車両への電力の供給(放電)を要求する放電要求信号、他車両からの電力の供給(充電)を要求する充電要求信号、などが含まれる。電力送受電アンテナ23に関する情報には、例えば、電力送受電アンテナ23を構成するコイルのサイズ、抵抗値、インピーダンス、送受電可能な電力量(許容される出力値)などが含まれる。
【0041】
なお、この車車間情報通信アンテナ26による通信は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)などの狭域通信を採用することが干渉などの通信障害が発生し難くなり望ましい。また、車車間情報通信アンテナ26による通信は、指向性の高い電波や光を用いた通信を採用することにより、より干渉などの通信障害を発生し難くすることができる。
【0042】
通信データ処理回路27は、各情報通信アンテナ24〜26によって受信した情報を、メインコントローラ14にて認識できるデータに復調したり、自車両11aから外部へ情報を送信する際に、情報を搬送波に重畳して変調したりする処理を行うものである。
【0043】
走行情報検出センサ21は、図示しない各種のセンサ(例えば、加速度センサ、速度センサ、ステアリングセンサ、レーダセンサ、カメラなど)からなり、これら各種のセンサによって検知される各種の情報を、車両の走行状態を示す走行情報としてメインコントローラ14に入力する。
【0044】
例えば、走行情報検出センサ21は、レーダセンサやカメラを用いて、他車両との相対位置(他車両との車間距離や、車幅方向におけるずれの長さなど)を検出する。メインコントローラ14は、相手車両と隊列走行をしながら送受電を行う際に、検出された相対位置が、電力の送受電を行うべき相対位置からずれている場合に、走行制御装置29に対して、他車両との車間距離や車幅方向のずれを修正するように指示する。この走行制御装置29は、車速制御装置やステアリング制御装置を含み、これら車速制御装置及びステアリング制御装置が、メインコントローラ14からの指示に従って、他車両との車間距離及び車幅方向のずれを制御する。なお、走行情報検出センサ21のカメラは、他車両11bの電力送受電アンテナ23のマーキングの位置を検出し、自車両11aと他車両11bとの電力送受電アンテナ23が正確に対向するように角度制御を行うためにも用いられる。
【0045】
さらに、メインコントローラ14は、走行情報検出センサ21における、加速度センサや速度センサによって検出される情報、及び後述する地図記憶装置30に記憶された地図データに基づき、車両11が、電力の送受電時に、送受電が実行される送受電エリア(道路区間)を指定された速度で走行しつつ、スケジュールどおりに充放電が行われているか否かを確認する。なお、車両が、送受電のための道路区間をどの程度の速度で走行するか、及びその道路区間での充放電のスケジュールは、情報センター13によって指示される。メインコントローラ14は、充放電のスケジュールが指定内容からずれている場合、そのずれを修正すべく、例えば、走行速度や車間距離の調整を走行制御装置29に指示したり、電力送受電アンテナ23の向きの調整をアンテナ駆動装置20に指示したりする。送受電エリア(道路区間)に関しては、後に詳細に説明する。
【0046】
地図記憶装置30は、道路地図データを記憶した記憶媒体を備えている。この道路地図データは、単に道路の形状や接続状態のみでなく、各道路の高度や傾斜度合に関する情報や交通渋滞が発生しやすい箇所やその時間帯も記憶している。ただし、交通渋滞が発生しやすい箇所やその時間帯に関しては、図示しない交通情報センターと通信を行って、案内ルートの設定の都度、取得するようにしても良い。さらに、道路地図データには、各道路の路面摩擦係数に関する情報も記憶されていることが好ましい。
【0047】
入力装置31は、車両の運転者により、出発地、目的地、経由地などを入力したり、それらの各地点での荷物の積み下ろしや人の乗降の予定などを入力するためのものである。さらに、入力装置31は、情報センター13から送受電の相手車両、場所、料金などの条件が通知されたときに、その送受電の実行の可否を回答したり、情報センター13に対して条件の変更を依頼したりする際に用いられるものである。
【0048】
運転者によって目的地が入力されると、メインコントローラ14は、地図記憶装置30に記憶された道路地図データに基づき、目的地までのルートを探索し、表示装置17に表示する。その際、メインコントローラ14は、目的地までのルートをいくつかの区間に分け、各道路の高度変化に伴う車両の位置エネルギーの変化などに基づき、それぞれの区間においておける車載バッテリ22の充放電量を算出する。この際、図5に示すように、荷物の積み下ろしや人の乗降による重量変化や、路面摩擦係数による走行抵抗などの変化も考慮すると、より正確な充放電量を算出することができる。
【0049】
図5には、車両が出発地を出発して目的地に達し、再び出発地まで戻るルートを走行する場合に、ポイント3で荷物を載せるため車両重量が重くなり、ポイント5で、積載していた荷物を降ろし、別の荷物を載せたため、僅かに車両重量が軽くなった例を示している。また、ポイント8では、ポイント5で乗せた荷物を降ろすために車両重量が初期の重量まで減少している。さらに、図5には、各区間の路面摩擦係数の変化も示されている。ただし、路面摩擦係数は、天候(雨、雪など)により大きく変化するので、外部の交通情報センターなどからルートの天候情報を取得し、取得した天候情報に応じて、道路地図データに記憶されている路面摩擦係数を補正することが好ましい。さらに、路面摩擦係数に関しては、図示しない交通情報センターが、実際に各道路を走行している車両から路面摩擦係数を示すデータを収集して一元的に管理し、各車両は、目的地までのルートを探索したときに、そのルートに含まれる各道路の路面摩擦係数データを取得するようにしても良い。
【0050】
さらに、車両が走行する際の空気抵抗によって消費される空力エネルギー、夜間の照明エネルギー、車載空調機を駆動するためのエネルギー、降雨時にワイパーを作動させるためのエネルギーなどを考慮すると、より一層、精度の高い充放電量を算出することができる。従って、風向きや風速に関する情報を取得して各区間における空力エネルギーを算出したり、ルートの各区間の車両の走行時間帯により照明エネルギーの要否を判断したり、車載空調器の稼動状態や外気温、外気湿度などにより、車載空調機の駆動エネルギーを予測したり、天候情報により、ワイパーなどの機器を作動させるためのエネルギーなどを予測したりすることが好ましい。
【0051】
そして、メインコントローラ14は、現在の車載バッテリ22の充電量を基準として、各区間の電力の消費や発電を考慮して充放電量の変化を予測し、その充放電量の変化をエネルギー収支線として表示装置17に表示させる。なお、出発地(現在地)や目的地などを情報センター13に連絡して、目的地までのルートや、エネルギー収支線を、情報センター13にて算出し、各車両11に提供するように構成しても良い。
【0052】
ここで、車両11が、経由地及び目的地を設定するとともに、経由地や目的地において、荷物の積み降ろしや人の乗降を計画したルートを走行する場合に、各区間における電力(エネルギー)の消費と発電をどのように推定するかに関して、図6に示す例に基づいて詳しく説明する。なお、以下においては、説明を簡単にするため、各区間の道路の高低差と車両重量の変化のみに着目して、電力の消費量及び発電量について説明する。
【0053】
図6に示すように、車両が、家や営業所を出発し、出発地であるポイント0からポイント1までの区間を走行すると、この区間は緩やかな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力(エネルギー)が緩やかに消費される(ポイント0〜ポイント1までの区間に対応してハッチングで示す部分参照。以下、同様)。
【0054】
次に、車両が、ポイント1からポイント2までの区間を走行すると、この区間は若干急な上り坂(例えば、山よりも起伏が緩やかな丘などの登り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が若干急激に消費(少なくとも、上記のポイント0〜ポイント1までの区間よりも急激に消費)される。
【0055】
次に、車両が、ポイント2からポイント3までの区間を走行すると、この区間は若干急な下り坂(例えば、山よりも起伏が緩やかな丘などの下り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力(ポイント2までに車両に蓄積された位置エネルギーや車両の制動に伴い発生する回生エネルギーなどに相当するエネルギー)が若干急激に蓄積される。
【0056】
車両がポイント3に到着すると、人または荷物を積載するので、車両の重量が変化する(車両重量が重くなる)。その後、車両が、ポイント3からポイント4までの区間を走行すると、その区間は僅かな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が僅かに消費される。なお、ポイント3にて車両の総重量が増加することから、この区間では、車載バッテリ22に蓄積されている電力が、車両の総重量が増加した分、多く消費される。
【0057】
次に、車両が、ポイント4からポイント5までの区間を走行すると、この区間はほぼ平坦な区間であることから、車載バッテリ22に蓄積されている電力の消費量は僅かである。ただし、この区間では、渋滞が発生することが多いため、その分を見越して(車両の停車と加速が細かく繰り返される)、電力の消費量を推定する。さらに、ポイント3にて積載した荷物による重量の増加分も考慮される。
【0058】
ポイント5に車両が到達すると、ポイント3で積載した荷物を降ろし、別の荷物を積む(又は搭乗者が乗車する)。そして、車両が、ポイント5からポイント6までの区間を走行すると、この区間は、図6に示すように、急峻な上り坂(例えば、丘よりも起伏が急峻な山などの登り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が急激(少なくとも、上記のポイント1からポイント2の区間よりも急激)に消費される。この際、ポイント5にて積載した荷物の重量増加分だけ、余計に電力が消費される。
【0059】
次に、車両が、ポイント6からポイント7までの区間を走行すると、この区間は急峻な下り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力(ポイント6までに車両に蓄積された位置エネルギーや車両の制動に伴い発生する回生エネルギーなどによるエネルギー)が急激に蓄積される。この際、ポイント5にて積載した荷物による重量増加分だけ、車両の位置エネルギーも増加していたため、蓄積されるエネルギーも増加する。
【0060】
そして、車両が、ポイント7からポイント8までの区間を走行すると、この区間は緩やかな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が緩やかに消費される。なお、この際、ポイント5で積載した荷物による車両重量の増加が考慮される。
【0061】
そして、車両がポイント8に達すると、ポイント5で積載した荷物を降ろす。これにより、車両の重量はほぼ初期状態に減少する。車両が、ポイント8からポイント0までの区間を走行すると、この区間は緩やかな下り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力が緩やかに蓄積される。なお、ポイント8にて車両の重量が減少することから、この区間では、車載バッテリ22の充電量の増加の程度は緩やかになる。
【0062】
このように、車両が走行する予定のルートを複数の区間に分け、各区間における電力の消費量及び/又は発電量を推定することにより、どの区間で電力が多く消費され、どの区間で電力が多く発電されるかを把握することができる。そして、各区間の電力の消費量及び発電量を総合することで、車両が出発地(ポイント0)から、経由地や目的地を経て、再び出発地まで走行する間におけるエネルギー収支の様子を把握することができる。このエネルギー収支の様子は、図7にエネルギー収支線として示されている。
【0063】
図7に示したエネルギー収支線から、電力の送受電が全く行われない場合、車載バッテリ22の充電状態(充電量)が、ポイント1〜2の区間及びポイント5〜6の区間において最少許容電圧値を下回ってしまうことが分かる。逆に、ポイント6〜7の区間では、その区間単体で見れば、車載バッテリ22の充電量が最大許容電圧値を超えており、比較的、電力に余裕のある区間であることが分かる。
【0064】
そのため、メインコントローラ14は、情報センター13に対して、ポイント1やポイント5付近の、車載バッテリ22の充電量が最小許容電圧値を下回る以前の地点で充電を行うことを要求する充電要求を送信する。また、そのような充電要求に応じて、車載バッテリ22の充電が行われるとすると、ポイント6〜ポイント7の区間では、電力に余裕が生じるため、少なくとも充電後、ポイント6に達する以前に、ポイント6付近において車載バッテリ22から放電可能である旨の放電要求を情報センター13に対して送信する。
【0065】
すると、情報センター13は、このような充電要求や放電要求に応答して、その要求を送信してきた車両に対し、ルート走行途中で車車間送受電を行うべく、相手車両及び充放電場所を検索して、その検索結果を送信する。
【0066】
図8は、一例として、ポイント1付近及びポイント5付近において、車車間送受電により車載バッテリ22の充電を行った場合の、エネルギー収支線を示している。図8のエネルギー収支線から明らかなように、ポイント1付近及びポイント5付近にて車車間送受電を行うことにより、ポイント1〜ポイント2の区間及びポイント5〜ポイント6の区間において、車載バッテリ22の充電量が最少許容電圧値を下回ってしまうことを回避することができる。また、この場合、車載バッテリ22には最少許容電圧値を上回る十分な電力が蓄電されるようになり、車載バッテリ22の蓄電量に余裕が生じる。従って、その後、車両がポイント6付近を走行する際に、インフラ設備との間で無線による電力の送受電を実行し、自車両の電力を外部のインフラ設備に送電(放電)することができるようになる。
【0067】
このように、設定されたルートを走行した際の電力の変化を示すエネルギー収支線に基づいて、充放電の必要性を判定することにより、それぞれ時間的に余裕を持った適切なタイミングで、充電要求や放電要求を行うことができる。そのため、高い確率で、充電や放電が必要となるエリアにおいて、インフラ設備や、他車両との間で充放電を行うことができるようになり、各車両11の車載バッテリ22の充電量を適正範囲に維持することが可能になる。
【0068】
次に、情報センター13の構成について図9を参照しながら説明する。図9に示すように、情報センター13は、メインコントローラ40を中心に、車両センター間情報通信アンテナ41、通信データ処理回路42、充放電車両管理データベース43及び充放電エリアデータベース44などを備えている。メインコントローラ40は、CPUを主体として構成され、情報センター13の動作全般を制御する。
【0069】
車両センター間情報通信アンテナ41は、情報センター13と各車両11との間で各種の情報を無線通信回線を介して送受信するものである。車両センター間情報通信アンテナ41にて受信された情報は、通信データ処理回路42にて復調され、メインコントローラ40に入力される。
【0070】
メインコントローラ40は、車両から充電要求を含む情報を受信した場合には、充放電車両管理データベース43における充電要求車両データベースに、その車両に関する各種の情報を記録する。また、車両から放電要求を含む情報を受信した場合には、充放電車両管理データベース43における放電要求車両データベースに、その車両に関する各種の情報を記録する。一旦、充電要求車両及び放電要求車両が、それぞれのデータベースに登録されると、情報センター13は各車両と定期的に通信を行い、データベースに記録されている情報を更新する。
【0071】
図10(a)、(b)に、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースの一例をそれぞれ示す。図10(a)、(b)に示すように、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースには、各車両11に設定された車両ID、各車両11の現在位置、及び進行方向を示す位置情報、目的地(又は目的地までのルート)、要求充電量又は要求放電量、充電必要エリア又は放電必要エリア、充放電機能のクラス(性能)、現在の電池容量、車車間送受電を実施結果から算出される信頼度を示すユーザ特性、車種、サイズ、衝突防止装置機能や車間制御機能などの安全機能に関する性能、各車両において設定された車車間充放電時の走行ロスの限度、車車間充放電時の走行形態(前、後、中間)などが記録される。
【0072】
ただし、図10(a)、(b)に示す充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースの記録項目は、単なる一例であって、必ずしも全ての項目を記録する必要はなく、逆に、図10(a)、(b)に示す以外の項目を含むものであっても良い。例えば、これらのデータベースには、希望する相手車両のサイズなども登録できるようにしても良い。
【0073】
また、情報センター13は、送受電エリアデータベース44を備えている。この送受電エリアデータベース44は、各地の道路に予め定められた送受電を行うべき道路区間(送受電電エリア)を記録したものである。
【0074】
上述した車車間送受電は、充電要求車両と放電要求車両とが、例えば隊列走行しつつ電力の送受電を行うことによって実行される。そのため、充電要求車両と放電要求車両との位置関係を維持し易くするべく、車車間送受電は、直線状の道路において実行されることが望ましい。さらに、車車間送受電を実行しているときの走行速度は比較的低くなる場合が多い。そのため、周囲の交通の妨げとならないように、車車間送受電用の専用車線が増設された道路区間や、少なくとも複数車線を有する道路の特定の道路区間が送受電エリアとして予め定められている。
【0075】
情報センター13のメインコントローラ40は、各車両11から充電要求や放電要求が送信されてくると、それぞれ、上述した充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに登録する。そして、それぞれのデータベースに記録された情報に基づき、車車間送受電を行うべき適切な充電要求車両と放電要求車両とを抽出し、ペアリング車両として決定する。そして、決定したペアリング車両に対し、相手車両に関する情報や、送受電場所に関する情報(送受電エリア)を通知し、通知内容での車車間送受電についての承認を求める。双方の車両から承認が得られると、車車間送受電の実施を確定する。
【0076】
次に、上述した構成を備えた電力送受電システム10において実行される、各種の制御処理について、フローチャート等を用いて説明する。
【0077】
まず、図11のフローチャートに基づいて、車車間送受電の相手車両を決定するまでの処理について説明する。
【0078】
最初に、ステップS100では、車両11の電力送受電装置12において、上述したエネルギー収支線が算出され、保存される。次に、ステップS110では、算出されたエネルギー収支線に基づいて、充放電が必要であるか否かを判定する。この判定処理において、充放電が必要と判定されるとステップS120の処理に進み、充放電が不要と判定されるとステップS100の処理に戻る。なお、車両の走行に伴い、推測したエネルギー収支線が変化し、当初は充放電が不要と判定されていたものが、途中で、充放電が必要との判定に変化することもありえる。そのため、ステップS110にて充放電が不要と判定された場合、ステップS100の処理を繰り返し実行する。
【0079】
ステップS120では、地図記憶装置30に記憶された地図データベースを参照して、充放電が必要となるエリア付近に、インフラ設備があるか否かを判定する。この判定処理において、インフラ設備があると判定されると、ステップS130の処理に進み、インフラ設備がないと判定されると、ステップS170の処理に進む。ステップS130では、必要となる充放電量などに基づいて、インフラ設備にて充放電を行った場合に要する時間を計算する。続くステップS140では、インフラ設備にて充放電を行うか否かを確認すべく、車両11の乗員に対して、ステップS130にて計算した充放電時間、インフラ設備の場所、料金などを提示する。
【0080】
そして、ステップS150において、車両11の乗員が、インフラ設備にて充放電を行うことを承認したと判定した場合には、ステップS160に進んで、表示装置17に、充放電を行うインフラ設備までの案内経路を表示するなどして、インフラ設備までの案内を実行する。一方、ステップS150において、車両11の乗員がインフラ設備での充放電を承認しなかった場合、ステップS170の処理に進む。
【0081】
ステップS170では、情報センター13に対して、車車間送受電の実施要求を送信する。この車車間送受電の実施要求には、車両ID,位置情報、目的地(あるいは走行予定ルート)、要求充電量又は要求放電量、充電必要エリア又は放電必要エリアなど、上述した充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録する情報が含まれる。
【0082】
情報センター13は、このような車車間送受電の実施要求を受信すると、充電要求を持った車両11からの情報は充電要求車両データベースに記録し、放電要求を持った車両11からの情報は放電要求車両データベースに記録する。そして、ステップS180にて、充放電車両管理データベース43及び送受電エリアデータベース44を参照して、車車間送受電を行うために組み合わされるべき充電要求車両と放電要求車両とを検索し、ペアリング車両を決定する。
【0083】
このペアリング車両の決定方法について、さらに詳細に説明する。図12及び図13は、ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。図12及び図13において、車両X1〜X3は、充電要求を持った充電要求車両を表しており、車両Y1〜Y3は、放電要求を持った放電要求車両を表している。また、P1,P2,…、PNは、送受電エリアとして定めされている道路区間を示している。
【0084】
まず、所定範囲の探索領域を定め、その探索領域に含まれる充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3を検索する。そして、検索された各充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3の目的地から、その目的地に達するためのルートを計算する。
【0085】
すると、図12に例示する充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3の中で、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とが、送受電エリアP1にて、車車間送受電を行うと、双方の車両とも、目的地に向かうルートに対してほぼ走行ロスが発生することがないことが判明する。すなわち、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とは、互いに接近する方向に向かって走行している。そして、これらの車両X1,Y1が、送受電エリアP1にて車車間送受電を行うものとすると、図13に示すように、それぞれの車両X1,Y1が、目的地に達するルートから大きく外れたルートを走行することなく、すなわち走行ロスが生じることなく、車車間送受電を行うことができる。なお、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とが車車間送受電を行う送受電エリアとしてエリアP2が選択されると、図13に示すように、放電要求車両Y1は、目的地に達するルートから大きく逸れたルートを走行せざるを得なくなる。そのため、このケースにおいては、車両X1,Y1が車車間送受電を行う場所として、送受電エリアP2ではなく、送受電エリアP1が選択される。
【0086】
次に、上述したペアリング車両を決定するための具体的な制御処理について、図14及び図15のフローチャートと、図16の説明図を用いて説明する。なお、図14及び図15のフローチャートに示す処理は、所定の時間間隔で定期的に実行される。
【0087】
まず、図14のフローチャートのステップS300では、充電要求車両及び放電要求車両を検索する距離範囲を設定する。この検索距離範囲は、図16に示すように、例えば、各々の送受電エリアの開始点を基準として、各送受電エリアごとに設定される。なお、検索距離範囲は、複数の送受電エリアを含むように設定され、以降の処理を各送受電エリアごとに行うようにしても良い。
【0088】
続くステップS310では、検索距離範囲内に含まれる充電要求車両と放電要求車両とを、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースからリストアップする。このリストアップにおいては、各データベースに記録された充電必要エリア及び放電必要エリアを考慮し、送受電エリアが、それらの充電必要エリア及び放電必要エリアに含まれている、受電要求車両及び放電要求車両をリストアップすることが好ましい。これにより、送受電が必要な車両を適切なタイミングでリストアップすることができる。
【0089】
また、上記リストアップを行うタイミングと、それぞれのデータベースに情報が記録されたときのタイミングとの時間差に応じて、各車両の位置情報を補正することが好ましい。すなわち、その時間差分だけ各車両が目的地方向に進んだものとして、検索距離範囲内に属する充電要求車両と放電要求車両とをリストアップする。
【0090】
なお、検索距離範囲内に存在していても、既にペアリング車両として決定されている充電要求車両及び放電要求車両は、リストアップの対象とならない。図16には、充電要求車両として車両X1,X2,X3が抽出され、放電要求車両として車両Y1,Y2,Y3が抽出された例が示されている。
【0091】
次に、ステップS320では、ステップS310にてリストアップされた各充電要求車両及び各放電要求車両の目的地を確認し、それぞれの目的地に達するルートを計算する。なお、前回以前の処理で、目的地に達するルートが計算されている車両については、そのルートを利用することも可能である。また、データベースに目的地に達するルートが記録されている場合には、それをそのまま利用しても良い。図16では、星印で示す地点が、各車両X1〜X3、Y1〜Y3の目的地を示している。
【0092】
ステップS330では、各車両が、検索距離範囲に含まれる送受電エリアを走行した場合のルートを計算し、そのルートと、ステップS320にて計算したルートとの比較から、追加走行距離を算出する。そして、ステップS340では、追加走行距離が設定値以下であるか否かを判定する。この追加走行距離が設定値以下であるか否かの判定においては、設定値として距離基準値を定めて、追加走行距離と距離基準値とを比較しても良いし、例えば各車両が現在地から目的地に達するまでの走行距離に対する、送受電エリアを走行して目的地に達するルートの走行距離の比率を求め、この比率を比率基準値と比較しても良い。また、それらの距離基準値や比率基準値は、各車両の乗員が設定し、情報センターに通知するようにしても良い。この場合、距離基準値や比率基準値は、各車両ごとにデータベースに記録されたものを用いることになる。
【0093】
ステップS340において、追加走行距離は設定値以下と判定された場合には、ステップS350に進み、上記送受電エリアにて送受電を行う候補車両として選定される。一方、ステップS340にて、追加走行距離は設定値を超えると判定された場合には、ステップS360に進んで、上記送受電エリアにて送受電を行う候補車両から除外される。
【0094】
例えば、図16に示す例において、各車両の追加走行距離を、各車両が現在地から目的地に達するまでの走行距離に対する、送受電エリアを走行して目的地に達するルートの走行距離の比率として求めた場合、X1=1.5、X2=1.2、X3=3、Y1=1(追加走行距離なし)、Y2=2,Y3=1.3となる。この場合、例えば比率基準値を1.5に設定したとすると、充電要求車両のうち車両X3は候補車両から除外され、放電要求車両のうち車両Y2は候補車両から除外される。
【0095】
次に、図15のフローチャートのステップS400では、図14のフローチャートにより候補車両として選定された各車両の送受電エリアまでの距離(又は、所要時間)を算出する。なお、距離は、各車両がそれぞれの現在位置から送受電エリアに達するルートを走行した場合の距離である。また、所要時間としては、各車両が、送受電エリアに達するルートを標準的な速度で走行した場合に要すると想定される時間である。
【0096】
そして、ステップS410では、ステップS400にて算出された距離(又は、所要時間)が近い、充電要求を持った候補車両と放電要求を持った候補車両とを選定して、ペアリング車両とする。なお、距離(又は、所要時間)の差異については、予め上限値が定められており、その上限値以内の中で、最も差の小さい候補車両同士を選定する。図16に示す例では、充電要求車両X1と放電要求車両Y3、及び充電要求車両X2と放電要求車両Y1とが、それぞれ送受電エリアまでの距離が近いため、ペアリング車両として決定される。
【0097】
ステップS420では、上述したペアリング処理を行った結果、検索距離範囲に属する全ての車両に対して、ペアリング車両が決定されたか否かを判定する。ペアリング車両として決定された車両に関しては、ステップS430にて、ペアリング車両として登録する。一方、ペアリング車両として決定されなかった車両があれば、ステップS440において、送受電エリアを同時期に走行する相手車両が見つからなかったため、送受電エリアにおいて待ち時間が発生する条件付車両、あるいは相手車両が見つからない車両として登録する。この場合、該当車両に待ち時間が生じる旨を連絡して、乗員の了解が得られた場合、距離(又は、所要時間)の上限値を拡大して、ペアリング車両となる車両の検索を行っても良い。
【0098】
再び、図11のフローチャートに戻り、説明を続ける。上述した処理により、ペアリング車両が決定されると、ステップS190において、情報センター13から、ペアリング車両として決定された車両に対して、相手車両が見つかったので車車間送受電を実施可能である旨の回答を送信する。その際、車車間送受電を行う相手車両に関する情報、送受電エリア、予想充(放)電量、料金などの情報も合わせて送信される。
【0099】
すると、車両11では、ステップS200において、表示装置17及び/又はスピーカ18により、受信した情報が車両11の乗員に報知される。車両11の乗員は、入力装置31を用いて、回答のあった内容で車車間送受電を実施することを承認するか否認するかを入力する。そして、乗員が承認する場合には、ステップS210において、車車間送受電の実施を確定するための処理として、情報センター13に対して、連絡のあった内容での車車間送受電を承認する旨、及び確認のため確定条件を返送する。
【0100】
情報センター13では、ペアリング車両として決定した双方の車両から、車車間送受電を実施することを承認する旨の返送を受け取った場合、ステップS230にて、その双方の車両へ、車車間送受電の実施が確定した旨の連絡を行う。この際、相手車両や送受電エリアの確定情報、料金などの確定条件に加え、送受電エリアにおける充放電スケジュールも送信される。車両は、この確定連絡を受けると、ステップS240にて、例えば表示装置17に、車車間送受電が行われる予定の送受電エリアまでの案内経路を表示することにより、送受電エリアへの案内を行う。
【0101】
一方、乗員が承認しない場合には、ステップS220において、入力装置31を用いて、条件の変更依頼を行う。例えば、自車両が普通乗用車であって、送受電の相手車両として大型車両が抽出されたとすると、このような大型車両を対象として隊列走行しながら充放電する場合、自車両の運転者は前方を見づらくなったり、後方確認を行いにくくなったりする。このため、自車両の運転者は、自車両と同等以下のサイズの車両を相手車両として希望することも考えられる。また、一回の充放電処理による充放電量があまりに小さいと、運転者は、より多くの充放電量が得られる別の車両との車車間送受電を行うことを希望することも考えられる。
【0102】
条件変更依頼では、情報センター13から回答のあった情報の中で、乗員が変更を希望する情報に関して、変更希望内容を入力する。すると、ステップS170において、変更希望内容を含む車車間送受電の要求が情報センター13に送信される。情報センター13では、車両の乗員の希望を満たす相手車両が存在するか否かを確認し、存在していれば、再度、その車両を対象として車車間送受電を実施する旨の回答を行う。
【0103】
なお、図14及び図15のフローチャートを用いて説明したペアリング車両の決定方法では、走行ロスが過度に大きくならず、同時期に送受電エリアを走行可能という条件で、ペアリング車両を決定するものであった。しかしながら、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録された他の情報も考慮して、ペアリング車両を決定するようにしても良い。
【0104】
例えば、ある充電要求車両に対して、ほぼ同時期に同じ送受電エリアを走行可能な放電要求車両が複数台存在する場合は、要求充電量及び要求放電量を考慮してペアリング車両を決定するようにしても良い。すなわち、複数台の要求放電車両の中から、要求充電車両の要求充電量により近い要求放電量をもった放電要求車両をペアリング車両として決定する。これにより、要求充電量と要求放電量がより近い車両同士をペアリング車両として抽出することが可能になる。
【0105】
また、ペアリング車両を決定する場合に、事前に、各車両の乗員(ユーザ)からの要望を受け付けて、その要望を満たす相手車両を検索するようにしても良い。例えば、ユーザからの要望としては、上述したように、自車両と同等サイズの車両を相手車両として車車間充放電を実施したいとか、一度の車車間送受電で必要充放電量の例えば90%以上を達成したいとか、料金を極力低額にしたいとか、料金は高額でも確実に充放電を行いたいなどの要望が出されることが考えられる。
【0106】
ここで、料金に関しては、例えば、送受電エリアの開始地点付近に、システムの管理者が、車車間送受電の要求に対応できる各種の車両を用意しておき、それらの車両と車車間送受電を行った場合、一般車両と車車間送受電を行うよりも、その車両の使用料分だけ不利となる料金体系とすることが考えられる。つまり、原則として、充電を行う場合には料金を支払い、放電を行う場合には料金を受け取るが、それぞれ支払額や受取額が、システム管理者が準備した車両を対象として行う場合には、一般車両を対象として行う場合よりも、支払額は増額され、受取額は減額されるように料金を定める。
【0107】
以下に、ユーザが車両サイズに関する要望を出した場合を例として、このような要望を考慮しつつペアリング車両を決定する処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。
【0108】
まず、ステップS500では、各車両からの充放電要求を受け付ける。この充放電要求には、上述した車両サイズに関するユーザの要望が含まれている場合がある。そして、ステップS510では、充電要求車両及び放電要求車両を検索する距離範囲を設定し、ステップS520では、検索距離範囲内に含まれる充電要求車両と放電要求車両とを、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースからリストアップする。
【0109】
続くステップS530では、付加条件としてのユーザの要望を満たす対象車両を検索する。なお、この対象車両の検索は、例えば、ステップS520にてリストアップされた充電要求車両と放電要求車両との中で、充放電要求の受付を行った順序に従って行われる。つまり、より早いタイミングで受け付けた充放電要求に含まれる要望ほど、その要望を満たす対象車両の検索が優先的に行われる。
【0110】
ステップS540では、要望を満たす対象車両(該当車両)が検索されたか否かを判定し、検索された場合にはステップS550の処理に進み、検索されなかった場合にはステップS590の処理に進む。ステップS550では、該当車両が、送受電エリアを経由して走行した場合の追加走行距離を算出する。この際、該当車両が複数あれば、各該当車両について、追加走行距離を算出する。ステップS560では、この追加走行距離による走行ロスが許容レベル以下の該当車両があるか否かを判定する。この判定処理において、走行ロスが許容レベル以下の該当車両があればステップS580の処理に進み、そのような該当車両がなければ、ステップS570の処理に進む。
【0111】
ステップS570では、さらに、走行ロスが限度内の該当車両があるか否かを判定する。このように、図17のフローチャートに示す例では、ユーザの要望を満たす対象車両を検索しやすくするため、走行ロスのレベルが2段階(許容レベル<限度レベル)に設定されている。そして、ステップS570の判定処理において、走行ロスが限度内の該当車両があると判定されるとステップS600の処理に進み、走行ロスが限度内の該当車両がないと判定された場合、ステップS590に進む。
【0112】
ステップS590では、要望を満たす該当車両がない旨をユーザに通知する。一方、ステップS600では、該当車両はあるが、多少の走行ロスが生じる旨をユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。
【0113】
ステップS560にて、走行ロスが許容レベル以内の該当車両があると判定されたときに実行されるステップS580では、充放電量は所定レベル以上であるか否かを判定する。そして、所定レベル以上と判定されたときにはステップS610に進み、所定レベル未満であると判定されたときには、ステップS620の処理に進む。
【0114】
ステップS610では、要望を満たす該当車両がある旨ユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。一方、ステップS620では、要望を満たす該当車両は、充電量(又は放電量)が所定レベル未満である旨をユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。
【0115】
なお、走行ロスが許容レベルの該当車両が複数ある場合には、ステップS580の処理により、充放電量が所定レベル以上と判定された該当車両をペアリング車両とすべく、ステップS610の処理を実行する。さらに、充放電量が所定レベル以上と判定された該当車両が複数ある場合には、自車の要求充放電量を超えない範囲で最も近い充放電量を有する該当車両を対象として、ステップS610の処理を実行すれば良い。
【0116】
また、ステップS580の処理を省略し、ステップS560にて走行レベルが許容レベル以下の該当車両があると判定された場合、直接、ステップS610の処理を実行するようにしても良い。
【0117】
次に、ペアリング車両として決定された充電要求車両と放電要求車両とが、送受電エリアの開始地点で相互に出会い、送受電処理を実行するための処理について、図18のフローチャートに基づいて説明する。
【0118】
まず、ステップS700において、ペアリング車両として決定された車両が、目的とする送受電エリアに到着すると、ペアリング車両として決定された相手車両との間で通信を開始する。この通信は、例えば、一方の車両が、情報センター13から送信された相手車両の車両IDを手がかりとし、車車間情報通信アンテナ26を介して、その車両IDを有する車両に対して電波を送信することによって開始される。この送信を行う車両は、充電要求車両と放電要求車両のいずれか一方に予め定めておいても良いし、情報センター13により指定しても良いし、両方の車両から、定期的に電波が送信されるように設定されていても良い。
【0119】
続くステップS710では、車両IDを用いて相手車両を特定して送信を行ったことにより、相手車両から応答が得られて、実際に相手車両との通信が行われたか否かを判定する。この判定処理において、通信が行われなかったと判定された場合、相手車両がまだ送受電エリアに到達していない、あるいは通信機器の故障などのエラーが起こっている可能性が高い。従って、ステップS720において、所定回数、送信を行っても相手車両からの応答が得られない場合、情報センター13へ状況を報告する。
【0120】
一方、ステップS710の判定処理において、相手車両との通信が行われたと判定された場合、ステップS730にて、相手車両に、自車両情報を送信する。そして、ステップS740では、相手車両も、同様に相手車両の情報を送信してくるので、その相手車両の情報を受信する。この際、相互に送信される車両情報としては、車両の位置、送受電アンテナ23の設置位置、送受電アンテナ23に関する情報、車両イメージ、車両の型式、サイズなどである。このような情報を用いて、車車間送受電を行う相手車両が発見されると、ステップS750にて、送受電エリアに進入して、隊列走行状態となり、送受電の準備を行なう。この送受電準備については、後に、図19のフローチャートに基づき詳しく説明する。
【0121】
上述した隊列走行状態となるとき、どちらの車両が前で、どちらの車両が後になるかは、通常、各車両の送受電アンテナ23の設置位置や、データベースにおける登録内容から情報センター13により指示される。また、隊列走行中は、適切な車間距離を保ちつつ、車幅方向の車両位置がずれないように走行する必要があるため、走行制御装置29により、各車両の走行状態が制御される。
【0122】
なお、相手車両が発見できるまで、送受電エリアには進入しないようにするため、送受電エリアの入り口付近に、待ち合わせができるようなエリアが設けられていることが望ましい。
【0123】
ステップS760では送受電の準備が完了したか否かを判定し、準備が完了したと判定された場合、ステップS770にて送受電処理を開始する。この送受電処理についても、ごに、図19のフローチャートに基づいて詳しく説明する。なお、ステップS760にて送受電の準備が完了していないと判定されると、ステップS750の処理を再度実行する。
【0124】
続いて、図19のフローチャートに基づいて、送受電の準備処理及び送受電処理について詳しく説明する。なお、上述したように、送受電の準備処理及び送受電処理は、充電要求車両と放電要求車両とが隊列走行状態となっているときに実行されるものであり、図19のフローチャートに示す処理が開始されるときには、隊列走行している状態となっている。
【0125】
まず、ステップS800では、隊列走行している各車両は、測位装置(GPS)16や走行情報検出センサ21におけるカメラを用いて現在位置測定を行う。例えば、GPSの場合、現在位置座標が取得され、カメラの場合には、送受電エリアのどの区画で処理が行われているかが把握される。続くステップS810では、ステップS800にて測定された現在位置に基づいて、送受電エリア内を走行しているか否かを判定する。この判定処理において、送受電エリア内ではないと判定されるとステップS820の処理に進み、送受電エリア内であると判定されるとステップS850の処理に進む。
【0126】
ステップS820では、送受電エリアへ進入した時刻が記録されているか否かを判定する。この判定処理において、送受電エリアへの進入時刻が記録されていないと判定されると、ペアリング車両は、まだ送受電エリアに進入していないと考えられるので、ステップS800の処理に戻る。一方、ステップS820の判定処理において、送受電エリアへの進入時刻が記録されていると判定されると、ステップS830の処理に進んで、車両の現在位置に基づき、送受電エリアを退出したか否かが判定される。この判定処理において、送受電エリアを退出したと判定されると、ステップS840において、車車間送受電処理(充放電処理)を停止するとともに、情報センター13へ処理を停止した旨の連絡を行う。
【0127】
ステップS850では、ステップS810にて、初めてペアリング車両は送受電エリア内にいると判定されたとき、隊列走行を行っているペアリング車両が送受電エリアに進入したとみなされるので、その進入時刻を記憶装置19に記録しておく。そして、ステップS860では、カメラにより撮影された画像に基づいて、相手車両のアンテナ位置を検知して追跡処理を行う。すなわち、継続的に、相手車両の送受電アンテナ23の位置を示すマーキングの画像認識を行う。
【0128】
続くステップS870では、検知した相手車両の送受電アンテナ23と対向するように、アンテナ駆動装置20を用いて自車両の送受電アンテナ23の角度を変更することにより、送受電アンテナ23の指向方向の調整を実施する。その際、発光装置により、送受電アンテナ23の中心部から当該電力送受電アンテナ23の指向方向に向かうスポット状の光を発光させる。そして、発光された光が当たっている場所をカメラで確認することにより、自車両の送受電アンテナ23の指向方向が、相手車両の送受電アンテナ23に正しく向いているか否かを検証することができる。
【0129】
ステップS880では、アンテナ捕捉率を計測し、それが設定値以上であるか否かを判定する。ここで、アンテナ捕捉率とは、一方の車両の送受電アンテナ23から出す光線が、設定時間の間に、相手車両の送受電アンテナ23の設置範囲に、何秒間存在するかを計測することで求められるパラメータである。従って、このアンテナ捕捉率が設定値よりも低い状態は、一方の車両の送受電アンテナ23から発せられる光が、相手車両の送受電アンテナの設置場所からはみ出て、送受電アンテナ同士が対向した状態にうまく維持されていないことを表す。
【0130】
ステップS880において、アンテナ捕捉率が設定値未満と判定されると、ステップS950に進み、道路形状の先読みや、後方を走行する車両が、前方を走行する車両の走行データを取得して、前方車両に追従するように走行状態を制御するなどの、アンテナ捕捉率の向上処理を実行する。このようなアンテナ捕捉率の向上処理を行った結果、ステップS960にてアンテナ捕捉率が向上したと判定されると、ステップS800からの処理を再度実行する。一方、アンテナ捕捉率向上処理を実行したにも係らず、ステップS960にて、アンテナ捕捉率は向上していないと判定されると、ステップS970の処理に進んで、充放電処理停止条件に該当するか否かが判定される。ここで、充放電処理停止条件としては、アンテナ捕捉率向上処理の実行回数が所定回数に達した、又は車両の現在位置が送受電エリア外となったなどの条件が用いられる。そして、充放電処理停止条件に該当していなければ、ステップS800からの処理を再度実行し、充放電処理停止条件に該当していれば、ステップS1010の処理に進み、充放電処理を停止するとともに、情報センター13に処理を停止した旨の連絡を行う。
【0131】
ステップS880において、アンテナ捕捉率は設定値以上と判定されると、ステップS890の処理に進み、隊列走行している車両同士の車間距離が設定範囲内であるか否かが判定される。この判定処理において、車間距離が設定範囲外と判定されると、ステップS980の処理に進み、走行制御装置29に対して車間距離が設定範囲内となるように、車間距離の調整を指示する。この結果、ステップS990にて、車間距離が設定範囲内に改善されたと判定されるとステップS800からの処理を再度実行する。一方、車間距離が改善されていないと判定されるとステップS1000の処理に進み、充放電処理停止条件に該当するか否かが判定される。ここで、充放電処理停止条件としては、車間距離を調整するための走行制御処理の実行回数が所定回数に達した、又は車両の現在位置が送受電エリア外となったなどの条件が用いられる。そして、充放電処理停止条件に該当していなければ、ステップS800からの処理を再度実行し、充放電処理停止条件に該当していれば、ステップS1010の処理に進み、充放電処理を停止するとともに、情報センター13に処理を停止した旨の連絡を行う。
【0132】
ここで、上述したステップS800〜S890の処理が、主として、送受電準備処理に該当する。そして、以下に説明するステップS900〜S940までの処理が、主として、送受電処理に該当する。
【0133】
ステップS890にて車間距離は設定範囲内であると判定されたときに実行されるステップS900においては、隊列走行している車両間で送受電処理(充放電処理)を実施する。なお、この充放電処理の開始に先立ち、隊列走行している車両間で行う電力の送受電に適合した共鳴周波数の設定等が行われる。さらに、充放電処理の開始に先立ち、微小な電力の送受電を実際に行い、隊列走行している車両間で問題なく電力の送受電が可能であるかを確認するようにしても良い。
【0134】
そして、ステップS900の送受電処理においては、送電を行う送電車両のメインコントローラ14が、当該車両に搭載された車載バッテリ22に蓄積されている電力を、電力送受電アンテナ23から相手車両(受電車両)に無線によって送電させる。一方、受電を行う受電車両のメインコントローラ14は、送電車両から送電された電力を、送受電アンテナ23によって受電し、車載バッテリ22に蓄積(充電)する。
【0135】
このような車車間送受電処理による、各車両の車載バッテリ22の充放電に関して、予め情報センター13が充放電スケジュールを定め、少なくとも一方の車両に、その充放電スケジュールを送信している。
【0136】
ここで、充放電スケジュールについて説明する。充放電スケジュールとは、図20に示すように、ペアリング車両が送受電エリアを隊列走行しつつ電力の送受電を行う際に、送受電エリアでの走行距離に対する充放電量の目標ライン及び上下限ラインを示すものである。この充放電スケジュールは、ペアリング車両の両方に送信され、それぞれの車両において、充放電が充放電スケジュールに沿って行われているかが確認される。ただし、一方の車両が、他方の車両の充放電量を車車間情報通信を介して取得し、その一方の車両において、車車間送受電による充放電がスケジュールどおりに行われているか確認するようにすることも可能である。
【0137】
なお、このように送電車両と受電車両との間で車車間送受電が行われている間は、各車両のメインコントローラ14が、それぞれの車両の走行状態の制御を継続して実行し、隊列走行状態を、車車間送受電に適した状態に維持する。また、一方の車両のメインコントローラ14が、他方の車両のメインコントローラ14に走行制御信号を送信することにより、各車両の走行状態の制御を、一方の車両のメインコントローラ14が担うように構成してもよい。
【0138】
そして、充放電処理が行われている間、ステップS910にて、充放電がスケジュールどおり実行されているか判定される。つまり、図20に示すように、充放電処理が開始されると、ペアリング車両における充電量及び放電量が定期的に計測され、その計測値が、充電目標ラインの上下限ライン及び放電目標ラインの上下限ラインの間に含まれているかが判定される。上下限ラインの間に含まれていれば、充放電はスケジュールどおり実行されていると判定され、上下限ラインの間に含まれていなければ、充放電はスケジュールどおりに実行されていないと判定される。
【0139】
充放電がスケジュールどおりに実行されていない場合、ステップS920に進んで、充放電処理のデータの収集、原因の究明、及び原因に対する対策の実施が行われる。この処理は、相手車両から充放電測定値を取得しつつ、両方の車両において原因の究明が行われ、その対策は、必要に応じて協同して行う。つまり、原因を究明することができ、その原因が車両において改善が可能である場合には、改善処理を実行する。改善がうまくいかない場合で、充放電効率が向上しない場合、充放電効率に応じて充放電処理の継続、停止を決定する。なお、このステップS920の処理の詳細については、後に、図21のフローチャートを用いて説明する。
【0140】
一方、ステップS910において、スケジュールどおり充放電が行われていると判定されると、ステップS930の処理に進み、充放電が完了したか否かが判定される。図20に示すように、充電量計測値と放電量計測値とのいずれかが、最終的な目標ラインに到達したら、充放電完了と判定する。充放電が完了したと判定された場合、ステップS940にて、充放電処理が停止するとともに、情報センター13に充電が完了した旨の連絡を行う。
【0141】
次に、図21のフローチャートに基づいて、充放電処理の異常発生を監視し、異常が生じたときに、どのような対策を施すかについて説明する。
【0142】
まず、図21のフローチャートのステップS1100では、計測時刻のカウントを行う。続くステップS1110では、カウントした計測時刻が、充放電量(充放電電圧)を計測すべき時刻となったか否かを判定する。充放電電圧計測時刻と判定された場合、ステップS1120において、充放電電圧の計測を行う。
【0143】
そして、ステップS1130では、他車(相手車両)から充放電電圧計測値を受信したか否かを判定する。受信したと判定した場合には、ステップS1160の処理に進み、受信していないと判定した場合には、ステップS1140の処理に進む。
【0144】
ステップS1140では、他車に対して、充放電電圧計測値を送信するよう依頼する。そして、ステップS1150では、所定回数の送信依頼を行ったにも係らず、他車から応答が得られなかったか否かを判定する。この判定処理において、他車から応答が得られなかった場合には、ステップS1160の処理に進む、この場合、自車両における充放電電圧計測値のみに基づいて、充放電がスケジュールどおりに行われているか、及びスケジュールどおりに行われていない場合の原因の究明を行う。一方、他車から応答が得られた場合、あるいはまだ所定回数の送信依頼を行っていない場合には、ステップS1130の処理に戻る
ステップS1160では、自車と他車の充放電電圧計測値と、充放電スケジュールと比較する。そして、ステップS1170において、自車及び他車の充放電電圧計測値が、スケジュールの範囲内であるか否かを判定する。この判定処理において、スケジュール範囲内と判定されると、ステップS1180の処理に進み、スケジュール範囲外と判定されると、ステップS1210の処理に進む。
【0145】
ステップS1180では、充放電がスケジュールどおりに行われていることを示す充放電履歴を記録するとともに、その履歴データを情報センター13にも送信する。そして、ステップS1190において、充放電が完了したか否かを判定し、完了判定した場合には、ステップS1200において、充放電処理を停止し、未完了判定した場合には、ステップS1100の処理に戻る。
【0146】
一方、充放電がスケジュール範囲外と判定されたときに実行されるステップS1210では、自車及び他車のそれぞれにおいて、電力送受電装置12が正常に動作しているか否かを自己診断する。この判定処理において、正常動作していると判定されるとステップS1220の処理に進み、何らかの異常が生じていると判定されるとステップS1310の処理に進む。
【0147】
ステップS1220では、充放電が過剰であるか否か、すなわち、スケジュールよりも早く充放電電圧が変化しているか否かを判定する。この判定処理において、充放電が過剰と判定された場合には、ステップS1230の処理に進み、充放電機器などの負担を軽減するため、充放電量を低減するための充放電過剰対策を施す。具体的には、送電車両における送電電力を小さくしたり、ペアリング車両の車間距離を広げたり、電力送受電アンテナ23の角度により、アンテナ対向度合を調整したりして、送受電される電力量を減らす。それにより、各車両における充放電量を低減することができる。逆に、ステップS1220において、充放電が不足していると判定されると、ステップS1240の処理に進む。
【0148】
ステップS1240では、上述した充放電準備処理を再度実行して、ペアリング車両の走行態様の変更により、充放電不足に対処可能か否かを判定する。この判定処理において対処可能と判定された場合には、ステップS1250に進んで、より長い送受電時間を確保するためにペアリング車両の走行速度を低下させたり、ペアリング車両の車間距離を縮めて送受電の電磁場を大きくしたりすることで、充放電量の向上を図る。
【0149】
なお、送受電エリアにおいては、図22(a)、(b)に示すように、隊列走行を行っている他のペアリング車両が存在することも多いと考えられるので、走行速度を低下する場合には、後続のペアリング車両に影響を与えない範囲で行うことが好ましい。
【0150】
また、ステップS1240において、ペアリング車両の走行態様の変更では対処できないと判定された場合、各車両の電力送受電装置12は正常に動作していながら、ペアリング車両の走行速度や車間距離の調整では充放電不足を解消できないので、ステップS1290に進んで、充放電処理を停止する。
【0151】
一方、ステップS1230において充放電過剰対策を施したり、ステップS1250において充放電不足対策を施したりした後には、ステップS1260に進んで、充放電履歴を記録するとともに、その履歴データを情報センター13にも送信する。そして、ステップS1270において、充放電が完了したか否かを判定し、完了判定した場合には、ステップS1280において、充放電処理を停止し、未完了判定した場合には、ステップS1100の処理に戻る。
【0152】
また、ステップS1210において、各車両の電力送受電装置12の動作チェックを行った結果、いずれかの車両、あるいは両方の車両に異常が見つかった場合、ステップS1300の処理に進んで、復旧可能な異常であるか否かを判定する。そして、復旧可能な以上であると判定された場合には、ステップS1320の処理に進み、異常からの復旧を試みる。例えば、各車両の電力送受電装置12における、メインコントローラ14のマイコンの動作異常が生じていた場合、そのマイコンをリセットすることで、異常が復旧される場合がある。
【0153】
一方、ステップS1300において、復旧可能な異常ではないと判定された場合には、ステップS1310の処理に進み、充放電処理を停止させる。
【0154】
ステップS1200,S1280、S1290、及びS1310のいずれかにおいて充放電処理が停止された後は、ステップS1330の処理が実行され、充放電完了又は停止履歴や走行履歴が記録されるとともに、充放電量や充放電効率を算出し、これらのデータを情報センター13に送信する。
【0155】
すなわち、情報センター13には、異常がなければ、逐次、充放電履歴が送信され、情報センター13は、受信したデータを正常ログとして記録する。一方、異常(充放電スケジュールとの乖離)が生じた場合にも、逐次、充放電履歴の記録が送信されるが、この場合、情報センター13は、受信したデータを異常ログとして記録する。
【0156】
そして、車車間充放電が完了すると、車車間充放電が完了したことが、情報センター13へ関連データとともに通知され、情報センター13は、各車両より受信したデータを、車両IDごとにまとめて記憶する。そして、利用ユーザの情報を更新する。この結果が料金清算などに使われる。充放電結果、算定された料金結果などは、ユーザの車両に送信される。
【0157】
情報センター13から充放電結果等が送信されると、表示装置17などにその充放電結果が表示される。さらに、エネルギー収支線のアップデートがメインコントローラ14にて行われ、アップデート後のエネルギー収支線や、今後の航続可能距離などがユーザに表示される。また、情報センター13からのサービス利用明細などのデータを受信すると、その受信データの表示も行う。
【0158】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0159】
例えば、上述の実施形態では、ペアリング車両が前後方向に並んで隊列走行を行いつつ車両間で電力を送受電する例について説明したが、左側部送受電アンテナ23c及び右側部送受電アンテナ23dを用いることで、左右方向に並んだ車両間での電力の送受電を行うことも可能である。
【0160】
また、上述した実施形態では、ペアリング車両が走行しながら電力の送受電を行う例について説明したが、それぞれに時間に余裕がある場合には、ペアリング車両が停止した状態で、無線又は有線によって電力の送受電を行うようにしても良い。
【0161】
さらに、上述した実施形態では、2台の車両がペアリング車両となって車車間送受電を行う例について説明したが、3台以上の車両がグループとなって、電力を必要とする車両に、電力に余裕のある車両から送電を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0162】
10 電力送受電システム
11 車両
12 電力送受電装置
13 情報センター
41 情報センター間情報通信アンテナ
42 通信データ処理回路
40 メインコントローラ
43 充放電車両管理データベース
44 送受電エリアデータベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と情報センターとが通信を行い、充電要求を有する充電要求車両と放電要求を有する放電要求車両とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とする電力送受電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載バッテリに充電した電力によって走行する、いわゆる電気自動車が普及しつつある。しかし、このような電気自動車は、走行途中で電力が不足したり、過充電によって電池が劣化したりするという特有の課題を有している。
【0003】
そのため、特許文献1には、自車両の電力が不足している場合には、路側電源装置や他車両などの車両外部から電磁波などを媒介にして電力の供給を受け、逆に、電力に余裕がある場合には、車両外部に電力を供給するための電力供給システムが開示されている。すなわち、例えば、特許文献1の電力供給システムでは、自車両のバッテリの残存容量が低下したとき、その自車両の車載電源装置は、電力要求信号を周囲の路側電源装置、または他車両に向けて送信する。その際、自車両の周辺に路側電源装置、または電力を送信可能な他車両が存在していれば、路側電源装置或いは他車両は、自車両からの電力要求信号に応答して、電力の送信を行う。この結果、自車両は、路側電源装置又は他車両から電力の供給を受けることができ、バッテリの残存容量を増加させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、電力を送電する車両と、電力を受電する車両と、これらの車両との情報通信を管理する情報管理センターとからなる電力供給システムが記載されている。情報管理センターは、各車両の情報を管理するとともに、電力を送電する車両となり得る車両及び電力を受電する車両となり得る車両が、それぞれ複数存在する場合、それらの中から相対距離が最も短くなるなどの条件に基づいて、電力を送電する車両及び電力を受電する車両を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210843号公報
【特許文献2】特開2005−168085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された電力供給システムでは、バッテリの残存容量が低下したときに自車両が電力要求信号を送信するが、その電力要求信号の到達範囲内に、電力を提供可能な他車両が存在しなければ、他車両からの電力の送信を受けることはできない。実際のところ、自車両のバッテリ電力が不足したときに、ちょうど良いタイミングで電力を提供可能な他車両に出会うことを常に期待することは難しいと考えられる。
【0007】
また、特許文献2に記載された電力供給システムでは、情報管理センターが、単に相対距離が最も短いとの条件によって、電力を送電する車両と電力を受電する車両との組合せを決定する。このため、例えば、全く異なる方向に向かって走行している車両同士が、現在、たまたま近い距離に存在するとの理由で、電力を送電する車両及び電力を受電する車両として決定されることが起こりえる。この場合、少なくともいずれか一方の車両は、電力の送受電のため、本来の目的地に向かうルートから大きく外れたルートを走行せざるをえなくなる。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、電力の過不足が生じる時に、電力の送受電を行う対象車両が、極力、互いに無駄なルートを走行せずに出会うことができるように、充電要求車両と放電要求車両とのペアリングを行う電力送受電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載の電力送受電システムは、各車両と情報センターとが通信を行い、充電要求車両と放電要求車両とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とするものであって、
情報センターは、
各車両との通信により、各車両の、充電要求又は放電要求、現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報を取得し、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、取得した情報を記録しておくデータベースと、
データベースに記録されている充電要求車両と放電要求車両との中から、各々の車両の現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報に基づいて、それぞれ同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出する抽出手段と、
抽出手段によって抽出されたペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、それぞれ送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報を生成して送信する情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の電力送受電システムによれば、情報センターが、データベースに、充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、各車両の現在位置、進行方向及び目的地に関する情報を記録しておく。従って、データベースに記録された情報に基づいて、各車両が、将来、走行する道路を予測することができる。このため、同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが可能になる。この結果、ペアリングされる充電要求車両及び放電要求車両とも、極端な迂回ルートを取らずに、送受電を行う相手車両に出会うことが可能になる。
【0011】
さらに、ペアリングされた充電要求車両と放電要求車両に対しては、送受電が行われるべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信されるので、それぞれの車両は、相手車両と出会うために必要な情報を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載したように、情報センターは、情報送信手段によって、ペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信された後、充電要求車両と放電要求車両との双方から承認応答が得られたとき、送信した情報に従って送受電が行われることを確定することが好ましい。
【0013】
例えば、自車両が普通乗用車であって、送受電の相手車両として大型車両が抽出されたとすると、このような大型車両を対象として走行しながら充放電する場合、自車両の運転者は前方を見づらくなったり、後方確認を行いにくくなったりする。このため、自車両の運転者は、自車両と同等以下のサイズの車両を相手車両として希望することも考えられる。このような観点から、請求項2に記載のように、一旦、充放電を行うべき送受電エリアや相手車両に関する情報を提示する。そして、提示された情報を見たそれぞれの車両の乗員から、承認応答が得られた場合に、送信した情報に従って送受電が行われることを確定することが好ましい。
【0014】
請求項3に記載したように、情報送信手段による充電要求車両へ送信される情報には予測充電量が含まれ、放電要求車両へ送信される情報には予測放電量が含まれることが好ましい。このようにすれば、今回の送受電により、どの程度の電力が充電可能であるか、あるいは、どの程度の電力が放電されるかを、充電要求車両及び放電要求車両の乗員が知ることができ、その上で、送受電の実行を承認するか否かを判断することができる。
【0015】
請求項4に記載したように、送受電を行うべき送受電エリアは、特定の複数の道路に対応付けて予め複数個所に定められており、抽出手段は、その予め定められた送受電を行うべき送受電エリアのいずれかを、同時期に走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することが好ましい。例えば、充電要求車両と放電要求車両とが隊列を形成して走行しながら送受電を行う場合、その際の走行速度は比較的低くなる場合が多いと考えられる。そのため、極力、周囲の交通の妨げとならないように、送受電を行う送受電エリアを、例えば、送受電専用の走行車線を有する道路や、複数車線を有する特定の道路に予め対応付けて定めておくことが好ましい。
【0016】
請求項5に記載したように、抽出手段は、車両が、目的地に達するための本来の走行ルートに対して、送受電を行う送受電エリアとなる特定の道路を走行した場合の走行ルートによる走行距離の増加の程度が、所定の閾値以下である場合に、ペアリング車両として抽出するようにすることが好ましい。これにより、充電要求車両及び放電要求車両が、送受電を行うため、本来の目的地に向かうルートから大きく外れたルートを走行せざるをえなくなるような状況の発生を防止することができる。
【0017】
請求項6に記載したように、各車両の目的地が設定されたとき、その目的地までのルートを算出するルート算出手段と、車両に搭載されたバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、充電量検出手段によって検出された現在のバッテリ充電量を基準として、ルート算出手段によって算出されたルートを車両が走行したときのバッテリ充電量の収支を考慮して、バッテリ充電量の変化を予測する予測手段と、を備え、予測手段によって予測されるバッテリ充電量の変化により、バッテリ充電量が不足あるいは過剰となることが想定される場合に、情報センターのデータベースに、充電要求車両あるいは放電要求車両として記録することが好ましい。このように、走行ルートに基づいてバッテリ充電量の変化を予測することにより、各車両が充電要求を持つか、放電要求を持つか、あるいはそのような充放電が不要であるのかを事前に判断することができる。このため、情報センターにおいても、事前にペアリング車両の抽出を行うことができる。従って、例えば、バッテリの充電量が所定値以下や所定値以上となったタイミングで、充電又は放電要求を送信する場合に比較して、時間的な余裕を持ってペアリング車両の抽出を行うことができるので、適切なペアリング車両が抽出されないといった事態の発生を回避できる可能性を高めることができる。
【0018】
請求項7に記載したように、情報センターのデータベースには、予測手段により予測されるバッテリ充電量の変化に基づいて算出される要求充電量及び要求放電量に関する情報も記録され、抽出手段は、要求充電量及び要求放電量も考慮してペアリング車両を抽出するようにしても良い。これにより、要求充電量と要求放電量がより近い車両同士をペアリング車両として抽出することが可能になる。ただし、必ずしも要求充電量と要求放電量とが同等である必要はなく、例えば、要求充電量の所定割合以上の充電が可能な要求放電量を持った放電要求車両をペアリング車両として抽出するようにしても良い。
【0019】
請求項8に記載したように、情報センターのデータベースには、充電要求車両において、要求充電量が必要となるエリアに関する情報、及び放電要求車両において、要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も記録され、抽出手段は、要求充電量が必要となるエリアに関する情報及び要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も考慮してペアリング車両を抽出することが好ましい。これにより、適切なタイミングで送受電を行うことができるペアリング車両を抽出することができ、各車両のバッテリの過放電や過充電を防止することができる。
【0020】
請求項9に記載したように、情報送信手段は、送受電を行うべき送受電エリアにおける充放電スケジュールをペアリング車両の少なくとも一方に送信し、ペアリング車両は、その充放電スケジュールを満足するように、ペアリング車両間で送受電が行われるときの走行速度、車間距離、及び無線による電力の送受電のためのアンテナの角度の少なくとも1つを調整することが好ましい。このようにすれば、情報センターにて計画された充放電量が実現されるように、送受電エリアを走行する間に、充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態における電力送受電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】各車両に搭載された電力送受電装置の構成を示す構成図である。
【図3】車載バッテリの充放電特性を示す特性図である。
【図4】電力送受電アンテナを構成するコイルの中心位置、及びコイルの上下左右の範囲を判別するためのマーキングの例を示す図である。
【図5】車両の走行予定ルートを複数の区間に分け、それぞれの区間においておける車載バッテリの充放電量を算出する際に考慮される、各道路の高度変化に伴う車両の位置エネルギーの変化や、荷物の積み下ろしや人の乗降による重量変化や、路面摩擦係数による走行抵抗の変化などを示す図である。
【図6】車両が、経由地及び目的地を設定するとともに、経由地や目的地において、荷物の積み降ろしや人の乗降を計画したルートを走行する場合に、各区間における電力(エネルギー)の消費と発電をどのように推定するかを説明するための説明図である。
【図7】車両が、車両外部との間で電力の送受電が全く行われないまま、図6に示すルートを走行した場合に、各区間での電力の消費と発電によるバッテリ電圧の総合的な変化をエネルギー収支線として示した図である。
【図8】図7に示すエネルギー収支線に対して、車車間送受電により車載バッテリの充電を行い、かつインフラ設備との間で車載バッテリの放電を行った場合の、エネルギー収支線を示している。
【図9】情報センターの構成を示す図である。
【図10】(a)、(b)は、それぞれ、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録される項目の一例を示す図である。
【図11】車車間送受電の相手車両を決定するまでの処理を示したフローチャートである。
【図12】ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。
【図13】図12とともに、ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。
【図14】ペアリング車両を決定するため、まず、候補車両を選定する処理を示すフローチャートである。
【図15】候補車両の中から、ペアリング車両を決定するための処理を示すフローチャートである。
【図16】ペアリング車両を決定するための具体的な処理を説明するための説明図である。
【図17】ユーザの要望を考慮しつつペアリング車両を決定する処理を示すフローチャートである。
【図18】ペアリング車両として決定された充電要求車両と放電要求車両とが、送受電エリアの開始地点で相互に出会い、送受電処理を実行するための処理を示すフローチャートである。
【図19】送受電の準備処理及び送受電処理の詳細について示したフローチャートである。
【図20】充放電スケジュールについて説明するための説明図である。
【図21】充放電処理の異常発生を監視し、異常が生じたときに、どのような対策を施すかについて示したフローチャートである。
【図22】送受電エリアに、隊列走行を行っている複数のペアリング車両が存在している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における電力送受電システム10の全体構成を概略的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、電力送受電システム10は、各車両11に搭載された電力送受電装置12(車両11aに搭載された電力送受電装置12a、および、車両11bに搭載された電力送受電装置12b)と、各電力送受電装置12と無線通信回線を介して通信可能に構成された情報センター13とからなる。
【0024】
まず、各車両11に搭載された電力送受電装置12の構成について図2を参照しながら説明する。なお、電力送受電装置12は、各車両11とも共通に構成される。
【0025】
電力送受電装置12は、メインコントローラ14を中心として、電力制御装置15、測位装置16、表示装置17、車載スピーカ18、記憶装置19、アンテナ駆動装置20、走行情報検出センサ21、電力送受電アンテナ23、車両センター間情報通信アンテナ24、車両インフラ間情報通信アンテナ25、車車間情報通信アンテナ26、これら情報通信アンテナ24〜26を介して通信される通信データの処理回路27、走行制御装置29、地図記憶装置30、及び入力装置31などから構成される。
【0026】
メインコントローラ14は、CPU(図示せず)を主体として構成され、電力送受電装置12の動作全般を制御する。例えば、メインコントローラ14は、車載バッテリ22の充放電が必要となることが予測されるときに、情報センター13との情報通信を通じて、充放電が行われるべき対象(インフラ又は車両)や、その充放電場所に関する情報を取得する。そして、メインコントローラ14は、車両11が充放電場所に達して、実際に車載バッテリ22の充放電が行われるときに、充放電が適切に実施されるように、車両の走行状態や電力送受電アンテナ23の向きなどを制御する。
【0027】
電力制御装置15は、電力送受電処理回路及び電力変換処理回路などを備える。電力制御装置15は、車載バッテリ22の充放電のため、後述する電力送受電アンテナ23を介して自車両11aと他車両11bとの間で行われる電力の送受電において、当該送受電に用いる周波数に適合するように電力送受電処理回路の設定(回路定数など)を変更し、共鳴周波数を設定する。また、電力制御装置15は、電力変換処理回路によって、外部から受電した電力を車載バッテリ22に充電するために適切な電圧(大きさ、波形)に変換する。
【0028】
さらに、電力制御装置15は、バッテリ状態監視装置28により車載バッテリ22の各セルの充電状態を監視しつつ、各セルについて充電制御を行う。これにより、各セルの充電バランスを整え、車載バッテリ22を安定して動作させることができる。また、電力制御装置15は、各セルの充電バランスや温度などに異常が生じた場合には、異常情報をメインコントローラ14に出力する。
【0029】
車載バッテリ22は、例えば図3に示すような充放電特性(充電特性および放電特性)を有している。即ち、車載バッテリ22は、充電後の電圧値として許容される最大の電圧値(図3の最大許容電圧値Vmax)と放電後の電圧値として許容される最少の電圧値(図3の最小許容電圧値Vmin)との間で、電圧がほぼ線形的に遷移する領域(線形遷移領域)を有している。
【0030】
電力制御装置15は、車載バッテリ22の充電状態が、最大許容電圧値Vmaxを上回りそうになると、所定の警告動作を実行する。具体的には、電力制御装置15は、車載バッテリ22への充電の停止や、車載バッテリ22の放電の開始を実施する。合わせて、そのような充電停止や放電開始に関して、表示装置17による表示出力や車載スピーカ18による音声出力によって、車両11の運転者に警告する。
【0031】
また、電力制御装置15は、車載バッテリ22の電圧が最少許容電圧値Vminを下回りそうになったときにも、所定の警告動作を実行する。具体的には、電力制御装置15は、車載バッテリ22の放電の停止や、可能であればモータの回生動作により車載バッテリ22への充電の開始を実施する。合わせて、そのような放電停止や充電開始に関して、表示装置17による表示出力や車載スピーカ18による音声出力によって、車両11aの運転者に警告する。
【0032】
測位装置16は、測位用衛星(例えばGPS衛星やGLONASS衛星)から送信された衛星信号を受信し、その衛星信号から自車両11aの現在位置や進行方向を算出するものである。また、測位装置16は、衛星信号から自車両11aの現在位置や進行方向を算出するものに加えて、あるいは代えて、図示しない速度センサやジャイロセンサなどからの検出値に基づいて自車両11aの進行方向や現在位置を算出するものであっても良い。
【0033】
表示装置17は、例えば液晶ディスプレイで構成され、メインコントローラ14から入力された表示指令信号に基づいて、その表示指令に応じた各種の情報を表示する。例えば、表示装置17には、目的地を設定したときに、その目的地までのルートを表示したり、そのルートを走行したときの車載バッテリ22の充放電量に基づき予測されるバッテリ電圧の変化を、エネルギー収支線により表示したりする。また、表示装置17には、他車両やインフラとの送受電位置や、送受電状況が表示される。その他にも、表示装置17には、車載バッテリ22の残存容量、航続可能距離など、ユーザに有用な情報が表示される。
【0034】
車載スピーカ18は、図示しない音声コントローラを介してメインコントローラ14に接続されており、メインコントローラ14から出力された音声出力指令信号に基づいて、その音声出力指令に応じた各種の音声情報を出力する。記憶装置19は、メモリやハードディスクドライブなどの各種の記憶媒体で構成され、各種のデータや情報を記憶する。
【0035】
アンテナ駆動装置20は、コイル状の電力送受電アンテナ23の指向方向を、上下左右に所定角度範囲内で変更するものである。この電力送受電アンテナ23の中心部には、LEDなどからなる発光装置が設置されている。この発光装置は、電力送受電アンテナ23の中心部から当該電力送受電アンテナ23の指向方向に向かうスポット状の光を発する。これにより、アンテナ駆動装置20によって電力送受電アンテナ23の指向方向を変更する場合に、その変更前後の指向方向を容易に確認することができる。
【0036】
電力送受電アンテナ23は、自車両11aが有する電力(自車両11aの車載バッテリ22に蓄積されている電力)を他車両11bに送電したり、他車両11bが有する電力(他車両11bの車載バッテリ22に蓄積されている電力)を自車両11aにて受電したりするものである。この電力送受電アンテナ23として、図2に示すように、自車両11aの前部(例えば、前部バンパーの上部)に設置された前部送受電アンテナ23aと、後部(例えば、後部トランクのドア内)に設置された後部送受電アンテナ23bと、左側部(例えば、左側ドア内)に設置された左側部送受電アンテナ23cと、右側部(例えば、右側ドア内)に設置された右側部送受電アンテナ23dとが設けられている。これら電力送受電アンテナ23による電力の送電および受電は、電磁波を媒介として、共鳴誘導によって行われる。
【0037】
なお、この電力送受電アンテナ23には、図4に示すような、コイルの中心位置、及びコイルの上下左右の範囲を判別するためのマーキングが設けられている。このマーキングは、人の目には見えないが、赤外線で検出できる塗料や表面処理を行うことによって、車両の外観を損なわないようにすると良い。ただし、無線による電力の送受電を行う車両であることが分かるように、マーキングを外部から視認可能に設けても良い。このようなマーキングを設けることにより、自車両11aの電力送受電アンテナ23と他車両11bの電力送受電アンテナ23とが対向するように、容易にアンテナ角度の調整を行うことができる。
【0038】
また、電力送受電アンテナ23は、車車間における電力の送受電だけでなく、各地の道路沿いに設置される図示しない電力送受電設備との間で電力の送受電を行う際にも用いられる。つまり、電力送受電装置12は、他車両との間のみならず、各地にインフラ設備として設置されている電力送受電装置との間でも電力の送受電を可能とするものである。
【0039】
車両センター間情報通信アンテナ24は、車両11と情報センター13との間で各種の情報を無線通信回線を介して送受信(送信および受信)するものである。車両インフラ間情報通信アンテナ25は、車両11が、インフラ設備としての電力送受電装置との間で電力の送受電を行う際に、必要となる情報を送受信するためのものである。
【0040】
車車間情報通信アンテナ26は、各車両11間で各種の情報を無線によって送受信するものである。この車車間情報通信アンテナ26によって送受信される情報には、例えば、各車両11に設定された車両ID、各車両11の現在位置情報、相手車両の車両イメージ、プレートナンバー、電力送受電アンテナ23に関する情報、他車両への電力の供給(放電)を要求する放電要求信号、他車両からの電力の供給(充電)を要求する充電要求信号、などが含まれる。電力送受電アンテナ23に関する情報には、例えば、電力送受電アンテナ23を構成するコイルのサイズ、抵抗値、インピーダンス、送受電可能な電力量(許容される出力値)などが含まれる。
【0041】
なお、この車車間情報通信アンテナ26による通信は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)などの狭域通信を採用することが干渉などの通信障害が発生し難くなり望ましい。また、車車間情報通信アンテナ26による通信は、指向性の高い電波や光を用いた通信を採用することにより、より干渉などの通信障害を発生し難くすることができる。
【0042】
通信データ処理回路27は、各情報通信アンテナ24〜26によって受信した情報を、メインコントローラ14にて認識できるデータに復調したり、自車両11aから外部へ情報を送信する際に、情報を搬送波に重畳して変調したりする処理を行うものである。
【0043】
走行情報検出センサ21は、図示しない各種のセンサ(例えば、加速度センサ、速度センサ、ステアリングセンサ、レーダセンサ、カメラなど)からなり、これら各種のセンサによって検知される各種の情報を、車両の走行状態を示す走行情報としてメインコントローラ14に入力する。
【0044】
例えば、走行情報検出センサ21は、レーダセンサやカメラを用いて、他車両との相対位置(他車両との車間距離や、車幅方向におけるずれの長さなど)を検出する。メインコントローラ14は、相手車両と隊列走行をしながら送受電を行う際に、検出された相対位置が、電力の送受電を行うべき相対位置からずれている場合に、走行制御装置29に対して、他車両との車間距離や車幅方向のずれを修正するように指示する。この走行制御装置29は、車速制御装置やステアリング制御装置を含み、これら車速制御装置及びステアリング制御装置が、メインコントローラ14からの指示に従って、他車両との車間距離及び車幅方向のずれを制御する。なお、走行情報検出センサ21のカメラは、他車両11bの電力送受電アンテナ23のマーキングの位置を検出し、自車両11aと他車両11bとの電力送受電アンテナ23が正確に対向するように角度制御を行うためにも用いられる。
【0045】
さらに、メインコントローラ14は、走行情報検出センサ21における、加速度センサや速度センサによって検出される情報、及び後述する地図記憶装置30に記憶された地図データに基づき、車両11が、電力の送受電時に、送受電が実行される送受電エリア(道路区間)を指定された速度で走行しつつ、スケジュールどおりに充放電が行われているか否かを確認する。なお、車両が、送受電のための道路区間をどの程度の速度で走行するか、及びその道路区間での充放電のスケジュールは、情報センター13によって指示される。メインコントローラ14は、充放電のスケジュールが指定内容からずれている場合、そのずれを修正すべく、例えば、走行速度や車間距離の調整を走行制御装置29に指示したり、電力送受電アンテナ23の向きの調整をアンテナ駆動装置20に指示したりする。送受電エリア(道路区間)に関しては、後に詳細に説明する。
【0046】
地図記憶装置30は、道路地図データを記憶した記憶媒体を備えている。この道路地図データは、単に道路の形状や接続状態のみでなく、各道路の高度や傾斜度合に関する情報や交通渋滞が発生しやすい箇所やその時間帯も記憶している。ただし、交通渋滞が発生しやすい箇所やその時間帯に関しては、図示しない交通情報センターと通信を行って、案内ルートの設定の都度、取得するようにしても良い。さらに、道路地図データには、各道路の路面摩擦係数に関する情報も記憶されていることが好ましい。
【0047】
入力装置31は、車両の運転者により、出発地、目的地、経由地などを入力したり、それらの各地点での荷物の積み下ろしや人の乗降の予定などを入力するためのものである。さらに、入力装置31は、情報センター13から送受電の相手車両、場所、料金などの条件が通知されたときに、その送受電の実行の可否を回答したり、情報センター13に対して条件の変更を依頼したりする際に用いられるものである。
【0048】
運転者によって目的地が入力されると、メインコントローラ14は、地図記憶装置30に記憶された道路地図データに基づき、目的地までのルートを探索し、表示装置17に表示する。その際、メインコントローラ14は、目的地までのルートをいくつかの区間に分け、各道路の高度変化に伴う車両の位置エネルギーの変化などに基づき、それぞれの区間においておける車載バッテリ22の充放電量を算出する。この際、図5に示すように、荷物の積み下ろしや人の乗降による重量変化や、路面摩擦係数による走行抵抗などの変化も考慮すると、より正確な充放電量を算出することができる。
【0049】
図5には、車両が出発地を出発して目的地に達し、再び出発地まで戻るルートを走行する場合に、ポイント3で荷物を載せるため車両重量が重くなり、ポイント5で、積載していた荷物を降ろし、別の荷物を載せたため、僅かに車両重量が軽くなった例を示している。また、ポイント8では、ポイント5で乗せた荷物を降ろすために車両重量が初期の重量まで減少している。さらに、図5には、各区間の路面摩擦係数の変化も示されている。ただし、路面摩擦係数は、天候(雨、雪など)により大きく変化するので、外部の交通情報センターなどからルートの天候情報を取得し、取得した天候情報に応じて、道路地図データに記憶されている路面摩擦係数を補正することが好ましい。さらに、路面摩擦係数に関しては、図示しない交通情報センターが、実際に各道路を走行している車両から路面摩擦係数を示すデータを収集して一元的に管理し、各車両は、目的地までのルートを探索したときに、そのルートに含まれる各道路の路面摩擦係数データを取得するようにしても良い。
【0050】
さらに、車両が走行する際の空気抵抗によって消費される空力エネルギー、夜間の照明エネルギー、車載空調機を駆動するためのエネルギー、降雨時にワイパーを作動させるためのエネルギーなどを考慮すると、より一層、精度の高い充放電量を算出することができる。従って、風向きや風速に関する情報を取得して各区間における空力エネルギーを算出したり、ルートの各区間の車両の走行時間帯により照明エネルギーの要否を判断したり、車載空調器の稼動状態や外気温、外気湿度などにより、車載空調機の駆動エネルギーを予測したり、天候情報により、ワイパーなどの機器を作動させるためのエネルギーなどを予測したりすることが好ましい。
【0051】
そして、メインコントローラ14は、現在の車載バッテリ22の充電量を基準として、各区間の電力の消費や発電を考慮して充放電量の変化を予測し、その充放電量の変化をエネルギー収支線として表示装置17に表示させる。なお、出発地(現在地)や目的地などを情報センター13に連絡して、目的地までのルートや、エネルギー収支線を、情報センター13にて算出し、各車両11に提供するように構成しても良い。
【0052】
ここで、車両11が、経由地及び目的地を設定するとともに、経由地や目的地において、荷物の積み降ろしや人の乗降を計画したルートを走行する場合に、各区間における電力(エネルギー)の消費と発電をどのように推定するかに関して、図6に示す例に基づいて詳しく説明する。なお、以下においては、説明を簡単にするため、各区間の道路の高低差と車両重量の変化のみに着目して、電力の消費量及び発電量について説明する。
【0053】
図6に示すように、車両が、家や営業所を出発し、出発地であるポイント0からポイント1までの区間を走行すると、この区間は緩やかな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力(エネルギー)が緩やかに消費される(ポイント0〜ポイント1までの区間に対応してハッチングで示す部分参照。以下、同様)。
【0054】
次に、車両が、ポイント1からポイント2までの区間を走行すると、この区間は若干急な上り坂(例えば、山よりも起伏が緩やかな丘などの登り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が若干急激に消費(少なくとも、上記のポイント0〜ポイント1までの区間よりも急激に消費)される。
【0055】
次に、車両が、ポイント2からポイント3までの区間を走行すると、この区間は若干急な下り坂(例えば、山よりも起伏が緩やかな丘などの下り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力(ポイント2までに車両に蓄積された位置エネルギーや車両の制動に伴い発生する回生エネルギーなどに相当するエネルギー)が若干急激に蓄積される。
【0056】
車両がポイント3に到着すると、人または荷物を積載するので、車両の重量が変化する(車両重量が重くなる)。その後、車両が、ポイント3からポイント4までの区間を走行すると、その区間は僅かな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が僅かに消費される。なお、ポイント3にて車両の総重量が増加することから、この区間では、車載バッテリ22に蓄積されている電力が、車両の総重量が増加した分、多く消費される。
【0057】
次に、車両が、ポイント4からポイント5までの区間を走行すると、この区間はほぼ平坦な区間であることから、車載バッテリ22に蓄積されている電力の消費量は僅かである。ただし、この区間では、渋滞が発生することが多いため、その分を見越して(車両の停車と加速が細かく繰り返される)、電力の消費量を推定する。さらに、ポイント3にて積載した荷物による重量の増加分も考慮される。
【0058】
ポイント5に車両が到達すると、ポイント3で積載した荷物を降ろし、別の荷物を積む(又は搭乗者が乗車する)。そして、車両が、ポイント5からポイント6までの区間を走行すると、この区間は、図6に示すように、急峻な上り坂(例えば、丘よりも起伏が急峻な山などの登り道)であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が急激(少なくとも、上記のポイント1からポイント2の区間よりも急激)に消費される。この際、ポイント5にて積載した荷物の重量増加分だけ、余計に電力が消費される。
【0059】
次に、車両が、ポイント6からポイント7までの区間を走行すると、この区間は急峻な下り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力(ポイント6までに車両に蓄積された位置エネルギーや車両の制動に伴い発生する回生エネルギーなどによるエネルギー)が急激に蓄積される。この際、ポイント5にて積載した荷物による重量増加分だけ、車両の位置エネルギーも増加していたため、蓄積されるエネルギーも増加する。
【0060】
そして、車両が、ポイント7からポイント8までの区間を走行すると、この区間は緩やかな上り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22に蓄積されている電力が緩やかに消費される。なお、この際、ポイント5で積載した荷物による車両重量の増加が考慮される。
【0061】
そして、車両がポイント8に達すると、ポイント5で積載した荷物を降ろす。これにより、車両の重量はほぼ初期状態に減少する。車両が、ポイント8からポイント0までの区間を走行すると、この区間は緩やかな下り坂であることから、図7に示すように、車載バッテリ22には電力が緩やかに蓄積される。なお、ポイント8にて車両の重量が減少することから、この区間では、車載バッテリ22の充電量の増加の程度は緩やかになる。
【0062】
このように、車両が走行する予定のルートを複数の区間に分け、各区間における電力の消費量及び/又は発電量を推定することにより、どの区間で電力が多く消費され、どの区間で電力が多く発電されるかを把握することができる。そして、各区間の電力の消費量及び発電量を総合することで、車両が出発地(ポイント0)から、経由地や目的地を経て、再び出発地まで走行する間におけるエネルギー収支の様子を把握することができる。このエネルギー収支の様子は、図7にエネルギー収支線として示されている。
【0063】
図7に示したエネルギー収支線から、電力の送受電が全く行われない場合、車載バッテリ22の充電状態(充電量)が、ポイント1〜2の区間及びポイント5〜6の区間において最少許容電圧値を下回ってしまうことが分かる。逆に、ポイント6〜7の区間では、その区間単体で見れば、車載バッテリ22の充電量が最大許容電圧値を超えており、比較的、電力に余裕のある区間であることが分かる。
【0064】
そのため、メインコントローラ14は、情報センター13に対して、ポイント1やポイント5付近の、車載バッテリ22の充電量が最小許容電圧値を下回る以前の地点で充電を行うことを要求する充電要求を送信する。また、そのような充電要求に応じて、車載バッテリ22の充電が行われるとすると、ポイント6〜ポイント7の区間では、電力に余裕が生じるため、少なくとも充電後、ポイント6に達する以前に、ポイント6付近において車載バッテリ22から放電可能である旨の放電要求を情報センター13に対して送信する。
【0065】
すると、情報センター13は、このような充電要求や放電要求に応答して、その要求を送信してきた車両に対し、ルート走行途中で車車間送受電を行うべく、相手車両及び充放電場所を検索して、その検索結果を送信する。
【0066】
図8は、一例として、ポイント1付近及びポイント5付近において、車車間送受電により車載バッテリ22の充電を行った場合の、エネルギー収支線を示している。図8のエネルギー収支線から明らかなように、ポイント1付近及びポイント5付近にて車車間送受電を行うことにより、ポイント1〜ポイント2の区間及びポイント5〜ポイント6の区間において、車載バッテリ22の充電量が最少許容電圧値を下回ってしまうことを回避することができる。また、この場合、車載バッテリ22には最少許容電圧値を上回る十分な電力が蓄電されるようになり、車載バッテリ22の蓄電量に余裕が生じる。従って、その後、車両がポイント6付近を走行する際に、インフラ設備との間で無線による電力の送受電を実行し、自車両の電力を外部のインフラ設備に送電(放電)することができるようになる。
【0067】
このように、設定されたルートを走行した際の電力の変化を示すエネルギー収支線に基づいて、充放電の必要性を判定することにより、それぞれ時間的に余裕を持った適切なタイミングで、充電要求や放電要求を行うことができる。そのため、高い確率で、充電や放電が必要となるエリアにおいて、インフラ設備や、他車両との間で充放電を行うことができるようになり、各車両11の車載バッテリ22の充電量を適正範囲に維持することが可能になる。
【0068】
次に、情報センター13の構成について図9を参照しながら説明する。図9に示すように、情報センター13は、メインコントローラ40を中心に、車両センター間情報通信アンテナ41、通信データ処理回路42、充放電車両管理データベース43及び充放電エリアデータベース44などを備えている。メインコントローラ40は、CPUを主体として構成され、情報センター13の動作全般を制御する。
【0069】
車両センター間情報通信アンテナ41は、情報センター13と各車両11との間で各種の情報を無線通信回線を介して送受信するものである。車両センター間情報通信アンテナ41にて受信された情報は、通信データ処理回路42にて復調され、メインコントローラ40に入力される。
【0070】
メインコントローラ40は、車両から充電要求を含む情報を受信した場合には、充放電車両管理データベース43における充電要求車両データベースに、その車両に関する各種の情報を記録する。また、車両から放電要求を含む情報を受信した場合には、充放電車両管理データベース43における放電要求車両データベースに、その車両に関する各種の情報を記録する。一旦、充電要求車両及び放電要求車両が、それぞれのデータベースに登録されると、情報センター13は各車両と定期的に通信を行い、データベースに記録されている情報を更新する。
【0071】
図10(a)、(b)に、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースの一例をそれぞれ示す。図10(a)、(b)に示すように、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースには、各車両11に設定された車両ID、各車両11の現在位置、及び進行方向を示す位置情報、目的地(又は目的地までのルート)、要求充電量又は要求放電量、充電必要エリア又は放電必要エリア、充放電機能のクラス(性能)、現在の電池容量、車車間送受電を実施結果から算出される信頼度を示すユーザ特性、車種、サイズ、衝突防止装置機能や車間制御機能などの安全機能に関する性能、各車両において設定された車車間充放電時の走行ロスの限度、車車間充放電時の走行形態(前、後、中間)などが記録される。
【0072】
ただし、図10(a)、(b)に示す充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースの記録項目は、単なる一例であって、必ずしも全ての項目を記録する必要はなく、逆に、図10(a)、(b)に示す以外の項目を含むものであっても良い。例えば、これらのデータベースには、希望する相手車両のサイズなども登録できるようにしても良い。
【0073】
また、情報センター13は、送受電エリアデータベース44を備えている。この送受電エリアデータベース44は、各地の道路に予め定められた送受電を行うべき道路区間(送受電電エリア)を記録したものである。
【0074】
上述した車車間送受電は、充電要求車両と放電要求車両とが、例えば隊列走行しつつ電力の送受電を行うことによって実行される。そのため、充電要求車両と放電要求車両との位置関係を維持し易くするべく、車車間送受電は、直線状の道路において実行されることが望ましい。さらに、車車間送受電を実行しているときの走行速度は比較的低くなる場合が多い。そのため、周囲の交通の妨げとならないように、車車間送受電用の専用車線が増設された道路区間や、少なくとも複数車線を有する道路の特定の道路区間が送受電エリアとして予め定められている。
【0075】
情報センター13のメインコントローラ40は、各車両11から充電要求や放電要求が送信されてくると、それぞれ、上述した充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに登録する。そして、それぞれのデータベースに記録された情報に基づき、車車間送受電を行うべき適切な充電要求車両と放電要求車両とを抽出し、ペアリング車両として決定する。そして、決定したペアリング車両に対し、相手車両に関する情報や、送受電場所に関する情報(送受電エリア)を通知し、通知内容での車車間送受電についての承認を求める。双方の車両から承認が得られると、車車間送受電の実施を確定する。
【0076】
次に、上述した構成を備えた電力送受電システム10において実行される、各種の制御処理について、フローチャート等を用いて説明する。
【0077】
まず、図11のフローチャートに基づいて、車車間送受電の相手車両を決定するまでの処理について説明する。
【0078】
最初に、ステップS100では、車両11の電力送受電装置12において、上述したエネルギー収支線が算出され、保存される。次に、ステップS110では、算出されたエネルギー収支線に基づいて、充放電が必要であるか否かを判定する。この判定処理において、充放電が必要と判定されるとステップS120の処理に進み、充放電が不要と判定されるとステップS100の処理に戻る。なお、車両の走行に伴い、推測したエネルギー収支線が変化し、当初は充放電が不要と判定されていたものが、途中で、充放電が必要との判定に変化することもありえる。そのため、ステップS110にて充放電が不要と判定された場合、ステップS100の処理を繰り返し実行する。
【0079】
ステップS120では、地図記憶装置30に記憶された地図データベースを参照して、充放電が必要となるエリア付近に、インフラ設備があるか否かを判定する。この判定処理において、インフラ設備があると判定されると、ステップS130の処理に進み、インフラ設備がないと判定されると、ステップS170の処理に進む。ステップS130では、必要となる充放電量などに基づいて、インフラ設備にて充放電を行った場合に要する時間を計算する。続くステップS140では、インフラ設備にて充放電を行うか否かを確認すべく、車両11の乗員に対して、ステップS130にて計算した充放電時間、インフラ設備の場所、料金などを提示する。
【0080】
そして、ステップS150において、車両11の乗員が、インフラ設備にて充放電を行うことを承認したと判定した場合には、ステップS160に進んで、表示装置17に、充放電を行うインフラ設備までの案内経路を表示するなどして、インフラ設備までの案内を実行する。一方、ステップS150において、車両11の乗員がインフラ設備での充放電を承認しなかった場合、ステップS170の処理に進む。
【0081】
ステップS170では、情報センター13に対して、車車間送受電の実施要求を送信する。この車車間送受電の実施要求には、車両ID,位置情報、目的地(あるいは走行予定ルート)、要求充電量又は要求放電量、充電必要エリア又は放電必要エリアなど、上述した充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録する情報が含まれる。
【0082】
情報センター13は、このような車車間送受電の実施要求を受信すると、充電要求を持った車両11からの情報は充電要求車両データベースに記録し、放電要求を持った車両11からの情報は放電要求車両データベースに記録する。そして、ステップS180にて、充放電車両管理データベース43及び送受電エリアデータベース44を参照して、車車間送受電を行うために組み合わされるべき充電要求車両と放電要求車両とを検索し、ペアリング車両を決定する。
【0083】
このペアリング車両の決定方法について、さらに詳細に説明する。図12及び図13は、ペアリング車両の決定方法を概念的に説明するための説明図である。図12及び図13において、車両X1〜X3は、充電要求を持った充電要求車両を表しており、車両Y1〜Y3は、放電要求を持った放電要求車両を表している。また、P1,P2,…、PNは、送受電エリアとして定めされている道路区間を示している。
【0084】
まず、所定範囲の探索領域を定め、その探索領域に含まれる充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3を検索する。そして、検索された各充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3の目的地から、その目的地に達するためのルートを計算する。
【0085】
すると、図12に例示する充電要求車両X1〜X3及び放電要求車両Y1〜Y3の中で、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とが、送受電エリアP1にて、車車間送受電を行うと、双方の車両とも、目的地に向かうルートに対してほぼ走行ロスが発生することがないことが判明する。すなわち、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とは、互いに接近する方向に向かって走行している。そして、これらの車両X1,Y1が、送受電エリアP1にて車車間送受電を行うものとすると、図13に示すように、それぞれの車両X1,Y1が、目的地に達するルートから大きく外れたルートを走行することなく、すなわち走行ロスが生じることなく、車車間送受電を行うことができる。なお、充電要求車両X1と放電要求車両Y1とが車車間送受電を行う送受電エリアとしてエリアP2が選択されると、図13に示すように、放電要求車両Y1は、目的地に達するルートから大きく逸れたルートを走行せざるを得なくなる。そのため、このケースにおいては、車両X1,Y1が車車間送受電を行う場所として、送受電エリアP2ではなく、送受電エリアP1が選択される。
【0086】
次に、上述したペアリング車両を決定するための具体的な制御処理について、図14及び図15のフローチャートと、図16の説明図を用いて説明する。なお、図14及び図15のフローチャートに示す処理は、所定の時間間隔で定期的に実行される。
【0087】
まず、図14のフローチャートのステップS300では、充電要求車両及び放電要求車両を検索する距離範囲を設定する。この検索距離範囲は、図16に示すように、例えば、各々の送受電エリアの開始点を基準として、各送受電エリアごとに設定される。なお、検索距離範囲は、複数の送受電エリアを含むように設定され、以降の処理を各送受電エリアごとに行うようにしても良い。
【0088】
続くステップS310では、検索距離範囲内に含まれる充電要求車両と放電要求車両とを、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースからリストアップする。このリストアップにおいては、各データベースに記録された充電必要エリア及び放電必要エリアを考慮し、送受電エリアが、それらの充電必要エリア及び放電必要エリアに含まれている、受電要求車両及び放電要求車両をリストアップすることが好ましい。これにより、送受電が必要な車両を適切なタイミングでリストアップすることができる。
【0089】
また、上記リストアップを行うタイミングと、それぞれのデータベースに情報が記録されたときのタイミングとの時間差に応じて、各車両の位置情報を補正することが好ましい。すなわち、その時間差分だけ各車両が目的地方向に進んだものとして、検索距離範囲内に属する充電要求車両と放電要求車両とをリストアップする。
【0090】
なお、検索距離範囲内に存在していても、既にペアリング車両として決定されている充電要求車両及び放電要求車両は、リストアップの対象とならない。図16には、充電要求車両として車両X1,X2,X3が抽出され、放電要求車両として車両Y1,Y2,Y3が抽出された例が示されている。
【0091】
次に、ステップS320では、ステップS310にてリストアップされた各充電要求車両及び各放電要求車両の目的地を確認し、それぞれの目的地に達するルートを計算する。なお、前回以前の処理で、目的地に達するルートが計算されている車両については、そのルートを利用することも可能である。また、データベースに目的地に達するルートが記録されている場合には、それをそのまま利用しても良い。図16では、星印で示す地点が、各車両X1〜X3、Y1〜Y3の目的地を示している。
【0092】
ステップS330では、各車両が、検索距離範囲に含まれる送受電エリアを走行した場合のルートを計算し、そのルートと、ステップS320にて計算したルートとの比較から、追加走行距離を算出する。そして、ステップS340では、追加走行距離が設定値以下であるか否かを判定する。この追加走行距離が設定値以下であるか否かの判定においては、設定値として距離基準値を定めて、追加走行距離と距離基準値とを比較しても良いし、例えば各車両が現在地から目的地に達するまでの走行距離に対する、送受電エリアを走行して目的地に達するルートの走行距離の比率を求め、この比率を比率基準値と比較しても良い。また、それらの距離基準値や比率基準値は、各車両の乗員が設定し、情報センターに通知するようにしても良い。この場合、距離基準値や比率基準値は、各車両ごとにデータベースに記録されたものを用いることになる。
【0093】
ステップS340において、追加走行距離は設定値以下と判定された場合には、ステップS350に進み、上記送受電エリアにて送受電を行う候補車両として選定される。一方、ステップS340にて、追加走行距離は設定値を超えると判定された場合には、ステップS360に進んで、上記送受電エリアにて送受電を行う候補車両から除外される。
【0094】
例えば、図16に示す例において、各車両の追加走行距離を、各車両が現在地から目的地に達するまでの走行距離に対する、送受電エリアを走行して目的地に達するルートの走行距離の比率として求めた場合、X1=1.5、X2=1.2、X3=3、Y1=1(追加走行距離なし)、Y2=2,Y3=1.3となる。この場合、例えば比率基準値を1.5に設定したとすると、充電要求車両のうち車両X3は候補車両から除外され、放電要求車両のうち車両Y2は候補車両から除外される。
【0095】
次に、図15のフローチャートのステップS400では、図14のフローチャートにより候補車両として選定された各車両の送受電エリアまでの距離(又は、所要時間)を算出する。なお、距離は、各車両がそれぞれの現在位置から送受電エリアに達するルートを走行した場合の距離である。また、所要時間としては、各車両が、送受電エリアに達するルートを標準的な速度で走行した場合に要すると想定される時間である。
【0096】
そして、ステップS410では、ステップS400にて算出された距離(又は、所要時間)が近い、充電要求を持った候補車両と放電要求を持った候補車両とを選定して、ペアリング車両とする。なお、距離(又は、所要時間)の差異については、予め上限値が定められており、その上限値以内の中で、最も差の小さい候補車両同士を選定する。図16に示す例では、充電要求車両X1と放電要求車両Y3、及び充電要求車両X2と放電要求車両Y1とが、それぞれ送受電エリアまでの距離が近いため、ペアリング車両として決定される。
【0097】
ステップS420では、上述したペアリング処理を行った結果、検索距離範囲に属する全ての車両に対して、ペアリング車両が決定されたか否かを判定する。ペアリング車両として決定された車両に関しては、ステップS430にて、ペアリング車両として登録する。一方、ペアリング車両として決定されなかった車両があれば、ステップS440において、送受電エリアを同時期に走行する相手車両が見つからなかったため、送受電エリアにおいて待ち時間が発生する条件付車両、あるいは相手車両が見つからない車両として登録する。この場合、該当車両に待ち時間が生じる旨を連絡して、乗員の了解が得られた場合、距離(又は、所要時間)の上限値を拡大して、ペアリング車両となる車両の検索を行っても良い。
【0098】
再び、図11のフローチャートに戻り、説明を続ける。上述した処理により、ペアリング車両が決定されると、ステップS190において、情報センター13から、ペアリング車両として決定された車両に対して、相手車両が見つかったので車車間送受電を実施可能である旨の回答を送信する。その際、車車間送受電を行う相手車両に関する情報、送受電エリア、予想充(放)電量、料金などの情報も合わせて送信される。
【0099】
すると、車両11では、ステップS200において、表示装置17及び/又はスピーカ18により、受信した情報が車両11の乗員に報知される。車両11の乗員は、入力装置31を用いて、回答のあった内容で車車間送受電を実施することを承認するか否認するかを入力する。そして、乗員が承認する場合には、ステップS210において、車車間送受電の実施を確定するための処理として、情報センター13に対して、連絡のあった内容での車車間送受電を承認する旨、及び確認のため確定条件を返送する。
【0100】
情報センター13では、ペアリング車両として決定した双方の車両から、車車間送受電を実施することを承認する旨の返送を受け取った場合、ステップS230にて、その双方の車両へ、車車間送受電の実施が確定した旨の連絡を行う。この際、相手車両や送受電エリアの確定情報、料金などの確定条件に加え、送受電エリアにおける充放電スケジュールも送信される。車両は、この確定連絡を受けると、ステップS240にて、例えば表示装置17に、車車間送受電が行われる予定の送受電エリアまでの案内経路を表示することにより、送受電エリアへの案内を行う。
【0101】
一方、乗員が承認しない場合には、ステップS220において、入力装置31を用いて、条件の変更依頼を行う。例えば、自車両が普通乗用車であって、送受電の相手車両として大型車両が抽出されたとすると、このような大型車両を対象として隊列走行しながら充放電する場合、自車両の運転者は前方を見づらくなったり、後方確認を行いにくくなったりする。このため、自車両の運転者は、自車両と同等以下のサイズの車両を相手車両として希望することも考えられる。また、一回の充放電処理による充放電量があまりに小さいと、運転者は、より多くの充放電量が得られる別の車両との車車間送受電を行うことを希望することも考えられる。
【0102】
条件変更依頼では、情報センター13から回答のあった情報の中で、乗員が変更を希望する情報に関して、変更希望内容を入力する。すると、ステップS170において、変更希望内容を含む車車間送受電の要求が情報センター13に送信される。情報センター13では、車両の乗員の希望を満たす相手車両が存在するか否かを確認し、存在していれば、再度、その車両を対象として車車間送受電を実施する旨の回答を行う。
【0103】
なお、図14及び図15のフローチャートを用いて説明したペアリング車両の決定方法では、走行ロスが過度に大きくならず、同時期に送受電エリアを走行可能という条件で、ペアリング車両を決定するものであった。しかしながら、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースに記録された他の情報も考慮して、ペアリング車両を決定するようにしても良い。
【0104】
例えば、ある充電要求車両に対して、ほぼ同時期に同じ送受電エリアを走行可能な放電要求車両が複数台存在する場合は、要求充電量及び要求放電量を考慮してペアリング車両を決定するようにしても良い。すなわち、複数台の要求放電車両の中から、要求充電車両の要求充電量により近い要求放電量をもった放電要求車両をペアリング車両として決定する。これにより、要求充電量と要求放電量がより近い車両同士をペアリング車両として抽出することが可能になる。
【0105】
また、ペアリング車両を決定する場合に、事前に、各車両の乗員(ユーザ)からの要望を受け付けて、その要望を満たす相手車両を検索するようにしても良い。例えば、ユーザからの要望としては、上述したように、自車両と同等サイズの車両を相手車両として車車間充放電を実施したいとか、一度の車車間送受電で必要充放電量の例えば90%以上を達成したいとか、料金を極力低額にしたいとか、料金は高額でも確実に充放電を行いたいなどの要望が出されることが考えられる。
【0106】
ここで、料金に関しては、例えば、送受電エリアの開始地点付近に、システムの管理者が、車車間送受電の要求に対応できる各種の車両を用意しておき、それらの車両と車車間送受電を行った場合、一般車両と車車間送受電を行うよりも、その車両の使用料分だけ不利となる料金体系とすることが考えられる。つまり、原則として、充電を行う場合には料金を支払い、放電を行う場合には料金を受け取るが、それぞれ支払額や受取額が、システム管理者が準備した車両を対象として行う場合には、一般車両を対象として行う場合よりも、支払額は増額され、受取額は減額されるように料金を定める。
【0107】
以下に、ユーザが車両サイズに関する要望を出した場合を例として、このような要望を考慮しつつペアリング車両を決定する処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。
【0108】
まず、ステップS500では、各車両からの充放電要求を受け付ける。この充放電要求には、上述した車両サイズに関するユーザの要望が含まれている場合がある。そして、ステップS510では、充電要求車両及び放電要求車両を検索する距離範囲を設定し、ステップS520では、検索距離範囲内に含まれる充電要求車両と放電要求車両とを、充電要求車両データベース及び放電要求車両データベースからリストアップする。
【0109】
続くステップS530では、付加条件としてのユーザの要望を満たす対象車両を検索する。なお、この対象車両の検索は、例えば、ステップS520にてリストアップされた充電要求車両と放電要求車両との中で、充放電要求の受付を行った順序に従って行われる。つまり、より早いタイミングで受け付けた充放電要求に含まれる要望ほど、その要望を満たす対象車両の検索が優先的に行われる。
【0110】
ステップS540では、要望を満たす対象車両(該当車両)が検索されたか否かを判定し、検索された場合にはステップS550の処理に進み、検索されなかった場合にはステップS590の処理に進む。ステップS550では、該当車両が、送受電エリアを経由して走行した場合の追加走行距離を算出する。この際、該当車両が複数あれば、各該当車両について、追加走行距離を算出する。ステップS560では、この追加走行距離による走行ロスが許容レベル以下の該当車両があるか否かを判定する。この判定処理において、走行ロスが許容レベル以下の該当車両があればステップS580の処理に進み、そのような該当車両がなければ、ステップS570の処理に進む。
【0111】
ステップS570では、さらに、走行ロスが限度内の該当車両があるか否かを判定する。このように、図17のフローチャートに示す例では、ユーザの要望を満たす対象車両を検索しやすくするため、走行ロスのレベルが2段階(許容レベル<限度レベル)に設定されている。そして、ステップS570の判定処理において、走行ロスが限度内の該当車両があると判定されるとステップS600の処理に進み、走行ロスが限度内の該当車両がないと判定された場合、ステップS590に進む。
【0112】
ステップS590では、要望を満たす該当車両がない旨をユーザに通知する。一方、ステップS600では、該当車両はあるが、多少の走行ロスが生じる旨をユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。
【0113】
ステップS560にて、走行ロスが許容レベル以内の該当車両があると判定されたときに実行されるステップS580では、充放電量は所定レベル以上であるか否かを判定する。そして、所定レベル以上と判定されたときにはステップS610に進み、所定レベル未満であると判定されたときには、ステップS620の処理に進む。
【0114】
ステップS610では、要望を満たす該当車両がある旨ユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。一方、ステップS620では、要望を満たす該当車両は、充電量(又は放電量)が所定レベル未満である旨をユーザに通知するとともに、対象車両や送受電エリアなど必要な情報を送信する。
【0115】
なお、走行ロスが許容レベルの該当車両が複数ある場合には、ステップS580の処理により、充放電量が所定レベル以上と判定された該当車両をペアリング車両とすべく、ステップS610の処理を実行する。さらに、充放電量が所定レベル以上と判定された該当車両が複数ある場合には、自車の要求充放電量を超えない範囲で最も近い充放電量を有する該当車両を対象として、ステップS610の処理を実行すれば良い。
【0116】
また、ステップS580の処理を省略し、ステップS560にて走行レベルが許容レベル以下の該当車両があると判定された場合、直接、ステップS610の処理を実行するようにしても良い。
【0117】
次に、ペアリング車両として決定された充電要求車両と放電要求車両とが、送受電エリアの開始地点で相互に出会い、送受電処理を実行するための処理について、図18のフローチャートに基づいて説明する。
【0118】
まず、ステップS700において、ペアリング車両として決定された車両が、目的とする送受電エリアに到着すると、ペアリング車両として決定された相手車両との間で通信を開始する。この通信は、例えば、一方の車両が、情報センター13から送信された相手車両の車両IDを手がかりとし、車車間情報通信アンテナ26を介して、その車両IDを有する車両に対して電波を送信することによって開始される。この送信を行う車両は、充電要求車両と放電要求車両のいずれか一方に予め定めておいても良いし、情報センター13により指定しても良いし、両方の車両から、定期的に電波が送信されるように設定されていても良い。
【0119】
続くステップS710では、車両IDを用いて相手車両を特定して送信を行ったことにより、相手車両から応答が得られて、実際に相手車両との通信が行われたか否かを判定する。この判定処理において、通信が行われなかったと判定された場合、相手車両がまだ送受電エリアに到達していない、あるいは通信機器の故障などのエラーが起こっている可能性が高い。従って、ステップS720において、所定回数、送信を行っても相手車両からの応答が得られない場合、情報センター13へ状況を報告する。
【0120】
一方、ステップS710の判定処理において、相手車両との通信が行われたと判定された場合、ステップS730にて、相手車両に、自車両情報を送信する。そして、ステップS740では、相手車両も、同様に相手車両の情報を送信してくるので、その相手車両の情報を受信する。この際、相互に送信される車両情報としては、車両の位置、送受電アンテナ23の設置位置、送受電アンテナ23に関する情報、車両イメージ、車両の型式、サイズなどである。このような情報を用いて、車車間送受電を行う相手車両が発見されると、ステップS750にて、送受電エリアに進入して、隊列走行状態となり、送受電の準備を行なう。この送受電準備については、後に、図19のフローチャートに基づき詳しく説明する。
【0121】
上述した隊列走行状態となるとき、どちらの車両が前で、どちらの車両が後になるかは、通常、各車両の送受電アンテナ23の設置位置や、データベースにおける登録内容から情報センター13により指示される。また、隊列走行中は、適切な車間距離を保ちつつ、車幅方向の車両位置がずれないように走行する必要があるため、走行制御装置29により、各車両の走行状態が制御される。
【0122】
なお、相手車両が発見できるまで、送受電エリアには進入しないようにするため、送受電エリアの入り口付近に、待ち合わせができるようなエリアが設けられていることが望ましい。
【0123】
ステップS760では送受電の準備が完了したか否かを判定し、準備が完了したと判定された場合、ステップS770にて送受電処理を開始する。この送受電処理についても、ごに、図19のフローチャートに基づいて詳しく説明する。なお、ステップS760にて送受電の準備が完了していないと判定されると、ステップS750の処理を再度実行する。
【0124】
続いて、図19のフローチャートに基づいて、送受電の準備処理及び送受電処理について詳しく説明する。なお、上述したように、送受電の準備処理及び送受電処理は、充電要求車両と放電要求車両とが隊列走行状態となっているときに実行されるものであり、図19のフローチャートに示す処理が開始されるときには、隊列走行している状態となっている。
【0125】
まず、ステップS800では、隊列走行している各車両は、測位装置(GPS)16や走行情報検出センサ21におけるカメラを用いて現在位置測定を行う。例えば、GPSの場合、現在位置座標が取得され、カメラの場合には、送受電エリアのどの区画で処理が行われているかが把握される。続くステップS810では、ステップS800にて測定された現在位置に基づいて、送受電エリア内を走行しているか否かを判定する。この判定処理において、送受電エリア内ではないと判定されるとステップS820の処理に進み、送受電エリア内であると判定されるとステップS850の処理に進む。
【0126】
ステップS820では、送受電エリアへ進入した時刻が記録されているか否かを判定する。この判定処理において、送受電エリアへの進入時刻が記録されていないと判定されると、ペアリング車両は、まだ送受電エリアに進入していないと考えられるので、ステップS800の処理に戻る。一方、ステップS820の判定処理において、送受電エリアへの進入時刻が記録されていると判定されると、ステップS830の処理に進んで、車両の現在位置に基づき、送受電エリアを退出したか否かが判定される。この判定処理において、送受電エリアを退出したと判定されると、ステップS840において、車車間送受電処理(充放電処理)を停止するとともに、情報センター13へ処理を停止した旨の連絡を行う。
【0127】
ステップS850では、ステップS810にて、初めてペアリング車両は送受電エリア内にいると判定されたとき、隊列走行を行っているペアリング車両が送受電エリアに進入したとみなされるので、その進入時刻を記憶装置19に記録しておく。そして、ステップS860では、カメラにより撮影された画像に基づいて、相手車両のアンテナ位置を検知して追跡処理を行う。すなわち、継続的に、相手車両の送受電アンテナ23の位置を示すマーキングの画像認識を行う。
【0128】
続くステップS870では、検知した相手車両の送受電アンテナ23と対向するように、アンテナ駆動装置20を用いて自車両の送受電アンテナ23の角度を変更することにより、送受電アンテナ23の指向方向の調整を実施する。その際、発光装置により、送受電アンテナ23の中心部から当該電力送受電アンテナ23の指向方向に向かうスポット状の光を発光させる。そして、発光された光が当たっている場所をカメラで確認することにより、自車両の送受電アンテナ23の指向方向が、相手車両の送受電アンテナ23に正しく向いているか否かを検証することができる。
【0129】
ステップS880では、アンテナ捕捉率を計測し、それが設定値以上であるか否かを判定する。ここで、アンテナ捕捉率とは、一方の車両の送受電アンテナ23から出す光線が、設定時間の間に、相手車両の送受電アンテナ23の設置範囲に、何秒間存在するかを計測することで求められるパラメータである。従って、このアンテナ捕捉率が設定値よりも低い状態は、一方の車両の送受電アンテナ23から発せられる光が、相手車両の送受電アンテナの設置場所からはみ出て、送受電アンテナ同士が対向した状態にうまく維持されていないことを表す。
【0130】
ステップS880において、アンテナ捕捉率が設定値未満と判定されると、ステップS950に進み、道路形状の先読みや、後方を走行する車両が、前方を走行する車両の走行データを取得して、前方車両に追従するように走行状態を制御するなどの、アンテナ捕捉率の向上処理を実行する。このようなアンテナ捕捉率の向上処理を行った結果、ステップS960にてアンテナ捕捉率が向上したと判定されると、ステップS800からの処理を再度実行する。一方、アンテナ捕捉率向上処理を実行したにも係らず、ステップS960にて、アンテナ捕捉率は向上していないと判定されると、ステップS970の処理に進んで、充放電処理停止条件に該当するか否かが判定される。ここで、充放電処理停止条件としては、アンテナ捕捉率向上処理の実行回数が所定回数に達した、又は車両の現在位置が送受電エリア外となったなどの条件が用いられる。そして、充放電処理停止条件に該当していなければ、ステップS800からの処理を再度実行し、充放電処理停止条件に該当していれば、ステップS1010の処理に進み、充放電処理を停止するとともに、情報センター13に処理を停止した旨の連絡を行う。
【0131】
ステップS880において、アンテナ捕捉率は設定値以上と判定されると、ステップS890の処理に進み、隊列走行している車両同士の車間距離が設定範囲内であるか否かが判定される。この判定処理において、車間距離が設定範囲外と判定されると、ステップS980の処理に進み、走行制御装置29に対して車間距離が設定範囲内となるように、車間距離の調整を指示する。この結果、ステップS990にて、車間距離が設定範囲内に改善されたと判定されるとステップS800からの処理を再度実行する。一方、車間距離が改善されていないと判定されるとステップS1000の処理に進み、充放電処理停止条件に該当するか否かが判定される。ここで、充放電処理停止条件としては、車間距離を調整するための走行制御処理の実行回数が所定回数に達した、又は車両の現在位置が送受電エリア外となったなどの条件が用いられる。そして、充放電処理停止条件に該当していなければ、ステップS800からの処理を再度実行し、充放電処理停止条件に該当していれば、ステップS1010の処理に進み、充放電処理を停止するとともに、情報センター13に処理を停止した旨の連絡を行う。
【0132】
ここで、上述したステップS800〜S890の処理が、主として、送受電準備処理に該当する。そして、以下に説明するステップS900〜S940までの処理が、主として、送受電処理に該当する。
【0133】
ステップS890にて車間距離は設定範囲内であると判定されたときに実行されるステップS900においては、隊列走行している車両間で送受電処理(充放電処理)を実施する。なお、この充放電処理の開始に先立ち、隊列走行している車両間で行う電力の送受電に適合した共鳴周波数の設定等が行われる。さらに、充放電処理の開始に先立ち、微小な電力の送受電を実際に行い、隊列走行している車両間で問題なく電力の送受電が可能であるかを確認するようにしても良い。
【0134】
そして、ステップS900の送受電処理においては、送電を行う送電車両のメインコントローラ14が、当該車両に搭載された車載バッテリ22に蓄積されている電力を、電力送受電アンテナ23から相手車両(受電車両)に無線によって送電させる。一方、受電を行う受電車両のメインコントローラ14は、送電車両から送電された電力を、送受電アンテナ23によって受電し、車載バッテリ22に蓄積(充電)する。
【0135】
このような車車間送受電処理による、各車両の車載バッテリ22の充放電に関して、予め情報センター13が充放電スケジュールを定め、少なくとも一方の車両に、その充放電スケジュールを送信している。
【0136】
ここで、充放電スケジュールについて説明する。充放電スケジュールとは、図20に示すように、ペアリング車両が送受電エリアを隊列走行しつつ電力の送受電を行う際に、送受電エリアでの走行距離に対する充放電量の目標ライン及び上下限ラインを示すものである。この充放電スケジュールは、ペアリング車両の両方に送信され、それぞれの車両において、充放電が充放電スケジュールに沿って行われているかが確認される。ただし、一方の車両が、他方の車両の充放電量を車車間情報通信を介して取得し、その一方の車両において、車車間送受電による充放電がスケジュールどおりに行われているか確認するようにすることも可能である。
【0137】
なお、このように送電車両と受電車両との間で車車間送受電が行われている間は、各車両のメインコントローラ14が、それぞれの車両の走行状態の制御を継続して実行し、隊列走行状態を、車車間送受電に適した状態に維持する。また、一方の車両のメインコントローラ14が、他方の車両のメインコントローラ14に走行制御信号を送信することにより、各車両の走行状態の制御を、一方の車両のメインコントローラ14が担うように構成してもよい。
【0138】
そして、充放電処理が行われている間、ステップS910にて、充放電がスケジュールどおり実行されているか判定される。つまり、図20に示すように、充放電処理が開始されると、ペアリング車両における充電量及び放電量が定期的に計測され、その計測値が、充電目標ラインの上下限ライン及び放電目標ラインの上下限ラインの間に含まれているかが判定される。上下限ラインの間に含まれていれば、充放電はスケジュールどおり実行されていると判定され、上下限ラインの間に含まれていなければ、充放電はスケジュールどおりに実行されていないと判定される。
【0139】
充放電がスケジュールどおりに実行されていない場合、ステップS920に進んで、充放電処理のデータの収集、原因の究明、及び原因に対する対策の実施が行われる。この処理は、相手車両から充放電測定値を取得しつつ、両方の車両において原因の究明が行われ、その対策は、必要に応じて協同して行う。つまり、原因を究明することができ、その原因が車両において改善が可能である場合には、改善処理を実行する。改善がうまくいかない場合で、充放電効率が向上しない場合、充放電効率に応じて充放電処理の継続、停止を決定する。なお、このステップS920の処理の詳細については、後に、図21のフローチャートを用いて説明する。
【0140】
一方、ステップS910において、スケジュールどおり充放電が行われていると判定されると、ステップS930の処理に進み、充放電が完了したか否かが判定される。図20に示すように、充電量計測値と放電量計測値とのいずれかが、最終的な目標ラインに到達したら、充放電完了と判定する。充放電が完了したと判定された場合、ステップS940にて、充放電処理が停止するとともに、情報センター13に充電が完了した旨の連絡を行う。
【0141】
次に、図21のフローチャートに基づいて、充放電処理の異常発生を監視し、異常が生じたときに、どのような対策を施すかについて説明する。
【0142】
まず、図21のフローチャートのステップS1100では、計測時刻のカウントを行う。続くステップS1110では、カウントした計測時刻が、充放電量(充放電電圧)を計測すべき時刻となったか否かを判定する。充放電電圧計測時刻と判定された場合、ステップS1120において、充放電電圧の計測を行う。
【0143】
そして、ステップS1130では、他車(相手車両)から充放電電圧計測値を受信したか否かを判定する。受信したと判定した場合には、ステップS1160の処理に進み、受信していないと判定した場合には、ステップS1140の処理に進む。
【0144】
ステップS1140では、他車に対して、充放電電圧計測値を送信するよう依頼する。そして、ステップS1150では、所定回数の送信依頼を行ったにも係らず、他車から応答が得られなかったか否かを判定する。この判定処理において、他車から応答が得られなかった場合には、ステップS1160の処理に進む、この場合、自車両における充放電電圧計測値のみに基づいて、充放電がスケジュールどおりに行われているか、及びスケジュールどおりに行われていない場合の原因の究明を行う。一方、他車から応答が得られた場合、あるいはまだ所定回数の送信依頼を行っていない場合には、ステップS1130の処理に戻る
ステップS1160では、自車と他車の充放電電圧計測値と、充放電スケジュールと比較する。そして、ステップS1170において、自車及び他車の充放電電圧計測値が、スケジュールの範囲内であるか否かを判定する。この判定処理において、スケジュール範囲内と判定されると、ステップS1180の処理に進み、スケジュール範囲外と判定されると、ステップS1210の処理に進む。
【0145】
ステップS1180では、充放電がスケジュールどおりに行われていることを示す充放電履歴を記録するとともに、その履歴データを情報センター13にも送信する。そして、ステップS1190において、充放電が完了したか否かを判定し、完了判定した場合には、ステップS1200において、充放電処理を停止し、未完了判定した場合には、ステップS1100の処理に戻る。
【0146】
一方、充放電がスケジュール範囲外と判定されたときに実行されるステップS1210では、自車及び他車のそれぞれにおいて、電力送受電装置12が正常に動作しているか否かを自己診断する。この判定処理において、正常動作していると判定されるとステップS1220の処理に進み、何らかの異常が生じていると判定されるとステップS1310の処理に進む。
【0147】
ステップS1220では、充放電が過剰であるか否か、すなわち、スケジュールよりも早く充放電電圧が変化しているか否かを判定する。この判定処理において、充放電が過剰と判定された場合には、ステップS1230の処理に進み、充放電機器などの負担を軽減するため、充放電量を低減するための充放電過剰対策を施す。具体的には、送電車両における送電電力を小さくしたり、ペアリング車両の車間距離を広げたり、電力送受電アンテナ23の角度により、アンテナ対向度合を調整したりして、送受電される電力量を減らす。それにより、各車両における充放電量を低減することができる。逆に、ステップS1220において、充放電が不足していると判定されると、ステップS1240の処理に進む。
【0148】
ステップS1240では、上述した充放電準備処理を再度実行して、ペアリング車両の走行態様の変更により、充放電不足に対処可能か否かを判定する。この判定処理において対処可能と判定された場合には、ステップS1250に進んで、より長い送受電時間を確保するためにペアリング車両の走行速度を低下させたり、ペアリング車両の車間距離を縮めて送受電の電磁場を大きくしたりすることで、充放電量の向上を図る。
【0149】
なお、送受電エリアにおいては、図22(a)、(b)に示すように、隊列走行を行っている他のペアリング車両が存在することも多いと考えられるので、走行速度を低下する場合には、後続のペアリング車両に影響を与えない範囲で行うことが好ましい。
【0150】
また、ステップS1240において、ペアリング車両の走行態様の変更では対処できないと判定された場合、各車両の電力送受電装置12は正常に動作していながら、ペアリング車両の走行速度や車間距離の調整では充放電不足を解消できないので、ステップS1290に進んで、充放電処理を停止する。
【0151】
一方、ステップS1230において充放電過剰対策を施したり、ステップS1250において充放電不足対策を施したりした後には、ステップS1260に進んで、充放電履歴を記録するとともに、その履歴データを情報センター13にも送信する。そして、ステップS1270において、充放電が完了したか否かを判定し、完了判定した場合には、ステップS1280において、充放電処理を停止し、未完了判定した場合には、ステップS1100の処理に戻る。
【0152】
また、ステップS1210において、各車両の電力送受電装置12の動作チェックを行った結果、いずれかの車両、あるいは両方の車両に異常が見つかった場合、ステップS1300の処理に進んで、復旧可能な異常であるか否かを判定する。そして、復旧可能な以上であると判定された場合には、ステップS1320の処理に進み、異常からの復旧を試みる。例えば、各車両の電力送受電装置12における、メインコントローラ14のマイコンの動作異常が生じていた場合、そのマイコンをリセットすることで、異常が復旧される場合がある。
【0153】
一方、ステップS1300において、復旧可能な異常ではないと判定された場合には、ステップS1310の処理に進み、充放電処理を停止させる。
【0154】
ステップS1200,S1280、S1290、及びS1310のいずれかにおいて充放電処理が停止された後は、ステップS1330の処理が実行され、充放電完了又は停止履歴や走行履歴が記録されるとともに、充放電量や充放電効率を算出し、これらのデータを情報センター13に送信する。
【0155】
すなわち、情報センター13には、異常がなければ、逐次、充放電履歴が送信され、情報センター13は、受信したデータを正常ログとして記録する。一方、異常(充放電スケジュールとの乖離)が生じた場合にも、逐次、充放電履歴の記録が送信されるが、この場合、情報センター13は、受信したデータを異常ログとして記録する。
【0156】
そして、車車間充放電が完了すると、車車間充放電が完了したことが、情報センター13へ関連データとともに通知され、情報センター13は、各車両より受信したデータを、車両IDごとにまとめて記憶する。そして、利用ユーザの情報を更新する。この結果が料金清算などに使われる。充放電結果、算定された料金結果などは、ユーザの車両に送信される。
【0157】
情報センター13から充放電結果等が送信されると、表示装置17などにその充放電結果が表示される。さらに、エネルギー収支線のアップデートがメインコントローラ14にて行われ、アップデート後のエネルギー収支線や、今後の航続可能距離などがユーザに表示される。また、情報センター13からのサービス利用明細などのデータを受信すると、その受信データの表示も行う。
【0158】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0159】
例えば、上述の実施形態では、ペアリング車両が前後方向に並んで隊列走行を行いつつ車両間で電力を送受電する例について説明したが、左側部送受電アンテナ23c及び右側部送受電アンテナ23dを用いることで、左右方向に並んだ車両間での電力の送受電を行うことも可能である。
【0160】
また、上述した実施形態では、ペアリング車両が走行しながら電力の送受電を行う例について説明したが、それぞれに時間に余裕がある場合には、ペアリング車両が停止した状態で、無線又は有線によって電力の送受電を行うようにしても良い。
【0161】
さらに、上述した実施形態では、2台の車両がペアリング車両となって車車間送受電を行う例について説明したが、3台以上の車両がグループとなって、電力を必要とする車両に、電力に余裕のある車両から送電を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0162】
10 電力送受電システム
11 車両
12 電力送受電装置
13 情報センター
41 情報センター間情報通信アンテナ
42 通信データ処理回路
40 メインコントローラ
43 充放電車両管理データベース
44 送受電エリアデータベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と情報センターとが通信を行い、充電要求を有する車両(以下、充電要求車両)と放電要求を有する車両(以下、放電要求車両)とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とする電力送受電システムであって、
前記情報センターは、
各車両との通信により、各車両の、充電要求又は放電要求、現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報を取得し、前記充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、取得した情報を記録しておくデータベースと、
前記データベースに記録されている充電要求車両と放電要求車両との中から、各々の車両の現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報に基づいて、それぞれ同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、それぞれ送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報を生成して送信する情報送信手段と、を備えることを特徴とする電力送受電システム。
【請求項2】
前記情報センターは、前記情報送信手段によって、前記ペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信された後、前記充電要求車両と放電要求車両との双方から承認応答が得られたとき、送信済みの情報に従って送受電が行われることを確定することを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【請求項3】
前記情報送信手段による前記充電要求車両へ送信される情報には予測充電量が含まれ、前記放電要求車両へ送信される情報には予測放電量が含まれることを特徴とする請求項2に記載の電力送受電システム。
【請求項4】
前記送受電を行うべき送受電エリアは、特定の複数の道路に対応付けて予め複数個所に定められており、前記抽出手段は、その予め定められた送受電を行うべき送受電エリアのいずれかを、同時期に走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することを特徴とする請求項2又は3に記載の電力送受電システム。
【請求項5】
前記抽出手段は、車両が、目的地に達するための本来の走行ルートに対して、前記送受電を行う送受電エリアとなる特定の道路を走行した場合の走行ルートによる走行距離の増加の程度が、所定の閾値以下である場合に、ペアリング車両として抽出することを特徴とする請求項4に記載の電力送受電システム。
【請求項6】
前記各車両の目的地が設定されたとき、その目的地までのルートを算出するルート算出手段と、
車両に搭載されたバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記充電量検出手段によって検出された現在のバッテリの充電量を基準として、前記ルート算出手段によって算出されたルートを車両が走行したときのバッテリの充電量の収支を考慮して、バッテリ充電量の変化を予測する予測手段と、を備え
前記予測手段によって予測されるバッテリ充電量の変化により、バッテリ充電量が不足あるいは過剰となることが想定される場合に、前記データベースに、充電要求車両あるいは放電要求車両として記録されることを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【請求項7】
前記情報センターのデータベースには、前記予測手段により予測されるバッテリ充電量の変化に基づいて算出される要求充電量及び要求放電量に関する情報も記録され、前記抽出手段は、前記要求充電量及び要求放電量も考慮してペアリング車両を抽出することを特徴とする請求項6に記載の電力送受電システム。
【請求項8】
前記情報センターのデータベースには、前記充電要求車両において、前記要求充電量が必要となるエリアに関する情報、及び前記放電要求車両において、前記要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も記録され、前記抽出手段は、要求充電量が必要となるエリアに関する情報及び要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も考慮してペアリング車両を抽出することを特徴とする請求項6又は7に記載の電力送受電システム。
【請求項9】
前記情報送信手段は、前記送受電を行うべき送受電エリアにおける充放電スケジュールを前記ペアリング車両の少なくとも一方に送信し、前記ペアリング車両は、その充放電スケジュールを満足するように、ペアリング車両間で送受電が行われるときの走行速度、車間距離、及び無線による電力の送受電のためのアンテナの角度の少なくとも1つを調整することを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【請求項1】
車両と情報センターとが通信を行い、充電要求を有する車両(以下、充電要求車両)と放電要求を有する車両(以下、放電要求車両)とをペアリングし、そのペアリングした充電要求車両と放電要求車両との間で電力の送受電を行わせることを可能とする電力送受電システムであって、
前記情報センターは、
各車両との通信により、各車両の、充電要求又は放電要求、現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報を取得し、前記充電要求車両と放電要求車両とに分類しつつ、取得した情報を記録しておくデータベースと、
前記データベースに記録されている充電要求車両と放電要求車両との中から、各々の車両の現在位置、進行方向、及び目的地に関する情報に基づいて、それぞれ同時期に共通のエリアを走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、それぞれ送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報を生成して送信する情報送信手段と、を備えることを特徴とする電力送受電システム。
【請求項2】
前記情報センターは、前記情報送信手段によって、前記ペアリング車両である充電要求車両と放電要求車両とに対して、送受電を行うべき送受電エリアに関する情報と、相手車両に関する情報とが送信された後、前記充電要求車両と放電要求車両との双方から承認応答が得られたとき、送信済みの情報に従って送受電が行われることを確定することを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【請求項3】
前記情報送信手段による前記充電要求車両へ送信される情報には予測充電量が含まれ、前記放電要求車両へ送信される情報には予測放電量が含まれることを特徴とする請求項2に記載の電力送受電システム。
【請求項4】
前記送受電を行うべき送受電エリアは、特定の複数の道路に対応付けて予め複数個所に定められており、前記抽出手段は、その予め定められた送受電を行うべき送受電エリアのいずれかを、同時期に走行し得る充電要求車両と放電要求車両とをペアリング車両として抽出することを特徴とする請求項2又は3に記載の電力送受電システム。
【請求項5】
前記抽出手段は、車両が、目的地に達するための本来の走行ルートに対して、前記送受電を行う送受電エリアとなる特定の道路を走行した場合の走行ルートによる走行距離の増加の程度が、所定の閾値以下である場合に、ペアリング車両として抽出することを特徴とする請求項4に記載の電力送受電システム。
【請求項6】
前記各車両の目的地が設定されたとき、その目的地までのルートを算出するルート算出手段と、
車両に搭載されたバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記充電量検出手段によって検出された現在のバッテリの充電量を基準として、前記ルート算出手段によって算出されたルートを車両が走行したときのバッテリの充電量の収支を考慮して、バッテリ充電量の変化を予測する予測手段と、を備え
前記予測手段によって予測されるバッテリ充電量の変化により、バッテリ充電量が不足あるいは過剰となることが想定される場合に、前記データベースに、充電要求車両あるいは放電要求車両として記録されることを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【請求項7】
前記情報センターのデータベースには、前記予測手段により予測されるバッテリ充電量の変化に基づいて算出される要求充電量及び要求放電量に関する情報も記録され、前記抽出手段は、前記要求充電量及び要求放電量も考慮してペアリング車両を抽出することを特徴とする請求項6に記載の電力送受電システム。
【請求項8】
前記情報センターのデータベースには、前記充電要求車両において、前記要求充電量が必要となるエリアに関する情報、及び前記放電要求車両において、前記要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も記録され、前記抽出手段は、要求充電量が必要となるエリアに関する情報及び要求放電量に応じた放電が必要となるエリアに関する情報も考慮してペアリング車両を抽出することを特徴とする請求項6又は7に記載の電力送受電システム。
【請求項9】
前記情報送信手段は、前記送受電を行うべき送受電エリアにおける充放電スケジュールを前記ペアリング車両の少なくとも一方に送信し、前記ペアリング車両は、その充放電スケジュールを満足するように、ペアリング車両間で送受電が行われるときの走行速度、車間距離、及び無線による電力の送受電のためのアンテナの角度の少なくとも1つを調整することを特徴とする請求項1に記載の電力送受電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−33403(P2013−33403A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169501(P2011−169501)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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