説明

電力需要量予測値補正方法

【課題】 熟練運用者に依存することなく、電力需要量の年増加分に留まらずに予測モデルの表現しきれていない非線形分まで含めて、高精度な電力需要量の予測を行う。
【解決手段】 予測モデルによる電力需要量予測値を補正する方法において、予測対象日よりも前の一定期間の予測モデルの出力、電力需要量の実績値等を用いて学習した補正用ニューロにより、予測モデルの出力を補正する。基準日に対する電力需要量の低減率が一定値以上の日を、補正用ニューロの学習対象日として選択する。補正用ニューロの学習対象期間を、電力需要量の変化特性に応じて変化させる。いわゆる外挿の発生時に、他の補正手法を組み合わせて電力需要量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種電力系統における中央給電指令所または地方給電指令所、系統制御所等において、系統制御用計算機または汎用電子計算機により得た電力需要量の予測値を補正する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電力系統における例えば翌日の電力需要量(日負荷曲線)の予測作業は、熟練運用者の経験と直感的知識により行われていることが多く、そのほぼすべての作業を手作業に頼っている。このため、予測作業を自動化するものとして、電力系統内の代表地点の気象情報等を用いた重回帰分析に代表される統計的手法により、またはニューラルネットワークを用いて予測する方法が近年提案され、確立されつつある。
【0003】これらの方法による予測値を更に高精度化させるために、電力需要量の伸びを補正する方法が大別して二つある。その一方は電力需要量の年増加分を大きく補正する方法であり、他方は予測対象日至近の増減傾向を反映させるために行う細かな補正である。
【0004】前者の年増加分の補正は、主にニューラルネットワークの補正に用いられる。ニューラルネットワークは、学習に用いた年度相当にしか出力できないため、電力需要量の年増加分を補正しなくてはならない。従来、この年増加分の補正に用いる補正係数としては、春季・秋季等の冷暖房需要を含まない季節における需要量の伸びから機械的に求めた係数(基本年増加係数)を用いていた。一方、回帰式による予測方法の場合には、過去の電力需要量の伸びに応じて出力が線形的に増えるため、上述したような年増加分の補正処理は不要となる。しかるに、ニューラルネットワーク、回帰式いずれの方法でも、猛暑や冷夏のように予測年の気象が特異な場合や、いわゆるバブル崩壊等により経済状況が変わったときには、良好に予測することが困難である。
【0005】このような予測年の気象や経済状況の変化に対応するために、予測モデルの出力と予測対象日至近の実績値との誤差からより詳細な補正係数(年増加係数)を求め、この係数を用いて補正する方法もある。実際には、一日ごとの誤差はその格差が大きいことから、数日間の移動平均等の方法により年増加係数を求めている。しかし、この方法においても、気温感応度が急激に変化するときには追随できない場合があり、線形的な補正しかできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】電力系統を運用するためには厖大な専門的知識が必要であるが、近年では、この知識を有する熟練運用者が特に減少の一途をたどっている。一方、電力需要量、特に日最大電力需要量の予測は、系統運用の基盤とも言うべき発電計画立案の基礎となるものであり、その予測精度の向上と自動化が切望されている。過去の実績値から構築した予測モデルによる予測値を基本年増加係数により補正する方法は、基本的に過去の電力需要量の伸びに従っているため、異常気象や経済状況の急変、気温感応度の変化に対し的確に追随することはできなかった。また、予測対象日至近の予測誤差から年増加係数を求める方法でも、気温感応度が急激に変わるときには追随できないことがあった。更に、従来の方法は基本的に補正係数を予測モデルの出力値に乗じて補正するので線形的な補正となり、補正係数が正確であったとしても予測モデルが非線形性の強い電力需要を正確に表現しきれていない場合には、その予測精度に限界があった。
【0007】そこで本発明は、熟練運用者に依存することなく、また、予測モデルの年増加分に留まらず予測モデルの表現しきれていない非線形分まで含めた補正を可能にすることで、予測精度を向上させた電力需要量予測値補正方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、計算機により、過去の電力需要量の実績値や気象データに基づいて構築した予測モデルを用いて予測対象日の電力需要量を予測する方法において、予測対象日よりも前の一定期間の予測モデルの出力、電力需要量の実績値、気象データを用いて学習した補正用ニューラルネットワークにより、予測モデルの出力を補正するものである。
【0009】請求項2記載の発明は、請求項1記載の電力需要量予測値補正方法において、基準日に対する電力需要量の低減率が一定値以上の日を、補正用ニューラルネットワークの学習対象日として選択するものである。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の電力需要量予測値補正方法において、補正用ニューラルネットワークの学習対象期間を、電力需要量の変化特性に応じて変化させるものである。例えば、ある期間内に電力需要量が単調に増加または減少している場合には学習対象期間を比較的短期間とし、電力需要量が増加した後に減少して過去のある時期とほぼ同一の値になるような場合には比較的長期間に設定する。
【0011】請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の電力需要量予測値補正方法において、予測対象日における予測モデルの出力が補正用ニューラルネットワークの学習時の範囲内である場合には補正用ニューラルネットワークのみにより予測モデルの出力を補正し、予測対象日における予測モデルの出力が補正用ニューラルネットワークの学習時の範囲外である場合には、いわゆる外挿と判断して他の方法(例えば補正用ニューラルネットワークによる補正と他の手法による補正との組み合わせ)により、予測モデルの出力を補正するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、請求項1に記載した発明の実施形態を述べる。図1は、この実施形態における予測モデル及び年増加補正用ニューラルネットワーク(図中、NNと表記する)の相互関係を示すもので、10は回帰式モデルまたはニューラルネットワークにより構成された予測モデル、20は予測モデル10の出力を補正するための年増加補正用ニューラルネットワークである。なお、予測モデル10には、気象予報から得られる予測対象日の最高・最低気温、予測対象日至近の一定期間の気象データや電力需要量の実績値等が入力され、予測モデル10はこれらの入力データを用いて予測対象日の電力需要量を予測する。
【0013】年増加補正用ニューラルネットワーク20は、予測モデル10の出力や、必要に応じて入力データの一部(最高・最低気温等)を用いて、毎日または数日ごとに学習する。学習対象期間は、予測対象日至近の一定期間または予測開始時から予測対象日至近までの全期間であり、予測対象日は全日もしくは平日である。ここで、平日とは、土曜日、日曜日、祝祭日、ゴールデンウィーク、盆休み、正月休み期間を除いた日をいう。なお、学習アルゴリズムとしては、例えばバックプロパゲーション(誤差逆伝播)を用いることができる。このようにして学習した年増加補正用ニューラルネットワーク20により、予測モデル10の出力に対し年増加分を補正し、予測対象日の電力需要量の予測値を得る。
【0014】図2は、上記一連の処理を示すフローチャートであり、年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習ステップ(S11)、入力データを用いた予測モデル10による予測ステップ(S12)、学習済みの年増加補正用ニューラルネットワーク20により、予測モデル10の出力や入力データの一部(最高・最低気温等)を用いて予測モデル10の出力を補正する補正ステップ(S13)からなっている。ここで、年増加補正用ニューラルネットワーク20が出力する値は、年増加分補正用の係数、年増加分の絶対量、電力需要量の予測値そのもの等である。
【0015】(実施例)次に、本実施形態の実施例を説明する。図8に示すように、予測モデル10Aとして、過去5年分の気象データや電力需要量の実績値を用いて学習させたリカレントネットワーク等のニューラルネットワークを用いた。リカレントネットワークは、周知のようにフィードバック結合を含むニューラルネットワークであり、1ステップ前の情報をネットワーク内に持つことで、電力需要量等の時系列データの把握に有用なものである。
【0016】年増加補正用ニューラルネットワーク20への入力項目としては、予測モデル10Aの出力だけのケース■と、予測モデル10Aの出力及び予測対象日の最高・最低気温を用いたケース■の2通りにつき検討した。年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習条件を表1に、学習対象期間A,B,C及び入力項目を表2に示す。この実施例では、学習期間を何れも平日としてある。なお、前述のごとく、「平日」とは土曜日、日曜日、祝祭日、ゴールデンウィーク、盆休み、正月休み期間を除いた日をいう。また、表2の入力項目における「予測モデル10Aの出力値」は、基本年増加係数による補正を行っていない値である。更に、季節区分を表3に示す。冷夏、猛暑、暖冬などの影響を考慮して、各季節はそれぞれ長めに区間割りをしている。
【0017】
【表1】


【0018】
【表2】


【0019】
【表3】


【0020】表4は、従来技術による予測誤差と、本実施例により上記予測モデル10A、年増加補正用ニューラルネットワーク20を用いた場合の予測誤差とを示すシミュレーションの結果である。
【0021】
【表4】


【0022】この表4の各季節(a)〜(d)における「NN値」は、従来の予測モデルの出力値に過去の電力需要量の伸びから基本年増加係数を算出し、これを用いて年増加分を補正することにより得た予測値の実績値との誤差である。また、「移動平均」は、NN値の毎日の予測誤差の移動平均値(表中、ABSAVGで示す)から年増加係数を算出し、これを用いてNN値を更に補正して得た予測値の実績値との誤差である。
【0023】残りの6ケース(各学習対象期間A,B,Cにつき■,■の2ケースずつで合計6ケース)は、本実施例により予測モデル10Aの出力値を年増加補正用ニューラルネットワーク20によって補正して得た電力需要量の予測値と実績値との誤差である。本実施例によれば、予測誤差の平均値(表中、AVGで示す)が極めて小さく、高精度に予測できることが明らかである。
【0024】次に、請求項2に記載した発明の実施形態を説明する。請求項1の発明では、学習対象期間が全日の場合も含んでいる。このように休日を含む全日を学習対象期間とした場合には、一般に休日には電力需要量が減少するため、平日のみの場合に比べて良好に学習することができず、精度が上がらない場合がある。また、平日であっても飛び石連休のなか日であったり、大型連休の前日や直後の日など、電力需要量が通常の平日に比べて極端に異なる日がある。従って、予測精度を向上させるために、これらの特異日の異常データを学習対象から排除(スクリーニング)することが必要である。
【0025】そこで、請求項2の発明では、上述した特異日以外の通常の平日を基準日とし、この基準日の電力需要量に対する学習対象期間内のそれぞれの日の電力需要量の比を低減率として求め、この低減率が一定値に達しない日を特異日として学習対象日から除外するようにした。すなわち、請求項1の発明において学習対象期間を平日とした場合でも、単に暦の上の平日を学習対象日とするのではなく、上記低減率を計算してその値が一定値以上の日のみを学習対象日とするものである。
【0026】この実施形態における処理のフローチャートは図3に示すとおりであり、学習対象期間内のそれぞれの日の低減率を求めるステップ(S21)と、この低減率が一定値以上の日を学習対象日として選択するステップ(S22)とが、ステップS11の前段に追加されている。ステップS11では、低減率が一定値以上である学習対象日のデータを用いて、前記同様に年増加補正用ニューラルネットワーク20が学習を行う。
【0027】(実施例)以下に、本実施形態の実施例を説明する。年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習条件は表1と同様である。表5は、表2に対応する学習対象期間及び入力項目を示しており、表2と異なるのは、学習対象期間における「平日」が特異日を除外した日であること、及び、予測対象日前日〜1週間前の平日という期間を対象としなかったことである。ここで、表5では、基準日(特異日でない通常の平日)の電力需要量を1とした場合に、低減率が0.9以上の日を「平日」として学習対象日に選択した。なお、一般に月曜日は低減率が0.98程度であるため、この月曜日を学習対象日に含める意味もある。更に、入力項目における予測モデルの出力値は、表2と同様に基本年増加係数による補正を行っていない値である。
【0028】
【表5】


【0029】表6は表4に対応するもので、従来技術による予測誤差と、本実施例により上記予測モデル10A、年増加補正用ニューラルネットワーク20を用いた場合の予測誤差とを示すシミュレーションの結果である。
【0030】
【表6】


【0031】この実施例では学習対象日からいわゆる特異日を除外しているので、表4と比較した場合に、例えば春季では予測誤差の平均値が一層小さくなり、高精度な予測が可能であることがわかる。
【0032】次いで、請求項3に記載した発明の実施形態を説明する。この発明は、年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習対象期間を、電力需要量の変化特性に応じて調整するものであり、上記特性としては電力需要量の値自体、または気象条件を用いる。
【0033】本実施形態における学習対象期間の調整概念を図4、図5を参照しつつ説明する。図4のように電力需要量が単調に増加または減少している場合(例えば、日一日と電力需要量が徐々に増加または減少していく春季・秋季等)には、これとは傾向の異なる古いデータは学習精度を悪化させるおそれがある。従って、この場合には、予測対象日を基準として学習対象期間をある程度短くした方が、至近データの傾向を強く反映させることができる。一方、図5に示すように、電力需要量が増加から減少に転じて以前とほぼ同様な値を示す場合(例えば、季節の始めと終わりで電力需要量がほぼ等しくなる夏季・冬季等)に学習対象期間を短く制限すると、過去の電力需要量の傾向を学習に反映させることができない。従ってこの場合には、学習対象期間を長くする方が良好な学習を行える。
【0034】そこで、本発明では、電力需要量の変化傾向を判断して最適な学習対象期間を設定することにより、年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習精度、補正精度ひいては全体的な予測精度を向上させようとするものである。図6はこの実施形態における処理を示すフローチャートであり、電力需要量の変化傾向を判断するステップ(S31)と、その傾向に応じて学習対象期間を決定するステップ(S32)とが、図2におけるステップS11または図3におけるステップS21の前段に追加されている。
【0035】上記ステップS31では、ある一定期間内の電力需要量の変化傾向を判断する。つまり、電力需要量が単調に増加・減少しているか、増加から減少に移行しているか、または減少から増加に移行しているか等を判断する。具体的判断方法としては種々考えられるが、需要量の変化を微分量として検出する方法等がある。また、電力需要量と気象、季節は密接な関係があるので、気象条件から判断する方法、予測時期が属する季節から判断する方法等が考えられる。
【0036】上記ステップS32では、ステップS31で判断した傾向に従って学習対象期間を適切に設定する。適切な学習対象期間は、地域や予測年など様々な要因によって異なるが、一つの目安として以下の方法がある。すなわち、電力需要量が単調に増加・減少している時には学習対象期間を一定にする。電力需要量が増加から減少、または減少から増加に移行している時には、学習対象期間を季節始めから予測対象日至近までというように延長する。
【0037】(実施例)次に、本実施形態の実施例を説明する。年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習条件は表1と同様である。本実施例では、最も簡単な判断方法である季節判断により学習対象期間を変化させた。つまり、春季、秋季は予測対象日前日までの平日10日間、夏季・冬季は予測開始時から予測対象日前日までの平日すべての日である。ここにおいて、「平日」とは前述のように低減率が0.9以上の日を言う。
【0038】表4、表6に対応する本実施例のシミュレーション結果を表7に示す。この表7の各季節において、網掛けをした部分が本実施例による予測誤差である。予測対象期間を固定した場合と比較すると、電力需要量の変化傾向に応じて学習対象期間を変化させるようにした本実施例の方が、良好な予測結果を得ている。
【0039】
【表7】


【0040】次に、請求項4に記載した発明の実施形態を説明する。年増加補正用ニューラルネットワーク20のような非線形モデルでは、その外挿問題は保証できない。すなわち、年増加補正用ニューラルネットワーク20は、ある学習対象期間についての予測モデル10Aの出力等を用いて予め学習した場合、その学習範囲内の予測モデル10Aの出力を補正することは意味を持つが、学習範囲外の予測モデル出力に対しては補正精度、予測精度を保証できない。
【0041】そこで、本発明では、年増加補正用ニューラルネットワーク20の入力データが過去に学習した範囲外であるときには外挿と判断し、年増加補正用ニューラルネットワーク20のみによる電力需要量の補正ではなく他の手法による補正も組み合わせるようにした。すなわち、年増加補正用ニューラルネットワーク20による補正を含む予測手法以外に、外挿時には他の予測手法も取り入れる。ここで、年増加補正用ニューラルネットワーク20の入力データが外挿であるか否かの判断基準としては、上述のように予測モデル10Aの出力としての電力需要量の他、気象条件も含めることができる。なお、後述の実施例では、気象条件は含めていない。
【0042】図7はこの実施形態の処理を示すフローチャートであり、予測対象日の年増加補正用ニューラルネットワーク20の入力データが学習したデータの範囲内か範囲外かを調べる外挿判断のステップ(S41)と、外挿と判断された場合に他の適宜な手法によって電力需要量を補正する外挿時補正ステップ(S42)と、内挿と判断された場合に年増加補正用ニューラルネットワーク20により補正する内挿時補正ステップ(S13)とを有する。
【0043】(実施例)以下、本実施形態の実施例を説明する。この実施例における外挿の判断基準は、予測対象日の予測モデル10Aの出力が学習時の範囲を超えたときとした。なお、気象に関する外挿判断は行っていない。本実施例の年増加補正用ニューラルネットワーク20の学習条件は表1と同様である。
【0044】表8は、表2に対応する学習対象期間、入力項目及び外挿時の補正方式を示しており、学習対象期間の欄の「平日」は前記同様に低減率が0.9以上の日(月曜日を含む)、入力項目における「予測モデル10Aの出力値」は前記同様に基本年増加係数による補正を行っていない値、外挿時補正方式の欄の「複合1」は補正用ニューラルネットワーク20による補正と累計予測誤差から補正する方法とを組み合わせたもの、「複合2」は補正用ニューラルネットワーク20による補正と予測誤差の移動平均から補正する方法とを組み合わせたものを意味する。なお、この実施例によるシミュレーション結果を表9に示す。外挿時補正を導入したことにより、高精度な予測結果が得られている。
【0045】
【表8】


【0046】
【表9】


【0047】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の発明によれば、従来よりも非線形的に電力需要量の年増加分を補正することが可能になり、予測精度を大幅に向上させることができる。また、年増加分ばかりでなく、予測モデルが気象と電力需要量との非線形な関係を表現しきれていなくても同時に補正することが可能である。
【0048】請求項2記載の発明によれば、特異日に起因する異常データを補正用ニューラルネットワークの学習対象から除外しているため、良好な学習が可能であり、補正精度、予測精度の向上に寄与する。
【0049】請求項3記載の発明では、季節等に応じた電力需要量の変化傾向に従って学習対象期間を調整するものである。すなわち、春季・秋季のように同一傾向のデータが表れない場合には学習期間を一定にして学習に制限を加え、夏季・冬季のように同一傾向のデータが表れるには場合には学習対象期間を制限しないように判断する。つまり、電力需要量の変化傾向を自動的に判断して学習対象期間を可変とすることで、予測精度を向上させることができる。
【0050】請求項4記載の発明では、外挿と判断された場合に二つの補正方法を組み合わせることで良好な予測結果を得ている。請求項1記載の補正用ニューラルネットワークは非線形性を考慮した補正が行えるもので非常に良好な精度を持つ。しかし、ニューラルネットワーク特有の欠点を補うため、予測精度が悪化すると思われる場合、つまり外挿時には他の補正方法を組み合わせることで、予測精度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜4に記載した発明の実施形態における予測モデルと年増加補正用ニューラルネットワークとの関係を示す図である。
【図2】請求項1に記載した発明の実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図3】請求項2に記載した発明の実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図4】請求項3に記載した発明の実施形態における学習対象期間調整の説明図である。
【図5】請求項3に記載した発明の実施形態における学習対象期間調整の説明図である。
【図6】請求項3に記載した発明の実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図7】請求項4に記載した発明の実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図8】請求項1〜4に記載した発明の実施形態における予測モデルと年増加補正用ニューラルネットワークとの関係を示す図である。
【符号の説明】
10,10A 予測モデル
20 年増加補正用ニューラルネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 計算機により、過去の電力需要量の実績値や気象データに基づいて構築した予測モデルを用いて予測対象日の電力需要量を予測する方法において、予測対象日よりも前の一定期間の予測モデルの出力、電力需要量の実績値、気象データを用いて学習した補正用ニューラルネットワークにより、予測モデルの出力を補正することを特徴とする電力需要量予測値補正方法。
【請求項2】 請求項1記載の電力需要量予測値補正方法において、基準日に対する電力需要量の低減率が一定値以上の日を、補正用ニューラルネットワークの学習対象日として選択することを特徴とする電力需要量予測値補正方法。
【請求項3】 請求項1または2記載の電力需要量予測値補正方法において、補正用ニューラルネットワークの学習対象期間を、電力需要量の変化特性に応じて変化させることを特徴とする電力需要量予測値補正方法。
【請求項4】 請求項1,2または3記載の電力需要量予測値補正方法において、予測対象日における予測モデルの出力が補正用ニューラルネットワークの学習時の範囲内である場合には補正用ニューラルネットワークのみにより予測モデルの出力を補正し、予測対象日における予測モデルの出力が補正用ニューラルネットワークの学習時の範囲外である場合には他の方法により予測モデルの出力を補正することを特徴とする電力需要量予測値補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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