説明

電動アシスト台車

【課題】電動アシスト台車の操作性を向上する。
【解決手段】作業者によって付与される駆動力にアシスト力が付与されて走行可能な電動アシスト台車100であって、荷物を載置可能な車体フレーム1と、車体フレーム1に設けられる駆動輪11と、作業者によって押圧操作され車体フレーム1に駆動力を入力可能な操作ハンドル5と、操作ハンドル5が押圧操作されることによって車体フレーム1に作用する駆動トルクを検出するトルクセンサ6と、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を駆動輪11に付与する電動モータ15と、駆動輪11に付与されるアシスト力を演算し当該アシスト力に応じた電流を電動モータ15に供給するコントローラ30とを備え、コントローラ30は、駆動トルクに応じた電流の大きさの変化の特性が相違する複数のモードを有し、モードを切り換えて電動モータ15に電流を供給可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力が電動モータによってアシストされる電動アシスト台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などで使用される台車に重量のある荷物が載せられると、作業者は運搬開始時に大きな力で台車を押す必要があるため、重労働となっていた。
【0003】
この対策として、特許文献1には、台車を押す作業者の力を検出し、電動モータによって人力に応じた補助動力が与えられる電動アシスト手押し台車が提案されている。この電動アシスト手押し台車では、作業者による手押し枠体の操作に応じて前進時及び後進時における作業者の押す力をアシストしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電動アシスト手押し台車では、搭載された荷物の積載量にかかわらず補助動力の大きさは一定である。この場合、荷物が搭載されていない状態でも、最大積載量の荷物が搭載された状態でも同じだけの補助動力が付与される。そのため、搭載された荷物の重量によっては、作業者が操作性に違和感を感じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電動アシスト台車の操作性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作業者によって付与される駆動力にアシスト力が付与されて走行可能な電動アシスト台車であって、荷物を載置可能な車体フレームと、前記車体フレームに設けられる駆動輪と、作業者によって押圧操作され、前記車体フレームに駆動力を入力可能な操作部と、前記操作部が押圧操作されることによって前記車体フレームに作用する駆動トルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を前記駆動輪に付与する電動モータと、前記駆動輪に付与されるアシスト力を演算し、当該アシスト力に応じた電流を前記電動モータに供給するコントローラと、を備え、前記コントローラは、駆動トルクに応じた電流の大きさの変化の特性が相違する複数のモードを有し、前記モードを切り換えて前記電動モータに電流を供給可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、駆動輪にアシスト力を付与する電動モータに供給される電流は、駆動トルクに応じた大きさの変化の特性が相違する複数のモードに切り換え可能である。そのため、モードを切り換えることによって、適切なアシスト力が駆動輪に付与されるように設定することができる。したがって、電動アシスト台車の操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動アシスト台車の斜視図である。
【図2】図1における側面図である。
【図3】図1における正面図である。
【図4】電動アシスト台車の制御ブロック図である。
【図5】駆動トルクに対する電流の変化における複数のモードに対応するマップを説明するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
まず、図1から図5を参照して、本発明の実施の形態に係る電動アシスト台車100について説明する。
【0012】
電動アシスト台車100は、例えば工場などにて、重量物を運搬するのに使用される。電動アシスト台車100は、作業者によって付与される駆動力に、後述する電動モータ15の回転によるアシスト力が付与されて走行するものである。
【0013】
電動アシスト台車100は、車体フレーム1と、車体フレーム1上に設けられ荷物を載置可能な荷台3と、車体フレーム1の左右二箇所から駆動力を入力可能な操作部としての操作ハンドル5と、車体フレーム1の左右に間隔をあけて設けられる一対の駆動輪11と、車体フレーム1に装着され駆動輪11の後方に設けられる一対の自在輪12とを備える。駆動輪11は、電動アシスト台車100の前輪であり、自在輪12は、電動アシスト台車100の後輪である。
【0014】
車体フレーム1は、角形のパイプ材が組み合わされたフレームである。車体フレーム1は、荷台3を介して荷物が載置される平面部1aと、平面部1aの下部に突設される下部突設部1bと、平面部1aの後端上部に立設される立設部1cとを有する。
【0015】
荷台3は、車体フレーム1における平面部1aの上方を覆うようにして設けられる縁付きの平板である。荷台3上には、荷物が直接載置される。荷台3は、縁なしの平板であってもよい。また、荷台3に代えて、車体フレーム1上にローラコンベアを設置し、ローラコンベアを介して荷物を載置してもよい。
【0016】
車体フレーム1と荷台3の間には、図2に示すように、昇降装置2が設けられる。この昇降装置2は、電動昇降シリンダ2a(図4参照)によって荷台3を車体フレーム1に対して昇降させる。例えば、荷台3に重量物が載置され、後述する懸架装置20によって駆動輪11及び自在輪12に対して車体フレーム1が沈み込んだ場合には、昇降装置2が荷台3を上昇させ、路面に対する荷台3の高さを一定に調節することが可能である。
【0017】
電動昇降シリンダ2aは、後述するコントローラ30と電気的に接続され、コントローラ30からの指令信号に基づいて伸縮する。電動昇降シリンダ2aは、モータによって駆動される油圧ポンプを備え、油圧ポンプから吐出される作動油の圧力によって伸縮する電動油圧式リニアアクチュエータである。
【0018】
操作ハンドル5は、図1に示すように、作業者によって押圧操作される逆U字型のハンドルである。操作ハンドル5は、その左右の両端が、車体フレーム1における立設部1cに連結される。これにより、作業者が操作ハンドル5を操作することによって入力される駆動力が、車体フレーム1に伝達される。
【0019】
駆動輪11は、車体フレーム1の前後方向に向かって転舵不能に設けられる小型の車輪である。駆動輪11は、車体フレーム1の前端部近傍に一対設けられる。駆動輪11は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に固定される。
【0020】
自在輪12は、走行時に常に進行方向を向く小型の車輪である。自在輪12は、路面との間の摩擦抵抗によって旋回し、進行方向を向くように操舵される。自在輪12は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に固定される。
【0021】
電動アシスト台車100は、車体フレーム1に対して上下運動可能な四個のサブフレーム4と、サブフレーム4を介して駆動輪11と自在輪12とを懸架する懸架装置20とを備える。
【0022】
サブフレーム4は、一対の駆動輪11と一対の自在輪12との各々の車輪に対応して四個設けられる。サブフレーム4は、車体フレーム1の左右に二個ずつ配設される。各々のサブフレーム4の下面には、駆動輪11又は自在輪12が回転可能に固定される。
【0023】
懸架装置20は、車体フレーム1に左右のサブフレーム4を上下運動可能に支持する四本のサスペンションアーム22と、車体フレーム1と左右のサブフレーム4の間に設けられるスプリングダンパ23とを備える。
【0024】
サスペンションアーム22は、一個のサブフレーム4に対して四本ずつ設けられる。サスペンションアーム22は、それぞれの両端部が車体フレーム1と左右のサブフレーム4とに水平軸まわりに回動可能に連結され、車体フレーム1に対してサブフレーム4を平行移動可能に支持する平行リンク機構を構成する。
【0025】
これにより、車体フレーム1に対してサブフレーム4が昇降しても、サブフレーム4の姿勢が変化せず、駆動輪11と自在輪12との位置関係(アライメント)が一定に保たれる。よって、サブフレーム4が昇降しても、駆動輪11と自在輪12との一方が路面から浮くことが抑制される。
【0026】
スプリングダンパ23は、路面不整などによる駆動輪11及び自在輪12の上下振動を吸収して緩和し、路面からの振動が車体フレーム1に伝達されることを抑制するものである。スプリングダンパ23は、コイルスプリング23aとダンパ23bとを備え、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0027】
コイルスプリング23aは、そのバネ力によってサブフレーム4が受ける荷重を支持し、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0028】
ダンパ23bは、伸縮作動するのに伴ってこれに充填された作動油が減衰弁(図示省略)を通過し、サブフレーム4の振動を抑制する減衰力を発生する。ダンパ23bは、荷台3に載置された荷物の重量によって変化するストローク量を検出するストロークセンサ23c(図4参照)を備える。ダンパ23bのストロークは、荷物の重量が重いほど大きくなる。ストロークセンサ23cは、四個のダンパ23bのうち少なくとも一個に設けられる。
【0029】
なお、懸架装置20は、上述の構成に限らず、車体フレーム1に対するサブフレーム4の姿勢が保たれるならば、他の構成であってもよい。
【0030】
電動アシスト台車100は、操作ハンドル5が押圧操作されることによって車体フレーム1の左右二箇所の各々に作用する駆動トルクを検出する一対のトルク検出部としてのトルクセンサ6と、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を各々の駆動輪11に付与する一対の電動モータ15と、駆動輪11に付与されるアシスト力を演算してアシスト力に応じた電流を電動モータ15に供給するコントローラ30と、各々の駆動輪11の回転を制動する一対のブレーキ16と、作業者によって操作可能な各種スイッチが設けられる操作盤29とを備える。
【0031】
トルクセンサ6は、コントローラ30に電気的に接続され、検出した駆動トルクに応じた電気信号をコントローラ30に出力する。トルクセンサ6は、操作ハンドル5と車体フレーム1とを連結して操作部から入力される駆動力によって捩れるとともに駆動力を車体フレーム1に伝達するトーションバー(図示省略)と、トーションバーの捩れに応じた電気信号を出力するポテンショメータ(図示省略)とを備え、トーションバーの捩れに基づいて駆動トルクを検出する。トルクセンサ6に設けられるトーションバーを変更することで、その他の部材を変更することなく、台車の積載荷重などに応じて作業者による操作感覚を変更することも可能である。
【0032】
電動モータ15は、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から入力される電気信号に応じて回転する。電動モータ15は、図3に示すように、駆動輪11の内側に配設され、駆動輪11にアシスト力を付与する。左右の電動モータ15は、互いに同軸に設けられ、一対の駆動輪11の間に直列に配設される。電動モータ15は、回転を減速して駆動輪11に伝達する変速機(図示省略)を備える。
【0033】
ブレーキ16は、電動モータ15の出力軸と駆動輪11との間に配設される。ブレーキ16は、制動状態と非制動状態とを切り換え可能なブレーキソレノイド16a(図4参照)を有する。ブレーキ16は、制動状態に切り換えられたときに駆動輪11を回転不能に固定する。
【0034】
ブレーキソレノイド16aは、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から供給される電流に応じて切り換えられる。ブレーキソレノイド16aに電流が流れていない状態では、ブレーキ16は駆動輪11を制動状態に維持する。一方、ブレーキソレノイド16aに電流が流れた場合には、ブレーキ16は駆動輪11を非制動状態に切り換える。
【0035】
コントローラ30は、電源装置(図示省略)や他の電子機器(図示省略)とともに車体フレーム1に搭載される。コントローラ30は、電動アシスト台車100の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって電動アシスト台車100の制御が実現される。
【0036】
コントローラ30は、電源装置から供給される電源によって動作する。コントローラ30は、電源装置の電圧が急激に低下した場合には、全ての制御を停止してCPUをスリープ状態とする。電源装置が24Vのバッテリである場合には、例えば、電圧が18V程度まで低下したときにCPUをスリープ状態とする。これにより、電源装置の電圧の急激な低下から、コントローラ30を保護することができる。
【0037】
コントローラ30は、左右のトルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を左右の電動モータ15にそれぞれ発生させる制御を行い、電動アシスト台車100を前進または後退させるとともに、直進、旋回、曲折させるアシスト力を付与する。
【0038】
コントローラ30は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって電動モータ15を駆動する。コントローラ30は、左右の電動モータ15に実際に流れた電流値を検出する一対の電流検出部15aを有する。これにより、電動モータ15のフィードバック制御が可能となる。
【0039】
コントローラ30は、駆動トルクに応じた電流の大きさの変化の特性が相違する複数のモードを有する。コントローラ30は、複数のモードに対応して予め作成された複数のマップを有する。コントローラ30は、複数のモードから選択された一つのモードに切り換え、そのモードに対応するマップに基づいて電動モータ15に電流を供給する。
【0040】
操作盤29は、図1に示すように、車体フレーム1における立設部1cの背面に配設され、コントローラ30に電気的に接続される。操作盤29は、作業者によって操作可能かつ視認可能な位置に設けられればよいため、この位置に限られるものではない。操作盤29は、ブレーキソレノイド16aを切り換えるためのブレーキ解除スイッチ24と、電動昇降シリンダ2aを操作するための荷台昇降スイッチ25と、コントローラ30による複数のモードを切り換えるモード切換スイッチ26とを備える。
【0041】
ブレーキ解除スイッチ24は、作業者の操作によってブレーキソレノイド16aを切り換え可能なスイッチである。作業者がブレーキ解除スイッチ24を操作すると、ブレーキソレノイド16aに電流が流れ、駆動輪11が非制動状態に切り換えられる。これにより、電動アシスト台車100は走行可能となる。
【0042】
荷台昇降スイッチ25は、作業者の操作によって電動昇降シリンダ2aを動作させるスイッチである。作業者が荷台昇降スイッチ25を操作すると、電動昇降シリンダ2aが伸縮する。これにより、荷台3が車体フレーム1に対して昇降する。
【0043】
モード切換スイッチ26は、作業者によって操作され、コントローラ30が有する複数のモードから一つを選択するスイッチである。モード切換スイッチ26が操作されると、コントローラ30は、図5に実線で示す第一モードとしてのコンフォートモードと、図5に破線で示す第二モードとしてのエコモードとのいずれかのモードに切り換えられる。
【0044】
図5において、横軸は、トルクセンサ6が検出した駆動トルクの大きさを示し、縦軸は、電動モータ15に供給される電流の大きさを示す。駆動トルクは、電動アシスト台車100を前進させる駆動トルクが入力された場合がプラス、後退させる駆動トルクが入力された場合がマイナスとして示されている。以下では、駆動トルクの大きさの絶対値を、単に駆動トルクの大きさと称する。また、電流は、アシスト力が最大のときを100%として示されている。
【0045】
コンフォートモード及びエコモードは、図5に示されるマップによって設定される。このように、電動モータ15に供給される電流の大きさの変化をマップを用いて設定することで、アシスト力の出力特性を、線形だけでなく非線形にも自由に設定することができる。これにより、作業者が操作したときに自然な操作感となるように電動モータ15に供給される電流の大きさの変化を設定することが可能となる。
【0046】
なお、二つのモードに限らず、三つ以上の複数のモードからモードを選択可能としてもよい。また、コントローラ30に外部からパソコンなどを接続して、各モードに対応するマップを更新可能としてもよい。これにより、荷台3に搭載される荷物の重さや、作業者の押す力の強さなどに応じて、所望の設定に変更することが可能となる。
【0047】
コンフォートモードは、荷物の重量が比較的重い場合や、作業者の押す力が比較的弱い場合などに用いられるモードである。コンフォートモードは、図5に示すように、駆動トルクの増加に応じて電流が徐々に大きくなるように設定される。コンフォートモードでは、駆動トルクが最大となった場合には、電動モータ15に供給される電流が100%となるように設定される。
【0048】
コンフォートモードは、駆動トルクが小さいうちは電流の増加率が高く、駆動トルクが大きくなるにつれて電流の増加率が低くなるように設定される。これにより、電動アシスト台車100が走り出す際など大きな駆動力が必要とされる場合に、アシスト力を大きくしている。したがって、作業者は、電動アシスト台車100を楽に押すことができる。
【0049】
一方、エコモードは、コンフォートモードと比較して荷物の重量が軽い場合や、作業者の押す力が比較的強い場合などに用いられるモードである。エコモードは、図5に示すように、駆動トルクの全域でコンフォートモードと比較して電流が小さくなるように設定される。エコモードでは、駆動トルクが最大となった場合であっても、電動モータ15に供給される電流が60%程度に抑えられるように設定される。これにより、エコモードに設定することで、電動アシスト台車100における消費電力を抑制することができる。
【0050】
エコモードは、駆動トルクが小さいうちはコンフォートモードと比較して電流の増加率が低く、駆動トルクが大きくなるにつれてコンフォートモードと比較して電流の増加率が高くなるように設定される。
【0051】
モード切換スイッチ26を設けるのに代えて、ダンパ23bに設けられたストロークセンサ23cによって検出されたストローク量から車体フレーム1の沈み込み量を検出し、この沈み込み量に基づいて荷物の重量を演算するようにしてもよい。
【0052】
これにより、ストロークセンサ23cが検出したストローク量から荷物の重量を演算し、荷物の重量に応じて自動的にモードを切り換えることが可能である。このとき、ストロークセンサ23cが重量検出部に該当する。ストロークセンサ23cに代えて、荷台3に載置された荷物の重量を検出する重量センサなどを重量検出部として用いてもよい。
【0053】
この場合、複数のモードは、荷台3に搭載された荷物の重量に応じて設定される。具体的には、複数のモードは、荷台3に搭載された荷物の重量が軽いほど同一の駆動トルクが検出されたときに電動モータ15に供給される電流が小さくなるように設定される。
【0054】
次に、電動アシスト台車100における運転動作について説明する。
【0055】
作業者が操作ハンドル5を両手で平行に押した場合には、電動アシスト台車100は、真っ直ぐ前進することとなる。この場合、操作ハンドル5が押されることによって車体フレーム1に入力される駆動力は操作ハンドル5の左右両端で略同一である。よって、左右のトルクセンサ6によって検出される駆動トルクは、略同一となる。
【0056】
左右のトルクセンサ6が同一の駆動トルクを検出すると、コントローラ30は、左右の電動モータ15から左右の駆動輪11に同一のアシスト力を付与するように指令する。これにより、左右の駆動輪11には、同一のアシスト力が付与される。
【0057】
したがって、電動アシスト台車100は、作業者によって付与される駆動力に、電動モータ15のアシスト力が付与されて真っ直ぐ前進することとなる。
【0058】
なお、電動アシスト台車100を真っ直ぐ後退させる場合には、操作ハンドル5が押される方向が逆になり、電動モータ15の回転方向が逆になるだけで、その他の作用は真っ直ぐ前進する場合と同様である。
【0059】
一方、作業者が操作ハンドル5を押す左右の力を相違させた場合には、電動アシスト台車100は、左又は右に旋回走行することとなる。このとき、左右の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左右の電動モータ15で相違する。
【0060】
具体的には、例えば電動アシスト台車100を左方向に旋回させる場合、作業者が右手で操作ハンドル5を押す力は、左手で操作ハンドル5を押す力と比較して大きくなる。よって、右側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクは、左側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクと比較して大きくなる。
【0061】
これにより、コントローラ30は、右側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力が、左側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力と比較して大きくなるように指令する。これにより、右側の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左側の駆動輪11に付与されるアシスト力と比較して大きくなる。
【0062】
なお、左右のトルクセンサ6は、駆動トルクを無段階に検出可能であるため、作業者が操作ハンドル5を押圧操作する力に応じてアシスト力の大きさをコントロールすることができる。
【0063】
ここで、例えば、荷台3に最大積載量の荷物が搭載されているような場合や、作業者の押す力が比較的弱い場合には、作業者は、モード切換スイッチ26を操作してコンフォートモードに切り換える。コンフォートモードでは、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクが比較的小さいうちから大きなアシスト力が付与されるため、作業者は小さな力で電動アシスト台車100を走行させることができる。
【0064】
一方、荷台3に荷物が搭載されていないか荷台3に搭載された荷物が比較的軽い場合や、作業者の押す力が比較的強い場合には、作業者は、モード切換スイッチ26を操作してエコモードに切り換える。エコモードでは、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクが比較的小さいうちはアシスト力が小さく抑えられる。よって、荷台3に荷物が搭載されていない場合や、荷台3に搭載された荷物が比較的軽い場合に適切なアシスト力に設定することができる。
【0065】
また、エコモードに切り換えられた状態にて、荷台3に搭載された荷物の重量が重い場合には、作業者は強い力で操作ハンドル5を押す必要がある。この場合、作業者が操作ハンドル5を強く押し続けると、駆動トルクの増加に応じて電動モータ15に供給される電流が徐々に大きくなる。よって、アシスト力も徐々に大きくなることとなる。
【0066】
以上のように、駆動輪11にアシスト力を付与する電動モータ15に供給される電流は、駆動トルクに応じた大きさの変化の特性が相違するコンフォートモードとエコモードとに切り換え可能である。そのため、モードを切り換えることによって、適切なアシスト力が駆動輪11に付与されるように設定することができる。したがって、電動アシスト台車100の操作性を向上することができる。
【0067】
また、荷台3に搭載された荷物の重量が軽い場合には、作業者がモード切換スイッチ26を操作してエコモードに切り換えることで、電動アシスト台車100における消費電力を抑制することができる。したがって、電源装置の小型化が可能であるとともに、同じ容量の電源装置を用いたときの作業時間を長くすることができる。
【0068】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
駆動輪11にアシスト力を付与する電動モータ15に供給される電流は、駆動トルクに応じた大きさの変化の特性が相違するコンフォートモードとエコモードとに切り換え可能である。そのため、モードを切り換えることによって、適切なアシスト力が駆動輪11に付与されるように設定することができる。したがって、電動アシスト台車100の操作性を向上することができる。
【0070】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0071】
100 電動アシスト台車
1 車体フレーム
3 荷台
5 操作ハンドル
6 トルクセンサ
11 駆動輪
12 自在輪
15 電動モータ
20 懸架装置
23b ダンパ
23c ストロークセンサ
26 モード切換スイッチ
30 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって付与される駆動力にアシスト力が付与されて走行可能な電動アシスト台車であって、
荷物を載置可能な車体フレームと、
前記車体フレームに設けられる駆動輪と、
作業者によって押圧操作され、前記車体フレームに駆動力を入力可能な操作部と、
前記操作部が押圧操作されることによって前記車体フレームに作用する駆動トルクを検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を前記駆動輪に付与する電動モータと、
前記駆動輪に付与されるアシスト力を演算し、当該アシスト力に応じた電流を前記電動モータに供給するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、駆動トルクに応じた電流の大きさの変化の特性が相違する複数のモードを有し、前記モードを切り換えて前記電動モータに電流を供給可能であることを特徴とする電動アシスト台車。
【請求項2】
前記複数のモードは、
駆動トルクの増加に応じて電流が大きくなる第一モードと、
駆動トルクの全域で前記第一モードと比較して電流が小さな第二モードと、からなることを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト台車。
【請求項3】
前記第一モードは、駆動トルクが大きくなるにつれて電流の増加率が低くなるように設定され、
前記第二モードは、駆動トルクが大きくなるにつれて前記第一モードと比較して電流の増加率が高くなるように設定されることを特徴とする請求項2に記載の電動アシスト台車。
【請求項4】
前記第二モードは、前記第一モードと比較して荷物の重量が軽い場合に設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動アシスト台車。
【請求項5】
前記複数のモードは、作業者によって操作されるモード切換スイッチによって選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の電動アシスト台車。
【請求項6】
前記車体フレームに載置された荷物の重量を検出する重量検出部をさらに備え、
前記コントローラは、前記重量検出部が検出した荷物の重量に応じて前記複数のモードを切り換えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の電動アシスト台車。
【請求項7】
前記車体フレームに対して前記車輪を懸架する懸架装置をさらに備え、
前記重量検出部は、前記車体フレームの沈み込み量に基づいて荷物の重量を検出することを特徴とする請求項6に記載の電動アシスト台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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