説明

電動アシスト自転車

【課題】警報音を発することにより車両周辺の通行人等に対して注意を喚起することができる電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】電動アシスト自転車(10A〜10E)は、ペダル(52L、52R)に作用する乗員の踏力を補助する駆動力を発生させるアシストモータ(66)と、前記アシストモータ(66)の電源としてのバッテリ(142…142)を含むバッテリモジュール(128、240、282、312)と、前記バッテリモジュール(128、240、282、312)に設けられた警報ブザー(22)と、を備え、前記警報ブザー(22)の警報音を車両前方に向けて発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報音を発する警報ブザーを有する電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記に示す特許文献1には、車速センサによって検出された車速が所定値以上となったときに、乗員が着座するシートの背当ての背面に設けられた速度警報ブザーから警報音を発して前記乗員にブレーキ操作を喚起させると共に、ブレーキモータを作動させて車速の過上昇を抑える車体シェルタイプの電動アシスト自転車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−297640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の技術は、車体シェル内で背当ての背面に速度警報ブザーを設けているものの、電装部品を背当てに配置することは好ましいものではない。この場合、前記速度警報ブザーが他の電装品(例えば、バッテリモジュール)から遠くなると共に、該速度警報ブザーを取り付けるための専用部品が必要となる。電動アシスト自転車において、前記速度警報ブザーは、他の電装品から近くであって前記専用部品を必要としないように配設されることが望ましい。
【0005】
また、速度警報ブザーから車両後方に向けて警報音を発するものであるので、乗員への注意喚起のみで車両周辺の通行人等への注意喚起までは想定していない。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、警報音を発することにより車両周辺の通行人等に対して注意を喚起することができる電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の電動アシスト自転車は、ペダル(52L、52R)に作用する乗員の踏力を補助する駆動力を発生させるアシストモータ(66)と、前記アシストモータ(66)の電源としてのバッテリ(142…142)を含むバッテリモジュール(128、240、282、312)と、前記バッテリモジュール(128、240、282、312)に設けられた警報ブザー(22)と、を備え、前記警報ブザー(22)の警報音を車両前方に向けて発することを特徴とする。
【0008】
なお、括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号を付けたものに限定して解釈されるものではなく、以下同様である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電動アシスト自転車において、前記バッテリモジュール(128、240、282)及び前記警報ブザー(22)を収容するケース部材(126、236)と、前輪(WF)を操舵するステアリング軸(26)を支持するヘッドチューブ(78)と、前記ヘッドチューブ(78)に連結されて前記ケース部材(126、236)が設けられる連結チューブ(80、84、86)と、をさらに備え、前記連結チューブ(80、84、86)には、前記警報ブザー(22)が発した前記警報音を内部に取り入れるための取入口(100、234、274)が形成され、前記ヘッドチューブ(78)には、前記連結チューブ(80、84、86)を介して該ヘッドチューブ(78)に伝搬された警報音を車両前方に向けて放出する放音孔(110…110)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の電動アシスト自転車において、前記警報ブザー(22)を駆動制御する警報制御部(228)と、車速を取得する車速取得手段(62、220)と、前記車速取得手段(62、220)にて取得された車速が、所定速度以下であるか否かを判定する判定手段(224)と、をさらに備え、前記警報制御部(228)は、車速が所定速度以下であると前記判定手段(224)にて判定された場合に前記警報ブザー(22)を駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の電動アシスト自転車において、前記バッテリモジュール(128、240、282)が、前記バッテリ(142…142)の状態を監視する監視手段(148)を有し、前記監視手段(148)が、前記警報制御部(228)及び前記判定手段(224)を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の電動アシスト自転車において、前記乗員が操作可能な警報ボタン(210)をさらに備えており、前記警報制御部(228)は、前記警報ボタン(210)の出力信号に基づいて前記警報ブザー(22)を駆動制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、前記ヘッドチューブ(78)内及び前記連結チューブ(80、84、86)内には、前記警報ブザー(22)が発した前記警報音が前記放音孔(110…110)に向かう方向とは異なる方向に伝搬することを防止する遮音部材(102、104、106、108、268、278)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、前記ヘッドパイプ(78)には、前記放音孔(110…110)を介して該ヘッドパイプ(78)内に異物が侵入することを防止する傘部材(114)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、前記連結チューブ(80、84、86)が、前記ヘッドチューブ(78)から車両後方且つ下方に向けて延びたダウンチューブ(80)と、前記ダウンチューブ(80)に連結して前記乗員が着座するシート(16)を支持するシートチューブ(84)と、前記ダウンチューブ(80)よりも上方に位置して前記ヘッドチューブ(78)及び前記シートチューブ(84)を連結するトップチューブ(86)と、を含み、前記取入口(100、234、274)は、前記ダウンチューブ(80)、前記シートチューブ(84)、及び前記トップチューブ(86)のいずれかに形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1記載の電動アシスト自転車において、前記乗員が着座するシート(16)を支持するシートチューブ(84)と、前記シートチューブ(84)に固定された固定部材(286)と、前記バッテリモジュール(282)を着脱可能に支持し、且つ前記固定部材(286)に対して車幅方向に沿って傾動可能に設けられた支持部材(290)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1記載の電動アシスト自転車において、前記乗員が着座するシート(16)よりも車両後方に位置して前記バッテリモジュール(312)を保持する保持部材(310)と、前輪(WF)を操舵するステアリング軸(26)を支持するヘッドチューブ(78)と、をさらに備え、前記警報ブザー(22)は、前記ヘッドチューブ(78)の車両前方側に設けられた警報ブザー本体(170)と、前記警報ブザー本体(170)及び前記バッテリモジュール(312)を電気的に接続する接続線(172、174)と、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10記載の電動アシスト自転車において、前記保持部材(310)が、前記バッテリモジュール(312)が載置される台座(314)と、前記台座(314)に装着された状態で該バッテリモジュール(312)の少なくとも一部を覆うカバー部材(318)と、を有し、前記台座(314)は、環状に形成された枠体(320)と、前記枠体(320)内に設けられた格子状の支持体(322)と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、警報ブザーの警報音を車両前方に向けて発するので、例えば、車両前方に位置する通行人等に該警報音を効率的に伝搬させることができる。よって、車両周辺の通行人等に対して注意を喚起することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、連結チューブに設けられたケース部材内にバッテリモジュール及び警報ブザーを一緒に収容しているので、前記警報ブザーと前記バッテリモジュール(他の電装品)とを効率的に集約することができると共に、該バッテリモジュールの保護(防水)と該警報ブザーの保護(防水)をケース部材で兼用することができる。また、警報ブザーをケース部材の外側に配設した場合と比較して、警報ブザーを取り付けるためのスペースも少なくすむので、該警報ブザーの取付スペースも確保し易くなる。
【0021】
さらに、例えば、該警報ブザーを連結チューブ等に直接的に取り付けるための部品(専用のステー等)を設ける必要がないので、部品点数を削減することができる。さらにまた、前記警報ブザーの警報音を連結チューブで伝搬させてヘッドチューブの放音孔から放出するので、バッテリモジュール(ケース部材)の設置場所に拘らず、該放音孔から放出される前記警報音の大きさ等を略一定に保つことができる。これにより、バッテリモジュールの設置自由度を高めることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、車速が所定速度以下であると判定手段にて判定された場合に警報ブザーを駆動している。そのため、電動アシスト自転車の走行音が小さい場合であっても、警報ブザーの警報音によって車両周辺の通行人等に注意を喚起することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、警報制御部及び判定部をバッテリモジュールの監視手段に含ませているので、警報制御部、判定部、及び監視手段を別々に設ける場合と比較して、電動アシスト自転車をコンパクトに構成することが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、乗員が警報ボタンを操作することにより警報音を発生させることができる。これにより、前記乗員の判断で車両周辺に注意を喚起することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、遮音部材を設けているので、ヘッドチューブや連結チューブ内で警報音が放音孔に向かう方向とは異なる方向に拡散することを好適に抑えることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、ヘッドチューブに傘部材を設けているので、外部から雨水等が放音孔を介して該ヘッドチューブ内に侵入することが防止される。よって、ヘッドチューブや連結チューブが前記雨水等によって腐食することを抑えることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、ダウンチューブ、シートチューブ、及びトップチューブのいずれかの内部に警報ブザーの警報音を取り入れてヘッドパイプに伝搬させることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、バッテリモジュールの上方にトップチューブやステーが位置するような場合であっても、支持部材を車幅方向に傾動させることができるので、バッテリモジュールの交換(バッテリの充電)の際に、該トップチューブや該ステーが邪魔になることを好適に抑えることができる。よって、バッテリモジュールの交換作業を効率的に行うことができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、ヘッドチューブの車両前方側に警報ブザー本体を設けているので、車両を構成する部品等によって該警報ブザー本体が発した警報音が遮音されることはない。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、台座とカバー部材によってバッテリモジュールを保持することができる。また、該バッテリモジュールが載置される支持体を格子状に形成しているので、該バッテリモジュールから生じる熱を格子の隙間から好適に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動アシスト自転車の左側面図である。
【図2】図1に示す駆動機構の拡大側面図である。
【図3】図1に示す車体フレームの一部省略断面図である。
【図4】図3に示すヘッドチューブ及び傘部材の分解斜視図である。
【図5】図1に示すバッテリ部及びシートチューブの拡大側面図である。
【図6】図5に示すバッテリ部及びシートチューブの断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図6に示す警報ブザーの縦断面図である。
【図9】表示部を説明するための説明図である。
【図10】制御部の内部を説明するためのブロック説明図である。
【図11】図10に示す制御部による警報音を発する動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る電動アシスト自転車の要部を示す一部省略断面図である。
【図13】図12に示すバッテリ部の分解斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る電動アシスト自転車の要部を示す一部省略断面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る電動アシスト自転車を構成するシートチューブ及び取付部材の斜視図である。
【図16】図15に示す取付部材にバッテリモジュールを装着した状態を示す斜視図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る電動アシスト自転車の左側面図である。
【図18】図17に示す台座の平面図である。
【図19】図17に示すリアキャリアを車両後方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る電動アシスト自転車について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、電動アシスト自転車10A〜10Eにおいて、車体の左右に1つずつ対称的に設けられる機構乃至構成要素については、左のものの参照符号に「L」を付し、右のものの参照符号に「R」を付すものとする。
【0033】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、電動アシスト自転車10Aは、車体フレーム12をベースとして構成されており、操舵輪である前輪WFと、駆動輪である後輪WRと、前輪WFを操舵する操舵部14と、図示しない乗員が着座するシート16と、後輪WRを駆動させる駆動機構18と、車体フレーム12に設けられたバッテリ部20と、前記バッテリ部20に設けられた警報ブザー22と、操舵部14に設けられた表示部24とを備える。なお、車体フレーム12の構成については追って説明する。
【0034】
操舵部14は、ステアリング軸26と、前記ステアリング軸26の下端から延在して前輪WFを軸支する一対のフロントフォーク28L、28Rと、前記ステアリング軸26の上部に設けられたハンドル30とを有する。
【0035】
フロントフォーク28L、28Rには、前輪WFの回転を止める前輪用カンチブレーキ32が設けられている。なお、後輪WRの回転を止める後輪用カンチブレーキ34は車体フレーム12を構成する後述するステー90L、90Rに設けられている。ハンドル30には、前記乗員が把持する一対のグリップ36L、36Rと、各カンチブレーキ32、34を作動させるための一対のブレーキレバー38L、38Rと、車両前方を照明する前照灯40とが設けられている。
【0036】
図2に示すように、駆動機構18は、車体フレーム12に取り付けられた支持プレート42と、前記支持プレート42に設けられた動力伝達機構44とアシスト駆動ユニット46とを有する。
【0037】
動力伝達機構44は、車幅方向に延びたクランク軸48と、前記クランク軸48を軸支するクランク軸受50と、前記クランク軸48の両端に設けられた一対のペダル52L、52R(図1参照)と、前記クランク軸48に対して図示しない一方向クラッチを介して取り付けられた駆動側スプロケット54と、後輪WRに設けられた従動側スプロケット56(図1参照)と、駆動側スプロケット54及び従動側スプロケット56に巻き付けられたチェーン58と、前記チェーン58の巻き付け角度を大きくするアイドラギア60とを含む。
【0038】
クランク軸受50には、クランク軸48の回転数を検出するクランク回転数検出器62と、クランク軸48に作用する踏力トルクを検出する踏力トルク検出器64とが設けられている。
【0039】
アシスト駆動ユニット46は、前記ペダル52L、52Rに作用する前記乗員の踏力を補助する駆動力(補助トルク)を発生させるためのアシストモータ66と、前記アシストモータ66の駆動軸68と噛み合って回転する駆動ギア70と、前記駆動ギア70の回転に応じて回転する従動軸72を有し、且つ前記チェーン58が巻き付けられるアシストスプロケット74と、前記アシストモータ66を駆動制御するアシスト制御部76とを含む。
【0040】
このような構成のアシスト駆動ユニット46では、アシストモータ66が発生した補助トルクが、駆動軸68、駆動ギア70、及びアシストスプロケット74を介してチェーン58に伝達される。そのため、前記乗員がペダル52L、52Rを漕ぐことによって、クランク軸48に与えられた踏力トルクとアシストモータ66から発生した補助トルクとがチェーン58を介して従動側スプロケット56に伝達されて後輪WRを回転する。
【0041】
本実施の形態のアシスト制御部76は、例えば、前記補助トルクを3つのモード(「パワーモード」、「オートモード」、「エコモード」)で発生させることができる。「パワーモード」とは、前記乗員の踏力トルクに対する補助トルクの比率(アシスト比率)が高いものを言い、「オートモード」とは、前記アシスト比率が「パワーモード」よりも低いものを言い、「エコモード」とは、前記アシスト比率が「オードモード」よりもさらに低いものを言う。
【0042】
図1及び図3に示すように、車体フレーム12は、ステアリング軸26を操舵可能に支持するヘッドチューブ78と、前記ヘッドチューブ78から車両後方且つ下方に延びたダウンチューブ80と、前記ダウンチューブ80の後端から上方に立ち上がり、且つシート16を支持するシートポスト82が該シート16の上下位置を調整可能なように装着されるシートチューブ84と、前記ダウンチューブ80よりも上方で前記ヘッドチューブ78及び前記シートチューブ84を連結するトップチューブ86と、前記シートチューブ84の下端から車両後方に延びて後輪WRを軸支する一対のリアフォーク88L、88Rと、各リアフォーク88L、88Rの後端及びシートチューブ84を連結する一対のステー90L、90Rとを有する。
【0043】
図3から諒解されるように、ヘッドチューブ78の外周面のうち車両後方に臨む部位には、ダウンチューブ80の一端が嵌入する第1嵌入孔92と、トップチューブ86の一端が嵌入する第2嵌入孔94とが形成されており、シートチューブ84の外周面のうち車両前方に臨む部位には、ダウンチューブ80の他端が嵌入する第3嵌入孔96と、トップチューブ86の他端が嵌入する第4嵌入孔98とが形成されている。
【0044】
なお、シートチューブ84の外周面のうち車両後方に臨む部位には、警報ブザー22が発する警報音を該シートチューブ84内に取り入れるための取入口100が形成されている。
【0045】
また、ヘッドチューブ78内の第1嵌入孔92よりもやや下方には第1遮音部材102が設けられ、ヘッドチューブ78内の第2嵌入孔94よりもやや上方には第2遮音部材104が設けられ、シートチューブ84内にはトップチューブ86の他端側の開口部を塞ぐようにして第3遮音部材106が設けられ、トップチューブ86内の一端側には第4遮音部材108が設けられている。
【0046】
これにより、取入口100からシートチューブ84内に導入された警報ブザー22の警報音をダウンチューブ80内を介してヘッドチューブ78内における第1遮音部材102及び第2遮音部材104間の空間に伝搬させることができる。
【0047】
なお、第1〜第4遮音部材102、104、106、108は、シートチューブ84内に導入された警報ブザー22の警報音が外部等に拡散することを防止することができる材料で構成されていればよく、例えば、金属や樹脂等の材料で構成される。特に、第1〜第4遮音部材102、104、106、108を金属で構成した場合には、前記警報音を好適に反射させることができるので、ヘッドチューブ78内における第1遮音部材102及び第2遮音部材104間の空間に該警報音を効率的に伝搬させることが可能となる。
【0048】
図4に示すように、ヘッドチューブ78のうち車両前方に臨む部位には、ヘッドチューブ78内に伝搬された警報音を車両前方に向けて放出するための複数(図4では14個)の放音孔110…110と、複数(図4では4つ)のねじ孔112…112とが形成されている。放音孔110…110は、ヘッドチューブ78の長手方向の略中央に位置している。
【0049】
ヘッドチューブ78の車両前方には、複数の放音孔110…110を覆うようにして傘部材114が設けられる。傘部材114は、中央部に矩形状の開口部116が形成された保持プレート118と、該開口部116内に設けられて弧状に形成された複数(図4では4枚)の傘板120…120とを有する。保持プレート118は平面視で四角形状に形成されており、各隅部には貫通孔122が形成されている。保持プレート118は、各貫通孔122に固定ボルト124を挿通して前記各ねじ孔112に螺合することによりヘッドチューブ78に強固に固定される。
【0050】
各傘板120は、車両上方が凸面となるようにして保持プレート118の開口部116を構成する壁面に固着される。また、複数の傘板120…120は、ヘッドチューブ78の長手方向に沿って所定間隔離間して配列されている。
【0051】
これにより、複数の傘板120…120によって雨水等の異物が放音孔110…110を介してヘッドチューブ78内(車体フレーム12内)に侵入することを好適に防止することができる。よって、車体フレーム12の内部が雨水等によって腐食することを抑えることができる。なお、上述したように、隣接する傘板120…120の間には所定の隙間が形成されるので、放音孔110…110から放出される警報音がこれら傘板120…120によって遮音されることは殆ど無い。
【0052】
図5及び図6に示すように、バッテリ部20は、シートチューブ84と支持プレート42に固着されたバッテリケース(ケース部材)126と、前記バッテリケース126内に収容されたバッテリモジュール128とを有する。
【0053】
バッテリケース126は、シートチューブ84の車両後方に位置するバッテリケース本体130と、バッテリケース本体130に対してヒンジ132を介して開閉可能に装着された蓋部134とを含む。なお、バッテリケース本体130には、上述したシートチューブ84の取入口100に対応して孔部136が形成されている。孔部136は、取入口100よりも一回り大きく設定されている。
【0054】
バッテリケース本体130の底部には、バッテリ部20の電力をアシスト駆動ユニット46や前照灯40に供給するための一対の電力供給用雄型端子137、139と、上述した表示部24、クランク回転数検出器62、及び踏力トルク検出器64等とバッテリモジュール128との間で情報(信号)の授受を行うための信号用雄型端子141とが設けられている。
【0055】
蓋部134には、図示しない鍵穴が形成された鍵部138が設けられている。鍵部138は、前記鍵穴に鍵140を差し込んだ状態で回転することにより、該鍵140の位置を「閉位置」、「開位置」、又は「運転位置」に合わせることができる。「閉位置」では、蓋部134がバッテリケース本体130に対してロックされ、「開位置」では、該ロックが解除され、「運転位置」では、上述したアシストモータ66が駆動可能となる。
【0056】
バッテリモジュール128は、アシストモータ66の電源としての複数(図6では7つ)のバッテリ142…142と、これらバッテリ142…142を保持するためのバッテリ保持部144と、複数のバッテリ142…142を電気的に直列に接続するための複数の接続部材146…146と、バッテリ142…142の状態を監視する制御部(監視手段)148と、前記バッテリ142…142及び前記制御部148を収容する筐体150と、該筐体150に設けられた取手152とを含む。制御部148の具体的な構成については追って説明する。
【0057】
筐体150には、該筐体150から車両前方(シートチューブ84側)に向かって突出し、且つ警報ブザー22を嵌入するための四角形状(図7参照)の貫通孔156が形成された設置部158が設けられている。設置部158には、該貫通孔156を構成する壁部を囲繞するようにしてシール部材160が設けられている。シール部材160は、バッテリケース本体130の孔部136を構成する壁面に当接すると共に、シートチューブ84の外面に当接している。これにより、外部から取入口100及び貫通孔156内に異物が侵入することを防止することができると共に、警報ブザー22が発する警報音が外部に漏れることを好適に抑えることができる。なお、シール部材160は、例えば、樹脂材料で構成すればよい。
【0058】
筐体150の底部には、上述した一対の電力供給用雄型端子137、139に嵌合可能な電力供給用雌型端子162、164と、信号用雄型端子141に嵌合可能な信号用雌型端子166とが設けられている。電力供給用雄型端子137、139に電力供給用雌型端子162、164を嵌合すると共に、信号用雄型端子141に信号用雌型端子166を嵌合することで、バッテリモジュール128をバッテリケース126内に保持することができる。
【0059】
電力供給用雌型端子162は、導線163を介してバッテリ142…142の陽極に電気的に接続されており、電力供給用雌型端子164は、導線165を介してバッテリ142…142の陰極に電気的に接続されている。また、信号用雌型端子166は、導線167を介して制御部148に電気的に接続されている。なお、筐体150内には、バッテリ部20の振動を検出する振動検出器168が設けられている。
【0060】
図8に示すように、警報ブザー22は、警報ブザー本体170と、警報ブザー本体170及び制御部148を電気的に接続する一対のリード線(接続線)172、174とを有する。警報ブザー本体170は、上述した設置部158に固着されるケーシング176を有しており、前記ケーシング176内には、一方のリード線172が電気的に接続される電極板178と、前記電極板178の一方の面に固着された圧電素子板180と、前記圧電素子板180の一方の面に固着されて他方のリード線174が電気的に接続される金属製の振動板182とが設けられている。
【0061】
ケーシング176は、リード線172を保持する保持管184とリード線174を保持する保持管186とを有するベース188と、前記ベース188に設けられる発音カバー190とを含んでいる。発音カバー190は、設置部158の貫通孔156に嵌入可能であって、中央に円形状の孔部192(図7も参照)が形成された平板194と、前記平板194の縁部から前記ベース188側に突出した筒状の側板196と、前記側板196の内側に位置して前記平板194の他方の面から該ベース188側に突出した筒体198とを有する。
【0062】
図8から諒解されるように、筒体198の突出量は側板196の突出量の半分程度である。また、筒体198の端面には、振動板182の一方の面が固着されている。これにより、筒体198の他端側の開口部が振動板182で閉塞される。その結果、筒体198内には共鳴室200が形成されることになる。
【0063】
このように構成される警報ブザー22では、圧電素子板180に交流電圧を印加して伸縮させることにより、振動板182の振動音が共鳴室200内で共鳴増幅されて孔部192から警報音として出力される。
【0064】
図1及び図9に示すように、表示部24は、ステアリング軸26の上端に設けられており、バッテリ142…142の残量を表示するためのバッテリ残量表示部202と、アシストモータ66を駆動させるための電源スイッチ204と、前記アシストモータ66のアシスト比率を選択するモード選択部206と、前照灯40を点灯・消灯するための照明スイッチ208と、警報ブザー22の警報音を発生させるための警報ボタン210とを有する。
【0065】
バッテリ残量表示部202は、例えば、一方向に配列された複数(本実施の形態では4つ)の残量表示LED212a〜212dを含んでおり、前記複数の残量表示LED212a〜212dの配列方向の一端側(残量表示LED212aの近傍)には、バッテリ残量が空であることを示す文字「E(Empty)」が付され、前記複数の残量表示LED212a〜212dの配列方向の他端側(残量表示LED212dの近傍)には、バッテリ残量が満タンであることを示す文字「F(Full)」が付されている。なお、残量表示LED212aに隣接する位置には、バッテリを模式的に示した図が表示されている。
【0066】
このようなバッテリ残量表示部202では、残量表示LED212a〜212dを点灯・消灯することによりバッテリ残量を4段階で表示することができる。図9の例では、複数の残量表示LED212a〜212dのうち一端(Empty)側の2つの残量表示LED212a、212bを点灯すると共に、残りの残量表示LED212c、212dを消灯しているので、バッテリ残量が半分程度であることを示している。
【0067】
モード選択部206は、例えば、残量表示LED212a〜212dの配列方向と直交する方向に配列された複数(本実施の形態では3つ)のモード選択LED214a〜214cと、前記複数のモード選択LED214a〜214cの近傍に設けられた一対の選択ボタン216、216とを含んでおり、複数のモード選択LED214a〜214cに対応して「パワー」、「オート」、「エコ」の文字がそれぞれ付されている。これにより、乗員は、選択ボタン216、218を操作することにより、「パワーモード」、「オートモード」及び「エコモード」のいずれかを選択することができる。
【0068】
図9の例では、「オートモード」のモード選択LED214bが点灯すると共に、「パワーモード」のモード選択LED214aと「エコモード」のモード選択LED214cが消灯されているので、「オートモード」が選択されていることを示している。
【0069】
図10に示すように、制御部148は、バッテリ142…142の状態(例えば、バッテリ残量)を監視してその情報を表示部24に出力すると共に、照明スイッチ208からの出力信号に基づいて前照灯40を点灯・消灯する。また、制御部148は、鍵部138からの出力信号に基づいて鍵140の位置を検出可能となっている。
【0070】
さらに、制御部148は、記憶部219、車速算出部220、補助トルク算出部222、第1判定部224、第2判定部226、及び警報制御部228を有する。
【0071】
記憶部219には、例えば、第1速度値Va、第2速度値Vb、及び所定振動数νaが記憶されている。第1速度値Vaは、警報音を発生させる下限の速度値であって、例えば、5[km/h]に設定される。第2速度値Vbは、警報音を発生させる上限の速度値であって、例えば、20[km/h]に設定される。所定振動数νaは、例えば、電動アシスト自転車10Aの走行時や、バッテリケース126を車体フレーム12から無理に外そうとした時にバッテリ部20に生じる振動数に設定されている。
【0072】
車速算出部220は、クランク回転数検出器62で検出されたクランク回転数に基づいて車速Vを算出する。補助トルク算出部222は、前記車速算出部220にて算出された車速V(以下、算出車速Vと称することがある。)、踏力トルク検出器64で検出された踏力トルク、及び選択ボタン216により選択されたモードに基づいて補助トルクを算出し、その算出結果を上述したアシスト制御部76に出力する。
【0073】
第1判定部224は、算出車速Vが第1速度値Vaと第2速度値Vbの間の範囲にあるか否かを判定する。第2判定部226は、振動検出器168で検出された振動数ν(以下、検出振動数νと称することがある。)が所定振動数νaを越えたか否かを判定する。
【0074】
警報制御部228は、第1判定部224の判定結果、警報ボタン210からの出力信号、及び第2判定部226の判定結果の少なくともいずれか1つに基づいて警報ブザー22を駆動して警報音を発生させる。
【0075】
以上のように構成される電動アシスト自転車10Aの制御部148による警報ブザー22の動作について図11を参照しながら説明する。
【0076】
先ず、制御部148は、鍵部138からの出力信号に基づいて鍵140の位置を検出し、運転位置にある場合はステップS2へ進み、閉位置にある場合はステップS6へ進む(図11のステップS1)。なお、ステップS1において、鍵140が開位置にある場合は、本制御ルーチンの処理を行わない。バッテリモジュール128の交換中だからである。
【0077】
鍵140が運転位置にある場合、制御部148は、警報ボタン210が押圧されたか否かを判定する(ステップS2)。警報ボタン210が押圧された場合(ステップS2:YES)、警報制御部228は、警報ブザー22を駆動して警報音を発生させる(ステップS3)。
【0078】
警報ブザー22から発生した警報音は、取入口100を介してシートチューブ84内に導入され、ダウンチューブ80内を介してヘッドチューブ78内に伝搬する。このとき、シートチューブ84内において、シートポスト82側に向かって伝搬した警報音は、第3遮音部材106で反射されてダウンチューブ80に向かうことになる。そのため、第3遮音部材106を設けない場合と比較して、警報音を効率的にヘッドチューブ78内に伝搬させることができる。
【0079】
ヘッドチューブ78内にまで伝搬した警報音は、第4遮音部材108によってトップチューブ86内に伝搬することが防止されると共に、第1遮音部材102及び第2遮音部材104によってヘッドチューブ78内で拡散することが抑制されるため、放音孔110…110から車両前方に向けて放音されることになる。これにより、車両前方に位置する通行人等に警報音を効率的に伝搬させることができるので、車両周辺の通行人等に対して注意を喚起することができる。その後、警報制御部228は、警報ブザー22の駆動を停止する(ステップS4)。
【0080】
ステップS2において、警報ボタン210が押圧されていない場合、第1判定部224は、算出車速Vが第1車速値Vaと第2車速値Vbの間にあるか否かを判定する(ステップS5)。算出車速Vが第1車速値Vaと第2車速値Vbの間にない場合(ステップS5:NO)には、ステップS1の処理を行う。
【0081】
算出速度Vが第1車速値Vaよりも小さい場合(例えば、電動アシスト自転車10Aが停止している場合)には、車両周辺の通行人等に注意を喚起する必要性が乏しいためである。これにより、電動アシスト自転車10Aの停車時等に警報音が継続して発生することを回避することができる。なお、電動アシスト自転車10Aの停車時等に警報音を発生させたい場合には、乗員は警報ボタン210を押圧すればよい。
【0082】
算出速度Vが第2車速値Vbよりも大きい場合には、電動アシスト自転車10Aの走行音(アシストモータ66の駆動音等)がある程度大きく、該走行音によって車両周辺の通行人等に注意を喚起することができるからである。
【0083】
一方、算出車速Vが第1車速値Vaと第2車速値Vbの間にある場合(ステップS5:YES)には、上述したステップS3及びステップS4の処理を行う。このように、算出車速Vが第2車速値Vbよりも小さく、電動アシスト自転車10Aの走行音が小さい場合であっても、警報ブザー22を駆動するので、車両周辺の通行人等に注意を喚起することができる。
【0084】
ステップS1において鍵140が閉位置であった場合、第2判定部226は、検出振動数νが所定振動数νaよりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。検出振動数νが所定振動数νa以下である場合(ステップS6:NO)には、ステップS1の処理を行う。電動アシスト自転車10Aが駐車中だからである。
【0085】
一方、検出振動数νが所定振動数νaよりも大きい場合(ステップS6:YES)には、上述したステップS3及びステップS4の処理を行う。これにより、鍵140が運転位置に無い状態での電動アシスト自転車10Aの走行時や、バッテリケース126を車体フレーム12から無理に外そうとした時等に、警報音を発生させることができるので、電動アシスト自転車10Aやバッテリ部20の盗難を防止することができる。ステップS4の処理後、制御部148は今回の制御ルーチンを終了する。
【0086】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Aによれば、シートチューブ84に設けられたバッテリケース126内にバッテリモジュール128及び警報ブザー22を一緒に収容しているので、前記バッテリモジュール128と前記警報ブザー22とを効率的に集約することができると共に、該バッテリモジュール128の保護(防水)と該警報ブザー22の保護(防水)をバッテリケース126で兼用することができる。
【0087】
また、警報ブザー22をバッテリケース126の外側に配設した場合と比較して、該警報ブザー22を取り付けるためのスペースも少なくてすむので、該警報ブザー22の取付スペースも確保し易くなる。さらに、例えば、該警報ブザー22を車体フレーム12等に直接的に取り付けるための部品(専用のステー等)を設ける必要が無いので、部品点数を削減することができる。
【0088】
本実施の形態において、シートチューブ84内に取り入れられた警報音は、該シートチューブ84及びダウンチューブ80内を介してヘッドチューブ78に伝搬し、該ヘッドチューブ78の放音孔110…110から車両前方に放出される。つまり、シートチューブ84及びダウンチューブ80が伝搬部(連結チューブ)81として機能すると共に、ヘッドチューブ78が放音部として機能する。そのため、該警報音を車体フレーム12とは別の伝搬部材により伝搬させて放音させる場合と比較して、部品点数を削減することができる。よって、電動アシスト自転車10Aの製造コストを低減することができる。
【0089】
本実施の形態によれば、警報制御部228及び第1判定部224を制御部148内に含ませているので、該警報制御部228、第1判定部224、制御部148を別々に設ける場合と比較して、電動アシスト自転車10Aをコンパクトに構成することが可能となる。
【0090】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Aは、上述した構成に限定されない。例えば、バッテリ部20は、シートチューブ84の外周面うち車両前方に臨む部位に設けてもよい。この場合、バッテリ部20は、ヘッドチューブ78、ダウンチューブ80、シートチューブ84、及びトップチューブ86に囲まれた空間に配設されることになる。
【0091】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電動アシスト自転車10Bについて図12及び図13を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態において、上記実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。後述する第3〜第5の実施の形態についても同様である。
【0092】
図12に示すように、本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Bでは、トップチューブ86の外周面のうちダウンチューブ80に対向する部位にバッテリ部232が設けられている。トップチューブ86には、警報ブザー22の警報音を内部に取り入れるための取入口234が形成されている。
【0093】
図13に示すように、バッテリ部232は、有底筒状のバッテリケース(ケース部材)236と、バッテリケース236に設けられた有底筒状の鍵部ケース238と、該バッテリケース236内に装着可能なバッテリモジュール240と、該鍵部ケース238内に装着可能な鍵部242と、シール部材244とを有する。バッテリケース236の側面には、トップチューブ86の取入口234に対応して該取入口234よりも一回り大きな孔部246が形成されている(図12参照)。
【0094】
バッテリモジュール240は、上述したバッテリ142…142や制御部148等を収容する筐体248を有している。筐体248は、前記バッテリケース236内に収容可能な直方体状の基部250と、該基部250の一端から車幅方向に突出する一対の鍔部252、254とを含む。
【0095】
基部250のうち車両上方側の面には、トップチューブ86の取入口234に対応して該取入口234と略同一の大きさの孔部256が形成されている。鍔部252には鍵部242が設けられている。鍵部242は、鍵部ケース238内に装着された状態で、第1の実施の形態と同様に鍵140の位置を「閉位置」、「開位置」、又は「運転位置」に合わせることが可能となっている。
【0096】
シール部材244には、取入口234を構成する壁面に当接する第1シール部260と、バッテリケース236の孔部246を構成する壁面に当接する第2シール部262と、基部250の孔部256を構成する壁面に当接する第3シール部264とが一体的に設けられると共に、第1〜第3シール部260、262、264を貫通する貫通孔266が形成されている。貫通孔266には、警報ブザー22が嵌入可能となっている。
【0097】
また、図12から諒解されるように、ダウンチューブ80内の一端部には第5遮音部材268が設けられている。なお、第4遮音部材108は省略されている。
【0098】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Bによれば、警報ブザー22が発生した警報音は、取入口234を介してトップチューブ86内に導入され、ヘッドチューブ78に伝搬される。このとき、トップチューブ86内において、シートチューブ84側に伝搬した警報音は、第3遮音部材106によって反射されてヘッドチューブ78に向かうことになる。そのため、警報音をヘッドチューブ78内に効率的に伝搬させることができる。
【0099】
ヘッドチューブ78内にまで伝搬した警報音は、第5遮音部材268によってダウンチューブ80内に伝搬することが防止されると共に、第1遮音部材102及び第2遮音部材104によってヘッドチューブ78内で拡散することが抑制されるため、放音孔110…110から車両前方に向けて好適に放音されることなる。これにより、車両周辺の通行人等に対して注意を喚起することができる。
【0100】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Bは、上述した構成に限定されない。例えば、バッテリ部232は、トップチューブ86の外周面うち車両上方に臨む部位に設けてもよい。
【0101】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る電動アシスト自転車10Cについて図14を参照しながら説明する。
【0102】
図14に示すように、本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Cでは、ダウンチューブ80の外周面のうちトップチューブ86に対向する部位に第2の実施の形態で説明したバッテリ部232が設けられている。ダウンチューブ80には、警報ブザー22の警報音を内部に取り入れるための取入口274が形成されている。
【0103】
また、図14から諒解されるように、シートチューブ84内には、ダウンチューブ80の他端側の開口部を塞ぐようにして第6遮音部材278が設けられている。なお、第3遮音部材106は省略されている。
【0104】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Cによれば、警報ブザー22から発生した警報音は、取入口274を介してダウンチューブ80内に導入され、ヘッドチューブ78に伝搬される。このとき、ダウンチューブ80内において、シートチューブ84側に伝搬した警報音は、第6遮音部材278によって反射されてヘッドチューブ78に向かうことになる。そのため、警報音をヘッドチューブ78内に効率的に伝搬させることができる。これにより、車両周辺の通行人等に対して効率的に注意を喚起することができる。
【0105】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Cは、上述した構成に限定されない。例えば、バッテリ部232は、ダウンチューブ80の外周面のうち車両下方に臨む部位に設けてもよい。
【0106】
上述したように、第1〜第3の実施の形態では、警報ブザー22の警報音を車体フレーム12の一部で伝搬させてヘッドチューブ78の放音孔110…110から放出するので、バッテリ部20、232の設置場所に拘らず、該放音孔110…110から放出される前記警報音の大きさを略一定に保つことができる。これにより、バッテリ部20、232の設置自由度を高めることができる。
【0107】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る電動アシスト自転車10Dについて図15及び図16を参照しながら説明する。
【0108】
図15及び図16に示すように、本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Dでは、バッテリ部20に代えてバッテリ部280が設けられている。バッテリ部280は、バッテリモジュール282と、前記バッテリモジュール282をシートチューブ84に取り付けるための取付部材284とを備える。
【0109】
バッテリモジュール282は、基本的に図6に示すバッテリモジュール128と略同一の構成となっており、筐体150の上面には、後述する鍵部304に対応する鍵受部283と、取手285とが設けられている。
【0110】
取付部材284は、シートチューブ84の外周面のうち車両後方に臨む部位に固着された固定板(固定部材)286と、前記固定板286に設けられてバッテリモジュール282の底部が嵌入可能な穴部288が形成された設置枠(支持部材)290と、前記固定板286の下端から車両後方に向かって延在して前記設置枠290を支持するための一対の支持棒292、294と、固定板286の上方に位置してシートチューブ84に設けられたホルダ部296とを有する。
【0111】
固定板286には、シートチューブ84の取入口100に対応して切欠部298が形成されている。設置枠290は、留金300によって固定板286に取り付けられており、該留金300を中心にして該固定板286の板面に沿って傾動可能となっている。つまり、設置枠290は、車幅方向に沿って傾動可能となっている。ホルダ部296は、シートチューブ84に外嵌されたホルダ本体302と、前記ホルダ本体302から車両後方に突出した鍵部304とを有する。
【0112】
鍵部304は、鍵受部283に係合した状態で、第1の実施の形態と同様に鍵140の位置を「閉位置」、「開位置」、又は「運転位置」に合わせることが可能となっている。なお、本実施の形態における「閉位置」では、バッテリモジュール282がホルダ部296に対してロックされることになる。
【0113】
以上のように構成された電動アシスト自転車10Dにおいて、バッテリモジュール282を交換する手順について説明する。バッテリモジュール282を取付部材284から取り外す場合、作業者は、先ず、鍵140を「開位置」に合わせることにより、バッテリモジュール282のホルダ部296に対するロックを解除する。
【0114】
続いて、取手285を把持した状態で該バッテリモジュール282を引き寄せて設置枠290を固定板286の板面に沿って傾動させる。これにより、バッテリモジュール282をシートチューブ84に対して車幅方向に所定角度だけ傾けることができる。このとき、固定板286には切欠部298が形成されているので、バッテリモジュール282の設置部158が固定板286に干渉することはない。
【0115】
そして、バッテリモジュール282を設置枠290に対して引き上げることにより、該バッテリモジュール282を取付部材284から取り外すことができる。
【0116】
一方、バッテリモジュール282を取付部材284に装着する場合、作業者は、予め設置枠290を手前に傾けた状態でバッテリモジュール282の底部を該設置枠290の穴部288に嵌入する。続いて、バッテリモジュール282を奥側に倒して設置枠290の底面を一対の支持棒292、294に当接させる。これにより、バッテリモジュール282は支持棒292、294によって安定して支持されると共に、バッテリモジュール282の鍵受部283が鍵部304に当接することになる。その後、鍵140を鍵部304の鍵穴に差し込んで「閉位置」に合わせることにより、バッテリモジュール282がホルダ部296にロックされる。
【0117】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Dによれば、バッテリモジュール282が設置される設置枠290を固定板286に対して車幅方向に傾動可能としているので、バッテリモジュール282の交換時にステー90L、90Rが邪魔になることを好適に抑えることができる。よって、バッテリモジュール282の交換作業を効率的に行うことができる。
【0118】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Dは、上述した構成に限定されない。例えば、バッテリ部280は、設置枠290を手前側に傾斜させた状態で保持する保持部材(ストッパ部材)等を設けてもよい。そうすれば、バッテリモジュール282を設置枠290の穴部288に嵌入する作業や、バッテリモジュール282を設置枠290から取り外す作業を安定して行うことができる。
【0119】
また、取付部材284は、シートチューブ84の外周面における車両前方に臨む部位に設けてもよい。この場合、バッテリモジュール282の交換時に、トップチューブ86が邪魔になることを好適に抑えることができる。
【0120】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係る電動アシスト自転車10Eについて図17〜図19を参照しながら説明する。
【0121】
図17に示すように、本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Eでは、ヘッドチューブ78のうち車両前方に臨む部位に警報ブザー本体170が固着され、ステー90L、90Rに固定されたリアキャリア(保持部材)310にバッテリモジュール312が設けられると共に、警報ブザー22を構成する一対のリード線172、174が該バッテリモジュール312に電気的に接続している。なお、本実施の形態では、傘部材114、第1〜第4遮蔽部材102、104、106、108等は省略されている。
【0122】
ダウンチューブ80及びシートチューブ84には、前記リード線172、174を固定するための複数のフック313…313が設けられている。これにより、リード線172、174がダウンチューブ80及びシートチューブ84に沿って配設されるので、乗車、降車、又は運転時にリード線172、174が邪魔になることを防止することできる。
【0123】
リアキャリア310は、シート16の車両後方に設けられており、ステー90L、90Rの一端側に固定された台座314と、ステー90L、90Rの他端に設けられて前記台座314を支持する補強部材316と、前記台座314に装着されたカバー部材318とを備える。
【0124】
図18に示すように、台座314は、車両前後方向に延びて平面視で四角環状に形成された枠体320と、前記枠体320内に位置してバッテリモジュール312が載置される格子状の支持体322とを有する。
【0125】
枠体320は、車幅方向に延在する一対の短辺部324、326と、これら短辺部324、326の端部同士を連結する一対の長辺部328、330と、短辺部324の両端に一体的に設けられてステー90L、90Rの一端側に固定される一対の固定部332、334とを含む。短辺部326と長辺部328の境界部(枠体320の隅部)には、鍵部336が設けられている。
【0126】
支持体322は、車両前後方向に延びて短辺部324及び短辺部326を連結する複数(図18では3本)の第1棒部材338a〜338cと、車幅方向に延びて長辺部328及び長辺部330を連結する複数(図18では3本)の第2棒部材340a〜340cとを含む。第1棒部材338a〜338cは、車幅方向に等間隔に配設されており、第2棒部材340a〜340cは、車両前後方向に等間隔に配設されている。
【0127】
図19に示すように、カバー部材318は、バッテリモジュール312を上方から覆うカバー部材本体342と、カバー部材本体342に設けられて上述した鍵部336に対応する鍵受部344とを有する。カバー部材本体342は、ヒンジ346を介して枠体320の固定部332、334に設けられている(図17参照)。つまり、カバー部材318は、台座314に対して車両前後方向に傾動可能となっている。
【0128】
バッテリモジュール312は、支持体322に載置されるバッテリモジュール本体348と、前記バッテリモジュール本体348に設けられ、且つ台座314の鍵部336とカバー部材318の鍵受部344との間に介設される鍵通部350とを有する。
【0129】
本実施の形態において、鍵部336は、該鍵部336とカバー部材318の鍵受部344との間に鍵通部350を介設した状態で、第1の実施の形態と同様に鍵140の位置を「閉位置」、「開位置」、又は「運転位置」に合わせることが可能となっている。なお、本実施の形態における「閉位置」では、バッテリモジュール312及びカバー部材318が台座314に対してロックされることになる。
【0130】
本実施の形態に係る電動アシスト自転車10Eによれば、ヘッドチューブ78の車両前方側に警報ブザー本体170を設けているので、車両を構成する部品(例えば、車体フレーム12)等によって該警報ブザー本体170が発した警報音が遮音されることはない。
【0131】
また、本実施の形態では、バッテリモジュール本体348を格子状の支持体322に載置しているので、該バッテリモジュール本体348から生じる熱を格子の隙間から好適に逃がすことができる。
【0132】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0133】
例えば、警報ブザー22は、車速に応じて警報音の周波数が変化するように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0134】
10A〜10E…電動アシスト自転車 12…車体フレーム
16…シート 22…警報ブザー
26…ステアリング軸 52L、52R…ペダル
62…クランク回転数検出器 66…アシストモータ
78…ヘッドチューブ 80…ダウンチューブ
84…シートチューブ 86…トップチューブ
100、234、274…取入口 102…第1遮音部材
104…第2遮音部材 106…第3遮音部材
108…第4遮音部材 110…放音孔
114…傘部材 126、236…バッテリケース(ケース部材)
128、240、282、312…バッテリモジュール
142…バッテリ 148…制御部(監視手段)
170…警報ブザー本体 172、174…リード線(接続線)
210…警報ボタン 220…車速算出部
224…第1判定部 228…警報制御部
268…第5遮音部材 278…第6遮音部材
286…固定板(固定部材) 290…設置枠(支持部材)
310…リアキャリア(保持部材) 314…台座
318…カバー部材 320…枠体
322…支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル(52L、52R)に作用する乗員の踏力を補助する駆動力を発生させるアシストモータ(66)と、
前記アシストモータ(66)の電源としてのバッテリ(142…142)を含むバッテリモジュール(128、240、282、312)と、
前記バッテリモジュール(128、240、282、312)に設けられた警報ブザー(22)と、を備え、
前記警報ブザー(22)の警報音を車両前方に向けて発することを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
請求項1記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリモジュール(128、240、282)及び前記警報ブザー(22)を収容するケース部材(126、236)と、
前輪(WF)を操舵するステアリング軸(26)を支持するヘッドチューブ(78)と、
前記ヘッドチューブ(78)に連結されて前記ケース部材(126、236)が設けられる連結チューブ(80、84、86)と、をさらに備え、
前記連結チューブ(80、84、86)には、前記警報ブザー(22)が発した前記警報音を内部に取り入れるための取入口(100、234、274)が形成され、
前記ヘッドチューブ(78)には、前記連結チューブ(80、84、86)を介して該ヘッドチューブ(78)に伝搬された警報音を車両前方に向けて放出する放音孔(110…110)が形成されていることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項3】
請求項2記載の電動アシスト自転車において、
前記警報ブザー(22)を駆動制御する警報制御部(228)と、
車速を取得する車速取得手段(62、220)と、
前記車速取得手段(62、220)にて取得された車速が、所定速度以下であるか否かを判定する判定手段(224)と、をさらに備え、
前記警報制御部(228)は、車速が所定速度以下であると前記判定手段(224)にて判定された場合に前記警報ブザー(22)を駆動することを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項4】
請求項3記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリモジュール(128、240、282)は、前記バッテリ(142…142)の状態を監視する監視手段(148)を有し、
前記監視手段(148)は、前記警報制御部(228)及び前記判定手段(224)を含むことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電動アシスト自転車において、
前記乗員が操作可能な警報ボタン(210)をさらに備えており、
前記警報制御部(228)は、前記警報ボタン(210)の出力信号に基づいて前記警報ブザー(22)を駆動制御することを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、
前記ヘッドチューブ(78)内及び前記連結チューブ(80、84、86)内には、前記警報ブザー(22)が発した前記警報音が前記放音孔(110…110)に向かう方向とは異なる方向に伝搬することを防止する遮音部材(102、104、106、108、268、278)が設けられていることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、
前記ヘッドパイプ(78)には、前記放音孔(110…110)を介して該ヘッドパイプ(78)内に異物が侵入することを防止する傘部材(114)が設けられていることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、
前記連結チューブ(80、84、86)は、前記ヘッドチューブ(78)から車両後方且つ下方に向けて延びたダウンチューブ(80)と、
前記ダウンチューブ(80)に連結して前記乗員が着座するシート(16)を支持するシートチューブ(84)と、
前記ダウンチューブ(80)よりも上方に位置して前記ヘッドチューブ(78)及び前記シートチューブ(84)を連結するトップチューブ(86)と、を含み、
前記取入口(100、234、274)は、前記ダウンチューブ(80)、前記シートチューブ(84)、及び前記トップチューブ(86)のいずれかに形成されていることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項9】
請求項1記載の電動アシスト自転車において、
前記乗員が着座するシート(16)を支持するシートチューブ(84)と、
前記シートチューブ(84)に固定された固定部材(286)と、
前記バッテリモジュール(282)を着脱可能に支持し、且つ前記固定部材(286)に対して車幅方向に沿って傾動可能に設けられた支持部材(290)と、をさらに備えることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項10】
請求項1記載の電動アシスト自転車において、
前記乗員が着座するシート(16)よりも車両後方に位置して前記バッテリモジュール(312)を保持する保持部材(310)と、
前輪(WF)を操舵するステアリング軸(26)を支持するヘッドチューブ(78)と、をさらに備え、
前記警報ブザー(22)は、前記ヘッドチューブ(78)の車両前方側に設けられた警報ブザー本体(170)と、
前記警報ブザー本体(170)及び前記バッテリモジュール(312)を電気的に接続する接続線(172、174)と、を有することを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項11】
請求項10記載の電動アシスト自転車において、
前記保持部材(310)は、前記バッテリモジュール(312)が載置される台座(314)と、
前記台座(314)に装着された状態で該バッテリモジュール(312)の少なくとも一部を覆うカバー部材(318)と、を有し、
前記台座(314)は、環状に形成された枠体(320)と、
前記枠体(320)内に設けられた格子状の支持体(322)と、を含むことを特徴とする電動アシスト自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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