説明

電動カート用排出燃料希釈装置

【課題】電動カート用排出燃料希釈装置において、排気水素の希釈が均一に行われるようにする。
【解決手段】駆動用の動力源として燃料電池システムを搭載した電動カート2に用いられる電動カート用排出燃料希釈装置において、排気チャンバ20は、前記電動カート2の座席の下方に設けられる中空の基部24と、その基部24から立ち上がる中空の第一立上がり部21、第二立上がり部22及び第三立上がり部23とを備え、第一立上がり部21内の空間と第三立上がり部23内の空間、第二立上がり部22内の空間と第三立上がり部23内の空間とは連通しており、希釈用ガス供給部26が基部24に接続され、排気水素供給部28が第一立上がり部21下方の前記基部24に接続され、希釈用ガスと排気水素とが混合された混合空気を外部へ排出する混合ガス排出部27が第二立上がり部22下方の前記基部24に接続されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動用の動力源として燃料電池システムを搭載した電動カートに用いられる電動カート用排出燃料希釈装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする燃料電池システムでは、燃料電池本体において、空気と燃料水素との反応により電力を発生させるとともに、その燃料電池本体から排出される未反応水素を含む排気ガスを、排出燃料希釈装置において希釈用空気と混合させ、外部に排出しているものがある。
【0003】
このように、排出燃料希釈装置で排気ガスと希釈用空気とを混合させるのは、燃料電池本体から排出される排気ガスに含まれる水素の濃度を下げるためである。
【0004】
図7は、一般的な燃料電池システムにおける排出燃料希釈装置10の例である。この排出燃料希釈装置10は、直方体状の排気チャンバ12内の空間が、縦向きに配置された仕切板13によって、排気ガス通路14と希釈用空気通路15とに左右に仕切られている。排気ガス通路14と希釈用空気通路15との容積は、ほぼ等しくなるように設定されている。
【0005】
また、排気チャンバ12の排気ガス通路14側の側面には、燃料電池本体1から排気される排気ガスを、その排気ガス通路14に導く排気ガス供給部16が設けられている。また、排気チャンバ12の希釈用空気通路15側の側面上部には、混合空気排出部17が設けられている。希釈用空気通路15の下部には希釈用空気供給部18が設けられている。この希釈用空気供給部18を通じて供給される希釈用空気は、仕切板13の面13bのほぼ全域に接触し、仕切板13を冷却するように、排気チャンバ12の上方に流される。
【0006】
この希釈用空気と、排気ガス供給部16を通じて仕切板13の面13aに衝突して流れる排気ガスとは、排気チャンバ12上部に形成された混合室19で混合される。その混合された排気ガスは、混合空気排出部17から外部へ排出される。
また、排気ガス通路14の下部には、当該通路下部に溜まった水滴を排出させるドレン11が設けられているので、液体化した水分はこのドレン11から外部へ排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、図8は、排出燃料希釈装置10’の他の例であり、直方体状の排気チャンバ12’内の空間が、横方向に配置された仕切板13’によって、滞留領域14’と希釈領域19’とに上下に切られている。
【0008】
滞留領域14’と希釈領域19’の間の仕切板13’には、滞留領域14’から希釈領域19’へ燃料を通流させる排気ガス通路が設けられている。排気ガス通路は多数の孔で構成されている。また、排気チャンバ12’の滞留領域14’側の側面には、排気ガス供給部16’が設けられている。さらに、排気チャンバ12’の希釈領域19’側の側面には混合空気排出部17’が設けられ、その反対側の側面には希釈用空気供給部18’が設けられている。
【0009】
仕切板13’の排気ガス通路を通して滞留領域14’から希釈領域19’へ通流した排気ガスは、希釈領域19’内で希釈用空気供給部18’を通じて供給される希釈用空気と混合され、混合空気排出部17’から外部へ排出される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−348743号公報
【特許文献2】特開2003−132915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電動カートの動力源として、この種の燃料電池システムを搭載する場合、燃料電池システムの燃料電池本体から、その発電時において、排気ガスとは別に数分毎に少量の不純水素が放出されるタイプのものがある。
【0012】
このタイプの電動カートでは、排出燃料希釈装置は、電動カートの座席の下、あるいは座席の後方等のスペースに配置される。また、その排出燃料希釈装置から引き出された排気ダクトを通じて、希釈用空気と混合された排気水素が外部に排出される。
【0013】
しかし、電動カートは、自動車等とは違って車体が小さいので、排出燃料希釈装置を配置すべき空間が確保しにくいという問題がある。このため、排出燃料希釈装置の排気チャンバの容量を、あまり大きく確保することができない。
【0014】
なぜならば、電動カートの座席の座面の高さは概ね決まっているので、その座面下のスペースは、必然的に上下方向に狭い空間になるからである。また、座席よりも後方寄りのスペースは、本発明の実施形態の説明図である図5に示すように、車軸が車幅方向に配置されているとともに、その車軸方向に沿って、電磁弁等の補機類や、デファレンシャル等の駆動力伝達装置、その他各種機器類が並列して配置されているからである。
【0015】
電動カートにおいて、排出燃料希釈装置の排気チャンバの容量が小さいと、排出される不純水素(以下、「排気水素」と称する)の希釈が均一に行われにくいとう問題がある。
【0016】
そこで、この発明は、電動カート用排出燃料希釈装置において、排気水素の希釈が均一に行われるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記第一の課題を解決するために、この発明は、駆動用の動力源として燃料電池システムを搭載した電動カートに用いられ、反応用空気と燃料水素との反応により電力を生じさせる燃料電池本体から排出される排気水素を、希釈用ガスと混合させた後に外部へ排出する排気チャンバを備えた電動カート用排出燃料希釈装置において、前記排気チャンバは、前記電動カートの座席の下方に設けられる中空の基部と、前記基部内の空間に連通するようにその基部から立ち上がる中空の第一立上がり部、第二立上がり部及び第三立上がり部とを備え、前記第一立上がり部内の空間と前記第三立上がり部内の空間、前記第二立上がり部内の空間と前記第三立上がり部内の空間とは連通しており、希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給部が前記基部に接続され、排気水素を供給する排気水素供給部が前記第一立上がり部又はその第一立上がり部下方の前記基部に接続され、希釈用ガスと排気水素とが混合された混合ガスを外部へ排出する混合ガス排出部が前記第二立上がり部又はその第二立上がり部下方の前記基部に接続されていることを特徴とする電動カート用排出燃料希釈装置を採用した。
【0018】
この構成によれば、希釈用ガスは、まず、座席下に配置した基部に供給される。その後、希釈用ガスは、基部から、相互に連通する第一立上がり部内の空間と第三立上がり部内の空間を通じて基部へ戻る第一の循環を繰り返す。また、同時に、基部から、相互に連通する第二立上がり部内の空間と第三立上がり部内の空間を通じて基部へ戻る第二の循環を繰り返す。
その第一の循環において、第一立上がり部側の空間で排気水素供給部から排気水素が導入され、希釈用ガスとの混合によってその排気水素が希釈される。また、第二の循環において、その希釈によって得られた混合ガスの一部が混合ガス排出部から外部へ排出される。
このように、排気チャンバ内に、基部から第一立上がり部と第三立上がり部を通じて基部へ戻る第一の循環と、基部から第二立上がり部と第三立上がり部を通じて基部へ戻る第二の循環とを設け、一方の循環で排気水素を導入し、他方の循環で希釈された混合空気の一部を外部へ排出する構成としたことから、両循環を繰り返し行う中で、水素の希釈が均一に行われやすくなる。
【0019】
また、この希釈用ガスとして、燃料電池本体からの排気ガスを用いる構成を採用することができる。この構成によれば、排気チャンバ内において、排気ガスとともに流入する水分を溜めることができる。また、その排気チャンバ内において、水素の希釈とともに、排気ガス全体の温度を適切に下げることができるので、その排気ガスに含まれる水分の除去がより確実に行われる。
なお、燃料電池本体から排出される排気ガスは高温、高湿であり、また、排出される上記排気水素(不純水素/パージ水素)も高温、多湿である。このため、いずれのガスにも多くの水分(水蒸気)が含まれている。しかし、これらのガスは、排気チャンバに至るまでにパイプ内で徐々にその温度が下がって、最後は、外気よりも温度が低下した状態となる場合が多いと考えられる。このような場合、その含まれる水分のほとんどは、既に液体化した状態で排気チャンバに流入することとなる。排出燃料希釈装置は、その液体化した水分を溜める機能及びそれを外部へ排出する機能を発揮することができる。
【0020】
なお、この第一の循環と第二の循環とは、それぞれ、基部から第一立上がり部、第三立上がり部、基部の順、及び、基部から第二立上がり部、第三立上がり部、基部の順に排気ガスが流れる構成としてもよいし、その逆に、基部から第三立上がり部、第一立上がり部、基部の順、及び、基部から第三立上がり部、第二立上がり部、基部の順に希釈用ガスが流れる構成としてもよい。これらの流れの向きは、希釈用ガス供給部の基部に対する固定方向、排気水素供給部の基部又は第一立上がり部に対する固定方向、混合空気排出部の基部又は第二立上がり部に対する固定方向をそれぞれ変更、調整することで、希釈用ガス、排気水素の流入方向を決定し、その設定をすることができる。
【0021】
また、前者の流れとする場合、すなわち、基部から第一立上がり部、第三立上がり部、基部の順、及び、基部から第二立上がり部、第三立上がり部、基部の順に希釈用ガスが流れる構成とする場合、例えば、前記基部内に、希釈用ガス供給部から入り込んだ希釈用ガスを前記第一立上がり部又は前記第二立上がり部へ導く誘導板を設けた構成を採用することができる。
この構成によれば、希釈用ガス供給部から入り込んだ希釈用ガスが、前記第一の循環及び前記第二の循環へと円滑に移行できるようになる。
【0022】
なお、前記第一立上がり部、第二立上がり部及び第三立上がり部は、それぞれ電動カートに対して車体後方寄りに設けられていることが望ましい。車体後方寄りであれば、座席の座面部を避けて、背もたれ部よりも後方において、上下方向のスペースをより広く確保しやすいからである。
また、前記第一立上がり部が連通する第三立上がり部と、第二立上がり部が連通する第三立上がり部とは、基部から別々に立ち上がる構成としてもよいし、これらを一体に立ち上がる構成としてもよい。
【0023】
これらの各構成において、前記排気チャンバは、前記第一立上がり部、前記第二立上がり部及び前記第三立上がり部の中から選択される二つ又は三つの立上がり部に挟まれた空間に、電動カートが備える機器類が入り込んだ状態にその電動カートに固定される構成を採用することができる。例えば、第一立上がり部と第二立上がり部との間、あるいは、第一立上がり部と第三立上がり部との間、第二立上がり部と第三立上がり部との間、第一立上がり部と第二立上がり部と第三立上がり部との間の空間に、燃料電池システムの電磁弁等の補機類が入り込んだ状態である。
【0024】
電動カートの座席の下部や後方寄りのスペースは、電磁弁等の補機類や、デファレンシャル等の駆動力伝達装置、その他各種機器類が並列して配置されて手狭な空間となっているので、その各種機器類の間の隙間(空間)を活用して排気チャンバの立上がり部を配置することで、電動カート用排出燃料希釈装置を有効に機能させることができる。
【0025】
また、これらの各構成において、前記基部は、電動カートの車体後方側にその下面が後方へ向かうにつれて徐々に上昇する傾斜部を備え、前記第一立上がり部及び前記第二立上がり部は、前記傾斜部から立ち上がっている構成を採用することができる。
この構成によれば、ガスが、傾斜部の下面に当たることによって、基部から第一立上がり部、第二立上がり部へのガスの流入がよりスムーズである。
【0026】
また、これらの各構成において、前記第一立上がり部内の空間と前記第二立上がり部内の空間とを、連通部で直接連通させた構成を採用することができる。この構成によれば、水素が第一立上がり部内と第二立上がり部内に滞留しやすくなり、高濃度の水素がそのまま外部に排出されることなく、その希釈が随時円滑に行われるようになる。
【0027】
また、この構成において、前記第一立上がり部内の空間と前記基部内の空間、前記第二立上がり部内の空間と前記基部内の空間とを、それぞれ複数の孔を有する透孔部を介して連通させれば、前記水素の滞留の効果をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明は、電動カート用排出燃料希釈装置において、排気水素の希釈が均一に行われ、また、排気ガスに含まれる水分の除去が十分に行われるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態の斜視図
【図2】同実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図
【図3】同実施形態を示す要部拡大断面図
【図4】電動カートへの取付状態を示す要部拡大側面図
【図5】電動カートへの取付状態を示す要部拡大斜視図
【図6】電動カートへの取付状態を示す要部拡大背面図
【図7】従来例の排出燃料希釈装置を示す説明図
【図8】従来例の排出燃料希釈装置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、駆動用の動力源として燃料電池システムを搭載した電動カートに関するものであり、詳しくは、その燃料電池システムの燃料電池本体から排出される排気水素を、希釈用ガスと混合させて外部に排出する排出燃料希釈装置に関するものである。
【0031】
前述のように、排出燃料希釈装置で排気水素と希釈用ガスとを混合させるのは、燃料電池本体1から排出される排気水素の濃度を下げるためである。また、この実施形態では、燃料電池本体1から排出される排気ガスを希釈用ガスとして用いる。燃料電池本体1から排出される排気ガスは高温、高湿であり、多くの水分を含んでいるから、この排出燃料希釈装置によって、水分を除去することを目的とする。
【0032】
排出燃料希釈装置の構成について説明すると、排出燃料希釈装置は、反応用空気と燃料水素との反応により電力を生じさせる燃料電池本体1から排出される排気水素を、希釈用ガスと混合させた後に外部へ排出する排気チャンバ20を備える。
この実施形態では、排気チャンバ20は、座席3の座面部3aの下方から背もたれ部3bの後方にかけて、後輪のタイヤ5を支持する車軸6よりも下方を通って、その車軸6に対して前後に跨って配置されている。
【0033】
排気チャンバ20は、中空の基部24と、その基部24内の空間に連通するようにその基部24から立ち上がる中空の第一立上がり部21、第二立上がり部22及び第三立上がり部23とを備える。
【0034】
基部24は、電動カート2の車体に対して前方寄りの部分に、平面視矩形を成すフラット部24cを有する。そのフラット部24cの底面24aと上面24bとはほぼ並行であり、後方へ向かうにつれて徐々に下方へ向かうように傾斜している。
【0035】
また、基部24は、電動カート2の車体後方側に、その下面が後方へ向かうにつれて徐々に上昇する傾斜部25a,25bを備える。この傾斜部25a,25bは、フラット部24cの後縁から、後方へ突出して設けられている。また、傾斜部25a,25b同士は、電動カート2の車軸6方向に所定距離だけ離れて設けられている。
【0036】
そのフラット部24cの最も上方に位置する部分(前方寄りの部分)に、希釈用ガス、すなわち燃料電池本体1からの排気ガスを、基部24内に供給する希釈用ガス供給部26が接続されている。
【0037】
なお、フラット部24cの最も下方に位置する部分(後方寄りの部分)に、液体化した水を外部に排出できるドレン30が設けられている。ドレン30は開閉自在であり、そのドレンを開放することで、内部に溜まった液体状の水を外部へ排出できる。
【0038】
第一立上がり部21及び第二立上がり部22は、それぞれ基部24の傾斜部25a,25bから立ち上がるように設けられている。
また、第三立上がり部23は、フラット部24cの前後方向中心、且つ、フラット部24cの車軸6方向中心付近から立ち上がるように設けられている。
【0039】
排気チャンバ20は、座席3の下方において、特に、座面部3aの下方から背もたれ部3bの後方にかけて設けられている。すなわち、第一立上がり部21、第二立上がり部22及び第三立上がり部23も、それぞれ電動カート2の車体後方寄りに設けられていることになる。このように、各立上がり部21,22,23が車体後方寄りであるので、座席の座面部3aを避けて、背もたれ部3bよりも後方において、比較的上下方向のスペースが広い部分を活用できる。すなわち、各立上がり部21,22,23の高さを十分に確保しやすい。
【0040】
排気チャンバ20内に排気水素を供給する排気水素供給部28は、第一立上がり部21下方の基部24(傾斜部25a)に接続されている。これを、第一立上がり部21に接続することも可能である。
また、希釈用ガスと排気水素とが混合された混合ガスを外部へ排出する混合ガス排出部27が、第二立上がり部22下方の基部24(傾斜部25b)に接続されている。これを、第二立上がり部22に接続することも可能である。
【0041】
さらに、第一立上がり部21内の空間と第三立上がり部23内の空間、第二立上がり部22内の空間と第三立上がり部23内の空間とは、それぞれ第一戻り配管31、第二戻り配管32で連通している。この実施形態では、第一戻り配管31、第二戻り配管32は可撓性を成すチューブで構成され、それぞれ、第一立上がり部21、第二立上がり部22、第三立上がり部23の上部の開口に接続されている。
【0042】
また、第一立上がり部21内の空間と第二立上がり部22内の空間とは、車軸6方向に並行に伸びる連通部33で直接連通された状態となっている。
【0043】
この排気チャンバ20は、その後方寄りの部分が、図4乃至図6に示すように、電動カート2の燃料ボンベ収容部9等を支持するフレームFから引き出された縦方向の支持フレームf1,f2、及び、その縦方向の支持フレームf1,f2間に掛け渡された横方向の支持フレームf3によって車体に固定されている。また、排気チャンバ20の前方寄りの部分は、図4に示すように、車体下部のフレーム(図示せず)から後方へ引き出された別の支持フレームf4によって車体に固定されている。
これらの支持フレームf1,f2,f3,f4は、車軸受アーム4や車軸6、駆動力伝達装置7、補機類8、その補機類8に通じる配管p1,p2等を避けて設けられる。
【0044】
また、排気チャンバ20は、第一立上がり部21と第二立上がり部22に挟まれた空間に、電動カート2が備える電磁弁(補機類)8が入り込んだ状態である。さらに、第一立上がり部21及び第二立上がり部22と、第三立上がり部23に挟まれた空間に、電動カート2の後輪の車軸6が入り込んだ状態である。
【0045】
電動カート2の座席3の下部や後方寄りのスペースは、電磁弁等の補機類8や、デファレンシャル等の駆動力伝達装置7、その他各種機器類が並列して配置されて手狭な空間となっているので、このように、その各種機器類の間の隙間(空間)を活用して排気チャンバ20の各立上がり部21,22,23を配置することで、電動カート用排出燃料希釈装置の排気水素の希釈機能、及び、排気ガスに含まれる水の除去機能を有効に発揮させることができる。
【0046】
この電動カート用排出燃料希釈装置の作用を説明すると、図1に示すように、燃料電池本体1から排出される希釈用ガスは、希釈用ガス供給部26から基部24に供給される(図中矢印a参照)。
【0047】
その後、希釈用ガスは、基部24内で側壁に当たりながらその向きを変え(図中矢印b,c参照)、第一戻り配管31によって相互に連通する第一立上がり部21内の空間と第三立上がり部23内の空間を通じて基部24へ戻る第一の循環を繰り返す(図中矢印g,i,j参照)。また、同時に、基部24から、第二戻り配管32によって相互に連通する第二立上がり部22内の空間と第三立上がり部23内の空間を通じて基部へ戻る第二の循環を繰り返す(図中矢印f,h,j参照)。
【0048】
その第一の循環において、第一立上がり部21側の空間で排気水素供給部28から排気水素が導入され、希釈用ガスと混合される。なお、電動カートの場合、前述のように、燃料電池システムの燃料電池本体1からは、その発電時において、数分毎に断続的に少量の不純水素が放出される。
【0049】
また、第二の循環において、その希釈によって得られた混合ガスの一部が混合ガス排出部27から外部へ排出される(図中矢印k参照)。すなわち、希釈された混合ガスは、希釈用ガス供給部26からの排気の圧力によって押し出される構成である。
【0050】
このように、排気ガスが、基部24から第一立上がり部21と第三立上がり部23を通じて基部24へ戻る第一の循環と、基部24から第二立上がり部22と第三立上がり部23を通じて基部24へ戻る第二の循環とを設け、一方の循環で排気水素を導入し、他方の循環で希釈された混合ガスの一部を外部へ排出する構成としたことから、両循環を繰り返し行う中で、排気水素の希釈が均一に行われやすくなる。また、両循環を繰り返し行うことで、排気ガス全体の温度を適切に下げることができ、水分の液体化、除去が確実に行われる。
【0051】
また、この実施形態では、基部24内に、希釈用ガス供給部26から入り込んだ希釈用ガスを、第三立上がり部23を避けて第二立上がり部22へ導く誘導板29が設けられている。誘導板29は、基部24のフラット部24cの前端側の側壁24dに沿って、希釈用ガス供給部26から遠ざかるにつれて徐々にその側壁24dから離れる方向に配置される。
【0052】
このため、基部24内において、図中矢印a,b,c,d,eで示すように、第三立上がり部23の周りを周回する排気ガスの流れが生まれやすい。したがって、基部24から第一立上がり部21、第三立上がり部23、基部24の順、及び、基部24から第二立上がり部22、第三立上がり部23、基部24の順に排気ガスが流れる前述の二つの循環が円滑である。なお、希釈用ガスが、第三立上がり部23を避けて第一立上がり部21へ導かれるように、この誘導板29を配置してもよい。
【0053】
また、この実施形態では、第一立上がり部21内の空間と第二立上がり部22内の空間とを、連通部33で直接連通させた構成を採用しているので、その第一立上がり部21内の空間と第二立上がり部22内の空間との間で、図中矢印l,mで示すような排気ガスの循環が生じやすい。このため、排気ガスに含まれる水素が、第一立上がり部内と第二立上がり部内に滞留しやすくなる。したがって、排気水素が希釈されないまま一気に外部に排出されることなく、その希釈が随時円滑に行われるようになる。
【0054】
このとき、第一立上がり部21内の空間と基部24内の空間、第二立上がり部22内の空間と基部24内の空間とを、それぞれ複数の孔を有する透孔部21a,22aを介して連通させているので、その水素の滞留の効果をさらに高めることができる。
【0055】
なお、第三立上がり部23内の空間と基部24内の空間との間にも、この複数の孔を有する透孔部23aを介在させることができる。これにより、水素の滞留の効果をさらに高めることができる。
【0056】
また、フラット部24cと傾斜部25a、及び、フラット部24cと傾斜部25bとの間にも、それぞれ複数の孔を有する透孔部35a,35bを設けているので、その透孔部35a,35bの介在によって少し弱まった排気ガスの流れが、排気水素供給部28から入った排気水素を第一立上がり部21内で押し上げる作用を行うことができる。
【0057】
これらの透孔部21a,22a,23a,35a,35bの素材としては、例えば、パンチングメタルや網部材等の板状部材を採用することができる。
【0058】
また、この実施形態では、燃料電池本体1から排出される排気ガスを希釈用ガスとして用いたが、例えば、ブロア等によって空気を基部24内に供給して、それを希釈用ガスとしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料電池本体
2 電動カート
3 座席
3a 座面部
3b 背もたれ部
4 車軸受アーム
5 タイヤ
6 車軸
7 駆動力伝達装置
8 電磁弁(補機類)
9 燃料ボンベ収容部
10,10’ 排出燃料希釈装置
11 ドレン
12,12’ 排気チャンバ
13,13’ 仕切板
14 排気ガス通路
14’ 滞留領域
15 希釈用空気通路
16,16’ 排気ガス供給部
17,17’ 混合空気排出部
18,18’ 希釈用空気供給部
19 混合室
19’ 希釈領域
20 排気チャンバ
21 第一立上がり部
21a 透孔部
22 第二立上がり部
22a 透孔部
23 第三立上がり部
23a 透孔部
24 基部
25a,25b 傾斜部
26 希釈用ガス供給部
27 混合ガス排出部
28 排気水素供給部
29 誘導板
30 ドレン
31 第一戻り配管
32 第二戻り配管
33 連通部
35a,35b 透孔部
f1,f2,f3,f4 フレーム
p1,p2 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の動力源として燃料電池システムを搭載した電動カート(2)に用いられ、反応用空気と燃料水素との反応により電力を生じさせる燃料電池本体(1)から排出される排気水素を、希釈用ガスと混合させた後に外部へ排出する排気チャンバ(20)を備えた電動カート用排出燃料希釈装置において、
前記排気チャンバ(20)は、前記電動カート(2)の座席の下方に設けられる中空の基部(24)と、前記基部(24)内の空間に連通するようにその基部(24)から立ち上がる中空の第一立上がり部(21)、第二立上がり部(22)及び第三立上がり部(23)とを備え、前記第一立上がり部(21)内の空間と前記第三立上がり部(23)内の空間、前記第二立上がり部(22)内の空間と前記第三立上がり部(23)内の空間とは連通しており、希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給部(26)が前記基部(24)に接続され、排気水素を供給する排気水素供給部(28)が前記第一立上がり部(21)又はその第一立上がり部(21)下方の前記基部(24)に接続され、希釈用ガスと排気水素とが混合された混合空気を外部へ排出する混合ガス排出部(27)が前記第二立上がり部(22)又はその第二立上がり部(22)下方の前記基部(24)に接続されていることを特徴とする電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項2】
前記希釈用ガスとして、前記燃料電池本体(1)から排出される排気ガスを用いたことを特徴とする請求項1に記載の電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項3】
前記基部(24)内に、前記希釈用ガス供給部(26)から入り込んだ希釈用ガスを前記第一立上がり部(21)又は前記第二立上がり部(22)へ導く誘導板(29)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項4】
前記排気チャンバ(20)は、前記第一立上がり部(21)、前記第二立上がり部(22)及び前記第三立上がり部(23)の中から選択される二つ又は三つの立上がり部に挟まれた空間に、電動カート(2)が備える機器類が入り込んだ状態にその電動カート(2)に固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項5】
前記基部(24)は、電動カート(2)の車体後方側にその下面が後方へ向かうにつれて徐々に上昇する傾斜部(25a,25b)を備え、前記第一立上がり部(21)及び前記第二立上がり部(22)は、前記傾斜部(25a,25b)から立ち上がっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項6】
前記第一立上がり部(21)内の空間と前記第二立上がり部(22)内の空間とを、連通部(33)で直接連通させたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の電動カート用排出燃料希釈装置。
【請求項7】
前記第一立上がり部(21)内の空間と前記基部(24)内の空間、前記第二立上がり部(22)内の空間と前記基部(24)内の空間とは、それぞれ複数の孔を有する透孔部(21a,22a)を介して連通していることを特徴とする請求項6に記載の電動カート用排出燃料希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−8522(P2013−8522A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139574(P2011−139574)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】