説明

電動ガン

【課題】 電動ガンの基本的構成を維持して、スイッチングの確実性を確保するとともに安定化の向上を図る。
【解決手段】 エアシリンダー装置の可動部材をモーターによって後退方向へ駆動し、モーターの駆動を引き金操作によって制御する電動ガンについて、モーター30の駆動部22は、可動部材15側に設けられている、移動方向に沿ったラック25と噛み合うセクターギヤ27及びそれと同軸のカム33を有し、かつ、スイッチ40として、固定スイッチ部42とそれに対する平行移動又は回転運動により開閉可能となる可動スイッチ部41を有しており、モーター30とスイッチ40とを連絡し、前記のカム33により可動スイッチ部41を固定スイッチ部42から離す位置へ切り換えるための連絡子35を装備し、カム33の回転により連絡子35の位置を切り換え、可動スイッチ部41の平行移動又は回転運動を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシリンダー装置のピストンをモーターによって後退方向へ駆動し、モーターの駆動を引き金操作によって制御する電動ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の先行技術には、特開平3−221793号に代表される発明があり、出願人会社の電動式のエアガンに長年にわたって採用され実績を積んで来た。同発明は、ピストンの後退動作によってエアをシリンダー内に吸引すると同時に圧縮ばねを蓄圧し、前進動作によりエアを圧縮し、噴射エアにより弾丸を発射させるもので、ピストンを後退させるために一方向へ回転する回転輪を有する駆動部及び駆動部のモーターを作動させる回路のスイッチを引き金操作によって制御する操作部を有している。そして駆動部の回転輪と同軸に設けたカムと係合し、シアのスイッチ動作完了後にトリガーとの係合を外すタイミングで、カムとシアを、タペットアームを用いて連動させている。
【0003】
上記の構成では、カムとスイッチとの間にシアとタペットアームの2部材が必要であ
り、さらにトリガーの係合離脱も介在して複雑な構造となっている。またシアのスライドによるスイッチのオンオフが時として不確実になることがあり、有効な改善策が求められて来た。このため出願人は、スイッチのオンオフの改良に努めて来たが、なお動きが大きく、がたを生じて不安定となる問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平3−221793号
【特許文献2】実開平3−104688号
【特許文献3】実開平3−104689号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の事情からなされたもので、その課題は、電動ガンの基本的構成はそのまま維持して、スイッチングの確実性を確保するとともに安定化の向上を図ることである。また本発明の他の課題は、スイッチ可動部の移動方向を制限してがたをなくすることによりスイッチングの安定性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、エアシリンダー装置の可動部材をモーターによって後退方向へ駆動し、モーターの駆動を引き金操作によって制御する電動ガンについ
て、モーターの駆動部は、可動部材側に設けられている、移動方向に沿ったラックと噛み合うセクターギヤ及びそれと同軸のカムを有し、かつ、スイッチとして、固定状態にある固定スイッチ部と、固定スイッチ部に対する平行移動又は回転運動により開閉可能となる可動スイッチ部を有しており、モーターとスイッチとを連絡し、前記カムにより可動スイッチ部を固定スイッチ部から離す位置へ切り換えるための連絡子を装備し、カムの回転により連絡子の位置を切り換え、可動スイッチ部の平行移動又は回転運動を可能にするという手段を講じている。
【0007】
本発明はエアシリンダー装置により圧縮エアを生成させるものである。エアシリンダー装置の構成はシリンダーとピストンから成り、ピストンを動かして圧縮するのが普通である。しかし、中にはピストンに当たる内側部材を固定し、外側のシリンダーに当たる部材を動かして圧縮するというものもある。本発明は実施形態においてピストンを動かすという記載をしているが、ピストン、シリンダーを可動部材、固定部材の組み合わせと把握することができるので、ピストンかシリンダーかの差はなくなる。
【0008】
前記の作動回路を電気的に制御するスイッチは、ガン本体側に固定された固定スイッチ部と、移動可能に設けられた可動スイッチ部とから成り、固定スイッチ部と可動スイッチ部の接点が接することにより作動回路が通電状態となり、接点が離れることにより作動回路が非通電状態となる構成を有する。この場合、引き金によりスイッチをオン状態に保
ち、引き金操作で引き金とスイッチとの係合が外れ、モーターへの通電が遮断されるようにするという構成を取る。さらに本発明におけるスイッチの可動スイッチ部は、固定スイッチ部に対して平行移動又は回転運動することにより開閉可能となる。これは、平行移動又は回転運動だけで、平行と回転などの異種の運動が複合したような動きを必要としないということであり、このために機械的ながたが減少し、安定性が増すとともに、スイッチングの確実性が向上する。
【0009】
このような固定スイッチと接触してオン状態にある可動スイッチ部を離す位置に切り換え、或いは固定スイッチ部から離れてオフ状態にある可動スイッチ部を接触位置に切り換えるために、駆動部のモーターとスイッチとを連絡子により連絡するもので、駆動部はセクターギヤと同軸のカムを有し、このカムにより連絡子を動作させる。なお、セクターギヤは、例えばピストン側に設けられている、移動方向に沿ったラックと噛み合うギヤであり、歯部と無歯部とを有し、歯部でラックと噛み合っている間にピストンの後退動作が行われ、歯部を脱すると無歯部においてピストンがばねの弾発力によって瞬間的に前進す
る。
【0010】
カムの回転により連絡子の位置を切り換えることで、可動スイッチ部は、固定スイッチ部と接触したオン状態からオフ状態に切り換えられる。オン状態からオフ状態への切り換えだけでなく、逆のオフ状態からオン状態への切り換えをカムによる連結子の切り換えで行うことも可能である。このような逆の切り換えは実施形態として例示していないが、正反対の動作を例えば2個のカムによって行うことは格別のものではない。
【0011】
可動スイッチ部を固定スイッチ部へ接触させる位置に保持するために、可動スイッチ部に掛け止められる掛止片を引き金に軸支し、連結子の位置の切り換えにより前記掛止片を動かし、それにより可動スイッチ部の平行移動を可能にすることができる。この場合、連絡子の動作は、掛止片を介在させて可動スイッチ部に間接的に伝えられることになる。掛止片の役割は、引き金によって直かに可動スイッチ部を接触させる代わりに、可動スイッチ部に接触する部材となることで、それによって連絡子の動きをよりスムーズに可動スイッチ部に伝えられるようにすることである。
【0012】
また、連絡子は一端部にてガン本体側に回転可能に軸支され、中間部にてカムと接触することにより揺動し、先端部の位置が切り換えられるように構成することができる。つまり、この場合の連絡子は一端部を軸支点とする梃子の構成を有し、一端部からカム接触部までのアーム長さと、一端部から先端方の可動スイッチ部若しくは前記掛止片までのアーム長さの比だけ、カムによる動作ストローク及び力が増大することになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記の如く構成され、かつ作用するものであるから、電動ガンにおける、ピストンシリンダー装置による圧縮エア生成と、モーター駆動のための作動回路のスイッチングを引き金操作で行うという基本的構成を維持し、その上でカム及び連絡子によりスイッチの切り換えを行うもので、そのスイッチとして、固定スイッチ部に対する平行移動のみで開閉可能となる可動スイッチ部を備えることにより、平行移動と回転が組み合わされたスイッチよりもがたの発生する余地が格段と減少し、その結果スイッチングの安定性が高まり、延いてはスイッチ寿命の延長、スイッチングの確実性の向上につながるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1ないし図6は、本発明に係る電動ガンの実施形態の例1を示す。例1において、11はエアシリンダー装置であり、シリンダー12は先端に圧縮エアの噴出口13を有し、ガン本体10の銃身14と同軸かつ後方に配置され、シリンダー後部開口から可動部材であるピストン15が前進、後退可能に嵌挿されている。ピストン15は、前端部に設けられたO−リングなどのシール部材16を有し、シリンダー内壁との間の気密的摺動性を得ている。ピストン15の後退によって蓄圧される圧縮ばね17は前部がピストンに取り付けられる一方、後部はガン本体10に固定されているスピンドル18の基部に取り付けられており、蓄圧が解放されると瞬時にピストン15を押し出す強いばね力を有している。また、給弾時に装弾部を開くために、先端に前記噴出口13の外周に挿入してスライド可能な筒部19を有し、後端に駆動部22のタペットピン21と係合して、給弾に必要な距離だけ後退可能とした下向きの係止部23を有するタペット部材20が設けてあり、その前部立ち上がり部は、シリンダー正面壁に当たるようにばね24によって常時付勢されている。
【0015】
駆動部22によるピストン駆動のために、ピストン15の下面に移動方向に沿った、多数の歯を有するラック25が設けられている。なおその第1の歯26は他のラック歯よりも大形として、セクターギヤ27の噛み着きを確実にしている。セクターギヤ27は、歯部28と、ラック歯25とは噛み合わずピストン15の移動を妨げない程度に小径の無歯部29とを有している。即ち、ラック歯25はピストン15を1ストロークだけ後退させるために必要な長さに亘って設けられ、ピストン15の後退移動はセクターギヤ27の歯部28の始端から終端までの噛み合いに伴う回転によって行われる。このようなセクターギヤ27は、減速歯車組構成を有する伝動手段39を介してモーター30に連繋してい
る。32は逆転防止部で、伝動手段中に設けられている。
【0016】
セクターギヤ27は、同軸に設けられているカム33を有しており、カム33は連絡子35のカム受け部34と係合する。連絡子35は後端部36にてガン本体10側に回転可能に軸支されており、中間部37に上記カム受け部34を有し、さらに先端部38にて引き金側構成と連絡し、スイッチングを制御する。なお先端部38には係合ピン38aが側方へ突出するように設けられている。従って、カム33との接触(係合)により、連絡子35は、後端部36を中心として回転可能である。
【0017】
一方、スイッチ40は、可動スイッチ部41と、ガン本体側に固定された固定スイッチ部42とから成り、可動スイッチ部41は固定スイッチ部42に対して前後方向へのみ平行に移動し、この移動によって、固定スイッチ部42と可動スイッチ部41の接点が接することにより作動回路が通電状態となり、接点が離れることにより作動回路が非通電状態となる。可動スイッチ部41は接点から離れる方向へばね43により付勢された状態にあり、この状態においてさらに引き金44との間に設けられた掛止片45を介して可動スイッチ部41を固定スイッチ部42に接触させる方向へ位置付けている。掛止片45は、引き金44の上部に回転可能に設けられている。46は係合部、47は可動スイッチ部側の係合相手であって、掛止片45の係合部46と係合し、また掛止片45は可動スイッチ部側との係合が外れたのち再び係合相手47との係合状態へ復帰可能に設けられている。即ち掛止片45は後方の端部48にて引き金45に回転可能に軸支されており、中間部49にて連絡子35の係合ピン39と係合可能であり、さらに先端の係合部46にて係合相手47と係合可能な構成を有している。また、引き金44も、図示しないばねによって、戻す方向に付勢されている。
【0018】
このような構成を有する本発明の電動ガンの作動について図1ないし図6を参照して説明する。図1は、何も操作していないが、弾丸Bが弾倉に詰め込まれ、駆動部22の作動回路には電源装置からの電力を供給可能な発射準備完了状態を示す。なお、電源装置は任意のもので良いが、銃の操作性、取り扱いの簡便性などの面からは前記ニカド電池など充電式の電池が最適である。
【0019】
引き金44を引くと、それと係合している可動スイッチ部41が前進させられ、固定スイッチ部42と接触してスイッチ40が図2の状態となり(図2)、モーター30が回転し、駆動部22が動作を開始する。それによりセクターギヤ27が回転を開始し(図2)、その歯部28がラック25の第1歯26から噛み合うことにより、ピストン15が後退を開始する(図1〜図2)。
【0020】
さらにセクターギヤ27が回転し、ピストン15が後退を続けると、その間セクターギヤ27と同軸のカム33が連絡子35のカム受け部34と係合し、連絡子35は後端部36を中心に回転して係合ピン38aが下降し、掛止片45の中間部49を押し下げることにより、係合部46が係合相手47との係合から外れる(図3)。その結果、支えを失った可動スイッチ部41はばね43によって後方へ平行移動するようになる(図4)。
【0021】
また、図2から図3にかけての段階では、セクターギヤ27に設けられているタペットピン21が係止部23に係合して、タペット部材20を一時的に後退させ、装弾部50を開くので、1発の弾丸Bが装弾部50へ送り込まれる。弾丸Bは、タペット部材20の前進により筒部19によって前方へ押され、銃身後部の定位置に、発射までの間、保持される。
【0022】
引き金44との係合から外れた可動スイッチ部41は、後方へ平行移動することによ
り、固定スイッチ部42から離れ、接点が開いてモーター30への電力供給が遮断される(図4)。一方、掛止片45は連絡子35の係合ピン39により押し下げられて、可動スイッチ部41の下に係合部46が位置する状態になる。
【0023】
電力供給が遮断されると、モーター30はやがて停止するが、停止するまでの間は慣性回転が持続し、その間ピストン15はさらに後退し続け、遂にはセクターギヤ27の歯部28がピストン15のラック25との噛み合いから外れる状態に到る(図4)。その結
果、ピストン15は圧縮されたばね17の弾発力によって瞬間的に前進し、それにより生成された圧縮エアが噴出口13から噴出し、装弾部50に保持されていた弾丸Bを発射することになる(図5)。
【0024】
モーター30が停止すると、駆動部22は発射準備完了状態に戻り、可動スイッチ部41の係合相手47に掛止片45の係合部46が係合する(図6)。即ちこの状態では、スイッチ40は図1と同様に切れており、ピストン15も前進位置にあり、また引き金44が原位置に復帰するため掛止片45も後退するので係合部46と係合相手47が係合した状態にセットされ、このようにして全ての部分は、図1と同じ発射準備完了状態に戻る(図6)。
【0025】
このように本発明の電動ガンは、モーター30を駆動する作動回路のスイッチ40を平行移動する可動スイッチ部41を有するものによって構成し、セクターギヤ27の回転により、カム33と連絡子35を介してスイッチ40に伝達し、スイッチ40を切ることができるものである。可動スイッチ部41は固定スイッチ部42に対して平行移動し、オフ状態又はオン状態とするので、がたつきがなく、より安定にスイッチ40をより確実に切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電動ガンの発射準備完了状態を示す内部説明図。
【図2】引き金を引きスイッチがオンとなった状態を示す内部説明図。
【図3】カットオフギヤが回転をし始めた状態を示す内部説明図。
【図4】スイッチがオフになり、弾丸が発射された状態を示す内部説明図。
【図5】引き金が元に戻る状態を示す内部説明図。
【図6】1回の作動が完了し、発射準備完了に戻る状態の説明図。
【符号の説明】
【0027】
10 ガン本体
11 エアシリンダー装置
12 シリンダー
15 可動部材としてのピストン
17 圧縮ばね
20 タペット部材
22 駆動部
24、43 ばね
25 ラック
27 セクターギヤ
30 モーター
33 カム
34 カム受け部
35 連絡子
36 後端部
37、49 中間部
38 先端部
38a 係合ピン
40 スイッチ
41 可動スイッチ部
42 固定スイッチ部
44 引き金
45 掛止片
46 係合部
47 係合相手
48 後方の端部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアシリンダー装置の可動部材をモーターによって後退方向へ駆動し、モーターの駆動を引き金操作によって制御する電動ガンであって、
モーターの駆動部は、可動部材側に設けられている、移動方向に沿ったラックと噛み合うセクターギヤ及びそれと同軸のカムを有し、かつ、スイッチとして、固定状態にある固定スイッチ部と、固定スイッチ部に対する平行移動又は回転運動により開閉可能となる可動スイッチ部を有しており、モーターとスイッチとを連絡し、前記カムにより可動スイッチ部を固定スイッチ部から離す位置へ切り換えるための連絡子を装備し、カムの回転により連絡子の位置を切り換え、可動スイッチ部の平行移動又は回転運動を可能にした構成を有する電動ガン。
【請求項2】
可動スイッチ部を固定スイッチ部へ接触させる位置に保持するために、可動スイッチ部に掛け止められる掛止片を引き金に軸支し、連結子の位置の切り換えにより前記掛止片を動かし、それにより可動スイッチ部の平行移動を可能にした請求項1記載の電動ガン。
【請求項3】
連結子は一端部にてガン本体側に回転可能に軸支され、中間部にてカムと接触することにより揺動し、先端部の位置が切り換えられるように構成されている請求項1又は2記載の電動ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−300463(P2006−300463A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125772(P2005−125772)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)