説明

電動コンプレッサ

【課題】電動コンプレッサの効率の低下を抑えつつ静粛性を高めること。
【解決手段】駆動制御部11は、信号波と搬送波とからPWM信号を生成し、駆動部12は、PWM信号による制御に従ってパワー素子13を駆動し、パワー素子13は、駆動部12の制御に従って、蓄電池2から供給される直流電流を通電または遮断し、電動モータ21は、パワー素子13から供給される交流電流によって回転し、スクロール部22を駆動させ、スクロール部22は、電動モータ21により駆動されて冷媒を圧縮する。駆動制御部11は、信号波と搬送波とからPWM信号を生成する際に、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両または家屋に備えられたエアーコンディショナに搭載する電動コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会を実現するために、電気自動車およびハイブリッド車が注目されている。電気自動車およびハイブリッド車では、電動モータの駆動力で冷媒を圧縮するコンプレッサ(電動コンプレッサ)を設けたエアーコンディショナを用いて、車内の空調を行う。
【0003】
車両に搭載される電動コンプレッサには、効率を高めつつも、静粛性も高めることが要求される。一般に、PWM信号(電動モータ制御信号)の搬送波周波数を人間の可聴域を超える程度に高くすると、静粛性が上がる一方で効率は下がり、PWM信号の搬送波周波数を低くするほど静粛性が下がる一方で効率は上がる。
【0004】
そこで、上記の要求に対する従来の電動コンプレッサとして、要求静粛度判定部を備え、要求静粛度スコアに基づいて、PWM信号の搬送波周波数を制御するものがある(特許文献1参照)。より具体的には、この従来の電動コンプレッサでは、電動コンプレッサ制御回路が、要求静粛度スコアが低い場合(要求される静粛性が高い場合)には、要求静粛度スコアが高い場合(要求される静粛性が低い場合)よりも搬送波周波数を高くしてモータ巻線からの放射音を低減させることで静粛性を高める一方で、要求静粛度スコアが高い場合には搬送波周波数を低くしてIGBTのスイッチング損失を抑えることで効率を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電動コンプレッサでは、PWM信号の搬送波周波数が高い場合の効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、電動コンプレッサの効率の低下を抑えつつ静粛性を高めることができる電動コンプレッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電動コンプレッサは、電動モータを駆動するパワー素子と、前記電動モータにより駆動されて冷媒を圧縮するスクロール部と、PWM信号に従って前記パワー素子を駆動する駆動部と、信号波と搬送波とから前記PWM信号を生成する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動コンプレッサの効率の低下を抑えつつ静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電動コンプレッサの構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る拡散例1
【図3】本発明の実施の形態1に係る拡散例2
【図4】本発明の実施の形態1に係るPWM信号
【図5】本発明の実施の形態2に係る電動コンプレッサの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る電動コンプレッサ1の構成を示すブロック図である。なお、図1では、電動コンプレッサ1とともに蓄電池2およびエアコン制御装置(エアコンECU)5も記載する。電動コンプレッサ1は、例えば車両または家屋に備えられたエアーコンディショナに搭載される。
【0013】
図1より、電動コンプレッサ1は、インバータ部3と、圧縮機構部4とを含む。インバータ部3は、駆動制御部11と、駆動部12と、パワー素子13とを含む。また、圧縮機構部4は、電動モータ21と、スクロール部22とを含む。インバータ部3は、電動モータ21に対して駆動制御を行う。圧縮機構部4は、インバータ部3の制御により冷媒を圧縮する。
【0014】
インバータ部3において、駆動制御部11は、電動モータ21の駆動開始を指示する駆動ONのエアコン制御信号がエアコン制御装置5から入力された際に、PWM信号を生成して駆動部12へ出力し、電動モータ21の駆動を開始する制御を行う。また、駆動制御部11は、エアコン制御装置5から駆動OFFのエアコン制御信号が入力された際に、PWM信号を生成して駆動部12へ出力し、電動モータ21の駆動を停止する制御を行う。駆動制御部11は、信号波と搬送波とからPWM信号を生成する。駆動制御部11でのPWM信号の生成の詳細については後述する。
【0015】
駆動部12は、PWM信号を用いた上記制御に従ってパワー素子13を駆動する。すなわち、駆動部12は、駆動制御部11から入力されるPWM信号に従って、パワー素子13を通電または遮断する制御を行う。
【0016】
パワー素子13は、駆動部12の制御に従って、蓄電池2から供給される直流電流を通電または遮断する。これにより、パワー素子13は、蓄電池2から供給される直流電流を交流電流に変換して電動モータ21に供給し、電動モータ21を駆動する。
【0017】
電動モータ21は、パワー素子13から供給される交流電流によって回転し、スクロール部22を駆動させる。
【0018】
スクロール部22は、電動モータ21により駆動されて冷媒を圧縮する。
【0019】
次いで、駆動制御部11でのPWM信号の生成の詳細について説明する。
【0020】
駆動制御部11は、信号波と搬送波とからPWM信号を生成する際に、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する。具体的には、例えば駆動制御部11は、図2および図3に示すように、搬送波周波数を周波数f1と、周波数f1より高い周波数f2との間において所定の時間間隔で変化させてスペクトラム拡散する。この所定の時間間隔は例えば、電動モータ21の1回転時間である。また、周波数f1は例えば5kHzであり、周波数f2は例えば15kHzである。図2には、搬送波周波数を所定の時間間隔でランダムに変化させたスペクトラム拡散を示す(拡散例1)。このようなランダム化は、疑似ランダム系列(PN系列)を用いて行うのが簡易である。また、図3には、搬送波周波数を所定の時間間隔で徐々に増加または減少させたスペクトラム拡散を示す(拡散例2)。
【0021】
駆動制御部11は、信号波と、上記のようにスペクトラム拡散した搬送波周波数を有する搬送波とから、図4に示すようなPWM信号を生成する。図4には、搬送波周波数がf1の際に生成されるPWM信号と、搬送波周波数がf2の際に生成されるPWM信号とを示す。なお、搬送波周波数はキャリア周波数またはスイッチング周波数と称されることがある。また、電動モータ21の回転数は信号波の周期に依存する。
【0022】
このように、本実施の形態によれば、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散するため、搬送波周波数を原因とする電動モータからの騒音は短時間毎に変化して一様に拡散される。これにより、電動モータからの騒音の音圧レベルを下げることができる。一方で、スペクトラム拡散により、PWM信号の搬送波周波数は低い周波数(f1)から高い周波数(f2)まで万遍なく変化するため(図2,3)、電動コンプレッサの効率は平均化されて、効率の低下を抑えることができる。つまり、本実施の形態によれば、電動コンプレッサの効率の低下を抑えつつ静粛性を高めることができる。
【0023】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る電動コンプレッサは車両に搭載されるものである。車両が停止状態にある場合は、車両の乗員は、車両が走行状態にある場合よりも、電動モータ21からの騒音を感じやすくなる。一方で、車両が走行状態にある場合は、車両の乗員は、タイヤからの騒音等に隠れて、電動モータ21からの騒音を感じ難くなる。そこで、本実施の形態では、車両が停止状態にある場合にのみ、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する。
【0024】
図5は、本実施の形態に係る電動コンプレッサ6の構成を示すブロック図である。
【0025】
駆動制御部14には車速情報が入力される。駆動制御部14は、車速が閾値未満で車両が停止状態にある場合に、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する。一方で、車速が閾値以上で車両が停止状態にない場合(車両が走行状態にある場合)には、駆動制御部14は、PWM信号の搬送波周波数を所定の固定周波数にする。この固定周波数は、電動コンプレッサ6の効率を高めることができる、できるだけ低い周波数にするのが好ましい。
【0026】
このように、本実施の形態では、車両が停止状態にある場合にのみPWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散するため、低い搬送波周波数を用いる時間を長くすることができるので、電動コンプレッサの効率の低下をさらに抑えることができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0028】
上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0029】
上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0030】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0031】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、特に、高い静粛性が要求される車両に搭載される電動コンプレッサに好適である。
【符号の説明】
【0033】
1,6 電動コンプレッサ
2 蓄電池
3 インバータ部
4 圧縮機構部
5 エアコン制御装置
11,14 駆動制御部
12 駆動部
13 パワー素子
21 電動モータ
22 スクロール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを駆動するパワー素子と、
前記電動モータにより駆動されて冷媒を圧縮するスクロール部と、
PWM信号に従って前記パワー素子を駆動する駆動部と、
信号波と搬送波とから前記PWM信号を生成する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
前記PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散する、
電動コンプレッサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送波周波数を第1の周波数と前記第1の周波数より高い第2の周波数との間において所定の時間間隔で変化させてスペクトラム拡散する、
請求項1記載の電動コンプレッサ。
【請求項3】
前記制御部は、前記搬送波周波数をランダムに変化させてスペクトラム拡散する、
請求項2記載の電動コンプレッサ。
【請求項4】
前記制御部は、疑似ランダム系列を用いて前記搬送波周波数をランダムに変化させる、
請求項3記載の電動コンプレッサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送波周波数を徐々に増加または減少させてスペクトラム拡散する、
請求項2記載の電動コンプレッサ。
【請求項6】
前記電動コンプレッサは車両に搭載され、
前記制御部は、前記車両が停止状態にある場合にのみ、前記搬送波周波数をスペクトラム拡散する、
請求項1記載の電動コンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62933(P2013−62933A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199358(P2011−199358)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】