説明

電動ステアリングロック装置

【課題】ステアリングシャフトの不意のロックを確実に防ぐことができる電動ステアリングロック装置を提供すること。
【解決手段】雄ネジ部10aを備えて電動モータ8によって回転駆動されるシャフト10と、雄ネジ部10aに螺合する雌ネジ部を備えてシャフト10の回転に応じて進退動するスライダ9と、該スライダ9の進退動に応じてロック位置とアンロック位置との間を回動可能なロック部材14と、を備えた電動ステアリングロック装置において、前記ロック部材14に設けられた係合部14Cに係合して該ロック部材14をアンロック位置に保持するストッパ18をロック部材14の回転面に対して直交する方向に移動可能に設けるとともに、該ストッパ18を係合方向に付勢するスプリング19を設け、スライダ9に設けられた操作部9cによってストッパ18を移動させて該ストッパ18をロック部材14の係合部14Cに対して係脱させるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時にステアリングホイールの回転を電動でロックするための電動ステアリングロック装置(ESL)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で駐車時にステアリングホイールの回転を電動でロックするための電動ステアリングロック装置を備えるものがある。
【0003】
斯かる電動ステアリングロック装置として、例えば特許文献1には、雄ネジ部を備えて電動モータによって回転駆動されるシャフトと、該シャフトの前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を備えてシャフトの回転に応じて進退動するロックストッパと、該ロックストッパにピンを介して連結されてステアリングシャフトの凹溝に係脱するロックバーを備えたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−036110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において提案された電動ステアリングロック装置においては、経年劣化等によってピンが破損すると、ロックバーの移動を規制することができなくなり、ロックバーに何らかの負荷が加わったために該ロックバーがロック位置に移動すると、ステアリングシャフトが不意にロックされる可能性がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、アンロック位置にあるロック部材のロック位置への移動を防いでステアリングシャフトの不意のロックを確実に防ぐことができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
雄ネジ部を備えて電動モータによって回転駆動されるシャフトと、
前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を備えて前記シャフトの回転に応じて進退動するスライダと、
該スライダの進退動に応じてステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を回動可能なロック部材と、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材に設けられた係合部に係合して該ロック部材をアンロック位置に保持するストッパをロック部材の回転面に対して直交する方向に移動可能に設けるとともに、該ストッパを係合方向に付勢する付勢手段を設け、
前記スライダに設けられた操作部によって前記ストッパを移動させて該ストッパを前記ロック部材の係合部に対して係脱させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ロック部材に移動阻止部を設け、該ロック部材がロック位置からアンロック位置まで移動する際に前記ストッパが前記移動阻止部に当接してその係合方向への移動が阻止され、前記ロック部材のアンロック位置への回動を許容するよう構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ロック部材をロック位置方向に付勢する付勢手段を設けるとともに、前記スライダに設けられた連結孔内に前記ロック部材の連結部を係合させて前記スライダと前記ロック部材とを連結し、
前記連結孔を、前記ロック部材の係合部と前記ストッパとの係合が解除されるまで前記スライダの前記ロック部材に対する相対移動を許容するよう前記スライダの進退方向に長い長孔としたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ロック部材の回転面を挟んで一方側に前記スライダの前記操作部を設け、他方側に前記ストッパを付勢する前記付勢手段を設けるとともに、
前記ストッパを前記ロック部材の回転面に直交する方向に前記スライダと重なる位置で進退動するよう配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ロック部材がアンロック位置に移動した状態では、ストッパがロック部材に係合して該ロック部材のロック方向への移動を阻止するため、ロック部材がアンロック位置に保持され、ステアリングシャフトの不意のロックが確実に防がれて高い安全性が確保される。
【0012】
又、ストッパは、ロック部材を回動させるスライダに設けられた操作部によってロック部材に対して係脱するよう動作するため、ストッパを動作させるためのアクチュエータ等を別途設ける必要がなく、構造の単純化とコストダウンを図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ロック部材がロック位置からアンロック位置まで回動する途中で、スライダの操作部がストッパを非係合位置から係合位置へと移動させるよう動作するが、ストッパはロック部材の移動阻止部に当接して係合位置への移動が阻止され、ロック部材がアンロック位置に回動してロック部材の係合部とストッパとが係合可能な状態になると、ストッパは付勢手段の付勢力によって係合位置に移動してロック部材をアンロック状態に保持する。即ち、スライダがロック部材をロック位置からアンロック位置まで回動させる範囲だけ移動すれば、ストッパも非係合位置から係合位置まで移動するため、スライダの移動範囲を大きくすることなくストッパを動作させることが可能となり、当該電動ステアリングロック装置の小型化が図られる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ロック部材とスライダとが相対移動可能に連結されているため、ロック部材にストッパが係合している状態であっても、スライダはアンロック位置からロック位置に向かって移動することができ、その際、ストッパを係合位置から非係合位置に向けて動作させることができる。そして、ロック部材の係合部とストッパとの係合が解除されると、ロック部材は付勢手段の付勢力によってロック位置方向に回動し、その連結部がスライダの連結孔の縁に当接し、スライダがロック位置に移動することによってロック部材もロック位置へと回動する。即ち、スライダがロック部材をアンロック位置からロック位置まで回動させる範囲だけ移動すれば、ストッパも係合位置から非係合位置まで移動するため、スライダの移動範囲を大きくすることなくストッパを動作させることができ、当該電動ステアリングロック装置の小型化が図られる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、ストッパをロック部材の回転面に直交する方向にスライダと重なる位置で進退動するよう配置したため、当該電動ステアリングロック装置の小型化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る電動ステアリングロック装置のカバーとプリント基板を取り外して示す平面図である。
【図3】本発明に係る電動ステアリングロック装置要部の破断斜視図である。
【図4】(a)は本発明に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す要部平面図、(b)は同要部断面図である。
【図5】(a)は本発明に係る電動ステアリングロック装置のロック状態からアンロック状態に移行する途中の状態を示す要部平面図、(b)は同要部断面図である。
【図6】(a)は本発明に係る電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す要部平面図、(b)は同要部断面図である。
【図7】(a)は本発明に係る電動ステアリングロック装置のアンロック状態からロック状態に移行する途中の状態を示す要部平面図、(b)は同要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図、図2は同電動ステアリングロック装置のカバーとプリント基板を取り外して示す平面図、図3は同電動ステアリングロック装置要部の破断斜視図、図4(a)は同電動ステアリングロック装置のロック状態を示す要部平面図、図4(b)は同要部断面図、図5(a)は同電動ステアリングロック装置のロック状態からアンロック状態に移行する途中の状態を示す要部平面図、図5(b)は同要部断面図、図6(a)は同電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す要部平面図、図6(b)は同要部断面図、図7(a)は同電動ステアリングロック装置のアンロック状態からロック状態に移行する途中の状態を示す要部平面図、図7(b)は同要部断面図である。
【0019】
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって不図示のステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回転をロック/アンロックするものであって、円筒状の不図示のステアリングコラムに取り付けられている。尚、図示しないが、ステアリングコラムにはステアリングシャフトが回転可能に挿通しており、このステアリングシャフトの上端にはステアリングホイールが結着され、同ステアリングシャフトの下端部はステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回転操作すれば、その回転はステアリングシャフトを経てステアリングギヤボックスに伝達され、該ステアリングギヤボックス内に設けられたラック軸が車幅方向に移動し、その移動がタイロッドを介して操舵輪である左右の前輪に伝達されて該前輪が転舵される。
【0020】
而して、電動ステアリングロック装置1は、図1に示すように、カバー2と、該カバー2内に収容されるベース3と、該ベース3に組み付けられるロック機構4とプリント基板5等によって構成されている。
【0021】
上記カバー2は、非磁性体であるマグネシウム合金等の金属によって矩形ボックス状に成形されており、その相対向する側面の下部両側には円孔状のピン孔2a(図1には2つのみ図示)が形成されている。
【0022】
前記ベース3は、カバー2にその下面開口部から組み込まれる部材であって、その相対向する側部の両側(カバー2の前記ピン孔2aに対応する箇所)には円孔状のピン孔3a(図1には2つのみ図示)が形成されている。そして、このベース3には、モータ収容部3A、ギヤ収容部3B、互いに離間して立設された一対の軸受支持ブロック3C、これらの軸受支持ブロック3Cの間に長手方向に形成された直線状のレール状凹部3D、3本の円柱状の基板支持ボス3E、ストッパ保持ブロック3F等が一体に形成されている。尚、図1及び図2に示すように、ベース3の側部にはL字状に屈曲する保持プレート6がその円孔6aに挿通するネジ7によって取り付けられている。
【0023】
ところで、ベース3に組み込まれる前記ロック機構4は、駆動源である電動モータ8と、該電動モータ8の出力軸8aと平行な方向(図2の上下方向)に移動可能に支持されたスライダ9と、該スライダ9の移動方向に配されたシャフト10、電動モータ8の出力軸8aの端部に結着された小径のピニオンギヤ11、シャフト10の一端に結着された大径のホイールギヤ12、ベース3に回動軸13によって回動可能に軸支されたロック部材14等によって構成されている。
【0024】
上記スライダ9には雌ネジ部9aが電動モータ8の出力軸8aと平行に貫設されており、この雌ネジ部9aには前記シャフト10の長手方向中間部に形成された雄ネジ部10aが螺合している。そして、シャフト10のスライダ9から突出する両端部は、ベース3に形成された前記軸受支持ブロック3Cの上端の凹部3bに嵌め込まれた軸受15によって回転可能に支持されている。ここで、スライダ9にはその移動方向(図2の上下方向)に長い長孔状の連結孔9bが形成されており、スライダ9の上面には位置検出用の磁石16が埋設されている。又、スライダ9の下部にはブロック状の凸部9Aが下方に向かって一体に突設されており、この凸部9Aの端面には図4(a)に示すように斜面状の操作部9cが形成されている。
【0025】
又、前記ロック部材14には、図1及び図3に示すように径方向外方に向かって枝状に延びる当接部14A、連結部14B、係合部14C及びロック部14Dが形成されており、係合部14Cの外端面は移動阻止部14aを形成している。このロック部材14には円孔状の軸挿通孔14bが形成されており、この軸挿通孔14bに挿通する前記回動軸13によってロック部材14がベース3の側部に回動可能に軸支されるとともに、ロック部材14は、回動軸13に巻装された付勢手段としてのスプリング17によってロック方向(図4(b)の反時計方向)に付勢されている。このようにロック部材14がベース3に回動可能に軸支された状態では、図4(b)に示すように、該ロック部材14の連結部14Bはスライダ9に形成された連結孔9bに係合しており、ロック部14Dはベース3の底部に形成された貫通孔3cに臨んでいる。
【0026】
而して、以上のように構成されたロック機構4の電動モータ8は、図2及び図3に示すようにベース3のモータ収容部3Aに嵌め込まれて横置き状態で収容され、該電動モータ8の出力軸8aに結着されたピニオンギヤ11はベース3のギヤ収容部3Bに収容される。
【0027】
又、スライダ9は、これに螺合挿通するシャフト10の両端を軸受15を介してベース3の軸受支持ブロック3Cによって支持することによってベース3に移動可能に支持され、その下部に突設された凸部9Aをベース3のレール状凹部3Dに嵌合させることによって回り止めがなされつつ、レール状凹部3Dにガイドされながらシャフト10の長手方向(図2の上下方向)に沿って移動することができる。尚、スライダ9の浮き上がりは前記保持プレート6によって防がれる。そして、シャフト10の端部に結着された前記ホイールギヤ12は、図2に示すようにベース3のギヤ収納部3Bに収納され、このホイールギヤ12と前記ピニオンギヤ11とは互いに噛合している。
【0028】
ところで、ベース3に形成された前記ストッパ保持ブロック3Fには横方向に長い長孔状のストッパ保持孔3dが形成されており、ストッパ保持孔3dは、図1及び図3に示すように、ストッパ保持ブロック3Fの側部からレール状凹部3Dまで延設されている。このストッパ保持孔3dにはプレート状のストッパ18が差し込まれている。このストッパ18は、ロック部材14の回転面に対して直交する方向(図4(a)の上下方向)に移動可能に保持されており、これと前記保持プレート6の間に縮装された付勢手段としてのスプリング19によって係合方向(図4(a)の上方)に付勢されている。ここで、図4(a)に示すように、ストッパ18には凸状の当接部18aが形成されており、該ストッパ18の先端には斜めにカットされた斜面部18bが形成されており、この斜面部18bはスライダ9の凸部9Aに形成された斜面状の前記操作部9cに係合している。
【0029】
以上説明したロック機構4とストッパ18がベース3に組み付けられると、図1に示すプリント基板5がベース3に立設された3本の前記基板支持ボス3E上に載置され、該プリント基板5は、これの3箇所に形成された円孔状のネジ挿通孔5aに上方から挿通する不図示のネジを基板支持ボス3Eの上部に形成されたネジ孔3eに締め付けることによってベース3に水平に取り付けられる。尚、図示しないが、プリント基板5の下面のロック位置とアンロック位置に対応する箇所には、スライダ9の上面に埋設された前記磁石16の磁気を検出してロック/アンロックを検出するホール素子等の磁気検出素子が設けられている。
【0030】
而して、ロック機構4とストッパ18及びプリント基板5が組み付けられたベース3は、カバー2の下面開口部からカバー2内に組み込まれ、その側部に形成された計4つのピン孔3aとカバー2の側部に形成され計4つのピン孔2aにピン20(図1参照)をそれぞれ圧入することによってカバー2に固定され、当該電動ステアリングロック装置1の組立作業が完了する。尚、このように電動ステアリングロック装置1が組み立てられた状態においては、図4(a)に示すように、ロック部材14の回転面を挟んで一方側にスライダ9の操作部9cが配置され、他方側にストッパ18を付勢するスプリング19が配置されており、ストッパ18はロック部材14の回転面に直交する方向にスライダ9と重なる位置で進退動するよう配置されている。
【0031】
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の動作(ロック/アンロック動作)を図4〜図7に基づいて以下に説明する。
【0032】
不図示のエンジンが停止している状態では、図4に示すように、スライダ9は図4の左限のロック位置にあって、スプリング17によって図4の反時計方向に付勢されているロック部材14の連結部14Bはスライダ9の連結孔9bの縁に当接するとともに、ロック部材14の当接部14Aはベース3の底面の貫通孔3cの縁に当接しているため、ロック部材14は図示のロック位置にある。このようにロック部材14がロック位置にあるときには、該ロック部材14のロック部14Dが図4(b)に示すようにベース3の貫通孔3cから外部に突出して不図示のステアリングシャフトの凹溝に係合するため、ステアリングシャフトの回転がロックされる。このようにステアリングシャフトの回転がロックされると、該ステアリングシャフトの上端に結着された不図示のステアリングホイールを回転操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。尚、このロック状態においては、ストッパ18はロック部材14の係合部14Cに係合しない非係合位置にある。
【0033】
上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチをON操作し、電動ステアリングロック装置1が外部のコントローラからアンロック信号を受信すると、プリント基板5に設けられた不図示の制御部によって電動モータ8が駆動され、該電動モータ8の出力軸8aが一方向に回転駆動される。すると、電動モータ8の出力軸8aの回転はピニオンギヤ11とホイールギヤ12によって減速されてシャフト10に伝達されるため、該シャフト10が回転駆動される。
【0034】
上述のように、シャフト10が回転駆動されると、該シャフト10の雄ネジ部10aに螺合する雌ネジ部9aが設けられたスライダ9がアンロック方向(図5の矢印方向)に移動し、該スライダ9の連結孔9bの縁に係合するロック部材14がスプリング17の付勢力に抗して回動軸13を中心として図5の矢印方向(時計方向)に回動する。又、同時にスライダ9の凸部9Aに形成された操作部9cに前端の斜面部18bが係合するストッパ18がスプリング19の付勢力によって係合方向(図5(a)の上方)に移動し、図5(a),(b)に示すように該ストッパ18の当接部18aがロック部材14の移動阻止部14aに当接する。
【0035】
上述のように、ストッパ18の当接部18aがロック部材14の移動阻止部14aに当接すると、ストッパ18の係合方向への移動が阻止され、ロック部材14はストッパ18に係合しない非係合状態が維持されるため、ロック部材14のそれ以上の回動が許容される。そして、スライダ9が更にロック方向(図5の矢印方向)に移動すると、該スライダ9の連結孔9bの縁に連結部14Bが係合するロック部材14がスプリング17の付勢力に抗して回動軸13を中心として図5の矢印方向(時計方向)に図6に示すアンロック位置まで回動する。このアンロック状態では、図6に示すようにロック部材14の係合部14Cがストッパ18から外れるために該ロック部材14の移動阻止部14aとストッパ18の当接部18aとの当接が解除され、ストッパ18はスプリング19の付勢力によって係合方向に移動してロック部材14の係合部14Cに係合するため、ロック部材14のロック方向(図6の反時計方向)への回動が阻止され、該ロック部材14はアンロック状態が維持される。このため、ステアリングシャフトの不意のロックが確実に防がれて高い安全性が確保される。
【0036】
そして、ロック部材14が図6に示すアンロック位置にあると、該ロック部材14のロック部14Dは図6(b)に示すようにベース3の貫通孔3cからベース3内に没入して不図示のステアリングシャフトの凹溝との係合が解除されるため、ステアリングシャフト(ステアリングホイール)は自由に回転することができ、運転者によるステアリング操作が可能となる。
【0037】
その後、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、電動ステアリングロック装置1が外部のコントローラからロック信号を受信し、プリント基板5に設けられた不図示の制御部が電動モータ8を起動して出力軸8aを逆方向に回転駆動する。すると、電動モータ8の出力軸8aの回転はピニオンギヤ11とホイールギヤ12によって減速されてシャフト10に伝達されるため、該シャフト10が回転駆動され、その雄ネジ部10aに螺合する雌ネジ部9aが設けられたスライダ9がロック方向(図7の矢印方向)に移動する。
【0038】
上述のようにスライダ9がロック方向に移動すると、該スライダ9の凸部9Aに形成された斜面状の操作部9cに先端の斜面部18bが係合するストッパ18がスプリング19の付勢力に抗して非係合方向(図7(a)の矢印方向)に移動する。このとき、ロック部材14の係合部14Cにはストッパ18が係合しているため、ロック部材14は回動が規制されてアンロック位置に保持されているが、スライダ9には長孔状の連結孔9bが形成されているため、ロック部材14の回動がロックされていても、スライダ9のみがロック方向(図7の矢印方向)に移動することができる。
【0039】
その後、スライダ9がロック方向に更に移動し、このスライダ9の移動に連動してストッパ18が非係合方向(図7の矢印方向)に更に移動し、該ストッパ18とロック部材14の係合部14Cとの係合が図7に示すように解除されると、ロック部材14はスプリング17の付勢力によって回動軸13を中心として図7(b)の反時計方向(矢印方向)に回動する。そして、スライダ9がロック位置まで移動すると、図4に示すようにロック部材14もロック位置まで回動し、該ロック部材14の連結部14Bがスライダ9の連結孔9bの縁に係合するロック状態となり、このロック状態ではロック部材14のロック部14Dが図4(b)に示すようにベース3の貫通孔3cから外部に突出して不図示のステアリングシャフトの凹溝に係合するため、ステアリングシャフトの回転がロックされる。このようにステアリングシャフトの回転がロックされると、該ステアリングシャフトの上端に結着された不図示のステアリングホイールを回転操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。
【0040】
以上のように、本発明に係る電動ステアリングロック装置1によれば、ロック部材14がアンロック位置に移動した状態では、ストッパ18がロック部材14に係合して該ロック部材14のロック方向への移動を阻止するため、ロック部材14がアンロック位置に保持され、ステアリングシャフトの不意のロックが確実に防がれて高い安全性が確保される。
【0041】
又、ストッパ18は、ロック部材14を回動させるスライダ9の凸部9Aに設けられた操作部9cによってロック部材14に係脱するよう動作するため、ストッパ18を動作させるためのアクチュエータ等を別途設ける必要がなく、構造の単純化とコストダウンを図ることができる。
【0042】
更に、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ロック部材14がロック位置からアンロック位置まで回転する途中で、スライダ9の操作部9cがストッパ18を非係合位置から係合位置へと移動させるよう動作するが、ストッパ18はロック部材14の移動阻止部14aに当接して係合位置への移動が阻止され、ロック部材14がアンロック位置に回動して該ロック部材14の係合部14Cとストッパ18とが係合可能な状態になると、ストッパ18はスプリング19の付勢力によって係合位置に移動してロック部材14をアンロック状態に保持する。即ち、スライダ9がロック部材14をロック位置からアンロック位置まで回転させる範囲だけ移動すれば、ストッパ18も非係合位置から係合位置まで移動するため、スライダ9の移動範囲を大きくすることなくストッパ18を動作させることが可能となり、当該電動ステアリングロック装置1の小型化が図られる。
【0043】
因みに、ロック部材14をストッパ18によってアンロック位置に保持しようとした場合、ロック部材14がアンロック位置に移動した後、ストッパ18を動作させてロック部材14の係合部14Cに該ストッパ18が係合するよう構成する必要がある。この場合、スライダ9は、ロック部材14をアンロック位置まで移動させた後に更に移動してストッパ18を動作させる必要があるため、スライダ9の作動範囲が大きくなり、ステアリングロック装置1が大型化するという問題が発生するが、本発明によれば前述のように構成することによって電動ステアリングロック装置1の小型化を図ることができる。
【0044】
又、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ロック部材14とスライダ9とがスライダ9の長孔状の連結孔9bを介して相対移動可能に連結されているため、ロック部材14にストッパ18が係合している状態であっても、スライダ9はアンロック位置からロック位置に向かって移動することができ、その際、ストッパ18を係合位置から非係合位置に向けて動作させることができる。そして、ロック部材14の係合部14Cとストッパ18との係合が解除されると、ロック部材14はスプリング17の付勢力によってロック位置方向に回動し、その連結部14Bがスライダ9の連結孔9bの縁に当接し、スライダ9がロック位置に移動することによってロック部材14もロック位置へと回動する。即ち、スライダ9がロック部材14をアンロック位置からロック位置まで回動させる範囲だけ移動すれば、ストッパ18も係合位置から非係合位置まで移動するため、スライダ9の移動範囲を大きくすることなくストッパ18を動作させることができ、当該電動ステアリングロック装置1の小型化を図ることができる。
【0045】
因みに、ロック部材14をアンロック位置からロック位置へと移動させる場合、先ず、ストッパ18を動作させてロック部材14とストッパ18との係合を解除した後、ロック部材14をロック位置側へと動作させる必要がある。この場合、スライダ9は、ストッパ18を係合位置から非係合位置に移動させた後に更に動作してロック部材14をアンロック位置からロック位置に回動させる必要があるため、スライダ9の作動範囲が大きくなって電動ステアリングロック装置1が大型化するという問題があるが,本発明によれば、前述のように構成することによって電動ステアリングロック装置1の小型化を図ることができる。
【0046】
そして、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ストッパ18をロック部材14の回転面に直交する方向にスライダ9と重なる位置で進退動するよう配置したため、当該電動ステアリングロック装置1の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電動ステアリングロック装置
2 カバー
2a カバーのピン孔
3 ベース
3A ベースのモータ収容部
3B ベースのギヤ収容部
3C ベースの軸受支持ブロック
3D ベースのレール状凹部
3E ベースの基板支持ボス
3F ベースのストッパ保持ブロック
3a ベースのピン孔
3b ベースの凹部
3c ベースの貫通孔
3d ベースのストッパ保持孔
3e ベースのネジ孔
4 ロック機構
5 プリント基板
6 保持プレート
6a 保持プレートの円孔
7 ネジ
8 電動モータ
8a 電動モータの出力軸
9 スライダ
9A スライダの凸部
9a スライダの雌ネジ部
9b スライダの連結孔
9c スライダの操作部
10 シャフト
10a シャフトの雄ネジ部
11 ピニオンギヤ
12 ホイールギヤ
13 回動軸
14 ロック部材
14A ロック部材の当接部
14B ロック部材の連結部
14C ロック部材の係合部
14D ロック部材のロック部
14a ロック部材の移動阻止部
14b ロック部材の軸挿通孔
15 軸受
16 磁石
17 スプリング(付勢手段)
18 ストッパ
18a ストッパの当接部
18b ストッパの斜面部
19 スプリング(付勢手段)
20 ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジ部を備えて電動モータによって回転駆動されるシャフトと、
前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を備えて前記シャフトの回転に応じて進退動するスライダと、
該スライダの進退動に応じてステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を回動可能なロック部材と、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ロック部材に設けられた係合部に係合して該ロック部材をアンロック位置に保持するストッパをロック部材の回転面に対して直交する方向に移動可能に設けるとともに、該ストッパを係合方向に付勢する付勢手段を設け、
前記スライダに設けられた操作部によって前記ストッパを移動させて該ストッパを前記ロック部材の係合部に対して係脱させるようにしたことを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記ロック部材に移動阻止部を設け、該ロック部材がロック位置からアンロック位置まで移動する際に前記ストッパが前記移動阻止部に当接してその係合方向への移動が阻止され、前記ロック部材のアンロック位置への回動を許容するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ロック部材をロック位置方向に付勢する付勢手段を設けるとともに、前記スライダに設けられた連結孔内に前記ロック部材の連結部を係合させて前記スライダと前記ロック部材とを連結し、
前記連結孔を、前記ロック部材の係合部と前記ストッパとの係合が解除されるまで前記スライダの前記ロック部材に対する相対移動を許容するよう前記スライダの進退方向に長い長孔としたことを特徴とする請求項1又は2記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項4】
前記ロック部材の回転面を挟んで一方側に前記スライダの前記操作部を設け、他方側に前記ストッパを付勢する前記付勢手段を設けるとともに、
前記ストッパを前記ロック部材の回転面に直交する方向に前記スライダと重なる位置で進退動するよう配置したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電動ステアリングロック装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−112134(P2013−112134A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259608(P2011−259608)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)