説明

電動ドライバ

【課題】工具ホルダを、工具の挿入方向とは反対に操作することによってロック解除可能なセルフロック式とする。
【解決手段】電動ドライバは、挿入方向14にドライバビットを収容する収容スペース12と、収容スペースに半径方向に凹設した長孔18とを有するスピンドル11と、長孔に位置し、長孔の被駆動側端部領域21と長孔の駆動側端部領域20との間を移動することができる遮断体16と、半径方向に当接して収容スペースに遮断体を強制的に係合させ、ロック位置で長孔の被駆動側端部領域にオーバラップし、収容スペースとの係合が解除され、遮断体の半径方向移動が自由になるように、挿入方向とは反対にばね22のばね力に抗して変位可能な半径方向ストッパ31と、駆動側で遮断体に後方から係合し、遮断体により直接に挿入方向にばねのばね力に抗して長孔の駆動側端部領域とオーバラップした位置から変位可能なブラケット23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドライバ、特に、工具の挿入方向とは反対に操作することによってロック解除可能なセルフロック式工具ホルダを有する電動ドライバに関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明による電動ドライバは、スピンドル、遮断体、軸線方向に変位可能な半径方向ストッパ、ばね、およびブラケットを有する。スピンドルは、作動軸線に沿って配向され、被駆動側が開放され、挿入方向にドライバビットを収容するためのシリンダ状または角柱状の収容スペースと、収容スペースに半径方向に収容スペースまで貫通する長孔とを有する。遮断体は長孔に配置され、収容スペースに侵入しており、長孔の被駆動端側の領域と長孔の駆動端側の領域との間を移動することができる。遮断体は、半径方向ストッパに半径方向に当接して収容スペース内に強制的に侵入させられている。半径方向ストッパは、ロック位置で長孔の被駆動端側の領域にオーバラップし、ばねのばね力に抗して、挿入方向とは反対に変位可能であり、これにより、遮断体は、収容スペースへの侵入が解除され半径方向移動が自由になる。ブラケットは遮断体に駆動側から当接し、遮断体を介して間接的に、ばねのばね力に抗して、長孔の駆動端側の領域とオーバラップした位置から挿入方向に変位可能である。長孔の駆動端側の領域に中空スペースが半径方向に隣接しており、遮断体は、中空スペースに進入して、収容スペースを完全に離れることができる。また、ストッパは、挿入方向とは反対に変位され、中空スペースを長孔の被駆動端に半径方向に隣接させて解放することができる。
【0003】
ブラケットは、長孔の被駆動側またはその近傍の基本位置へ遮断体を押し込む。遮断体はこの基本位置ではストッパに規制されて半径方向に逃れることができず、収容スペース内に侵入することによって工具を遮断する。
【0004】
工具の取外しは、挿入方向とは反対にストッパを変位させることによって得られ、これにより、遮断体はもはや半径方向に規制されなくなる。工具の挿入時には、ブラケットは遮断体と共にばね作用に抗して挿入方向に変位される。長孔の駆動端側の領域に到達すると、遮断体は半径方向に逃れることができ、工具のための収容スペースを解放することができる。
【0005】
一構成では、ばねは挿入方向にブラケットで支持され、挿入方向とは反対方向に、ストッパに接続したリングによって支持されている。
【0006】
一構成では、ブラケットは、スピンドルを包囲し、作動軸線に沿って可動であり、長孔を有するスリーブとして構成されており、遮断体は長孔に侵入する。
【0007】
一構成では、スピンドル、ブラケットおよびばねを包囲する操作スリーブは、半径方向内側に突出したリングを備え、このリングの内面は半径方向ストッパを構成している。操作スリーブは、挿入方向にリングに隣接し、半径方向に、少なくとも収容スペースに係合する遮断体の係合深さだけ作動軸線に対して、半径方向ストッパに対してよりも大きい間隔を有している。
【0008】
次に添付の図面に関して複数の実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電動ドライバを示す概略図である。
【図2】ロックされた工具を有する工具ホルダの縦断面図である。
【図3】工具挿入時の工具ホルダを示す縦断面図である
【図4】工具取外し際の工具ホルダを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
同じ、または機能が同じ素子には、他に指示しない限り図面に同じ符号を付す。
【0011】
図1は、電動ドライバ1を概略的に示す。この電動ドライバ1は、ドライバビット3を収容するための工具ホルダ2を有する。電動ドライバ4は、動力伝達装置を介して工具ホルダ2に連結されており、作動時に作動軸線5を中心として回転駆動される。電動ドライバ1のケーシング6には、電動ドライバ1をガイドするためのグリップ7と、使用者が電動ドライバ1を作動するためのシステムスイッチ8とが設けられている。
【0012】
図2、図3および図4は、挿入された工具3を有する工具ホルダ2、挿入時の工具ホルダ2、取外し時の工具ホルダ2の縦断面図をそれぞれ例示的に示す。工具ホルダ2は、特に市販のドライバビット3のために設計されており、工具ホルダ2の角柱シャフト9には環状溝10が設けられている。
【0013】
工具ホルダ2のスピンドル11は、駆動側でモータ4に連結されており、モータ4は、作動軸線5を中心としてスピンドル11を回転駆動することができる。スピンドル11には被駆動側にシャフト9のための収容スペース12が設けられている。収容スペース12はシャフト9に対して相補的に、例えば角柱状に構成されており、スピンドル11の被駆動側端13は開口されている。使用者は、作動軸線5に沿って挿入方向14に収容スペース12に工具を挿入することができる。
【0014】
工具ホルダ2には収容スペース12で工具3をロックするためのセルフロック式ロック15が設けられており、このロック15は使用者の操作により解除可能である。工具3のロックは、溝10にはまり込む遮断体16によって行われる。遮断体16は、図示のように、例えばボールによって構成されている。
【0015】
スピンドル11の中空領域の壁17には長孔18が設けられている。この長孔18は収容スペース12まで貫通している。遮断体16は、外側から半径方向に長孔18に挿入され、長孔18を通って収容スペース12に侵入する。長孔18の横断面は、半径方向19に作動軸線5に向けて徐々に狭くなっており、これにより、遮断体16が収容スペース12に落下することが防止される。遮断体16は、作動軸線5に沿って長孔18の駆動端20側の領域から被駆動端21側の領域まで移動させることができる。作動軸線5に沿った長孔18の寸法は、遮断体16の対応した寸法よりも大きい。例示的な長孔18は、幅よりも長さが大きい。
【0016】
遮断体16は半径方向19に外側に持ち上げることができ、これにより、収容スペース12への侵入を解除することができる。持ち上げは、特にシャフト9によって行うことができる。
【0017】
ばね22は、挿入方向14とは反対に長孔18の被駆動端21に向けて遮断体16を間接的に押圧する。すなわち、ばね22は、軸線方向に可動なブラケット23に作用し、ブラケット23は遮断体16に駆動側から当接する。ブラケット23は、例えば図示のようにスピンドル11で支承されたスリーブ24を備え、スリーブ24には長孔25が形成されている。スリーブ24の長孔25は、スピンドル11の長孔18と同形状であってもよい。遮断体16は半径方向に長孔25に侵入する。ブラケット23の駆動側端部26は、被駆動側すなわち、挿入方向14とは反対に向く側で、遮断体16に当接することができる。例示的なスリーブ24は、被駆動側端部で半径方向外側に折り返されたカラー28を備え、このカラー28によってばね22が支持される。ばね22は、例えば、スリーブ24を締め付けるコイルばねである。
【0018】
工具3の挿入時に、遮断体16は、工具3の端面によって長孔18の内部で挿入方向14に変位される(図3参照)。このとき、ブラケット23は遮断体16に連動され、ばね22のばね力に抗して変位される。長孔18の駆動端20側の領域で、遮断体16は半径方向19に移動して中空スペース29へ逃れる。遮断体16は、少なくとも収容スペース12に侵入しなくなるまで半径方向外側に逃れることができる。シャフト9は、溝10が遮断体16の軸方向位置に到達し溝10に侵入して再び収容スペース12に入り込むまで、遮断体16の横を通過して押し込まれる。ブラケット23は、ばね22が締め付けられるか、または実施形態に示すように遮断体16が長孔18の被駆動端21に当接するまで、工具3と共に挿入方向14とは反対に遮断体16を変位させる。
【0019】
リング30が、長孔18の被駆動端21側の領域の軸線方向位置に設けられている。リング30の内面は半径方向ストッパ31を形成しており、ストッパ31は、遮断体16の半径方向外側への移動を制限する。ストッパ31と作動軸線5との半径方向間隔は、遮断体16がストッパ31に当接して収容スペース12に侵入するように寸法決めされている。ブラケット23によって被駆動端21側の領域に保持された遮断体16は、半径方向ストッパ31により半径方向に逃れることができず、溝10に侵入した状態に保持され、これにより工具3を工具ホルダ2にロックする(図2)。長孔18とオーバラップしたロック位置から、リング30を挿入方向14とは反対に変位させることができる。ロック解除位置で、リング30は長孔18、特に長孔18の被駆動端21側の領域とオーバラップしない(図4)(ここで「オーバラップする」とは、軸方向に完全に重なることをいうものとする)。遮断体16は、被駆動端21側の領域でも半径方向19に収容スペース12から中空スペース32に逃れることができる。リング30は、例えば操作スリーブ33に結合されており、使用者は操作スリーブ33を挿入方向14とは反対に変位させ、このことによって、工具3を、ロック状態から解除し挿入方向14とは反対に取り外すことができる。
【0020】
リング30は、ばね22によって挿入方向14に押圧されている。例えば、操作スリーブ33によってリング30を挿入方向14とは反対に変位させた場合、ばね22が締め付けられる。使用者が操作スリーブ33を解放するとすぐにリング30の半径方向ストッパ31はロック位置に戻る。したがって、基本位置では、すなわち、使用者による作用がない場合には、遮断体16はブラケット23によって被駆動端21側の領域に保持されるとともに、半径方向ストッパ31によって収容スペース12に侵入した状態に保持される(図2参照)。
【0021】
例示的に負荷されたばね22は、被駆動側端部34でブラケット23、例えばブラケット23のカラー28に結合され、駆動側端部35でリング30に結合されている。リング30は、カラー28の挿入方向14反対側に配置される。駆動側に設けられた軸線方向ストッパ36は挿入方向14にリング30の移動を制限する、すなわち、ばね力に抗してリング30をロック位置に保持する。リング30と堅固に結合された操作スリーブ33は、例えば駆動側に設けられた軸線方向ストッパ36に当接する。挿入方向14とは反対のブラケット23の移動は、遮断体16によって制限されている。さらにブラケット23は、基本位置で駆動側に設けられた軸線方向ストッパ37、例えばスナップリングに当接している。
【0022】
本発明は上記実施形態に限定されない。ボール状の遮断体16の代わりに、軸線方向に可動な他の遮断体、例えばローラ状の遮断体を使用することもできる。作動軸線5に対して平行に配向された長孔18が好ましいが、代替的にコイル状に作動軸線5の周囲に延在させてもよい。2つの遮断体16および2つの長孔18の代わりに、それぞれ1つまたはそれぞれ3つ以上を設けてもよい。スピンドル11、ブラケット23、ばね22、リング30および操作スリーブ33は、スピンドル11の旋回運動に適合させて円筒状の構成されているが、非回転対称的な形態に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 電動ドライバ
2 工具ホルダ
3 ドライバビット
4 モータ
5 作動軸線
6 ケーシング
7 グリップ
8 システムスイッチ
9 角柱シャフト
10 環状溝
11 スピンドル
12 収容スペース
14 挿入方向
15 ロック
16 遮断体
17 壁
18 長孔
19 半径方向
20 長穴18の駆動端
21 長穴18の被駆動端
22 ばね
23 ブラケット
24 スリーブ
25 長孔
28 カラー
29 中空スペース
30 リング
31 ストッパ
32 中空スペース
33 操作スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動軸線(5)に沿って配向され、被駆動側が開かれ、挿入方向(14)にドライバビットを収容するためのシリンダ状または角柱状の収容スペース(12)と、半径方向に該収容スペース(12)まで貫通する長孔(18)とを有するスピンドル(11)、
前記長孔(18)に配置され、前記収容スペース(12)に侵入しており、前記長孔(18)の被駆動端(21)側の領域と前記長孔(18)の駆動端(20)側の領域との間を移動することができる遮断体(16)、
ロック位置で、前記長孔(18)の被駆動端(21)側の領域とオーバラップし前記遮断体(16)を、半径方向に当接することにより前記収容スペース(12)内に強制的に侵入させるとともに、前記遮断体(16)が前記収容スペース(12)内への侵入を解除されて自由に半径方向に移動ができるように、ばね(22)のばね力に抗して挿入方向(14)と反対の方向に向かって移動することのできる半径方向ストッパ(31)、及び、
遮断体(16)に駆動側で当接し、ばね(22)のばね力に抗して、前記遮断体(16)を介して間接的に、前記長孔(18)の駆動端(20)側の領域とオーバラップする位置から挿入方向(14)に変位可能なブラケット(23)
を備えることを特徴とする電動ドライバ。
【請求項2】
前記長孔(18)の駆動端(20)側の領域に中空スペース(29)が半径方向に隣接しており、前記遮断体(16)が、前記中空スペース(29)に侵入して前記収容スペース(12)を完全に離れることができる、請求項1に記載の電動ドライバ。
【請求項3】
前記ストッパ(31)は、前記挿入方向(14)とは反対に変位され、中空スペース(32)を前記長孔(18)の被駆動端(21)の前記半径方向(19)に隣接させて解放する、請求項1または2に記載の電動ドライバ。
【請求項4】
前記ばね(22)が前記挿入方向(14)に前記ブラケット(23)で支持され、前記挿入方向(14)とは反対方向に、前記ストッパ(31)に接続したリング(30)によって支持されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電動ドライバ。
【請求項5】
前記ブラケット(23)が、前記スピンドル(11)を包囲し、前記作動軸線(5)に沿って可動な、長孔(25)を有するスリーブ(24)として構成されており、前記遮断体(16)が前記長孔(25)に侵入するようになっている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電動ドライバ。
【請求項6】
前記スピンドル(11)、前記ブラケット(23)および前記ばね(22)を包囲する操作スリーブ(33)が、半径方向内側に突出したリング(30)を備え、該リングの内面が半径方向ストッパ(31)を構成している、請求項1から5までのいずれか一項に記載の電動ドライバ。
【請求項7】
前記操作スリーブ(33)が、前記リング(30)と前記挿入方向(14)に隣接し、少なくとも前記遮断体(16)の前記収容スペース(12)への侵入深さだけ、前記作動軸線(5)に対する半径方向間隔が、前記半径方向ストッパ(31)に対してよりも大きい、請求項6に記載の電動ドライバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245611(P2012−245611A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118821(P2012−118821)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN