説明

電動パワーステアリング装置

【課題】コントロールユニットの放熱性を向上させる。
【解決手段】電動モータ7と、コントロールユニット8とにより構成され、前記電動モータ7は、筒部を有するモータハウジング7a,7bに収容され、前記コントロールユニット8は、モータハウジング7a,7bの軸方向の出力軸7cとは反対側に配置されたECUハウジング8aと、該ECUハウジング8aの内部に収容され電動モータ7を駆動制御するMOSFET12を有する電力変換回路26と、ECUハウジング8aの内部に収容されMOSFET12等を制御する制御回路10とを備え、MOSFET12の出力端子14u等と電動モータ7の入力端子16u等とを電気接続する第2金属基板15を設け、該第2金属基板15を、モータハウジング7aの内面に当接させ、電動モータ7への通電または通電停止を行う半導体素子により構成したモータリレー18u等を第2金属基板15に実装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵アシストトルクを発生する電動モータと該電動モータをコントロールするコントロールユニットとを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電動パワーステアリング装置は、運転者がステアリングホィールを操作することにより回動するステアリングシャフトの回動方向と回動トルクとを検出し、該検出値に基づいてステアリングシャフトの回動方向と同じ方向へ回動するように電動モータを駆動し、操舵アシストトルクを発生させるように構成されている。この電動モータをコントロールするため、コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)が設けられている。
【0003】
従来の電動パワーステアリング装置のコントロールユニットとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置は、特許文献1の図1に示すように、補助トルクを出力する電動モータ101と、該電動モータ101の回転を減速するためにウォームギヤ114とウォームホィール115とから構成された減速ギヤ112と、電動モータ101の駆動を制御する制御装置120とから構成されている。前記制御装置120は半導体スイッチング素子121,回路基板122,導電板123,カバー124から構成されており、前記制御装置120を前記電動モータ101と前記減速ギヤ112との間に配置することにより、電動パワーステアリング装置を小形化したものである。
【特許文献1】特開2010−269693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、電動モータ101の電機子巻線109の端部には接続端子110が溶接接合され、該接続端子110は回路基板122に接続される一方、該回路基板122には導電板123を経由して発熱部品である半導体スイッチング素子121が接続され、該半導体スイッチング素子121は放熱のためにヒートスプレッダ129を介してカバー体124の内面に固定されている。このため、電動モータ101の電機子巻線109で発生した熱が、接続端子110,回路基板122,導電板123を経由して半導体スイッチング素子121へと移動する。つまり、電機子巻線109の熱が半導体スイッチング素子121に伝達され、電機子巻線109から半導体スイッチング素子121に伝わる熱と該半導体スイッチング素子121が発生する熱とが加算され、これらの熱がヒートスプレッダ129とカバー体124とを介してギヤケース113へ伝わり、該ギヤケース113の外表面から大気中へ放出される。電機子巻線109の熱は、発熱部品である半導体スイッチング素子121を介してギヤケース113へ伝わることになるので、半導体スイッチング素子121の放熱が十分に行われない。
【0005】
そこで本発明は、上記の課題を解決しコントロールユニットまたはモータの放熱が十分に行われるようにした電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータと、該電動モータを制御するコントロールユニットとにより構成され、
前記電動モータは、筒部を有するモータハウジングに収容され、
前記コントロールユニットは、前記モータハウジングの軸方向の出力軸とは反対側に配置されたECUハウジングと、該ECUハウジングの内部に収容され前記電動モータを駆動制御するための半導体スイッチを有する電力変換回路と、該ECUハウジングの内部に収容され前記半導体スイッチ等を制御する制御回路とを備えた電動パワーステアリング装置において、
前記半導体スイッチの出力端子と前記電動モータの入力端子とを電気接続する通電部材を設け、該通電部材の金属板の部分を、前記モータハウジングの内面に当接させ、前記電動モータへの通電または通電停止を行う半導体素子によりモータリレーを構成し、該モータリレーを前記通電部材に実装したことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、モータリレーで発生する熱は、通電部材を介してモータハウジングに伝わり、該モータハウジングの外部から大気中へ放出される。また、電動モータの電機子巻線で発生した熱も、入力端子から通電部材へ伝わり、該通電部材からモータハウジングへ伝わり、該モータハウジングの外部から大気中へ放出される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記通電部材として金属基板を用い、該金属基板を保持するため絶縁材料からなる保持部材を設け、該保持部材を前記モータハウジングに結合することにより、前記金属基板が前記保持部材と前記モータハウジングとの間に挟まれて前記モータハウジングに押圧されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、金属基板がモータハウジングに押圧保持されるので、金属基板とモータハウジングとが密着し、金属基板からモータハウジングへ効率よく熱が伝わる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記電動モータは、前記モータハウジングの出力軸側の片方の端部が操舵機構に結合され、片持ち構造であることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、モータハウジングと操舵機構との結合部に対して、ECUハウジングよりも近い位置にあるモータハウジングの内部にモータリレーを配置しているので、重心位置が結合部に近くなり、片持ち構造の電動モータが揺動しにくい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る電動パワーステアリング装置によれば、モータリレーを構成する半導体で発生した熱は通電部材を介してモータハウジングに伝わり、該モータハウジングの外部から大気中へ放出されるため、モータリレーの放熱性が向上する。
【0013】
請求項2に係る電動パワーステアリング装置によれば、金属基板とモータハウジングとが密着して金属基板からモータハウジングへ効率よく熱が伝わるので、モータリレーで発生した熱も電動モータの電機子巻線で発生した熱も、モータハウジングの外部から大気中へ効率よく放出される。また、保持部材による金属基板のモータハウジングへの押圧保持により、金属基板が強固に固定され、金属基板の取り付け性が高まる。
【0014】
請求項3に係る電動パワーステアリング装置によれば、片持ち構造の電動モータの結合部に近い位置にモータリレーが配置されているので、重心位置が電動モータの結合部に近くなり、片持ち構造の電動モータの揺動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電動パワーステアリング装置の要部に係り、保持部材を省略して示す斜視図(実施の形態)。
【図2】電動パワーステアリング装置の要部を示す斜視図(実施の形態)。
【図3】電動パワーステアリング装置の断面図(実施の形態)。
【図4】電動パワーステアリング装置の要部の拡大断面図(実施の形態)。
【図5】電動パワーステアリング装置の外観斜視図(実施の形態)。
【図6】電動パワーステアリング装置における熱の伝達方向と伝達量とに係り、(a)は従来の熱の伝達状態を示す説明図、(b)は本発明における熱の伝達状態を示す説明図(実施の形態)。
【図7】電動パワーステアリング装置における各部の温度変化に係り、(a)は従来の温度変化を示すグラフ、(b)は本発明の温度変化を示すグラフ(実施の形態)。
【図8】電動モータが片持ち構成になっていることを示す構成図(実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態を説明する。
(構成)
自動車の前輪を操舵するための操舵機構を図5に示す。図示しないステアリングホィールに連結されたステアリングシャフト1の下端には図示しないピニオンが設けられ、該ピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。該ラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド2が連結されており、前記ラックはラックハウジング3に覆われている。そして、該ラックハウジング3と前記タイロッド1との間にはゴムブーツ4が設けられている。
【0017】
ステアリングホィールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト1の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ5が設けられ、該トルクセンサ5の検出値に基づいてステアリングシャフト1に操舵補助力を付与する電動モータ7と、該電動モータ7を制御するコントロールユニット(ECU)8とが設けられている。
【0018】
図3に示すように、前記電動モータ7は、筒部を有するモータハウジング7a,7bに収容されている。モータハウジング7aとモータハウジング7bとは軸方向に積み重ねられ、六角穴付ボルト7fにより結合されている。前記モータハウジング7aには隔壁7gが、前記モータハウジング7bには隔壁7hが形成され、隔壁7g,隔壁7hに軸受7i,7jを介して出力軸7cが回転自在に支持されている。該出力軸7cの先端には、ピニオン7dが設けられ、該ピニオン7dは図5のギヤ9の部分を介して前記ステアリングシャフト1に接続されている。このギヤ9のギヤハウジングは、前記ラックハウジング3と一体に形成されている。
【0019】
前記コントロールユニット8は、ECUハウジング8aと、電力変換回路26と、制御回路10とから構成されている。
【0020】
前記ECUハウジング8aは、前記モータハウジング7a,7bの軸方向の出力軸7cとは反対側に配置されており、モータハウジング7aとECUハウジング8aとの間にはOリング28が設けられている。このECUハウジング8aは、後述するMOSFET12を冷却するためのECUヒートシンクを兼ねている。このECUハウジング8aの内部には、内部を軸方向に仕切るための仕切壁29が設けられ、該仕切壁29の上方に電力変換室30が形成され、該仕切壁29の下方であってECUハウジング8aの内部とモータハウジング7aの内部とにわたって制御室31が形成されている。
【0021】
前記電力変換室30には前記電力変換回路26が収容されており、該電力変換回路26は、第1金属基板11に前記電動モータ7を駆動制御するための半導体スイッチとしてのMOSFET12を実装して構成されている。32はアルミコンデンサである。
【0022】
前記制御室31には前記制御回路10が収容されている。該制御回路10は、前記MOSFET12等を制御するものであり、前記モータハウジング7aと前記ECUハウジング8aとの境界位置に配置したプリント基板13に電子部品を実装して構成されている。
【0023】
27は図示しないバッテリに接続されるコネクタであり、該コネクタ27から前記電力変換回路26および前記制御回路10に電力が供給されている。
【0024】
前記制御室31には、前記電動モータ7の電機子巻線7eで発生する熱をモータハウジング7aの外面から放出するための放熱機構が設けられている。図3における放熱機構の部分を抜き出して拡大したものを図4に示す。図4の部分の斜視図を図1に示すように、半導体スイッチであるMOSFET12の出力端子14u,14v,14wと、前記電動モータ7の入力端子16u,16v,16wとが、通電部材としての第2金属基板15に電気的に接続されている。ここで、通電部材とは、金属板の上に絶縁層を形成し該絶縁層の上に回路を構成する配線部分を形成したものを言い、前記第1金属基板11,第2金属基板15は、いずれもアルミニュウム板の上に絶縁層を形成し、該絶縁層の上に銅箔からなる配線パターンを印刷して構成されている。そして、第2金属基板15の一方側(上方)に出力端子14u,14v,14wが結合され、他方側(下方)に入力端子16u,16v,16wが結合され、これらの端子は第2金属基板15上の配線パターンに接続されている。
【0025】
前記第2金属基板15には2つのモータリレー18u,18vが実装されている。これらのモータリレー18u,18vは前記電動モータ7への通電または通電停止を行う半導体素子により構成されている。
【0026】
次に、モータリレー18u,18vの電気的な接続について説明する。第2金属基板15上の配線パターンにより、モータリレー18uは、前記半導体スイッチとしてのMOSFET12の出力端子14uと、前記電動モータ7の入力端子16uとの間に接続され、モータリレー18vは、前記半導体スイッチとしてのMOSFET12の出力端子14vと、前記電動モータ7の入力端子16vとの間に接続されている。そして、半導体スイッチとしてのMOSFET12の出力端子14wと、前記電動モータ7の入力端子16wとは、モータリレーを介在させることなく直接に接続されている。
【0027】
モータリレー18を実装した前記第2金属基板15は、前記第2金属基板15のアルミニュウム板の部分が、モータハウジング7aの内面に押圧保持されている。そして、押圧するために、図2に示す保持部材19が設けられている。該保持部材19は、図1に示すように水平方向に沿って長い3つの接続金具20u,20v,20wを絶縁材料としての樹脂によりモールドしたものである。
【0028】
図2のように、保持部材19は軸方向に沿う板状に形成されており、該保持部材19には、後述するレゾルバ信号端子25の配線スペースを確保するため一方側に2つの凸部19aが形成され、他方側には前記モータリレー18u,18vが入り込む2つの凹部19bが形成されている。保持部材19の下部には水平方向へ突出する取付座19cが形成され、該取付座19cに形成された取付孔にネジ21を挿通させてモータハウジング7aの隔壁7gにねじ込み、該保持部材19をモータハウジング7aに結合することにより、第2金属基板15が保持部材19とモータハウジング7aとの間に挟まれてモータハウジング7aの内面に押圧されている。
【0029】
前記電動モータ7の電機子巻線7eの端部23u,23v,23wが軸方向に沿って出力軸7cのピニオン7dとは反対側へ導かれて隔壁7gを貫通しており、これらの電機子巻線7eの端部23u,23v,23wが、樹脂モールドされた前記3つの接続金具20u,20v,20wの半径方向内側の一方の端部に溶接結合されている。そして、モールドされた3つの接続金具20u,20v,20wの半径方向外側の端部は、ネジ22aとナット22bとを介して前記入力端子16u,16v,16wの下端に接続されている。前記ネジ22aをモータハウジング7aの外部から回動できるように、モータハウジング7aを貫通する作業孔7kが形成されている。
【0030】
図1,図2における符号24はレゾルバであり、24aは電動モータ7の出力軸7cに固定されたロータ、24bは隔壁7gに固定されてロータ24aの回転数を検出するステータである。レゾルバ24が検出した出力軸7cの回転数を制御回路10へ送るため、レゾルバ24とプリント基板13とを接続する6本のレゾルバ端子25が、軸心方向に沿って配置されている。
【0031】
図5における前記電動モータ7の近傍の構成を図8に示すように、モータハウジング7bの出力軸7c側の片方の端部が、操舵機構を構成するギヤ9のギヤハウジングに、図示しないボルトを介して結合され、電動モータ7は片持ち構造になっている。この片持ち構造の電動モータ7の重心位置Gは、ギヤ9とモータハウジング7bとの結合部33の近傍にあり、片持ち構造の電動モータ7の自由端側(コントロールユニット8側)が、矢印で示すように上下左右の全方向へ揺動する。
(作用)
次に、電動パワーステアリング装置の作用を説明する。
【0032】
ステアリングホィールが操作されることによりステアリングシャフト1がいずれかの方向へ回動操作されると、該ステアリングシャフト1の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ5が検出し、該検出値に基づいて制御回路が電動モータ7の駆動操作量を演算し、この演算した数値に基づいて電力変換回路26のMOSFET12により電動モータ7が駆動される。電動モータ7の出力軸7cはステアリングシャフト1を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動され、出力軸7cの回動は、ピニオン7dから図5のギヤ9を介してステアリングシャフト1へ伝達される。
【0033】
この実施の形態によれば、モータリレー18u,18vで発生する熱は、第2金属基板15を介してモータハウジング7aに伝わり、該モータハウジング7aの外部から大気中へ放出され、あるいは図8に破線の矢印で示すようにモータハウジング7bを介してギヤ9へも伝わる。また、電動モータ7の電機子巻線7eで発生した熱も、電機子巻線7eの端部23u,23v,23wから、接続金具20u,20v,20wおよび入力端子16u,16v,16wを介して第2金属基板15へ伝わり、該第2金属基板15からモータハウジング7aへ伝わり、該モータハウジング7aの外部から大気中へ放出され、あるいはモータハウジング7bを介してギヤ9へも伝わる。
【0034】
一方、MOSFET12で発生した熱は第1金属基板11を介してECUハウジング8aに伝達され、該ECUハウジング8aの外部から大気中へ放出される。
【0035】
この電動パワーステアリング装置によれば、モータリレー18u,18vを構成する半導体で発生した熱は第2金属基板15を介してモータハウジング7aに伝わり、該モータハウジング7aの外部から大気中へ放出され、あるいはモータハウジング7bを介してギヤ9へも伝わるため、モータリレー18u,18vの放熱性が向上する。また、モータリレー18u,18vをコントロールユニット8から分離させて第2金属基板15に固定し、該第2金属基板15をモータハウジング7aに収容したので、コントロールユニット8の発熱量が少なくなる。そして、モータリレー18u,18vを半導体素子により構成したので、構造上からリレー内に熱がこもる機械式リレーに比べて第2金属基板15と更にはモータハウジング7aへ熱が伝わり易く、MOSFET12へは熱が伝わりにくくなる。このため、コントロールユニット8の温度上昇が抑制される。更に、本来はECUハウジング8aに収容されるモータリレー18u,18vを、モータハウジング7aに収容するので、モータ7は軸方向に大きくなるが、コントロールユニット9を径方向に小さくすることができる。
【0036】
この実施の形態によれば、第2金属基板15がモータハウジング7aに押圧保持されるので、第2金属基板15とモータハウジング7aとが密着し、第2金属基板15からモータハウジング7aへ効率よく熱が伝わる。また、MOSFET12の出力端子14u,14v,14wと第2金属基板15との接続部(半田付け部)に車両の振動に起因する応力の発生が抑制され、前記接続部の信頼性が向上する。
【0037】
この電動パワーステアリング装置によれば、第2金属基板15とモータハウジング7aとが密着して第2金属基板15からモータハウジング7aへ効率よく熱が伝わるので、モータリレー18u,18vで発生した熱も電動モータ7の電機子巻線7eで発生した熱も、モータハウジング7aの外部から大気中へ効率よく放出され、あるいはモータハウジング7bを介してギヤ9へも伝わる。また、保持部材19による第2金属基板15のモータハウジング7aへの押圧保持により、第2金属基板15が強固に固定され、第2金属基板15の取り付け性が高まる。
【0038】
この実施の形態によれば、図8に示すようにモータハウジング7bと操舵機構のギヤ9のハウジングとの結合部33に対して、ECUハウジング8aよりも近い位置にあるモータハウジング7aの内部にモータリレー18u,18vを配置しているので、重心位置が結合部に近くなり、片持ち構造の電動モータ7が揺動しにくい。
【0039】
この電動パワーステアリング装置によれば、モータリレー18u,18vを固定した第2金属基板15をECUハウジング8aの内部からモータハウジング7aの内部へ移動したことにより、片持ち構造の電動モータ7の結合部に近い位置にモータリレー18u,18vが配置されているので、モータリレー18u,18vが重心位置Gに近くなり、片持ち構造の電動モータ7の揺動が抑制される。
【0040】
半導体スイッチとしてのMOSFET12と電動モータ7の電機子巻線7eとで発生した熱が他の部分へ伝達する際の伝達量の大きさを、従来の場合の図6(a)と本実施の形態の場合の図6(b)とに示す。MOSFET12で発生した熱がいずれも矢印(イ)(ロ)で示すように第1金属基板11を介してECUハウジング(ヒートシンク)8aへ伝達される点については、従来と本実施の形態とで大差がない。一方、電動モータの電機子巻線で発生した熱は、従来は図6(a)に矢印(ハ)(ニ)(ホ)で示すように多くがバスバ端子,モータリレーを介してMOSFETへ流れ、モータリレーで発生した熱も矢印(ホ)で示すようにMOSFETへ流れ、残りの一部が矢印(へ)(ト)で示すようにモータハウジングを介してギヤへ伝達されていた。また、温度が高くなったモータハウジングから温度が低いECUハウジング(ヒートシンク)へも矢印(チ)で示すように熱が伝達されていた。
【0041】
これに対し、本実施の形態では図6(b)に示すように、MOSFET12と電動モータ7の電機子巻線7eとで発生した熱の一部は矢印(リ)(ヌ)で示すように共に中央部の第2金属基板15へ伝達され、該第2金属基板15から矢印(ル)(ヲ)で示すようにモータハウジング7a,7bおよびECUハウジング8aへ伝達され、電機子巻線7eおよびモータリレー18u,18vで発生した熱の残りは矢印(ワ)(カ)で示すようにモータハウジング7a,7bを介してギヤ9へ伝達される。温度が高くなったECUハウジング(ヒートシンク)8aからは、矢印(ヨ)で示すようにモータハウジング7a,7bへ熱が伝達される。
【0042】
MOSFET12では発熱量が多いので、MOSFET12の自己放熱には限界があり、電動モータ7の電機子巻線7eとモータリレー18u,18vとで発生した熱がMOSFET12へ伝達されると、過大な熱がMOSFET12に蓄積されることになり、MOSFET12に蓄熱される熱量が多くなると電動パワーステアリングのフェイルセーフ機能が作用し、電動モータの駆動力を低下させて操舵駆動力を徐々に下げ、最終的には電動モータを停止させることから、ステアリングホィールの操作が重くなる。本実施の形態では電動モータ7の電機子巻線7eとモータリレー18u,18vとで発生した熱は、第2金属基板15を介してモータハウジング7a,7bおよびECUハウジング8aへ伝達されることから、MOSFET12への伝達が抑制され、電動パワーステアリングのフェイルセーフ機能が作用するのを抑制する。
【0043】
半導体スイッチとしてのMOSFET12と電動モータ7の電機子巻線7eおよびモータリレー18u,18vとで発生した熱の伝達による各部の時間と温度との関係を、従来の場合の図7(a)と本実施の形態の場合の図7(b)とに示す。ギヤおよびモータハウジングにおける温度は従来と本実施の形態との間に差はないが、電動モータの入力端子の温度は、従来に対して本実施の形態では温度が低くなっているのがわかる。
【0044】
なお、通電部材として第2金属基板15を用いたが、金属基板以外の部材を用いることもできる。また、第2金属基板15を保持部材19を介してモータハウジング7aに押圧しているが、金属基板をボルトにより直接にモータハウジング7aに押圧してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ステアリングシャフト
7…電動モータ
7a,7b…モータハウジング
8…コントロールユニット
8a…ECUハウジング
10…制御回路
12…MOSFET(半導体スイッチ)
14u,14v,14w…出力端子
15…第2金属基板(通電部材・金属基板)
16u,16v,16w…入力端子
18u,18v…モータリレー
19…保持部材
26…電力変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータと、該電動モータを制御するコントロールユニットとにより構成され、
前記電動モータは、筒部を有するモータハウジングに収容され、
前記コントロールユニットは、前記モータハウジングの軸方向の出力軸とは反対側に配置されたECUハウジングと、該ECUハウジングの内部に収容され前記電動モータを駆動制御するための半導体スイッチを有する電力変換回路と、該ECUハウジングの内部に収容され前記半導体スイッチ等を制御する制御回路とを備えた電動パワーステアリング装置において、
前記半導体スイッチの出力端子と前記電動モータの入力端子とを電気接続する通電部材を設け、該通電部材の金属板の部分を、前記モータハウジングの内面に当接させ、前記電動モータへの通電または通電停止を行う半導体素子によりモータリレーを構成し、該モータリレーを前記通電部材に実装したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記通電部材として金属基板を用い、該金属基板を保持するため絶縁材料からなる保持部材を設け、該保持部材を前記モータハウジングに結合することにより、前記金属基板が前記保持部材と前記モータハウジングとの間に挟まれて前記モータハウジングに押圧されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記電動モータは、前記モータハウジングの出力軸側の片方の端部が操舵機構に結合され、片持ち構造であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60119(P2013−60119A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200058(P2011−200058)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】