説明

電動ピペット

ボディ(1)を含み、該ボディ(1)は、その上部分に作動システムを収容し、該作動システムは、モータ(3)および作動ロッド(4)を含み、モータ(3)が使用者の要求で作動ロッド(4)にピペットの長手方向軸線(X−X)に沿う平行運動を与え、前記ボディ(1)は、その下部分(2)に作動ロッド(4)によって作動されることのできる可動システムを収容する、電動ピペットにおいて、少なくとも前記作動ロッド(4)の平行運動中、作用を及ぼす作動ロッド(4)の回転遊びを取るためのデバイスを含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体サンプルを収集し、そしてそれを他の容器に移すための、実験室で用いられる電動ピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電動ピペットは先行技術で知られている。ピペットボディの下部分に収容されるピペットのプランジャーシステムは、ピペットボディの長手方向に移動することのできる作動ロッドによって作動される。作動ロッド自体は、モータを含むアクチュエータによって、使用者が望むように移動する。作動ロッドの端は、プランジャーシステムと接触する。プランジャーシステムは、アクチュエータがロッドを下方に移動させる放出操作中、作動ロッドによって及ぼされた押す作用によって移動される。プランジャーシステムは、吸引操作中、バネによって移動され、前記吸引操作では、アクチュエータがロッドを上方に移動させ、ロッドは、プランジャーシステムの移動を制御するようにプランジャーシステムと接触したままになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の電動ピペットの1つの不利な点は、作動ロッドの移動が、使用者にとって不快である振動と騒音を伴うことである。
【0004】
本発明の目的は、これらの振動および騒音を著しく減じる、および除去さえするための簡単な方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、ボディを含む電動ピペットであって、ボディはその上部分に作動システムを収容し、該作動システムはモータおよび作動ロッドを含み、モータが、使用者の要求で、作動ロッドにピペットの長手方向軸線(X−X)に沿う平行運動を与え、前記ボディは、その下部分に作動ロッドによって作動されることのできる可動システムを収容する、電動ピペットにおいて、電動ピペットは、少なくとも前記作動ロッドの平行運動の間、作用を及ぼす作動ロッドの回転遊びを取るためのデバイスを含む、ことを特徴とする。
【0006】
前記遊び取りデバイスは、
−作動ロッドを取り囲むナットを含み、該ナットの内側で作動ロッドが自由に摺動できるが回らず、
−支持リングを含み、該支持リングはピペットボディに固定され、且つ機能的な回転遊びをもって、支持リングと作動システムの平行運動の固定された部分の下端との間にナットを保持し、
−第1の端がナットに固定され、第2の端がボディに固定された弾性ストリップを含み、該ストリップは、一定の予荷重状態にあり、且つ回転トルクをナットに及ぼす。
【0007】
ストリップの第1の端は、ナットの側壁に形成された開口部にフック止めされるのがよい。
【0008】
ストリップの第2の端は、ボディの側壁に形成された凹部の中に挿入されるのがよい。
【0009】
遊び取りデバイスは、好ましくはモータの雌ネジのネジ山に加えられる応力と同じ方向に回転トルクを及ぼす。
【0010】
理解されるように、本発明は、作動ロッドの回転遊びを取ることを可能にするデバイスを有するピペットの作動システムを提供することからなる。
【0011】
発明者は、除去されるべき主な動揺源は、作動ロッドが、常に、作動ロッドが移動するときに振動をもたらす或る回転遊びを有していることであることに気付いた。これらの振動は、ピペットの他の部分の全てに伝えられる。使用者の不都合に加えて、これらの振動が、ロッドの移動の正確さを変化させ、且つピペットの性能を制限する一因となる、なぜならば、これらの振動が、ロッド、従って可動システムをわずかに平行運動させるからである。その上、これらの振動がプランジャーに伝えられるとき、特にピペットの多数の使用の後、これらの振動が引き起こす磨耗のため、可動システムの作動の密封を損傷することがある。
【0012】
本発明による作動ロッドの回転遊びを取るためのデバイスは、これらの動揺振動を除去することを可能にし、且つ、提案される好ましい実施形態は、簡単な設計で、ピペットのコストを過度に増大させることなくこの結果を得ることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面を参照して与えられる以下の記載から本発明をより良く理解することができる。
【0014】
図1は、ピペットのボディおよびその作動システムのみを示す、本発明によるピペットの部分的な長手方向断面図を示す。ピペットのボディ1は、その内部空間の下部分2に、液体吸引および放出操作を行う図示されない可動プランジャーシステムを包囲する。ボディ1の上部分の内部空間では、ボディ1がピペットの作動システムを支持し、該作動システムの本質的な部分は、モータおよびそのネジ−ナットシステムであり、これらを以下で簡単のために「モータ3」で表し、ボディ1は作動ロッド4を支持し、モータ3が、ピペットの長手方向軸線X−Xに沿う作動ロッド4の移動を制御する。作動ロッド4は、好ましくは、ロッド4と可動システムの上面との間の接触をなす端ピース5によって終っており、作動ロッド4が、液体の放出中、可動システムの下方移動を制御し、且つ液体の吸引中、可動システムの上方移動を止める。上で引用した要素は全て、電動ピペットについて完全に在来型である。
【0015】
本発明によれば、図3に見られるように、作動ロッド4は厳密に円形横断面を有しない。作動ロッド4はナット6の中央開口部の中に挿入され、作動ロッド4はナットの内側で、ロッドの作用をピペットの可動システムに作用を及ぼすように自由に摺動できるが、中央開口部がロッド4の横断面の形状と協働して、作動ロッド4の回転を防止する形状を有するという事実のために、作動ロッド4は回転しない。ピペットが組み立てられるとき、ナット6は、モータ3の下端7(あるいはより一般的には、作動システムの平行運動の固定された部分の下端)と支持リング8の上面との間に、軸線X−Xの周りのナット6の回転を考慮に入れる機能的遊びをもって、配置される。支持リング8は、その周囲に縁9を有し、該縁9は、ピペットが組み立てられるとき、ピペットのボディ1の内壁11に形成されたそれに対応する溝10に嵌め込まれる。このようにして、支持リング8は、軸線X−Xに沿って平行運動することができず、ナット6の下方移動を前述の機能的な遊びによって許される移動に制限する。同様に、ナット6の上方移動がモータ3の下端7によって制限される。
【0016】
デバイスは、バネを形成する弾性ストリップ12によって完成され、ストリップ12の第1の端は、ナット6の側壁14に形成された開口部13にフック止めされ、ストリップ12の第2の端はボディ1の側壁に形成された凹部15の中に挿入される。
【0017】
組立体の形態は、ピペットの組み立て後、ストリップ12が、ナット6によって作動ロッド4に常にトルクを及ぼす予荷重状態にあるように、考慮される。このトルクは、本発明によれば、特にモータ3によって与えられたロッド4の移動中、ロッド4の回転遊びを補償することを可能にする。このようにして、そのような遊び補償デバイスのない先行技術のピペットについてこの回転遊びの存在により、ロッド4の移動の振動、騒音、および不正確さを抑制することができる。
【0018】
ストリップ12をナット6およびボディ1に固定するための図示した方法は、勿論限定しない一例のものに過ぎない。好ましくはピペットの完全な分解を考慮に入れた、いかなる他の信頼性のある方法も適当である。
【0019】
上述したネジ6およびストリップ12を含む遊び補償デバイスは、本発明の実施形態の好ましい例であるが、そのような補償を得られるであろう他のタイプのデバイスが本発明の範囲内に入ることが理解されなければならない。
【0020】
有利には、補償デバイスによって及ぼされるトルクは、モータの雌ネジ山に及ぼされる応力と同じ方向に加えられなければならない。このようにして、補償デバイスによって加えることを必要とされる応力が制限される。さもなければ、この応力は、明らかにより大きくなるであろう。
【0021】
かくして、モータのネジ山が右巻きネジ山である図3および4に示す例では、ストリップ12およびナット6によって及ぼされるトルクは、矢印16に沿って、すなわち図3におけるようにデバイスを見たときに反時計方向に及ぼされる。図4では、矢印17が、プランジャーシステムを含むピペットの下部分によって作動ロッド4に加えられる応力の方向を示す。
【0022】
本発明によるデバイスは、様々なタイプの作動システム、例えば、
−「回転を平行運動に変換する」統合運動変換システムを有するステッピングモータ
−統合線形システムを有する直流モータ
−独立したネジ−ナットシステムに連結された電気モータ
からなるシステムを有するピペットに適用することができることが理解されなければならない。
【0023】
記載し示した例では、ロッド4の回転遊びを補償するためのデバイスは、絶えずその作用を及ぼすが、ロッド4の移動中だけ、この遊び補償を及ぼすようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による電動ピペットの一例を部分的な長手方向断面図で示す。
【図2】図1のIIの詳細を同様に示す。
【図3】同じピペットをIII−III線に沿った断面図で示す。
【図4】同じピペットの分解斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ(1)を含み、
該ボディは、その上部分に作動システムを収容し、
該作動システムは、モータ(3)と、作動ロッド(4)と、を含み、
モータ(3)が、使用者の要求で、作動ロッド(4)にピペットの長手方向軸線(X−X)に沿う平行運動を与え、
ボディ(1)は、その下部分(2)に作動ロッド(4)によって作動されることのできる可動システムを収容する、電動ピペットにおいて、
前記電動ピペットは、少なくとも前記作動ロッド(4)の平行運動中、作用を及ぼす作動ロッド(4)の回転遊びを取るためのデバイスを含む、
ことを特徴とする電動ピペット。
【請求項2】
前記遊び取りデバイスは、
作動ロッド(4)を取り囲むナット(6)を含み、前記ナットの内側で、作動ロッド(4)が自由に摺動できるが、回転せず、
支持リング(8)を含み、前記支持リングはピペットボディ(1)に固定され、且つ機能的な回転遊びをもって、支持リング(8)と作動システムの平行運動の固定された部分の下端との間にナット(6)を保持し、
弾性ストリップ(12)を含み、前記弾性ストリップの第1の端はナットに固定され、第2の端はボディ(1)に固定され、前記ストリップ(12)は、一定の予荷重状態にあり、且つ回転トルクをナット(6)に及ぼす、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動ピペット。
【請求項3】
ストリップ(12)の第1の端は、ナット(6)の側壁(14)に形成された開口部(13)にフック止めされる、ことを特徴とする請求項2に記載の電動ピペット。
【請求項4】
ストリップ(12)の第2の端は、ボディ(1)の側壁に形成された凹部(15)の中に挿入される、ことを特徴とする請求項2または3に記載の電動ピペット。
【請求項5】
遊び取りデバイスは、モータ(3)の雌ネジのネジ山に与えられる応力と同じ方向(16)に回転トルクを及ぼす、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動ピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542003(P2008−542003A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512835(P2008−512835)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062566
【国際公開番号】WO2006/125794
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(503285760)
【Fターム(参考)】