説明

電動ブレーキ装置

【課題】規制ピンからシリンダ本体への荷重の伝達を抑制して、シリンダ本体のピストン摺動面の変形を阻止すること。
【解決手段】シリンダ本体82内に収容され、前進することにより第1液圧室98bに液圧を発生させる第1スレーブピストン88bと、第1スレーブピストン88bに駆動力を伝達するモータと、シリンダ本体82の軸方向と直交する方向に挿入固定され、第1液圧室98bに外部から液圧が作用したときに第1スレーブピストン88bの後退位置を規制する規制ピン102とを有し、規制ピン102の外面に形成される第1溝部202a及び第2溝部202bとシリンダ本体82の内周壁83との間で空隙204が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用ブレーキシステムに組み込まれる電動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のブレーキ機構として、例えば、負圧式ブースタや油圧式ブースタを用いた倍力装置が知られている。この種の倍力装置として、近年、電動モータを倍力源として利用した電動倍力装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作によって進退動作する主ピストン(入力ピストン)と、前記主ピストンと相対変位可能に外嵌された筒状のブースタピストンと、前記ブースタピストンを進退動作させる電動モータとを備えた単一のまとまった機器として構成される。
【0004】
この場合、主ピストン及びブースタピストンをマスタシリンダのピストンとして、それぞれの前端部をマスタシリンダの各圧力室に臨ませ、ブレーキペダルから主ピストンに付与される入力推力と、電動モータからブースタピストンに付与されるブースタ推力とによって、マスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−23594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された電動倍力装置において、例えば、マスタシリンダの主ピストンが臨む圧力室に対して外部から液圧が付与された場合、前記液圧の作用によって主ピストンがブースタピストン側に向かって後退するが、前記主ピストンが後退しすぎるとマスタシリンダ内における最低液圧を確保することが困難となる。この場合、主ピストンの後退を、例えば、規制手段等によって規制することが考えられるが、この規制手段に付与される荷重がシリンダ本体に伝達されてシリンダ本体内のピストン摺動面が変形するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ピストンの変位が規制ピンによって規制されたとき、前記規制ピンからシリンダ本体への荷重の伝達を抑制して、シリンダ本体のピストン摺動面の変形を阻止することが可能な電動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、ホィールシリンダに接続される出力液圧室と、前進することにより前記出力液圧室に液圧を発生させるピストンと、シリンダ本体内に前記ピストンを収容するシリンダと、前記ピストンに駆動力を伝達することによって前記ピストンを前進駆動させるモータと、前記出力液圧室に外部から液圧が作用したときに前記ピストンの後退を規制する規制手段とを有する電動ブレーキ装置であって、前記規制手段は、前記シリンダに対して、前記シリンダ本体の軸方向と直交する方向に挿入固定される規制ピンからなり、前記シリンダ本体の内周壁と前記規制ピンの外面との間で空隙を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、規制ピンの外面とシリンダ本体の内周壁とを離間させる空隙を設けることにより、規制ピンからシリンダ本体へ荷重を伝達する荷重伝達点をシリンダ本体の有効内径から径方向外側に離間させることができ、シリンダ本体の内周壁の変形を抑制することができる。この結果、本発明では、シリンダ本体の内周壁(ピストン摺動面)における所望の摺動性能を確保することができる。
【0010】
また、本発明は、規制ピンが、シリンダ本体を貫通して固定されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、シリンダ本体を貫通して規制ピンが固定されることにより、規制ピンへ付与される荷重を2点で分散支持することができる。
【0012】
さらに、本発明は、規制ピンの挿入方向において、シリンダ本体によって支持される規制ピンの支持部の軸方向長さを、空隙の軸方向長さよりも大きく設定したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、シリンダ本体によって支持される規制ピンの支持部の軸方向長さを、空隙の軸方向長さよりも大きく設定することにより、規制ピンの所望の支持強度を確保することができる。
【0014】
さらにまた、本発明は、規制ピンが支持されるシリンダ本体の内周壁を拡径した拡径部を形成し、拡径部と規制ピンの外面との間で空隙が形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、シリンダ本体の内周壁に拡径部を形成することにより、規制ピンに対する加工が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0016】
またさらに、本発明は、シリンダ本体の内周壁に対応する部分における規制ピンの外径を縮径した縮径部を形成し、縮径部とシリンダ本体の内周壁との間で空隙が形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、規制ピンの外面に縮径部を形成することにより、シリンダ本体の内周壁への加工が不要となり、製造コストを低減することができる。なお、縮径部は、例えば、溝、テーパ、全体縮径、又は、その複合形状によって形成されるとよい。
【0018】
またさらに、本発明は、規制ピンの軸方向に沿った一端側の形状と他端側の形状とが対称に形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、規制ピンの一端側と他端側とをそれぞれ対称形状とすることにより、シリンダ本体への組付時における方向性を無くし、誤組付を防止することができる。
【0020】
またさらに、本発明は、規制ピンの中央部とピストンとの当接を規制する規制部をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、規制部を設けることにより、規制ピンへ曲げモーメントが付与されることを抑制することができる。
【0022】
またさらに、本発明は、規制ピンの頭部を押さえる押さえ部材を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、規制ピンの押さえ部材を設けることにより、規制ピンの抜け止め及び位置規制を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ピストンの変位が規制ピンによって規制されたとき、前記規制ピンからシリンダ本体への荷重の伝達を抑制して、シリンダ本体のピストン摺動面の変形を阻止することが可能な電動ブレーキ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る電動ブレーキ装置が組み込まれた車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示す電動ブレーキ装置の斜視図である。
【図3】シリンダ機構の分解斜視図である。
【図4】(a)は、シリンダ本体内に収納された第1スレーブピストンが、規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)の部分拡大縦断面図、(c)は、(a)に示す規制ピンの正面図である。
【図5】(a)は、第1スレーブピストンが、変形例に係る規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)の部分拡大縦断面図、(c)は、変形例に係る規制ピンの正面図である。
【図6】(a)は、第1スレーブピストンが、円柱状の規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)の部分拡大縦断面図、(c)は、円柱状の規制ピンの正面図である。
【図7】(a)は、規制ピンの誤組付防止の第1例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)に示す規制ピンの正面図である。
【図8】(a)は、規制ピンの誤組付防止の第2例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)に示す規制ピンの正面図である。
【図9】(a)は、規制ピンの誤組付防止の第3例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、(b)は、(a)に示す規制ピンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電動ブレーキ装置が組み込まれた車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
【0027】
図1に示す車両用ブレーキシステム10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
【0028】
このため、図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、基本的に、操作者によってブレーキペダル12が操作されたときにその操作を入力する入力装置14と、ブレーキ液圧を制御する電動ブレーキ装置16と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置18(以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを別体として備えて構成されている。
【0029】
これらの入力装置14、電動ブレーキ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された液圧路によって接続されていると共に、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14と電動ブレーキ装置16とは、図示しないハーネスで電気的に接続されている。
【0030】
このうち、液圧路について説明すると、図1中の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、電動ブレーキ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
【0031】
図1中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、電動ブレーキ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
【0032】
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホィールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホィールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホィールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホィールシリンダ32FLと接続される。
【0033】
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
【0034】
なお、車両用ブレーキシステム10は、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
【0035】
入力装置14は、運転者(操作者)によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。一方のピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結されて直動される。また、他方のピストン40bは、一方のピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
【0036】
この一方及び他方のピストン40a、40bの外周面には、環状段部を介して一対のカップシール44a、44bがそれぞれ装着される。一対のカップシール44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40bとシリンダチューブ38の側端部と間には、他のばね部材50bが配設される。なお、一対のカップシール44a、44bは、シリンダチューブ38の内壁側に環状溝を介して装着されるようにしてもよい。
【0037】
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
【0038】
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第1圧力室56b及び第2圧力室56aが設けられる。第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して接続ポート20bと連通するように設けられ、第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられる。
【0039】
マスタシリンダ34と接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側である下流側の液圧を検知するものである。
【0040】
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側である上流側の液圧を検知するものである。
【0041】
この第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1中において、第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aは、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した弁閉状態をそれぞれ示している。
【0042】
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1中において、第3遮断弁62は、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した弁開状態を示している。
【0043】
ストロークシミュレータ64は、バイ・ワイヤ制御時において、ブレーキのストロークと反力を発生させて、あたかも踏力で制動力を発生させているかのごとく操作者に思わせる装置であり、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が吸収可能に設けられる。
【0044】
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
【0045】
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホィールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bと、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホィールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aとから構成される。
【0046】
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の接続ポート20bと電動ブレーキ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、電動ブレーキ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホィールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
【0047】
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aと電動ブレーキ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、電動ブレーキ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホィールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
【0048】
この結果、液圧路が第1液圧系統70bと第2液圧系統70aとによって構成されることにより、各ホィールシリンダ32RR、32FLと各ホィールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ独立して作動させ、相互に独立した制動力を発生させることができる。
【0049】
図2は、図1に示す電動ブレーキ装置の斜視図である。
この電動ブレーキ装置16は、図2に示すように、電動モータ72及び駆動力伝達部73を有するアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76とを備える。この場合、電動モータ72、駆動力伝達部73、及び、シリンダ機構76は、それぞれ分離可能に設けられる。
【0050】
また、前記アクチュエータ機構74の駆動力伝達部73は、電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78(図1参照)と、この回転駆動力を直線運動(直線方向の軸力)に変換してシリンダ機構74の後記する第1及び第2スレーブピストン88b、88a側に伝達するボールねじ構造体(変換機構)80(図1参照)とを有する。
【0051】
電動モータ72は、図示しない制御手段からの制御信号(電気信号)に基づいて駆動制御される、例えば、サーボモータからなり、アクチュエータ機構74の上方に配置されている。このように配置構成することにより、駆動力伝達部73内のグリス等の油成分が重力作用によって電動モータ72内に進入することを好適に回避することができる。なお、前記電動モータ72は、ねじ部材を介して後記するアクチュエータハウジング75に締結される。
【0052】
駆動力伝達部73は、アクチュエータハウジング75を有し、前記アクチュエータハウジング75内の空間部には、ギヤ機構(減速機構)78、ボールねじ構造体(変換機構)80等の駆動力伝達用の機械要素が収納される。前記アクチュエータハウジング75は、図2に示すように、シリンダ機構76側に配置される第1ボディ75aと、前記第1ボディ75aのシリンダ機構76と反対側の開口端を閉塞する第2ボディ75bとによって分割構成される。
【0053】
図2に示すように、第1ボディ75aのシリンダ機構76側の端部には、フランジ部79が設けられ、前記フランジ部79には、シリンダ機構76を取り付けるための一対のねじ穴(図示せず)が設けられる。この場合、後記するシリンダ本体82の他端部に設けられたフランジ部82aを貫通した一対のねじ部材81aが、前記ねじ穴に螺入されることにより、シリンダ機構76と駆動力伝達部73とが一体的に結合される。
【0054】
図1に示すように、ボールねじ構造体80は、軸方向に沿った一端部がシリンダ機構76の第2スレーブピストン88aに当接するボールねじ軸80aと、前記ボールねじ軸80aの外周面に形成された螺旋状のねじ溝に沿って転動する複数のボール80bと、前記ギヤ機構78のリングギヤに内嵌されて該リングギヤと一体的に回動し、前記ボール80bに螺合される略円筒状のナット部材80cと、前記ナット部材80cの軸方向に沿った一端側及び他端側をそれぞれ回転自在に軸支する一対のボールベアリング80dとを備える。なお、ナット部材80cは、ギヤ機構78のリングギヤの内径面に、例えば、圧入されて固定される。
【0055】
駆動力伝達部73は、このように構成されることにより、ギヤ機構78を介して伝達される電動モータ72の回転駆動力がナット部材80cに入力された後、ボールねじ構造体80によって直線方向の軸力(直線運動)に変換され、ボールねじ軸80aを軸方向に沿って進退動作させる。
【0056】
図3は、シリンダ機構の分解斜視図、図4(a)は、シリンダ本体内に収納された第1スレーブピストンが、規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、図4(b)は、図4(a)の部分拡大縦断面図、図4(c)は、図4(a)に示す規制ピンの正面図である。
【0057】
電動ブレーキ装置16は、電動モータ72の駆動力を、駆動力伝達部73を介してシリンダ機構76の第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aに伝達し、前記第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aを前進駆動させることにより、ブレーキ液圧を発生させるものである。なお、以下の説明において、第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aの矢印X1方向への変位を「前進」とし、矢印X2方向への変位を「後退」として説明する。また、矢印X1は、「前方」を示し、矢印X2は、「後方」を示す。
【0058】
シリンダ機構76は、図3に示すように、第1スレーブピストン88bを含む周辺部品が一体的に組み付けられて構成される第1ピストン機構77aと、第2スレーブピストン88aを含む周辺部品が一体的に組み付けられて構成される第2ピストン機構77bとを備える。第1ピストン機構77aと第2ピストン機構77bとは、後記する連結ピン79を介して一体的に組み付けられて構成される。なお、本実施形態では、シリンダ機構76として、第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aからなる2つのピストンを用いたタンデムタイプで説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、単一の第1スレーブピストン88bのみを用いたものであってもよい。
【0059】
第1ピストン機構77aは、有底円筒状のシリンダ本体82の前方の第1液圧室98b(図1参照)に臨むように配設され、前記シリンダ本体82の内周壁(ピストン摺動面)83に沿って摺動可能に設けられた第1スレーブピストン88bと、シリンダ本体82に固定され、第1スレーブピストン88bの後記する第1フランジ部200a又は第2フランジ部200bに当接することにより第1スレーブピストン88bの移動範囲を規制する規制ピン(規制手段)102と、第1スレーブピストン88bの環状段部に装着される一対のカップシール90a、90bと、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部(底壁)との間に配設され、第1スレーブピストン88bを後方(矢印X2)に向かって押圧する第1スプリング96bを有する。
【0060】
前記規制ピン102は、第1液圧室(出力液圧室)98bに対して、例えば、マスタシリンダ34の第1圧力室(外部)56bから導出した液圧が作用したときに第1スレーブピストン88bの後退を規制する規制手段として機能するものである。
【0061】
図4(c)に示すように、規制ピン102の軸方向に沿った上端部側(一端部側)の外面には、軸方向の両側から徐々に縮径して窪んだ環状の第1溝部202aが形成される。また、規制ピン102の軸方向に沿った下端部側(他端部側)には、第1溝部202aと同様に、軸方向の両側から徐々に縮径して窪んだ環状の第2溝部202bが形成される。なお、第1溝部202a及び第2溝部202bは、シリンダ本体82の内周壁83に対応する部分における規制ピン102の外径を縮径した縮径部として機能するものである。
【0062】
規制ピン102の外面に形成された第1溝部202a及び第2溝部202bは、規制ピン102がシリンダ本体82の軸方向と直交して固定される部位において、シリンダ本体88の内周壁83と直交する径方向でオーバーラップするように形成され、この第1溝部202a及び第2溝部202bとシリンダ本体82の内周壁83との間で空隙204(クリアランス)が形成される。
【0063】
この空隙204を設けることにより、第1スレーブピストン88bと規制ピン102とが当接して規制ピン102に付与された荷重でシリンダ本体82の内周壁83(ピストン摺動面)が変形することを抑制することができる。シリンダ本体82側に伝達する荷重伝達点Aを、シリンダ本体82の有効内径Bから径方向外側の位置に離間させることができるからである。なお、図4(a)において、点Cは、従来から用いられている円柱状の規制ピンを用いた場合、前記規制ピンによってシリンダ本体82側へ荷重が伝達される荷重伝達点を示している。
【0064】
また、図4(a)に示すように、シリンダ本体82に対する規制ピン102の挿入方向において、シリンダ本体82によって支持される規制ピン102の支持部の軸方向長さT1は、前記空隙204の軸方向長さT2よりも大きく設定されている(T1>T2)。このように、支持部の軸方向長さT1を空隙204の軸方向長さT2よりも大きく設定することにより(T1>T2)、規制ピン102の所望の支持強度を確保することができる。
【0065】
図5(a)は、第1スレーブピストンが、変形例に係る規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、図5(b)は、図5(a)の部分拡大縦断面図、図5(c)は、変形例に係る規制ピンの正面図である。
【0066】
図5(c)に示すように、変形例に係る規制ピン102aは、軸方向に沿った上端部側(一端部側)の外面に形成され、徐々に縮径する第1テーパ部210aと、軸方向に沿った下端部側(他端部側)に形成され、徐々に縮径する第2テーパ部210bと、前記第1テーパ部210aと第2テーパ部210bとの間に形成され軸方向に沿って一定の外径からなる縮径中間部210cとによって溝部212が形成される。
【0067】
この溝部212は、シリンダ本体82の内周壁83に対応する部分における規制ピン102aの外径を縮径した縮径部として機能するものである。なお、前記縮径部は、溝部に限定されるものではなく、例えば、溝、テーパ、全体縮径のいずれか一つであってもよく、又はその複合形状であってもよい。
【0068】
この場合、変形例に係る規制ピン102aの外面に形成された溝部212は、規制ピン102aがシリンダ本体82の軸方向と直交して固定される部位において、シリンダ本体88の内周壁83と直交する径方向でオーバーラップするように形成され、この溝部212とシリンダ本体82の内周壁83との間で空隙204(クリアランス)が形成される。
【0069】
このように規制ピン102、102aの外面に、第1溝部202a及び第2溝部202bや溝部212からなる縮径部を形成することにより、空隙204を介して規制ピン102、102aの外面をシリンダ本体82の内周壁83から離間させることができる。この場合、シリンダ本体82の内周壁83に対する加工が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0070】
図6は、通常の円柱体からなる規制ピン102bを用い、シリンダ本体82の内周壁83を加工して空隙204を形成した場合の一例を示したものである。
【0071】
図6(a)は、第1スレーブピストンが、円柱状の規制ピンによって後退位置で規制された状態を示す一部省略拡大縦断面図、図6(b)は、図6(a)の部分拡大縦断面図、図6(c)は、円柱状の規制ピンの正面図である。
【0072】
図6に示すように、規制ピン102bを支持するシリンダ本体82の係止穴208の開口部位に、規制ピン102bの軸心を中心として所定角度だけ傾斜する環状テーパ面214が形成されている。シリンダ本体82の内周壁83に形成された環状テーパ面214と、円柱体からなる規制ピン102bの外周面との間で空隙204が形成される。前記環状テーパ面214は、規制ピン102bが支持されるシリンダ本体82の内周壁83を拡径した拡径部として機能するものである。
【0073】
図5及び図6に示すようにして空隙204を設けることにより、第1スレーブピストン88bと規制ピン102a、102bとが当接して規制ピン102a、102bに付与された荷重によって、シリンダ本体82の内周壁83(ピストン摺動面)が変形することを抑制することができる。この場合、シリンダ本体82側に伝達する荷重伝達点Aを、シリンダ本体82の有効内径Bから径方向外側の位置に離間させることができるからである。
【0074】
図3に戻って、前記規制ピン102は、シリンダ本体82の軸方向と直交する方向に挿入固定される。すなわち、規制ピン102は、シリンダ本体82に組み付けられる際、リザーバポート92bの開口部から挿入され、シリンダ本体82の軸方向と直交する方向に形成されたシリンダ本体82の上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208で、前記規制ピン102の上部及び下端部がそれぞれ挿入固定される(図4(a)参照)。この結果、本実施形態では、上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208を介して、シリンダ本体82と規制ピン102との接触長さを延長することができる。なお、規制ピン102は、シリンダ本体82の係止孔208に対して圧入して固定されてもよい。
【0075】
さらに、規制ピン102の上端部(頭部)は、第2リザーバ84のリザーバ本体85の下面に設けられた連結用脚部85aに当接して抜け止めがなされる。この場合、第2リザーバ84は、規制ピン102の頭部を押さえる押さえ部材として機能するものであり、規制ピン102の抜け止めと位置規制を確実に行うことができる。なお、例えば、連結用脚部85aと規制ピン102の上端部との間にクリアランスを設け、規制ピン102が上方に変位したときに規制ピン102の上端部が連結用脚部85aに当接して抜け止め作用を発揮するようにしてもよい。
【0076】
図3に示すように、第1スレーブピストン88bは、ピストン本体109を有し、前記ピストン本体109の前方及び後方には、ピストン本体109よりも拡径した一対の環状の第1フランジ部200a及び第2フランジ部200bが所定距離だけ離間して形成される。
【0077】
第1フランジ部200aと第2フランジ部200bとの間には、第1スレーブピストン88bの軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔91が形成され、前記貫通孔91には、前記規制ピン102がシリンダ本体82の軸方向と直交する方向から挿入される。この貫通孔91は、図4(a)に示すように、前記第1フランジ部200aから前記第2フランジ部200bまで、第1スレーブピストン88bの軸方向に沿って延在するように形成される。
【0078】
第1フランジ部200aには、第1スレーブピストン88bの後退位置(後退ストロークエンド)で規制ピン102と当接する規制部206が形成される。この規制部206は、貫通孔91に連続してピストン本体109の軸方向と直交する方向に延在するように設けられる(図4(a)参照)。
【0079】
なお、第1スレーブピストン88bの前進側における変位終端位置(前進ストロークエンド)は、第1スレーブピストン88bの軸方向に沿った先端縮径部がシリンダ本体82の底部(内壁)と当接することによって規制される。
【0080】
シリンダ本体82に固定される規制ピン102と当接する規制部206は、第1フランジ部200aに形成されることで、ピストン本体109よりも第1スレーブピストン88bの外周側に設けられる。
【0081】
規制部206は、図4(a)に示すように、貫通孔91を間にした第1フランジ部200aの上部側及び下部側にそれぞれ形成されると共に、貫通孔91を含んで規制ピン102の当接面が構成される。
【0082】
このように、本実施形態では、規制ピン102が、ピストン本体109の貫通孔91のみならず、第1フランジ部200aの規制部206と当接するように設けられることにより、規制ピン102がピストン本体109の図示しない貫通孔(軸方向の長さが第1フランジ部200aまで到達していない長さで形成された図示しない貫通孔)とのみ当接した場合と比較して、第1スレーブピストン88bと規制ピン102との接触長さを延長することができる。
【0083】
換言すると、第1スレーブピストン88bに対する規制ピン102の当接面として、ピストン本体109の貫通孔91の他に、ピストン本体109から半径外方向に突出する第1フランジ部200aの規制部206が加算されるため、この加算分だけ第1スレーブピストン88bと規制ピン102との接触長さを延長することができる。
【0084】
また、規制ピン102が、第1フランジ部200aの規制部206と当接するように設けられることにより、規制ピン102に対して付与される曲げモーメントを抑制することができる。
【0085】
第1スレーブピストン88bの後方には、後記する連結ピストン105の円筒部105aが外嵌された状態で連結ピン79が挿入される挿入孔93が形成される。
【0086】
図3に示すように、第2ピストン機構77bは、第1スレーブピストン88bの後方(矢印X2方向)の第2液圧室98aに臨むように配設される第2スレーブピストン88aと、前記第2スレーブピストン88a前方の軸部に装着されるカップシール90cと、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aとの間に配置され、前記第1スレーブピストン88bと前記第2スレーブピストン88aとを離間する方向に付勢する第2スプリング96aとを含む。なお、図3中に示されるガイドピストン103は、第1ピストン機構77a及び第2ピストン機構77bのアッシー後に組み付けられ、第2スレーブピストン88a後方のロッド部89aの外周面をシールすると共に、第2スレーブピストン88aを直線状に案内する機能を発揮する。
【0087】
さらに、第2ピストン機構77bは、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aとの離間位置を規制するボルト部材100と、連結ピン79によって第1スレーブピストン88bに連結される連結ピストン105と、円弧状に重畳する始端と終端との一部が拡径可能に設けられ、その弾性力によって前記連結ピン79を保持する環状クリップ107とを備える。
【0088】
第2スレーブピストン88aの前方軸部には、ボルト部材100の一端部100bが装着される装着孔89cが形成され、前記第2スレーブピストン88a後方のロッド部89aの内部には、ボールねじ軸80aの一端部が当接する挿通穴89bが形成される。
【0089】
連結ピストン105は、図3に示すように、軸方向に沿った前方部位に設けられ、第1スレーブピストン88bの後方軸部に外嵌される円筒部105aと、前記円筒部105aの軸方向と直交する方向に貫通し連結ピン79が挿入される挿通孔105bと、前記円筒部105aの外周面に形成されて環状クリップ107が装着される装着溝105cと、円筒部105aの軸方向に沿った後方に設けられ前記ボルト部材100の頭部100aが係合する係合孔が形成された係合部105dとを有する。
【0090】
なお、第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、挿通穴89bを介してボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1方向、又は、矢印X2方向に変位するように設けられる。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間した位置に配置される。
【0091】
この第1及び第2スレーブピストン88b、88bの外周面には、それぞれ、後記するリザーバポート92a、92bとそれぞれ連通する第1背室94a及び第2背室94bが形成される(図1参照)。
【0092】
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bと、係止ピン97が挿入されるピン挿入孔95が設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
【0093】
また、シリンダ機構(シリンダ)76は、シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84を有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる(図1参照)。
【0094】
第2リザーバ84は、図3に示すように、リザーバ本体85を有し、このリザーバ本体85の下面には、シリンダ本体85のリザーバポート92a、92bに連結される一対の連結用脚部85a、85b(図5参照)と、両側に相互に対向して配置され、係止ピン97を挿通させる挿通孔111が形成された一対の取付用突起部89a、89b(但し、図3中では、取付用突起部89bの図示を省略している)とが設けられる。この一対の連結用脚部85a、85bの外周面には、リング状のシール部材99がそれぞれ装着され、前記シール部材99は、シリンダ本体82のリザーバポート92a、92bと第2リザーバ84の連結用脚部85a、85bとの接続部位をシールする。
【0095】
シール部材99が装着された第2リザーバ84の一対の連結用脚部85a、85bをシリンダ本体82の一対のリザーバポート92a、92bに挿入して第2リザーバ84を上側から押圧した状態において、リザーバ本体85の一方の連結用突起部89aの挿通孔111、シリンダ本体82のピン挿入孔95、及び、リザーバ本体85の他方の連結用突起部89bの挿通孔111に対してそれぞれ係止ピン97を挿入することにより、シリンダ本体82に対して第2リザーバ84が一体的に組み付けられる。
【0096】
この場合、リング状のシール部材99は、例えば、ゴム等の弾性材料で形成されて抜け止め機能を発揮し、係止ピン97をピン挿入孔95に挿入することにより、第2リザーバ84をシリンダ本体82に対して簡便に組み付けることができる。
【0097】
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24bからホィールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室(出力液圧室)98bと、出力ポート24aからホィールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98aとが設けられる。
【0098】
第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aとの間には、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aとの最大離間位置と最小離間位置とを規制するボルト部材100が設けられ、さらに、第1スレーブピストン88bには、前記第1スレーブピストン88bの軸線と略直交する方向に貫通する貫通孔91に係合し、前記第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止する規制ピン102が設けられる。これらによって、特に、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、1系統の失陥時に他系統の失陥が防止される。
【0099】
さらに、図3に示すように、シリンダ本体82の開口部には、図示しないサークリップを介してガイドピストン103が装着される。このガイドピストン103の内周面には、第2スレーブピストン88aのロッド部89aの外周面を囲繞してシールするシール部材103aが設けられ、前記シール部材103aに沿って第2スレーブピストン88aのロッド部89aを摺動させることにより、ボールねじ軸80aの一端部に当接する第2スレーブピストン88aを直線状に案内することができる。また、第1スレーブピストン88bには、連結ピストン105が接続され、前記連結ピストン105には、ボルト部材100の頭部100aが係合する係合部が設けられる。
【0100】
図1に戻って、VSA装置18は、周知のものからなり、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホィールシリンダ32RR、ホィールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bと、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホィールシリンダ32FR、ホィールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aとを有する。
【0101】
なお、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、左側後輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
【0102】
この第1ブレーキ系110b及び第2ブレーキ系110aは、それぞれ同一構造からなるため、第1ブレーキ系110bと第2ブレーキ系110aで対応するものには同一の参照符号を付していると共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
【0103】
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホィールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
【0104】
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
【0105】
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、電動ブレーキ装置16の出力ポート24aから出力され、前記電動ブレーキ装置16の第2液圧室98aで制御されたブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。また、前記VSA装置18では、VSA制御がなされる他、ABS制御も含まれる。
【0106】
本実施形態に係る電動ブレーキ装置16が組み込まれた車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0107】
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aが通電により励磁されて弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が通電により励磁されて弁開状態となる。従って、第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aによって第1液圧系統70b及び第2液圧系統70aが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
【0108】
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がばね部材66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0109】
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、電動ブレーキ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第1スプリング96b及び第2スプリング96aのばね力に抗して第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aを図1中の矢印X1方向に向かって変位(前進)させる。この第1スレーブピストン88b及び第2スレーブピストン88aの変位によって第1液圧室98b及び第2液圧室98a内のブレーキ液圧がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
【0110】
この電動ブレーキ装置16における第1液圧室98b及び第2液圧室98aのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
【0111】
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、動力液圧源として機能する電動ブレーキ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aで遮断した状態で、電動ブレーキ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。
【0112】
一方、電動ブレーキ装置16等が作動不能となる異常時では、第1遮断弁60b及び第2遮断弁60aをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
【0113】
本実施形態では、例えば、電源失陥時で且つ第2スレーブピストン88aを含む第2液圧系統70aの失陥時において、電動ブレーキ装置16の第1液圧室(出力液圧室)98bに対して、マスタシリンダ34の第1圧力室(外部)56bから導出した液圧が作用したとき、ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内における最低ブレーキ液圧を確保するために、第1スレーブピストン88bの後退を規制する規制ピン102が設けられている。
【0114】
本実施形態では、規制ピン102の外面に形成された第1溝部202a及び第2溝部202bとシリンダ本体82の内周壁83との間で空隙204(クリアランス)が形成され、第1スレーブピストン88bと規制ピン102とが当接して規制ピン102に付与された荷重によって、シリンダ本体82の内周壁83(ピストン摺動面)の変形を抑制することができる。この場合、シリンダ本体82側に伝達する荷重伝達点Aを、シリンダ本体82の有効内径Bから径方向外側の位置に離間させることができるからである。
【0115】
このように、本実施形態では、規制ピン102を支持するシリンダ本体82の内周壁83に、規制ピン102の外面とシリンダ本体82の内周壁83とを離間させる空隙204を設けることにより、荷重伝達点Aをシリンダ本体82の有効内径Bから径方向外側に離間させることができ(図4(a)参照)、シリンダ本体82の内周壁83の変形を抑制することができる。この結果、本実施形態では、シリンダ本体82のピストン摺動面における所望の摺動性能を確保することができる。
【0116】
また、本実施形態では、規制ピン102が、ピストン本体109の貫通孔91のみならず、第1フランジ部200aの規制部206と当接するように設けられることにより、規制ピン102がピストン本体109の図示しない貫通孔(軸方向の長さが第1フランジ部200aまで到達していない長さで形成された図示しない貫通孔)とのみ当接した場合と比較して、第1スレーブピストン88bと規制ピン102との接触長さを延長することができる。
【0117】
さらに、本実施形態では、規制ピン102が、シリンダ本体82の軸方向と直交する方向に形成されたシリンダ本体82の上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208で、前記規制ピン102の上部及び下端部がそれぞれ挿入固定されるため、上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208を介して、シリンダ本体82と規制ピン102との接触長さを延長することができる。この場合、上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208からなる2点で、規制ピン102に付与される荷重を分散支持することができる。
【0118】
さらにまた、本実施形態では、シリンダ本体82に対する規制ピン102の挿入方向において、シリンダ本体82によって支持される規制ピン102の支持部の軸方向長さT1が、空隙204の軸方向長さT2よりも大きく設定されている(T1>T2)。このように、支持部の軸方向長さT1を空隙204の軸方向長さT2よりも大きく設定することにより(T1>T2)、規制ピン102の所望の支持強度を確保することができる。
【0119】
さらにまた、本実施形態では、規制ピン102、102aの外面に、第1溝部202a及び第2溝部202bや溝部212からなる縮径部を形成することにより、空隙204を介して規制ピン102、102aの外面をシリンダ本体82の内周壁83から離間させることができる。この場合、シリンダ本体82の内周壁83に対する加工が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0120】
なお、本実施形態では、規制ピン102からシリンダ本体82への荷重の伝達を抑制して、シリンダ本体82の内周壁83(ピストン摺動面)の変形を阻止することが可能な電動ブレーキ装置16を備えた車両用ブレーキシステム10が得られる。この車両には、例えば、四輪駆動自動車(4WD)、前輪駆動自動車(FF)や後輪駆動自動車(FR)等が含まれる。
【0121】
次に、シリンダ本体82に対する規制ピンの組み付けにおいて、規制ピンの組み付け方向をなくして、誤組付を防止する点に関し、以下、図7〜図9に基づいて詳細に説明する。
図7(a)は、規制ピンの誤組付防止の第1例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、図7(b)は、図7(a)に示す規制ピンの正面図、図8(a)は、規制ピンの誤組付防止の第2例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、図8(b)は、図8(a)に示す規制ピンの正面図、図9(a)は、規制ピンの誤組付防止の第3例を示し、シリンダ本体に対して規制ピンが組み付けられた状態の一部省略拡大縦断面図、図9(b)は、図9(a)に示す規制ピンの正面図である。
【0122】
図6(c)に示す円柱状の規制ピン102bを用いた場合を除いて、例えば、図4(c)及び図5(c)に示すような規制ピン102、102aを用いた場合、規制ピン102、102aの上部側の外面形状と下部側の外面形状とが異なっているため(図4(c)では、規制ピン102の上端面から第1溝部202aまでの離間距離と、下端面から第2溝部202bまでの離間距離が異なる)、規制ピン102、102aの組付方向が決定され、誤って反対方向から規制ピン102、102aを組み付けてしまう誤組付が発生するおそれがある。
【0123】
そこで、本発明では、以下のようにしてこのような誤組付を回避することができる。
第1例では、図7(b)に示すように、軸方向に沿った全長が比較的短尺に形成され、上部側の外面形状(軸方向に沿った一端面から第1溝部302aまでの離間距離D1)と、下部側の外面形状(軸方向に沿った他端面から第2溝部302bまでの離間距離D2)とが対称(D1=D2)に形成された規制ピン300が用いられる。この場合、図7(a)に示すように、シリンダ本体82の軸方向と直交する方向に形成されたシリンダ本体82の上部側の固定孔207及び下部側の係止穴208に規制ピン300を挿入固定した後、第2リザーバ84の下面に設けられ、通常の長さよりも伸長された連結用脚部85aで規制ピン300の抜け止めがなされる。なお、図7(a)では、規制ピン300の上端部と連結用脚部85aとが当接した状態(クリアランスがゼロ)が示されているが、これに限定されるものではなく、規制ピン300の上端部と連結用脚部85aとの間にクリアランスが設けられていてもよい。
【0124】
なお、第2リザーバ84の連結用脚部85aの長さは、通常の長さに対して、規制ピン300の全長が短縮された分だけ伸長するように設定される。また、第2リザーバ84の連結用脚部85aが挿入されるリザーバポート92bも、前記連結用脚部85aの長さに対応して深穴となる加工が施される。
【0125】
このように、第1例では、上部側と下部側の外面形状が対称に形成された比較的短尺な規制ピン300を用い、この規制ピン300の頭部を長さが伸長された第2リザーバ84の連結用脚部85aで抜け止めすることにより、規制ピン300の組付の方向性がなくなり、誤組付を防止することができる。
【0126】
第2例では、図8(b)に示すように、軸方向に沿った全長が比較的長尺に形成され、上部側の外面形状(軸方向に沿った一端面から第1テーパ部312aまでの離間距離D1)と、下部側の外面形状(軸方向に沿った他端面から第2テーパ部312bまでの離間距離D2)とが対称(D1=D2)に形成された規制ピン310が用いられる。この場合、図8(a)に示すように、シリンダ本体82の外周面から突出するボス部314の肉厚を厚くして、前記ボス部314の内部に形成される係止穴208の深さ寸法E1を増大させている。この増大させた係止穴208の深さ寸法E1は、上部側の固定孔207が形成されたシリンダ本体82の上部側の肉厚の寸法E2と略等しくなるように設定される(E1≒E2)。
【0127】
このように、第2例では、上部側と下部側の外面形状が対称に形成された比較的長尺な規制ピン310を用い、前記規制ピン310の下部が挿入固定される係止穴208の深さ寸法E1を通常の場合よりも増大させシリンダ本体82の上部側の肉厚の寸法E2と略等しくなるように設定されることにより(E1≒E2)、規制ピン310の組付の方向性がなくなり、誤組付を防止することができる。
【0128】
なお、前記第1例と第2例とを併用し、第2リザーバ84の連結用脚部85aを所定長だけ伸長させると共に、シリンダ本体82のボス部314に形成される係止穴208の深さ寸法E1を所定長だけ増大させるようにしてもよい。
【0129】
第3例は、上端面から溝部までの離間距離と下端面から溝部まで離間距離とが異なり、上部側と下部側の外面形状が非対称の規制ピンに対して、さらに、溝加工を施すことにより、規制ピンの上部側と下部側の外面形状を対称とするものである。
【0130】
例えば、図4(c)に示されるように上端面から第1溝部202aまでの離間距離と、下端面から第2溝部202bまで離間距離とが異なり、上部側形状と下部側形状とが非対称からなる規制ピン102に対して、上端面から第1溝部202aまでの離間部位に対して環状の第3溝部202cを新たに追加形成すると共に、下端面から第2溝部202bまでの離間部位に対して第4溝部202dを新たに追加形成する。
【0131】
この結果、図9(b)に示すように、新たに追加加工された第3例に用いられる規制ピン320では、上端面から下方に向かって順に第3溝部202c及び第1溝部202aからなる2つの溝部が連続して形成されると共に、下端面から上方に向かって第2溝部202b及び第4溝部202dからなる2つの溝部が連続して形成される。
【0132】
この場合、第3例に用いられる規制ピン320では、図9(b)に示すように、上端面から第1溝部202aまでの離間距離と下端面から第4溝部202d(追加加工)までの離間距離とが等しく設定されると共に、上端面から第3溝部202c(追加加工)までの離間距離と下端面から第2溝部202bまでの離間距離とが等しくなるように設定される。
【0133】
このように、第3例では、上部側と下部側とが非対称の形状からなる規制ピン102に対して、新たに溝加工を追加することで、上部側と下部側の外面形状を対称とすることができる。なお、例えば、円柱体からなる通常の規制ピンに対して、予め、第1〜第4溝部202a〜202dを一度に連続して形成し、上部側と下部側の外面形状が対称形状からなる規制ピン320を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
16 電動ブレーキ装置
32FR、32RL、32RR、32FL ホィールシリンダ
34 マスタシリンダ(外部)
72 電動モータ(モータ)
76 シリンダ機構(シリンダ)
82 シリンダ本体
83 内周壁(ピストン摺動面)
84 第2リザーバ(押さえ部材)
88b 第1スレーブピストン(ピストン)
98b 第1液圧室(出力液圧室)
102、102a、300、310、320 規制ピン(規制手段)
202a、202b、212 溝部(縮径部)
204 空隙
206 規制部
214 環状テーパ面(拡径部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホィールシリンダに接続される出力液圧室と、前進することにより前記出力液圧室に液圧を発生させるピストンと、シリンダ本体内に前記ピストンを収容するシリンダと、前記ピストンに駆動力を伝達することによって前記ピストンを前進駆動させるモータと、前記出力液圧室に外部から液圧が作用したときに前記ピストンの後退を規制する規制手段とを有する電動ブレーキ装置であって、
前記規制手段は、前記シリンダに対して、前記シリンダ本体の軸方向と直交する方向に挿入固定される規制ピンからなり、
前記シリンダ本体の内周壁と前記規制ピンの外面との間で空隙を形成したことを特徴とする電動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記規制ピンは、前記シリンダ本体を貫通して固定されることを特徴とする請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記規制ピンの挿入方向において、前記シリンダ本体によって支持される前記規制ピンの支持部の軸方向長さを、前記空隙の軸方向長さよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記規制ピンが支持される前記シリンダ本体の内周壁を拡径した拡径部を形成し、前記拡径部と前記規制ピンの外面との間で前記空隙が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記シリンダ本体の内周壁に対応する部分における前記規制ピンの外径を縮径した縮径部を形成し、前記縮径部と前記シリンダ本体の内周壁との間で前記空隙が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項6】
前記規制ピンの軸方向に沿った一端側の形状と他端側の形状とが対称に形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項7】
前記規制ピンの中央部と前記ピストンとの当接を規制する規制部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置。
【請求項8】
前記規制ピンの頭部を押さえる押さえ部材を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214096(P2012−214096A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80014(P2011−80014)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】