説明

電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置

【課題】従来の内燃機関用のマウント装置とは全く異なる、電気自動車用に特化した新規な構造の駆動ユニット防振保持装置を提供する。
【解決手段】以下の構成を併せ備えた電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。(i)駆動ユニット12が第一の防振装置32,32,32,32を介してサブフレーム14で防振支持されていると共に、サブフレーム14が第二の防振装置42,44,46を介して車両ボデー16で防振支持されているサブフレーム構造。(ii)駆動ユニット12のトルク反力の入力方向において、第一の防振装置32,32,32,32のトータルでのバネ定数が、第二の防振装置42,44,46のトータルでのバネ定数よりも大きい。(iii)駆動ユニット12のトルクロール軸40と第一の防振装置32,32,32,32との距離の平均値に比して、トルクロール軸40と第二の防振装置42,44,46との距離の平均値が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源として電動モータを採用した電気自動車において駆動用電動モータユニットを車両ボデーに対して防振保持させる新規な構造の駆動ユニット防振保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心の高まり等を背景として、内燃機関に代えて電動モータを駆動源として採用した蓄電池自動車や燃料電池自動車等の電気自動車が提案されている。
【0003】
ところで、これらの提案されている電気自動車では、従来の内燃機関エンジンを含むパワーユニットを、電動モータを含む駆動ユニットに変更しただけの構造で検討されている。従って、駆動ユニットの車両ボデーへのマウント装置は、例えば特開平7−156663号公報(特許文献1)等に記載されているように、従来の内燃機関エンジンを含むパワーユニットのマウント装置と略同じの構造がそのまま採用されている。
【0004】
しかし、本発明者が検討した結果、従来の内燃機関エンジン用のマウント装置と略同じ構造とされた電気自動車用の駆動ユニット防振保持装置では、電気自動車において目的とする防振性能を実現することが極めて困難であるとの結論に至った。その技術的理由は、電動モータと内燃機関では、その構造だけでなく、出力特性等も大きく異なっていることから、要求される防振特性やそれを実現するための好適な防振保持装置に関して大きな隔たりがあることに因ると考えられる。
【0005】
具体的には、例えば、電動モータが低回転域において大きなトルクを生じる一方、内燃機関エンジンが高回転域で大きなトルクを生じることから、防振保持装置に及ぼされる駆動トルク反力の特性に大きな違いがある。更に、内燃機関エンジン用のマウント装置では、車両停止時においてアイドリング振動に対する防振性能が要求されるが、電気自動車用の駆動ユニットでは、アイドリング状態そのものが無いことから、その防振保持装置にアイドリング振動に対する防振性能が必要でない。加えて、出力のトルク変動に起因する振動が、電動モータでは、磁石数又はコイル数に基づいて電動モータの出力軸が1回転する毎に数回〜数十回生じるのに対して、4サイクルの内燃機関エンジンでは、クランク軸が2回転する毎に1回発生するに過ぎない。それ故、トルク変動に起因する振動の周波数が大きく異なっており、要求される防振特性に大幅な違いがある。このように検討してみると、従来の内燃機関エンジンを含むパワーユニットの支持構造を電動モータを含む駆動ユニットの保持構造に適用することが妥当でないとの、本発明者が得た知見も技術的に理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−156663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、従来の内燃機関用のパワーユニットマウント装置とは全く異なる、電気自動車用に特化した新規な構造の駆動ユニット防振保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載するが、以下に記載の各構成は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、駆動用電動モータを含む駆動ユニットを車両ボデーに防振保持させる電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置であって、前記駆動ユニットが第一の防振装置を介してサブフレームに防振支持されていると共に、該サブフレームが第一の防振装置を介して前記車両ボデーに防振支持されており、該駆動用電動モータのトルク反力の入力方向において該第一の防振装置のバネ定数が該第二の防振装置のバネ定数よりも大きく設定されていると共に、該駆動ユニットのトルクロール軸と該第一の防振装置との距離の平均値に比して該トルクロール軸と該第二の防振装置との距離の平均値が大きく設定されていることを特徴とする。
【0010】
第一の態様では、電動モータ駆動式車両において、駆動トルクの伝達効率の向上と優れた防振性能の実現とを両立して実現することが可能となる。即ち、電動モータを駆動源とする駆動ユニットでは、従来の内燃機関エンジンを用いたパワーユニットと異なり、停車時にアイドリング振動が発生しない。本発明に係る駆動ユニット防振保持装置では、このような電動モータ駆動式車両の特別な振動特性等に着目して、内燃機関エンジンのアイドリング振動に相当する中周波数振動の防振性能を犠牲にすることで、駆動トルクの伝達効率向上や、駆動ユニットの剛体共振周波数の高周波数設定を、第一の防振装置及び第二の防振装置の特定の配置やバネ定数の設定によって高度に達成可能となし得たのである。
【0011】
より具体的には、駆動ユニットのトルクロール軸との離隔距離が小さい第一の防振装置では、トルク反力の入力方向のバネ定数が大きくされることにより、トルク反力に対する支持バネ剛性が大きくされている。これにより、トルク反力による駆動ユニットの揺動等の変位が低減されて、駆動トルクを車両ホイールに効率的に伝達することが出来、加速性能やアクセルレスポンス等の向上が実現される。
【0012】
すなわち、従来の内燃機関エンジン用のマウント装置ではパワーユニットとサブフレームとの間に介装された防振装置におけるトルク反力方向のバネ定数を大きくすると20〜40Hz程度に発生するアイドリング振動や低回転時のエンジン振動に対して満足できる防振性能が発揮され得ず、実用性が無い。これは、内燃機関エンジンでは、爆発に伴うトルク変動が非常に大きく、アイドリングや低回転時の振動伝達率を実用レベルに抑えるためには、かかるパワーユニットの防振装置の共振周波数をアイドリング振動数より小さく設定しなければならないことを意味する。ところが、本発明が対象とする電動モータ駆動式車両ではアイドリングそのものが存在しないことに加えて、低回転時にもトルク変動が極めて小さく、且つ低回転時におけるトルク変動周波数も内燃機関エンジンに比して格段に高い。それ故、電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置では、トルク変動に起因する走行こもり音等の振動に対する防振性能を良好に維持しつつ、第一の防振装置におけるトルク反力方向のバネ定数を大きく設定することが出来る。それ故、前述のとおり駆動トルクの伝達効率に優れた電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置が実現され得るのである。
【0013】
なお、第二の防振装置は、トルク反力の入力方向のバネ定数が第一の防振装置よりも小さいが、トルクロール軸からの離隔距離が大きいことから、トルク反力に対する支持バネ剛性は第二の防振装置に比して第一の防振装置のバネ特性が支配的である。しかも、サブフレームの構造上、第一の防振装置に比して第二の防振装置は入力荷重が大きいことから、耐荷重性能を確保するために第二の防振装置のバネ定数もある程度の大きさに設定される。それ故、駆動トルク反力に対しては第一の防振装置による支持バネ剛性が効果的に発揮され得て、前述の如き優れた駆動トルクの伝達効率が実現され得る。
【0014】
しかも、第一の防振装置のトルク反力入力方向におけるバネ定数が大きくされることにより、駆動ユニットをマスとし且つ第一の防振装置を含んで構成されるバネで弾性支持された振動系からなる駆動ユニットの剛体共振周波数が高周波数に設定される。それ故、車輪(車両ホイール)から入力される加振力によって駆動ユニットに生ずる剛体共振に対しても、かかる共振に起因する振動が車両の実用速度域で発生することを回避して、車両防振性能の更なる向上を図り得る。
【0015】
本発明の第二の態様では、第一の態様に係る電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置において、車両の前側と後側とに配された複数の前記第二の防振装置によって前記サブフレームが前記車両ボデーに防振支持されていると共に、該前側の第二の防振装置による前記駆動ユニットの支持バネ特性と該後側の第二の防振装置による該駆動ユニットの支持バネ特性とが相互に異ならされて、該サブフレームにおけるピッチング共振とバウンス共振とが連成して発生するようになっている。
【0016】
本態様によれば、サブフレームにおけるピッチング共振(車両左右方向に延びる軸を揺動軸とした車両前後方向での揺動共振)とバウンス共振(車両上下方向での共振)を積極的に連成させることにより、ピッチング共振とバウンス共振の各振動レベルのピークを抑えることが出来る。即ち、ピッチング共振とバウンス共振の何れか一方による振動エネルギーを他方に分散させることが出来て、著しい振動ピークレベルに起因する車両防振性能の悪化を回避することが可能となる。
【0017】
特に、本発明では、第二の防振装置におけるトルクロール軸からの距離が第一の防振装置より大きくされていると共に、第一の防振装置によってトルク反力の支持バネ剛性が確保されていることから、第二の防振装置におけるバネ特性の設計自由度が大きく確保され得る。それ故、ピッチング共振とバウンス共振の相互のチューニングを容易に行なうことが出来て、両振動の連成に基づく上述の如き振動低減がより効果的に実現可能となる。
【0018】
本発明の第三の態様では、第二の態様に係る電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置において、前記サブフレームにおけるピッチング振動とバウンス振動との連成した基本振動において、振動モードの節を車両の前側と後側の何れか一方に偏倚させると共に、車両の前側と後側とに配された複数の前記第二の防振装置のうち該振動モードの節からの離隔距離が大きい方の該第二の防振装置が該振動モードの節からの離隔距離が小さい方の該第二の防振装置に比して、ピッチング振動及びバウンス振動の入力方向で高減衰特性とされている。
【0019】
本態様によれば、サブフレームの基本振動(振幅が大きな方の共振)に対して、振幅変位が大きい方の第二の防振装置による高減衰効果が効率的に発揮されて、サブフレームの共振変位が低減され、車両振動の低下が抑えられる。特に、サブフレームの共振を連成させて前側の第二の防振装置と後側の第二の防振装置との振幅比を積極的に確保したことで、大きな振幅が生ぜしめられる方の第二の防振装置で高減衰効果を一層効果的に得ることが可能となる。
【0020】
本発明の第四の態様では、第一〜三の何れか一態様に係る電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置において、前記駆動ユニットが前記第一の防振装置を介して前記サブフレームに載荷されており、該駆動ユニットの駆動トルク反力に加えて該駆動ユニットの重量も該サブフレームに及ぼされるようになっている。
【0021】
本態様では、駆動ユニットの重量の略全てがサブフレームを介して車両ボデーで支持される。このようなサブフレームによる駆動ユニットの支持構造では、第二の防振装置を介して車両ボデーに弾性支持されるサブフレームの重量が大きいことから、サブフレームの共振に伴う車両振動の悪化が問題となり易いが、本発明を適用することによって防振性能の向上が図られ得、特に第二,第三の態様と組み合わせることでサブフレームの共振に伴う振動が効果的に抑えられる。
【0022】
本発明の第五の態様では、第一〜三の何れか一態様に係る電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置において、前記車両ホイールのリム内に前記駆動ユニットを装着したインホイールモータ構造とされており、該駆動ユニットが車輪懸架部材を介して前記サブフレームに連結支持されていると共に、該駆動ユニットのトルク反力を該車輪懸架部材から該サブフレームに伝達する部位に配されたサスペンション防振装置により前記第一の防振装置が構成されている。
【0023】
本態様によれば、従来の内燃機関エンジンのパワーユニット支持構造とは全く異なる電動モータの駆動ユニット支持構造であるインホイールモータ構造に関して、サブフレーム構造を適用した新規且つ有用な駆動ユニットの保持機構が実現され得る。特に、インホイールモータ構造でもサブフレーム構造を採用可能としたことで、駆動ユニットから車両ボデーに伝達される振動だけでなく、車輪を通じて路面から車両ボデーに入力される振動までも、第一の防振装置と第二の防振装置による二重防振機構によって効果的に抑えられる。しかも、第一の防振装置と第二の防振装置に関して特定の配設位置と特定のバネ特性を採用したことにより、駆動トルク反力に対して充分な支持バネ剛性を確保して優れた駆動トルク伝達効率を達成しつつ、優れた防振性能が実現可能となる。
【0024】
本発明の第六の態様では、第五の態様に係る電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置において、前記車両ホイールと車両ボデーとの間に装着されるショックアブソーバとスプリングとの少なくとも一方が、前記サブフレームを介して該車両ボデーに取り付けられている。
【0025】
本態様によれば、ショックアブソーバやスプリングを介して車輪から車両ボデーに伝播する路面振動等を、上述のインホイールモータ構造に採用したサブフレーム構造を巧く利用して、効果的に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、駆動ユニットをサブフレームに防振連結する第一の防振装置とサブフレームを車両ボデーに防振連結する第二の防振装置とにおいて、特定のバネ特性と配設位置を採用することにより、駆動トルクの車輪への伝達効率の向上と、電動モータ駆動式車両において問題となる振動に対する優れた防振性能とを、両立して実現し得た。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態としての駆動ユニット防振保持装置を概略的に示す断面図。
【図2】駆動ユニット防振保持装置の要部を概略的に示す斜視図。
【図3】サブフレームを2自由度系で示すモデル図。
【図4】本発明の第二の実施形態としての駆動ユニット防振保持装置を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1には、本発明の第一の実施形態として、電動モータ駆動式車両に用いられる駆動ユニット防振保持装置10が示されている。この駆動ユニット防振保持装置10では、インホイールモータ構造とされた駆動ユニット12が、サブフレーム14を介して車両ボデー16に防振保持されている。
【0030】
駆動ユニット12は、変速用ギヤ機構が付設された電動モータ18を含んで構成されている。この電動モータ18のモータハウジングが、車輪20のホイール22のリムの内周側に収容状態で配設されており、ブレーキキャリパが取り付けられた車輪支持部材(ナックル側部材)24で支持されている。そして、特開2006−248417号公報や特開2005−22554号公報等に記載されているように、電動モータ18の出力軸が変速用ギヤ機構を介してホイール22に連結されており、電動モータ18から車輪20に駆動力が伝達されるようになっている。
【0031】
また、車輪支持部材24は、車輪懸架部材26を介して、車両ボデー16に取り付けられている。車両ボデー16には、車輪懸架部材26の取付部分にサブフレーム14が装着されており、車輪支持部材24が、車輪懸架部材26によってサブフレーム14に連結されている。即ち、車輪支持部材24は、車輪懸架部材26により、サブフレーム14を介して、車両ボデー16に取り付けられている。
【0032】
かかるサブフレーム14は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、図2に示されているように車両前後方向で所定長さを有している。また、サブフレーム14は、車両前後方向に延びるベース部28と、該ベース部28の車両前後方向中間部分において上方に向かって突出するタワー部30を備えている。尤も、サブフレーム14の具体的形状は車両ボデーやサスペンション機構等に応じて適当に設定されるものであって本実施形態に限定されない。
【0033】
そして、サブフレーム14の車両前後方向の中間部分には、車輪懸架部材26の取付部31aが複数設けられていると共に、サブフレーム14の車両前後方向両端近くと上端部近くには、それぞれ、サブフレーム14の車両ボデー16への取付部31bが設けられている。
【0034】
具体的には、車輪懸架部材26の取付部31aは、ベース部28上で車両前後方向に所定距離を隔てて2つと、タワー部30上で車両前後方向に所定距離を隔てて2つとの、合計4つが設けられている。一方、車両ボデー16への取付部31bは、ベース部28の車両前後方向の両端部分と、タワー部30の上端部分との、合計3つが設けられている。
【0035】
また、車輪懸架部材26の取付部31aには、何れも、サスペンション防振装置としてのサスペンションブッシュ32が装着されている。これらのサスペンションブッシュ32は、特開2007−245890号公報等に記載された公知のものが何れも採用可能であり、例えば、インナ軸金具の外周側に離隔してアウタ筒金具を配設すると共に、それらインナ軸金具とアウタ筒金具を本体ゴム弾性体によって相互に連結した構造とされている。
【0036】
これらのサスペンションブッシュ32は、各取付部31aにおいて、サスペンションブッシュ32のインナ軸金具を車両前後方向に向けてサブフレーム14で支持されることによって装着されている。また、アウタ筒金具には、車輪懸架部材26が連結されている。車輪懸架部材26は、従来から公知の各種の懸架機構に応じて適当なアーム等から構成される。
【0037】
例えば、図示されているように、ウィッシュボーン型のサスペンション機構を構成するアッパアーム34とロワアーム36を含んで、車輪懸架部材26が構成される。これらアッパアーム34とロワアーム36は略A型或いはL型のアーム形状を有しており、何れも、基端側の2箇所において、サスペンションブッシュ32のアウタ筒金具に固定されている。また、アッパアーム34とロワアーム36の各先端側は、ボールジョイントを介して車輪支持部材24に取り付けられている。これにより、サブフレーム14に対して、車輪懸架部材26を介して、車輪20が連結されて、車両前後方向に位置決めされて車両上下方向に揺動可能に且つ操舵可能に支持されている。
【0038】
また、本実施形態のサスペンション機構は、ストラット構造を有している。即ち、車輪支持部材24には、斜め上方に向かって延びるテレスコピック型のショックアブソーバ38の下端が固定されており、このショックアブソーバ38の上端が、サブフレーム14のタワー部30の上端近くに取り付けられている。なお、ショックアブソーバ38の上端部のタワー部30への取付部位には、必要に応じて適当なアッパサポートが介装される。このアッパサポートは、特開2001−193781号公報等において公知のものが何れも採用可能である。
【0039】
なお、図面上からは明らかでないが、公知のストラット構造に従い、ショックアブソーバ38にはコイルスプリングやエアースプリング等が装着されており、このコイルスプリングの付勢力によって、サブフレーム14に連結された車輪20が、弾性的に車重を支えるようになっている。尤も、良く知られているとおり、ストラット構造を構成するショックアブソーバ38は、車両の上下方向荷重を支持するものであり、車輪20の回転方向等の反力(駆動反力や制動反力、コーナリングフォース等)を受けるものではない。
【0040】
すなわち、電動モータ18を含む駆動ユニット12は、車輪懸架部材26を構成するアッパアーム34,ロワアーム36,ショックアブソーバ38を介して、サブフレーム14に連結されて防振保持されている。そして、ショックアブソーバ38は、車輪20の回転方向の反力等を分担しないことから、駆動ユニット12のトルクロール軸40回りの駆動トルク反力は、アッパアーム34及びロワアーム36から各サスペンションブッシュ32,32,32,32を介して、サブフレーム14に及ぼされる。要するに、車輪懸架部材26の防振装置としては、各サスペンションブッシュ32,32,32,32の他、アッパサポートも含まれるが、トルク反力の入力方向でのバネ定数等の特性を問題とする本発明の第一の防振装置には、各サスペンションブッシュ32,32,32,32だけが含まれ、アッパサポート等は含まれない。
【0041】
一方、サブフレーム14の車両ボデー16への3つの取付部31bには、第二の防振装置であるサブフレームマウント42,44,46が装着されている。これらのサブフレームマウント42,44,46の具体的構造は、要求される防振特性等に応じて決定されるものであって限定されるものでない。
【0042】
例えば、図示されているように、ベース部28の車両前方側端部の取付部31bに装着されたサブフレームマウント42と、ベース部28の車両後方側端部の取付部31bに装着されたサブフレームマウント44は、何れも、インナ軸金具の外周側に離隔配置されたアウタ筒金具が本体ゴム弾性体で連結された筒型防振装置にて構成され得る。このようなサブフレームマウント42,44は、ベース部28に形成された装着孔に対してアウタ筒金具が圧入固定されることによって、マウント中心軸が車両上下方向となるように取り付けられ、そのインナ軸金具が車両ボデー16に固定されることによって装着される。また、タワー部30の上端に装着されたサブフレームマウント46は、第一の取付金具48と第二の取付金具50の対向面間にゴム弾性体52が介在されて両取付金具48,50に固着されている。そして、タワー部30の上端と車両ボデー16との高さ方向での対向部分の一方に第一の取付金具48が取り付けられると共に、他方に第二の取付金具50が取り付けられて装着されている。
【0043】
そして、駆動ユニット12から車輪懸架部材26を介してサブフレーム14に及ぼされる駆動トルク反力が、サブフレームマウント42,44,46を介して、車両ボデー16に及ぼされて負担されるようになっている。
【0044】
ここにおいて、電動モータ18によって駆動ユニット12から車輪20に及ぼされる駆動トルクの反力の中心軸であるトルクロール軸40回りにおいて、第一の防振装置を構成するサスペンションブッシュ32,32,32,32と、第二の防振装置を構成するサブフレームマウント42,44,46との間には、特定のバネ定数および配設位置の相対関係が設定されている。
【0045】
具体的には、先ずバネ定数の相対関係について、第一の防振装置を構成するサスペンションブッシュ32,32,32,32におけるトルクロール軸40回りでのバネ定数の合計値が、第二の防振装置を構成するサブフレームマウント42,44,46におけるトルクロール軸40回りでのバネ定数の合計値に比して大きくされている。即ち、ゴムマウントは一般に載荷重量が大きいほど大きなバネ定数が設定される。しかし、本実施形態では、それと反対に、サブフレーム14に比して重量が小さいアッパアーム34及びロワアーム36の取付部位に装着されるサスペンションブッシュ32,32,32,32の方が、サブフレームマウント42,44,46よりも、トータルで大きなバネ定数とされている。より好適には、駆動トルク反力を受ける何れの防振装置単体においても、サスペンションブッシュ32,32,32,32の方が、サブフレームマウント42,44,46よりも、トルクロール軸40回りで大きなバネ定数とされる。なお、トルクロール軸40回りの荷重入力方向は、サスペンションブッシュ32,32,32,32では車両の略上下方向となる略軸直角方向となり、サブフレームマウント42,44では車両の略上下方向となる略軸方向となり、サブフレームマウント46では車両の略前後方向となる第一及び第二の取付金具48,52の対向方向への略直交方向となる。
【0046】
次に、配設位置の相対関係について、第一の防振装置を構成するサスペンションブッシュ32,32,32,32におけるトルクロール軸40からの離隔距離の平均値が、第二の防振装置を構成するサブフレームマウント42,44,46におけるトルクロール軸40からの離隔距離の平均値に比して小さくされている。より好適には、駆動トルク反力を受ける何れの防振装置単体においても、サスペンションブッシュ32,32,32,32の方が、サブフレームマウント42,44,46よりも、トルクロール軸40からの離隔距離が小さくされる。なお、離隔距離は、各防振装置においてトルクロール軸40を中心とする円の略接線方向に延びる弾性主軸とトルクロール軸40との距離であって、トルクロール軸40に直交する直線上での距離で表される。
【0047】
より好適には、サブフレームマウント42,44,46によるサブフレーム14の弾性支持特性に関して、トルクロール軸40と略平行に車両左右方向に延びる揺動軸を中心としてサブフレーム14に発生するピッチング振動(回転運動)と、車両上下方向の並進的な往復運動としてサブフレーム14に発生するバウンス振動とが連成するように、それら各サブフレームマウント42,44,46のバネ特性が設定されている。具体的には、例えば3つのサブフレームマウント42,44,46のバネ定数を合成して単純化し、図3に示されているように車両前後方向となる両端で弾性支持された2自由度振動系の剛体梁としてサブフレーム14を想定する。前方マウントの支持バネ定数をk1,後方マウントの支持バネ定数をk2とし、重心Gから前方マウントまでの距離をL1,重心Gから後方マウントまでの距離をL2とすると、下式が満足されるように設定すれば良い。
L1×k1≠L2×k2
【0048】
更に好適には、ピッチング振動とバウンス振動が連成されたサブフレーム14をモデル的に表す図3の振動系において、その基本振動で振幅が大きくなる端部側に配された方のマウントの減衰係数が、振幅が小さくなる端部側に配されたマウントに比して大きくされる。例えば、車両前方側のサブフレームマウント42と車両後方側のサブフレームマウント44を減衰特性が互いに異なるゴム材料からなる本体ゴム弾性体で形成したり、マウント構造を異ならせることで実現可能である。具体的には、振幅が大きくなる端部側において特許第4110567号公報等に示されているような流体封入式のサブフレームマウントを採用する一方、振幅が小さい端部側で特許第3932025号公報等に示されているようなソリッドタイプのサブフレームマウントを採用することによって、有利に実現される。
【0049】
また、かかるサブフレーム14の振動系では、基本周波数となる低周波側の共振周波数が、30Hz〜350Hzの範囲に設定されることが好ましく、より好適には40Hz〜200Hzの基本周波数となるように設定される。サブフレーム14の基本周波数が30Hzより低いと車輪20から及ぼされる加振力に対してサブフレーム14の共振が問題となるおそれがある一方、350Hzを超えると、電動モータ18の駆動トルクに起因するこもり音等に対する振動絶縁効果が充分に得られ難くなるおそれがある。
【0050】
ここにおいて、図3にモデル的に表されるサブフレーム14の振動系において、共振周波数(ω)は、下式で求めることができる。
ω2 =1/2(kx/M+kθ/J)±√(1/4(kx/M−kθ/J)2 +kxθ2 /MJ)
ただし、kxは上下方向のバネ定数(kN/m)であってk1+k2で求められる。Mは載荷重を含むサブフレームの総質量(Kg)である。kθは回転バネ定数であってk1×L12 +k2×L22 で求められる。Jは載荷物を含むサブフレームにおける重心回りの慣性モーメント(Kg・m2 )である。xは重心(G)の上下方向変位、θは重心(G)回りの回転角であり、kxθはk1×L1−k2×L2で求められる。
それ故、サブフレームマウント42,44,46のバネ定数や配設位置を調節することにより、連成振動で表れる二つの共振周波数(ω)を前述の目的とする周波数域にチューニングすることが出来る。
【0051】
また、サブフレーム14の両端部分でのバウンス振動の振幅(A)とピッチング振動の振幅(Θ)との振幅比(A/Θ)は、下式で表される。
A/Θ=kxθ/(kx−Mω2 )=(kθ−Jω2 )/kxθ
それ故、連成振動で表れる二つの共振周波数(ω)のうち、振幅が大きな基本振動での振幅比から振動モードを求めることで、サブフレーム14の前側と後側の何れの防振装置における減衰係数を大きくすれば良いか判る。具体的には、本実施形態では、前方のサブフレームマウント42と後方のサブフレームマウント44のうち、ピッチング振動のモードの節から遠い方のマウントにおける減衰係数を大きく設定することが効果的である。
【0052】
上述の如き構造とされた駆動ユニット防振保持装置10によれば、電動モータ駆動式車両において、駆動トルクの車輪20への伝達効率の向上と、優れた防振性能とが、両立して実現可能となる。
【0053】
すなわち、先ず第一の防振装置としてのサスペンションブッシュ32,32,32,32において、駆動トルク反力の入力方向でのバネ定数が大きく設定されていることにより、駆動ユニット12の回転駆動力の第一の防振装置による吸収低下が抑えられる。これにより、駆動ユニット12の回転駆動力が車輪20に対して効率的に伝達されて、エネルギー効率や操作感の向上が図られ得る。
【0054】
また、第一の防振装置として駆動ユニット12をサブフレーム14に連結支持させるサスペンションブッシュ32,32,32,32のバネ定数が大きく設定されていることにより、駆動ユニット12をマスとする剛体共振周波数が高く設定される。更に、第二の防振装置としての載荷重を含むサブフレーム14をマスとする剛体共振周波数も、前述のとおり30Hz以上、より好適には40Hz以上に設定される。これにより、駆動ユニット12をマスとする剛体振動と、載荷重を含むサブフレーム14をマスとする剛体振動との、何れにおいても、共振に伴う振動悪化を回避することができる。
【0055】
すなわち、低回転時に20Hz程度のトルク変動による加振力を発生する内燃機関エンジンでは、パワーユニットの支持バネ系の共振周波数を10Hz前後に設定して20Hz程度の周波数域で低バネ特性を実現する必要があるのに対して、電動モータ18を駆動源とする駆動ユニット12では、トルク変動自体が小さく且つ周波数が高い。それ故、駆動ユニット12とサブフレーム14の何れの剛体振動の共振周波数(固有振動数)も、共振に伴う振動悪化を回避しつつ、30Hz以上の高い周波数域に設定することが出来る。
【0056】
その結果、駆動トルク変動に起因する振動や騒音に対しては、駆動ユニット12やサブフレーム14の固有振動数f0に対して、f0×√2以上の周波数域で効果的な防振効果(振動絶縁効果)を得ることができる。一方、駆動ユニット12やサブフレーム14の固有振動数f0より低周波数域では、駆動トルク反力に対する高バネ剛性を確保して駆動効率を向上させることが出来ると共に、例えば車両の段差乗越え等に伴う駆動ユニット12やサブフレーム14の変位を抑えて制振させることで防振性能の向上も図られ得る。また、車輪20から及ぼされる加振力による駆動ユニット12やサブフレーム14の振動に関しても、通常速度域では車輪20が30回転/秒以下であることから、車輪20からの加振力が駆動ユニット12やサブフレーム14の剛体共振で増幅されることに起因する防振性能の低下も回避され得る。
【0057】
なお、サスペンションブッシュ32に比してサブフレームマウント42,44,46のバネ定数が小さくされているが、駆動ユニット12のトルクロール軸40からの平均距離に関して、サスペンションブッシュ32に比してサブフレームマウント42,44,46の方が大きくされていることにより、駆動ユニット12の駆動トルク反力のサブフレームマウント42,44,46での吸収が防止されている。
【0058】
しかも、サブフレーム14のバウンス振動とピッチング振動が連成されていることから、共振ピークの周波数域での大幅な防振性能の低下も回避されている。加えて、サブフレームマウント42,44のうち、連成共振振動時の振幅が大きい方に高減衰マウントが採用されることにより、共振ピークが一層効果的に抑えられて、更なる防振性能の向上が図られ得る。
【0059】
図4には、本発明の第二の実施形態として、電動モータ駆動式車両に用いられる駆動ユニット防振保持装置60が示されている。この駆動ユニット防振保持装置60では、駆動ユニット62がサブフレーム64に載荷支持されて、該サブフレーム64を介して自動車の車両ボデー66に防振保持されている。要するに、本実施形態は、第一の実施形態に示されたインホイールモータ構造とは異なり、駆動ユニット62を車両ボデー66に載荷支持させて、駆動ユニット62の駆動力をドライブシャフト等によって車輪に伝達する構造とされている。
【0060】
駆動ユニット62は、変速用ギヤ機構68が付設された電動モータ70を含んで構成されている。一方、サブフレーム64は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、車両前後方向で所定長さを有しており、例えば枠体形状等とされる。
【0061】
そして、車両ボデー66に対してサブフレーム64が、車両前後方向に所定長さを有する状態で装着されており、このサブフレーム64に対して駆動ユニット62が、その出力軸を車両横方向に向けた状態で載荷されて装着されている。なお、図面上に明示はされていないが、電動モータ70の出力軸は変速用ギヤ機構68に連結されており、従来の内燃機関を備えた横置エンジンのFF型自動車等と同様に、変速用ギヤ機構68の出力軸がドライブシャフト等を介して車輪に接続されて、車輪に駆動力が伝達されるようになっている。
【0062】
また、駆動ユニット62におけるサブフレーム64への各取付部には、それぞれ、第一の防振装置としてのモータマウント72,72,72が装着されている。そして、駆動ユニット62の略全重量が、これら複数のモータマウント72,72,72を介して、サブフレーム64に及ぼされていることで、駆動ユニット62がサブフレーム64に対して防振支持されている。
【0063】
さらに、サブフレーム64には、車両前側と後側とにおいて、第二の防振装置である左右一対の前側サブフレームマウント74,74と後側サブフレームマウント76,76が装着されている。そして、これらのサブフレームマウント74,74,76,76を介して、サブフレーム64が、車両ボデーに対して防振支持されている。要するに、駆動ユニット62は、各複数のモータマウント72とサブフレームマウント74,76によって、二重に防振されて車両ボデー66で防振支持されている。
【0064】
また、モータマウント72としては、例えば従来の内燃機関を備えたパワーユニット用のエンジンマウントとして公知の、例えば特許第4135915号公報等に示されているようなソリッドタイプのゴムマウントや特許第3767323号公報等に示されているような流体封入式マウントなどを、バネ定数を調節して適用することが可能である。
【0065】
一方、サブフレームマウント74,76としては、例えば第一の実施形態のサブフレームマウント(42,44)と同様な構造のものが採用可能である。
【0066】
ここにおいて、モータマウント72は、サブフレームマウント74,76に比して、駆動ユニット62のトルクロール軸78回りでのバネ定数が、各トータルで大きくされている。即ち、駆動ユニット62のトルク反力の作用方向において、3つのモータマウント72,72,72のバネ定数の合計値が、4つのサブフレームマウント74,74,76,76のバネ定数の合計値よりも大きくされている。
【0067】
また、4つのサブフレームマウント74,74,76,76は、3つのモータマウント72,72,72に比して、駆動ユニット62のトルクロール軸78からの離隔距離の平均値が大きく設定されている。
【0068】
更にまた、前側サブフレームマウント74及び後側サブフレームマウント76は、第一の実施形態と同様、駆動ユニット62等の載荷重を含むサブフレーム64においてバウンス振動とピッチング振動が連成して発生するようにされている。更に、その振動モードを考慮して、サブフレーム64の前側と後側とにおいて、基本振動で振幅が大きくなる方のサブフレームマウントには、他方のサブフレームマウントに比して大きな減衰係数が設定されている。
【0069】
なお、バウンス振動とピッチング振動の連成条件や、基本振動での振幅の大小は、第一の実施形態と同様、図3に示されている2自由度系の振動モデルで簡易的に求めることが可能である。また、前側サブフレームマウント74と後側サブフレームマウント76とにおいて、一方を他方より高減衰とする場合には、一方に流体封入式マウントを採用することよって高い減衰係数を容易に設定することが出来る。
【0070】
このような本実施形態に従う構造とされた駆動ユニット防振保持装置60においても、前記第一の実施形態の駆動ユニット防振保持装置10と同様に、駆動ユニット62から車輪へのトルク伝達効率の向上効果が発揮されると共に、駆動ユニット62が載荷されたサブフレーム64の剛体共振に起因する振動悪化の回避や高周波数域でのモータトルク変動に起因する騒音の低下等による防振性能の向上効果も発揮され得る。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、駆動ユニットの保持構造としては、必要に応じてトルクロッドを追加装着しても良い。その場合、トルクロッドの一端は、駆動ユニットに取り付けられる。一方、トルクロッドの他端は、車両ボデーに取り付けられても良いが、より好適には、サブフレームに取り付けられる。これにより、トルク反力の確保と防振性能の確保がより高度に両立され得る。
【0072】
また、サブフレームマウントは、車両前側と後側で減衰特性を相違させることで、前記実施形態に記載のとおり振動の最大エネルギーを抑えることが可能であるが、特に問題とならない場合には、複数のサブフレームマウントとして同一特性のものを採用すること等も可能である。
【0073】
また、サブフレームの構造やサスペンションの構造,駆動ユニットのレイアウト等は、何れも例示であって、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、前記第二の実施形態において駆動ユニットが横置きされているが、駆動ユニットは、出力軸が車両前後方向となるように縦置きされる場合もある。
【0074】
更にまた、前記第一の実施形態におけるショックアブソーバ38は、その上端部或いはそれに外挿されるコイルスプリングの上端部を、サブフレーム14を介することなく、直接に車両ボデー16に取り付けて支持させても良い。そもそもショックアブソーバ38やそれに外挿されるコイルスプリングは、駆動トルク反力を伝達するものでないからである。
【0075】
また、本発明の適用範囲は、電気自動車用の駆動ユニット防振保持装置に限定されるものではなく、例えば、電動モータ駆動式の列車や自動二輪車等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0076】
10,60:駆動ユニット防振保持装置、12,62:駆動ユニット、14,64:サブフレーム、16,66:車両ボデー、18,70:電動モータ、20:車輪、26:車輪懸架部材、32:サスペンションブッシュ(第一の防振装置)、34:アッパアーム、36:ロワアーム、40,78:トルクロール軸、42,44,46,74,76:サブフレームマウント(第二の防振装置)、72:モータマウント(第一の防振装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電動モータを含む駆動ユニットを車両ボデーに防振保持させる電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置であって、
前記駆動ユニットが第一の防振装置を介してサブフレームに防振支持されていると共に、該サブフレームが第二の防振装置を介して前記車両ボデーに防振支持されており、該駆動用電動モータのトルク反力の入力方向において該第一の防振装置のバネ定数が該第二の防振装置のバネ定数よりも大きく設定されていると共に、該駆動ユニットのトルクロール軸と該第一の防振装置との距離の平均値に比して該トルクロール軸と該第二の防振装置との距離の平均値が大きく設定されていることを特徴とする電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。
【請求項2】
車両の前側と後側とに配された複数の前記第二の防振装置によって前記サブフレームが前記車両ボデーに防振支持されていると共に、該前側の第二の防振装置による前記駆動ユニットの支持バネ特性と該後側の第二の防振装置による該駆動ユニットの支持バネ特性とが相互に異ならされて、該サブフレームにおけるピッチング共振とバウンス共振とが連成して発生するようになっている請求項1に記載の電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。
【請求項3】
前記サブフレームにおけるピッチング振動とバウンス振動との連成した基本振動において、振動モードの節を車両の前側と後側の何れか一方に偏倚させると共に、車両の前側と後側とに配された複数の前記第二の防振装置のうち該振動モードの節からの離隔距離が大きい方の該第二の防振装置が該振動モードの節からの離隔距離が小さい方の該第二の防振装置に比して、ピッチング振動及びバウンス振動の入力方向で高減衰特性とされている請求項2に記載の電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。
【請求項4】
前記駆動ユニットが前記第一の防振装置を介して前記サブフレームに載荷されており、該駆動ユニットの駆動トルク反力に加えて該駆動ユニットの重量も該サブフレームに及ぼされるようになっている請求項1〜3の何れか1項に記載の電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。
【請求項5】
前記車両ホイールのリム内に前記駆動ユニットを装着したインホイールモータ構造とされており、該駆動ユニットが車輪懸架部材を介して前記サブフレームに連結支持されていると共に、該駆動ユニットのトルク反力を該車輪懸架部材から該サブフレームに伝達する部位に配されたサスペンション防振装置により前記第一の防振装置が構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。
【請求項6】
前記車両ホイールと車両ボデーとの間に装着されるショックアブソーバとスプリングとの少なくとも一方が、前記サブフレームを介して該車両ボデーに取り付けられている請求項5に記載の電動モータ駆動式車両用の駆動ユニット防振保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−269634(P2010−269634A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121305(P2009−121305)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】