説明

電動モータ

【課題】ブラシが発した熱を効率よくベース固定部材に伝達させることによりブラシの放熱性を高めた電動モータを提供することである。
【解決手段】ブラシホルダ43が固定されるホルダベース42にシート装着部62を設け、ブラシホルダ43の固定脚部43aをシート装着部62に配置するとともに固定脚部43aに接するようにシート装着部62に熱伝導性シート61を装着する。ギヤケース31にモータ本体12との固定部となるモータ取付部33を設け、ホルダベース42をモータ取付部33に収容する。モータ取付部33の底壁33aにホルダベース42に向けて突出する凸部65を設け、シート装着部62と凸部65との間に熱伝導性シート61を挟み込み、熱伝導性シート61を介してブラシホルダ43の熱をギヤケース31に伝達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流により回転されるモータ軸と、前記モータ軸が支持される有底筒状のモータ本体とを有する電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられるワイパ装置やパワーウインド装置の駆動源、つまりワイパモータやパワーウインドモータとしては、モータ本体に減速機構を取り付けて1つのユニットとした減速機構付き電動モータが多く用いられている。このような減速機構付き電動モータは、モータ本体のモータ軸(アーマチュア軸)の回転を減速機構により減速して出力軸から出力するようにしているので、小型で大きな出力を得ることができる。
【0003】
減速機構付き電動モータでは、モータ本体として、いわゆるブラシ付モータが多く用いられている。ブラシ付きモータは、例えば特許文献1に示されるように、モータ軸に固定されるコンミテータ(整流子)と、それぞれコンミテータに摺接する複数のブラシとを備えている。各ブラシはブラシボックス(ブラシホルダ)により進退移動自在に保持され、各ブラシボックスはそれぞれ固定脚部においてブラシホルダ本体(ホルダベース)に固定されている。モータ本体には減速機構を収容するギヤケース(ベース固定部材)が固定されており、ブラシホルダ本体もギヤケースのモータへの取付部分に収容されている。そして、各ブラシに駆動電流が供給され、ブラシとコンミテータにより所定のタイミングで転流された駆動電流がモータ本体に供給されることにより、モータ軸が所定方向に回転し、当該回転が減速機構により減速されて出力軸から出力されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の減速機構付き電動モータでは、ギヤケースをアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属で形成し、ブラシが発した熱を当該ギヤケースを介して外部に放熱するようにしている。
【0006】
しかしながら、従来の減速機構付き電動モータでは、正極と負極のブラシを収容する金属製ブラシボックスと金属製のギヤケースとのショートを防止するために、ブラシボックスの固定脚部とギヤケースの内面の間には隙間が設けられているので、ブラシが発した熱はブラシボックスの固定脚部とギヤケースの内面との間の空気層を介してギヤケースへ伝達されることになり、ブラシが発した熱を十分にギヤケースへ伝達することができなかった。そのため、場合によっては、ブラシの熱が空気層を介してギヤケースの内部に伝達され、ギヤケース内に収容された減速機構や制御基板等が熱による影響を受けるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、ブラシが発した熱を効率よくベース固定部材に伝達させることによりブラシの放熱性を高めた電動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動モータは、電流により回転されるモータ軸と、前記モータ軸が支持される有底筒状のモータ本体とを有する電動モータであって、前記モータ軸に固定されたコンミテータと、それぞれ固定部においてホルダベースに固定された複数の金属製のブラシ保持部材と、それぞれ対応する前記ブラシ保持部材に保持され、前記コンミテータに摺接する複数のブラシと、前記モータ本体の開口を覆い、前記ホルダベースが固定されるベース固定部材と、前記ベース固定部材と前記ブラシ保持部材との間に設けられ、前記ベース固定部材と前記ブラシ保持部材の少なくとも一部に接触する熱伝導性部材とを有することを特徴とする電動モータ。
【0009】
本発明の電動モータは、前記固定部は前記ブラシ保持部材の固定脚部から構成され、前記熱伝導性部材が前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの間に設けられ、前記ベース固定部材と前記固定脚部とに接触することを特徴とする。
【0010】
本発明の電動モータは、前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの隙間よりも前記熱伝導性部材の厚みを厚く形成し、前記熱伝導性部材を圧縮した状態で前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの間に配置することを特徴とする。
【0011】
本発明の電動モータは、前記熱伝導性部材が絶縁性を有する熱伝導性樹脂により形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の電動モータは、前記熱伝導性部材がアクリル系材料により形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の電動モータは、前記熱伝導性部材が熱伝導性シートにより形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の電動モータは、前記熱伝導性部材が絶縁性を有し、前記ブラシ保持部材の少なくとも一部に塗布することにより形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の電動モータは、前記ホルダベースと前記ベース固定部材との少なくともどちらか一方は前記熱伝導性部材の外周を囲んで保持する保持壁を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の電動モータは、前記ベース固定部材に前記ホルダベースに向けて突出する凸部を設け、該凸部の先端面を前記熱伝導性部材に当接させたことを特徴とする。
【0017】
本発明の電動モータは、前記凸部の先端面に前記ホルダベースに向けて突出するリブ部を設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明の電動モータは、前記リブ部は十字形状となることを特徴とする。
【0019】
本発明の電動モータは、前記ブラシ保持部材にそれぞれ4つの固定脚部を設け、それぞれの前記固定脚部を前記リブ部に区画された前記凸部の先端面の4隅に配置したことを特徴とする。
【0020】
本発明の電動モータは、前記リブ部の前記凸部の先端面に連なる側面は前記先端面に対して傾斜することを特徴とする。
【0021】
本発明の電動モータは、前記ベース固定部材の外面に放熱用のフィンを設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明の電動モータは、当該電動モータが車両に用いられる減速機構付き電動モータであることを特徴とする。
【0023】
本発明の電動モータは、当該電動モータが車両に用いられる連続定格モータであり、前記ベース固定部材がカバー形状であることを特徴とする。
【0024】
本発明の電動モータは、当該電動モータが車両のラジエター冷却装置の駆動源として用いられるファンモータであり、前記ベース固定部材がカバー形状であることを特徴とする。
【0025】
本発明の電動モータは、当該電動モータが車両のワイパ装置の駆動源として用いられるワイパモータであり、前記ベース固定部材が前記ホルダベースを収容するギヤケースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ベース固定部材とホルダベースとの間に熱伝導性部材を設け、ブラシを保持するブラシ保持部材の少なくとも一部とベース固定部材の内面とをこの熱伝導性部材に接触させるようにしたので、ブラシが発した熱を熱伝導性部材とを介してベース固定部材に効率よく伝達させて、ブラシの放熱性を高めることができる。熱伝導性部材としては、熱伝導性樹脂やアクリル系材料により形成されたものを用いることができる。また、車両のワイパ装置の駆動源や車両のラジエター冷却装置の駆動源として用いられるワイパモータやファンモータに本発明を適用することができる。
【0027】
本発明によれば、熱伝導性部材の厚みをベース固定部材とホルダベースとの隙間よりも厚く形成し、熱伝導性部材を圧縮した状態でベース固定部材とホルダベースとの間に配置するようにしたので、熱伝導性部材をブラシ保持部材の固定部とベース固定部材の内面とに確実に接触させて、ブラシの放熱性をさらに高めることができる。
【0028】
本発明によれば、ホルダベースとベース固定部材との少なくともどちらか一方に保持壁を設け、この保持壁により熱伝導性部材の外周を囲んで保持するようにしたので、熱伝導性部材をホルダベース、もしくはベース固定部材に確実に保持して当該熱伝導性部材がホルダベース、もしくはベース固定部材からはずれることを防止することができる。
【0029】
本発明によれば、ホルダベースに向けて突出する凸部をベース固定部材に設け、この凸部の先端面を熱伝導性部材に当接させるようにしたので、ベース固定部材を熱伝導性部材に確実に接触させることができる。
【0030】
本発明によれば、ベース固定部材に設けられる凸部の先端面にホルダベースに向けて突出する十字形状のリブ部を設けるようにしたので、凸部と熱伝導性部材との接触面積を大きくすることができる。これにより、ベース固定部材と熱伝導性部材との間の熱伝導効率を高めて、ブラシの放熱性をさらに高めることができる。
【0031】
本発明によれば、ブラシ保持部材にそれぞれ4つの固定脚部を設け、それぞれの固定脚部をリブ部により区画された凸部の先端面の4隅に配置するようにしたので、リブ部と固定脚部とにより熱伝導性部材を挟み込んで熱伝導性部材をさらに確実にベース固定部材に接触させることができる。
【0032】
本発明によれば、リブ部を凸部の先端面に連なる側面を先端面に対して傾斜させるようにしたので、熱伝導性部材とリブ部の根本部分との間に生じる隙間を低減させて、熱伝導性部材による熱伝導性を高めることができる。
【0033】
本発明によれば、ベース固定部材の外面に放熱用のフィンを設けるようにしたので、熱伝導性部材を介してベース固定部材に伝達されたブラシの熱を効率よく外部に放熱して、ブラシの放熱性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態であるワイパモータを示す斜視図である。
【図2】図1に示すワイパモータの内部構造を示す断面図である。
【図3】図2に示すブラシユニットの詳細を示す正面図である。
【図4】ブラシホルダのホルダベースへの取り付け部分の詳細を示す断面図である。
【図5】(a)は熱伝導性シートを装着前のホルダベースを裏面側から見た斜視図であり、(b)は熱伝導性シートのホルダベースへの装着状態を示す斜視図である。
【図6】ギヤケースのモータ取付部の内部を示す斜視図である。
【図7】ブラシホルダの固定脚部と凸部に設けられたリブ部との位置関係を示す説明図である。
【図8】図7におけるA−A線に沿う断面図である。
【図9】ギヤケースのモータ取付部の外面に形成されたフィンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
図1に示す減速機構付き電動モータとしてのワイパモータ11は自動車等の車両に設けられるワイパ装置の駆動源として用いられるものであり、モータ本体12と減速機13とを備えている。減速機13はモータ本体12に取り付けられており、これによりワイパモータ11は1つのユニットとされている。そして、ワイパモータ11は減速機13に設けられた取り付け脚部13aにおいて図示しない車体に固定される。
【0037】
このワイパモータ11では、モータ本体12として、いわゆるブラシ付モータを用いている。このモータ本体12のヨーク14は薄板鋼板等をプレス加工することにより有底筒状に形成されており、その内面には径方向内側に向けてN極、S極に着磁された一対のマグネット(永久磁石)15が固定されている。
【0038】
ヨーク14の内部にはアーマチュア(電機子)16が収容されている。アーマチュア16はその軸心にモータ軸(アーマチュア軸)17を備えており、このモータ軸17の一端はヨーク14の底部に固定された軸受18に支持されている。これにより、アーマチュア16はモータ軸17とともにヨーク14の内部で回転自在となっている。モータ軸17にはアーマチュアコア(電機子鉄心)21が固定されており、このアーマチュアコア21は微小隙間(エアギャップ)を介して各マグネット15に対向している。また、アーマチュアコア21には回転方向に並べて複数のスロット21aが設けられ、各スロット21aには導線の重ね巻きにより複数のアーマチュアコイル(電機子巻線)22が装着されている。
【0039】
モータ軸17には、アーマチュアコア21に隣接してコンミテータ(整流子)23が固定されている。コンミテータ23は、互いに絶縁された状態で回転方向に等間隔に並べて配置される複数のセグメント片23aを備えており、各セグメント片23aにはそれぞれ対応するアーマチュアコイル22のコイル端が電気的に接続されている。なお、アーマチュア16つまりモータ軸17が回転すると、コンミテータ23もモータ軸17とともに回転するようになっている。
【0040】
一方、減速機13はベース固定部材としてのギヤケース(フレーム)31を備えており、このギヤケース31の内部に減速機構としてのウォームギヤ機構32を収容した構造となっている。
【0041】
ギヤケース31は、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料や熱伝導率の高い材料を混ぜた樹脂材料により、モータ軸17の軸方向と直交する方向(図2中上方向)に開口するバスタブ状に形成されており、その一側部にはモータ取付部33が一体に設けられている。また、ギヤケース31には樹脂製のカバー34が複数のねじ部材35により取り付けられ、当該カバー34によりギヤケース31の開口は閉塞されている。
【0042】
モータ取付部33は、モータ本体12の側(図2中左側)に向けて開口する断面略小判形の有底筒状に形成されており、その開口端においてヨーク14の開口端に組み合わされ、この状態でねじ部材36によりヨーク14に固定されている。これにより、ギヤケース31はモータ本体12に取り付けられている。ヨーク14から突出するモータ軸17の先端側部分は、モータ取付部33の底壁33aに形成された貫通孔33bを介してギヤケース31の内部に突出しており、また、モータ軸17に固定されたコンミテータ23はモータ取付部33の内部に配置されている。
【0043】
なお、ギヤケース31の内部には一対の軸受37,38が固定されており、これらの軸受37,38によりモータ軸17はその中間部分と先端部分とにおいてギヤケース31に回転自在に支持されている。
【0044】
コンミテータ23が配置されたモータ取付部33の内部にはブラシユニット41が装着されている。つまり、ブラシユニット41はモータ取付部33においてギヤケース31に収容されている。
【0045】
図3は図2に示すブラシユニットの詳細を示す正面図であり、このブラシユニット41は樹脂製のホルダベース42を有している。
【0046】
ホルダベース42はガイド壁部42aとベース部42bとを備えており、これらを樹脂材料により一体に形成した構造となっている。ガイド壁部42aはモータ取付部33やヨーク14の断面形状に対応した断面略小判形の筒状に形成されており、その外面においてモータ取付部33の内面に接してホルダベース42をモータ取付部33の内部で径方向に位置決めするようになっている。一方、ベース部42bはモータ軸17の軸方向に垂直な板状に形成されてガイド壁部42aの一端側に配置されており、モータ取付部33の底壁33aに所定の間隔を空けて対向している。ベース部42bの軸心には挿通孔42cが設けられており、モータ軸17やコンミテータ23はこの挿通孔42cに挿通されてベース部42bを貫通している。
【0047】
ベース部42bには一対のブラシ保持部材としてのブラシホルダ43が固定されている。これらのブラシホルダ43は、それぞれ銅板等を曲げ加工して一端が開口したボックス状に形成された金属製となっており、それぞれその軸方向を挿通孔42cの中心に向けて配置されている。また、各ブラシホルダ43は、互いに挿通孔42cつまりモータ軸17の軸心を中心としてモータ軸17の回転方向に位相を90度ずらすとともに、ベース部42bの両円弧状部42dと直線部42eとの境界部分に隣接して図3中で左右対称に配置されている。
【0048】
各ブラシホルダ43にはそれぞれ炭素や黒鉛等の導体により形成されたブラシ44が装着されている。これらのブラシ44はそれぞれ対応するブラシホルダ43に進退移動自在に保持されるとともにブラシホルダ43の内部に設けられたスプリング45により付勢されてコンミテータ23の外周面に弾性的に接触(摺接)している。
【0049】
ベース部42bには一対の給電端子46が配置されており、各ブラシ44のピグテール44aはそれぞれ対応する給電端子46に接続されている。また、各ブラシ44のピグテール44aと給電端子46との間にはチョークコイル(雑音防止素子)47が接続されている。
【0050】
このような構造により、給電端子46に駆動電流が供給されると、各ブラシ44とコンミテータ23とにより所定のタイミングで転流された駆動電流がアーマチュアコイル22に供給され、アーマチュア16に電磁力が発生してモータ軸17が回転する。
【0051】
ギヤケース31に収容されるウォームギヤ機構32は、ウォーム32aとウォームホイル32bとを備えている。ウォーム32aはモータ軸17のギヤケース31の内部に突出する部分の外周面に一体に形成されており、モータ軸17とともに回転するようになっている。一方、ウォームホイル32bはギヤケース31に回転自在に収容されており、その外周部においてウォーム32aに噛み合わされている。
【0052】
ウォームホイル32bの軸心には減速機13つまりこのワイパモータ11の出力軸48が固定されている。この出力軸48の先端はギヤケース31から外部に突出しており、当該先端に図示しないワイパ装置のリンク機構に連結される。これにより、モータ本体12が作動すると、モータ軸17の回転がウォーム32aとウォームホイル32bとからなるウォームギヤ機構32により減速されて出力軸48に伝達され、当該出力軸48からワイパ装置に向けて出力される。
【0053】
モータ本体12の作動を制御するために、ギヤケース31の内部には制御基板51が収容されている。この制御基板51は、詳細は図示しないが、基板上にCPUやメモリ、FET等の複数の電子部品が搭載された所謂マイクロコンピュータとしての機能を有するものとなっており、カバー34の裏面に取り付けられた状態でギヤケース31に収容されている。
【0054】
カバー34には一対(図2中では一方のみを示す)のリード部材52が埋設されている。カバー34がギヤケース31に取り付けられると、これらのリード部材52の先端がホルダベース42に配置された各給電端子46に接続される。これにより、各給電端子46はリード部材52により制御基板51に電気的に接続される。また、カバー34にはコネクタ53が設けられ、制御基板51はこのコネクタ53を介して車両に搭載されるバッテリ等の電源(不図示)やワイパスイッチ(不図示)に接続されるようになっている。そして、制御基板51は、ワイパスイッチ等からの信号に基づき、電源から供給される電力を調整してモータ本体12に供給し、当該モータ本体12の作動を制御するようになっている。
【0055】
なお、符号54は制御基板51をウォームギヤ機構32から隔離するためにギヤケース31に取り付けられた隔壁部材である。
【0056】
図4はブラシホルダのホルダベースへの取り付け部分の詳細を示す断面図である。
【0057】
このワイパモータ11では、各ブラシ44の放熱性を高めるために、ホルダベース42のベース部42bとギヤケース31のモータ取付部33の底壁33aとの間に熱伝導性部材としての熱伝導性シート61を設け、この熱伝導性シート61を介してブラシ44の発する熱をギヤケース31に伝達させるようにしている。
【0058】
図5(a)は熱伝導性シートを装着前のホルダベースを裏面側から見た斜視図であり、図5(b)は熱伝導性シートのホルダベースへの装着状態を示す斜視図である。
【0059】
ホルダベース42のベース部42bのブラシ44が配置される面とは反対側の面、つまりモータ取付部33の底壁33aに対向する面には、それぞれのブラシホルダ43に対応した一対のシート装着部62が設けられている。これらのシート装着部62は、それぞれベース部42bの外表面よりも一段底壁33aの側に突出した台形状であるとともに外形が矩形形状に形成されている。シート装着部62の外周には、当該外周に沿って保持壁63が設けられている。この保持壁63はシート装着部62よりも底壁33aの側に突出しており、シート装着部62の周りを囲んでいる。
【0060】
各ブラシホルダ43にはそれぞれ4つの固定部としての固定脚部43aが設けられている。これらの固定脚部43aはそれぞれベース部42bのシート装着部62に形成された固定孔64に挿通され(図4中では2つのみを示す)、ベース部42bとシート装着部62とを貫通している。そして、各固定脚部43aの先端が折り曲げられることにより、各ブラシホルダ43はベース部42bに固定され、また、各ブラシホルダ43の固定脚部43aの先端部分はシート装着部62上に配置される。
【0061】
熱伝導性シート61は、シロキサンガスを含有乃至排出しないアクリル系材料であるアクリルゴムによりシート装着部62に対応した大きさの四角いシート状に形成されている。また、この熱伝導性シート61の熱伝導率は2.1(W/mk)となっており、空気の熱伝導率0.0241(W/mk)よりも大きくなっている。
【0062】
図5(b)に示すように、この熱伝導性シート61は、ブラシホルダ43の固定脚部43aの先端部を覆うようにシート装着部62に配置される。シート装着部62に装着された熱伝導性シート61の一方の面は、ブラシホルダ43の各固定脚部43aの先端に接触している。また、シート装着部62に装着された熱伝導性シート61は、保持壁63によりその外周部分(特に四隅の部分)が囲まれている。これにより、熱伝導性シート61は、保持壁63によりシート装着部62に保持され、当該装着部62からの離脱が防止される。
【0063】
このように、このワイパモータ11では、シート装着部62に保持壁63を設け、この保持壁63により熱伝導性シート61の外周を囲んで保持するようにしているので、熱伝導性シート61をシート装着部62に確実に保持して当該熱伝導性シート61がシート装着部62からはずれることを防止することができる。
【0064】
なお、熱伝導性シート61としては、アクリルゴムに限らず、アクリルゴム以外のアクリル系材料、シリコンゴム、ナイロン樹脂等に炭素繊維等のフィラーを配合してなる熱伝導性の樹脂材料、オレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等により形成するようにしてもよい。また、熱伝導性シート61としては、電気絶縁性を有し、熱伝導率が0.1(W/mk)〜10(W/mk)のものが好ましい。
【0065】
図6はギヤケースのモータ取付部の内部を示す斜視図である。
【0066】
モータ取付部33の底壁33aには、ホルダベース42に設けられたシート装着部62に対応して、一対の凸部65が設けられている。これらの凸部65は、それぞれギヤケース31つまり底壁33aと一体に形成されており、それぞれ底壁33aからモータ本体12つまりホルダベース42の側に向けて突出する台形状となっている。また、各凸部65は、その外形がシート装着部62よりも一回り小さい矩形状とされている。
【0067】
ブラシユニット41つまりホルダベース42がモータ取付部33に装着されると、各凸部65は対応する保持壁63の内側に挿通されて対応するシート装着部62に所定の間隔を空けて対向し、その先端面65aにおいてシート装着部62に装着された熱伝導性シート61の他方の面に当接する。
【0068】
ここで、熱伝導性シート61の厚みは、ホルダベース42のシート装着部62とモータ取付部33の凸部65の先端面65aとの隙間よりも厚く形成されている。したがって、熱伝導性シート61は、シート装着部62と凸部65の先端面65aとの間に挟み込まれ、その厚みが20〜30%程度薄くなるように圧縮された状態で配置されている。これにより、熱伝導性シート61は、ブラシホルダ43の固定脚部43aとモータ取付部33の凸部65の先端面65aとに確実に接触する。
【0069】
このように、このワイパモータ11では、ホルダベース42に向けて突出する凸部65をギヤケース31に設け、この凸部65の先端面65aを熱伝導性シート61に当接させるようにしたので、ギヤケース31を熱伝導性シート61に確実に接触させることができる。
【0070】
また、このワイパモータ11では、熱伝導性シート61の厚みをシート装着部62と凸部65の先端面65aとの隙間よりも厚く形成し、熱伝導性シート61をシート装着部62と凸部65の先端面65aとの間に挟み込んで圧縮した状態で配置するようにしたので、熱伝導性シート61をブラシホルダ43の固定脚部43aとギヤケース31の凸部65とに確実に接触させることができる。
【0071】
各凸部65の先端面65aには、当該凸部65の熱伝導性シート61との接触面積を拡大するために、リブ部66が設けられている。このリブ部66は凸部65の先端面65aからホルダベース42の側に向けて突出する十字形のリブ状に形成されている。
【0072】
図7はブラシホルダの固定脚部と凸部に設けられたリブ部との位置関係を示す説明図であり、図8は図7におけるA−A線に沿う断面図である。
【0073】
図7に示すように、ブラシホルダ43の各固定脚部43aの先端部分は対応するシート装着部62の4隅に配置されている。これに対して、凸部65の先端面65aに形成された十字形のリブ部66は隣り合う固定脚部43aの間に形成される十字状の隙間に配置されている。つまり、ブラシホルダ43の各固定脚部43aは、十字形のリブ部66により区画された凸部65の先端面65aの4隅に配置されている。これにより、熱伝導性シート61を互いに逆向きに突出する固定脚部43aとリブ部66とにより挟み込んで、固定脚部43aとリブ部66とに確実に密着させることができる。
【0074】
このような構造により、このワイパモータ11では、モータ本体12が作動してコンミテータ23と摺接するブラシ44が発熱しても、その熱はブラシホルダ43つまり固定脚部43aから熱伝導性シート61を介して凸部65つまりギヤケース31に伝達され、当該ギヤケース31から外部に放射されることになる。
【0075】
このように、このワイパモータ11では、ギヤケース31の凸部65とホルダベース42のシート装着部62との間に熱伝導性シート61を配置し、ブラシホルダ43の固定脚部43aと凸部65の先端面65aとをこの熱伝導性シート61に接触させるようにしたので、ブラシ44が発した熱を、空気層ではなく、熱伝導性シート61によりギヤケース31に伝達させることができる。これにより、ブラシ44の熱を効率よくギヤケース31に伝達することが可能となり、ブラシ44の放熱性を高めることができる。
【0076】
また、このワイパモータ11では、ギヤケース31に設けられる凸部65の先端面65aにホルダベース42に向けて突出する十字形状のリブ部66を設けるようにしたので、凸部65と熱伝導性シート61との接触面積を大きくして、ギヤケース31と熱伝導性シート61との間の熱伝導効率を高めることができる。これにより、ブラシ44の放熱性をさらに高めることができる。
【0077】
さらに、このワイパモータ11では、ブラシホルダ43に設けられた4つの固定脚部43aをリブ部66により区画された凸部65の先端面65aの4隅に配置するようにしたので、リブ部66と固定脚部43aとにより熱伝導性シート61を挟み込んで熱伝導性シート61を確実に固定脚部43aとリブ部66とに接触させることができる。これにより、ブラシ44の放熱性をさらに高めることができる。
【0078】
図8に示すように、各リブ部66の凸部65の先端面65aに連なる側面66aは当該先端面65aに対して傾斜して形成されている。つまり、リブ部66は、その断面が台形状となるように形成されている。これにより、リブ部66と固定脚部43aとに逆向き押し潰された状態の熱伝導性シート61の湾曲部分が、リブ部66の側面66aとなす隙間を小さくすることができる。
【0079】
このように、このワイパモータ11では、リブ部66の凸部65の先端面65aに連なる側面66aを先端面65aに対して傾斜させるようにしたので、熱伝導性シート61とリブ部66の根本部分との間に生じる隙間を低減させて、熱伝導性シート61と凸部65との間の熱伝導性を高めることができる。
【0080】
図9はギヤケースのモータ取付部の外面に形成されたフィンを示す斜視図である。
【0081】
ギヤケース31のモータ取付部33の外面には複数の放熱用のフィン71が設けられている。これらのフィン71はギヤケース31と一体に形成され、モータ取付部33におけるギヤケース31の表面積を拡大している。これにより、ギヤケース31のモータ取付部33における放熱性が高められる。つまり、熱伝導性シート61を介してブラシ44からモータ取付部33に伝達された熱を、これらのフィン71により効率よく放熱することができる。
【0082】
このように、このワイパモータ11では、ギヤケース31のモータ取付部33の外面に複数の放熱用のフィン71を設けるようにしたので、熱伝導性シート61を介してモータ取付部33に伝達されたブラシ44の熱を、当該フィン71により効率よく外部に放熱して、ブラシ44の放熱性をさらに高めることができる。
【0083】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明を、車両のワイパ装置の駆動源として用いられるワイパモータ11に適用した場合を示しているが、これに限らず、例えば車両のパワーウインド装置の駆動源として用いられるパワーウインドモータやラジエター冷却装置の駆動源として用いられるファンモータなど、他の用途に用いられる減速機構付き電動モータや連続定格モータに本発明を適用してもよい。
【0084】
また、前記実施の形態においては、ブラシホルダ43には4つの固定脚部43aが設けられるが、これに限らず、例えば固定脚部43aを2つ設けるなど、その個数は問わない。
【0085】
さらに、前記実施の形態においては、リブ部66は4つの固定脚部43aに合わせて十字状に形成されているが、これに限らず、固定脚部43aの個数に合わせた形状にすることができる。例えば、ブラシホルダ43に2つの固定脚部43aを設けた場合には、リブ部66をH形状やI形状等に形成することができる。
【0086】
さらに、前記実施の形態においては、ベース保持部材としてバスタブ状に形成されたギヤケース31が用いられているが、これに限らず、例えば、カバー状に形成されたもの等、モータ本体の開口を覆う形状のものであればよい。
【0087】
さらに、前記実施の形態においては、ブラシホルダ43が用いられているが、これに限らず、例えば、ブラシを板ばね部材により保持するもの等、ブラシを保持するものであればよい。
【0088】
さらに、前記実施の形態においては、ブラシホルダ43の各固定脚部43aの先端に熱伝導性シート61の他方の面が当接する構成とされているが、これに限らず、熱伝導性部材の一方の面がギヤケースに当接し、他方の面がブラシ保持部材に当接する構成としてもよい。つまり、ブラシ保持部材の形状や熱伝導性シートとの当接位置が限られないので、熱伝導性のよい構造に適宜対応することができる。
【0089】
さらに、前記実施の形態においては、熱伝導性部材として熱伝導性シート61が用いられているが、これに限らず、熱伝導性部材をジェル状としてブラシ保持部材に塗布する構成としてもよい。また、熱伝導性部材は前記実施の形態に限らず、電気絶縁性を有し、空気の熱伝導率よりも良好なものであればよい。
【符号の説明】
【0090】
11 ワイパモータ(減速機構付き電動モータ)
12 モータ本体
13 減速機
13a 取り付け脚部
14 ヨーク
15 マグネット
16 アーマチュア
17 モータ軸
18 軸受
21 アーマチュアコア
21a スロット
22 アーマチュアコイル
23 コンミテータ
23a セグメント片
31 ギヤケース(ベース固定部材)
32 ウォームギヤ機構
32a ウォーム
32b ウォームホイル
33 モータ取付部
33a 底壁
33b 貫通孔
34 カバー
35,36 ねじ部材
37,38 軸受
41 ブラシユニット
42 ホルダベース
42a ガイド壁部
42b ベース部
42c 挿通孔
42d 円弧状部
42e 直線部
43 ブラシホルダ(ブラシ保持部材)
43a 固定脚部(固定部)
44 ブラシ
44a ピグテール
45 スプリング
46 給電端子
47 チョークコイル
48 出力軸
51 制御基板
52 リード部材
53 コネクタ
54 隔壁部材
61 熱伝導性シート(熱伝導性部材)
62 シート装着部
63 保持壁
64 固定孔
65 凸部
65a 先端面
66 リブ部
66a 側面
71 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流により回転されるモータ軸と、前記モータ軸が支持される有底筒状のモータ本体とを有する電動モータであって、
前記モータ軸に固定されたコンミテータと、
それぞれ固定部においてホルダベースに固定された複数の金属製のブラシ保持部材と、
それぞれ対応する前記ブラシ保持部材に保持され、前記コンミテータに摺接する複数のブラシと、
前記モータ本体の開口を覆い、前記ホルダベースが固定されるベース固定部材と、
前記ベース固定部材と前記ブラシ保持部材との間に設けられ、前記ベース固定部材と前記ブラシ保持部材の少なくとも一部に接触する熱伝導性部材とを有することを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
請求項1記載の電動モータにおいて、前記固定部は前記ブラシ保持部材の固定脚部から構成され、前記熱伝導性部材が前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの間に設けられ、前記ベース固定部材と前記固定脚部とに接触することを特徴とする電動モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動モータにおいて、前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの隙間よりも前記熱伝導性部材の厚みを厚く形成し、前記熱伝導性部材を圧縮した状態で前記ベース固定部材と前記ホルダベースとの間に配置することを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記熱伝導性部材が絶縁性を有する熱伝導性樹脂により形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記熱伝導性部材がアクリル系材料により形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記熱伝導性部材が熱伝導性シートにより形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記熱伝導性部材が絶縁性を有し、前記ブラシ保持部材の少なくとも一部に塗布することにより形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記ホルダベースと前記ベース固定部材との少なくともどちらか一方は前記熱伝導性部材の外周を囲んで保持する保持壁を有することを特徴とする電動モータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記ベース固定部材に前記ホルダベースに向けて突出する凸部を設け、該凸部の先端面を前記熱伝導性部材に当接させたことを特徴とする電動モータ。
【請求項10】
請求項9記載の電動モータにおいて、前記凸部の先端面に前記ホルダベースに向けて突出するリブ部を設けたことを特徴とする電動モータ。
【請求項11】
請求項10記載の電動モータにおいて、前記リブ部は十字形状となることを特徴とする電動モータ。
【請求項12】
請求項11記載の電動モータにおいて、前記ブラシ保持部材にそれぞれ4つの固定脚部を設け、それぞれの前記固定脚部を前記リブ部に区画された前記凸部の先端面の4隅に配置したことを特徴とする電動モータ。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記リブ部の前記凸部の先端面に連なる側面は前記先端面に対して傾斜することを特徴とする電動モータ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記ベース固定部材の外面に放熱用のフィンを設けたことを特徴とする電動モータ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、当該電動モータが車両に用いられる減速機構付き電動モータであることを特徴とする電動モータ。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、当該電動モータが車両に用いられる連続定格モータであり、前記ベース固定部材がカバー形状であることを特徴とする電動モータ。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、当該電動モータが車両のラジエター冷却装置の駆動源として用いられるファンモータであり、前記ベース固定部材がカバー形状であることを特徴とする電動モータ。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、当該電動モータが車両のワイパ装置の駆動源として用いられるワイパモータであり、前記ベース固定部材が前記ホルダベースを収容するギヤケースであることを特徴とする電動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−35962(P2011−35962A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177214(P2009−177214)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】