説明

電動リニアアクチュエータ

【課題】ボールねじの作動ロックを回避すると共に、低コストで回転性能の優れた電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】ハウジング2が、第1のハウジング2aと第2のハウジング2bとからなり、第1のハウジング2aに電動モータが取り付けられ、第1、第2のハウジング2a、2bの衝合部にねじ軸10を収容するための袋孔11、12が形成されると共に、減速機構6が、モータ軸に固定された入力歯車3と、この入力歯車3に噛合する中間歯車4と、この中間歯車4に噛合し、ナット18に一体に固定された出力歯車5とを備え、中間歯車4が、第1のハウジング2aと第2のハウジング2bにそれぞれ植設された歯車軸22にシェル型針状軸受23を介して回転自在に支承され、中間歯車4の両側にリング状のワッシャ27、28が装着され、当該中間歯車4の歯部の幅が歯幅よりも小さく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用されるボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータ、詳しくは、自動車のトランスミッションやパーキングブレーキ等で、電動モータからの回転入力をボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換する電動リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種駆動部に使用される電動リニアアクチュエータにおいて、電動モータの回転運動を軸方向の直線運動に変換する機構として、台形ねじあるいはラックアンドピニオン等の歯車機構が一般的に使用されている。これらの変換機構は、滑り接触部を伴うため動力損失が大きく、電動モータの大型化や消費電力の増大を余儀なくされている。そのため、より効率的なアクチュエータとしてボールねじ機構が採用されるようになってきた。
【0003】
従来の電動リニアアクチュエータとしては、例えば、ハウジングに支持された電動モータにより、ボールねじを構成するボールねじ軸を回転駆動自在とし、このボールねじ軸を回転駆動することによってナットに結合された出力部材を軸方向に変位可能としている。ボールねじ機構は、摩擦が非常に低く、出力部材側に作用するスラスト荷重によって簡単にボールねじ軸が回転してしまうので、電動モータが停止時に出力部材を位置保持する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、電動モータにブレーキ手段を設けたり、あるいは伝達手段としてウオームギアのような低効率なものを設けることがなされているが、その代表的なものとして、図5に示すような電動リニアアクチュエータが知られている。この電動リニアアクチュエータ50は、回転運動を直線運動に変換するボールねじ51を備えたアクチュエータ本体52と、電動モータ53の回転運動をアクチュエータ本体52に伝達する歯車減速機構54と、歯車減速機構54を構成する第1歯車55に係合してアクチュエータ本体52を位置保持する位置保持機構56とを備えている。
【0005】
ボールねじ51は、外周面に螺旋状のねじ溝57aが形成され、出力軸としてのねじ軸57と、このねじ軸57に外嵌され、内周面に螺旋状のねじ溝58aが形成されたナット58と、対向する両ねじ溝57a、58aによって形成された転動路に転動自在に収容された多数のボール59とを備えている。
【0006】
アクチュエータ本体52は、ハウジング60の内周に、ナット58が一対の玉軸受61、62を介して回転自在に支持されると共に、ねじ軸57が、ハウジング60に対して相対回転不能で、かつ軸方向に移動自在に支持されている。そして、ナット58が歯車減速機構54を介して回転駆動されることにより、ねじ軸57が直線運動に変換される。
【0007】
歯車減速機構54は、電動モータ53のモータ軸53aに固定された小径の平歯車からなる第1歯車55と、この第1歯車55に噛合し、ナット58の外周に一体に形成された大径の平歯車からなる第2歯車63とから構成されている。
【0008】
位置保持機構56は、第1歯車55に対して係脱自在に設けられているロック部材としてのシャフト64と、このシャフト64を第1歯車55に対して係脱する方向に駆動する駆動手段としてのソレノイド65とを備えている。シャフト64は棒状をなし、ソレノイド65によって直線駆動され、その先端部が受部66に係脱するようになっている。このように、ソレノイド65を制御することにより、シャフト64が第1歯車55に係合して回転が阻止されるので、振動荷重が作用した場合においても、係合面が滑ることなく安定してアクチュエータ本体52のねじ軸57を位置保持することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−156416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした従来の電動リニアアクチュエータ50では、ソレノイド65を制御することにより、シャフト64が第1歯車55に係合して回転が阻止されるので、振動荷重が作用した場合においても、係合面が滑ることなく安定してアクチュエータ本体52のねじ軸57を位置保持することができる特徴を備えている。
【0011】
然しながら、この種の電気的な制御によって必要な作動が得られる電動リニアアクチュエータ50では、バッテリー電圧の降下により電源供給ができない状態になった場合、電動リニアアクチュエータ50の制御が不能になることが考えられる。この場合、ねじ軸57が押される側の荷重を受けた状況において、ソレノイド65や電動モータ53が作動不能となった場合は、ナット58回りの慣性モーメントにより回転し続けるためねじ軸57が直動する。この結果、ねじ軸57がハウジング60の内壁に衝突して作動ロックの状態となり、電動モータ53での復帰ができなくなってしまう恐れがある。
【0012】
また、小径の平歯車からなる第1歯車55と大径の平歯車からなる第2歯車63の1段の組み合わせにより構成された歯車減速機構54において、減速比を大きくしたり、レイアウト上の制約がある場合、モータ軸53aとねじ軸57の間に歯車軸を設け、2段の組み合わせ構造とする方法が採用される。この場合、加工コストアップ、質量アップ、部品点数増加によるコストアップ等の課題がある。こうした課題を最小限に抑えつつ、回転性能の優れた中間軸の歯車であることが望ましい。
【0013】
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ボールねじの作動ロックを回避すると共に、低コストで回転性能の優れた電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記ハウジングが第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなり、前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する中間歯車と、この中間歯車に噛合し、前記ナットに一体に固定された出力歯車とを備え、前記中間歯車が、前記第1のハウジングと第2のハウジングにそれぞれ植設された歯車軸に軸受を介して回転自在に支承されている。
【0015】
このように、電動モータの回転力を伝達する減速機構と、この減速機構を介して電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、ボールねじ機構が、ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、駆動軸と同軸状に一体化されて外周にナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、ハウジングが第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなり、第1のハウジングに電動モータが取り付けられ、第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部にねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、減速機構が、モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する中間歯車と、この中間歯車に噛合し、ナットに一体に固定された出力歯車とを備え、中間歯車が、第1のハウジングと第2のハウジングにそれぞれ植設された歯車軸に軸受を介して回転自在に支承されているので、ボールねじの作動ロックを回避すると共に、低コストで回転性能の優れた電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【0016】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記歯車軸の端部のうち一方の端部が前記ハウジングに圧入されると共に、他方の端部が前記ハウジングにすきまばめで嵌挿されていれば、ミスアライメントを許容して円滑な回転性能を確保することができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、前記中間歯車に装着される軸受が当該中間歯車の内径に圧入された鋼板プレス製の外輪と、保持器を介して転動自在に収容された複数の針状ころとを備えたシェル型の針状ころ軸受で構成されていれば、入手性が高く、低コスト化を図ることができる。
【0018】
好ましくは、請求項4に記載の発明のように、前記軸受の幅が前記中間歯車の歯幅よりも小さく設定されていれば、摩擦による軸受側面の摩耗や変形を防止することができ、円滑な回転性能を得ることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、前記中間歯車の両側にリング状のワッシャが装着されると共に、前記中間歯車の歯部の幅が歯幅よりも小さく形成されていれば、中間歯車が直接ハウジングに接触するのを防止すると共に、ワッシャとの接触面積を小さくすることができ、回転時の摩擦抵抗を抑えて円滑な回転性能を得ることができる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明のように、前記ワッシャがオーステナイト系ステンレス鋼板で形成されていても良いし、また、請求項7に記載の発明のように、前記ワッシャが、繊維状強化材が所定量充填された熱可塑性の合成樹脂で形成されていても良い。これにより、強度や耐摩耗性が高くなり、耐久性を向上させることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明のように、前記中間歯車に装着される軸受が滑り軸受からなり、この滑り軸受がグラファイト微粉末を添加した多孔質金属からなる含油軸受で構成されると共に、前記中間歯車の歯幅よりも大きく設定されていれば、ワッシャを装着しなくても中間歯車がハウジングに接触して摩耗するのを防止し、回転時の摩擦抵抗を抑えて円滑な回転性能を得ることができると共に、部品点数増加を抑えて低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明のように、前記滑り軸受が熱可塑性ポリイミド樹脂で形成されていれば、低コスト化を図りつつ、耐摩耗性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、ハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記ハウジングが第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなり、前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する中間歯車と、この中間歯車に噛合し、前記ナットに一体に固定された出力歯車とを備え、前記中間歯車が、前記第1のハウジングと第2のハウジングにそれぞれ植設された歯車軸に軸受を介して回転自在に支承されているので、ボールねじの作動ロックを回避すると共に、低コストで回転性能の優れた電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図である。
【図3】図1の中間歯車部を示す要部拡大図である。
【図4】図3の変形例を示す要部拡大図である。
【図5】従来の電動リニアアクチュエータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記ハウジングが第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなり、前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する中間歯車と、この中間歯車に噛合し、前記ナットに一体に固定された出力歯車とを備え、前記中間歯車が、前記第1のハウジングと第2のハウジングにそれぞれ植設された歯車軸にシェル型針状軸受を介して回転自在に支承され、前記中間歯車の両側にリング状のワッシャが装着され、当該中間歯車の歯部の幅が歯幅よりも小さく形成されている。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図、図3は、図1の中間歯車部を示す要部拡大図、図4は、図3の変形例を示す要部拡大図である。
【0027】
この電動リニアアクチュエータ1は、図1に示すように、アルミ軽合金からなるハウジング2と、このハウジング2に取り付けられた電動モータ(図示せず)と、この電動モータのモータ軸(図示せず)に取付けられた入力歯車3に噛合する中間歯車4、出力歯車5からなる減速機構6と、この減速機構6を介して電動モータの回転運動を駆動軸7の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構8と、このボールねじ機構8を備えたアクチュエータ本体9とを備えている。
【0028】
ハウジング2は、第1のハウジング2aと、その端面に衝合された第2のハウジング2bとからなり、固定ボルト(図示せず)によって一体に固定されている。第1のハウジング2aには電動モータが取り付けられると共に、これら第1のハウジング2aと第2のハウジング2bの衝合部には、ねじ軸10を収容するための袋孔11、12が形成されている。
【0029】
電動モータのモータ軸は、その端部に入力歯車3が圧入により相対回転不能に取り付けられ、第2のハウジング2bに装着された深溝玉軸受からなる転がり軸受13によって回転自在に支持されている。平歯車からなる中間歯車4に噛合する出力歯車5は、後述するボールねじ機構8を構成するナット18にキー14を介して一体に固定されている。
【0030】
駆動軸7は、ボールねじ機構8を構成するねじ軸10と一体に構成され、この駆動軸7の一端部(図中右端部)に係止ピン15、15が植設される。ここで、ハウジング2bの袋孔12に装着され、軸方向に延びるガイド溝を有するガイド部材に係止ピン15、15を係合させることにより、ねじ軸10が、回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されている。
【0031】
ボールねじ機構8は、図2に拡大して示すように、ねじ軸10と、このねじ軸10にボール17を介して外挿されたナット18とを備えている。ねじ軸10は、外周に螺旋状のねじ溝10aが形成され、軸方向移動自在に、かつ回転不可に支承されている。一方、ナット18は、ねじ軸10に外装されると共に、内周にねじ軸10のねじ溝10aに対応する螺旋状のねじ溝18aが形成され、これらねじ溝10a、18aとの間に多数のボール17が転動自在に収容されている。そして、ナット18は、ハウジング(図示せず)に対して、2つの支持軸受19、20を介して回転自在に、かつ軸方向移動不可に支承されている。21は、ナット18のねじ溝18aを連結して循環部材を構成する駒部材で、この駒部材21によって多数のボール17が無限循環することができる。
【0032】
各ねじ溝10a、18aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール17との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
【0033】
ナット18はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、真空浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、熱処理後のスケール除去のためのバフ加工等を省略することができ、低コスト化を図ることができる。一方、ねじ軸10はS55C等の中炭素鋼あるいはSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、高周波焼入れ、あるいは浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0034】
ナット18の外周面18bには減速機構6を構成する出力歯車5が一体に固定されると共に、この出力歯車5の両側に2つの支持軸受19、20が所定のシメシロを介して圧入されている。これにより、駆動軸7からスラスト荷重が負荷されても支持軸受19、20と出力歯車5の軸方向の位置ズレを防止することができる。また、2つの支持軸受19、20は、両端部にシールド板19a、20aが装着された密封型の深溝玉軸受で構成され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から摩耗粉等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0035】
ここで、図3に示すように、歯車軸22は第1、第2のハウジング2a、2bに植設され、中間歯車4は、転がり軸受23を介してこの歯車軸22に回転自在に支承されている。歯車軸22の端部のうち、例えば、第1のハウジング2a側の端部を圧入する場合、第2のハウジング2b側の端部をすきまばめに設定することにより、ミスアライメント(組立誤差)を許容して円滑な回転性能を確保することができる。本実施形態では、転がり軸受23は、中間歯車4の内径4aに圧入される鋼板プレス製の外輪24と、保持器25を介して外輪24に転動自在に収容された複数の針状ころ26とを備えた、所謂シェル型の針状ころ軸受で構成されている。これにより、入手性が高く、低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、中間歯車4の両側にはリング状のワッシャ27、28が装着され、中間歯車4が直接第1、第2のハウジング2a、2bに接触するのを防止している。ここで、中間歯車4の歯部4bの幅が歯幅よりも小さく形成されている。これにより、ワッシャ27、28との接触面積を小さくすることができ、回転時の摩擦抵抗を抑えて円滑な回転性能を得ることができる。ここで、ワッシャ27、28は、強度や耐摩耗性が高いオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。の平ワッシャからなる。なお、これ以外にも、例えば、黄銅や焼結金属、または、GF(グラス繊維)等の繊維状強化材が所定量充填されたPA(ポリアミド)66等の熱可塑性の合成樹脂で形成されていても良い。
【0037】
さらに、転がり軸受23の幅が中間歯車4の歯幅よりも小さく設定されている。これにより、摩擦による軸受側面の摩耗や変形を防止することができ、円滑な回転性能を得ることができる。
【0038】
図4に、図3の変形例を示す。歯車軸22は第1、第2のハウジング2a、2bに植設され、中間歯車29は、滑り軸受30を介してこの歯車軸22に回転自在に支承されている。本実施形態では、中間歯車29は、歯部29bの幅が歯幅と同一に形成されると共に、滑り軸受30は、中間歯車29の内径29aに圧入され、グラファイト微粉末を添加した多孔質金属からなる含油軸受(NTN株式会社商品名;ベアファイト(登録商標))で構成され、中間歯車29の歯幅よりも大きく設定されている。これにより、ワッシャを装着しなくても中間歯車29が第1、第2のハウジング2a、2bに接触して摩耗するのを防止し、回転時の摩擦抵抗を抑えて円滑な回転性能を得ることができると共に、部品点数増加を抑えて低コスト化を図ることができる。なお、滑り軸受30は、これ以外にも、例えば、射出成形を可能にした熱可塑性ポリイミド樹脂で形成されていても良い。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用され、電動モータからの回転入力を、ボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換するボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータに適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 電動リニアアクチュエータ
2 ハウジング
2a 第1のハウジング
2b 第2のハウジング
3 入力歯車
4、29 中間歯車
4a、29a 中間歯車の内径
4b、29b 歯部
5 出力歯車
6 減速機構
7 駆動軸
8 ボールねじ機構
9 アクチュエータ本体
10 ねじ軸
10a、18a ねじ溝
11、12 袋孔
13、23 転がり軸受
14 キー
15 係止ピン
17 ボール
18 ナット
19、20 支持軸受
19a、20a シールド板
21 駒部材
22 歯車軸
24 外輪
25 保持器
26 針状ころ
27、28 ワッシャ
30 滑り軸受
50 電動リニアアクチュエータ
51 ボールねじ
52 アクチュエータ本体
53 電動モータ
53a モータ軸
54 歯車減速機構
55 第1歯車
56 位置保持機構
57 ねじ軸
57a、58a ねじ溝
58 ナット
59 ボール
60 ハウジング
61、62 玉軸受
63 第2歯車
64 シャフト
65 ソレノイド
66 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
このハウジングに取り付けられた電動モータと、
この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、
この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、
このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、
このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、
前記ハウジングが第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなり、前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、
前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する中間歯車と、この中間歯車に噛合し、前記ナットに一体に固定された出力歯車とを備え、
前記中間歯車が、前記第1のハウジングと第2のハウジングにそれぞれ植設された歯車軸に軸受を介して回転自在に支承されていることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記歯車軸の端部のうち一方の端部が前記ハウジングに圧入されると共に、他方の端部が前記ハウジングにすきまばめで嵌挿されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記中間歯車に装着される軸受が当該中間歯車の内径に圧入された鋼板プレス製の外輪と、保持器を介して転動自在に収容された複数の針状ころとを備えたシェル型の針状ころ軸受で構成されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記軸受の幅が前記中間歯車の歯幅よりも小さく設定されている請求項3に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記中間歯車の両側にリング状のワッシャが装着されると共に、前記中間歯車の歯部の幅が歯幅よりも小さく形成されている請求項3または4に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ワッシャがオーステナイト系ステンレス鋼板で形成されている請求項5に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記ワッシャが、繊維状強化材が所定量充填された熱可塑性の合成樹脂で形成されている請求項5に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記中間歯車に装着される軸受が滑り軸受からなり、この滑り軸受がグラファイト微粉末を添加した多孔質金属からなる含油軸受で構成されると共に、前記中間歯車の歯幅よりも大きく設定されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記滑り軸受が熱可塑性ポリイミド樹脂で形成されている請求項8に記載の電動リニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104456(P2013−104456A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247259(P2011−247259)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】