説明

電動リニアアクチュエータ

【課題】リミットスイッチの位置決めを電動アクチュエータの伸縮方向の調整だけで簡単にできるようにする。
【解決手段】電動モータで回転するねじ軸に螺合されたナット部材と、ナット部材に接続された移動体に設けられた突起によって動作するリミットスイッチを備えた電動リニアアクチュエータにおいて、前記リミットスイッチ24をマイクロスイッチ17と、スイッチレバー18とで構成し、前記スイッチレバーと前記マイクロスイッチのプランジャー22および突起との接触部位における前記スイッチレバーの水平断面形状を曲線にするとともに前記スイッチレバーを前記マイクロスイッチと分離して設けたものである。この構成により、リミットスイッチの位置調整を伸縮方向のみで行うことができ、設置スペースの縮小、位置修正による配線替えも不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リニアアクチュエータに関し、特にその動作範囲を制限するためのリミットスイッチの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電動リニアアクチュエータは、雄ねじ部を備えた軸を電動モータによって回転駆動し、軸に螺合装着された雌ねじ部材を軸に沿って駆動させる送りねじ式が実用されている。雌ねじ部材には駆動筒が連結されており、駆動筒の先端に移動される装置や部材を取り付けて使用される。例えば、医療・介護用ベッドの動作部やドアの開閉部などに使用される。
【0003】
電動リニアアクチュエータには、コントローラを使って回転数や回転方向を自由に変えることのできるサーボモータを採用する方式や、減速機を介して低速回転を得る定回転電動機を採用する方式がある。後者の場合には伸縮するシャフトをストロークエンドで停止させるための位置検出用リミットスイッチを備え、ストロークエンドで電動機を停止する方式の電動リニアアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、背景技術として、図5にボールねじを使った送りねじ式電動リニアアクチュエータの縦断面図、図6にねじ式電動リニアアクチュエータの上面部分拡大図を示し、図7にリミットスイッチの縦断面拡大図、図8にリミットスイッチの位置調節図が示されている。
【0005】
ボールねじ式電動リニアアクチュエータ101は、電動モータ102に歯車減速機構103が設けられ、この歯車減速機構103に固定筒104が取り付けられている。この固定筒104の内部には、駆動部である駆動筒105が収納され、駆動筒105の内部にはボールねじ軸106が収納されている。このボールねじ軸106は歯車減速機構103に取り付けられ、電動モータ102が回転駆動することによって所定の回転数で回転する。ボールねじ軸106が正転または逆転することにより、これに螺合装着された雌ねじ部材107が軸方向に進退移動し、雌ねじ部材107に取り付けられた駆動筒105がともに軸方向に進退移動する。
【0006】
雌ねじ部材107と駆動筒105の接続部には、駆動筒105の移動方向に対し直角方向にリミットスイッチ112を動作させるための円筒状突起110が設けられている。円筒状突起110は固定筒104の筒壁における軸心方向に沿って設けられた長溝111にガイドされ、駆動筒105の移動方向に移動する。
【0007】
リミットスイッチ112は、図6に示すとおり円筒状突起110のガイド用長溝111に沿って固定筒104の筒壁外周に設けられた取り付け座113に第2ベースプレート127を取り付け、さらに第2ベースプレート127の上に第1ベースプレート114を取り付け、さらに第1ベースプレート114の上にリミットスイッチ112が固定されている。第1ベースプレート114の取り付け穴128は、リミットスイッチ112を駆動筒105の移動方向(以下、X軸方向)に調整すべく一端を開放した長穴に穿孔されている。第2ベースプレート127の取り付け穴129は、リミットスイッチ112を駆動筒の移動方向と直角方向(以下、Y軸方向)に調整可能とすべくY軸方向の長穴に穿孔されている。
【0008】
また、リミットスイッチ112は図7の拡大縦断面図に示すとおり、マイクロスイッチ115とスイッチレバー116とから構成されている。マイクロスイッチ115は大別して、作動部117、ケース部118、スナップ動作機構部119、接点部120、端子部121の5つの要素から構成されている。スナップ動作機構部119は、作動部117のプランジャー122がフリーの位置FPから動作位置PTまで押し込まれることによって、プランジャー122の操作速度に関係なく可動接点123が固定接点124から他の固定接点125に一定の速度で素早く切換わる機構を備えている。
【0009】
以上のとおり構成されたリミットスイッチ112をボールねじ式電動リニアアクチュエータ101に設置する要領を図8に示す。図8(a)は円筒状突起110を設置位置まで移動させた状態を示す。スイッチレバー116はプランジャー122のフリー位置FPに接触した状態であり、リミットスイッチ112は動作していない。そこで、図8(b)に示すとおり、第1ベースプレート114を矢印Aの方向へX軸修正を行う。その結果、わずかプランジャー122を押し込むが、動作位置PTまでは押し込めていない。さらに、図8(c)に示すとおり第2ベースプレート127を矢印Bの方向へY軸修正をおこないプランジャー122を動作位置PTまで押し込んでリミットスイッチ112を設定する。
【0010】
前記背景技術例では、リミットスイッチ112は駆動筒105の移動範囲の中間に1ヵ所設置してあり、リミットスイッチ112で電動モータ102を制御するためのものではなく、駆動筒105の位置で他のものを制御するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−304120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のリミットスイッチ112は、マイクロスイッチ115のプランジャー122をできる限り垂直に押すために、スイッチレバー116とプランジャー122との接触部位において、できる限り小さな傾斜角度で接触している。従って、X軸方向の位置修正のみでリミットスイッチの位置決めを行うことができずY軸方向修正も合わせて行う必要があり手間がかかる。さらに、部品点数が多くなるとともに広い設置スペースが必用となり、装置が大型化する。
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、X軸方向のみの修正で、手間をかけることなくリミットスイッチの位置決めを可能にし、部品点数の削減とコンパクトな電動リニアアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の電動リニアアクチュエータは、電動モータの駆動力により回転するねじ軸と、前記ねじ軸に螺合装着され回転を受けてねじ軸上を進退移動するナット部材と、前記ねじ軸を内部に収納するとともに前記ナット部材に接続されて進退移動する移動体と、前記移動体を内部に収納する固定部材と、前記固定部材に設けたリミットスイッチと、前記移動体の外周部に設けられたリミットスイッチを動作させる突起とからなる電動リニアアクチュエータにおいて、前記リミットスイッチを、所定の位置まで押し込むことにより動作させるプランジャーを備えたマイクロスイッチと、前記突起の移動により力を受けて前記プランジャーを所定の位置まで押し込むスイッチレバーとで構成し、前記スイッチレバーの前記プランジャーとの接触部位および前記突起との接触部位における前記スイッチレバーの水平断面形状を曲線にするとともに前記スイッチレバーを前記マイクロスイッチと分離して設けたものである。
【0015】
すなわち、マイクロスイッチのプランジャーに接触する部位において、スイッチレバーの水平断面形状を従来の直線形状から曲線にすることにより、リミットスイッチの位置調整における移動体の移動方向(以下、X軸方向)の修正距離を小さくすると共に移動体の移動方向と直角方向(以下、Y軸方向)の修正を不要にしたものである。さらに、スイッチレバーをマイクロスイッチと分離して設けることにより、マイクロスイッチの移動に伴う配線の付け替えなどの手数を省略できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、リミットスイッチのY軸方向調整部材を省略できるとともに取り付けが簡単になり、さらに、リミットスイッチの設置エリアを小さくすることで装置全体をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電動リニアアクチュエータの縦断面図である。
【図2】本発明の電動リニアアクチュエータの上面部分図である。
【図3】本発明の電動リニアアクチュエータのスイッチレバー加工工程図である。
【図4】本発明の電動リニアアクチュエータのリミットスイッチ位置修正説明図である。
【図5】従来の電動リニアアクチュエータの縦断面図である。
【図6】従来の電動リニアアクチュエータの上面部分拡大図である。
【図7】従来の電動リニアアクチュエータのマイクロスイッチ部拡大図である。
【図8】従来電動リニアアクチュエータのリミットスイッチ位置修正説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の電動リニアアクチュエータの縦断面図、図2は本発明の電動リニアアクチュエータの上面部分図3は本発明の電動リニアアクチュエータのスイッチレバー加工工程図、図4は本発明の電動リニアアクチュエータのリミットスイッチ位置修正説明図を示す。
【0019】
電動リニアアクチュエータ1は、電動モータ2と、歯車減速機構3と、歯車減速機構3に取り付けられた固定筒4と、固定筒4の内部に収納された駆動筒5と、駆動筒5の内部に収納されたボールねじ軸6と、ボールねじ軸6に螺合装着された移動体7と、リミットスイッチ機構8と、ケース9と、カバー10と、アダプター15から構成されている。
【0020】
歯車減速機構3は二段減速されており、一段目は電動モータ2の出力軸端部に削成された小歯車11と一段目大歯車12で構成され、二段目は一段目大歯車12と同軸に一体で削成された二段目小歯車13とボールねじ軸6の反ねじ側に組み込まれた二段目大歯車14とで構成されている。一段目と二段目の軸受はカバー10とアダプター15に組み込まれ、電動モータ2の回転により減速された回転がボールねじ軸6に伝達される。ボールねじ軸6の回転方向により移動体7はボールねじ軸6の軸上を進退方向に移動し、移動体7に取り付けられた駆動筒5を伸長または収納させる。
【0021】
リミットスイッチ機構8は、移動体7と駆動筒5の接続部において駆動筒5の外周に移動方向と直角に設けられた円筒状突起16と、固定筒4の外周壁に設けられた2個のリミットスイッチ24から構成されている。(図2参照)
【0022】
リミットスイッチ24は、図2に示すとおりマイクロスイッチ17と、マイクロスイッチ17から分離されたスイッチレバー18とで構成されている。2個のリミットスイッチ24は同じ構成をしており、固定筒4に設けられた円筒状突起16のガイド用長溝19を挟んで対角に設けられた取り付け座21に設置されている。
【0023】
スイッチレバー18は、図3の加工工程図に示すとおりL字型板材18aの短片18bにスイッチレバー18の取り付け用長穴23を長片18cに対し直角方向に2ヵ所平行に穿孔され(図3(a)参照)、次に長片18cを破線L1に沿って短片18b側に直角に曲げられ(図3(b)参照)、さらに、長片18cを破線L2に沿って短片18b側と反対方向に略70度曲げられている(図3(c)参照)。次に略70度曲げられた位置から先端までの長さの中央部より先端側の部位において、厚さ方向(図3(c)のH方向)に見た形状が略70度線(図3(d)参照)より大きい角度側に突出する曲線接触部18dが形成され、さらに曲線接触部18dの終端から長片18cの先端までの部位に略70度線より小さい角度側に突出する曲線接触部18eが形成されたものである。
【0024】
上記のとおり形成されたスイッチレバー18とマイクロスイッチ17を組み合わせてリミットスイッチ24を構成するには、リミットスイッチ24の取り付け座21にマイクロスイッチ17のプランジャー22を長溝19に向け、長溝19に平行にマイクロスイッチ17を取り付ける。マイクロスイッチ17を上面より見てプランジャー22のフリー位置FPにスイッチレバー18の曲線接触部18dを接触させるとともに、マイクロスイッチ17の左側にスイッチレバー18の取り付け部18bを取り付ける(図4(e)参照)。
【0025】
以上のとおり構成されたリミットスイッチ24を電動リニアアクチュエータ1に設置する要領を図4により説明する。図4(e)は電動モータ2を駆動し、円筒状突起16を伸長方向のストロークエンドの設定位置まで移動させた状態を示す。この状態では円筒状突起16はスイッチレバー18の曲線接触部18eに接触せず曲線接触部18dはプランジャー22のフリー位置FPにある。そこで図4(f)に示すとおり、スイッチレバー18の曲線接触部18eが円筒状突起16に接触し曲線接触部18dがプランジャー22を動作位置PTに押し込むまでスイッチレバー18を図4(f)の矢印Cの方向にX軸修正する。
【0026】
プランジャー22に接触するスイッチレバー18の接触部の形状が曲線であるため接触部位における接線傾斜角度が大きく、スイッチレバー18の小さなX軸方向移動で大きなプランジャー22の押し込み方向移動距離が得られる。従って、従来方式のリミットスイッチに比べX軸方向の修正距離が小さく、リミットスイッチの設置領域を小さくできるので装置をコンパクトにすることができる。また、位置修正がX軸方向のみで可能となるため、部品点数の削減や設置時間の短縮がはかれる。さらに、スイッチレバーのみの移動が可能なので移動による配線のやり直しなどの手間も削減することができる。なお、対角位置に設置された収納方向のリミットスイッチ24についても同じ構成のため、説明を省略する。
【0027】
以上の構成と設定により、駆動筒5の伸長および収納の終端でリミットスイッチ24を動作させ、電動モータ2を運転・停止・反転の制御を行うことができる。
【0028】
本発明が提供する電動リニアアクチュエータの構成は以上のとおりであるが、上記ならびに図示例に限定されるものではない。例えば、ボールねじ軸に代えてアクメねじ軸による駆動も可能である。またスイッチレバーの固定方法、傾斜角度は図示例に限ったものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 電動リニアアクチュエータ
2 電動モータ
3 歯車減速機構
4 固定筒
5 駆動筒
6 ボールねじ軸
7 移動体
8 リミットスイッチ機構
9 ケース
10 カバー
11 小歯車
12 一段目大歯車
13 二段目小歯車
14 二段目大歯車
15 アダプター
16 円筒状突起
17 マイクロスイッチ
18 スイッチレバー
18a L字型板材
18b 短片
18c 長片
18d 曲線接触部
18e 曲線接触部
19 長溝
21 取り付け座
22 プランジャー
23 長穴
24 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの駆動力により回転するねじ軸と、前記ねじ軸に螺合装着され回転を受けてねじ軸上を進退移動するナット部材と、前記ねじ軸を内部に収納するとともに前記ナット部材に接続されて進退移動する移動体と、前記移動体を内部に収納する固定部材と、前記固定部材に設けたリミットスイッチと、前記移動体の外周部に設けられたリミットスイッチを動作させる突起とからなる電動リニアアクチュエータにおいて、前記リミットスイッチを、所定の位置まで押し込むことにより動作させるプランジャーを備えたマイクロスイッチと、前記突起の移動により力を受けて前記プランジャーを所定の位置まで押し込むスイッチレバーとで構成し、前記スイッチレバーの前記プランジャーとの接触部位および前記突起との接触部位における前記スイッチレバーの水平断面形状を曲線にするとともに前記スイッチレバーを前記マイクロスイッチと分離して設けたことを特徴とする電動リニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47552(P2013−47552A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186225(P2011−186225)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】