説明

電動作業機のエアコン装置

【課題】電動作業機のエアコン装置のヒータコアに加熱媒体として水を沸かして温水を供給している手段を、設置コストを安くし、大きな設置スペースを不要にし、保守点検などのメンテナンスを実質上不要にした手段にする。
【解決手段】ヒータコア(14)に油圧ポンプ(3a、3b)のドレン油および/またはパイロット回路(25)のリリーフ弁(27)のドレン油を供給する供給管路(L1、L5)と、ヒータコア(14)を通したドレン油をタンク(18)に導く排出管路(L2)を備え、ヒータコア(14)に加熱媒体としてドレン油を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動油圧ショベルのような、水冷式の冷却装置を備えていない電動作業機のエアコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動油圧ショベルのような電動作業機は、動力源として電動機を備え、エンジンを備えていない。したがって、ラジエータのような温水ができる冷却装置を備えていないので、エアコン装置のヒータコアには、温水として電気ヒータによって水が沸かされて送られる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−61230号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したとおりの形態の電動作業機のエアコン装置には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
すなわち、温水を電気ヒータによって生成するために、電動機を駆動する数100Vの電源の高電圧を100Vの低電圧に変換する機器、水のタンク、電気ヒータ、送水のための電動ポンプ、などが必要である。したがって、設置コストがかかり、大きな設置スペースも必要である。設置スペースが限られる小型の電動作業機に搭載するのは困難である。
【0005】
さらに、水タンクの保守点検、例えば水の補充、清掃、などのメンテナンスが必要である。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みなされたもので、その技術的課題は、設置コストを安くでき、大きな設置スペースを不要にし、保守点検などのメンテナンスを実質上不要にした、ヒータコアに加熱媒体を供給する手段を有した電動作業機のエアコン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記技術的課題を解決する電動作業機のエアコン装置として、エアコンユニットのヒータコアに加熱媒体として油圧ポンプのドレン油および/またはパイロット回路のリリーフ弁のドレン油を供給する供給管路と、ヒータコアを通したドレン油をタンクに導く排出管路とを備えていることを特徴とする電動作業機のエアコン装置が提供される。
【0008】
好適には、供給管路を排出管路に、供給管路のドレン油が規定の圧力を超えたときに開放する開放弁を備えている。また、供給管路を排出管路に、開閉切換可能にバイパスする切換弁を備えており、外気温度センサを備え、切換弁は、外気温度センサの検出温度が設定温度よりも高いときに供給管路を排出管路にバイパスする。さらに、供給管路に、サージ圧吸収用のアキュムレータを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って構成された電動作業機のエアコン装置は、加熱媒体として、油圧ポンプのドレン油および/またはパイロット回路のリリーフ弁のドレン油をヒータコアに供給する。電動作業機において、機体、作業装置の駆動などのために備えられる油圧ポンプの内部漏れであるドレン油およびパイロット回路のリリーフ弁のドレン油は、高圧から低圧に放出されるのでそのエネルギーが熱に変化しドレン油は加熱される。したがって、このドレン油をエアコンユニットに加熱媒体として供給することにより、設置コストを安くでき、大きな設置スペースを不要にし、保守点検などのメンテナンスを実質上不要にした、ヒータコアに加熱媒体を供給する手段を有した電動作業機のエアコン装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された電動作業機のエアコン装置について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0011】
図1を参照して説明する。全体を番号30で示す、電動作業機のエアコン装置は、エアコンユニット32の温風を生成するヒータコア14に加熱媒体として油圧ポンプ3a、3bのドレン油を供給する供給管路L1と、ヒータコア14を通したドレン油をタンク18に導く排出管路L2を備えている。
【0012】
電動作業機は、機体、作業装置の駆動などのために複数の油圧ポンプを装備し、実施例における2個の油圧ポンプ3a、3bは、可変容量型に形成され、ポンプドライブギヤ2を介して電動機1により駆動されている。排出管路L2にはフィルタ17が備えられている。
【0013】
エアコン装置30はまた、パイロット回路25のパイロット油圧を設定するリリーフ弁27のドレン油を供給管路L1に流す供給管路L5を備えている。パイロット回路25には、前記油圧ポンプ3bと同軸で駆動されるパイロットポンプ26の吐出油であるパイロット油が供給され、このパイロット油はリリーフ弁27をリリーフ状態にすることによりパイロット回路25のパイロット油圧を常に所定の圧力に保持している。
【0014】
供給管路L1には、サージ圧吸収用のアキュムレータ28が備えられている。
【0015】
エアコンユニット32は、周知のものであり詳細な説明は省略するが、ヒータコア14に併設された冷風を生成するためのエバポレータ13には、冷媒が、コンプレッサ4、コンデンサ10、レシーバドライヤ12、エバポレータ13を通り流され循環される。コンプレッサ4には電磁クラッチ7を介してプーリー4aが取り付けられ、プーリー4aはベルト6により電動機5のプーリー5aに接続されている。
【0016】
コンデンサ10は、電動作業機の作動油を冷却するオイルクーラ11に直列に設置され電動機8によって駆動されるファン9により生成される冷却風が通される。
【0017】
エバポレータ13およびヒータコア14には、エアコンユニット32に備えたブロアファン(図示していない)によって送られる風が通され、通過する風量がダンパ(図示していない)の開閉によって制御され、エアコンユニット32が生成する冷風あるいは温風が制御される。
【0018】
供給管路L1と排出管路L2の間には、供給管路L1のドレン油が規定の圧力を超えたときに供給管路L1を排出管路Lに開放する、開放弁であるチェックバルブ15が両管路を結ぶ管路L3に備えられている。この開放する圧力は、ヒータコア14および油圧ポンプ3a、3bのドレン室の耐圧強度を超えないように規定される。
【0019】
エアコン装置30はさらに、外気温度センサ21と、外気温度センサ21の検出温度が設定温度より高いときに供給管路L1を排出管路L2にバイパスする切換弁である電磁切換弁16を備えている。電磁切換弁16は、常時「閉」・通電時「開」の2位置弁で形成され、供給管路L1と排出管路L2を結ぶ管路L4に備えられ、外気温度センサ21の信号を処理する制御器24を介して操作される。
【0020】
図1とともに図2を参照して説明する。制御器24は、温度設定器20による設定温度と外気温度センサ21による検出温度の偏差を減算器22で求め、電磁切換弁制御器23で外気温度が設定温度に比較して規定以上高い場合は電磁切換弁16をONにして「開」位置にし、ドレン油がヒータコア14に流れないようにバイパスする。
【0021】
この設定温度は、例えば夏場の冷房時に高温のドレン油がヒータコア14に流れないように、所望の冷房温度よりも低い温度に設定される。
【0022】
上述したとおりの電動作業機のエアコン装置30の作用効果について説明する。
【0023】
本発明に従って構成された電動作業機のエアコン装置30は、加熱媒体として油圧ポンプ3a、3bのドレン油およびパイロット回路25のリリーフ弁27のドレン油がヒータコア14に供給される。電動作業機において、機体、作業装置の駆動などのために備えられる油圧ポンプの内部漏れであるドレン油およびパイロット回路のリリーフ弁からのドレン油は、高圧から低圧に放出される際にそのエネルギーが熱に変化し、ドレン油は加熱される。
【0024】
また、油圧ポンプ3a、3bのドレン油およびパイロット回路25のリリーフ弁27のドレン油は、定常的に流れるので、ドレン油は安定した加熱媒体として供給される。
【0025】
したがって、このドレン油をエアコンユニット32に加熱媒体として供給することにより、設置コストを安くでき、大きな設置スペースを不要にし、さらに保守点検などのメンテナンスを実質上不要にした、ヒータコアに加熱媒体を供給する手段を有したエアコン装置を提供できる。
【0026】
また、従来の電気ヒータにより水を沸かし温水をつくる場合の、水が暖まりにくくエアコン装置の暖房運転の準備に時間がかかる問題も改善できる。
【0027】
さらに、従来タンクに排出されオイルクーラ11(図1)によって冷却されていたドレン油によるエネルギーロスを、ヒータコアへの加熱媒体として有効に活用することができる。
【0028】
また、ドレン油は油圧ポンプ3a、3b、リリーフ弁27などから送り出されるので、従来電気ヒータにより水を沸かし温水をつくる場合に必要であった、送水用の電動ポンプのようなポンプを不要にすることができる。
【0029】
エアコン装置30は、供給管路L1、L5のドレン油が規定の圧力を超えたときに供給管路L1、L5を排出管路L2に開放する開放弁15を備えている。したがって、ヒータコア14および油圧ポンプ3a、3b、リリーフ弁27などのドレン室が異常圧により損傷するのが防止される。
【0030】
エアコン装置30はまた、外気温度センサ21の検出温度が設定温度より高いときに供給管路L1、L5を排出管路L2にバイパスする切換弁16を備えている。したがって、例えば夏場の冷房時に高温のドレン油がヒータコア14に流れないようにすることができ、効率よく冷房運転をすることができる。
【0031】
さらに、供給管路L1、L5のサージ圧を吸収するアキュムレータ28を備えているので、パイロット回路25のリリーフ弁27から放出されるドレン油量の変動(パイロット回路25の機器類の操作に応じてドレン油量が変わる)に対して、供給管路L1、L5の圧力変動を小さくできる。
【0032】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0033】
本発明の実施形態においては、エアコンユニット32のヒータコア14に加熱媒体として油圧ポンプ3a、3bのドレン油およびパイロット回路25のリリーフ弁27のドレン油が供給されているが、それぞれの発熱量あるいはヒータコア14に要求される熱量などに応じて、いずれか一方のドレン油のみを供給してもよい。
【0034】
本発明の実施形態においては、供給管路L1、L5を排出管路L2にバイパスする切換弁として制御器24を介し操作される電磁切換弁16を備えているが、この電磁切換弁16は手動のオンオフスイッチによって操作してもよい。また、切換弁を電磁切換弁でなく手動の切換弁にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従って構成された電動作業機のエアコン装置の構成説明図。
【図2】切換弁の開閉制御の説明図。
【符号の説明】
【0036】
3a、3b:油圧ポンプ
14:ヒータコア
15:チェックバルブ(開放弁)
16:電磁切換弁(切換弁)
18:タンク
21:外気温度センサ
25:パイロット回路
27:リリーフ弁
28:アキュムレータ
30:エアコン装置
32:エアコンユニット
L1:供給管路
L2:排出管路
L5:供給管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンユニットのヒータコアに加熱媒体として油圧ポンプのドレン油および/またはパイロット回路のリリーフ弁のドレン油を供給する供給管路と、
ヒータコアを通したドレン油をタンクに導く排出管路とを備えている
ことを特徴とする電動作業機のエアコン装置。
【請求項2】
供給管路を排出管路に、供給管路のドレン油が規定の圧力を超えたときに開放する開放弁を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の電動作業機のエアコン装置。
【請求項3】
供給管路を排出管路に、開閉切換可能にバイパスする切換弁を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の電動作業機のエアコン装置。
【請求項4】
外気温度センサを備え、
切換弁は、外気温度センサの検出温度が設定温度よりも高いときに供給管路を排出管路にバイパスする
ことを特徴とする請求項3記載の電動作業機のエアコン装置。
【請求項5】
供給管路に、サージ圧吸収用のアキュムレータを備えている
ことを特徴とする請求項1記載の電動作業機のエアコン装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−207641(P2008−207641A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44871(P2007−44871)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】