説明

電動倍力装置

【課題】本発明は、組立時の信頼性が向上する電動倍力装置を提供する。
【解決手段】ECUバスバー65の端部は、モータハウジング3内にて、電動モータ53に取付ネジ66により機械的及び電気的に接続されているが、本電動倍力装置1では、モータハウジング3に、取付ネジ66をモータハウジング3の外側から締め付けるための取付窓101を設け、該取付窓101に、該取付窓101を水密的に閉塞するための防水カバー100aを設け、該防水カバー100aに、各取付ネジ66の脱落を防止するための各円柱部107(脱落防止部)を設けたので、各取付ネジ66の脱落を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ機構に採用される電動倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動倍力装置では、ECUからの指令に応じて電動モータを駆動して、該電動モータからの回転を回転直動変換機構により直線運動に変換して出力部材に伝達して、該出力部材により、マスタシリンダのピストンを推進させて該マスタシリンダ内の圧力室にブレーキ液圧を発生させる構造を備え、ECUをモータハウジングと一体的に設けたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−202867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の発明に係る電動倍力装置では、モータハウジング内にて、バスバーの一端部がモータハウジング内の電動モータ(ステータ)にビスにより連結され、バスバーの他端部がECUハウジング内のバスバー端子に取付ねじにより連結されている。しかしながら、バスバー用の取付ねじが経年的に緩みを生じてしまうと脱落する懸念があり組立時の信頼性を向上させる必要があった。
【0005】
本発明は、組立時の信頼性が向上する電動倍力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る電動倍力装置の発明は、ECUと、該ECUの指令に応じて駆動する電動モータと、該電動モータからの回転を直線運動に変換する回転直動変換機構と、該回転直動変換機構からの直線運動を伝達する出力部材と、を備え、前記電動モータは、モータハウジングに収容され、該モータハウジングの外周に前記ECUを収容するECUハウジングが取り付けられ、前記モータハウジングの、前記ECUハウジングが取り付けられる箇所に貫通孔を設け、該貫通孔を通って前記電動モータと前記ECUとを電気的に接続するバスバーを設けた電動倍力装置において、前記バスバーの端部は、前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジング内にて、前記電動モータに取付ネジにより機械的及び電気的に接続され、前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジングに、前記取付ネジを前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジングの外側から締め付けるための取付窓を設け、該取付窓に、該取付窓を水密的に閉塞するための防水カバーを設け、該防水カバーに、前記取付ネジの脱落を防止する脱落防止部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動倍力装置では、組立時の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電動倍力装置の断面図である。
【図2】図2は、本電動倍力装置に採用された電動モータの端子台の斜視図である。
【図3】図3は、本電動倍力装置の要部拡大図である。
【図4】図4は、防水カバーを示し、(a)は一方からの側面図で、(b)は平面図で、(c)は他方からの側面図で、(d)は(b)のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図5は、本電動倍力装置のモータハウジング本体に備えた取付窓の正面図である。
【図6】図6は、本電動倍力装置のモータハウジング本体に備えた取付窓に防水カバーが装着された状態を示す正面図である。
【図7】図7は、他の実施形態に係る防水カバーが採用された本電動倍力装置の要部拡大図である。
【図8】図8は、他の実施形態に係る防水カバーを示し、(a)は一方からの側面図で、(b)は平面図で、(c)は他方からの側面図で、(d)は(b)のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る電動倍力装置1の構造を示したものである。図1に示すように、本電動倍力装置1は、エンジンルームR1と車室R2とを仕切る隔壁Wに一端が固定され、他端に後述のタンデムマスタシリンダ2を結合したモータハウジング3を備えている。なお、説明の便宜上、以下、エンジンルームR1側を前側、車室R2側を後側とそれぞれ呼ぶこととする。
【0010】
モータハウジング3は、筒状のモータハウジング本体4と、モータハウジング本体4の後端にボルト止めされ、モータハウジング本体4の後端の開口部をシール部材5と共に密閉するリヤカバー6とからなっている。モータハウジング本体4の前壁7にタンデムマスタシリンダ2がスタッドボルト10を用いて固結されて、取り付けられる。リヤカバー6は、隔壁Wにスタッドボルト11を用いて固結され、この固結状態で、該リヤカバー6に一体に設けた筒状のボス部12が隔壁Wを挿通して車室R2内へ延出される。
【0011】
モータハウジング3には、タンデムマスタシリンダ2のプライマリピストンとして共用されるピストン組立体14と、該ピストン組立体14を構成するブースタピストン16を駆動する電動アクチュエータ17とを収容している。一方、モータハウジング3(モータハウジング本体4及びリヤカバー6)の上部には、ECU18が一体的に配置される。該ECU18は、電動アクチュエータ17の駆動を制御するための制御部を収容するためのECUハウジング19を備える。ECUハウジング19は、箱形のECUハウジング本体19aと、該ECUハウジング本体19aの上部開口を閉鎖する蓋体19bとからなる。ECUハウジング19は、下面側、すなわち、ECUハウジング本体19aの蓋体19bと反対の面側からは、電動アクチュエータ17、後述する電動モータ53へECU18から電流を供給するためのECUバスバー65(バスバー)が突出して設けられている。また、モータハウジング本体4の上部の、ECUハウジング19が取り付けられる部位には貫通孔20が形成される。該モータハウジング本体4の貫通孔20を覆うようにECUハウジング19が着脱自在に結合されている。
【0012】
タンデムマスタシリンダ(以下、単にマスタシリンダという)2は、有底のシリンダ本体21とリザーバ22とを備えている。シリンダ本体21内の前側には、プライマリピストンとしてのピストン組立体14と対をなすセカンダリピストン23が摺動可能に配設されている。シリンダ本体21内には、ピストン組立体14とセカンダリピストン23とにより2つの圧力室25、26が画成されており、ピストン組立体14及びセカンダリピストン23の前進に応じて各圧力室25、26内に封じ込められているブレーキ液が、シリンダ本体21に設けた吐出ポート27、28から対応する系統のホイールシリンダWCへ圧送される。
【0013】
また、シリンダ本体21には、各圧力室25、26内とリザーバ22とを連通するリリーフポート29、30が形成され、さらに、シリンダ本体21の内面には、リリーフポート29、30の前側にそれぞれシール部材31、32が配設されている。また、各圧力室25、26内には、プライマリピストンとしてのピストン組立体14とセカンダリピストン23とを常時後退方向へ付勢する戻しばね33、34が配設されている。また、ブースタピストン16内でその内周に形成した環状壁部35と、戻しばね33のばね受けとの間にスリーブ38が配設される。各圧力室25、26は、ピストン組立体14及びセカンダリピストン23の後退端においてリリーフポート29、30を経てリザーバ22と連通し、これにより各圧力室25、26にはリザーバ22から必要なブレーキ液が補給される。
【0014】
ピストン組立体14は、出力部材としての筒状のブースタピストン16と入力ピストン15とからなる。中実の入力ピストン15が、筒状をなすブースタピストン16内にこれと相対移動可能に配設されている。ブースタピストン16は、モータハウジング本体4の前壁7に嵌着された筒状ガイド40に摺動可能に嵌挿されており、その前端部がマスタシリンダ2の圧力室25内に延出されている。
一方、入力ピストン15は、ブースタピストン16の内周に形成した環状壁部35の貫通孔41に摺動可能に嵌挿されており、その前端部が同じくマスタシリンダ2の圧力室25内に延出されている。
【0015】
なお、ブースタピストン16と、マスタシリンダ2のシリンダ本体21との間はシール部材31によりシールされ、また、ブースタピストン16の環状壁部35と、入力ピストン15との間はシール部材、すなわち、環状カップ(プランジャ)42、環状プレート43及びOリング44によりシールされており、これにより、圧力室25からマスタシリンダ2外へのブレーキ液の漏出が防止されている。
【0016】
一方、入力ピストン15の後端部には拡径部材50が連結され、該拡径部材50の球面凹部にブレーキペダル(図示略)と連動する入力ロッド51の先端部が揺動自在に連結されている。この結果、入力ピストン15は、ブレーキペダルの操作によりブースタピストン16内を進退移動するようになっている。なお、入力ロッド51は、拡径部材50をリヤカバー6の筒状ガイド部12の後端に一体に形成した内方突起52に当接させることにより後方(車室R2側)への移動が規制されている。すなわち、入力ピストン15は、拡径部材50がリヤカバー6の内方突起52に当接した位置が後退端となる。
【0017】
電動アクチュエータ17は、電動モータ53と、この電動モータ53の回転を直線運動に変換してピストン組立体14のブースタピストン16(出力部材)に伝達する回転直動変換機構としてのボールねじ機構54とからなっている。
【0018】
電動モータ53は、ステータ55と、ステータ55に対向して配置される永久磁石56を有し、ステータ55への通電により回転する中空のロータ57とからなる。ステータ55は、図1及び図2に示すように、直方体からなるステータ本体60aを円周上に間隔を置いて複数配置した形態で樹脂モールドされ、各ステータ本体60aに複数のコイル60bを巻いて全体として環状に構成されたステータコイル60と、該ステータコイル60の後側に溶着され、該ステータコイル60からの各相(U相、V相、W相)のコイル60bを結線する結線リング61と、該結線リング61の上部に一方の端部が取付ネジ64により固定される接続バスバー63(U相、V相、W相)を有しステータコイル60を跨ぐように配置される端子台62とから構成される。該端子台62は接続バスバー63を一体的に樹脂モールドした略ブロック状に形成され、モータハウジング本体4内でECU18(ECUハウジング19)の略直下に配置される。該端子台62の前面で接続バスバー63の他方の端部が配置される部位には、該接続バスバー63の他方の端部を、ECUハウジング19から突出して設けられ、ECU18からモータハウジング本体4の貫通孔20を通って延びるU相、V相、W相の計3本のECUバスバー65(バスバー)の端部に機械的及び電気的に接続するための取付ネジ66が螺合するネジ孔67が形成される。
【0019】
電動モータ53は、そのステータ55がモータハウジング本体4にボルト70により固定されると共に、そのロータ57が軸受71、72を介してモータハウジング本体4及びリヤカバー6に回動自在に支持されている。なお、軸受71は、モータハウジング本体4の前壁7の段部に嵌合した状態で配置され、軸受72は、リヤカバー6の段部に嵌合して設けられている。
【0020】
ボールねじ機構(回転直動変換機構)54は、電動モータ53の構成であるロータ57と、該ロータ57の上部にボール76を介して噛み合わされた中空のねじ軸75とからなる。ねじ軸75の後端部には軸方向に延びるスリット77が形成されており、このスリット77にリヤカバー6の内方突起52が挿入されている。すなわち、ねじ軸75は、モータハウジング3内に回動不能に配設されており、これにより、ロータ57が回転すると、ねじ軸75が直動するようになる。
【0021】
一方、ねじ軸75の内面には段部78が設けられており、この段部78にはブースタピストン16の後端部に螺着されたフランジ部材79が当接するようになっている。また、フランジ部材79とモータハウジング本体4に嵌合した筒状ガイド40との間には戻しばね80が介装されており、ブースタピストン16は、戻しばね80により常時そのフランジ部材79をねじ軸75側の段部78に当接させる状態を維持するようになっている。したがって、ナット部材75の回転に応じてねじ軸75が前進すると、該ねじ軸75に押されてブースタピストン16も前進する。本実施形態において、ねじ軸75は、ブレーキ非作動時にはそのスリット77の始端をリヤカバー6側の内方突起52に当接させる後退端に位置決めされており、これに応じて、ブースタピストン16も、ブレーキ非作動時には、後退端にあるねじ軸75の段部78に当接させる後退端に位置決めされている。なお、ねじ軸75と筒状ガイド40との間には、ねじ軸75を後方へ付勢し、該ねじ軸75が不用意に前進するのを規制する押えばね81が介装されている。
【0022】
また、ピストン組立体14を構成するブースタピストン16と入力ピストン15との相互間には、一対のバランスばね85、85が配設されている。この一対のバランスばね85、85は、ブレーキ非作動時にブースタピストン16と入力ピストン15とを相対移動の中立位置に保持する役割をなすものである。
【0023】
なお、車室R2内の所定箇所には、入力ロッド51(またはブレーキペダル)の作動を介して車体に対する入力ピストン15の絶対変位を検出するポテンションメータ(図示略)が配設される。一方、モータハウジング3内には、電動モータ53の回転変位から車体に対するブースタピストン16の絶対変位を検出するレゾルバ86が配設される。このレゾルバ86は、リヤカバー6にボルト止めされたレゾルバステータ86aと、電動モータ53のロータ57の外周面に配置されたレゾルバロータ86bとからなる。
【0024】
ECUハウジング19から突出して設けられるECUバスバー65は、モータハウジング3の上部にECUハウジング19が取り付けられた状態で、モータハウジング本体4の貫通孔20を通ってモータハウジング3内へ延びて、その端部が電動モータ53の端子台62の接続バスバー63の他方の端部に重なるよう配置される。この状態で、ECUバスバー65の端部と接続バスバー63の他方の端部とが、取付ネジ66(各相に対応して3本)により端子台62の前面に固定されるようになっている。この取付ネジ66の固定により、電動モータ53とECU18とが電気的に接続されて、ECU18から電動モータ53へ電流が供給されるようになっている。
【0025】
また、モータハウジング3のモータハウジング本体4の前面側、すなわち前記タンデムマスタシリンダ2が取り付けられる面側には、端子台62の接続バスバー63の他方の端部と対向する部位に、各取付ネジ66を挿入し、工具によって端子台62のネジ孔67へ各取付ネジ66を締め付けるための取付窓101が形成される。該取付窓101には、該取付窓101を水密的に閉鎖するとともに、取付ネジ66の脱落を防止する脱落防止部を有する防水カバー100aが嵌合される。
【0026】
具体的に、図1及び図3に示すように、取付窓101は、端子台62の接続バスバー63の他方の端部と対向するモータハウジング本体4の壁部102の外周面に設けた凹部103と、該凹部103の底部に設けた嵌合孔104とから構成される。該凹部103は、防水カバー100aの板状ベース部105を収容する平面視長円形状で、その深さは板状ベース部105の厚みにOリング110の外径を加えた長さよりも大きく設定される。嵌合孔104の平面視形状は、後述する防水カバー100aの筒状嵌合部106が嵌合するように長円形状に形成される。
【0027】
防水カバー100aは、図3及び図4に示すように、平面視長円形状の板状ベース部105と、該板状ベース部105の一面の外周部から延び平面視長円形状の開口を有する筒状嵌合部106と、該筒状嵌合部106の内側に長手方向に間隔を置いて3箇所に設けられ、筒状嵌合部106と同方向に突設される円柱部107とから構成される。筒状嵌合部106の基部外周面には、Oリング110が装着される環状溝部111が形成される。また、筒状嵌合部106の対向する直線部位にはそれぞれ、上方を開放する切欠き部112が間隔を置いて4つ形成して、各切欠き部112間に3つの棒状壁部113を形成している。該各棒状壁部113の先端部の外周面に外方に向かって爪部114が突設される。各円柱部107の高さは、筒状嵌合部106の高さよりも低く形成され、その先端が前記各取付ネジ66の頭部に対向するように形成される。
【0028】
そして、図3及び図5に示すように、ECU18からモータハウジング本体4の貫通孔20を通って延びるECUバスバー65の端部を、電動モータ53の端子台62の接続バスバー63の他方の端部に重ねて、各取付ネジ66(各相に対応して3本)をモータハウジング本体4に設けた取付窓101から挿入すると共に、ECUバスバー65の端部及び接続バスバー63の他方の端部にそれぞれ挿通し、端部台62の各ネジ孔67に螺合することで、ECUバスバー65の端部と接続バスバー63の他方の端部とを共締めして両者を電気的及び機械的に接続する。
【0029】
ここで、上記特許文献1のものでは、ECUと電動モータとの電気的接続をモータハウジングから突出したバスバーをECUハウジング内の端子台に取付ネジにより螺合することで行っている。このように、ECUハウジング内で取付ネジを螺合するためには、ECUハウジングの蓋体を外しておく必要があり、ECUの電子デバイス等に埃等が付着しないように細心の注意を払う必要がある。そこで、本実施形態では、上述したように、ECUバスバー65をECUハウジング19から突出して設けて、モータハウジング本体4内でECU18と電動モータ53との電気的接続を行うようにしているため、ECUハウジング19の蓋体19bを取り外す必要がなく、電動倍力装置の製造が容易になるとともに、ECUに対する組付時の信頼性を向上させることができる。
【0030】
その後、予め防水カバー100aの筒状嵌合部106の外周面に設けた環状溝部111にOリング110を装着しておき、図3及び図6に示すように、モータハウジング本体4に設けた取付窓101の嵌合孔104に、Oリング付き防水カバー100aの筒状嵌合部106の先端を挿入して、各棒状壁部113に設けた爪部114を嵌合孔104に引っ掛け、取付窓101に防水カバー100aを組み付ける。この結果、図3に示すように、取付窓101は、防水カバー100aのOリング110により水密的に閉鎖され、しかも、取付窓101の凹部103に防水カバー100aの板状ベース部105が収容されると共に、防止カバー100aの各円柱部107の先端が各取付ネジ66の頭部に近接した位置、各円柱部107の先端と各取付ネジ66の頭部との間隔が取付ネジ66のネジ孔67への螺合長よりも短く(小さく)なる位置に配置される。これにより、各取付ネジ66が緩んだ場合でも、防止カバー100aの脱落防止部としての各円柱部107により各取付ネジ66の脱落が防止される。
【0031】
次に、他の実施形態に係る防水カバー100bを図7及び図8に基づいて説明する。
防水カバー100bは、平面視矩形状の本体部122の両端部から突設する各突設部121のそれぞれに取付ネジ用孔120を有する細長の板状ベース部115と、該板状ベース部115の一面の外周部から延び平面視長円形状の開口を有する筒状嵌合部116と、該筒状嵌合部116の内側で、長手方向に間隔を置いて3箇所に設けられ、筒状嵌合部116と同方向に突設される円柱部117とから構成される。筒状嵌合部116の基部外周面には、Oリング110が装着される環状溝部111が形成される。各円柱部117の高さは筒状嵌合部116の高さより高く形成される。
【0032】
一方、取付窓130は、防水カバー100bの板状ベース部115を収容するための凹部131と、該凹部131の底部に設けた嵌合孔132と、凹部131の底部に設けた、防水カバー100bの板状ベース部115をねじ止めするためのネジ孔(図示略)とから構成される。
【0033】
そして、図7に示すように、ECUバスバー65の端部を、電動モータ53の端子台62の接続バスバー63の他方の端部に取付ネジ66により接続した後、取付窓130の嵌合孔132に、Oリング付き防水カバー100bの筒状嵌合部116の先端を挿入して、板状ベース部115の各取付ネジ用孔120に取付ネジ(図示略)を挿入すると共に凹部131の底部に設けた各ネジ孔に螺合して防水カバー100bを取付窓130に組み付ける。この結果、取付窓130の凹部131に防水カバー100bの板状ベース部115が収容されると共に、防止カバー100bの各円柱部117の先端が各取付ネジ66の頭部に当接する。これにより、各取付ネジ66の緩みが抑制され、ひいては、各取付ネジ66の脱落が防止される。
【0034】
そして、本電動倍力装置1では、ブレーキペダルの踏込みに応じて入力ロッド51、すなわち入力ピストン15が前進すると、その動きがポテンショメータにより検出される。すると、該ポテンショメータからの信号を受けてECU18から電動モータ53に起動指令が出力され、これにより、電動モータ53のロータ57が回転して、その回転がボールねじ機構54により直動に変換されてブースタピストン16に伝達される。すなわち、入力ピストン15とブースタピストン16とが一体的に前進(推進)し、ブレーキペダルから入力ピストン15に付与される入力推力と、電動モータ53からブースタピストン16に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ2内の圧力室25、26に発生する。このとき、入力ピストン15とブースタピストン21との間に相対変位が生じないようにECU18により電動モータ53のロータ57の回転を制御すると、入力ピストン15とブースタピストン16との間に介装した一対のバランスばね85、85が中立位置を維持する。このときの倍力比は、相対変位量がゼロであることから、ブースタピストン16の受圧面積と、入力ピストン15の受圧面積との面積比で一義的に定まる。
【0035】
なお、中立位置からブースタ推力によりブレーキ液圧を増加させる方向(前側)へブースタピストン16を相対変位させると、倍力比(制動力)が大きくなり、電動モータ53によるブレーキアシスト動作が実現する。このとき、ブレーキ液圧の増加に伴ってブレーキペダルへの反力が増大しようとするが、ブースタピストン16の前側への相対変位に応じて、一対のバランスばね85、85のうち後側(ブレーキペダル側)のバランスばね85の付勢力が増大するので、この付勢力によってペダル反力の増大分が相殺される。一方、中立位置からブースタ推力によりブレーキ液圧を減圧させる方向(後側)へブースタピストン16を相対変位させると、倍力比(制動力)が減少して、回生制動時の回生協調動作が実現する。このとき、ブレーキ液圧の低下に伴ってペダル反力が減少しようとするが、ブースタピストン16の後側への相対変位に応じて、一対のバランスばね85、85のうち前側(マスタシリンダ2側)のバランスばね85の付勢力が増大するので、この付勢力によってペダル反力の減少分が相殺される。すなわち、ペダル反力は一対のバランスばね85、85の付勢力により調整されるためにブレーキ操作の違和感はなくなる。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る電動倍力装置1では、まず、ECU18からモータハウジング本体4の貫通孔20を通って延びるECUバスバー65の端部を、電動モータ53の端子台62の接続バスバー63の他方の端部に重ねて、各取付ネジ66をモータハウジング本体4に設けた取付窓101(130)から挿入すると共に、ECUバスバー65の端部及び接続バスバー63の他方の端部にそれぞれ挿通し、端子台62の各ネジ孔67に螺合して、ECUバスバー65の端部と接続バスバー63の他方の端部とを電気的及び機械的に接続する。その後、取付窓101(130)の嵌合孔104(132)に、Oリング付き防水カバー100a(100b)の筒状嵌合部106(116)の先端を挿入して、取付窓101(130)に防水カバー100a(100b)を組み付ける。この結果、防止カバー100a(100b)の各円柱部107(117)の先端が各取付ネジ66の頭部に近接または当接した位置に配置される。これにより、各取付ネジ66の脱落が防止される。
【0037】
なお、本実施形態においては、取付窓101(130)をモータハウジング本体4の前面側に形成しているが、これに限らず、モータハウジング本体4の側面側やリアカバー6に形成するようにしてもよい。また、取付窓101(130)をECUハウジング19に形成してよく、この場合に、バスバーは貫通孔20を通ってモータハウジング本体4から突出してECUハウジング19内へ延びるように形成することになる。
【符号の説明】
【0038】
1 電動倍力装置,2 タンデムマスタシリンダ(マスタシリンダ),3 モータハウジング,4 モータハウジング本体,6 リヤカバー,14 ピストン組立体,16 ブースタピストン(出力部材),17 電動アクチュエータ,18 ECU,19 ECUハウジング,20 貫通孔,53 電動モータ,54 ボールねじ機構(回転直動変換機構),62 端子台,63 接続バスバー,65 ECUバスバー(バスバー),66 取付ネジ,100a、100b 防水カバー,101、130 取付窓,105、115 板状ベース部,106、116 筒状嵌合部,107、117 円柱部(脱落防止部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECUと、該ECUの指令に応じて駆動する電動モータと、該電動モータからの回転を直線運動に変換する回転直動変換機構と、該回転直動変換機構からの直線運動を伝達する出力部材と、を備え、
前記電動モータは、モータハウジングに収容され、
該モータハウジングの外周に前記ECUを収容するECUハウジングが取り付けられ、
前記モータハウジングの、前記ECUハウジングが取り付けられる箇所に貫通孔を設け、
該貫通孔を通って前記電動モータと前記ECUとを電気的に接続するバスバーを設けた電動倍力装置において、
前記バスバーの端部は、前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジング内にて、前記電動モータに取付ネジにより機械的及び電気的に接続され、
前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジングに、前記取付ネジを前記モータハウジング若しくは前記ECUハウジングの外側から締め付けるための取付窓を設け、
該取付窓に、該取付窓を水密的に閉塞するための防水カバーを設け、
該防水カバーに、前記取付ネジの脱落を防止する脱落防止部を設けたことを特徴とする電動倍力装置。
【請求項2】
前記防水カバーは、前記取付窓に嵌合する筒状嵌合部と、該筒状嵌合部内に設けられ、該筒状嵌合部と同じ方向に延びて前記取付ネジに対向する前記脱落防止部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電動倍力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250559(P2012−250559A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122475(P2011−122475)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】