説明

電動工具

【課題】電動工具において、トランジスタを用いた位相制御又は逆位相制御を安価で簡単な構成で行うと共に電磁ノイズを抑制する。
【解決手段】電動工具の定電圧生成手段は、抵抗91及びダイオード93の直列回路と、コンデンサ95及びツェナーダイオード97の並列回路とを含んでおり、抵抗91の一端は、交流電源1と交流モータ3の接続点に接続され、ダイオード93のカソードは、コンデンサ95の一端とツェナーダイオード97のカソードと接続され、コンデンサ95の他端とツェナーダイオード97のアノードとは、トランジスタ51,52のソースと接続される。トランジスタ51,52のゲートには、抵抗53,54の一端が接続され、上記直列回路と上記並列回路の接続点の電圧と、トランジスタ51,52のソースの電圧との間で、抵抗53,54の他端の電圧を切り換えることで、トランジスタ51,52がオン又はオフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流モータを用いたボルト締付機などの電動工具に関しており、より詳細には、トランジスタをスイッチング素子として用いて、交流モータの位相制御又は逆位相制御を行う電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
交流モータを用いたボルト締付機などの電動工具では、交流モータを位相制御又は逆位相制御することで、ボルトの締付トルクなどが制御されている。位相制御又は逆位相制御を行う電気機器では、スイッチングの際の急激な電流変化に起因して電磁ノイズが発生する。商用交流電源を電源とする交流モータを用いた電動工具では、大電流が交流モータに流れることから、スイッチングの際の電流変化に起因して発生する電磁ノイズが大きくなるので、周辺の電気機器や人体に対する悪影響が特に懸念される。
【0003】
例えば、特開2009−12149号公報や特開平08−154392号公報には、トライアックやSSRをスイッチング素子として使用して、商用交流電源を電源とする交流モータの位相制御を行う電動工具が開示されている。このような電動工具にスナバ回路を設けることで、電流変化に起因した電磁ノイズを低減できるが、スナバ回路を設けるためのスペースの確保やコスト高などの問題が生じる。また、交流モータに流れる電流を小さくすることで、電流変化に起因した電磁ノイズを低減できるが、交流モータの仕事率を低下させるので、電動工具の性能面から好ましくない。
【0004】
近年、パワーエレクトロニクス分野において、MOSFETやIGBTなどの大電流を制御可能なトランジスタが普及してきている。スイッチングの際の電流変化の低減に有利なことから、トライアックやSSRの代わりにトランジスタを使用することで、位相制御又は逆位相制御を行う電動工具が発生する電磁ノイズを抑制することが考えられる。例えば、特開平11−161346号公報には、逆方向に直列接続した2個のMOSFETを用いて位相制御又は逆位相制御を行う位相制御装置が開示されている。このような位相制御装置の構成を交流モータを用いた電動工具に採用して、位相制御又は逆位相制御を行うことは可能であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−12149号公報
【特許文献2】特開平08−154392号公報
【特許文献3】特開平11−161346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商用交流電源から電力が供給される交流モータを有する電動工具において、トランジスタを用いた位相制御又は逆位相制御を行う場合、大電流を制御可能なトランジスタが使用されることから、交流電圧から比較的大きな定電圧を生成して、トランジスタの制御端子、つまりゲート又はベースに入力する必要がある。特開平11−161346号公報の図2に示された位相制御装置では、トランスを用いたゲート電源部を用いて、交流電圧からゲート駆動電圧を得ているが、このようなゲート電源部は、スペース、コスト高、重量増などの点で好ましくない。
【0007】
また、特開平11−161346号公報の図8に示された位相制御装置では、交流電源と負荷の直列回路がダイオードブリッジの入力端子間に接続されている。これら端子間に印加される交流電圧をダイオードブリッジで全波整流しても、高い直流電圧を安定して得られないことから、このような構成は、大電流を制御可能なトランジスタを用いた位相制御又は逆位相制御には好ましくない。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、交流モータの位相制御又は逆位相制御を行う電動工具において、トランジスタを用いた位相制御又は逆位相制御を安価、省スペース、軽量で簡単な構成で実現すると共に、スイッチングに起因した電磁ノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動工具は、交流電源から電力が供給される交流モータと、交流電圧から定電圧を生成する定電圧生成手段とを備えており、前記交流モータに直列に接続されたスイッチング手段を用いて、前記交流モータに供給される電力を位相制御又は逆位相制御する電動工具において、前記スイッチング手段は、ソース同士又はエミッタ同士が接続されて逆直列に配置された2個のトランジスタを含んでおり、前記定電圧生成手段は、第1抵抗及びダイオードの直列回路と、コンデンサ及びツェナーダイオードの並列回路とを含んでおり、前記第1抵抗の一端は、前記交流電源と前記交流モータの接続点に接続されており、前記ダイオードのカソードは、前記コンデンサの一端と前記ツェナーダイオードのカソードと接続されており、前記コンデンサの他端とツェナーダイオードのアノードとは、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタと接続されており、前記2個のトランジスタの一方のトランジスタの制御端子は、第2抵抗の一端と接続され、前記2個のトランジスタの他方のトランジスタの制御端子は、第3抵抗の一端と接続されており、前記第2抵抗の他端の電圧及び前記第3抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換えることで、前記2個のトランジスタがオン又はオフされることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の電動工具は、前記第2抵抗の他端の電圧と前記第3抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記少なくとも1つのトランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換える制御手段を更に備えており、前記制御手段は、フォトカプラを含んでおり、前記フォトカプラのフォトトランジスタのコレクタは、前記直列回路と前記並列回路の接続点と接続され、前記フォトトランジスタのエミッタは、前記第2抵抗の他端及び前記第3抵抗の他端と接続されると共に、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタと抵抗を介して接続される。
【0011】
本発明の電動工具は、交流電源から電力が供給される交流モータと、交流電圧から定電圧を生成する定電圧生成手段とを備えており、前記交流モータに直列に接続されたスイッチング手段を用いて、前記交流モータに供給される電力を位相制御又は逆位相制御する電動工具において、前記スイッチング手段は、一方の入力端子が前記交流モータに接続されると共に、他方の入力端が前記交流電源と接続されるダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力端子間に配置されて、前記出力端子間の電流をオン又はオフするトランジスタとを含んでおり、前記定電圧生成手段は、第1抵抗及びダイオードの直列回路と、コンデンサ及びツェナーダイオードの並列回路とを含んでおり、前記第1抵抗の一端は、前記交流電源と前記交流モータの接続点に接続されており、前記ダイオードのカソードは、前記コンデンサの一端と前記ツェナーダイオードのカソードと接続されており、前記コンデンサの他端とツェナーダイオードのアノードとは、前記トランジスタのソース又はエミッタと接続されており、前記トランジスタの制御端子は、第2抵抗の一端と接続されており、前記第2抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記トランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換えることで、前記トランジスタがオン又はオフされることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の電動工具は、前記第2抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記トランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換える制御手段を更に備えており、前記制御手段は、フォトカプラを含んでおり、前記フォトカプラのフォトトランジスタのコレクタは、前記直列回路と前記並列回路の接続点と接続され、前記フォトトランジスタのエミッタは、前記第2抵抗の他端と接続されると共に、前記トランジスタのソース又はエミッタと抵抗を介して接続される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、抵抗及びダイオードの直列回路と、コンデンサ及びツェナーダイオードの並列回路を含んでおり、その抵抗の一端が交流電源と交流モータの接続点に接続されるような定電圧生成手段が用いられている。これによって、トランスなどの電気部品を用いることなく安価、省スペース、軽量で簡単な回路構成によって交流電圧から定電圧が生成されて、トランジスタの制御端子に印加されている。生成された定電圧は、トランジスタの制御端子に接続された抵抗を介してトランジスタの制御端子に印加されるので、スイッチングの際の電流変化が緩和され、それに起因した電磁ノイズの発生が抑制されている。また、交流電源として、例えば商用交流電源を用いた場合には、本発明に係る定電圧生成手段により、大電流を制御可能なトランジスタの制御に十分な大きさの定電圧が生成されて、大電流のトランジスタをスイッチング素子として用いた交流モータの位相制御又は逆位相制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電動工具の第1実施例の電気的構成を示す回路図である。
【図2】本発明の電動工具の第2実施例の電気的構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について図を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施例である電動工具について、その電気的構成の概要を示す回路図である。電動工具は、交流電源(1)を電源とする交流モータ(3)と、該交流モータ(3)への交流電圧の印加をオン又はオフするスイッチング手段(5)と、所定の位相角又は点弧角について交流モータ(3)に電圧が印加されるように、スイッチング手段(5)の動作を制御する制御手段(7)と、スイッチング手段(5)の制御に用いる定電圧を交流電圧から生成して、制御手段(7)に供給する定電圧生成手段(9)とを備えている。
【0016】
例えば、交流電源(1)は単相交流の商用交流電源であって、50Hz又は60Hzの100V単相交流電源や、50Hzの220V単相交流電源などが使用されてよい。本発明の電動工具は、例えばボルト締付機であって、交流モータ(3)は、ボルトの頭部と、又はボルトに螺合したナットと着脱自在に嵌合するソケットを回転駆動するのに使用されている。なお、本明細書では、本発明と関係がない電動工具の詳細に関する説明を省略する。
【0017】
スイッチング手段(5)は、ソース同士を結合することで逆直列に結合された2個のNチャンネルMOSFET(51)(52)を含んでいる。MOSFET(51)のドレイン−ソース間には、電流の逆流を許容するダイオード(61)が設けられている。同じく、MOSFET(52)のドレイン−ソース間にも、電流の逆流を許容するダイオード(62)が設けられている。これらMOSFET(51)(52)の制御端子、つまりゲートには、制御手段(7)から同じゲート制御信号が供給される。ゲート制御信号がハイレベルになると、つまりゲート駆動電圧がMOSFET(51)(52)に与えられると、これらMOSFET(51)(52)は共にオン状態になる。2個のMOSFET(51)(52)と交流モータ(3)とは直列に接続されており、MOSFET(51)(52)が共にオン状態になると、図1において交流モータ(3)の上側から下側に流れる電流は、MOSFET(51)のドレイン−ソース間とダイオード(62)を流れる。図1において交流モータ(3)の下側から上側に流れる電流は、MOSFET(52)のドレイン−ソース間とダイオード(61)を流れる。故に、MOSFET(51)(52)がオン状態になると、交流モータ(3)に交流電圧が印加されて、交流モータ(3)に電力が供給される。ゲート制御信号がローレベルになると、これらMOSFET(51)(52)は共にオフ状態になって、交流モータ(3)に交流電圧は印加されず、交流モータ(3)に電力は供給されない。なお、MOSFET(51)(52)の寄生ダイオードをダイオード(61)(62)の代わりに利用できる場合には、これらダイオード(61)(62)を設ける必要はない。
【0018】
制御手段(7)は、ゼロクロス検出回路(71)と、タイマ回路(73)と、CPU(75)と、クロック(77)と、フリップフロップ回路(79)とを含んでいる。ゼロクロス検出回路(71)の出力端子間には、第1フォトカプラ(81)の発光ダイオードと抵抗(82)の直列回路が接続されている。第1フォトカプラ(81)のフォトトランジスタのコレクタは、図示を省略した電源に接続されており、このフォトトランジスタのエミッタは、タイマ回路(73)の入力端子とフリップフロップ回路(79)のリセット端子に接続されると共に、抵抗(83)を介して接地されている。ゼロクロス検出回路(71)の入力端子間には、交流電源(1)の交流電圧が印加されており、ゼロクロス検出回路(71)は、交流電源(1)の交流電圧がゼロになった状態、つまりゼロクロスポイントを検知して、交流電圧のゼロクロスポイントに応じた短時間パルスを、交流電圧の半周期のパルス間隔で有する信号を生成する。生成されたパルス信号は、第1フォトカプラ(81)を介してタイマ回路(73)とフリップフロップ回路(79)に入力される。
【0019】
タイマ回路(73)は、ゼロクロス検出回路(71)から出力されるパルスを受信する毎に、時間のカウントを開始する。そして、所定の設定時間をカウントすると、フリップフロップ回路(79)のセット端子にパルスを出力する。言い換えると、タイマ回路(73)は、ゼロクロス検出回路(71)が出力するパルス信号をこの設定時間だけ遅延させて、フリップフロップ回路(79)に出力する。
【0020】
クロック(77)は、タイマ回路(73)が時間のカウントに使用するクロック信号を生成する。CPU(75)は、上記の設定時間、つまりパルス信号の遅延時間を設定して、タイマ回路(73)に与える。本発明の電動工具は例えばボルト締付機であって、図示を省略した操作手段を介して、電動工具の使用者は、ボルトの締付トルクを任意に設定できる。CPU(75)は、使用者が設定した締付トルクの設定値に応じて設定時間を決定して、タイマ回路(73)に与える。
【0021】
ゼロクロス検出回路(71)が出力したパルス信号は、フリップフロップ回路(79)のリセット端子に入力されると共に、設定時間だけ遅延させられてフリップフロップ回路(79)のセット端子に入力される。図1のフリップフロップ回路(79)は、リセット端子へのパルスの入力によってリセット状態になり、そのパルスの入力から設定時間経過後にセット端子にパルスが入力されてセット状態になることで、パルス間隔が交流の半周期であり、パルス幅が交流の半周期から設定時間を引いた時間であるパルス信号を生成する。パルス信号の各パルスのパルス幅は、位相制御の位相角に対応している。
【0022】
フリップフロップ回路(79)の出力端子は、第2フォトカプラ(84)の発光ダイオードと抵抗(85)を介して接地されている。第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタのコレクタは、定電圧生成手段(9)が生成した定電圧を供給する電源ラインと接続されており、第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタのエミッタは、ゲート抵抗(53)(54)を介して、MOSFET(51)(52)の各々のゲートと接続されている。また、このフォトトランジスタのエミッタは、抵抗(86)を介して、MOSFET(51)(52)のソースと接続されている。
【0023】
フリップフロップ回路(79)から出力されるパルス信号がハイレベルである場合、第2フォトカプラ(84)の発光ダイオードの光により、第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタがオン状態になる。これにより、定電圧生成手段(9)が生成した定電圧が、MOSFET(51)(52)のゲートに印加されて、MOSFET(51)(52)がオン状態になる。フリップフロップ回路(79)から出力されるパルス信号がローレベルである場合、MOSFET(51)(52)はオフ状態になる。交流電圧のゼロクロスポイントに応じて、MOSFET(51)(52)がオフ状態になり、また、オフ状態になってから位相角に対応した時間が経過すると、MOSFET(51)(52)がオン状態になることを繰り返すことで、交流モータ(3)の位相制御が達成されている。本発明の電動工具は、例えばボルト締付機であって、使用者が設定した締付トルクの設定値に応じた位相角で交流電圧が交流モータ(3)に印加されることで、締付トルクが設定値になるように交流モータ(3)の電力が調整される。
【0024】
フリップフロップ回路(79)から出力されるパルス信号がハイレベルになると、MOSFET(51)(52)のゲート抵抗(53)(54)に印加される電圧は、定電圧生成手段(9)が生成した定電圧、つまりゲート駆動電圧になり、ローレベルになると、MOSFET(51)(52)のゲート抵抗(53)(54)に印加される電圧は、MOSFET(51)(52)のソースの電圧、つまり基準電圧になる。交流モータ(3)の位相制御がなされると、MOSFET(51)(52)のゲート抵抗(53)(54)に印加される電圧は、このようにして、ゲート駆動電圧と基準電圧との間で繰り返し変化するが、ゲート抵抗(53)と、MOSFET(51)のゲート−ソース間の寄生容量であるゲート容量とが、RC遅延回路として機能することで、MOSFET(51)のゲートにおける電圧の変化は緩やかになる。また、ゲート抵抗(54)と、MOSFET(52)のゲート−ソース間の寄生容量であるゲート容量とが、RC遅延回路として機能することで、MOSFET(52)のゲートにおける電圧の変化が緩やかになる。これによって、MOSFET(51)(52)のドレイン−ソース間を流れる電流の変化が緩和されて、交流モータ(3)の位相制御に伴って発生する電磁ノイズが抑制されている。
【0025】
本実施例では、遅延時間、つまりRC時定数を調節するために、MOSFET(51)のゲートとソースの間に、コンデンサ(63)が接続されており、MOSFET(52)のゲートとソースの間にも、コンデンサ(64)が接続されている。ゲート抵抗(53)(54)とMOSFET(51)(52)のゲート容量で、遅延時間が適切に与えられて、MOSFET(51)(52)の電流変化が十分に緩和できる場合には、これらコンデンサ(63)(64)を設ける必要はない。
【0026】
定電圧生成手段(9)は、抵抗(91)及びダイオード(93)の直列回路と、コンデンサ(95)及びツェナーダイオード(97)の並列回路とを含んでおり、直列回路と並列回路の接続点の電圧が、定電圧生成手段(9)が生成する定電圧となっている。抵抗(91)の一端は、交流電源(1)と交流モータ(3)の接続点に接続されている。ダイオード(93)のカソードは、コンデンサ(95)の一端とツェナーダイオード(97)のカソードと接続されており、コンデンサ(95)の他端とツェナーダイオード(97)のアノードとは、MOSFET(51)(52)のソースと接続されている。
【0027】
定電圧生成手段(9)のダイオード(93)は、交流電源(1)の交流電圧を半波整流し、コンデンサ(95)は、整流された直流電圧を平滑化する。また、ツェナーダイオード(97)が、平滑化された直流電圧の上限を与えることで、抵抗(91)及びダイオード(93)の直列回路と、コンデンサ(95)及びツェナーダイオード(97)の並列回路の接続点は、 MOSFET(51)(52)のソースの電位である基準電位に対してほぼ一定の電圧で維持される。この定電圧、つまりゲート駆動電圧は、大電流のMOSFETを駆動するのに必要な程度に、基準電圧に対して高くされ得る(例えば、+12V)。
【0028】
上述したように定電圧生成手段(9)を構成することで、本実施例の電動工具では、トランスなどの電気部品を用いることなく安価、省スペース、軽量で簡単な構成で、MOSFET(51)(52)のゲートに印加されるゲート駆動電圧が交流電圧から生成されている。
【0029】
図2は、本発明の第2実施例である電動工具について、その電気的構成の概要を示す回路図である。第2実施例では、スイッチング手段(5)は、1個のNチャンネルMOSFET(55)とダイオードブリッジ(56)とを用いて構成されており、ダイオードブリッジ(56)の入力端子間に、交流電源(1)及び交流モータ(3)が直列に接続されている。ダイオードブリッジ(56)の正側の出力端子は、MOSFET(55)のドレインに接続されており、ダイオードブリッジ(56)の負側の出力端子は、MOSFET(55)のソースに接続されている。MOSFET(55)がオン状態である場合、図2において交流モータ(3)の上側から下側に流れる電流は、右上のダイオード(56a)、MOSFET(55)及び左下のダイオード(56b)を流れ、交流モータ(3)の下側から上側に流れる電流は、左上のダイオード(56c)、MOSFET(55)及び右下のダイオード(56d)を流れる。故に、MOSFET(55)がオン状態になると、交流モータ(3)に電圧が印加されて、該交流モータ(3)に電力が供給される。MOSFET(55)がオフ状態になると交流モータ(3)に電圧が印加されず、該交流モータ(3)に電力は供給されない。
【0030】
第2実施例の電動工具にも、第1実施例と同様な制御手段(7)と定電圧生成手段(9)が設けられている。第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタのエミッタは、ゲート抵抗(57)を介して、MOSFET(55)のゲートと接続されている。MOSFET(55)のゲートとソース間にコンデンサ(65)が配置されている。また、第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタのエミッタは、抵抗(86)を介して、MOSFET(55)のソースと接続されている。定電圧生成手段(9)のコンデンサ(95)の一端とツェナーダイオード(97)のアノードとは、MOSFET(55)のソースと接続されている。第2実施例の電動工具においても、第1実施例の電動工具と同様にして交流モータ(3)の位相制御がなされることは、上述の説明から理解できるであろう。
【0031】
第1実施例と第2実施例では、交流モータ(3)の電力は位相制御で制御されているが、交流モータ(3)の電力を逆位相制御で制御する場合には、例えば、フリップフロップ回路(79)の出力端子と第2フォトカプラ(84)の発光ダイオードのアノードとの間にインバータを配置すればよい。
【0032】
第1実施例と第2実施例では、スイッチング手段(5)のMOSFET(51)(52)(55)に、NチャンネルMOSFETが使用されているが、PチャンネルMOSFETがスイッチング手段(5)に使用されてもよい。また、MOSFET(51)(52)(55)の代わりに、IGBTやバイポーラ型トランジスタなどのトランジスタが使用されてもよい。例えば、第1実施例のMOSFET(51)(52)がIGBTに置き換えられる場合には、エミッタ同士が接続されることで、2個のIGBTが逆直列に接続される。これらIGBTのコレクタが、交流電源(1)と交流モータ(3)に接続される。また、第1実施例のMOSFET(51)(52)がバイポーラ型トランジスタに置き換えられる場合には、エミッタ同士が接続されることで、2個のバイポーラ型トランジスタが逆直列に接続される。これらバイポーラ型トランジスタのコレクタは、交流電源(1)と交流モータ(3)に接続され、これらバイポーラ型トランジスタのベースが、抵抗(53)(54)を介して、第2フォトカプラ(84)のフォトトランジスタのエミッタと接続される。
【0033】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。また、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の発明の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
(1) 交流電源
(3) 交流モータ
(5) スイッチング手段
(7) 制御手段
(9) 定電圧生成手段
(51) MOSFET
(52) MOSFET
(53) ゲート抵抗
(54) ゲート抵抗
(55) MOSFET
(56) ダイオードブリッジ
(57) ゲート抵抗
(84) フォトカプラ
(91) 抵抗
(93) ダイオード
(95) コンデンサ
(97) ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から電力が供給される交流モータと、交流電圧から定電圧を生成する定電圧生成手段とを備えており、前記交流モータに直列に接続されたスイッチング手段を用いて、前記交流モータに供給される電力を位相制御又は逆位相制御する電動工具において、
前記スイッチング手段は、ソース同士又はエミッタ同士が接続されて逆直列に配置された2個のトランジスタを含んでおり
前記定電圧生成手段は、第1抵抗及びダイオードの直列回路と、コンデンサ及びツェナーダイオードの並列回路とを含んでおり、前記第1抵抗の一端は、前記交流電源と前記交流モータの接続点に接続されており、前記ダイオードのカソードは、前記コンデンサの一端と前記ツェナーダイオードのカソードと接続されており、前記コンデンサの他端とツェナーダイオードのアノードとは、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタと接続されており、
前記2個のトランジスタの一方のトランジスタの制御端子は、第2抵抗の一端と接続され、前記2個のトランジスタの他方のトランジスタの制御端子は、第3抵抗の一端と接続されており、
前記第2抵抗の他端の電圧及び前記第3抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換えることで、前記2個のトランジスタがオン又はオフされることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記第2抵抗の他端の電圧と前記第3抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記少なくとも1つのトランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換える制御手段を更に備えており、
前記制御手段は、フォトカプラを含んでおり、前記フォトカプラのフォトトランジスタのコレクタは、前記直列回路と前記並列回路の接続点と接続され、前記フォトトランジスタのエミッタは、前記第2抵抗の他端及び前記第3抵抗の他端と接続されると共に、前記2個のトランジスタのソース又はエミッタと抵抗を介して接続される、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
交流電源から電力が供給される交流モータと、交流電圧から定電圧を生成する定電圧生成手段とを備えており、前記交流モータに直列に接続されたスイッチング手段を用いて、前記交流モータに供給される電力を位相制御又は逆位相制御する電動工具において、
前記スイッチング手段は、一方の入力端子が前記交流モータに接続されると共に、他方の入力端が前記交流電源と接続されるダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力端子間に配置されて、前記出力端子間の電流をオン又はオフするトランジスタとを含んでおり、
前記定電圧生成手段は、第1抵抗及びダイオードの直列回路と、コンデンサ及びツェナーダイオードの並列回路とを含んでおり、前記第1抵抗の一端は、前記交流電源と前記交流モータの接続点に接続されており、前記ダイオードのカソードは、前記コンデンサの一端と前記ツェナーダイオードのカソードと接続されており、前記コンデンサの他端とツェナーダイオードのアノードとは、前記トランジスタのソース又はエミッタと接続されており、
前記トランジスタの制御端子は、第2抵抗の一端と接続されており、
前記第2抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記トランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換えることで、前記トランジスタがオン又はオフされることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
前記第2抵抗の他端の電圧を、前記直列回路と前記並列回路の接続点の電圧と、前記トランジスタのソース又はエミッタの電圧との間で切り換える制御手段を更に備えており、
前記制御手段は、フォトカプラを含んでおり、前記フォトカプラのフォトトランジスタのコレクタは、前記直列回路と前記並列回路の接続点と接続され、前記フォトトランジスタのエミッタは、前記第2抵抗の他端と接続されると共に、前記トランジスタのソース又はエミッタと抵抗を介して接続される、請求項3に記載の電動工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−161567(P2011−161567A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27094(P2010−27094)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000201467)前田金属工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】