電動工具
【課題】切替部材が他のギア部材とうまく噛み合わなくても、この事態を迅速に解消してスムーズに減速比変更ができる電動工具を提供する。
【解決手段】本発明の電動工具は、モータ1と、減速機構部2と、減速機構部2の減速比を切り替える減速比切替手段とを具備する。減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、切替部材7と係合可能なギア部材5とを用いて形成される。減速比切替手段は、切替部材7をスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、モータ1とアクチュエータ6を制御する制御部とを有する。制御部は、駆動状態検知部の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともに、前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する。
【解決手段】本発明の電動工具は、モータ1と、減速機構部2と、減速機構部2の減速比を切り替える減速比切替手段とを具備する。減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、切替部材7と係合可能なギア部材5とを用いて形成される。減速比切替手段は、切替部材7をスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、モータ1とアクチュエータ6を制御する制御部とを有する。制御部は、駆動状態検知部の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともに、前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速比を切り替え自在に設けた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機構部を備える電動工具において、その減速機構部の減速比を切り替えるための構造として、遊星減速機構を構成するリングギア等の切替部材を軸方向にスライドさせ、係合状態を切り替えるものがある。
【0003】
例えば特許文献1、特許文献2に記載される電動工具では、リングギアからなる切替部材のスライド操作が、ソレノイドを用いて自動的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56590号公報
【特許文献2】特開2009−78349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように自動的に減速比を切り替える電動工具においては、切替部材をスライドさせて他のギア部材と噛み合わせようとするとき、この切替部材と他のギア部材とがうまく噛み合わない場合がある。この場合、変速がうまく行かず作業の障害になる。また、切替部材をスライド操作するソレノイド等のアクチュエータに過剰な負荷がかかって故障の原因ともなる。
【0006】
そこで、本発明では、切替部材が他のギア部材とうまく噛み合わないような事態となっても、この事態を迅速に解消してスムーズに減速比変更を完了することのできる電動工具を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の電動工具を、下記構成を具備したものとする。
【0008】
本発明の電動工具は、駆動源であるモータと、前記モータの回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部と、前記減速機構部の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する電動工具である。
【0009】
前記減速機構部は、軸方向にスライド自在な切替部材と、前記切替部材の軸方向のスライド位置に応じて前記切替部材との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものである。
【0010】
前記減速比切替手段は、前記切替部材を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータと、前記モータの駆動状態を検知する駆動状態検知部と、前記切替部材のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、前記駆動状態検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータを起動させるとともに前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータの駆動制御を変更する制御部と、を有するものである。
【0011】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド方向を一旦逆転させるものであることが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド駆動力を変更するものであることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、切替部材が他のギア部材とうまく噛み合わないような事態となっても、この事態を迅速に解消してスムーズに減速比変更を完了することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1の電動工具の側断面図である。
【図2】同上の電動工具の内部側面図である。
【図3】同上の電動工具の背断面図である。
【図4】同上の電動工具の減速機構部の分解斜視図である。
【図5】同上の電動工具の要部説明図である。
【図6】同上の減速機構部の1速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図7】同上の減速機構部の1速と2速の切替途中の状態を示す側断面図である。
【図8】同上の減速機構部の2速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図9】同上の減速機構部の2速と3速の切替途中の状態を示す側断面図である。
【図10】同上の減速機構部の3速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図11】本発明の実施形態3の電動工具の要部説明図であり、(a)は2速の状態、(b)は2速と3速の切替途中の状態、(c)は3速の状態である。
【図12】本発明の実施形態4の電動工具の要部説明図である。
【図13】本発明の実施形態5の電動工具の要部説明図であり、(a)は2速の状態、(b)は2速と3速の切替途中の状態、(c)は3速の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
<実施形態1>
図1〜図3には、本発明の電動工具の実施形態1を示している。本実施形態の電動工具は、駆動源であるモータ(メインモータ)1と、このモータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2を介して伝達された回転動力を出力軸4にまで伝達する駆動伝達部3とを、胴体ハウジング101内に収容したものである。胴体ハウジング101からは把持部ハウジング102が延設され、把持部ハウジング102にはトリガスイッチ103を引き込み自在に設けている。電動工具の本体ハウジング100は、胴体ハウジング101と把持部ハウジング102とからなる。
【0017】
胴体ハウジング101内には、前記モータ1や減速機構部2に対して軸方向が平行となるように、変速用アクチュエータ6を収容している。この変速用アクチュエータ6は回転式のアクチュエータであり、減速機構部2が有する切替部材7を、変速カムプレート8を介してスライド移動させ、減速比の切替を行う。この点について詳しくは後述する。
【0018】
図4〜図10には、減速機構部2等の構造をより詳細に示している。本実施形態の減速機構部2は、ギアケース9内に三段の遊星減速機構を収容したものであり、各段の遊星減速機構の減速状態と非減速状態を切り替えることによって、減速機構部2全体の減速比を切り替える。以下においては、モータ1に近い側から順に1、2、3段目の遊星減速機構として説明を行う。
【0019】
1段目の遊星減速機構は、モータ1からの回転動力によって軸中心に回転駆動される太陽ギア10(図4中では図示略)と、太陽ギア10を囲むように位置して該太陽ギア10と噛み合う複数の遊星ギア11と、これら複数の遊星ギア11を囲むように位置して各遊星ギア11に噛み合うリングギア12と、これら複数の遊星ギア11がキャリアピン13を介して回動自在に連結されるキャリア14と、からなる。
【0020】
2段目の遊星減速機構は、1段目の前記太陽ギア10に結合される2段目の太陽ギア20(図4中では図示略)と、太陽ギア20を囲むように位置して該太陽ギア20と噛み合う複数の遊星ギア21と、これら複数の遊星ギア21とも噛み合うことが可能な前記リングギア12と、これら複数の遊星ギア21がキャリアピン23を介して回動自在に連結されるキャリア24と、からなる。キャリアピン23は、その先端部が1段目のキャリア14に連結される。
【0021】
前記リングギア12は、1段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するか、2段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するかが、そのスライド位置によって択一的に選択可能な構造である。つまり、リングギア12は、モータ1側のスライド位置にあるときには1段目の遊星ギア11に噛み合い、出力軸4側のスライド位置にあるときには2段目の遊星ギア21に噛み合う。
【0022】
以下の本文中において、モータ1側を単に「入力側」といい、出力軸4側を単に「出力側」という。
【0023】
ギアケース9の内周面には、リングギア12が軸方向にスライド自在に且つ回転不能に係合するガイド部15を設けており、リングギア12はこのガイド部15により案内されながら軸方向のスライド移動を行う。
【0024】
3段目の遊星減速機構は、2段目のキャリア24に結合される3段目の太陽ギア30と、太陽ギア30を囲むように位置して該太陽ギア30と噛み合う複数の遊星ギア31と、これら複数の遊星ギア31と噛み合うリングギア32と、これら複数の遊星ギア31がキャリアピン33を介して回動自在に連結されるキャリア34と、からなる。
【0025】
リングギア32は、ギアケース9に対して軸方向にスライド自在に且つ回転自在に配されている。リングギア32が入力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、2段目のキャリア24の外周縁部に噛み合う。リングギア32が出力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、ギアケース9と一体に形成された係合歯部40と噛み合う。また、リングギア32はいずれのスライド位置にあるときも、遊星ギア31とは噛み合う。
【0026】
これら3段の遊星減速機構は、軸方向に連結されている。つまり、1〜3段目の太陽ギア10,20,30が軸方向の一直線上に並設され、これらを囲むように位置する二つのリングギア12,32もまた軸方向の一直線上に並設されている。
【0027】
各リングギア12,32は独立して軸方向にスライド自在であり、そのスライド位置に対応して減速比を切り替え、出力軸4の回転出力を1速、2速、3速に変更する。このように、本実施形態では、各リングギア12,32が、軸方向にスライド自在な切替部材7をなす。なお、ここでの1速は最も減速比の小さい状態であり、2速は1速よりも減速比の大きな状態、3速は1,2速よりも減速比の大きな状態(つまり、最も減速比の大きな状態)である。
【0028】
図6には1速の状態、図7には1速と2速の切替途中の状態、図8には2速の状態、図9には2速と3速の切替途中の状態、図10には3速の状態を示している。
【0029】
図6の1速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が入力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、1段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
【0030】
具体的には、1段目の太陽ギア10の回転により、リングギア12と噛み合う遊星ギア11が太陽ギア10のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア10の回転力が減速されたうえでキャリア14に伝達される。キャリア14は2段目のキャリア24と一体に回転し、さらに、3段目の遊星減速機構全体も2段目のキャリア24と一体に回転する。
【0031】
図8の2速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
【0032】
具体的には、1段目の太陽ギア10に結合した2段目の太陽ギア20の回転により、リングギア12と噛み合う2段目の遊星ギア21が太陽ギア20のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア20の回転力が減速されたうえでキャリア24に伝達される。1段目及び3段目の遊星減速機構は、この2段目のキャリア24と一体に回転する。
【0033】
ここで、1段目の遊星減速機構と2段目の遊星減速機構とでは、2段目の方が減速比が大きくなるように各部材の寸法形状を相違させている。したがって、2速の場合は1速よりも減速比が大きく、出力軸4の回転速度は小さくなる。
【0034】
図10の3速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が出力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構と3段目の遊星減速機構が共に減速状態となる。
【0035】
具体的には、1段目の太陽ギア10に結合した2段目の太陽ギア20の回転により、リングギア12と噛み合う2段目の遊星ギア21が太陽ギア20のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア20の回転力が減速されたうえでキャリア24に伝達される。1段目の遊星減速機構は、2段目のキャリア24と一体に回転する。2段目のキャリア24の回転は、これに結合される3段目の太陽ギア30に伝達される。3段目の太陽ギア30の回転により、リングギア32に噛み合う3段目の遊星ギア31が太陽ギア30のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア30の回転力がさらに減速されたうえでキャリア34に伝達される。
【0036】
切替部材7をなす二つのリングギア12,32のスライド位置は共に、変速カムプレート8の回転位置に応じて決定される。変速カムプレート8は、筒状をなすギアケース9の外周面に沿う断面円弧状のプレートであり、ギアケース9の中心軸まわりに回転自在となるように装着される。
【0037】
変速カムプレート8には、二つのカム溝41,42を軸方向に並設している。入力側のカム溝41は、リングギア12のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝41に挿通される変速ピン45の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝48(図4参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア12の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝48は、減速機構部2の軸方向と平行に形成している。
【0038】
出力側のカム溝42は、リングギア32のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝42に挿通される変速ピン46の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝49(図4参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア32の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝49は、減速機構部2の軸方向と平行に形成したものであり、他方のガイド溝48と一直線上に形成している。
【0039】
この変速カムプレート8は、その周方向端部に、回転式の変速用アクチュエータ6と噛み合うギア部47を有する。変速用アクチュエータ6は、専用のモータ(サブモータ)50と、モータ50の回転動力を減速して伝達する減速機構部51と、減速機構部51を通じて伝達される回転動力により回転駆動される出力部52とを有する。
【0040】
このように、本実施形態の電動工具では、減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、これら切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて該切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて形成している。
【0041】
切替部材7は、上述のようにリングギア12,32である。また、ここでのギア部材5は、リングギア12に対しては1段目の遊星ギア11と2段目の遊星ギア21であり、リングギア32に対しては2段目のキャリア24と係合歯部40である。これら切替部材7とギア部材5の係合状態と非係合状態に応じて、減速機構部2全体の減速比が切り替わる。
【0042】
さらに、本実施形態の電動工具には、図5に概略的に示すように、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、モータ1およびモータ50を駆動制御する制御部62とを備えている。
【0043】
駆動状態検知部60は、モータ1に流れる電流値とモータ1の回転数の少なくとも一方を検知することで、モータ1の駆動状態を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部61は、切替部材7に連動する変速カムプレート8のギアケース9に対する回転位置を検知することで、間接的に切替部材7の位置(つまりリングギア12,32のそれぞれのスライド位置)を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部61は、非接触式の変位検知センサであってもよいし、変速カムプレート8に直接接触する接触式のものであってもよい。
【0044】
制御部62は、駆動状態検知部60により検知されるモータ1の駆動状態に応じて、変速用アクチュエータ6を起動させ、切替部材7をスライド移動させることにより減速機構部2の減速比を変更する。
【0045】
つまり、本実施形態の電動工具では、切替部材7を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、駆動状態検知部60の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させる制御部62とを用いて、減速比切替手段を構成している。
【0046】
そして、制御部62においては、変速用アクチュエータ6(つまりモータ50)を起動させるとき、スライド位置検知部61の検知結果に応じて、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させるように制御する。ここでモータ1の回転動力を低下または増大させるのは、スライド移動される切替部材7とこれがスライド後に係合するギア部材5との間において、係合時の相対回転速度を極力減じる(望ましくはゼロとする)ためである。
【0047】
以下においては、1速→2速に自動変速される場合、2速→3速に自動変速される場合、3速→2速に自動変速される場合、2速→1速に自動変速される場合について、順に述べる。
【0048】
1速→2速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図6に示す1速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、2速に自動変速される。
【0049】
具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0050】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の入力側のカム溝41に挿通される変速ピン45は、ギアケース9に設けたガイド溝48にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン45は、切替部材7であるリングギア12を出力側へとスライド移動させる。
【0051】
スライド移動したリングギア12は、まず1段目の遊星ギア11との係合が解除され、図7に示す切替途中の状態となる。このとき、リングギア12はギアケース9に対して回転固定の状態にある。一方、次期係合対象のギア部材5である2段目の遊星ギア21は、モータ1の回転動力に依存した形態で、ギアケース9に対して軸まわりに回転駆動される。
【0052】
制御部62は、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる(ゼロとする場合を含む)。これにより、図8のようにリングギア12が2段目の遊星ギア21と係合する際に両者12,21間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0053】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0054】
2速→3速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図8に示す2速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、3速に自動変速される。具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0055】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の出力側のカム溝42に挿通される変速ピン46は、ギアケース9に設けたガイド溝49にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン46は、もう一つの切替部材7であるリングギア32を出力側へとスライド移動させる。
【0056】
スライド移動したリングギア32は、まず2段目のキャリア24との係合が解除され、図9に示す切替途中の状態に至る。このとき、リングギア32は、3段目の遊星ギア31に係合し、且つ、ギアケース9には回転固定されない状態にある。
【0057】
図9の切替途中状態にあるリングギア32は、2速にてキャリア24に係合していたときの回転慣性で回転を続けるが、これと同時に、モータ1により駆動される3段目の遊星ギア31からの反力によって、前記回転慣性とは反対方向の回転力を受ける。一方、リングギア32が次に係合するギア部材5である係合歯部40は、ギアケース9に対して固定されている。
【0058】
制御部62は、前記反対方向の回転力を積極的に利用して、リングギア32と係合歯部40との相対回転を低減させる(好ましくはゼロとする)ため、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったことをスライド位置検知部61が検知すると、その時点で、リングギア32のスライド移動を一旦停止させる。そして、モータ1の回転動力を一時的に増大させ、リングギア32のギアケース9に対する回転速度を速やかに低減させる。そのうえでリングギア32のスライド移動を再開し、係合歯部40と係合する際にはリングギア32の回転速度が極力ゼロに近づくように調整する。
【0059】
これにより、図10のようにリングギア32が係合歯部40と係合する際の衝撃を抑制し、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現するとともに、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制することができる。
【0060】
なお、リングギア32のスライド移動の一旦停止は行わず、モータ1の回転動力を一時的に増大させるだけで回転速度を調整してもよい。また、リングギア32の一旦停止によってのみ、回転速度を調整してもよい。また、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させ、2速にてキャリア24に係合していたときのリングギア32の回転慣性による回転を低下させる制御としてもよい。
【0061】
3速→2速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図10に示す3速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、2速に自動変速される。
【0062】
具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以下になったとき、モータ1の回転数が所定値以上になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0063】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の出力側のカム溝42に挿通される変速ピン46は、切替部材7であるリングギア32を入力側へとスライド移動させる。
【0064】
スライド移動したリングギア32は、まず係合歯部40との係合が解除され、図9に示す切替途中の状態に至る。このとき、リングギア32は、3段目の遊星ギア31に係合し、且つ、ギアケース9には回転固定されない状態にある。
【0065】
図9の切替途中状態にあるリングギア32は、モータ1により駆動される3段目の遊星ギア31からの反力によって、モータ1の回転方向とは反対方向の回転力を受ける。一方、リングギア32が次に係合するギア部材5である2段目のキャリア24は、モータ1の回転方向に回転される。
【0066】
制御部62は、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる(ゼロとする場合を含む)。これにより、図8のようにリングギア32が2段目のキャリア24と係合する際に両者32,24間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0067】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0068】
2速→1速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図8に示す2速の状態にある減速機構部2でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、1速に自動変速される。具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以下になったとき、モータ1の回転数が所定値以上になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0069】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の入力側のカム溝41に挿通される変速ピン45は、切替部材7であるリングギア12を入力側へとスライド移動させる。
【0070】
スライド移動したリングギア12は、まず2段目の遊星ギア21との係合が解除され、図7に示す切替途中の状態となる。このとき、リングギア12はギアケース9に対して回転固定の状態にある。一方、次期係合対象のギア部材5である1段目の遊星ギア11は、モータ1の回転動力に依存した形態で、ギアケース9に対して軸まわりに回転駆動される。
【0071】
制御部62は、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる。これにより、図6のようにリングギア12が1段目の遊星ギア11と係合する際に両者12,11間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0072】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0073】
以上のように、本実施形態の電動工具が備える制御部62は、モータ1の駆動状態に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともに、センサにより検知される切替部材7(リングギア12,32)の現在位置に対応するかたちで、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させる。前記回転動力の低下は、モータ1を停止する場合も含む。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。なお、制御部62を、変速用アクチュエータ6の起動にも同期してモータ1の回転動力を徐々に低下または増大させるものとしてもよい。
【0074】
そして、本実施形態の制御部62では、スライド位置検知部61が検知する切替部材7(リングギア12,32)の位置に対応するかたちで、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現し、また、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制することができる。
【0075】
以下、この変速用アクチュエータ6の制御について具体的に述べる。
【0076】
制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させることで、切替部材7(リングギア12またはリングギア32)を、狙いのギア部材5(遊星ギア11、遊星ギア21、キャリア24または係合歯部40)に対して係合させる。このとき、切替部材7とギア部材5との歯同士がうまく噛み合わず、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動できない場合がある。この場合、変速がうまく行かず作業の障害になるだけでなく、変速用アクチュエータ6に過剰な負荷がかかって故障の原因ともなる。
【0077】
これに対し、制御部62は、スライド位置検知部61から入力される検知結果によって、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないと判断されるときには、変速用アクチュエータ6のモータ50の回転方向を一旦逆転させる。つまり、変速カムプレート8を介して切替部材7をスライド移動させる方向を所定時間だけ逆転させ、切替部材7を狙いのギア部材5から一旦離す。
【0078】
切替部材7とギア部材5との相対回転位置は、両者7,5が離れている間にモータ1からの回転動力により変更されるので、再び変速用アクチュエータ6のモータ50を正転させて切替部材7をギア部材5側にスライド移動させると、両部材7,5はうまく噛み合いやすくなる。切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動しないという事態が再び生じれば、制御部62は同様の制御を繰り返す。なお、前記事態が所定回数生じたときには、これを検知した制御部62がモータ1を駆動停止するように設けてもよい。
【0079】
次に、本発明の電動工具の他の実施形態について順に述べる。なお、上記した実施形態1と同様の構成については詳しい説明を省略し、実施形態1とは相違する特徴的な構成について、主に詳述する。
【0080】
<実施形態2>
本実施形態の電動工具においても、ギア同士がうまく噛み合わず変速を失敗した場合には、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更するように設けている。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現し、また、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制する。しかし、本実施形態においては、変速用アクチュエータ6の駆動制御の変更の仕方が実施形態1の場合と相違している。
【0081】
具体的には、スライド位置検知部61の検知結果から、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないと判断されるときには、制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50の回転動力を増大させるように変更する。つまり、変速カムプレート8を介して切替部材7をスライド移動させるスライド駆動力を変更することにより、両部材7,5を噛み合いやすくする。
【0082】
なお、モータ50の回転動力を単に増大させるだけでなく、一旦低下させたうえで増大させる、低下と増大を所定周期で繰り返す等の、適宜の駆動力変更が可能である。また、スライド駆動力を変更しても切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動しない場合には、これを検知した制御部62がモータ1を駆動停止するように設けてもよい。
【0083】
<実施形態3>
本実施形態の電動工具では、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、実施形態1のように切替部材7に連動する他部材(変速カムプレート8)の位置を検知するのではなく、切替部材7の位置を直接的に検知する構造となっている。
【0084】
図11には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態では、変速用アクチュエータ6はソレノイドからなる直動式のアクチュエータであり、プランジャ70の軸方向の突出量を変更自在に設けている。切替部材7をなすリングギア32は、連結部材71を介してプランジャ70と連結されている。リングギア32は連結部材71に対して軸まわりに回動自在であり、且つ、連結部材71と一体に軸方向にスライド駆動される構造である。
【0085】
スライド位置検知部61は、リングギア32の径方向外側に位置するようにギアケース9に設置された変位検知センサである。このセンサはリングギア32に直接接触する接触式のものであるが、非接触式のものを用いてもよい。
【0086】
<実施形態4>
本実施形態の電動工具においても、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、切替部材7やこれと連動する他部材(変速カムプレート8)の位置を検知するのではなく、変速用アクチュエータ6の駆動状態を検知し、この検知結果を基にして切替部材7の位置を間接的に検知する。
【0087】
図12には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態のスライド位置検知部61は、回転式の変速用アクチュエータ6が有する出力部52の回転位置を検知する変位センサである。この変位センサは、出力部52に直接接触する接触式のものを用いてもよいし、非接触式のものを用いてもよい。
【0088】
<実施形態5>
本実施形態の電動工具においても、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、変速用アクチュエータ6の駆動状態を検知することで、切替部材7の位置を間接的に検知するものであり、この点においては実施形態4と同様である。しかし、以下の点において実施形態4とは相違する。
【0089】
図13には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態では、変速用アクチュエータ6はソレノイドからなる直動式のアクチュエータであり、プランジャ70の軸方向の突出量を変更自在に設けている。切替部材7をなすリングギア32は、連結部材71を介してプランジャ70と連結されている。リングギア32は連結部材71に対して軸まわりに回動自在であり、且つ、連結部材71と一体に軸方向にスライド駆動される構造である。
【0090】
スライド位置検知部61は、直動式の変速用アクチュエータ6が有するプランジャ70の突出位置を検知する変位センサである。この変位センサは、プランジャ70と直接接触する接触式のものであるが、非接触式のものを用いてもよい。
【0091】
ここまで、実施形態1〜5の電動工具の詳細な構成について説明した。
【0092】
上述のように、実施形態1〜5の電動工具では、駆動源であるモータ1と、モータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する。前記減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものである。前記減速比切替手段は、切替部材7を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、駆動状態検知部60の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともにスライド位置検知部61の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する制御部62と、を有するものである。
【0093】
前記構成を具備する電動工具においては、実際に検知される切替部材7のスライド位置に基づいて、変速用アクチュエータ6の駆動制御を適宜変更することができる。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わないような事態となれば、これを速やかに検知し、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更することによってこの事態の解消を図ることができる。
【0094】
特に、実施形態1,3〜5の電動工具において、制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させたときに、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないとスライド位置検知部61の検知結果により判断されるときには、変速用アクチュエータ6による切替部材7のスライド方向を一旦逆転させるものとなっている。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わない場合には、切替部材7をギア部材5から一旦離し、両部材7,5の相対回転位置を変更したうえで、再び噛み合わせを試みることができる。
【0095】
また、実施形態2の電動工具において、制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させたときに、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないとスライド位置検知部61の検知結果により判断されるときには、変速用アクチュエータ6による切替部材7のスライド駆動力を変更するものとなっている。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わない場合には、例えば変速用アクチュエータ6の駆動力を増大させる等の変化をつけることにより、両部材7,5が噛み合いやすい状態に移行させることができる。
【0096】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、各実施形態において適宜の設計変更を行うことや、各実施形態の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 モータ
2 減速機構部
5 ギア部材
6 変速用アクチュエータ
7 切替部材
60 駆動状態検知部
61 スライド位置検知部
62 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速比を切り替え自在に設けた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機構部を備える電動工具において、その減速機構部の減速比を切り替えるための構造として、遊星減速機構を構成するリングギア等の切替部材を軸方向にスライドさせ、係合状態を切り替えるものがある。
【0003】
例えば特許文献1、特許文献2に記載される電動工具では、リングギアからなる切替部材のスライド操作が、ソレノイドを用いて自動的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56590号公報
【特許文献2】特開2009−78349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように自動的に減速比を切り替える電動工具においては、切替部材をスライドさせて他のギア部材と噛み合わせようとするとき、この切替部材と他のギア部材とがうまく噛み合わない場合がある。この場合、変速がうまく行かず作業の障害になる。また、切替部材をスライド操作するソレノイド等のアクチュエータに過剰な負荷がかかって故障の原因ともなる。
【0006】
そこで、本発明では、切替部材が他のギア部材とうまく噛み合わないような事態となっても、この事態を迅速に解消してスムーズに減速比変更を完了することのできる電動工具を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の電動工具を、下記構成を具備したものとする。
【0008】
本発明の電動工具は、駆動源であるモータと、前記モータの回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部と、前記減速機構部の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する電動工具である。
【0009】
前記減速機構部は、軸方向にスライド自在な切替部材と、前記切替部材の軸方向のスライド位置に応じて前記切替部材との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものである。
【0010】
前記減速比切替手段は、前記切替部材を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータと、前記モータの駆動状態を検知する駆動状態検知部と、前記切替部材のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、前記駆動状態検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータを起動させるとともに前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータの駆動制御を変更する制御部と、を有するものである。
【0011】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド方向を一旦逆転させるものであることが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド駆動力を変更するものであることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、切替部材が他のギア部材とうまく噛み合わないような事態となっても、この事態を迅速に解消してスムーズに減速比変更を完了することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1の電動工具の側断面図である。
【図2】同上の電動工具の内部側面図である。
【図3】同上の電動工具の背断面図である。
【図4】同上の電動工具の減速機構部の分解斜視図である。
【図5】同上の電動工具の要部説明図である。
【図6】同上の減速機構部の1速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図7】同上の減速機構部の1速と2速の切替途中の状態を示す側断面図である。
【図8】同上の減速機構部の2速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図9】同上の減速機構部の2速と3速の切替途中の状態を示す側断面図である。
【図10】同上の減速機構部の3速の状態を示し、(a)は側断面図、(b)は側面図である。
【図11】本発明の実施形態3の電動工具の要部説明図であり、(a)は2速の状態、(b)は2速と3速の切替途中の状態、(c)は3速の状態である。
【図12】本発明の実施形態4の電動工具の要部説明図である。
【図13】本発明の実施形態5の電動工具の要部説明図であり、(a)は2速の状態、(b)は2速と3速の切替途中の状態、(c)は3速の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
<実施形態1>
図1〜図3には、本発明の電動工具の実施形態1を示している。本実施形態の電動工具は、駆動源であるモータ(メインモータ)1と、このモータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2を介して伝達された回転動力を出力軸4にまで伝達する駆動伝達部3とを、胴体ハウジング101内に収容したものである。胴体ハウジング101からは把持部ハウジング102が延設され、把持部ハウジング102にはトリガスイッチ103を引き込み自在に設けている。電動工具の本体ハウジング100は、胴体ハウジング101と把持部ハウジング102とからなる。
【0017】
胴体ハウジング101内には、前記モータ1や減速機構部2に対して軸方向が平行となるように、変速用アクチュエータ6を収容している。この変速用アクチュエータ6は回転式のアクチュエータであり、減速機構部2が有する切替部材7を、変速カムプレート8を介してスライド移動させ、減速比の切替を行う。この点について詳しくは後述する。
【0018】
図4〜図10には、減速機構部2等の構造をより詳細に示している。本実施形態の減速機構部2は、ギアケース9内に三段の遊星減速機構を収容したものであり、各段の遊星減速機構の減速状態と非減速状態を切り替えることによって、減速機構部2全体の減速比を切り替える。以下においては、モータ1に近い側から順に1、2、3段目の遊星減速機構として説明を行う。
【0019】
1段目の遊星減速機構は、モータ1からの回転動力によって軸中心に回転駆動される太陽ギア10(図4中では図示略)と、太陽ギア10を囲むように位置して該太陽ギア10と噛み合う複数の遊星ギア11と、これら複数の遊星ギア11を囲むように位置して各遊星ギア11に噛み合うリングギア12と、これら複数の遊星ギア11がキャリアピン13を介して回動自在に連結されるキャリア14と、からなる。
【0020】
2段目の遊星減速機構は、1段目の前記太陽ギア10に結合される2段目の太陽ギア20(図4中では図示略)と、太陽ギア20を囲むように位置して該太陽ギア20と噛み合う複数の遊星ギア21と、これら複数の遊星ギア21とも噛み合うことが可能な前記リングギア12と、これら複数の遊星ギア21がキャリアピン23を介して回動自在に連結されるキャリア24と、からなる。キャリアピン23は、その先端部が1段目のキャリア14に連結される。
【0021】
前記リングギア12は、1段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するか、2段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するかが、そのスライド位置によって択一的に選択可能な構造である。つまり、リングギア12は、モータ1側のスライド位置にあるときには1段目の遊星ギア11に噛み合い、出力軸4側のスライド位置にあるときには2段目の遊星ギア21に噛み合う。
【0022】
以下の本文中において、モータ1側を単に「入力側」といい、出力軸4側を単に「出力側」という。
【0023】
ギアケース9の内周面には、リングギア12が軸方向にスライド自在に且つ回転不能に係合するガイド部15を設けており、リングギア12はこのガイド部15により案内されながら軸方向のスライド移動を行う。
【0024】
3段目の遊星減速機構は、2段目のキャリア24に結合される3段目の太陽ギア30と、太陽ギア30を囲むように位置して該太陽ギア30と噛み合う複数の遊星ギア31と、これら複数の遊星ギア31と噛み合うリングギア32と、これら複数の遊星ギア31がキャリアピン33を介して回動自在に連結されるキャリア34と、からなる。
【0025】
リングギア32は、ギアケース9に対して軸方向にスライド自在に且つ回転自在に配されている。リングギア32が入力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、2段目のキャリア24の外周縁部に噛み合う。リングギア32が出力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、ギアケース9と一体に形成された係合歯部40と噛み合う。また、リングギア32はいずれのスライド位置にあるときも、遊星ギア31とは噛み合う。
【0026】
これら3段の遊星減速機構は、軸方向に連結されている。つまり、1〜3段目の太陽ギア10,20,30が軸方向の一直線上に並設され、これらを囲むように位置する二つのリングギア12,32もまた軸方向の一直線上に並設されている。
【0027】
各リングギア12,32は独立して軸方向にスライド自在であり、そのスライド位置に対応して減速比を切り替え、出力軸4の回転出力を1速、2速、3速に変更する。このように、本実施形態では、各リングギア12,32が、軸方向にスライド自在な切替部材7をなす。なお、ここでの1速は最も減速比の小さい状態であり、2速は1速よりも減速比の大きな状態、3速は1,2速よりも減速比の大きな状態(つまり、最も減速比の大きな状態)である。
【0028】
図6には1速の状態、図7には1速と2速の切替途中の状態、図8には2速の状態、図9には2速と3速の切替途中の状態、図10には3速の状態を示している。
【0029】
図6の1速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が入力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、1段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
【0030】
具体的には、1段目の太陽ギア10の回転により、リングギア12と噛み合う遊星ギア11が太陽ギア10のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア10の回転力が減速されたうえでキャリア14に伝達される。キャリア14は2段目のキャリア24と一体に回転し、さらに、3段目の遊星減速機構全体も2段目のキャリア24と一体に回転する。
【0031】
図8の2速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
【0032】
具体的には、1段目の太陽ギア10に結合した2段目の太陽ギア20の回転により、リングギア12と噛み合う2段目の遊星ギア21が太陽ギア20のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア20の回転力が減速されたうえでキャリア24に伝達される。1段目及び3段目の遊星減速機構は、この2段目のキャリア24と一体に回転する。
【0033】
ここで、1段目の遊星減速機構と2段目の遊星減速機構とでは、2段目の方が減速比が大きくなるように各部材の寸法形状を相違させている。したがって、2速の場合は1速よりも減速比が大きく、出力軸4の回転速度は小さくなる。
【0034】
図10の3速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が出力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構と3段目の遊星減速機構が共に減速状態となる。
【0035】
具体的には、1段目の太陽ギア10に結合した2段目の太陽ギア20の回転により、リングギア12と噛み合う2段目の遊星ギア21が太陽ギア20のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア20の回転力が減速されたうえでキャリア24に伝達される。1段目の遊星減速機構は、2段目のキャリア24と一体に回転する。2段目のキャリア24の回転は、これに結合される3段目の太陽ギア30に伝達される。3段目の太陽ギア30の回転により、リングギア32に噛み合う3段目の遊星ギア31が太陽ギア30のまわりを自転及び公転することで、太陽ギア30の回転力がさらに減速されたうえでキャリア34に伝達される。
【0036】
切替部材7をなす二つのリングギア12,32のスライド位置は共に、変速カムプレート8の回転位置に応じて決定される。変速カムプレート8は、筒状をなすギアケース9の外周面に沿う断面円弧状のプレートであり、ギアケース9の中心軸まわりに回転自在となるように装着される。
【0037】
変速カムプレート8には、二つのカム溝41,42を軸方向に並設している。入力側のカム溝41は、リングギア12のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝41に挿通される変速ピン45の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝48(図4参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア12の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝48は、減速機構部2の軸方向と平行に形成している。
【0038】
出力側のカム溝42は、リングギア32のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝42に挿通される変速ピン46の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝49(図4参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア32の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝49は、減速機構部2の軸方向と平行に形成したものであり、他方のガイド溝48と一直線上に形成している。
【0039】
この変速カムプレート8は、その周方向端部に、回転式の変速用アクチュエータ6と噛み合うギア部47を有する。変速用アクチュエータ6は、専用のモータ(サブモータ)50と、モータ50の回転動力を減速して伝達する減速機構部51と、減速機構部51を通じて伝達される回転動力により回転駆動される出力部52とを有する。
【0040】
このように、本実施形態の電動工具では、減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、これら切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて該切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて形成している。
【0041】
切替部材7は、上述のようにリングギア12,32である。また、ここでのギア部材5は、リングギア12に対しては1段目の遊星ギア11と2段目の遊星ギア21であり、リングギア32に対しては2段目のキャリア24と係合歯部40である。これら切替部材7とギア部材5の係合状態と非係合状態に応じて、減速機構部2全体の減速比が切り替わる。
【0042】
さらに、本実施形態の電動工具には、図5に概略的に示すように、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、モータ1およびモータ50を駆動制御する制御部62とを備えている。
【0043】
駆動状態検知部60は、モータ1に流れる電流値とモータ1の回転数の少なくとも一方を検知することで、モータ1の駆動状態を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部61は、切替部材7に連動する変速カムプレート8のギアケース9に対する回転位置を検知することで、間接的に切替部材7の位置(つまりリングギア12,32のそれぞれのスライド位置)を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部61は、非接触式の変位検知センサであってもよいし、変速カムプレート8に直接接触する接触式のものであってもよい。
【0044】
制御部62は、駆動状態検知部60により検知されるモータ1の駆動状態に応じて、変速用アクチュエータ6を起動させ、切替部材7をスライド移動させることにより減速機構部2の減速比を変更する。
【0045】
つまり、本実施形態の電動工具では、切替部材7を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、駆動状態検知部60の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させる制御部62とを用いて、減速比切替手段を構成している。
【0046】
そして、制御部62においては、変速用アクチュエータ6(つまりモータ50)を起動させるとき、スライド位置検知部61の検知結果に応じて、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させるように制御する。ここでモータ1の回転動力を低下または増大させるのは、スライド移動される切替部材7とこれがスライド後に係合するギア部材5との間において、係合時の相対回転速度を極力減じる(望ましくはゼロとする)ためである。
【0047】
以下においては、1速→2速に自動変速される場合、2速→3速に自動変速される場合、3速→2速に自動変速される場合、2速→1速に自動変速される場合について、順に述べる。
【0048】
1速→2速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図6に示す1速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、2速に自動変速される。
【0049】
具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0050】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の入力側のカム溝41に挿通される変速ピン45は、ギアケース9に設けたガイド溝48にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン45は、切替部材7であるリングギア12を出力側へとスライド移動させる。
【0051】
スライド移動したリングギア12は、まず1段目の遊星ギア11との係合が解除され、図7に示す切替途中の状態となる。このとき、リングギア12はギアケース9に対して回転固定の状態にある。一方、次期係合対象のギア部材5である2段目の遊星ギア21は、モータ1の回転動力に依存した形態で、ギアケース9に対して軸まわりに回転駆動される。
【0052】
制御部62は、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる(ゼロとする場合を含む)。これにより、図8のようにリングギア12が2段目の遊星ギア21と係合する際に両者12,21間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0053】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0054】
2速→3速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図8に示す2速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、3速に自動変速される。具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0055】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の出力側のカム溝42に挿通される変速ピン46は、ギアケース9に設けたガイド溝49にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン46は、もう一つの切替部材7であるリングギア32を出力側へとスライド移動させる。
【0056】
スライド移動したリングギア32は、まず2段目のキャリア24との係合が解除され、図9に示す切替途中の状態に至る。このとき、リングギア32は、3段目の遊星ギア31に係合し、且つ、ギアケース9には回転固定されない状態にある。
【0057】
図9の切替途中状態にあるリングギア32は、2速にてキャリア24に係合していたときの回転慣性で回転を続けるが、これと同時に、モータ1により駆動される3段目の遊星ギア31からの反力によって、前記回転慣性とは反対方向の回転力を受ける。一方、リングギア32が次に係合するギア部材5である係合歯部40は、ギアケース9に対して固定されている。
【0058】
制御部62は、前記反対方向の回転力を積極的に利用して、リングギア32と係合歯部40との相対回転を低減させる(好ましくはゼロとする)ため、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったことをスライド位置検知部61が検知すると、その時点で、リングギア32のスライド移動を一旦停止させる。そして、モータ1の回転動力を一時的に増大させ、リングギア32のギアケース9に対する回転速度を速やかに低減させる。そのうえでリングギア32のスライド移動を再開し、係合歯部40と係合する際にはリングギア32の回転速度が極力ゼロに近づくように調整する。
【0059】
これにより、図10のようにリングギア32が係合歯部40と係合する際の衝撃を抑制し、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現するとともに、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制することができる。
【0060】
なお、リングギア32のスライド移動の一旦停止は行わず、モータ1の回転動力を一時的に増大させるだけで回転速度を調整してもよい。また、リングギア32の一旦停止によってのみ、回転速度を調整してもよい。また、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させ、2速にてキャリア24に係合していたときのリングギア32の回転慣性による回転を低下させる制御としてもよい。
【0061】
3速→2速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図10に示す3速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、2速に自動変速される。
【0062】
具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以下になったとき、モータ1の回転数が所定値以上になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0063】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の出力側のカム溝42に挿通される変速ピン46は、切替部材7であるリングギア32を入力側へとスライド移動させる。
【0064】
スライド移動したリングギア32は、まず係合歯部40との係合が解除され、図9に示す切替途中の状態に至る。このとき、リングギア32は、3段目の遊星ギア31に係合し、且つ、ギアケース9には回転固定されない状態にある。
【0065】
図9の切替途中状態にあるリングギア32は、モータ1により駆動される3段目の遊星ギア31からの反力によって、モータ1の回転方向とは反対方向の回転力を受ける。一方、リングギア32が次に係合するギア部材5である2段目のキャリア24は、モータ1の回転方向に回転される。
【0066】
制御部62は、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる(ゼロとする場合を含む)。これにより、図8のようにリングギア32が2段目のキャリア24と係合する際に両者32,24間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0067】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0068】
2速→1速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図8に示す2速の状態にある減速機構部2でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、1速に自動変速される。具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以下になったとき、モータ1の回転数が所定値以上になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
【0069】
前記検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の入力側のカム溝41に挿通される変速ピン45は、切替部材7であるリングギア12を入力側へとスライド移動させる。
【0070】
スライド移動したリングギア12は、まず2段目の遊星ギア21との係合が解除され、図7に示す切替途中の状態となる。このとき、リングギア12はギアケース9に対して回転固定の状態にある。一方、次期係合対象のギア部材5である1段目の遊星ギア11は、モータ1の回転動力に依存した形態で、ギアケース9に対して軸まわりに回転駆動される。
【0071】
制御部62は、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部61から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる。これにより、図6のようにリングギア12が1段目の遊星ギア11と係合する際に両者12,11間の相対回転を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
【0072】
また、制御部62は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
【0073】
以上のように、本実施形態の電動工具が備える制御部62は、モータ1の駆動状態に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともに、センサにより検知される切替部材7(リングギア12,32)の現在位置に対応するかたちで、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させる。前記回転動力の低下は、モータ1を停止する場合も含む。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。なお、制御部62を、変速用アクチュエータ6の起動にも同期してモータ1の回転動力を徐々に低下または増大させるものとしてもよい。
【0074】
そして、本実施形態の制御部62では、スライド位置検知部61が検知する切替部材7(リングギア12,32)の位置に対応するかたちで、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現し、また、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制することができる。
【0075】
以下、この変速用アクチュエータ6の制御について具体的に述べる。
【0076】
制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させることで、切替部材7(リングギア12またはリングギア32)を、狙いのギア部材5(遊星ギア11、遊星ギア21、キャリア24または係合歯部40)に対して係合させる。このとき、切替部材7とギア部材5との歯同士がうまく噛み合わず、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動できない場合がある。この場合、変速がうまく行かず作業の障害になるだけでなく、変速用アクチュエータ6に過剰な負荷がかかって故障の原因ともなる。
【0077】
これに対し、制御部62は、スライド位置検知部61から入力される検知結果によって、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないと判断されるときには、変速用アクチュエータ6のモータ50の回転方向を一旦逆転させる。つまり、変速カムプレート8を介して切替部材7をスライド移動させる方向を所定時間だけ逆転させ、切替部材7を狙いのギア部材5から一旦離す。
【0078】
切替部材7とギア部材5との相対回転位置は、両者7,5が離れている間にモータ1からの回転動力により変更されるので、再び変速用アクチュエータ6のモータ50を正転させて切替部材7をギア部材5側にスライド移動させると、両部材7,5はうまく噛み合いやすくなる。切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動しないという事態が再び生じれば、制御部62は同様の制御を繰り返す。なお、前記事態が所定回数生じたときには、これを検知した制御部62がモータ1を駆動停止するように設けてもよい。
【0079】
次に、本発明の電動工具の他の実施形態について順に述べる。なお、上記した実施形態1と同様の構成については詳しい説明を省略し、実施形態1とは相違する特徴的な構成について、主に詳述する。
【0080】
<実施形態2>
本実施形態の電動工具においても、ギア同士がうまく噛み合わず変速を失敗した場合には、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更するように設けている。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現し、また、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制する。しかし、本実施形態においては、変速用アクチュエータ6の駆動制御の変更の仕方が実施形態1の場合と相違している。
【0081】
具体的には、スライド位置検知部61の検知結果から、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないと判断されるときには、制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50の回転動力を増大させるように変更する。つまり、変速カムプレート8を介して切替部材7をスライド移動させるスライド駆動力を変更することにより、両部材7,5を噛み合いやすくする。
【0082】
なお、モータ50の回転動力を単に増大させるだけでなく、一旦低下させたうえで増大させる、低下と増大を所定周期で繰り返す等の、適宜の駆動力変更が可能である。また、スライド駆動力を変更しても切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動しない場合には、これを検知した制御部62がモータ1を駆動停止するように設けてもよい。
【0083】
<実施形態3>
本実施形態の電動工具では、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、実施形態1のように切替部材7に連動する他部材(変速カムプレート8)の位置を検知するのではなく、切替部材7の位置を直接的に検知する構造となっている。
【0084】
図11には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態では、変速用アクチュエータ6はソレノイドからなる直動式のアクチュエータであり、プランジャ70の軸方向の突出量を変更自在に設けている。切替部材7をなすリングギア32は、連結部材71を介してプランジャ70と連結されている。リングギア32は連結部材71に対して軸まわりに回動自在であり、且つ、連結部材71と一体に軸方向にスライド駆動される構造である。
【0085】
スライド位置検知部61は、リングギア32の径方向外側に位置するようにギアケース9に設置された変位検知センサである。このセンサはリングギア32に直接接触する接触式のものであるが、非接触式のものを用いてもよい。
【0086】
<実施形態4>
本実施形態の電動工具においても、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、切替部材7やこれと連動する他部材(変速カムプレート8)の位置を検知するのではなく、変速用アクチュエータ6の駆動状態を検知し、この検知結果を基にして切替部材7の位置を間接的に検知する。
【0087】
図12には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態のスライド位置検知部61は、回転式の変速用アクチュエータ6が有する出力部52の回転位置を検知する変位センサである。この変位センサは、出力部52に直接接触する接触式のものを用いてもよいし、非接触式のものを用いてもよい。
【0088】
<実施形態5>
本実施形態の電動工具においても、スライド位置検知部61が実施形態1とは相違している。本実施形態のスライド位置検知部61は、変速用アクチュエータ6の駆動状態を検知することで、切替部材7の位置を間接的に検知するものであり、この点においては実施形態4と同様である。しかし、以下の点において実施形態4とは相違する。
【0089】
図13には、本実施形態のスライド位置検知部61を概略的に示している。本実施形態では、変速用アクチュエータ6はソレノイドからなる直動式のアクチュエータであり、プランジャ70の軸方向の突出量を変更自在に設けている。切替部材7をなすリングギア32は、連結部材71を介してプランジャ70と連結されている。リングギア32は連結部材71に対して軸まわりに回動自在であり、且つ、連結部材71と一体に軸方向にスライド駆動される構造である。
【0090】
スライド位置検知部61は、直動式の変速用アクチュエータ6が有するプランジャ70の突出位置を検知する変位センサである。この変位センサは、プランジャ70と直接接触する接触式のものであるが、非接触式のものを用いてもよい。
【0091】
ここまで、実施形態1〜5の電動工具の詳細な構成について説明した。
【0092】
上述のように、実施形態1〜5の電動工具では、駆動源であるモータ1と、モータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する。前記減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものである。前記減速比切替手段は、切替部材7を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータ6と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部61と、駆動状態検知部60の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともにスライド位置検知部61の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更する制御部62と、を有するものである。
【0093】
前記構成を具備する電動工具においては、実際に検知される切替部材7のスライド位置に基づいて、変速用アクチュエータ6の駆動制御を適宜変更することができる。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わないような事態となれば、これを速やかに検知し、変速用アクチュエータ6の駆動制御を変更することによってこの事態の解消を図ることができる。
【0094】
特に、実施形態1,3〜5の電動工具において、制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させたときに、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないとスライド位置検知部61の検知結果により判断されるときには、変速用アクチュエータ6による切替部材7のスライド方向を一旦逆転させるものとなっている。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わない場合には、切替部材7をギア部材5から一旦離し、両部材7,5の相対回転位置を変更したうえで、再び噛み合わせを試みることができる。
【0095】
また、実施形態2の電動工具において、制御部62は、変速用アクチュエータ6を駆動させたときに、切替部材7が所定の目標位置にまでスライド移動していないとスライド位置検知部61の検知結果により判断されるときには、変速用アクチュエータ6による切替部材7のスライド駆動力を変更するものとなっている。これにより、切替部材7がギア部材5とうまく噛み合わない場合には、例えば変速用アクチュエータ6の駆動力を増大させる等の変化をつけることにより、両部材7,5が噛み合いやすい状態に移行させることができる。
【0096】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、各実施形態において適宜の設計変更を行うことや、各実施形態の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 モータ
2 減速機構部
5 ギア部材
6 変速用アクチュエータ
7 切替部材
60 駆動状態検知部
61 スライド位置検知部
62 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、前記モータの回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部と、前記減速機構部の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する電動工具であって、
前記減速機構部は、軸方向にスライド自在な切替部材と、前記切替部材の軸方向のスライド位置に応じて前記切替部材との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものであり、
前記減速比切替手段は、前記切替部材を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータと、前記モータの駆動状態を検知する駆動状態検知部と、前記切替部材のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、前記駆動状態検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータを起動させるとともに前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータの駆動制御を変更する制御部と、を有するものである
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド方向を一旦逆転させるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド駆動力を変更するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項1】
駆動源であるモータと、前記モータの回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部と、前記減速機構部の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する電動工具であって、
前記減速機構部は、軸方向にスライド自在な切替部材と、前記切替部材の軸方向のスライド位置に応じて前記切替部材との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものであり、
前記減速比切替手段は、前記切替部材を軸方向にスライドさせる変速用アクチュエータと、前記モータの駆動状態を検知する駆動状態検知部と、前記切替部材のスライド位置を検知するスライド位置検知部と、前記駆動状態検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータを起動させるとともに前記スライド位置検知部の検知結果に応じて前記変速用アクチュエータの駆動制御を変更する制御部と、を有するものである
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド方向を一旦逆転させるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記変速用アクチュエータを駆動させたときに、前記切替部材が所定の目標位置にまでスライド移動していないと前記スライド位置検知部の検知結果により判断されるときには、前記変速用アクチュエータによる前記切替部材のスライド駆動力を変更するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−16760(P2012−16760A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154129(P2010−154129)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(509119153)パナソニック電工パワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(509119153)パナソニック電工パワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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