説明

電動建設機械

【課題】電動移動体の運用に支障を与えず、かつ満充電容量誤差が小さい電動移動体を提供すること。
【解決手段】二次電池10に蓄積された電力を動力に変換する電動建設機械において、二次電池の充電中に少なくとも2回以上設定された複数の充電休止期間中ごとの電池電圧変化と、複数の充電休止期間における2つの充電休止期間に挟まれた1又は複数の充電期間に二次電池に充電された電荷とに基づいて、二次電池の満充電容量を算出する電池管理ユニット11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池を備える電動建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車(電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等)及び電動建設機械(バッテリショベル、プラグインハイブリッドショベル等)等の電動移動体や、ノートパソコン及び携帯電話等の小型機械に搭載された二次電池を管理するための蓄電システムは、電池の満充電容量を計測して、残使用時間・残走行距離を算出したり、電池の劣化度(State of Health: SOH)を診断したりすることがある。ここで、電池の満充電容量の計測方法としては、満充電状態から放電し、放電終了後の開放電圧(Open Circuit Voltage:OCV)を測り、そのOCVから求めた充電率(State of Charge: SOC)と、放電電荷により求めるものがある(特許文献1)。ここで、OCVは、放電後は徐々に上がり、多くの電池ではおよそ2時間未満である値に落ち着く。なお、収束した値はSOCの関数となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−247773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術はノートパソコンを対象にしたものであり、エネルギー確保の観点からサイズの大きな電池(大型電池)を搭載した電動移動体等に適用すると不具合が生じる。すなわち、特許文献1の技術を大型電池に適用した場合、OCVからSOCを推定するときに誤差が生じ、その結果、満充電容量に誤差が生じてしまう。これは、大型電池では、内部にこもった熱の解消に時間を要し、当該熱の影響によってOCVが安定しないため、2時間程度では放電後のOCVが一定の値に収束せず、SOCに誤差が生じてしまうからである。一方、2時間以上放置することでOCVを安定化させてSOC誤差を低減させた場合には、放置時間が長くなり、電動移動体の運用効率に支障をきたすことになる。
【0005】
特に、電動建設機械(電動建機)は、搭載する電池個数が多いため、その配置位置の違いに起因した温度ムラが生じ易く、特定の電池だけに劣化が進む場合等がある。そのため、電動自動車等の他の電動移動体よりも各電池のSOHの管理が重要となる。すなわち、電動建機では、正確な満充電容量を算出して各電池のSOHを管理することが他の電動移動体よりも重要となる。
【0006】
本発明の目的は、電動建設機械の運用に支障を与えず、かつ満充電容量誤差が小さい電動建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、二次電池に蓄積された電力を変換して得られる動力によって駆動される電動建設機械において、前記二次電池の充電中に少なくとも2回以上設定された複数の充電休止期間中ごとの電池電圧変化と、当該複数の充電休止期間における2つの充電休止期間に挟まれた1又は複数の充電期間に前記二次電池に充電された電荷とに基づいて、前記二次電池の満充電容量を算出する制御手段を備えるものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充電は吸熱反応のため熱がこもり難くOCVの収束時間を短くできるので、電動建設機械の運用に与える支障が低減するとともに精度良く満充電容量を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の各実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルの外観図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電池管理ユニットにおいて実行される満充電容量算出処理のフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電池電圧及び充電休止信号の時間変化を示す図。
【図5】二次電池10から電池管理ユニット11へ出力されるデータの通信フォーマット例を示す図。
【図6】本発明の各実施の形態における無負荷時電池電圧OCVとSOCとの関数テーブルを示す図。
【図7】充電後の二次電池10の電池電圧(OCV)を計測し、当該電池電圧のデータをプロットした図。
【図8】本発明の各実施の形態における分極時定数テーブルの一例を示す図。
【図9】二次電池10を構成する複数の電池モジュールのSOHを表示するときの表示装置16の画面の一例を示す図。
【図10】電池モジュールを構成する複数の個別電池のSOHを表示するときの表示装置16の画面の一例を示す図。
【図11】本発明の第1の実施の形態における電池電圧及び充電休止信号の時間変化の他の例を示す図。
【図12】或る二次電池(電池1)のOCV-SOC特性を示す図。
【図13】電池1のSOC誤差特性を示す図。
【図14】他の二次電池(電池2)のOCV-SOC特性を示す図。
【図15】電池2のSOC誤差特性を示す図。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る電池管理ユニットにおいて実行される満充電容量算出処理のフローチャート。
【図19】充電器のスイッチをONにすることをユーザに促す画面の一例。
【図20】充電中につき、待機することをユーザに促す画面の一例。
【図21】充電器のスイッチをOFFにすることをユーザに促す画面の一例。
【図22】充電中止中につき、待機することをユーザに促す画面の一例。
【図23】満充電容量の計算等が完了したことをユーザに報知する画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の各実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベル(バッテリショベル)の外観図である。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、充電器による充電が可能な他の電動建設機械及び電気自動車(EV)等の電動移動体やこれに係る蓄電システムにも適用可能である。
【0011】
この図に示すバッテリ式油圧ショベルは、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cを有する多関節型の作業装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eを有する車体1Bを備えている。
【0012】
ブーム1aは、上部旋回体1dに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(ブームシリンダ)3aにより駆動される。アーム1bは、ブーム1aに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(アームシリンダ)3bにより駆動される。バケット1cは、アーム1bに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(バケットシリンダ)3cにより駆動される。上部旋回体1dは電動モータ(旋回モータ)(図示せず)により旋回駆動され、下部走行体1eは左右の走行モータ(油圧モータ)3e,3f(図示せず)により駆動される。油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び走行モータ3e,3fは、油圧ポンプ6(図2参照)によってタンク9から汲み上げられる圧油によって駆動される。
【0013】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図である。なお、先の図面と同じ部分には同じ符号を付して説明は適宜省略する(後の図面も同様とする)。
【0014】
この図に示す蓄電システムは、二次電池10と、二次電池10の状態を監視するための電池管理ユニット(Battery Control Unit : BCU)11と、二次電池10に流れる電流を検知するための電流計(電荷検出手段)12と、二次電池10と電池管理ユニット11を結ぶ通信線13と、二次電池10を充電するための充電器14と、充電器14と電池管理ユニット11を接続する通信線15、電池管理ユニット11等で計算された二次電池10の満充電容量等を表示するための表示装置(表示手段)16と、電池管理ユニット12と表示装置16を接続する通信線17と、二次電池10からの直流電力を交流電力に変換しつつモータ19を制御するためのインバータ装置(電力変換装置)18と、二次電池10の電力によって動力を発生する三相交流モータ(電動機)19と、モータ19によって駆動される油圧ポンプ6を備えている。なお、図2の例では、モータ19によって駆動されるものとして油圧ポンプ6を図示しているが、その他の駆動装置でも良い。
【0015】
二次電池10は、複数の単電池から構成される組電池であり、本実施の形態ではリチウムイオン電池を利用している。組電池は電池モジュールの集合体である。一般的な電池モジュールとしては、4〜40個の電池を直列接続して箱の中に収めたものがある。電池モジュールは更に直列または並列に接続されて、組電池の一構成要素となる。図2に示した二次電池10は、電池モジュールを直列接続しているが、直並列の構成でも良い。なお、その場合には、電池管理ユニット11と電流計12を直列毎に用意するものとする。
【0016】
電流計12としては、例えば、シャント抵抗を利用したもの(例えば、特開2005−188945号公報参照)や、ホール素子を利用したもの(例えば、特開平7−294561号公報参照)が適用可能である。電流計12で検出された電流値は、電池管理ユニット11に出力されている。
【0017】
二次電池10は、通信線13を介して電池管理ユニット12に接続されている。また、二次電池10は、各電池の電圧を監視しており、電池管理ユニット11に通信線13を介して定期的に電圧値を送信している。通信線13としては、Local Interconnect Network(LIN)やController area network(CAN)などを使うことができる(佐藤道夫著,「車載ネットワーク・システム徹底解説−CAN, LIN, FlexRayのプロトコルと実装(デザインウェーブムック)」,CQ出版,2005年12月1日)。なお、総電圧検出線を電池管理ユニット11のAD変換器(図示せず)に接続しても構わない。また、電池管理ユニット11とインバータ装置18が通信線(CANを利用しても良い)で繋がっていても構わない。
【0018】
充電器14は、二次電池10の充電を行うためのもので、二次電池10に接続して用いられる。なお、充電器14の形態としては、電動移動体(バッテリショベル)に搭載されたものと、電動移動体の外部に電動移動体と独立して設置されたものがあるが、どちらでも構わない。
【0019】
充電器14の充電方式には、例えば、CCCV充電(Constant-Current Constant-Voltage:定電流−定電圧充電)やパルス充電方式がある。CCCV充電方式は、充電開始から、定電流モードで充電を行い、充電の目標とする電圧に到達したら、定電圧モードで充電を行う方式である(例えば、特開2011−4509号公報参照)。また、パルス充電では、ある所定の時間(例えば、数秒周期)毎にパルス電流を入力し、充電の目標とする電圧まで充電を行う方式である(特開2001−169474号公報)。なお、パルス充電による休止は短いため、本発明における「充電休止期間」とは扱わないものとする。
【0020】
本実施の形態における充電器14は、電池管理ユニット11から出力される充電休止信号に基づいて充電を停止するものとし、さらに、電池が満充電になると充電器は自動的に停止するものとする。なお、充電休止信号に代替する構成としては、既存の充電器にリレーを繋げて、そのスイッチ(SW)を制御するものがある(図17参照)。電池管理ユニット11からの制御の通信線はCANを利用したり、SWのON/OFF状態を示す電圧線(充電器14による充電が開始したことを示す信号(充電開始信号)を充電器14から電池管理ユニット11へ送るための1本と、電池管理ユニット11から充電器14へ充電休止信号を送るための1本の計2本)としても良い。
【0021】
電池管理ユニット(制御手段)11は、ハードウェア構成として、各種の制御プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。このようなハードウェア構成を利用して、電池管理ユニット11は、通信線13を介して取得した各電池の電池電圧と、電流計12を介して取得した電流とに基づいて各電池の満充電容量を計算する。そして、満充電容量に基づいて二次電池10全体の充電率(SOC:State of Charge)及び劣化度(SOH:State of health)や、各電池モジュール及び個別電池のSOC及びSOHを計算する(計算方法の詳細については後述)。ここで計算されたSOHやSOCは、通信線17を介して出力され、表示装置16に表示される(表示方法の詳細については後述)。SOHの計算方法の一つとしては下記式(1)がある。また、SOCの計算方法としては下記式(2)がある。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
また、電池管理ユニット11には、二次電池10の仕様情報として無負荷時電池電圧OCV[V]が記憶されている。OCVの値は電池の充電状態(SOC)に応じて変化するので、本実施の形態における電池管理ユニット11は、SOCとOCVの関係をテーブルの形式で記憶している(図6参照)。
【0025】
さらに、電池管理ユニット11は、充電器14へ充電休止指令を、通信線15を介して送る。充電器14への充電休止指令信号の作成処理は後述する。
【0026】
図3は本発明の第1の実施の形態に係る電池管理ユニットにおいて実行される満充電容量算出処理のフローチャートであり、図4は本発明の第1の実施の形態における電池電圧及び充電休止信号の時間変化を示す図である。なお、本実施の形態では、図3に示す処理を電池管理ユニット11で行うが、他の装置(診断装置101)で行う場合については第2の実施の形態で説明する。
【0027】
図3のフローチャートはバッテリ式油圧ショベルの充電操作を開始したときに開始される。なお、充電開始時刻は、充電器14がバッテリ式油圧ショベルに搭載された形態では電力線を系統に接続したとき、外部に充電器14が設置された形態では充電電力線をバッテリ式油圧ショベルに接続したときとする。また、後の実施の形態のように、表示装置16または充電器14に充電開始ボタンがある場合には、ユーザがボタンを押したときとする。ところで、充電操作を開始した時点(図4における時刻ゼロの時)では、二次電池10の充電は開始されていない。即ち、電池管理ユニット11から充電器14へは充電休止信号が出ている。
【0028】
充電操作が開始されたら、電池管理ユニット11は、充電前の各電池モジュールの電圧を各電池モジュールから通信線13を介して入力する(ステップ20)。図5は二次電池10から電池管理ユニット11へ出力されるデータの通信フォーマット例を示す図である。この図は、1つの電池モジュールでの通信を示し、4個の電池が直列に繋がった例を示す。フォーマットとしては、1モジュールにおける電池数(図5の場合は4個)と、1番目の電池電圧と、2番目の電池電圧と、3番目の電池電圧と、4番目の電池電圧から構成される。電池管理ユニット11は、この通信フォーマットを電池モジュール毎に受信する。二次電池10の総電圧は、各電池電圧の総和より算出することができるが、電圧総電圧検出線を別途設け、これを電池管理ユニット11のAD変換器に接続して計測しても良い。
【0029】
ステップ20が完了したら、充電休止信号をOFFにして二次電池10の充電を開始する(ステップ21)。図4において「充電開始」と示した時刻がステップ21の開始時刻である。なお、二次電池10の充電を開始するには、充電休止信号をOFFにするとともに充電開始信号を充電器14に出力しても良い。
【0030】
ステップ21で充電を開始したら、電池管理ユニット11は、二次電池10の電圧と充電電流を所定の間隔で計測する処理を実行する(ステップ22)。電池電圧は各電池モジュールから図5のフォーマットで受信する(別途、電圧総電圧検出線を設け、電池管理ユニット11のAD変換器に繋げて計測しても良い)。電流は電流計12で計測した値を用いる。なお、これらの計測周期は予め決められた値(例えば、80ミリ秒や、100ミリ秒)とし、ステップ22ではその周期になるまで計測を待つ形態としても良い。なお、ここで計測した電流値を積分した値は、二次電池10の充電電荷として満充電容量の算出時(ステップ31)に利用される。なお、電荷の初期値は0としておき、充電開始毎に値を0にリセットする。
【0031】
ステップ22が完了したら、電池管理ユニット11は、二次電池10の充電を休止するか否かについての判定(充電休止判定)を行う処理を実行する(ステップ23)。本実施の形態における充電休止判定は、その充電期間の開始時における電池電圧(すなわち、1回目の場合はステップ20で計測した値)からの電圧上昇値が設定値に到達したか否かに基づいて行われる。すなわち、その充電期間の開始時における電池電圧と現在の電池電圧との差ΔVが当該設定値に達したか否かを判定する。
【0032】
なお、二次電池10は複数の電池によって構成されているので、充電休止判定に用いる電池電圧の値としては、二次電池10の総電圧を直列電池数で割った平均電圧を用いても良いし、各電池についての「現在の電池電圧−前回の休止期間直前の電池電圧」の最小値を用いても良い。予め定められた値ΔVは、予め指定されたSOC分の電圧上昇分(図4において符号34を付した電圧差)としても良い。ここで、指定されたSOC分の電圧上昇分の計算について、図6のテーブルを用いて説明する。
【0033】
図6は本発明の各実施の形態におけるOCVとSOCとの関数テーブルを示す図である。この図に示すテーブルは、OCVとSOCの列から構成されており、電池管理ユニット11の記憶装置に記憶されている。電池管理ユニット11は、充電開始前のOCVとしてステップ20で計測した値を用いることで初期のSOCを見積もる。なお、ステップ20で計測したOCVの値は収束していないため正確性に欠けるが、ここでは目安として利用するものとする。今、OCVが3.1Vであったとすると、図6のテーブルより初期SOCは10%となる。ここで、予め指定されたSOC分が10%であったとすると、初期値(10%)より次の充電休止タイミングはSOCが20%のときとなる。ここでSOCが20%のときの電圧は、図6より3.2Vであるため、ΔV=3.2-3.1=0.1Vとなる。
【0034】
なお、その他の充電休止判定としては、その充電期間の開始時における二次電池10の充電電荷が設定値に到達したか否かに基づいて行うものがある。この場合の設定値としては、前回計測した満充電容量の10%、または20%分としても良いし、カタログに記載されている電池の満充電容量の10%分としても良い。
【0035】
ステップ23における充電休止判定の結果、充電の休止を行わないと判定した場合にはステップ22に戻る。一方、休止すると判定した場合には、充電器14に充電休止信号を出力して充電休止期間を開始する(ステップ24)。
【0036】
充電休止期間中には、電池管理ユニット11は、充電休止期間中における電池電圧の変化を計測する処理を実行する(ステップ25)。当該期間中における二次電池10の電圧の変化を計測する方法としては、二次電池10の電圧を所定の間隔で計測するものがある。電池電圧は各電池モジュールから図5のフォーマットで受信する(別途、電圧総電圧検出線を設け、電池管理ユニット11のAD変換器に繋げて計測しても良い)。なお、電池電圧の計測周期は予め決められた値(例えば、1分)とし、ステップ25ではその周期になるまで計測を待つ形態としても良い。
【0037】
ステップ25が完了したら、電池管理ユニット11は、二次電池10の充電を再開するか否かについての判定(充電再開判定)を行う処理を実行する(ステップ26)。本実施の形態における充電再開判定は、その充電休止期間の開始時刻(ステップ24の時刻)からの経過時間が設定値(例えば、30分)以上に到達したか否かに基づいて行われる。なお、当該設定値は、充電後の二次電池10の電圧変化を予め測定することによって得られる二次電池10の分極緩和時間としても良い。ここで分極緩和時間とは、充電後に二次電池10の内部の分極緩和が充分進行して電池電圧が略収束する時間のことであり、本実施の形態では図7を用いて説明する分極時定数以上の値としている。
【0038】
図7は、充電休止期間中の二次電池10の電池電圧(OCV)を1分毎に長時間(例えば2時間)計測し、当該電池電圧のデータ63をプロットした図である。この図に示すグラフは、縦軸を電池電圧とし、横軸を充電後の経過時間としており、当該グラフ内には、点線64と、直線65と、点66が示されている。点線64は、二次電池10のOCVの最終値(収束値)を示したものであり、後述のステップ28では充電休止期間に計測した複数の電池電圧データに基づいてこの収束値を推定している。直線65は、OCVのプロットデータ63から得られる曲線(OCV曲線)についての時刻ゼロにおける接線である。点66は、点線64と直線65の交点である。本実施の形態では点66の時刻を分極時定数とし、当該分極時定数以上に設定した設定値をステップ26の充電再開判定に利用している。
【0039】
なお、分極時定数は、温度によって変化するため、分極時定数(又は充電再開判定の設定値)を温度と関連付けたテーブル形式で電池管理ユニット11の記憶装置に記憶させておくことが好ましい。このように温度に合わせた分極時定数を利用する場合には、二次電池10内に温度計(図示せず)を設置し、当該温度計で計測した値を通信線13を介して取得し、その値に応じて分極時定数を変更すれば良い。図8は本発明の各実施の形態における分極時定数テーブルの一例を示す図である。この図に示したテーブルは、温度と分極時定数の2つの列を有する。図示した例では、所定の温度範囲(−30℃から60℃まで)において10℃毎に計測した分極時定数の値が記憶されている。
【0040】
ステップ26における充電再開判定の結果、充電の再開を行わないと判定した場合にはステップ25に戻る。一方、再開すると判定した場合には、充電休止信号の充電器14への出力を中止して充電期間を再開する(ステップ27)。
【0041】
充電期間を再開したら、電池管理ユニット11は、充電休止期間の終了時における二次電池10のSOCを計算する処理を実行する(ステップ28)。ここにおけるSOC(充電率[%])の計算は、まず、充電休止期間中に計測した電池電圧(すなわち、ステップ25で周期的に計測した値)からOCVの収束値を推定する。そして、OCVはSOCとの関数であるため、推定したOCVの収束値と図6のテーブルを用いてSOCを推定する。
【0042】
ステップ28において、OCVの収束値を推定する計算方法としては、自己回帰モデルを利用したものがある。これは複数の指数関数の線形和で曲線を近似し、その関数の収束値を利用する方法である。具体的には、OCVの時系列より下記式(3)より計算する(東京大学教養学部統計学教室編,「自然科学の統計学」,東京大学出版会)。式(3)は2次の場合であるが、3次以上のモデルを使用しても良い。また、収束値に代えて、充電休止期間における電圧の最終値を使用しても良い。
【0043】
【数3】

【0044】
ステップ28でOCV収束値の算出が完了したら、電池管理ユニット11は、二次電池10の満充電容量を算出するか否かについての判定(満充電容量計算判定(計算判定))を行う処理を実行する(ステップ29)。本実施の形態における計算判定は、充電休止期間の回数が設定値に到達したか否かに基づいて行われる。当該設定値は2回以上に設定されており、本実施の形態では2回に設定されているものとする。
【0045】
なお、計算判定の条件には、さらに二次電池10のSOCの値を加えても良い。すなわち、充電休止期間の回数が2回以上でかつSOCの値が設定値を超えたか否かに基づいて判定する。このSOCの設定値の設定に際しては、SOCの誤差を参考にする。具体的には、図6のテーブルより、ΔSOC/(ΔOCV×100)を求め、当該値が、ある一定の値(例えば、電圧センシング精度の逆数)となるSOCの値とする。
【0046】
ステップ29における計算判定の結果、満充電容量の計算を行わないと判定した場合にはステップ30に進んで充電休止期間の回数を1増加し、ステップ22に戻る。一方、満充電容量の計算を行うと判定した場合には、充電休止期間の回数をゼロにリセットして次のステップ31に移る。
【0047】
ステップ31において、電池管理ユニット11は、満充電容量の計算及び表示する処理を実行する。満充電容量の計算は、本実施の形態の場合(すなわち、充電休止期間の回数が2回の場合)、下記式(4)を利用して計算する。式(4)における「休止間の充電電荷」は、隣り合う2つの充電休止期間(図4における休止期間1,2)に挟まれた充電期間(図4における充電期間2)に二次電池10に充電された電荷のことであり、当該充電期間中にステップ22で周期的に測定しておいた電流を積分することで求めることができる。また、下記式(4)における「休止時SOC」とは、上記2つの充電休止期間の終了時における二次電池10のSOCのことであり、ステップ28で算出したものである。さらに、「今回休止時SOC」とは図4における休止期間2のSOCに対応し、「前回休止時SOC」とは図4における休止期間1のSOCに対応する。ここで計算された満充電容量は、表示装置16に出力され、表示装置16の画面上に表示される。なお、満充電容量は二次電池10全体のものだけでなく、モジュールごと又は個別電池ごとのものをそれぞれ計算し、表示装置16に表示しても良い。また、充電休止期間の回数が3回以上の場合には、各充電休止期間のSOCと、各充電休止期間に挟まれた充電期間の充電電荷とに基づいて、下記式(5)を利用して計算すれば良い。
【0048】
【数4】

【0049】
【数5】

【0050】
また、上記のように算出された満充電容量を利用して、二次電池10のSOCやSOHを算出する処理を電池管理ユニット11に実行させ(上記式(1)及び式(2)参照)、さらに、その算出したSOCやSOHの値を表示装置16に表示する処理を実行させても良い。
【0051】
図9は二次電池10を構成する複数の電池モジュールのSOHを表示するときの表示装置16の画面の一例を示す図である。この図に示す二次電池10は5個の電池モジュールから構成されており、画面上には各電池モジュールの識別番号とSOHが表示されている。例えば、図9における電池モジュール81の識別番号は1でSOHは70%である。図9に示された閉じるボタン83を選択すると、図9の画面を閉じることができ、各電池モジュールのSOH表示を終了することができる。なお、本実施の形態では、各電池モジュールのSOHを表示するに際して、まず、当該電池モジュールを構成する複数の個別電池のSOHを算出し、当該複数の個別電池のSOHの中で最も低いものを電池モジュールのSOHとして表示している。
【0052】
ところで、ここでは、モジュール単位で電池を交換することを想定して図9のような表示としたが、実際には生産情報として個別電池の劣化度の情報が必要なこともある。この場合には、図9の画面上の各電池モジュールのイメージをポインティングデバイス等で選択することにより、選択された電池モジュール内にある個別電池のSOHが表示されるように構成することが好ましい。この例を図10に示す。
【0053】
図10は電池モジュールを構成する複数の個別電池のSOHを表示するときの表示装置16の画面の一例を示す図である。この図に示す電池モジュールは4個の個別電池から構成されており、画面上には各個別電池ごとの識別番号とSOHが表示されている。この図は、図9における電池モジュール82内の個別電池のSOHを表示している。図9を参照すると、電池モジュール82のSOHは50%であるが、図10を参照するとSOHが50%となっている個別電池を識別することができる。すなわち、SOHが50%の個別電池は、図10における識別番号2のものであることが判別できる。画面上の戻るボタン92を選択すると、図9の画面に戻ることができる。なお、表示装置16の画面表示範囲が許すならば、図9と図10を同時に表示しても良い。
【0054】
ステップ31の処理が終了したら、一連の満充電容量算出処理を終了する。なお、これらの処理を終了しても充電器14による二次電池10の充電は継続する。また、充電終了(電池10の満充電状態)のタイミングを充電器14が自動判定することで、充電を停止するものとする。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係る蓄電システムでは、充電中に2回以上の充電休止期間を設け、そこでOCVを推定することで満充電容量を算出した。このように充電休止期間中にOCVを推定すると、充電休止期間の前後で充電という吸熱反応を行うことで電池内部の熱を逃がすことができるので熱がこもり難く、OCVの収束時間を放電後と比較して短縮することができる。これにより充電開始から充電完了までのトータルの時間を大幅に延ばすことなく満充電容量を精度良く計算することができる。すなわち、本実施の形態によれば、電動移動体の運用に与える支障を低減できるとともに満充電容量を精度良く計算することができる。
【0056】
ところで、上記の実施の形態では、充電開始から充電完了までの間に少なくとも2回の充電休止期間を設定することで二次電池10の満充電容量を算出した。しかし、充電開始から充電終了(満充電になっていないが、以降の充電は行わない場合も含む)までの間に充電休止期間を1回だけ設定し、さらに、当該充電休止期間の電池電圧変化と、当該充電休止期間の終了時から二次電池10の充電終了時までの間に二次電池10に充電された電荷と、当該充電終了時から所定時間が経過するまでの電池電圧変化とに基づいて、満充電容量を算出しても良い。この場合について図11を用いて説明する。
【0057】
図11は本発明の第1の実施の形態における電池電圧及び充電休止信号の時間変化の他の例を示す図である。この図に示す例では、充電開始から充電完了までの間に充電休止期間(休止期間1)を1回のみ設定している。この場合、電池管理ユニット11は、電池電圧を周期的に測定する処理を充電完了時から実行する(具体的な処理内容は、充電休止期間中の処理(ステップ25)と同様である)。そして、OCV収束値の推定が可能な所定の時間(例えば、分極緩和時間)が経過したら電池電圧の測定を終了し、当該所定時間における電池電圧変化に基づいてステップ28と同様にSOCを算出する処理を実行する。そして、電池管理ユニット11は、休止期間1における電池電圧変化から算出したSOCと、充電完了後に算出したSOCと、充電期間2(図11参照)中に測定した電流値を積分することで算出した充電電荷を用いて、ステップ31と同様に満充電容量を算出する処理を実行する。
【0058】
このように充電完了後にSOCを算出して満充電容量を算出すると、充電休止期間の回数を1回低減することができるので、充電開始から充電完了までの時間を短縮することができる。したがって、電動建機(電動移動体)の運用効率に与える支障をさらに低減することができる。なお、ここでは、充電休止期間の回数が1回の場合について説明したが、2回以上に設定しても良いことは言うまでもない。
【0059】
ところで、上記の実施の形態では所定の電池電圧に達したときに充電休止期間を開始したが、充電休止期間を開始するタイミングは二次電池10のSOC(又はOCV)と各電池のOCV-SOC特性に応じて設定することが好ましい。これは、ステップ28で算出されるSOCの誤差が大きくなるSOC(OCV)の値は、各二次電池の特性に応じて異なるため、充電休止期間の開始時のSOCを二次電池の特性に応じて最適化することが好ましいからである。この点について図を用いて説明する。
【0060】
図12は或る二次電池(電池1)のOCV-SOC特性を示す図であり、図13は電池1のSOC誤差特性を示す図である。ステップ25で算出した電圧には誤差があるため、図12のように電圧x01を算出したとしても、実際には誤差範囲x02の間に真の電圧がある。このため、図12のOCV-SOCカーブに基づいて当該OCVからSOCを求めた場合には、誤差範囲x03の間にSOCの真値が存在することになる。このため、電圧検出誤差とSOCの誤差の幅の関数は下記式(6)となる。
【0061】
【数6】

【0062】
上記式(6)により、SOC誤差の幅を計算したものが図13となる。図13において、許容するSOCの誤差を決定すれば、OCVを測定しても良い範囲(休止可能範囲)x04が求められる。すなわち、ここでは、休止可能範囲x04の中に二次電池10のSOCが含まれるときに充電休止期間を設定することとする。したがって、この条件を、上記における充電休止判定における「電圧差又は充電電荷が閾値以上」という条件に加えるものとする。ここで、SOCの誤差範囲は、予め固定した値(例えば、5%又は0.25%)とすれば良い。また、充電休止期間の回数がn回の場合には、下記式(7)を利用してSOC誤差の範囲を算出すれば良い。なお、電圧検出誤差は、システムのAD変換の誤差の値を用いることが好ましい。
【0063】
【数7】

【0064】
ところで、上記のように充電休止期間を開始するためには、二次電池10の現在のSOCを算出する必要がある。これには、誤差がある程度存在するが、(1)直近に求めた二次電池10の満充電容量と、(2)充電開始前のOCVから算出したSOC初期値と、(3)充電開始時からの電流積分値(充電電荷)とを用いることで現在のSOCを求めることができる。
【0065】
図14は他の二次電池(電池2)のOCV-SOC特性を示す図であり、図15は電池2のSOC誤差特性を示す図である。先の図12,13の例では、電圧がフラットな領域(SOC誤差が大きい領域)はSOCが相対的に高いとき(50%より大きいとき)に存在していたが、図14,15の例では、当該領域はSOCが50%程度のところに存在している。このように二次電池の種類によりSOC誤差が大きくなる領域が異なる。この場合の休止可能範囲は、図13の場合同様に斜線を付した領域で示した。
【0066】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では満充電容量の算出処理を電池管理ユニット11で行っていたが、本実施の形態では、電池管理ユニット11とは異なる制御手段(診断装置101)を通信線102を介して電池管理ユニット11と接続し、当該制御手段で満充電容量を算出する場合について説明する。
【0067】
図16は、本発明の第2の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図である。この図に示す蓄電システムは、通信線102を介して電池管理ユニット11に接続された診断装置101を備えている。診断装置101は、表示装置16と接続されており、通信線103を介して充電器14に接続されている。なお、各装置の接続はCAN等を用いても良い。
【0068】
診断装置101としては、電動移動体の保守作業を行うサービスマンが利用する携帯端末、電動移動体の充電施設に充電器14とともに設置された端末、又は電動移動体に電池管理ユニット11と別に搭載された制御装置などがある。また、表示装置16についても、サービスマン用の携帯端末と一体にされたもの、充電施設内に設置したもの、電動移動体に搭載されたものなどがある。
【0069】
本実施の形態における満充電容量算出処理は、図2のフローチャートに示した各処理を診断装置101が実行することで行われる。ただし、二次電池10の電池電圧及び電流は電池管理ユニット11が検出したものを通信線102経由で診断装置101が取得している点と、充電器14への充電休止信号は通信線103を介して診断装置101が出力する点と、表示装置16への表示信号は診断装置101が出力する点は異なる。また、表示装置16の表示画面についても第1の実施の形態と同様のもの(例えば、図9,10)で良い。
【0070】
このように電池管理ユニット11と異なる制御手段で満充電容量を算出しても先の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。先の各実施の形態では充電器14の制御を電池管理ユニット11又は診断装置101で自動で行っていたが、本実施の形態では手動で行う点に特徴がある。
【0072】
図17は、本発明の第3の実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図である。この図に示す蓄電システムは、充電器14Aと、表示装置16Aを備えている。充電器14Aには、二次電池10への充電のON/OFF(実行/中止)を切り換えるためのスイッチ(切換装置)34が備えられている。表示装置16Aは、通常の表示機能と、ユーザが画面上を触れることで電池管理ユニット11への指示を入力するための入力機能を備えたタッチパネルで構成されている。また、表示装置16Aは、スイッチ34のON/OFFの切り換えタイミングを画面上に表示することで、当該タイミングをユーザに報知するための報知手段として機能する(詳細は後述)。また、図17に示した蓄電システムは、通信線15を省略している点で図2に示したものと異なる。
【0073】
図18は、本発明の第3の実施の形態に係る電池管理ユニットにおいて実行される満充電容量算出処理のフローチャートである。ここでの処理は、主に図3に示したものと同じであるが、充電器14AのON/OFFが手動となっている。さらに、充電器14Aの手動操作のタイミングで、ユーザへの指示を表示装置16Aの画面に表示するようになっている。なお、図3と同じ処理には同じ符号を付して説明は適宜省略することがある。
【0074】
この図に示したフローチャートが開始されると、電池管理ユニット11は、充電前の各電池モジュールの電圧を入力し(ステップ20)、充電器14Aのスイッチ34をONにすることをユーザに促す画面を表示装置16Aに表示する処理を実行する(ステップ1101)。図19はこのときの表示画面の一例である。
【0075】
図19に示した画面には、スイッチ34をONにすることをユーザに促すメッセージが表示されるメッセージ表示部121と、スイッチ34をONに操作したことを電池管理ユニット11に確認させるための確認ボタン122が設けられている。
【0076】
電池管理ユニット11は、ステップ1101で上記画面を表示したら、充電器14Aのスイッチ34がONに操作されたか否か(すなわち、充電が開始されたか否か)について判定(充電SW-ON判定)を行う処理を実行する(ステップ1102)。本実施の形態における充電SW-ON判定は、確認ボタン122がユーザに押されたか否かに基づいて行われる。
【0077】
なお、ステップ1102における「充電SW-ON判定」では、図19の画面から確認ボタン122を省略して、スイッチ34がONにされたことを電流計12の検出値の変化に基づいて判定しても良い。スイッチ34がONにされたこと電流で検出する方法としては、電流の絶対値が所定の閾値(例えば、1[A])以上になったか否かに基づいて判定するものがある。
【0078】
ステップ1102で、確認ボタン122が押されたことが確認できない場合には、ステップ1101に戻って図19に示した画面を継続して表示する。一方、ステップ1102で、確認ボタン122が押されたことが確認できたら、電流・電圧を計測するとともに(ステップ22)、図20に示す待機画面を表示装置16Aに表示する(ステップ1103)。
【0079】
図20はステップ1103における表示画面の一例である。図20に示した画面には、充電中につき待機することをユーザに促すメッセージが表示されるメッセージ表示部131が設けられている。本実施の形態では、次のスイッチOFFまでの時間を表示しているが、単純に「待機中」のメッセージを出すだけでも良い。次のスイッチOFFまでの時間は、目標となるSOC分の充電量に相当する値を現在の電流で除した値とする。
【0080】
図20の画面が表示されている間には、ステップ22,23の処理が行われる。ステップ23では充電休止判定が行われる。ここで、二次電池10の充電を休止すると判定しなかった場合にはステップ1103に戻り待機画面を表示する。一方、二次電池10の充電を休止すると判定した場合にはステップ1104に処理を移す。
【0081】
ステップ1104では、充電器14Aのスイッチ34をOFFにすることをユーザに促す画面を表示装置16Aに表示する処理を実行する。図21はこのときの表示画面の一例である。図21に示した画面には、スイッチ34をOFFにすることをユーザに促すメッセージが表示されるメッセージ表示部141と、スイッチ34をOFFに操作したことを電池管理ユニット11に確認させるための確認ボタン142が設けられている。
【0082】
電池管理ユニット11は、ステップ1104で上記画面を表示したら、充電器14Aのスイッチ34がOFFに操作されたか否か(すなわち、充電が中止されたか否か)について判定(充電SW-OFF判定)を行う処理を実行する(ステップ1106)。本実施の形態における充電SW-OFF判定は、確認ボタン142がユーザに押されたか否かに基づいて行われる。
【0083】
なお、ステップ1106における「充電SW-OFF判定」では、図21の画面から確認ボタン142を省略して、スイッチ34がOFFにされたことを電流計12の検出値の変化に基づいて判定しても良い。スイッチ34がOFFにされたこと電流で検出する方法としては、電流の絶対値が所定の閾値(例えば、1[A])以下になったか否かに基づいて判定するものがある。
【0084】
ステップ1106で、確認ボタン142が押されたことが確認できない場合には、ステップ1104に戻って図21に示した画面を継続して表示する。一方、ステップ1106で、確認ボタン142が押されたことが確認できたら、電圧を計測するとともに(ステップ25)、図22に示す待機画面を表示装置16Aに表示する(ステップ1107)。
【0085】
図22はステップ1107における表示画面の一例である。図22に示した画面には、充電中止中につき待機することをユーザに促すメッセージが表示されるメッセージ表示部151が設けられている。本実施の形態では、次のスイッチONまでの時間を表示しているが、単純に「待機中」のメッセージを出すだけでも良い。次のスイッチONまでの時間は、「予め定められた時間−スイッチOFFからの経過時間」として算出する。ここで「予め定められた時間」として分極時定数を利用している場合にはその値を用いる。
【0086】
図22の画面が表示されている間には、ステップ25,26の処理が行われる。ステップ26では充電再開判定が行われる。ここで、二次電池10の充電を再開すると判定しなかった場合にはステップ1107に戻り待機画面を表示する。一方、二次電池10の充電を再開すると判定した場合には次の処理(ステップ1108)に移る。
【0087】
ステップ1108では、ステップ1101と同様の処理が実行される。すなわち、電池管理ユニット11は、充電器14Aのスイッチ34をONにすることをユーザに促す画面(図19参照)を表示装置16Aに表示する処理を実行する。ステップ1108で当該画面を表示したら、電池管理ユニット11は、ステップ1102と同様に、充電SW-ON判定を行う処理を実行する(ステップ1109)。ステップ1109で、確認ボタン122が押されたことが確認できない場合には、ステップ1108に戻って図19に示した画面を継続して表示する。
【0088】
一方、ステップ1109で、確認ボタン122が押されたことが確認できたら、充電休止期間の終了時における二次電池10のSOCを計算する処理を実行し(ステップ28)、満充電容量計算判定を行う処理を実行する(ステップ29)。ステップ29における判定の結果、満充電容量の計算を行わないと判定した場合にはステップ30に進んで充電休止期間の回数を1増加し、ステップ1103に戻る。
【0089】
一方、ステップ29において、満充電容量の計算を行うと判定した場合には次のステップ31に移る。なお、その際、充電休止期間の回数をゼロにリセットする。ステップ31では、電池管理ユニット11は、満充電容量の計算及び表示する処理を実行する。また、その際、算出された満充電容量を利用して、二次電池10のSOCやSOHを算出する処理を電池管理ユニット11に実行させ、その算出したSOCやSOHの値を表示装置16Aに表示する処理を実行させても良い。
【0090】
ステップ31が完了したら、電池管理ユニット11は、ユーザに満充電容量の計算等が完了したことを報知する画面(診断終了画面)を表示装置16Aに表示する(ステップ1111)。図23はこのときの表示画面の一例である。図23に示した画面には、診断が終了した旨とスイッチ34をONにすることをユーザに促す旨のメッセージが表示されるメッセージ表示部161と、スイッチ34をONに操作したことを電池管理ユニット11に確認させるための確認ボタン162が設けられている。電池管理ユニット11は、ユーザに確認ボタン162が押されたことを確認して、上記の一連の処理を終了する。確認ボタン162が押されない場合には、ステップ1111の画面表示を続ける。
【0091】
なお、前述の図19の画面と同様に、ステップ1111における「充電SW-ON判定」では、図23の画面から確認ボタン162を省略して、スイッチ34がONにされたことを電流計12の検出値の変化に基づいて判定しても良い。また、電池を満充電にする必要がない場合には、スイッチ34をONにする必要がないため、この場合にも確認ボタン162を省略しても良い。その際、予め定められた時間だけ図23の画面を表示し、その後、自動的に当該画面を消しても良い。
【0092】
以上のように、充電器14のON/OFFを手動にしても、上記の各実施の形態と同様に満充電容量等を計算することができるので、同様の効果を得ることができる。なお、本実施の形態では、電池管理ユニット11で満充電容量を算出する処理を実行する場合について説明したが、第2の実施の形態のように診断装置101で当該処理を実行する場合にも適用可能であることは言うまでもない。この場合には、図16の構成から通信線103を取り除いて、充電器14にスイッチ34を設けた構成で実施すれば良い。
【0093】
ところで、一般的に、二次電池の劣化は急には進まないため、上記各実施の形態における満充電容量算出処理の処理は充電ごとに行う必要はなく、定期的に(例えば、1ヶ月おき)に実施することにしても良い。その場合には、満充電容量を算出した日を管理する観点から、電池管理ユニット11にカレンダーを用意し、本処理を実施した日時を記憶する手段を設けておくことが好ましい。
【0094】
また、満充電容量算出処理の開始前に二次電池10のSOCが高い場合には、電池10の劣化度の低下を抑制する観点から、バッテリ式油圧ショベルを動かして予めSOCを20%程度に低下させておくことが好ましい。
【0095】
また、上記の各実施の形態では、電池が直列接続されている場合について説明したが、並列に接続された場合にも本発明は適用可能である。この場合には、直列毎に満充電容量を計算すれば良い。
【符号の説明】
【0096】
10 二次電池(組電池)
11 電池管理ユニット
12 電流計
13 通信線
14 充電器
15 通信線
16 表示装置
17 通信線
18 インバータ装置
19 モータ
31 スイッチ
32 充電開始前電圧取得タイミングと電圧
34 電圧上昇分
63 プロットデータ
64 OCV収束値
65 接線
66 分極時定数
81 電池モジュール1
82 電池モジュール2
83 ボタン(画面終了ボタン)
91 個別電池1
92 ボタン(画面遷移ボタン)
101 診断装置
102 通信線
103 通信線
121 メッセージ表示部
122 ボタン(充電SW-ON情報入力ボタン)
131 メッセージ表示部
141 メッセージ表示部
142 ボタン(充電SW-OFF情報入力ボタン)
151 メッセージ表示部
161 メッセージ表示部
162 ボタン(診断終了確認ボタン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に蓄積された電力を変換して得られる動力によって駆動される電動建設機械において、
前記二次電池の充電中に少なくとも2回以上設定された複数の充電休止期間中ごとの電池電圧変化と、当該複数の充電休止期間における2つの充電休止期間に挟まれた1又は複数の充電期間に前記二次電池に充電された電荷とに基づいて、前記二次電池の満充電容量を算出する制御手段を備えることを特徴とする電動建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動建設機械において、
前記制御手段によって算出された前記二次電池の満充電容量を表示するための表示手段をさらに備えることを特徴とする電動建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動建設機械において、
充電手段による前記二次電池への充電の実行/中止を切り換えるための切換装置と、
前記切換装置の切り換えタイミングをユーザに報知するための報知手段とをさらに備えることを特徴とする電動建設機械。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電動建設機械において、
前記複数の充電休止期間の開始タイミングは、それぞれ、当該充電期間の開始時における電池電圧からの電圧上昇値が設定値に到達したときに設定されていることを特徴とする電動建設機械。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の電動建設機械において、
前記複数の充電休止期間の開始タイミングは、それぞれ、当該充電期間の開始時における前記二次電池の充電電荷が設定値に到達したときに設定されていることを特徴とする電動建設機械。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電動建設機械において、
前記複数の充電休止期間は、前記二次電池の分極時定数以上に設定されていることを特徴とする電動建設機械。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電動建設機械において、
前記制御手段は、直前の充電期間終了時から設定時間経過した後に充電を開始することを特徴とする電動建設機械。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電動建設機械において、
前記複数の充電休止期間は、前記二次電池のOCV-SOC特性に基づくSOC誤差範囲が設定値以下となるSOCのときに設定されていることを特徴とする電動建設機械。
【請求項9】
二次電池と、
前記二次電池の充電中に少なくとも2回以上設定された複数の充電休止期間中ごとの電池電圧変化と、当該複数の充電休止期間における2つの充電休止期間に挟まれた1又は複数の充電期間に前記二次電池に充電された電荷とに基づいて、前記二次電池の満充電容量を算出する制御手段とを備えることを特徴とする蓄電システム。
【請求項10】
二次電池に蓄積された電力を変換して得られる動力によって駆動される電動建設機械において、
前記二次電池の充電完了の前に設定された充電休止期間の電池電圧変化と、当該充電休止期間の終了時から前記二次電池の充電終了時までの間に前記二次電池に充電された電荷と、当該充電完了時から所定時間が経過するまでの電池電圧変化とに基づいて、前記二次電池の満充電容量を算出する制御手段を備えることを特徴とする電動建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−70534(P2013−70534A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208080(P2011−208080)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】