説明

電動弁

【課題】流体(冷媒)が一方向に流されるもとで、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化の両方を効果的に図ることのできる電動弁を提供する。
【解決手段】小口径の第1弁口22aをニードル弁体44で開閉するとともに、大口径の第2弁口23aをポペット弁体45で開閉するようにされ、かつ、弁軸25が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、ニードル弁体44により第1弁口22aが閉じられるとともに、第2弁口23の流量(開度)がポペット弁体45によりリニヤに制御される大流量制御状態をとり、弁軸25を前記所定位置からさらに上昇させると、ポペット弁体45により第2弁口23aが閉じらるとともに、第1弁口22aの流量(開度)がニードル弁体44によりリニヤに制御される小流量制御状態をとるようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式冷暖房システム等に使用するのに好適な電動弁に係り、特に、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化の両方を効果的に図ることのできる電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なヒートポンプ式冷暖房システムでは、冷媒は冷房運転時と暖房運転時とでは逆方向に流されるようにされており、このヒートポンプ式冷暖房システムとして、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、四方切換弁等の他、省エネ効率等を向上させるため、通常は一つでよい膨張弁を二つを備え、さらに、圧力損失を可及的に低減するため、それら二つの膨張弁にそれぞれ並列に逆止弁を組み込んだもの(逆止弁付き膨張弁としたもの)が知られている(例えば、下記特許文献1の図6を参照)。
【0003】
また、最近では、その二つの逆止弁付き膨張弁のうちの少なくとも一方を電子制御式電動弁に置き換えることが考えられている(下記特許文献2を参照)。かかる逆止弁付き膨張弁に代えて用いられる電子制御式電動弁の一例を図5に示す。
【0004】
図示例の電動弁10’は、下部大径部25aと上部小径部25bを有する弁軸と、弁室21を有する弁本体20と、この弁本体20にその下端部が密封接合されたキャン40と、このキャン40の内周に所定の間隙αをあけて配在されたロータ30と、このロータ30を回転駆動すべく前記キャン40に外嵌されたステータ50と、を備えている。
【0005】
前記弁軸25は、その下部大径部25aの下端部に特定形状(それぞれ所定の中心角を持つ二段の逆円錐台状)の弁体部24が一体に設けられており、本電動弁10’では、この弁体部24のリフト量を変化させることにより冷媒の通過流量を制御するようになっている。
【0006】
前記弁本体20の弁室21には、その下部に前記弁体部24が接離する弁口(オリフィス)22a付き弁座22が設けられるとともに、その側部に第1流入口11が開口せしめられ、また、弁本体20の下部には、前記弁口22aに連なって第1流出口12が設けられている。
【0007】
前記ステータ50は、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53、及び樹脂モールドカバー56等で構成され、前記ロータ30やステータ50等でステッピングモータが構成され、該ステッピングモータや後述する送りねじ(雌ねじ部38、雄ねじ部28)等で前記弁口22aに対する弁体部24のリフト量(=開度)を調整するための昇降駆動機構が構成される。
【0008】
前記ロータ30には、支持リング36が一体的に結合されるとともに、この支持リング36に、ガイドブッシュ26の外周に配在された下方開口で筒状の弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ30、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0009】
また、弁本体20の上部に設けられた嵌合穴42には、筒状のガイドブッシュ26の下端部が圧入固定され、このガイドブッシュ26には弁軸25(の下部大径部25a)が摺動自在に内挿されている。また、前記ロータ30の回転を利用して前記弁軸25(弁体部24)を昇降させるべく、前記ガイドブッシュ26の外周に雄ねじ部28が形成され、前記弁軸ホルダ32の内周には雌ねじ部38が形成されており、それら雄ねじ部28と雌ねじ部38とで送りねじが構成されている。
【0010】
また、前記ガイドブッシュ26の上部小径部26bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部中央(に形成された通し穴)に弁軸25の上部小径部25bが挿通せしめられている。弁軸25の上部小径部25bの上端部にはプッシュナット33が圧入固定されている。
【0011】
また、前記弁軸25は、該弁軸25の上部小径部25bに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部と弁軸25における下部大径部25aの上端段丘面との間に縮装された圧縮コイルばねからなる閉弁ばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。弁軸ホルダ32の天井部上でプッシュナット33の外周には、コイルばねからなる復帰ばね35が設けられている。
【0012】
前記ガイドブッシュ26には、前記ロータ30が所定の閉弁位置まで回転下降せしめられた際、それ以上の回転下降を阻止するための回転下降ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32には前記ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
【0013】
なお、前記閉弁ばね34は、弁体部24が弁口22aに着座する閉弁状態において所要のシール圧を得るため(漏れ防止)、及び、弁体部24が弁口22aに衝接した際の衝撃を緩和するために配備されている。
【0014】
このような構成とされた電動弁10’にあっては、ステータ50に第1態様で通電励磁パルスを供給することにより、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が一方向に回転せしめられ、ねじ部28、38のねじ送りにより、例えば弁軸ホルダ32が下方に移動して弁体部24が弁口22aに押し付けられて弁口22aが閉じられる。
【0015】
弁口22aが閉じられた時点では、上ストッパ体37は未だ下ストッパ体27に衝接しておらず、弁体部24が弁口22aを閉じたままロータ30及び弁軸ホルダ32はさらに回転下降する。この場合、弁軸25(弁体部24)は下降しないが、弁軸ホルダ32は下降するため、閉弁ばね34が所定量圧縮せしめられ、その結果、弁体部24が弁口22aに強く押し付けられるとともに、弁軸ホルダ32の回転下降により、上ストッパ体37が下ストッパ体27に衝接し、その後ステータコイル53,53に対するパルス供給が続行されても弁軸ホルダ32の回転下降は強制的に停止される(全閉状態)。
【0016】
一方、この全閉状態からステータ50に第2態様で通電励磁パルスを供給すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が前記と逆方向に回転せしめられ、ねじ部28、38のねじ送りにより、今度は弁軸ホルダ32が上方に移動する。この場合、弁軸ホルダ32の回転上昇開始時点(パルス供給開始時点)では、閉弁ばね34が前記のように所定量圧縮せしめられているので、閉弁ばね34が前記所定量分伸長するまでは、前記弁体部24が弁口22aからは離れず閉弁状態(リフト量=0)のままである。そして、閉弁ばね34が前記所定量分伸長した後、弁軸ホルダ32がさらに回転上昇せしめられると、前記弁体部24が弁口22aから離れて弁口22aが開かれ、冷媒が弁口22aを通過する。
【0017】
この場合、ロータ30の回転量により弁体部24のリフト量、言い換えれば、弁口22aの実効開口面積(=弁開度)を任意に細かく調整することができ、ロータ30の回転量は供給パルス数により制御されるため、冷媒流量を高精度に制御することができる。
【0018】
したがって、かかる構成の電動弁10’を前記ヒートポンプ式冷暖房システムに逆止弁付き膨張弁に代えて組み込む場合には、冷媒が一方向に流されるとき(例えば冷房運転時)は、圧力損失を可及的に低減すべく最大開度(最大リフト量)とされ、冷媒が他方向に流されるとき(例えば暖房運転時)は、流量制御を行なうべくその開度(リフト量)を所定値以下の特定範囲で細かく制御するようにされる(詳細は下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−249246号公報
【特許文献2】特開2009−14056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等に配備されるヒートポンプ式冷暖房システム(カーエアコン)では、車室を冷房する以外に搭載バッテリを冷却する必要もあって、冷房運転時と暖房運転時のいずれも冷媒が一方向(同方向)に流されるため、前記従来例の電動弁10’のように、冷媒が冷房運転時と暖房運転時とでは逆方向に流されるシステム用に作られた電動弁では対応できないおそれがある。
【0021】
また、前記従来例の電動弁10’では、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化とは二律背反するものとなる。すなわち、弁口の口径(実効開口面積)が図示例のままであると、小流量時の流量制御精度は高くできるが、システム中に流す冷媒の流量(制御可能流量)を増大させようとすると、弁開度を最大にしても弁口部分が抵抗となって圧力損失が大きくなり、逆に、弁口の口径を大きくすると制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化は図れるものの、小流量時の流量制御精度が低下する。
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流体(冷媒)が一方向に流されるもとで、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化の両方を効果的に図ることのできる電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る電動弁は、基本的には、弁軸と、該弁軸を昇降させるためのロータ、ステータ、送りねじ等からなる昇降駆動機構と、下から順に第1弁口、弁室、及び第2弁口が設けられた弁本体とを備え、前記弁軸の下部に、前記第1弁口を開閉するための第1弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第1弁体の前記弁軸に対する下動限界位置を定める第1係止部材が設けられるとともに、前記第1弁体を前記第1係止部材側に付勢する第1ばね部材が設けられ、前記弁軸における前記第1弁体より上側に、前記第2弁口を開閉するための第2弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第2弁体の前記弁軸に対する上動限界位置を定める第2係止部材が設けられるとともに、前記第2弁体を前記第2係止部材側に付勢する第2ばね部材が設けられ、前記第1弁口及び第2弁口のうちの一方は実効開口面積が小、他方は実効開口面積が大とされ、前記弁軸が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、前記第1弁体が前記第1弁口を閉じるとともに、前記第2弁体が前記第2弁口の開度を変化させ、前記弁軸を前記所定位置からさらに上昇させると、前記第2弁体が前記第2弁口を閉じるとともに、前記第1弁体が前記第1弁口の開度を変化させるように構成されていることを特徴としている。
【0024】
好ましい態様では、前記第1弁体及び第2弁体のうちの、実効開口面積が小の弁口を開閉する方の弁体がニードル型とされ、実効開口面積が大の弁口を開閉する方の弁体がポペット型とされる。
【0025】
他の好ましい態様では、前記弁室に流入口が開口せしめられ、前記第1弁口に連なって第1流出口が設けられるとともに、前記第2弁口に連なって第2流出口が設けられる。
【0026】
この場合、好ましい態様では、前記第1流出口の下流側が盲蓋で閉塞されるとともに、前記第1流出口と第2流出口とが連通路を介して連通せしめられる。
【0027】
本発明に係る電動弁は、より具体的には、弁軸と、該弁軸を昇降させるためのロータ、ステータ、送りねじ等からなる昇降駆動機構と、下から順に、実効開口面積が小の第1弁口、弁室、及び実効開口面積が大の第2弁口が設けられた弁本体とを備え、前記弁軸の下部に、前記第1弁口を開閉するためのニードル型の第1弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第1弁体の前記弁軸に対する下動限界位置を定める第1係止部材が設けられるとともに、前記第1弁体を前記第1係止部材側に付勢する第1ばね部材が設けられ、前記弁軸における前記第1弁体より上側に、前記第2弁口を開閉するためのポペット型の第2弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第2弁体の前記弁軸に対する上動限界位置を定める第2係止部材が設けられるとともに、前記第2弁体を前記第2係止部材側に付勢する第2ばね部材が設けられ、前記弁軸が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、前記第1弁体が前記第1弁口を閉じるとともに、前記第2弁体が前記第2弁口の開度を変化させる大流量制御状態をとり、前記弁軸を前記所定位置からさらに上昇させると、前記第2弁体が前記第2弁口を閉じるとともに、前記第1弁体が前記第1弁口の開度を変化させる小流量制御状態をとるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る電動弁では、弁軸が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、第1弁体が第1弁口を閉じるとともに、第2弁体が第2弁口の開度を変化させる大流量制御状態をとり、弁軸を所定位置からさらに上昇させると、第2弁体が第2弁口を閉じるとともに、第1弁体が第1弁口の開度を変化させる小流量制御状態をとるようにされているので、冷媒が一方向に流されるもとで、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化の両方を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電動弁の一実施例における第1の動作状態を示す主要部拡大断面図。
【図2】本発明に係る電動弁の一実施例における第2の動作状態を示す主要部拡大断面図。
【図3】本発明に係る電動弁の一実施例における第3の動作状態を示す主要部拡大断面図。
【図4】図1に示される電動弁における冷媒流量(開度)とパルス数(回転量)との関係の一例を示す図。
【図5】従来の電動弁の一例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、図2、図3は、本発明に係る電動弁の一実施例を示す主要部拡大断面図であり、各図は異なる動作状態を示している。図示実施例の電動弁10のステータ(ステッピングモータ)50部分は、図5に示される従来例の電動弁10’のものとほぼ同じであるので、該部分は省略している。また、従来例の電動弁10’のモータ部分以外の各部に対応する部分には同一の符号を付して重複説明を省略し、以下は、主要部(特徴部分)である弁軸の下部及び弁本体を中心に説明する。
【0031】
図示実施例の電動弁10は、大流量化を図るべく、従来例の電動弁10’の弁本体20より大きな直方体状の弁本体15を備えている。該弁本体15の中央には、それを縦貫するように上から順に、段付き穴14、弁室21、小口径(実効開口面積が小)の第1弁口22a付き第1弁座22、第1流出口12が設けられている。
【0032】
前記段付き穴14は、上から順に、大径嵌合穴部14a、中間空所14b、小径嵌合穴部14cからなり、大径嵌合穴部14aには前記従来例の電動弁10’における弁本体20の上部に相当するブッシュ保持体18が圧入等により内嵌固定され、中間空所14bの側部には第2流出口13が開口せしめられ、小径嵌合穴部14cには、大口径(実効開口面積が大)の第2弁口23a付き第2弁座23が圧入等により内嵌固定されている。
【0033】
前記弁室21は、その下部に、前記第1弁座22を底部とする段付きの小径下部室21bが延設されており、また、弁室21の側部には流入口11が開口せしめられている。
【0034】
前記第1流出口12の下部は、圧入、螺合等により盲蓋19が固着されて閉塞されており、また、第1流出口12と第2流出口13とは連通路16を介して連通せしめられている。
【0035】
一方、前記弁軸25の下部には、段付き円筒状の弁体収容室43が設けられている。この弁体収容室43には、前記第1弁座22に離接して第1弁口22aを開閉するためのニードル型の鍔状部44a付き第1弁体44(以下、ニードル弁体44と称す)が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、また、弁体収容室43の下部には、前記ニードル弁体44(の鍔状部44a)を抜け止め係止する、言い換えれば、該ニードル弁体44の弁軸25に対する下動限界位置を定めるスリーブ状の第1係止部材46が圧入等により内嵌固定されている。
【0036】
また、弁体収容室43の天井部43aとニードル弁体44(の鍔状部44a)との間には、ニードル弁体44を下向きに付勢する第1コイルばね61が縮装されている。さらに、弁軸25が図1に示される位置まで下降した際には、弁軸25の上部に配在された閉弁ばね34(図5参照)の付勢力により、弁体収容室43の肩部(段差部)43bがニードル弁体44の鍔状部44a上面外周に当接してそれを押圧するようになっている。
【0037】
前記弁軸25における弁体収容室43より上側には、前記第2弁座23に離接して第2弁口23aを開閉するためのポペット型(円形厚板状)の第2弁体45(以下、ポペット弁体45と称す)が軸方向に相対移動可能な状態で外挿され、また、弁軸25におけるポペット弁体45より上側には、該ポペット弁体45の前記弁軸25に対する上動限界位置を定めるスリーブ状の第2係止部材47が圧入等により外嵌固定されている。また、弁軸25における弁体収容室43の上部外周に設けられた弁軸鍔状部48とポペット弁体45との間には、ポペット弁体45を上向きに付勢する第2コイルばね62が縮装されている。
【0038】
また、前記弁軸鍔状部48と弁室21下部に設けられた段付きの小径下部室21bの段丘面部(段差部)21cとの間には、ねじ部28、38からなる送りねじのバックラッシュ(遊び)を無くすべく、弁軸25を上向きに付勢する圧縮コイルばね63が縮装されている。
【0039】
このような構成とされた本実施例の電動弁10にあっては、従来例の電動弁10’と同様に、ステータ50に通電励磁パルスを供給することにより、ガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が回転しながら昇降せしめられ、それに伴って弁軸25が昇降せしめられる。この場合、ロータ30の回転量はステータ50への供給パルス数に応じたものとなるため、上記バルス数(回転量)により、弁軸25・弁体44、45の昇降位置、すなわち、該電動弁10を通過する冷媒流量を制御することができる。
【0040】
以下、本実施例の電動弁10の動作を、冷媒流量(開度)とパルス数(回転量)との関係の一例を示す図4を参照しながら説明する。
【0041】
ここでは、図1に示される状態は、第1弁口22aが閉、第2弁口23aが開の状態(パルス数(回転量)が0の状態)であり、図2に示される状態は、第1弁口22a及び第2弁口23aが共に閉の状態、図3に示される状態は、第1弁口22aが開、第2弁口23aが閉の状態である。
【0042】
図1に示されるパルス数(回転量)が0の状態では、弁軸25及びニードル弁体44が最下降位置まで下降せしめられており(図5に示された上ストッパ体37が下ストッパ体27に衝接して下降が停止された状態)、弁軸25の上部に配在された閉弁ばね34の付勢力により、弁体収容室43の肩部(段差部)43bがニードル弁体44の鍔状部44a上面外周に当接してそれを押圧し、ニードル弁体44が第1弁座22に強く押し付けられ、第1弁口22aは全閉状態とされる。
【0043】
一方、ポペット弁体45は第2係止部材47に当接係止された上動限界位置にあり、第2弁座23から下方に大きく離れており、第2弁口23aは全開状態とされる。したがって、この状態では、冷媒は入出口11→弁室21→第2弁口23a→中間空所14b→第2流出口13へと流れ、その流量は最大のFc(大流量)となる。
【0044】
上記図1に示される状態からパルス数を増加させていくと、パルス数がTiになるまでは、弁軸25の上昇に合わせてポペット弁体45が第2弁座23に近づけられ、第2弁口23aの冷媒流量(開度)が一定の下り勾配をもって滑らかに減少していく。このパルス数が0からTiになるまでは、弁軸25は所定位置(図2に示される位置)まで上昇するが、ニードル弁体44は第1コイルばね61の付勢力により第1弁座22に押し付けられており、第1弁口22aは閉じられたままである。
【0045】
そして、パルス数がTiになると、図2に示されるようにポペット弁体45が第2弁座23に接当して第2弁口23aが閉じられる。ここで、パルス数がTiからTjの間の期間は、ニードル弁体44の鍔状部44aと第1係止部材46との間に隙間βが残っているので(図2参照)、ニードル弁体44は引き上げられない。したがって、パルス数がTiからTjになるまでは、第1弁口22a及び第2弁口23は共に閉じられており、冷媒流量(開度)は0となる。
【0046】
続いて、パルス数をTjから増加させていくと、図3に示されるようにニードル弁体44の鍔状部44aに第1係止部材46が接当して、弁軸25の上昇に合わせてニードル弁体44が引き上げられ、第1弁口22aが開かれ、冷媒は流入口11→弁室21→第1弁口22a→第1流出口12→連通路16→第2流出口13へと流れる。このときは、第1弁口22aの冷媒流量(開度)が一定の緩やかな上り勾配をもって滑らかに増大していくので、流量をきめ細かく制御することができる。なお、パルス数をTjから増加させて弁軸25を上昇させると、第2コイルばね62が圧縮されてポペット弁体45は第2弁座23に強く押し付けられる(第2弁口23aは閉じたまま)。
【0047】
以上のように、本実施例の電動弁10においては、小口径の第1弁口22aをニードル弁体44で開閉するとともに、大口径の第2弁口23aをポペット弁体45で開閉するようにされ、かつ、弁軸25が最下降位置(図1に示される位置)から所定位置(図2に示される位置)へ上昇するまでは、ニードル弁体44により第1弁口22aが閉じられるとともに、第2弁口23の流量(開度)がポペット弁体45によりリニヤに制御される大流量制御状態をとり、弁軸25を前記所定位置からさらに上昇させると、ポペット弁体45により第2弁口23aが閉じられるとともに、第1弁口22aの流量(開度)がニードル弁体44によりリニヤに制御される小流量制御状態をとるようにされているので、冷媒が一方向に流されるもとで、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化・圧力損失の低減化の両方を効果的に図ることができる。
【0048】
なお、上記実施例において、盲蓋19及び連通路16を省いて、小流量時は、冷媒を第2流出口13を介することなく第1流出口12より流すようにしてもよい。
【0049】
また、パルス数がTiからTjに至るまでは第1弁口22a及び第2弁口23aは、両方共に閉じるものとして説明したが、上記TiからTjに至るまでの間においても、第1弁口22a及び第2弁口23aは共に開いたままの構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 電動弁
11 流入口
12 第1流出口
13 第2流出口
15 弁本体
16 連通路
19 盲蓋
21 弁室
22 第1弁座
22a 第1弁口
23 第2弁座
23a 第2弁口
25 弁軸
30 ロータ
40 キャン
43 弁体収容室
44 ニードル弁体(第1弁体)
45 ポペット弁体(第2弁体)
46 第1係止部材
47 第2係止部材
50 ステータ
61 第1コイルばね
62 第2コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁軸と、該弁軸を昇降させるためのロータ、ステータ、送りねじ等からなる昇降駆動機構と、下から順に第1弁口、弁室、及び第2弁口が設けられた弁本体とを備え、
前記弁軸の下部に、前記第1弁口を開閉するための第1弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第1弁体の前記弁軸に対する下動限界位置を定める第1係止部材が設けられるとともに、前記第1弁体を前記第1係止部材側に付勢する第1ばね部材が設けられ、
前記弁軸における前記第1弁体より上側に、前記第2弁口を開閉するための第2弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第2弁体の前記弁軸に対する上動限界位置を定める第2係止部材が設けられるとともに、前記第2弁体を前記第2係止部材側に付勢する第2ばね部材が設けられ、
前記第1弁口及び第2弁口のうちの一方は実効開口面積が小、他方は実効開口面積が大とされ、前記弁軸が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、前記第1弁体が前記第1弁口を閉じるとともに、前記第2弁体が前記第2弁口の開度を変化させ、前記弁軸を前記所定位置からさらに上昇させると、前記第2弁体が前記第2弁口を閉じるとともに、前記第1弁体が前記第1弁口の開度を変化させるように構成された電動弁。
【請求項2】
前記第1弁体及び第2弁体のうちの、実効開口面積が小の弁口を開閉する方の弁体がニードル型とされ、実効開口面積が大の弁口を開閉する方の弁体がポペット型とされていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁室に流入口が開口せしめられ、前記第1弁口に連なって第1流出口が設けられるとともに、前記第2弁口に連なって第2流出口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記第1流出口の下流側が盲蓋で閉塞されるとともに、前記第1流出口と第2流出口とが連通路を介して連通せしめられていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
弁軸と、該弁軸を昇降させるためのロータ、ステータ、送りねじ等からなる昇降駆動機構と、下から順に、実効開口面積が小の第1弁口、弁室、及び実効開口面積が大の第2弁口が設けられた弁本体とを備え、
前記弁軸の下部に、前記第1弁口を開閉するためのニードル型の第1弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第1弁体の前記弁軸に対する下動限界位置を定める第1係止部材が設けられるとともに、前記第1弁体を前記第1係止部材側に付勢する第1ばね部材が設けられ、
前記弁軸における前記第1弁体より上側に、前記第2弁口を開閉するためのポペット型の第2弁体が軸方向に相対移動可能な状態で配在され、かつ、該第2弁体の前記弁軸に対する上動限界位置を定める第2係止部材が設けられるとともに、前記第2弁体を前記第2係止部材側に付勢する第2ばね部材が設けられ、
前記弁軸が最下降位置から所定位置へ上昇するまでは、前記第1弁体が前記第1弁口を閉じるとともに、前記第2弁体が前記第2弁口の開度を変化させる大流量制御状態をとり、前記弁軸を前記所定位置からさらに上昇させると、前記第2弁体が前記第2弁口を閉じるとともに、前記第1弁体が前記第1弁口の開度を変化させる小流量制御状態をとるように構成された電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−172836(P2012−172836A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38673(P2011−38673)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】