説明

電動式ナット回し工具

【課題】長ボルトに螺着したナットに工具を係止した際、外れにくく、作業員が電動回転工具を横に持って作業できるため操作しやすい。
【解決手段】電動回転工具と、電動回転工具の回転を工具本体に伝えるフレキシブルシャフトと、長ボルトに螺着したナットを係止する工具本体とから成り、前記工具本体はケーシング1の上下面に、相対向して孔2a、2bを夫々設け、貫通孔3aを有する管体3をケーシング1内に回転自在に設け、当該管体3の上端は前記孔2aから上方に突出させ、貫通孔3aの上端開口部に、ナットが嵌入係止されるナット受け座5を穿設し、当該管体3の外周に第1傘歯車6を外周に沿って設け、前記ケーシング1内に、第1傘歯車6に噛合う第2傘歯車8を設け、第2傘歯車8の水平シャフト7をケーシング1の側壁に穿った孔に貫通させ、前記ナット受け座5の開口部の周縁に係止板の一端を回転自在に軸支した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊りボルト等の長ボルトにナットを螺着して前記長ボルトの所定の箇所まで当該ナットを移動させる、電動式ナット回し工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物等の中を電気ケーブルや通信ケーブルを配線する場合、複数の電気ケーブルや通信ケーブルを載置して支持するケーブルラックを設置している場合が多い。特に大きな建造物では、図10に示すように、ケーブルラック50が多数段に設けられている。このケーブルラック50は天井から間隔をあけて吊り下げた二本の吊りボルト51に、アングル材から成る横材52を水平に固定し、これらの横材にラダー53を載せ、このラダー53の長手方向に一定の間隔ごとに、同様に吊りボルト51に水平に固定された横材52の上に載せ、この様に固定されたラダー53にケーブルを載置している。
【0003】
そして、前記横材52を各吊りボルト51に固定するため、各吊りボルト51に通した横材52の上下でナットを螺着して締め付け、固定している。そのため、図11に示すように各吊りボルト51に多数のナット54を螺着し、所定の位置までナット54を移動させなければならない。これを従来は、作業員が手で、吊りボルト51の下から、所望数のケーブルラック50の数だけ、ナット54を回して吊りボルト51の上方に移動させていた。
【0004】
これは、手間のかかる作業であり、たとえば、図10のような5段のケーブルラック50を設置する場合でも、5個(吊りボルト1本あたり)×2本(吊りボルト)×5組=50個のナットを取り付ける必要があるため、時間もかかるものである。そこで、電動ドリルに、ドライバー等の工具の先を固定し、電動ドリルを回して、工具の把持部を回転させ、当該回転する把持部を前記ナットに当てて、ナットを回転させて、吊りボルトに沿ってナットを上下させることも試みている。
【0005】
この方法は、簡便であるが、もともと電動工具のチャックにドライバーの先端が必ずしも合うものではなく、使用中にドライバーが外れて吹き飛び、作業員が怪我する恐れもあり、また、ドライバーの把持部をナットの外周に当てて回転を伝達するため、回転伝達の精度が悪く、効率の悪いものである。
【0006】
そこで、前記ナットを長ボルトに沿って上下に移動させるため、電動工具と接続して当該電動工具の回転力でナットを回転させる工具が開発されている。特許文献1は、自身の内部に全ネジボルトを挿入する筒体を形成し、この筒体の一端に、電気ドリルや充電ドライバーのごとき回転電動機の回転部分に連結する連結体を設け、筒体の他端に、全ネジボルトにネジ止めするナットを内嵌するソケットを設けたナット回し用工具である。
【0007】
また、特許文献2は、上下一対の固定基板の間に、電動回転工具の先端に着脱自在に固定する駆動用プーリーと、吊りボルトにネジ止めされたナットの周囲に嵌合係止するソケット付プーリーと、駆動側プーリーの回転力でソケット付プーリーを連動する無端ベルトを配設し、駆動用プーリーに固定した電動回転工具の回転操作でソケット付プーリーに嵌合係止したナットを回転させる電動式ナット回し工具において、ソケット付プーリー内に嵌合したナットの上面に係止する係止具を固定基板に設けた電動式ナット回し工具である。
【0008】
また、特許文献3は、トルクレンチであって、ネジ体と係合するヘッドと、ヘッドから半径方法に延び、ネジ体に係合させたヘッドを回転させてネジ体の締め付けを行う手動締め付け用のハンドルバーとが備えられ、更に、ネジ体早回し用の電動モーターが備えられ、前記モーターはトルクレンチ本体から分離し、モーターの回転がフレキシブルシャフトを介してヘッドに伝えられるようになっており、前記モーターとそのバッテリーが腰ベルトの備えられているトルクレンチである。
【0009】
【特許文献1】実公平7−42610号公報
【特許文献2】特許第2961417号公報
【特許文献3】特開2005−14193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1のものは、長ボルトを自体の筒体に全て挿入してその上端のソッケットにナットを内嵌し、当該ナットを回転させるものであるため、筒体は長いものとなってしまう。そのため、作業員が取扱いにくい。また、前記長ボルトの長さに合わせて、筒体の側面から内部に、長ボルトの挿入長さを規制するピンを入れなければならず、手間がかかるものである。また、この工具に使用する電動工具は、長ボルトの真下で操作しなければならず、作業の制約が大きい。
【0011】
また、前記特許文献2のものは、工具のソケット付プーリーに嵌合係止したナットの上面を係止する係止具を備えているが、ナットの下は係止されておらず、当該工具をナットの上方へ、ナットの移動より早く押すと、ナットから工具が抜けてしまう恐れがある。特に、この工具は、電動回転工具を駆動側プーリーに下から固定するため、作業員は工具の下から電動回転工具を支持しなければならず、下から電動回転工具を上に押してしまうおそれがあり、その場合、工具が前記ナットから外れ易い欠点を有している。また、この場合も当該工具の下から電動回転工具を操作するため、操作しづらい欠点がある。
【0012】
また、前記特許文献3のものは、トルクレンチでありながら、ネジ体早回し機構が設けられ、専用のモーターの回転をフレキシブルシャフトでネジ体と係合するソケットに伝達する構成となっているが、その詳細は記載されておらず、どのようにモーターの回転がソケットに伝達されるかの構成が不明である。また、ネジ体と係合するヘッドがどのようにナットと係合しているかも記載がなく、不明である。従って、ソケットにネジ体が係止された状態で当該トルクレンチを作業員が持っていなければならず、ネジ体を回転させている間に、ネジ体からソケットが外れるおそれがある。従って、操作に熟練を要する。
【0013】
この発明はこのような従来技術を考慮したものであって、長ボルトに螺着したナットに工具を係止した際、外れにくく、作業員が電動回転工具を横に持って作業できるため操作しやすい電動式ナット回し工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、電動回転工具と、当該電動回転工具の回転を工具に伝えるフレキシブルシャフトと、長ボルトに螺着したナットを係止する工具本体とから成り、前記工具本体は箱型のケーシングの上下面に、相対向して孔を夫々設け、前記ケーシングの上下面の各孔と中心を合わせた貫通孔を有する管体を前記ケーシング内に回転自在に支持して設け、当該管体の上端は前記ケーシングの上面の孔から上方に突出しており、前記貫通孔は上記長ボルトが挿通可能な内径を有し、上端開口部に段部を設けてナットが嵌入係止されるナット受け座を穿設し、当該管体の外周に第1傘歯車を外周に沿って設け、前記ケーシング内に、前記第1傘歯車に噛合う第2傘歯車を回転自在に設け、当該第2傘歯車の水平シャフトをケーシングの側壁に穿った孔に回転自在に貫通させ、当該水平シャフトの先端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とし、前記管体の上面の、ナット受け座の開口部の周縁に、前記ナット受け座に挿入したナットの上面外縁を被う係止板の一端を、水平回転自在かつ固定自在に軸支した、電動式ナット回し工具とした。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記水平軸の先端に、どの角度でも回転伝達できるユニバーサルジョイントにより接続軸の一端を接続し、当該接続軸の他端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とした、請求項1に記載の電動式ナット回し工具とした。
【0016】
また、請求項3の発明は、前記ナット受け座に嵌合自在なアタッチメントを設け、当該アタッチメントの中央部に、嵌入係止されるナットの外形とほぼ同形の内周径を有する、上下面を貫通する貫通孔を設けた、請求項1又は2に記載の電動式ナット回し工具とした。
【0017】
また、請求項4の発明は、電動回転工具と、当該電動回転工具の回転を工具本体に伝えるフレキシブルシャフトと、二本の平行する長ボルトに螺着した各ナットを係止する二つの工具本体と、前記フレキシブルシャフトの回転を前記二つの工具本体に伝えるディファレンシャルギヤー装置とから成り、前記各工具本体は、箱型のケーシングの上下面に、相対向して孔を夫々設け、前記ケーシングの上下面の各孔と中心を合わせた貫通孔を有する管体を前記ケーシング内に回転自在に支持して設け、当該管体の上端は前記ケーシングの上面の孔から上方に突出しており、前記貫通孔は上記長ボルトが挿通可能な内径を有し、上端開口部に段部を設けてナットが嵌入係止されるナット受け座を穿設し、当該管体の外周に第1傘歯車を外周に沿って設け、前記ケーシング内に、前記第1傘歯車に噛合う第2傘歯車を回転自在に設け、当該第2傘歯車の水平シャフトをケーシングの側壁に穿った孔に回転自在に貫通させ、当該水平シャフトの先端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とし、前記管体の上面の、ナット受け座の開口部の周縁に、前記ナット受け座に挿入したナットの上面外縁を被う係止板の一端を、水平回転自在かつ固定自在に軸支した構成とし、各工具本体のナット受け座に、前記長ボルトに螺着したナットを嵌め入れて、各係止具で前記各ナットの上面を被い、各工具本体の水平シャフトに前記ディファレンシャルギヤー装置の左右のシャフトを接続し、当該ディファレンシャルギヤー装置の中央シャフトに前記フレキシブルシャフトの一端を接続し、当該フレキシブルシャフトの他端を前記電動回転工具に接続自在とした、電動式ナット回し工具とした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、工具本体のナット受け座に、長ボルトに螺着したナットを嵌入れ、係止板をナットの上に被せると当該ナットは上下左右から係止されるため、工具本体は、ナットの回転でのみ長ボルトに沿って上下に移動し、作業員の余計な力で工具本体がナットから外れる恐れがない。作業員は、工具本体の動きにしたがって電動回転工具やフレキシブルシャフトを動かせばよい。また、作業員は、工具本体の側面から電動回転工具およびフレキシブルシャフトを持てばよく、作業員は無理な姿勢をすることなくこれらの操作ができ、安全、迅速、かつ効率よく作業ができる。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、工具本体のユニバーサルジョイントを介してフレキシブルシャフトを接続するため、工具本体の側面下方から、また、側面上方等種々の角度から作業員が電動回転工具の操作ができるため、高所や狭い場所での作業が容易である。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、長ボルトに沿って移動させるナットの大きさに、工具本体のナット受け座の大きさが合わない場合であっても、予め1個又は複数のアタッチメントを用意しておけば、前記アタッチメントを介在させてナットをナット受け座に嵌め入れ、当該ナットを長ボルトに沿って移動させることができる。従って、この発明の一台の工具の汎用性が広がる。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、ケーブルラックのように長ボルトが二つ平行して並んでいる場合であって、各長ボルトの同じ位置にナットを移動させる場合、この発明の工具を用いれば、二つのナットを同時に所望の位置に移動させることが容易に出来る。従って、作業員の労力も少なくて済み、効率よくかつ迅速な作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明は、電動回転工具と、当該電動回転工具の回転を工具本体に伝えるフレキシブルシャフトと、長ボルトに螺着したナットを係止する工具本体とから成り、前記工具本体は箱型のケーシングの上下面に、相対向して孔を夫々設け、前記ケーシングの上下面の各孔と中心を合わせた貫通孔を有する管体を前記ケーシング内に回転自在に支持して設け、当該管体の上端は前記上面の孔から上方に突出させ、前記貫通孔は上記長ボルトが挿通可能な内径を有し、上端開口部に、段部を設けてナットが嵌入係止されるナット受け座を穿設し、当該管体の外周に沿って第1傘歯車を設け、前記ケーシング内に、前記第1傘歯車に噛合う第2傘歯車を回転自在に設け、当該第2傘歯車の水平シャフトをケーシングの側壁に穿った孔に回転自在に貫通させ、当該水平シャフトの先端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とし、前記管体の上面の、ナット受け座の開口部の周縁に、前記ナット受け座に挿入したナットの上面外縁を被う係止板の一端を、水平回転自在かつ固定自在に軸支した、電動式ナット回し工具とした。
【0023】
これにより、工具本体のナット受け座に長ボルト螺着したナットを嵌め入れて、係止板でナットの上面を押さえれば、当該ナットは上下、左右が係止され、作業中にナットが工具本体から外れることがなく、作業を容易にすることができる。
【実施例1】
【0024】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明の工具本体の縦断面図、図2はこの発明の工具本体の斜視図、図3はこの発明の使用状態を示す斜視図、図4は同使用状態における工具本体の縦断面図である。
【0025】
この工具は、電動回転工具Aと、この電動回転工具Aの回転を伝達するフレキシブルシャフトBと、長ボルトに螺着されたナットを係止、回転させる工具本体Cとから構成される。前記電動回転工具Aは、市販の電動ドリルであり、前記フレキシブルシャフトBは可撓性のシャフトと、当該シャフトの外周を被う可撓性の鞘管とから構成される市販のものである。
【0026】
前記工具本体Cは、略箱型のケーシング1から成り、このケーシング1の上下面に、相対向して孔2a、2bを穿っている。このうち、上面の孔2aは孔2bより大径となっている。また、このケーシング1内に縦に管体3を、ベアリング4を介して回転自在に設けている。この管体3の上端は前記孔2aより上方に突出している。また、この管体3の上下端面を貫通する貫通孔3aは、後述する長
ボルトDが挿通できる内径を有している。
【0027】
そして、この管体3の貫通孔3aの上端開口部には、貫通孔3aの内周を穿った、横断面六角形のナット受け座5を、段部を設けて穿設している。また、この管体3の外周には、第1傘歯車6を設けており、この第1傘歯車6は、ケーシング1の側壁を貫通軸支された水平シャフト7のケーシング1内の一端に設けられた第2傘歯車8と噛合している。
【0028】
また、前記水平シャフト7の他端は、ケーシング1の側壁に隣接して設けられたケース9内のユニバーサルジョイント10を介して接続軸11と接続されており、この接続軸11は前記水平シャフト7に対して斜めになっても回転が伝達されるようになっている。また、前記管体3の上端面には、略C字型の係止板12の一端が軸13により軸支されて水平回転自在となり、前記ナット受け座5の上面の内周縁を被うようになっており、この状態で、係止板12が固定可能な構成となっている。
【0029】
この工具を使用するには、長ボルトDに当該ボルトの下端からナットEを螺着し、このナットEを工具本体Cのナット受け座5に嵌め入れる。その際、係止板12を開いて、ナット受け座5の開口部をあけ、貫通孔3aに長ボルトDを挿入してナットEをナット受け座5に嵌め入れる。その後、係止板12を閉じ、これにより係止板12を固定する。これによりナットEは工具本体Cに把持され、上下左右の動きを規制される。
【0030】
そして、接続軸11にフレキシブルシャフトBの一端を接続し、また当該フレキシブルシャフトBの他端を電動回転工具Aに接続する。作業者は前記電動回転工具Aを一方の手で持ち、他方の手でフレキシブルシャフトBを持って、電動回転工具Aを回転させる。するとフレキシブルシャフトBを通して接続軸11、水平シャフト7及び第2傘歯車8に回転が伝達され、第1傘歯車6および管体3が回転する。この管体3のナット受け座5に把持されたナットEが回転し、長ボルトDに沿ってナットEが上方又は下方に移動する。
【0031】
その際、ナットEはナット受け座5に嵌め入れられると、上下左右の動きが規制され、ナットEは工具本体Cから外れない。従って作業中に、ナットEから工具本体Cが外れないため、作業員は電動回転工具AとフレキシブルシャフトBを手で押さえていれば、ナットEはスムーズに長ボルトDの上下方向に移動できる。
【0032】
また、前記長ボルトDに螺着するナットEの外径や形状が、前記ナット受け座5の大きさや形状と合わない場合、図5に示すようなアタッチメント19を用意することができる。このアタッチメント19は、前記ナット受け座5の嵌合凹部の形状と同じ外形形状を有し、当該アタッチメント19の中央部に、嵌入係止されるナットEの外形とほぼ同形の内周径を有する、上下面を貫通する貫通孔20を設けたものである。この貫通孔20の断面形状は、図6に示すように、六角形に限らず、四角形であっても良く、要は、長ボルトDに沿って移動させるナットの外形形状及び大きさとほぼ同じであればよい。
【0033】
このアタッチメント19を前記ナット受け座5に嵌め入れ、前記長ボルトDに螺着し、上下に移動させるナットEをこのアタッチメント19の貫通孔20内に嵌め入れる。これにより、工具本体CにナットEは係止され、管体3の回転によってナットEも回転し、長ボルトDに沿ってナットEは上又は下に移動する。さらに、このアタッチメント19を、貫通孔20の内周径の異なる、又は内周形状の異なるものを複数用意しておけば、現場で、ナットEの外径や形状に合わせてアタッチメント19を選ぶことができ、さらに便利である。
【実施例2】
【0034】
次に、この発明の実施例2を説明する。この実施例2は長ボルトDが、二本近接して吊り下げられている場合で、図10のように吊りボルト51、51の間隔が短い場合の吊りボルト51、51に使用するものである。図7は、実施例2の使用状態を示す側面図であり、図8は同使用状態を示す分解斜視図、図9は、同実施例2に使用するディファレンシャルギヤー装置の原理を示す説明図である。
【0035】
この実施例2では、前記電動回転工具A、フレキシブルシャフトB、及び二つの工具本体Cを用意すると共に、ディファレンシャルギヤー装置Fを用意する。このディファレンシャルギヤー装置Fは、図9に示すように、三つの傘歯車15a、15b、15cから成り、傘歯車15aを回転させると、傘歯車15b、15cが相互に逆回転する構成となっている。
【0036】
この傘歯車15bに接続した第1シャフト16を、一方の長ボルトDのナットE(図示省略)に装着した工具本体Cの接続軸11に接続し、前記傘歯車15cに接続した第2シャフト17を、他方の長ボルトDのナットEに装着した工具本体Cの接続軸11に接続する。そして、当該ディファレンシャルギヤー装置Fの前記傘歯車15aに接続した第3シャフト18を、前記フレキシブルシャフトBの一端に接続し、当該フレキシブルシャフトBの他端を電動回転工具Aに接続する。なお、前記第1シャフト16、第2シャフト17及び第3シャフト18は、夫々鞘管で被覆されている。
【0037】
この状態で、作業員は、前記電動回転工具A及びフレキシブルシャフトBを持って、電動回転工具Aを回転させる。この回転が、フレキシブルシャフトBを介してディファレンシャルギヤー装置Fの傘歯車15aに伝わり、傘歯車15b及び15cに相互に逆回転となって伝わり、第1シャフト16及び第2シャフト17を通して、各工具本体Cの各管体3が回転し、各ナットE(図示省略)が回転する。そして、二つのナットEは各長ボルトDに沿って上下いずれかの同方向に移動する。
【0038】
このように、一つの電動回転工具Aの回転を、二つのナットEに伝え、これらのナットEを同時に各長ボルトDに沿って移動させることができ、従って極めて効率がよい。
【0039】
なお、前記実施例1及び2では、工具本体Cのナット受け座5を横断面6角形としたが、この断面形状はこれに限るものではなく、4角形、多角形等、嵌め入れるナットEが回転を阻止されるように、係止される形状であればよい。また、前記フレキシブルシャフトBも、複数個用意し、実施例2では、ディファレンシャルギヤー装置Fと二つの工具本体Cとの間に接続する等、種々の形態で使用できる。また、長ボルトDのナットEの取り付け位置にあたる場所には、予め、色材でマーキングしておくと、ナットEの取り付けを簡単、迅速にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施例1の工具本体の縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1の工具本体の斜視図である。
【図3】この発明の実施例1の使用状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施例1の工具本体の使用状態における縦断面図である。
【図5】この発明の実施例1の工具本体のナット受け座に嵌め入れるアタッチメントと工具本体を示す斜視図である。
【図6】(X)図及び(Y)図は夫々、この発明の実施例1の貫通孔の断面形状の異なるアタッチメントの平面図である。
【図7】この発明の実施例2の使用状態を示す側面図である。
【図8】この発明の実施例2の使用状態を示す分解斜視図である。
【図9】この発明の実施例2に使用するディファレンシャルギヤーの原理を示す説明図である。
【図10】この発明の工具の使用に適する多段のケーブルラックの斜視図である。
【図11】この発明の工具の使用に適する多数のナットを装着する長ボルトの側面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 電動回転工具 B フレキシブルシャフト
C 工具本体 D 長ボルト
E ナット F ディファレンシャルギヤー装置
1 ケーシング 2a 孔
2b 孔 3 管体
3a 貫通孔 4 ボールベアリング
5 ナット受け座 6 第1傘歯車
7 水平シャフト 8 第2傘歯車
9 ケース 10 ユニバーサルジョイント
11 接続軸 12 係止板
13 軸 15a 傘歯車
15b 傘歯車 15c 傘歯車
16 第1シャフト 17 第2シャフト
18 第3シャフト 19 アタッチメント
20 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動回転工具と、当該電動回転工具の回転を工具に伝えるフレキシブルシャフトと、長ボルトに螺着したナットを係止する工具本体とから成り、前記工具本体は箱型のケーシングの上下面に、相対向して孔を夫々設け、前記ケーシングの上下面の各孔と中心を合わせた貫通孔を有する管体を前記ケーシング内に回転自在に支持して設け、当該管体の上端は前記ケーシングの上面の孔から上方に突出しており、前記貫通孔は上記長ボルトが挿通可能な内径を有し、上端開口部に段部を設けてナットが嵌入係止されるナット受け座を穿設し、当該管体の外周に第1傘歯車を外周に沿って設け、前記ケーシング内に、前記第1傘歯車に噛合う第2傘歯車を回転自在に設け、当該第2傘歯車の水平シャフトをケーシングの側壁に穿った孔に回転自在に貫通させ、当該水平シャフトの先端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とし、前記管体の上面の、ナット受け座の開口部の周縁に、前記ナット受け座に挿入したナットの上面外縁を被う係止板の一端を、水平回転自在かつ固定自在に軸支したことを特徴とする、電動式ナット回し工具。
【請求項2】
前記水平軸の先端に、どの角度でも回転伝達できるユニバーサルジョイントにより接続軸の一端を接続し、当該接続軸の他端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在としたことを特徴とする、請求項1に記載の電動式ナット回し工具。
【請求項3】
前記ナット受け座に嵌合自在なアタッチメントを設け、当該アタッチメントの中央部に、嵌入係止されるナットの外形とほぼ同形の内周径を有する、上下面を貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動式ナット回し工具。
【請求項4】
電動回転工具と、当該電動回転工具の回転を工具本体に伝えるフレキシブルシャフトと、二本の平行する長ボルトに螺着した各ナットを係止する二つの工具本体と、前記フレキシブルシャフトの回転を前記二つの工具本体に伝えるディファレンシャルギヤー装置とから成り、前記各工具本体は、箱型のケーシングの上下面に、相対向して孔を夫々設け、前記ケーシングの上下面の各孔と中心を合わせた貫通孔を有する管体を前記ケーシング内に回転自在に支持して設け、当該管体の上端は前記ケーシングの上面の孔から上方に突出しており、前記貫通孔は上記長ボルトが挿通可能な内径を有し、上端開口部に段部を設けてナットが嵌入係止されるナット受け座を穿設し、当該管体の外周に第1傘歯車を外周に沿って設け、前記ケーシング内に、前記第1傘歯車に噛合う第2傘歯車を回転自在に設け、当該第2傘歯車の水平シャフトをケーシングの側壁に穿った孔に回転自在に貫通させ、当該水平シャフトの先端に前記フレキシブルシャフトの一端を接続自在とし、前記管体の上面の、ナット受け座の開口部の周縁に、前記ナット受け座に挿入したナットの上面外縁を被う係止板の一端を、水平回転自在かつ固定自在に軸支した構成とし、各工具本体のナット受け座に、前記長ボルトに螺着したナットを嵌め入れて、各係止具で前記各ナットの上面を被い、各工具本体の水平シャフトに前記ディファレンシャルギヤー装置の左右のシャフトを接続し、当該ディファレンシャルギヤー装置の中央シャフトに前記フレキシブルシャフトの一端を接続し、当該フレキシブルシャフトの他端を前記電動回転工具に接続自在としたことを特徴とする、電動式ナット回し工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−56635(P2011−56635A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210764(P2009−210764)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(591055975)水戸工業株式会社 (11)