説明

電動式マスカラアプリケータ

【課題】本発明は、マスカラ液を良い状態に仕上げるよう塗布するために要する時間の短縮を可能にする電動式マスカラアプリケータを提供する。
【解決手段】
本発明に係る電動式マスカラアプリケータPは、振動及び回転を発生させる振動モータ5と、筐体4内で振動モータ5の出力軸19に連結されると共に、振動モータ5の回転を減少させる減速部6と、減速部6から突出する出力軸21とブラシシャフト3とを連結して、ブラシシャフト3を回転させる回転伝達部7と、筐体4内に収容されて、ブラシシャフト3の回転をブラシシャフト3の回転軸線方向の往復運動に変換するカム機構8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まつげにマスカラ剤を塗布する電動式マスカラアプリケータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として特開2005−95531号公報がある。この公報に記載された電動マスカラAのアプリケータにおいては、モータと、減速機構としての多段遊星歯車との協働によりブラシが回転する。
【0003】
また、別の従来技術として特表2008−504945号公報がある。この公報に記載された電動マスカラBのアプリケータにおいては、振動モータを備えることにより、ブラシを振動させている。
【0004】
また、別の従来技術として特表2008−522672号公報がある。この公報に記載された電動マスカラCのアプリケータ(同公報の図78A〜図79A、段落[0054])においては、駆動シャフトに接続された茎部伸張部に螺旋状の溝が設けられている。その為、駆動シャフトが収縮位置から伸長位置に移動する間に、駆動シャフトは、時計方向に回転し、駆動シャフトが伸長位置から収縮位置に移動する間に、駆動シャフトは、反時計方向に回転する。
【0005】
また、同じ公報に記載された別の電動マスカラDのアプリケータ(図81A〜図81C、段落[0058])において、モータディスクの回転の中心が茎部のディスクより上にある時に、茎部は、時計方向に回転し、モータディスクの回転の中心が茎部のディスクより下にある時に、茎部は、反時計方向に回転する。同時に、カムによって茎部は、軸線方向に上下運動する。
【0006】
また、同じ公報に記載された別の電動マスカラEのアプリケータ(図89、段落[0060])は、モータの軸線に対して偏心して設けられたおもりによって発生した起振力がボスを介して茎部に伝えられ、この起振力によって茎部が回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−95531号公報
【特許文献2】特表2008−504945号公報
【特許文献3】特表2008−522672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記電動マスカラA及び電動マスカラBでは、利用者は、まつげ全体に均一にマスカラ液を塗布するために、マスカラをまつげに対して左右に移動する必要がある。この場合、マスカラ液をまつげ全体に均一に塗布するには利用者の勘と経験が必要であり、慣れている利用者であっても、まつげ全体に均一にマスカラ液を塗布するには相当の時間を要するという問題があった。
【0009】
更に、上記電動マスカラAでは、まつげの絡まりをほぐしながらマスカラ液を塗布することができない。利用者は、まつげが絡み合うことを防止しながらマスカラ液を塗布する必要があるため、マスカラ液塗布に多くの時間を要してしまう。また、上記電動マスカラBによっては、まつげをカールするように上に持ち上げることができない。利用者は、ビューラー等を用いてカーリングを別途行う必要があり、マスカラ液塗布のために多くの時間を要してしまう。また、ビューラーによりまつげが痛められたり、抜けたりする可能性があった。
【0010】
また、上記電動マスカラC及び電動マスカラDによっては、まつげの絡まりをほぐしながらマスカラ液を塗布することができない。利用者は、まつげが絡み合うことを防止しながらマスカラ液を塗布する必要があるため、マスカラ液塗布に多くの時間を要してしまう。更に、上記電動マスカラC及び電動マスカラDによる回転は、ブラシシャフトが直線往復運動している間に時計回りと反時計回りを繰り返すこととなる。その為、効率よくまつげを持ち上げることができず、マスカラ液塗布のために多くの時間を要するという問題があった。
【0011】
上記電動マスカラEにおいて、利用者は、まつげ全体に均一にマスカラ液を塗布するためにマスカラEをまつげに対して左右に動かす必要がある。この場合、マスカラ液をまつげ全体に均一に塗布するには利用者の勘と経験が必要であり、慣れている利用者であっても、まつげ全体に均一にマスカラ液を塗布するには相当の時間を要するという問題があった。
【0012】
加えて、従来の電動マスカラCの螺旋状の溝は、ブラシシャフトの上下運動をブラシシャフトの回転運動に変換している。このような電動マスカラCは、ブラシシャフトの上下移動量と回転量とが比例しており、且つ駆動シャフトとブラシシャフトとの全体が上下運動するので、マスカラ全体の小型化に限界があるという問題があった。
【0013】
また、電動マスカラDは、モータ及びモータディスクの回転軸がブラシシャフトの回転軸に対して垂直になっているため、小型化に限界があるという問題があった。また、電動マスカラEにおいては、振動モータによって生じた振動をブラシの回転に変換しているため、回転数を自由に設定することが困難であり、また設定した回転数を安定して得ることが困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は、良好にマスカラ液を塗布するために要する時間の短縮を可能とする電動式マスカラアプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、先端にブラシが設けられたブラシシャフトが回転する電動式マスカラアプリケータにおいて、筐体内に収容されて、振動及び回転を発生させる振動モータと、筐体内で振動モータの出力軸に連結されると共に、振動モータの回転を減少させる減速部と、減速部から突出する出力軸とブラシシャフトとを連結して、ブラシシャフトを回転させる回転伝達部と、筐体内に収容されて、ブラシシャフトの回転をブラシシャフトの回転軸線方向の往復運動に変換するカム機構と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この電動式マスカラアプリケータにおいては、振動モータによって生じた振動がブラシシャフトを介してブラシに伝達されるため、まつげの絡まりを自動的にほぐすことが可能となる。また、減速部によって所望の回転数に減少させられた回転が回転伝達部及びブラシシャフトを介してブラシに伝達されるため、まつげをカールするように上に持ち上げることが可能となる。また、カム機構によって変換された回転軸線方向の往復運動がブラシシャフトを介してブラシに伝達されるため、ブラシを、まつげに対して左右方向に自動的に運動させることができるので、使用者は、電動式マスカラアプリケータを左右に動かすことなくマスカラ液をまつげに均一に塗布することが可能となる。
この電動式マスカラアプリケータにおいては、上記振動、回転及び回転軸線方向の往復運動が同時に行われる。回転及び回転軸線方向の往復運動のみではなく、ブラシが同時に振動することによって、使用者はまつげの絡まりをほぐしながらマスカラ液を塗布する必要がなく、マスカラ液の塗布に要する時間の短縮が可能となる。
また、振動及び回転のみでなく、ブラシが同時に回転軸線方向へ往復運動するため、使用者が電動式マスカラアプリケータを左右に動かすことも回転させることも要せず、一定の場所に筐体を手で保持しているだけで広範囲にマスカラ液を均一に塗布することが可能となる。これまで勘と経験に頼ってマスカラを動かしていたが、自動化することで、マスカラ液の塗布の失敗を減らしてマスカラ液塗布に要する時間を短縮することが可能となる。
更に、振動モータの出力軸と減速部とは連結され、先端にブラシが設けられたブラシシャフトと減速部の出力軸とは、回転伝達部を介して連結されている。そのため、ブラシの回転方向は、時計回りと反時計回りを繰り返すことがなく、一方向に回転するので、効率よくまつげを持ち上げることが可能となる。従って、マスカラ液塗布のために要する時間を更に短縮することが可能となる。
加えて、この電動式マスカラアプリケータにおいては、振動モータの回転軸線とブラシシャフトの回転軸線とが直交するように配置されていないので、電動マスカラの小型化が可能となる。
また、振動モータの出力軸と減速部とは連結され、先端にブラシが設けられたブラシシャフトと減速部の出力軸とは、回転伝達部を介して連結されているため、この電動式マスカラアプリケータにおけるブラシは、振動を回転に変換する従来の電動マスカラEと比較して、回転速度の意図しない変動を少なくして、安定した回転を得ることが可能である。
【0017】
また、回転伝達部は、ブラシシャフト内で回転軸線方向に摺動し且つブラシシャフトと一緒に回転する回転伝達シャフトであり、筐体内でブラシシャフトと減速部との間に配置されたカム機構は、ブラシシャフトに固定されてブラシシャフトと一緒に回転すると共に、回転軸線方向において減速部側に向けて突出する移動側山部と、移動側山部の回転軌道上に位置すると共に、筐体内で固定された固定側山部とからなることが好適である。
【0018】
この電動式マスカラアプリケータの回転伝達部が、ブラシシャフト内で回転軸線方向に対しては摺動し、且つブラシシャフトと一緒に回転しているために、電動マスカラの全長を長くすることなく、回転軸線方向の往復運動と回転を同時にブラシに伝えることができる。
さらに、この電動式マスカラアプリケータのカム機構が、筐体内でブラシシャフトと減速部との間に配置されているために、電動マスカラの全長を長くすることなく更なる小型化が可能となる。
さらに、この電動式マスカラアプリケータのカム機構は、ブラシシャフトと一緒に回転する移動側山部と筐体内で固定された固定側山部とが向かい合って配置された構造になっているため、ブラシシャフトの回転を利用して、ブラシシャフトを回転軸線方向に往復運動させることができる。
【0019】
また、回転伝達部のうちブラシシャフトに挿入された部分と、ブラシシャフトとの間にバネが配置され、このバネはブラシシャフトをカム機構に向けて付勢することが好適である。
【0020】
このバネがブラシシャフト内に設けられているため、バネがブラシシャフト外に設けられていることに対して、筐体の全長が長くなることを抑えることができ、電動マスカラの更なる小型化が可能となる。しかも、ブラシシャフトは、振動モータの振動をブラシと共振させるために一定の長さを必要とするので、バネを一定の長さのブラシシャフト内に設けてブラシシャフト内部のスペースを有効活用することで、ブラシの共振を損なわずに電動マスカラの全長を短くすることができる。
【0021】
また、振動モータは扁平型とし、減速部は遊星歯車を利用し構成されていることが好適である。
【0022】
この電動式マスカラアプリケータにおいては、更なる小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、マスカラを良い状態に仕上げるよう塗布するために要する時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電動式マスカラアプリケータの一実施形態を示す断面図である。
【図2】ブラシシャフトが収縮位置にある電動式マスカラアプリケータの斜視図である。
【図3】ブラシシャフトが伸長位置にある電動式マスカラアプリケータの断面図である。
【図4】ブラシシャフトが伸長位置にある電動式マスカラアプリケータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る電動式マスカラアプリケータの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、電動マスカラ1は、まつげを濃くし、まつげをカールするように上に上げる、或いは、まつげを長く見せる目的で、まつげにマスカラ液を塗布するための化粧用品であって、マスカラ液の入ったキャップCと、マスカラ液を塗布するためのブラシ2を具備する電動式マスカラアプリケータPとからなる。電動式マスカラアプリケータPは、マスカラ液をまつげに塗布するためのブラシ2が先端に設けられたブラシシャフト3と、機構を収容するための筐体4とを備えている。なお、以下の説明において、ブラシ2側を「上」と表現し、筐体4の底側を「下」として表現する。筐体4の底部には、電力を供給するボタン電池9が収容され、ボタン電池9の上方には、ボタン電池9と接続された扁平型の振動モータ5が収容される。
【0027】
更に、筐体4の内部には、振動モータ5の出力軸19に連結される減速部6が、振動モータ5の上方に収容されている。減速部6の上端から突出する出力軸21には、ブラシシャフト3を回転させる棒状の回転伝達部7の下端が連結されている。更に、筐体4の内部において、減速部6とブラシシャフト3との間には、カム機構8が配置されている。
【0028】
筐体4は、電動マスカラ1の使用者が把持するための部分であり、手の小さな使用者にとっても抵抗なく把持できるために、直径16mm程度の円筒形が好ましい。筐体4の長さは持ち運びの便宜のために、60mm以下であることが好ましく、更に好適には40mm〜50mmである。なお、筐体4の形状は、これに限らず、例えば四角柱などの多角柱であっても良い。また、振動モータ5、及び減速部6は、筐体4に対して固定され、ボタン電池9は封入されている。回転伝達部7の下端には、減速部6の出力軸21が圧入されている。
【0029】
ブラシシャフト3の下側に形成された挿入孔29内には、回転伝達部7が挿入されている。また、ブラシシャフト3は、筐体4に固定された軸受10によって、ブラシシャフト3の回転運動と直線運動とが支持されている。電動式マスカラアプリケータPが軸受10を備えることによってブラシシャフト3の回転軸線が傾くことを防ぐ事ができる。
【0030】
振動モータ5は、ロータ5aに固定された偏心錘20を有し、この偏心錘20は、出力軸19の回転軸線に対して偏心した位置に配置されている。この偏心錘20は、例えばタングステンなどの高比重金属が用いられている。振動モータ5が偏心錘20を備えることにより、振動モータ5は、出力軸19の回転と同時に振動を発生することとなる。また、動力源を扁平型の振動モータ5にすることによって、電動マスカラ1の全長の短縮化が可能となる。全長の短縮化を意図しなければ、円筒型の振動モータであっても良い。
【0031】
減速部6は、遊星歯車を多段に積層した多段遊星歯車である。減速部6の出力軸21は、最上部に位置する遊星歯車のキャリアと連結されている。減速部6を多段遊星歯車にすることで、大きな減速比をもって電動マスカラ1を小型化することができる。棒状の回転伝達部7は、ブラシシャフト3の下端側から挿入され、減速部6の出力軸21及びブラシシャフト3と一緒に回転する回転伝達シャフトである。回転伝達部7は、細長い棒状のシャフト部7aと、シャフト部7aの先端に設けられた拡径部7bとからなる。シャフト部7aの下端に設けられた軸孔16には、出力軸21が圧入されて、出力軸21とシャフト部7aは一緒に回転する。ブラシシャフト3は、円筒状の支柱13内に挿入され、接着剤によって一体化されて、支柱13と一緒に回転する。
【0032】
支柱13は、上方が開いた円筒形部13aと、下側で縮径された基部13bとからなる。基部13bの中心には、回転伝達部7のシャフト部7aが貫通して摺動する貫通孔26が設けられている。シャフト部7aには、軸線方向に延在する長溝23が設けられている。この長溝23には、基部13bの側面から打ち込まれて基部13bに固定されたピン27が貫通している。このピン27は、長溝23内を軸線方向に移動可能であり、ピン27によって、回転伝達部7と支柱13との連れ回りを可能にし、支柱13がブラシシャフト3に接着剤により固定されているので、振動モータ5の駆動により、ブラシシャフト3を回転させることができる。なお、基部13bに長溝を設けて、シャフト部7aにピンを設けてもよい。
【0033】
基部13bの下端には、支柱13と一体的に形成された回転円板15が設けられている。この回転円板15の中央には、貫通孔30が設けられ、この貫通孔30には、シャフト部7aが貫通している。基部13bの上端面は、第1のバネ受け面28をなし、拡径部7bの下端面は、第2のバネ受け面25をなしている。第1のバネ受け面28と第2のバネ受け面25との間には、シャフト部7aの周囲で巻回されている圧縮コイルバネ11が配置されている。
【0034】
円筒形部13aの上方の開口からブラシシャフト3が圧入されている。ブラシシャフト3には、回転伝達部7が挿入される挿入孔29が形成され、この挿入孔29の内部には、拡径部7bの全体、シャフト部7aの一部、及びバネ11が配置されており、挿入孔29の内周面と拡径部7bとは摺接している。ブラシシャフト3に固定された支柱13には、金属製のスリーブ17が圧入され、スリーブ17の外周面は、筐体4の内周面に固定された軸受10によって支持されている。軸受10によって、ブラシシャフト3は、回転軸線方向への移動及び回転が自由であり、スリーブ17によって支柱13が軸受10の影響下で磨耗することを防止している。
【0035】
図1及び図2に示すように、カム機構8は、回転円板15と一体をなす移動側山部8aと、筐体4側に固定された固定側山部8bとからなる。移動側山部8aは、回転円板15の下面の周縁から下方向に突出し、固定側山部8bは、移動側山部8aの回転軌道上に位置し、筐体4に固定された仕切板31に一体的に形成されている。移動側山部8a及び固定側山部8bの形状は、台形状である。なお、固定側山部8bの数を複数としてもよい。その場合、移動側山部8aの一回転でブラシ2が固定側山部8bの数だけ往復運動する。
【0036】
カム機構8は、ブラシシャフト3と減速部6との間に配置され、カム機構8の回転軸線は、ブラシシャフト3、振動モータ5、減速部6、及び回転伝達部7の回転軸線と同一である。このような構成によって、最も効率よく筐体4内の空間を利用することが可能となり電動マスカラ1全体のスリム化すなわち小型化が可能となる。
【0037】
ここで、図3及び図4を参照して、ブラシ2、ブラシシャフト3及び移動側山部8aの動作について説明する。
【0038】
移動側山部8aが回転して、移動側山部8aが固定側山部8bと接触すると、移動側山部8aは固定側山部8bの昇り斜面に沿って上昇し、ブラシシャフト3が上方向に移動する。移動側山部8aが更に回転して、移動側山部8aは、固定側山部8bの下り斜面に沿って降下する。このときバネ11の付勢力によって移動側山部8aと固定側山部8bとが離れることなく、常に接触し続ける。そして、更に移動側山部8aが回転すると、移動側山部8aの頂部がバネ11の付勢力によって仕切板31に接触し続ける。移動側山部8aが一回転する毎にブラシ2は一往復する。
【0039】
次に、電動式マスカラアプリケータPの動作について説明する。
【0040】
ユーザによってスイッチ12が操作されるとボタン電池9から振動モータ5へ電力が供給される。スイッチ12はOFF、右回転、又は左回転の選択が可能である。振動モータ5に電力が供給されると、振動モータ5が回転し、振動及び回転が生じる。振動モータ5によって生じた振動は、減速部6、回転伝達部7及びブラシシャフト3を介してブラシ2に伝えられる。或いは、振動モータ5によって生じた振動は、筐体4、軸受10及びブラシシャフト3を介してブラシ2に伝えられる。
【0041】
振動モータ5によって生じた回転は、減速部6によって減速され、回転伝達部7に伝えられる。回転伝達部7が回転すると、ピン27により回転伝達部7と一緒に回転する支柱13が回転する。支柱13は、ブラシシャフト3と一緒に回転し、それに伴ってブラシ2は、一定の速度で回転する。
【0042】
上記の動作をする電動式マスカラアプリケータPは、振動モータ5に供給する電流を調整することにより、ブラシ2の回転方向や速度を自由に変更することが可能である。通常、例えば、右目のまつげに対してマスカラ液を塗布する場合には右手で電動式マスカラアプリケータPを把持する。この時、まつげを持ち上げるためには、ブラシ2は、電動式マスカラアプリケータPの上方からみて反時計回りで回っていることを要する。
【0043】
支柱13の回転は、一体形成されている回転円板15に伝えられ、回転円板15に固定されている移動側山部8aも回転することとなる。移動側山部8aが回転すると、固定側山部8bによって、移動側山部8aは上昇し、図3に示すように、ブラシシャフト3は矢印A方向に移動する。移動側山部8aが更に回転すると、移動側山部8aは、固定側山部8bの斜面を滑りながら降下し、ブラシシャフト3は、矢印B方向に移動する。このようにして、ブラシシャフト3は、直線的に往復運動する。
【0044】
従来、自分の手でアプリケータを移動させてまつげ全体に均一にマスカラ液を塗布するためには、勘と経験が頼りであり、慣れた人であっても多くの時間を要する。また、アプリケータの移動が少しずれると肌にマスカラ液が付く場合がある。電動式マスカラアプリケータPは、回転と同時にブラシ2が回転軸線方向に沿って往復運動を行うので、使用者は一定の場所に筐体4を手で保持しているだけで必要な範囲にマスカラ液を均一に塗布することができる。その場合、肌にマスカラ液が付くなどのミスの発生も抑制できる。そして、まつげにマスカラ液を良好に塗布する時間を短縮できる。
【0045】
次に、電動式マスカラアプリケータPの作用及び効果を説明する。
【0046】
電動式マスカラアプリケータPは、振動及び回転を発生させる振動モータ5と、筐体4内で振動モータ5の出力軸19に連結されると共に、振動モータ5の回転を減少させる減速部6と、減速部6から突出する出力軸21とブラシシャフト3とを連結して、ブラシシャフト3を回転させる回転伝達部7と、筐体4内に収容されて、ブラシシャフト3の回転をブラシシャフト3の回転軸線方向の往復運動に変換するカム機構8と、を備える。
【0047】
この電動式マスカラアプリケータPにおいては、振動、回転及び回転軸線方向の往復運動が同時に行われる。回転及び回転軸線方向の往復運動のみではなく、ブラシ2が同時に振動することによって、使用者はまつげの絡まりをほぐしながらマスカラ液を塗布する必要がなく、マスカラ液の塗布に要する時間を短縮できる。また、振動及び回転のみでなく、ブラシ2が同時に回転軸線方向に往復運動するため、使用者が電動式マスカラアプリケータPを左右に動かすことも回転させることもせず、一定の場所に筐体4を手で保持しているだけで広範囲にマスカラ液を均一に塗布することが可能となる。これまで勘と経験に頼って電動式マスカラアプリケータPを動かしていたが、自動化することで、マスカラ液の塗布の失敗を減らしてマスカラ液塗布に要する時間を短縮できる。
【0048】
更に、振動モータ5の出力軸19と減速部6とは連結され、先端にブラシ2が設けられたブラシシャフト3と減速部6の出力軸21とは、回転伝達部7を介して連結されている。そのため、ブラシ2の回転方向は、時計回りと反時計回りを繰り返すことがなく、一方向に回転するので、効率よくまつげを持ち上げることが可能となる。従って、マスカラ液塗布に要する時間を更に短縮できる。
【0049】
加えて、この電動式マスカラアプリケータPにおいては、振動モータ5の回転軸線とブラシシャフト3の回転軸線とが直交とするように配置されていないので、電動マスカラ1を小型化できる。また、振動モータ5の出力軸19と減速部6とは連結され、先端にブラシ2が設けられたブラシシャフト3と減速部6の出力軸21とは、回転伝達部7を介して連結されているため、この電動式マスカラアプリケータPにおけるブラシ2は、振動を回転に変換する場合と比較して、回転速度の意図しない変動をより少なくし、より安定した回転を得ることができる。
【0050】
また、電動式マスカラアプリケータPの回転伝達部7は、ブラシシャフト3内で回転軸線方向に摺動し且つブラシシャフト3と一緒に回転する回転伝達シャフトであり、筐体4内でブラシシャフト3と減速部6との間に配置されたカム機構8は、ブラシシャフト3に固定されてブラシシャフト3と一緒に回転すると共に、回転軸線方向において減速部6側に向けて突出する移動側山部8aと、移動側山部8aの回転軌道上に位置すると共に、筐体4内で固定された固定側山部8bとからなる。
【0051】
この電動式マスカラアプリケータPの回転伝達部7が、ブラシシャフト3内で回転軸線方向に対しては摺動し、且つブラシシャフト3と一緒に回転しているために、電動マスカラ1の全長を長くすることなく、回転軸線方向の往復運動と回転とを同時にブラシ2に伝えることができる。さらに、この電動式マスカラアプリケータPのカム機構8が、筐体4内でブラシシャフト3と減速部6との間に配置されているために、電動マスカラ1の全長を長くすることなく、より小型化できる。さらに、この電動式マスカラアプリケータPのカム機構8は、ブラシシャフト3と一緒に回転する移動側山部8aと筐体4内で固定された固定側山部8bとが向かい合って配置された構造になっているため、ブラシシャフト3の回転を利用して、ブラシシャフト3を回転軸線方向に往復運動させることができる。
【0052】
また、バネ11は、回転伝達部7のうちブラシシャフト3に挿入された部分と、ブラシシャフト3との間に配置されると共に、支柱13を介して、ブラシシャフト3をカム機構8に向けて付勢している。この電動式マスカラアプリケータPにおいては、バネ11がブラシシャフト3内に設けられているため、バネ11がブラシシャフト3外に設けられていることに対して、筐体4の全長が長くなることを抑えることができ、電動マスカラ1の更なる小型化が可能となる。しかも、ブラシシャフト3は、振動モータ5の振動をブラシ2と共振させるために一定の長さを必要とするので、バネ11を一定の長さのブラシシャフト3内に設けてブラシシャフト3内部のスペースを有効活用することで、ブラシ2の共振を損なわずに電動マスカラ1の全長を短くすることができる。
【0053】
また、振動モータ5を、扁平型とし、減速部6は遊星歯車を利用し構成されているため、より小型化できる。
【符号の説明】
【0054】
1…電動マスカラ、2…ブラシ、3…ブラシシャフト、4…筐体、5…振動モータ、6…減速部、7…回転伝達部、8…カム機構、11…バネ、19、21…出力軸、8a…移動側山部、8b…固定側山部、P…電動式マスカラアプリケータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にブラシが設けられたブラシシャフトが回転する電動式マスカラアプリケータにおいて、
筐体内に収容されて、振動及び回転を発生させる振動モータと、
前記筐体内で前記振動モータの出力軸に連結されると共に、前記振動モータの回転を減少させる減速部と、
前記減速部から突出する出力軸と前記ブラシシャフトとを連結して、前記ブラシシャフトを回転させる回転伝達部と、
前記筐体内に収容されて、前記ブラシシャフトの回転を前記ブラシシャフトの回転軸線方向の往復運動に変換するカム機構と、を備えたことを特徴とする電動式マスカラアプリケータ。
【請求項2】
前記回転伝達部は、前記ブラシシャフト内で前記回転軸線方向に摺動し且つ前記ブラシシャフトと一緒に回転する回転伝達シャフトであり、
前記筐体内で前記ブラシシャフトと前記減速部との間に配置された前記カム機構は、前記ブラシシャフトに固定されて前記ブラシシャフトと一緒に回転すると共に、前記回転軸線方向において前記減速部側に向けて突出する移動側山部と、前記移動側山部の回転軌道上に位置すると共に、前記筐体内で固定された固定側山部とからなることを特徴とする請求項1記載の電動式マスカラアプリケータ。
【請求項3】
前記回転伝達部のうち前記ブラシシャフトに挿入された部分と、前記ブラシシャフトとの間にバネが配置され、前記バネは前記ブラシシャフトを前記カム機構に向けて付勢することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式マスカラアプリケータ。
【請求項4】
前記振動モータは、扁平であり、前記減速部は、遊星歯車により構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動式マスカラアプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−92524(P2011−92524A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250751(P2009−250751)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】