説明

電動式作業機械のケーブルリール装置

【課題】ケーブル装置のメンテナンス性、及び作業機械の走破性の向上を図ることができる電動式作業機械のケーブルリール装置を提供する。
【解決手段】ケーブル5とこのケーブル5を巻取り及び繰り出しするリール6とを備えた電動式作業機械のケーブルリール装置であって、前記電動式作業機械の本体1後部に、基端をピン軸10によって傾動可能に設けた一対のリール支持腕11と、前記リール支持腕11の先端に回転可能に設けたリール6と、前記電動式作業機械の本体1後部と前記リール支持腕11との間に設けたアクチュエータ12と、前記アクチュエータ12を伸縮操作する切替弁を有する油圧操作回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械のケーブルリール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベルなどの電動式作業機械においては、外部電源の供給を受けるために、ケーブル、及びケーブルを巻取り繰り出しするケーブルリールとからなるケーブルリール装置を備えている。
【0003】
このケーブルリール装置として、作業機械の旋回体と走行体との空間内に、垂直軸周りに回転するように、ケーブルリールを配設したものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、作業機械の台車2の後部に、水平軸回りにするように、ケーブルリールを配設したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−096820号公報
【特許文献2】特開2008−231762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のケーブルリール装置においては、以下の点を配慮することが要求されている。まず、第1の点は、ケーブルは地面との擦れ合いにより、磨耗するので、定期的な交換が必要である。ケーブルの交換作業は、既存のケーブルをリールから引き出して、リールから取り外した後、新しいケーブルをリールに巻き付ける作業となるので、そのメンテナンス性を向上させるために、リールを地上近くに設置することが好ましい。
【0006】
しかしながら、リールを地上近くに設置すると、メンテナンス性は向上するが、岩や傾斜面との接触により、破損を生じることがあるので、作業機械の走破性が低下するという問題がある。
【0007】
しかしながら、前述した公知文献においては、ケーブル装置のメンテナンス性、及び作業機械の走破性の向上について、配慮されていないのが現状である。
【0008】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的とするところは、ケーブル装置のメンテナンス性、及び作業機械の走破性の向上を図ることができる電動式作業機械のケーブルリール装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、ケーブルとこのケーブルを巻取り及び繰り出しするリールとを備えた電動式作業機械のケーブルリール装置であって、前記電動式作業機械の本体後部に、基端をピン軸によって傾動可能に設けた一対のリール支持腕と、
前記リール支持腕の先端に回転可能に設けたリールと、前記電動式作業機械の本体後部と前記リール支持腕との間に設けたアクチュエータと、前記アクチュエータを伸縮操作する切替弁を有する油圧操作回路とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記油圧操作回路における前記切替弁は、油圧ポンプからの圧油を前記アクチュエータを縮小させるように、圧油を供給する位置に保持されていることを特徴とする。
【0011】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記油圧操作回路に、前記電動式作業機械の振動に基づく前記リールの振動を軽減するためのリリーフ弁を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記リール支持腕部分に設けられ、前記ルーリの降下を検出するセンサ装置と、前記センサ装置からの信号に基づいてリールの下降を警告するための警報手段とを更に備えたことを特徴とする。
【0013】
更に、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記リールのリール軸の両端を、前記各リール支持腕の先端側に着脱可能に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動式作業機械に装設したケーブル装置のメンテナンス性が向上し、また、電動式作業機械の走破性が良好となり、その機能性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を備えた作業機械の後部を示す側面図である。
【図2】図1に示す本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を示す上面図である。
【図3】図2に示す本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を一部断面にて示す拡大上面図である。
【図4】本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を構成する油圧回路図である。
【図5】本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態の給電動作を示す側面図である。
【図6】本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態の給電動作を示す側面図である。
【図7】本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図5は、本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を備えた作業機械の後部を示す側面図、図2は図1に示す本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を示す上面図、図3は図2に示す本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を一部断面にて示す拡大上面図、図4本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態を構成する油圧回路図、図5及び図6は本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態の給電動作を示す側面図である。
【0017】
図1乃至図3において、1は電動式作業機械の本体、2は本体1の両側部に設けた走行体、3は本体1の上部に設けた旋回体である。
【0018】
ケーブルリール装置4は本体1の後部に装設されている。ケーブルリール装置4は、大略的に、図1及び図2に示すように、電源設備(図示せず)に接続されている給電用のケーブル5を巻き取り又は繰り出すリール6と、リール6を軸受7を介して回転可能に支持するリール軸8と、先端側にリール軸8の端部を取付具9を介して着脱可能に支持し、基端がピン軸10aによって本体1の後部のブラケット10に傾動可能に設けられた1対のリール支持腕11と、作業機械の本体1の後部と各リール支持腕11との間に設けたアクチュエータ12とを備えている。
【0019】
リール6内のリール軸8には、図3に示すように、リール6に巻かれたケーブル5の端部と、本体1側に配設した給電線13とを電気的に接続するスリップリング14が設けられている。給電線13は、リール軸8の一方端から本体1側に導出されている。
【0020】
一方のリール支持腕11(図3の下側のリール支持腕11)の内側面には、ブラケット15によってリール6の駆動モータ16が配設されている。駆動モータ16のモータ軸17には、チェーン車18が固定されている。リール軸8の他方側におけるリール6の側部には、チェーン車19が固定されている。チェーン車18とチェーン車19には、チェーン20が掛け渡されている。
【0021】
アクチュエータ12は、油圧シリンダであり、図1に示すように、その本体12aの基端がピン軸21によってリール支持腕11の長手方向の上面中間部のブラケット22に連結され、ピストンロッド12bの先端はピン軸23によって本体1の後部のブラケット24に連結されている。アクチュエータ12には、そのピストンロッド12bを伸縮操作するための油圧操作回路が連結されている。
【0022】
この油圧操作回路は、図4に示すように、アクチュエータ12の本体12aの基端側油室とピストンロッド側油室にそれぞれ連結する給排用の配管12c,12dと、配管12c,12dに設けた切替弁12eと、油圧ポンプ12fと、タンク12gと、油圧ポンプ12fと切替弁12eとを連結する給油配管12hと、タンク12gと切替弁12eとを連結する排油配管12iと、給排用の配管12c,12d間に設けたリリーフ弁12jで構成されている。切替弁12eは、常時、油圧ポンプ12fからの圧油をアクチュエータ12のピストンロッド側油室に供給して、アクチュエータ12を縮小させるように、圧油を供給する位置にばねにより保持されている。
【0023】
図1乃至図3に戻り、一方のリール支持腕11の基部外側部には、リール6が下降したことを検知するセンサ装置が設けられている。このセンサ装置は、一方のリール支持腕11の基部外側面に固定した検出体25と、検出体25に対向するように、本体1に設けたブラケット26に固定した近接スイッチ27とを備えている。近接スイッチ27は、故障等でリール支持腕11が下降して、検出体25を検出しなくなった場合、検出体25の非検出信号を警告信号として警報を表示する警報手段(図示せず)、又は警報器(図示せず)に出力する。
【0024】
次に、上述した本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の一実施の形態の動作を図1乃至図6を用いて説明する。
ケーブル5による給電に際して、図4に示す切替弁12eによって、油圧ポンプ12fからの圧油をアクチュエータ12のピストンロッド側油室に供給し、アクチュエータ12のピストンロッド12bを縮めると、リール支持腕11の先端がピン軸10aを支点として上方に向かって移動する。
【0025】
これにより、リール支持腕11の先端に設けたリール6は、上方に位置決めすることができるので、例えば、図5に示すように、後方に、岩又は傾斜面Mがある場合にも、リール6が、岩又は傾斜面Mに接触すること、また、電動式作業機械の走行体2によってケーブル5が踏みつけられる可能性が低くなり、電動式作業機械の走破性を向上させることができる。
【0026】
また、アクチュエータ12のピストンロッド側油室には、常時、油圧ポンプ12fからの圧油が切替弁12eを介して供給されているので、リール支持腕11の先端に設けたリール6は、上方に位置決めすることができるとともに、リール6に作用する振動、衝撃に対するクッション作用を有している。
【0027】
また、保守、点検又はケーブル5を交換する場合には、図4に示す切替弁12eによって、油圧ポンプ12fからの圧油をアクチュエータ12の基端側油室に供給し、アクチュエータ12のピストンロッド12bを伸ばすと、リール支持腕11の先端がピン軸10aを支点として下方に向かって移動させることができるので、図6に示すように、リール6を、保守、点検又はケーブル5の交換作業がし易い位置に位置決めすることができる。その結果、リール6からのケーブル5の取り外し、リール6へのケーブル5の巻き付け作業、及びケーブル5の点検作業等が容易となり、そのメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の実施の形態においては、例えば故障等でリール6が下降したことを検知するセンサ装置を備えたので、リール6の降下動作を周囲に喚起することができる。
【0029】
更に、本発明の実施の形態においては、図4に示すように、アクチュエータ12の油圧回路における給排用配管12c、12d間にリリーフ弁12jを設けたので、このリリーフ弁12jによって電動式作業機械の振動によるリール支持腕11への振動荷重を放出することができ、過大な振動時に、リール支持構造の応力低減が計れ、重大な破損から部品を守ることができる。
【0030】
上述したように、本発明の実施の形態によれば、電動式作業機械に装設したケーブル装置のメンテナンス性が向上し、また、電動式作業機械の走破性が良好となり、その機能性が向上するとともに、リール6の降下時の警報により、ケーブル装置のメンテナンス時の安全性も高めることができる。
【0031】
図7は、本発明の電動式作業機械のケーブルリール装置の他の実施の形態を示す側面図で、この図において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明を省略する。
なお、図7においては、リール6が下降したことを検知するセンサ装置を省略している。
【0032】
この実施の形態は、顧客によって指定された長さのケーブルを巻取収納可能な径を有するリール6を、作業機械に組付け可能にしなければならないことに対応可能にしたもので、ケーブル5の長さに応じて、ケーブルリール装置を構成するリール支持腕11に装着されるリール6を、種々の径のものに変更可能にしたものである。この例では、図1に示すリール6の径よりも大きな径のリール6をリール支持腕11の先端に着脱可能に装着している。
【0033】
リール6の交換は、例えば、リール軸8の端部に設けた取付具9とリール支持腕11の先端との結合、及びチェーン20の連結を解くことにより、リール6及びリール軸8を一体的にリール支持腕11の先端から取り外すことができる。また、逆の動作により、組み付けも可能である。この場合、リール支持腕11の上下方向の移動量が小さくなるので、アクチュエータ12の長さを図1に示すアクチュエータ12の長さよりも異なる長さのアクチュエータ12を取り付けること、又はアクチュエータ12における基端のリール支持腕6の長手方向の上面への取り付け位置を変更ことが必要である。
【0034】
この実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様に、ケーブル装置のメンテナンス性、及び電動式作業機械の走破性が向上するとともに、顧客が要求するリール径のリールの装着が可能である。
【0035】
なお、上述の実施の形態においては、センサ装置として、近接スイッチ27を用いたが、接触式のスイッチを用いることも可能である。また、リール6の径の大小に応じて、センサ装置を構成する検出体25の位置を調整可能にすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 電動式作業機械の本体
2 走行体
3 旋回体
4 ケーブルリール装置
5 給電用のケーブル
6 リール
8 リール軸
11 リール支持腕
12 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルとこのケーブルを巻取り及び繰り出しするリールとを備えた電動式作業機械のケーブルリール装置であって、
前記電動式作業機械の本体後部に、基端をピン軸によって傾動可能に設けた一対のリール支持腕と、
前記リール支持腕の先端に回転可能に設けたリールと、
前記電動式作業機械の本体後部と前記リール支持腕との間に設けたアクチュエータと、
前記アクチュエータを伸縮操作する切替弁を有する油圧操作回路とを備えた
ことを特徴とする電動式作業機械のケーブルリール装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式作業機械のケーブルリール装置において、
前記油圧操作回路における前記切替弁は、油圧ポンプからの圧油を前記アクチュエータを縮小させるように、圧油を供給する位置に保持されている
ことを特徴とする電動式作業機械のケーブルリール装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動式作業機械のケーブルリール装置において、
前記油圧操作回路に、前記電動式作業機械の振動に基づく前記リールの振動を軽減するためのリリーフ弁を設けた
ことを特徴とする電動式作業機械のケーブルリール装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電動式作業機械のケーブルリール装置において、
前記リール支持腕部分に設けられ、前記ルーリの降下を検出するセンサ装置と、前記センサ装置からの信号に基づいてリールの下降を警告するための警報手段とを更に備えた
ことを特徴とする電動式作業機械のケーブルリール装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電動式作業機械のケーブルリール装置において、
前記リールのリール軸の両端を、前記各リール支持腕の先端側に着脱可能に設けた
ことを特徴とする電動式作業機械のケーブルリール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−222868(P2010−222868A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72249(P2009−72249)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)