説明

電動式作業車両及びそのバッテリ保持構造

【課題】電動式ショベルにおいて、バッテリが搭載された旋回フレームの後端部が後方へ張り出すのを抑える。
【解決手段】このバッテリ保持構造は、複数のバッテリケース82〜84と、旋回フレーム16と、複数の支柱85と、を備えている。各バッテリケース82〜84は、前後左右の側壁及び底壁を有し、複数のバッテリが横方向に並べて収納され、縦方向に積層される。旋回フレーム16は複数のバッテリケース82〜84が後部に搭載される。複数の支柱85は、下端部が旋回フレーム16の後端部に固定されるとともに上方に延びて配置され、各バッテリケース82〜84の後壁が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ保持構造、特に、バッテリにより駆動される電動モータを有する電動式作業車両のバッテリ保持構造及びそれを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ショベル等の作業車両においては、環境問題等を配慮して電動式作業車両が提案されている。例えば特許文献1に示された電動式ショベルでは、従来の油圧ショベルにおけるエンジンに代えて、バッテリにより駆動される電動モータが用いられる。そして、電動モータによって油圧ポンプが駆動され、この油圧ポンプから作業機を駆動するための油圧シリンダにコントロールバルブを介して油圧が供給されるようになっている。
【0003】
以上のような電動式ショベルにおいては、現状では電動モータを駆動するために多くのバッテリを必要とする。そこで、特許文献2に示されるようなバッテリの保持構造が提案されている。この特許文献2に示されたバッテリ保持構造は、筐体と、架台と、固定手段と、を有している。ここでは、複数のバッテリが筐体に収納され、さらに複数の筐体が架台に積層される。そして、固定手段によって、架台に複数の筐体が固定されるようになっている。また、特許文献2では、旋回体の後部にバッテリ収納領域が配置されており、このバッテリ収納領域に前述のバッテリ保持構造を用いて複数のバッテリが収納されている。そして、これらの複数のバッテリやインバータが、従来の油圧ショベルにおけるカウンタウェイトに置き換えて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−121328号公報
【特許文献2】特開2008−44408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示されるように、電動式ショベルにおいては、一般的に、複数のバッテリやインバータが従来のショベルのカウンタウェイトに置き換えて配置されている。この場合、現状では、前述のように多数のバッテリを必要とするために、バッテリの総重量がカウンタウェイトの重量を越える場合がある。ここで、ショベルにおいては、車体の重心は旋回中心付近に設定する必要がある。このため、重量バランスを考慮すると、バッテリは車体後端部の積載位置を維持しつつ極力前方に配置する必要がある。特に、旋回体が後方へ突出するのを抑えた小型ショベルでは、旋回体の後端部の旋回半径を短くするためにも、バッテリを極力前方に配置する必要がある。
【0006】
ここで、特許文献2に示された電動ショベルは、比較的大型のショベルであって、電動モータや油圧ポンプは車両側方に配置することができる。このため、旋回体の旋回中心から旋回体の後端部までには広いスペースが確保でき、十分なバッテリ収納スペースが存在する。
【0007】
しかし、旋回半径を小さくした小旋回型の小型ショベルでは、旋回体(旋回フレーム)上に広いスペースを確保することが困難であり、後端部にバッテリ収納領域を配置した場合、このバッテリ収納領域と旋回中心との間に、電動モータ、油圧ポンプ、油圧補器等を配置しなければならない。
【0008】
以上のような小型ショベルにおいて、特許文献2のような大型ショベルに用いられるバッテリ保持構造を採用することは困難である。具体的には、特許文献2のバッテリ保持構造では、架台の4つの角部のそれぞれに側板が設けられている。この側板と前方の部材との干渉を避けるために、バッテリを前方に配置しにくい。このため特許文献2に示されたバッテリ保持構造を用いてバッテリを旋回フレームの後部に配置した場合、バッテリ収納領域が後方に突出し、後方旋回半径を小さく抑えることが困難になる。
【0009】
本発明の課題は、バッテリにより駆動される電動モータを有する電動式作業車両において、バッテリを車両フレームの後端部に配置した場合でも、車両フレームの後方への突出を抑えて、車両の小型化を妨げることのないバッテリ保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る電動式作業車両のバッテリ保持構造は、バッテリにより駆動される電動モータを有する作業車両に設けられ、複数のバッテリケースと、車両フレームと、複数の支柱と、を備えている。各バッテリケースは、前後左右の側壁及び底壁を有し、複数のバッテリが横方向に並べて収納され、縦方向に積層される。車両フレームは複数のバッテリケースが後部に搭載される。複数の支柱は、下端部が車両フレームの後端部に固定されるとともに上方に延びて配置され、各バッテリケースの後壁が固定される。
【0011】
この保持構造では、複数のバッテリが1つのバッテリケースに収納され、さらに複数のバッテリケースが縦方向へ積層される。そして、複数のバッテリケースのそれぞれの後壁が、車両フレームの後端部に固定された複数の支柱に固定される。
【0012】
ここでは、多くのバッテリを小さいスペースに配置することができる。そして、複数のバッテリケースのそれぞれは、車両フレームの後端部に固定された複数の支柱に固定されるので、複数のバッテリケースを、支柱を介して車両フレームに固定することができる。また、ここでは、車両フレームの後端部に固定された支柱によってバッテリケースを保持しているので、従来のバッテリ保持構造における架台が不要になる。
【0013】
第2発明に係る電動式作業車両のバッテリ保持構造は、第1発明のバッテリ保持構造において、複数のバッテリケースの左右の側壁に設けられ、積層方向に隣接するバッテリケース同士の前後方向の相対移動を規制する位置決め構造をさらに備えている。
【0014】
複数のバッテリケースは、前述の複数の支柱によって車両フレームに固定される。本発明では、それに加えて、バッテリの左右側壁に位置決め構造が設けられている。この位置決め構造によって、各バッテリケースが前後に移動するのが規制される。このため、複数のバッテリケースをより安定して保持することができる。
【0015】
第3発明に係る電動式作業車両のバッテリ保持構造は、第2発明のバッテリ保持構造において、位置決め構造は、複数のバッテリケースのそれぞれの左右の側壁に設けられ、上下方向に隣接するバッテリケースが互いに嵌り合って互いの前後方向の移動を規制する凹凸部である。
【0016】
ここでは、位置決め構造が、バッテリケースの左右側壁に形成された凹凸部で形成されているので、特別な部材を必要とせず、簡単な構成でバッテリケースの前後方向の移動を規制することができる。
【0017】
第4発明に係る電動式作業車両のバッテリ保持構造は、第1から第3発明のいずれかのバッテリ保持構造において、複数のバッテリケースの左右の側壁を車両フレームに支持するための側方支持構造をさらに備えている。
【0018】
ここでは、各バッテリケースの左右の側壁が車両フレームに支持されるので、バッテリケースをより安定して保持することができる。
【0019】
第5発明に係る電動式作業車両のバッテリ保持構造は、第1から第4発明のいずれかのバッテリ保持構造において、複数のバッテリケースの前壁は車両フレームに支持されていない。
【0020】
ここでは、バッテリケースの前方には、バッテリケースを保持するための部材が存在しないので、バッテリケースを前方に配置することができる。また、バッテリケースの前部には固定のための支柱等の部材が不要になる。したがって、バッテリケースを、従来の保持構造に比較して、より車両前方に配置することが可能になる。このため、作業車両を電動化するに際して、車両の特に後部への張り出しを抑えることができる。
【0021】
第6発明に係る作業車両は、車体フレームと、車体フレームに支持された走行機構と、作業機及び作業機を駆動する作業機駆動部を有する作業機ユニットと、走行機構及び作業機ユニットを駆動するための電動モータと、複数のバッテリを含み電動モータに電力を供給する電源ユニットと、第1から第5発明のいずれかに記載のバッテリ保持構造と、を備えている。
【0022】
第7発明の作業車両は、第6発明の作業車両において、ベースフレームは上下方向に延びる旋回軸の回りに旋回自在である。また、電動モータはベースフレームの後部に配置されたバッテリ保持構造と旋回軸との間に配置されている。
【0023】
このような構成の作業車両では、バッテリ保持構造を有する電源ユニットの前方に広いスペースを確保することは困難である。そこで、第1から第5発明のいずれかのバッテリ支持構造を採用することによって、バッテリをより前方に配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のような本発明では、バッテリをフレームの後端部に配置した場合でも、バッテリやフレームの後方への張り出しを抑えて、車両が大型化するのを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態によるバッテリ支持構造が採用された電動式ショベルの側面図。
【図2】電動式ショベルの上部旋回体の構造を示す外観図。
【図3】電動式ショベルのシステムブロック図。
【図4】旋回フレーム及び第1バッテリ群の外観斜視図。
【図5】バッテリ群及びバッテリ保持構造を示す外観斜視図。
【図6】図5の一部拡大図。
【図7】ガス排出構造を示す模式図。
【図8】ガス排出構造の一部を示す外観斜視図。
【図9】ガス排出構造の一部を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、本発明の一実施形態によるバッテリ保持構造を備えた電動式ショベルを示している。この電動式ショベル1は、本発明が対象とする電動式作業車両の一例であり、従来のショベルにおけるエンジンに代わって、バッテリにより駆動される電動モータを備えている。なお、以下の説明における「前」、「後」は車両の前後方向における前方、後方を示している。また、「左」、「右」は、車両の前方に向かって、車両幅方向の左方、右方を示している。
【0027】
[全体構成]
図1に示すように、電動式ショベル1は主に、下部走行体2と、上部旋回体3と、ショベル機構4と、キャノピ型の運転室5と、を有している。また、下部走行体2の前部には、上下方向に揺動自在にブレード6が支持されている。
【0028】
下部走行体2は、トラックフレーム10と、左右の走行機構11と、を有している。左右の走行機構11のそれぞれは、トラックフレーム10の後端部に支持された駆動輪12と、トラックフレーム10の前端部に支持された従動輪13と、駆動輪12と従動輪13との間に掛け渡された履帯14と、を有している。駆動輪12は走行用モータによって駆動される。
【0029】
上部旋回体3は、下部走行体2の上部に、下部走行体2に対して旋回自在に支持されている。具体的には、下部走行体2側には旋回ベアリングが設けられており、上部旋回体3には旋回ベアリングに噛み合うピニオンギアが設けられている。そして、ピニオンギアが旋回用モータ(図示せず)によって駆動されることにより、上部旋回体3は下部走行体2上において任意の方向に旋回が可能である。
【0030】
図2に、上部旋回体3における各機器の配置を示している。ここでは、車体カバーや運転室を取り外した状態を示している。上部旋回体3は、底部に配置された旋回フレーム(ベースフレーム)16を有している。旋回フレーム16は、トラックフレーム10のほぼ中央部に旋回自在に支持されており、前述のように、旋回用モータによって旋回駆動される。この旋回フレーム16には、電動モータ18、電源ユニット19、インバータ装置20、油圧ポンプ21、コントロールバルブ22等が配置されている。なお、旋回フレーム16の詳細な構造については後述する。
【0031】
電源ユニット19は、電動モータ18に電力を供給するものであり、旋回フレーム16の後端部に配置されている。電源ユニット19は、複数の密閉型のバッテリ24と、コンタクタボックス25(図2では二点差線で示している)と、を有している。複数のバッテリ24はバッテリ保持構造26によって保持されている。バッテリ保持構造26の詳細については後述する。なお、電源ユニット19の前方には、遮熱板28を挟んでキャノピマウント29が配置されている。
【0032】
電動モータ18及び油圧ポンプ21はキャノピマウント29のさらに前方に配置されている。電動モータ18は回転軸が左右方向に延びるように横置きで設置され、油圧ポンプ21は電動モータ18の左方に連結されている。また、油圧ポンプ21は油圧配管を介してコントロールバルブ22に接続されている。
【0033】
インバータ装置20は、キャノピマウント29から前方に延びる1対の支持部材32に支持されており、電動モータ18の上方に配置されている。インバータ装置20は、直流電力を任意の周波数の交流電力に変換するインバータ回路や、インバータ回路を制御するマイクロコンピュータ等を備えている。インバータ装置20のへの電力の入力はコンタクタボックス25に接続され、出力は電動モータ18に接続されている。
【0034】
コントロールバルブ22は油圧ポンプ21のさらに前方に配置されている。そして、このコントロールバルブ22は、油圧ポンプ21と、各作業機を駆動するための油圧シリンダ、旋回用モータ及び走行用モータと、の間に接続されている。
【0035】
なお、旋回フレーム16には、以上の機器の他に、ラジエータを含む冷却ユニット33や、旋回フレーム16上の運転室5以外の部分を覆う車体カバー34(図1参照)等が配置されているが、詳細は省略する。
【0036】
ショベル機構4は、図1に示すように、旋回フレーム16に装着されたスイングポスト36と、スイングポスト36を介して旋回フレーム16に装着されたブーム40、アーム41及びバケット42と、ブーム等を駆動するための複数のシリンダ43,44,45と、を有している。
【0037】
スイングポスト36は旋回フレーム16の先端にピンを介して垂直軸回りに回動自在に支持されている。ブーム40は、基端部がスイングポスト36に水平軸回りに回動可能に連結されている。そして、ブーム40のほぼ中間部とスイングポスト36との間にブーム用油圧シリンダ43が接続されている。アーム41は、基端部がブーム40の先端部に水平軸回りに回動自在に連結され、ブーム40のほぼ中間部とアーム41の基端部との間にアーム用油圧シリンダ44が接続されている。バケット42はアーム41の先端部に水平軸回りに回動自在に連結され、アーム41の基端部とバケット42との間にバケット用油圧シリンダ45が接続されている。
【0038】
運転室5は、図1に示すように、運転者が着座する座席48と、座席48の左右に設けられたコンソールボックス(図示せず)と、を備えている。また、座席48の左右後方には、下端部がキャノピマウント29に支持された左右の支柱49が設けられている。この左右の支柱49によってキャノピ50が支持されている。さらに、座席48の前方には、走行機構11やショベル機構4等の操作を行うための操作レバー51等が設けられている。
【0039】
[システムブロック]
本実施形態の電動式ショベル1は、前述のように、バッテリ24によって電動モータ18が駆動され、この電動モータ18によって、ショベル機構4や走行機構11を作動させるための油圧ポンプ21が駆動される。図3に、本電動式ショベル1のシステムブロックを示す。なお、この図3では、主な構成のみを示している。
【0040】
バッテリ24はコンタクタボックス25に接続され、このコンタクタボックス25の出力がインバータ装置20及びDC/DCコンバータ54に接続されている。コンタクタボックス25には、電磁接触器(コンタクタ)、ヒューズ、電圧及び電流を検出するセンサ等が設けられている。インバータ装置20は電動モータ18に接続され、電動モータ18の出力が油圧ポンプ21に接続されている。油圧ポンプ21からの油圧は、コントロールバルブ22を介してショベル機構の各油圧シリンダ43〜45や旋回用モータ及び走行用モータ55に供給される。一方、DC/DCコンバータ54で適切な電圧に変換された直流電圧は、運転室5に設けられたモニタ56や車体制御部57の駆動電圧として供給される。車体制御部57は、インバータ装置20、バッテリ24、及び急速充電器61に接続されている。なお、このショベル1には、電動モータ駆動用のバッテリ24以外に、従来のショベルにおいて設けられている補機用ドライバッテリ58も設けられている。
【0041】
また、この電動式ショベル1は充電用コネクタ60を有しており、この充電用コネクタ60を介して、外部の急速充電器61によってバッテリ24を充電することが可能である。急速充電器61は充電用コネクタ60を介してコンタクタボックス25に接続される。車体制御部57は、バッテリ24の充電電圧を監視しており、バッテリ24が過充電にならないように急速充電器61の作動を制御している。
【0042】
[旋回フレーム]
図4に示すように、旋回フレーム16は、前後方向に延びて形成されたベースプレート62と、それぞれベースプレート62上に固定された機器設置用区画プレート63及びバッテリ収納用区画プレート64と、を有している。
【0043】
ベースプレート62の前端部には、複数の支持プレート65を介して作業機支持用のブラケット66が固定されている。複数の支持プレート65は、それぞれ下端がベースプレート62に固定された左支持プレート65a及び右支持プレート65bと、左右の支持プレート65a,65bの上面に固定され平面視でほぼ三角形状の上支持プレート65cと、を有している。ブラケット66は、上下方向に貫通孔66aを有する円筒状に形成されており、この貫通孔66aに挿入されたピン(図示せず)を介してスイングポスト36が支持されている。なお、左右の支持プレート65a,65b及び上支持プレート65cは、ベースプレート62よりも厚いプレートで形成されている。
【0044】
機器設置用区画プレート63は、左右方向に間隔を開けて配置された左右の縦仕切プレート68a,68bと、1つの横仕切プレート69と、を有している。左縦仕切プレート68aは、左支持プレート65aとバッテリ収納用区画プレート64との間に配置されている。また、右縦仕切プレート68bは、右支持プレート65bとバッテリ収納用区画プレート64との間に配置されている。そして、これらの左右の縦仕切プレート68a,68bはベースプレート62よりも厚いプレートで形成されている。横仕切プレート69は、左右の縦仕切プレート68a,68bの前後方向のほぼ中央部に配置されており、旋回フレーム16の左端部から右端部にわたって配置されている。なお、横仕切プレート69には、各機器を接続する配管等を通すための切欠き69aや貫通孔69bが形成されている。
【0045】
以上のような各プレートにより、旋回フレーム16上において、各機器を設置するための領域が形成されている。具体的には、領域Aには電動モータ18や油圧ポンプ21が配置され、領域Bにはラジエータ等を含む冷却ユニット33が配置される。また、領域Cにはコントロールバルブ22等の油圧機器が配置され、領域Dには旋回フレーム16を旋回させるためのピニオンギア等の機構が配置される。
【0046】
バッテリ収納用区画プレート64は、旋回フレーム16の後端部に配置されており、内部に複数のバッテリを収納するための領域Eを形成している。このバッテリ収納用区画プレート64は、上方が開放されたバッテリ収納領域Eを形成するために、前プレート72及び後プレート73と、左側プレート74及び右側プレート75とを有している。また、左右の縦仕切プレート68a,68bはバッテリ収納領域E内まで延び、このバッテリ収納領域E内に延びた左右の縦仕切プレート68a,68bは前プレート72と後プレート73を連結している。
【0047】
後プレート73は旋回フレーム16の後端縁に沿って配置され、前プレート72は後プレート73の前方に後プレート73と間隔を開けて配置されている。また、前プレート72及び後プレート73は、旋回フレーム16の後端部において、左端部から右端部にまで延びて配置されている。左側プレート74及び右側プレート75はそれぞれ旋回フレーム16の左右の端縁に沿って配置されている。
【0048】
ここでは、各区画を形成するための複数のプレート63,64が、旋回フレーム16の強度を補強するリブとして機能している。このため、特別な部材等を設けることなく、旋回フレーム16の強度を増加させることができる。特に、左右の縦仕切プレート68a,68bは、左右の支持プレート65a,65bとバッテリ収納用区画プレート64との間に連続して形成されているので、旋回フレーム16の強度をより増加させることができる。また、バッテリ収納領域Eにおいて2つの仕切プレート68a,68bによって、旋回フレーム16の後部の強度がより補強されている。
【0049】
[バッテリ保持構造]
電源ユニット19を構成する複数のバッテリ24は、旋回フレーム16の後端部に設けられたバッテリ収納領域Eに配置されている。複数のバッテリ24は、図2に示すように、左右方向に並べて配置されるとともに、縦方向に積層されている。この実施形態では、複数のバッテリ24は4段に積層されており、以下の説明では、図4及び図5に示す最下段の複数のバッテリを第1バッテリ群B1、図5に示す第2段目、第3段目、第4段目の複数のバッテリをそれぞれ第2バッテリ群B2、第3バッテリ群B3、第4バッテリ群B4と記す。
【0050】
まず、第1バッテリ群B1は、図4に示すように、旋回フレーム16上において、バッテリ収納用区画プレート64によって囲まれたバッテリ収納領域Eに載置されている。また、第2、第3、第4のバッテリ群B2〜B4は、図5に示すように、それぞれ第2、第3、第4のバッテリケース82,83,84に収納されている。
【0051】
各バッテリケース82〜84は、前後左右の側壁及び底壁を有し、上方が開放された箱状に形成されている。そして、各バッテリケース82〜84は2本の同形状の支柱85によって旋回フレーム16の後端部に固定されている。
【0052】
図6に、支柱85と各バッテリケース82〜84との固定部を拡大して示している。この図6に示すように、旋回フレーム16の後端部には、後方に突出して2つのマウント部16aが設けられている。このマウント部16aは、バッテリ収納用区画プレート64の後プレート73の後面において、左右の縦仕切プレート68a,68bに対応する位置に形成されている。各支柱85は、下端に形成されたフレーム固定部86と、フレーム固定部86から上方に延びるケース固定部87と、を有している。フレーム固定部86はボルトによって旋回フレーム16のマウント部16aに固定される。また、ケース固定部87の後面には、上下に延びるリブ87aが形成され、強度が補強されている。
【0053】
ここで、各バッテリケース82〜84と支柱85との固定部についてはいずれも同じであるので、ここでは、第2バッテリケース82と支柱85との関係について説明する。図6に示すように、第2バッテリケース82の後壁82aには、複数のナット取付台82bが固定されている。そして、支柱85のケース固定部87には、第2バッテリケース82のナット取付台82bに対応する位置に貫通孔が形成されており、この貫通孔を貫通するボルト88が第2バッテリケース82のナット取付台82bに形成されたナット部にねじ込まれて固定されている。
【0054】
以上のように、2本の支柱85が旋回フレーム16の後端部に固定され、この2本の支柱85に第2〜第4バッテリケース82〜84が固定されている。このようにして、第2〜第4バッテリケース82〜84が旋回フレーム16に固定されている。
【0055】
また、各バッテリケース82〜84の左右の側壁には、位置決め構造91及び側方支持構造92が設けられている。位置決め構造91はバッテリケース82〜84が前後方向に相対的にずれるのを規制するための構造である。また、側方支持構造92はバッテリケース82〜84の左右側壁を旋回フレーム16に対して固定するための構造である。
【0056】
位置決め構造91は、各バッテリケース82〜84の側壁に形成された凹凸部によって構成されている。具体的には、まず、第2及び第3バッテリケース82,83の側壁上面には、前後方向の中央部に側面視で台形状の凸部82c,83cが形成されている。また、第3及び第4バッテリケース83,84の側壁下面には、それぞれ第2及び第3バッテリケース82,83の凸部82c,83cが嵌り込む凹部83d,84dが形成されている。これらの互いに嵌り込む凹凸部によって、第2〜第4バッテリケース82〜84は、前後方向の移動が規制されて位置決めされている。
【0057】
側方支持構造92は、各バッテリケース82〜84の側壁に形成された連結ブラケットによって構成されている。具体的には、各バッテリケース82〜84のそれぞれにおいて、側壁の前後両端でかつ上下両端部に4つの連結ブラケット82e〜84eが形成されている。そして、第2バッテリケース82の下端部の連結ブラケット82eは、旋回フレーム16に形成された連結ブラケット16bにボルトにより固定されている。また、第2バッテリケース82の上端部の連結ブラケット82eが第3バッテリケースの下端部の連結ブラケット83eに、さらに第3バッテリケース83の上端部の連結ブラケット83eが第4バッテリケース84の下端部の連結ブラケット84eに、それぞれボルトにより連結されている。
【0058】
このように、各バッテリケース82〜84同士を連結ブラケット82e〜84eによって連結し、かつ第2バッテリケースの連結ブラケット82eを旋回フレーム16に固定することによって、すべてのバッテリケース82〜84の側壁が旋回フレーム16に固定されることになる。
【0059】
[配線保護]
複数のバッテリ24は、それらの端子同士が電気配線(以下、単に配線と記す)によって接続されている。そして、図5に示すように、積層された各段のバッテリ群B1〜B4のうちの、右端部のバッテリは配線W1によって上下に隣接するバッテリの端子同士が接続され、左端部のバッテリの端子は配線W2によって各バッテリケース82〜84よりコンタクタボックス25に接続されている。また、各段のバッテリ群B1〜B4において、左右方向のほぼ中央部のバッテリの端子は、それぞれ配線W3によってコンタクタボックス25に接続されている。そして、これらの各配線W1,W2,W3は、それぞれバッテリケース82〜84の後壁に形成された開口を介して、各バッテリケースの後方に引き出されている。
【0060】
以上のように、各段のバッテリ群B1〜B4において、左右両端部及び中央部には、バッテリケース82〜84の外側後方に複数の配線が露出することになる。そこで、本実施形態では、これらの配線を保護するための3つのガード部材94が設けられている。
【0061】
3つのガード部材94はすべて同じ形状である。各ガード部材94は、上方及び下方が開放された断面コ字状の部材であり、左右の側壁と後壁とを有している。そして、このガード部材94の内部に配線が収納されている。各ガード部材94は、左右側壁の下部及び上部に、横方向に突出する固定部94a,94bを有している。そして、下部の固定部94aがボルトにより第2バッテリケース82の後壁に固定され、上部の固定部94bがボルトにより第4バッテリケース84の後壁に固定されている。
【0062】
なお、各バッテリケース82〜84の前壁には、それぞれのバッテリケース82〜84を旋回フレーム16に固定したり、あるいはバッテリケース同士を固定したりするための部材や機構は設けられていない。このため、バッテリケース82〜84を遮熱板28に接近させて配置でき、電源ユニット19全体を前方に配置することができる。言い換えれば、旋回フレーム16の後部が後方へ飛び出すのを抑えることができる。
【0063】
[バッテリのガス排出構造]
電源ユニット19を構成する密閉型の複数のバッテリ24は、鉛シールドバッテリであり、充電時や稼働中において大電流が流れ、温度が上昇すると、ガスを発生する。発生したガスはバッテリ内部でバッテリ液に戻される処理がなされるが、内部でガスを処理仕切れない場合がある。そこで、バッテリ内部の圧力が所定圧以上になった場合に、内部のガスをバッテリ外部に排出するためのガス排出構造が設けられている。また、さらに温度が上昇すると、バッテリ液が放出されるようになっており、この構造は緊急時においても作動するものである。
【0064】
図7にガス排出構造の模式図を示す。また、図8にガス排出構造の一部を示す。これらの図に示すように、各バッテリ24の上面には、バッテリ24の並べられた両方向、すなわち左方向及び右方向のそれぞれに突出する1対の排出口24a,24aが設けられている。バッテリ内部で発生し、処理しきれなかったガスは、バッテリ内部に設けられた内圧制御弁(図示せず)を介して1対の排出口24a,24aから排出される。また、隣り合うバッテリの排出口24a同士が、連絡ホース96によって接続されている。さらに、各段におけるバッテリ群B1〜B4のうちの両端に配置されたバッテリのそれぞれの外側の排出口24aにはドレインホース97が接続されている。ドレインホース97は、一端がバッテリ24の排出口24aに接続され、他端は、図10に示すように、各バッテリケース82〜84の左右の側壁に形成されたホース用開口84fを通して車体の外部に引き出されている。そして、このドレインホース97からは、各連絡ホース96を通じて排出されてきたガスが外部に排出される。
【0065】
[動作]
電源ユニット19のバッテリ24からの直流電力は、インバータ装置20によって任意の周波数の交流電力に変換される。電動モータ18は、インバータ装置20から供給される交流電力によって駆動され、さらにこの電動モータ18によって油圧ポンプ21が駆動される。そして、油圧ポンプ21からの油圧は、コントロールバルブ22を介して各油圧シリンダ43〜45や旋回用モータ及び走行用モータ55に供給される。
【0066】
運転操作や作業操作については、従来のエンジンを備えた油圧ショベルと同様である。すなわち、オペレータが各操作レバーを操作することにより、油圧ポンプ21から供給される油圧が操作に応じてコントロールバルブ22で制御される。これにより、操作に応じた速度で走行機構11が駆動され、また操作に応じた作業が実行される。
【0067】
また、バッテリ24に対して充電を行う場合は、充電用コネクタ60に急速充電器61が接続される。急速充電器61から供給された直流電力は、コンタクタボックス25を介してバッテリ24に供給される。これによりバッテリ24が充電される。充電中のバッテリ24からはガスが発生する。発生したガスは内部で処理されるが、充電状態によっては内部で処理しきれない場合が生じる。この場合は、バッテリ内部に設けられた内圧制御弁が作用し、ガスがバッテリ外部に排出される。各バッテリ24から排出されたガスあるいはバッテリ液は、連絡ホース96を介して各バッテリ群B1〜B4の両端部に導かれ、両側のドレインホース97を介して車体外部に排出される。
【0068】
[特徴]
(1)複数のバッテリケース82〜84は、旋回フレーム16の後端部に固定された2つの支柱85に固定される。また、各バッテリケース82〜84は、位置決め構造91によって前後方向の移動が互いに規制されて位置決めされ、また側方支持構造92によって側壁が旋回フレーム16に固定されている。このため、バッテリケース82〜84の前部には固定のための支柱等の部材が不要になる。したがって、バッテリケース82〜84を含む電源ユニット19を、従来に比較して、より車両前方に配置することが可能になる。このため、旋回フレーム16が後方に張り出すのを抑えることができ、電動式ショベルの後方の旋回半径を小さくすることができる。
【0069】
(2)バッテリケース82〜84の位置決め構造91を、各バッテリケース82〜84の側壁に形成された凹凸部で形成しているので、簡単な構造で、複数のバッテリケースの前後方向の位置決めを行うことができる。
【0070】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0071】
(a)側方支持構造として、下端が旋回フレーム16に固定されるとともに、上端が第4バッテリケースにまで延びた固定フレームを設け、各バッテリケースをこの固定フレームに固定するようにしてもよい。
【0072】
(b)旋回フレーム16の後端部に固定された支柱の個数、形状については、前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0073】
1 電動式ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ショベル機構
10 トラックフレーム
11 走行機構
16 旋回フレーム
18 電動モータ
19 電源ユニット
24 バッテリ
26 バッテリ保持構造
B1〜B4 第1〜第4バッテリ群
82〜84 第2〜第4バッテリケース
82c,83c 凸部
82e〜84e 連結ブラケット
83d,84d 凹部
85 支柱
91 位置決め構造
92 側方支持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリにより駆動される電動モータを有する電動式作業車両のバッテリ保持構造であって、
それぞれ、前後左右の側壁及び底壁を有し、複数のバッテリが横方向に並べて収納され、縦方向に積層される複数のバッテリケースと、
前記複数のバッテリケースが後部に搭載されるベースフレームと、
下端部が前記ベースフレームの後端部に固定されるとともに上方に延びて配置され、前記各バッテリケースの後壁が固定される複数の支柱と、
を備えた電動式作業車両のバッテリ保持構造。
【請求項2】
前記複数のバッテリケースの左右の側壁に設けられ、積層方向に隣接するバッテリケース同士の前後方向の相対移動を規制する位置決め構造をさらに備えた、請求項1に記載の電動式作業車両のバッテリ保持構造。
【請求項3】
前記位置決め構造は、複数のバッテリケースのそれぞれの左右の側壁に設けられ、上下方向に隣接するバッテリケースが互いに嵌り合って互いの前後方向の移動を規制する凹凸部である、請求項2に記載の電動式作業車両のバッテリ保持構造。
【請求項4】
前記複数のバッテリケースの左右の側壁を車両フレームに支持するための側方支持構造をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の電動式作業車両のバッテリ保持構造。
【請求項5】
前記複数のバッテリケースの前壁は前記ベースフレームに支持されていない、請求項1から4のいずれかに記載の電動式作業車両のバッテリ保持構造。
【請求項6】
車体フレームと、
前記車体フレームに支持された走行機構と、
作業機及び前記作業機を駆動する作業機駆動部を有する作業機ユニットと、
前記走行機構及び前記作業機ユニットを駆動するための電動モータと、
複数のバッテリを含み、前記電動モータに電力を供給する電源ユニットと、
請求項1から5のいずれかに記載のバッテリ保持構造と、
を備えた電動式作業車両。
【請求項7】
前記ベースフレームは上下方向に延びる旋回軸の回りに旋回自在であり、
前記電動モータは前記ベースフレームの後部に配置されたバッテリ保持構造と前記旋回軸との間に配置されている、
請求項6に記載の電動式作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202065(P2012−202065A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66120(P2011−66120)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】