説明

電動式直動アクチュエータおよび電動式ディスクブレーキ装置

【課題】回転軸の回転を複数の遊星ローラのそれぞれに対してロスなく確実に伝達できるようにすることである。
【解決手段】外輪部材5の内径面と回転軸10の外径面間に偶数個の遊星ローラ21を組み込む。回転軸10を中心にして回転可能なキャリア14に遊星ローラ21と同数のローラ軸19を設け、そのローラ軸19によって遊星ローラ21を回転自在に支持する。周方向で隣接する一対のローラ軸19を組とし、その組となる一対のローラ軸19間に引張りコイルばね23を掛け渡して、一対のローラ軸19を周方向に付勢し、遊星ローラ21の外周に形成された螺旋溝22を外輪部材5の内周に形成されてその螺旋溝22に係合する螺旋突条6の両側のフランク6a、6bに圧接させ、その圧接力に対する反力の径方向分力によりローラ軸19を径方向内方に付勢して、遊星ローラ21を回転軸10の外径面に圧接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブレーキパッド等の被駆動部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータおよびその電動式直動アクチュエータを用いた電動式ディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とする電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータのロータ軸の回転運動を運動変換機構により軸方向に移動自在に支持された被駆動部材の直線運動に変換するようにしている。
【0003】
電動式直動アクチュエータに採用された運動変換機構として、ボールねじ機構やボールランプ機構が知られているが、これらの運動変換機構においては、ある程度の増力機能を有するものの、電動式ディスクブレーキ装置等で必要とされるような大きな増力機能を確保することができない。
【0004】
そこで、上記のような運動変換機構を採用した電動式直動アクチュエータにおいては、遊星歯車機構等の減速機構を別途組込んで駆動力の増大を図るようにしているが、上記減速機構を組込む分、構成が複雑となり、電動式直動アクチュエータが大型化するという問題があった。
【0005】
そのような問題点を解決するため、本件出願人は、減速機構を組込むことなく大きな増力機能を確保することができ、直動ストロークが比較的小さい電動式ディスクブレーキ装置への採用に好適な電動式直動アクチュエータを特許文献1において既に提案している。
【0006】
上記特許文献1に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータによって回転駆動される回転軸と、その回転軸の外側に設けられた外輪部材との間に複数の遊星ローラを組込み、その複数の遊星ローラのそれぞれを回転軸を中心にして回転可能なキャリアにより回転自在に支持し、上記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触によって遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条との噛み合いによって外輪部材とキャリアを軸方向に相対的に直線移動させるようにしている。
【0007】
ここで、遊星ローラを回転軸の外径面と外輪部材の内径面間に負の嵌め合い隙間をもって組込む構成であると、組付けに手間がかかり、コストが高くなるという問題が生じる。そこで、そのような問題点を解決するため、上記特許文献1に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、複数の遊星ローラを回転自在に支持するローラ軸をキャリアによって径方向に移動自在に支持し、その複数のローラ軸のそれぞれを弾性部材により径方向内方に向けて付勢して、遊星ローラのそれぞれを回転軸の外径面に弾性接触させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−197863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、弾性部材としてC形リングを採用し、そのC形リングを複数のローラ軸に外接する組込みとして、各ローラ軸を径方向内方に向けて付勢するようにしており、上記C形リングはコストが安いという特徴を有するものの、ばね鋼の折曲げによる製造であるため、真円度に優れたリングを得ることができない。このため、複数の遊星ローラに対してばね荷重を均等に負荷することができず、回転軸と遊星ローラの接触部で滑りが生じて回転軸が空回転する可能性があり、遊星ローラへの回転伝達効率の向上を図る上において改善すべき点が残されていた。
【0010】
また、上記特許文献1では、圧縮コイルばねにより複数の遊星ローラのそれぞれを回転軸に個別に押し付けるようにした実施の形態も示されているが、圧縮コイルばねの収容に大きなスペースを確保することができない。このため、遊星ローラのそれぞれに対して大きな押付け力を付与することができず、この場合においても、前記と同様に、遊星ローラへの回転伝達効率の向上を図る上において改善すべき点が残されていた。
【0011】
この発明の課題は、回転軸との接触回転によって遊星ローラを自転させつつ公転させて、その遊星ローラを支持するキャリアと外輪部材とを相対的に軸方向に移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、回転軸の回転を複数の遊星ローラのそれぞれに対してロスなく確実に伝達できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、円筒状のハウジング内に外輪部材を組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータを駆動源として回転駆動される回転軸を設け、その回転軸の外径面と前記外輪部材の内径面間に偶数個の遊星ローラを組込み、その偶数個の遊星ローラのそれぞれを回転自在に支持する遊星ローラと同数のローラ軸およびそれぞれのローラ軸の軸端部を支持するディスクを有するキャリアを前記回転軸を中心にして回転自在に支持し、前記遊星ローラのそれぞれの外径面に前記外輪部材の内径面に設けられた断面V字形の螺旋突条に噛合する螺旋溝または円周溝を形成し、前記回転軸を回転し、その回転軸との摩擦接触により複数の遊星ローラを自転および公転させて外輪部材とキャリアとを相対的に軸方向に移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、前記キャリアのディスクに形成された軸挿入孔をローラ軸が余裕をもって挿通される大きさとし、前記遊星ローラを支持する偶数本のローラ軸を、隣接する一対のローラ軸を組とし、その組となる一対のローラ軸間に、その一対のローラ軸を周方向に付勢して遊星ローラの外周に形成された溝のフランクを螺旋突条のフランクに圧接させる弾性部材を組み込んだ構成を採用したのである。
【0013】
また、この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでブレーキディスクを押圧して、そのブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータとしてこの発明に係る電動式直動アクチュエータを用いた構成を採用したのである。
【0014】
上記の構成からなる電動式直動アクチュエータにおいては、組となる一対のローラ軸間に弾性部材を組込み、その弾性部材で一対のローラ軸を周方向に付勢するようにしているため、ローラ軸に支持された遊星ローラの外周に形成された溝のフランクを外輪部材の内周に設けられた螺旋突条のフランクに圧接させることができる。このとき、螺旋突条はリード角を有するため、遊星ローラには径方向内方に向く分力が作用することになり、その径方向分力により遊星ローラが半径方向内方に移動して、回転軸の外径面に強く接触することになる。
【0015】
その結果、電動モータの駆動により回転軸を回転させると、その回転軸の回転は複数の遊星ローラのそれぞれにロスなく確実に伝達されて、遊星ローラは自転しつつ公転することになり、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合により外輪部材とキャリアの一方が軸方向に直線移動する。
【0016】
このため、上記外輪部材とキャリアのうち、軸方向に直線移動する一方の部材に電動式ディスクブレーキ装置のブレーキパッドを接続することにより、ブレーキパッドを直線駆動してブレーキディスクに押し付けることができ、ブレーキディスクに制動力を付与することができる。
【0017】
ここで、一対のローラ軸がキャリアを貫通して外部に位置する軸端部間に弾性部材を設けることにより、弾性部材の組込みに大きなスペースを確保することができ、ばね定数の大きな弾性部材の組込みを可能とすることができる。
【0018】
上記弾性部材は、引張りばねであってもよく、圧縮ばねであってもよい。引張りばねとして、引張りコイルばねや一対のローラ軸に係止される一対の係合片を両端部に有し、その一対の係合片間に内向き屈曲部が形成されたM字状の薄板ばね又は線細工ばねを採用することができる。
【0019】
一方、圧縮ばねとして、圧縮コイルばねや一対のローラ軸に係止される一対の係合片を両端部に有し、その一対の係合片間に内向き屈曲部が形成されたM字状の薄板ばね又は線細工ばねを採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明においては、上記のように、組となる一対のローラ軸を弾性部材により周方向に付勢して、一対のローラ軸のそれぞれに回転自在に支持された遊星ローラの外周に形成された溝のフランクをリード角を有する螺旋突条のフランクに圧接させるようにしたことにより、遊星ローラを径方向内方に向けて移動させて回転軸の外径面に強く接触させることができる。その結果、回転軸の回転を複数の遊星ローラのそれぞれにロスなく確実に伝達することができ、回転伝達効率の優れた電動式直動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る電動式直動アクチュエータの実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図
【図5】(a)は、螺旋突条と遊星ローラの接触部を示す展開図、(b)は、(a)の右側面図
【図6】弾性部材の他の例を示す断面図
【図7】弾性部材のさらに他の例を示す断面図
【図8】弾性部材のさらに他の例を示す断面図
【図9】この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置の実施の形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの実施の形態を示す。この実施の形態で示される電動式直動アクチュエータAは、円筒状のハウジング1を有し、そのハウジング1の一端には径方向外方に張り出すベースプレート2が設けられ、そのベースプレート2の外側面はハウジング1の一端部にボルト止めされたカバー3によって覆われている。
【0023】
ハウジング1の内部には外輪部材5が組込まれている。外輪部材5は回り止めされ、かつ、ハウジング1の内径面に沿って軸方向に移動自在とされ、その内径面には、図2に示すように、断面V字形の螺旋突条6が設けられている。
【0024】
図1に示すように、ハウジング1内には、外輪部材5の軸方向一端側に軸受部材7が組込まれている。軸受部材7は円盤状をなし、その中央部にはボス部7aが設けられている。軸受部材7は、ハウジング1の内径面に取付けた止め輪8によってカバー3側に移動するのが防止されている。
【0025】
軸受部材7のボス部7a内には一対の転がり軸受9が軸方向に間隔をおいて組込まれ、その転がり軸受9によって外輪部材5の軸心上に配置された回転軸10が回転自在に支持されている。
【0026】
ハウジング1のベースプレート2には電動モータ11が支持され、その電動モータ11のロータ軸12の回転は、カバー3内に組込まれたギヤ減速機構13によって回転軸10に伝達されるようになっている。
【0027】
外輪部材5の内側には回転軸10を中心にして回転可能なキャリア14が組込まれている。図2および図3に示すように、キャリア14は、軸方向で対向する一対のディスク14a、14bを有し、一方のディスク14bに設けられた複数の間隔調整用柱部15によって一対のディスク14a、14bの対向間隔が一定に保持されている。
【0028】
キャリア14は、一対のディスク14a、14bの内径面に組み込まれたすべり軸受16により回転軸10を中心にして回転自在に、かつ、軸方向にスライド自在に支持され、上記回転軸10の軸端部に取付けられた止め輪17により回転軸10の軸端から抜け出るのが防止されている。
【0029】
キャリア14における一対のディスク14a、14bのそれぞれには、軸方向で対向する一対の軸挿入孔18が周方向に90°の間隔をおいて4組形成され、各組の対向一対の軸挿入孔18のそれぞれにローラ軸19の軸端部が挿入されている。それぞれのローラ軸19には対向一対の軸受20が嵌合され、その軸受20によって遊星ローラ21が回転自在に支持されている。
【0030】
なお、ローラ軸19の数は4本に限定されず、4本以上の偶数本としてもよい。
【0031】
遊星ローラ21の外径面には、外輪部材5に設けられた螺旋突条6のピッチと同一のピッチで螺旋溝22が形成され、その螺旋溝22に螺旋突条6が係合している。なお、螺旋溝22に代えて、複数の円周溝を螺旋突条6のピッチと同一のピッチで形成してもよい。
【0032】
ここで、一対のディスク14a、14bに形成された軸挿入孔18はローラ軸19の軸端部が余裕をもって挿入可能な大きさとされて、ローラ軸19との間に間隙が設けられ、その間隙の範囲内においてローラ軸19は移動自在とされている。
【0033】
ローラ軸19の両端部は、ディスク14a、14bを貫通し、そのディスク14a、14bの外側面から外部に位置する端部は小径軸部19aとされている。周方向に90°の間隔をおいて設けられた4本のローラ軸19において、周方向で隣接する一対のローラ軸19は組とされ、その組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間には、図4に示すように、弾性部材としての引張りコイルばね23が掛け渡されている。
【0034】
引張りコイルばね23は、周方向で隣接する一対のローラ軸19が互いに接近するようその一対のローラ軸19を周方向に向けて付勢しており、その付勢によって組となる一対の遊星ローラ21の一方の遊星ローラ21が、図5(a)、(b)に示すように螺旋突条6の両側フランク6a、6bの一方のフランク6aに対してTで当接し、また、他方の遊星ローラ21が他方のフランク6bに対してTで当接する。
【0035】
このとき、螺旋突条6は、リード角が設けられているため、組となる一対の遊星ローラ21のそれぞれは、フランク6a、6bに沿って径方向内方に移動して回転軸10の外径面に強く接触する。
【0036】
図2に示すように、キャリア14の一対のディスク14a、14bのうち、軸受部材7側に位置するインナ側ディスク14aと遊星ローラ21の対向面間にはスラスト軸受24が組み込まれている。
【0037】
また、キャリア14におけるインナ側ディスク14aと軸受部材7の対向面間には、環状のサポート部材25と、スラスト軸受26とが組み込まれ、上記スラスト軸受26はキャリア14およびサポート部材25に負荷される軸方向のスラスト荷重を受けるようになっている。
【0038】
サポート部材25にはインナ側ディスク14aと対向する面に円形凹部27が形成され、その円形凹部27内に前述の引張りコイルばね23が収容されている。
【0039】
外輪部材5のハウジング1の端部開口から外部に位置する他端の開口はシールカバー29の取付けにより閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。一方、ハウジング1の他端開口は、その他端部と外輪部材5の他端部間に取付けられたブーツ30により閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。
【0040】
実施の形態で示す電動式直動アクチュエータAは上記の構造からなり、図9は、その電動式直動アクチュエータAを採用した電動式ディスクブレーキ装置Bを示す。この電動式ディスクブレーキ装置Bにおいては、電動式直動アクチュエータAにおけるハウジング1の他端部にキャリパボディ部41を一体に設け、そのキャリパボディ部41内に外周部の一部が配置されたブレーキディスク42の両側に固定ブレーキパッド43と可動ブレーキパッド44を設け、その可動ブレーキパッド44を外輪部材5の他端部に連結一体化している。
【0041】
図9に示すような電動式ディスクブレーキ装置Bへの電動式直動アクチュエータAの使用状態において、図1に示す電動モータ11の駆動により回転軸10が回転すると、回転軸10との摩擦接触により遊星ローラ21が自転しつつ公転する。
【0042】
この時、遊星ローラ21の外径面には螺旋溝22が形成され、その螺旋溝22に外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6が係合しているため、遊星ローラ21の自転および公転により外輪部材5が軸方向に移動し、可動ブレーキパッド44がブレーキディスク42に押し付けられ、ブレーキディスク42に制動力が付与される。
【0043】
図1乃至図4に示す電動式直動アクチュエータにおいては、遊星ローラ21を回転自在に支持するローラ軸19とこれに周方向で隣接するローラ軸19とを組とし、その組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間に引張りコイルばね23を掛け渡して、一対のローラ軸19が互いに接近するようその一対のローラ軸19を周方向に付勢しているため、図5(a)、(b)に示すように、遊星ローラ21の外周に形成された螺旋溝22の両側のフランクを外輪部材5の内周に設けられた螺旋突条6のフランク6a、6bに圧接させることができる。このとき、螺旋突条6はリード角を有するため、遊星ローラ21には、上記圧接力に対する反力の径方向内方に向く分力が作用することになり、その径方向分力により遊星ローラ21が半径方向内方に移動して、回転軸10の外径面に強く接触する。
【0044】
このため、回転軸10と複数の遊星ローラ21の接触部で滑りを生じるというようなことがなく、回転軸10の回転は複数の遊星ローラ21のそれぞれにロスなく確実に伝達されることになり、外輪部材5は確実に直線駆動し、電動式直動アクチュエータAが作動不能になるというようなことはない。
【0045】
図4では、組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間にかけ渡されて、それぞれのローラ軸19を周方向に付勢する弾性部材として引張りコイルばね23を採用したが、弾性部材は引張りコイルばね23に限定されるものではない。
【0046】
図6乃至図8は、弾性部材の他の例を示している。図6では、一対のローラ軸19の小径軸部19aに係合される一対の係合片31aを両端部に有し、その一対の係合片31a間に内向き屈曲部31bが形成されたM字状のばね鋼板製の薄板ばね31を弾性部材とし、その薄板ばね31を組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間にかけ渡している。なお、薄板ばね31に代えて、鋼線をM字状に曲げ加工した線細工ばねを採用するようにしてもよい。
【0047】
図7では、圧縮ばねとしての圧縮コイルばね32を弾性部材とし、その圧縮コイルばね32を組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間に組み込んで、一対のローラ軸19を周方向に付勢し、遊星ローラ21の外周に形成された螺旋溝22のフランクを螺旋突条6のフランクに圧接させ、その圧接力に対する反力の径方向分力により遊星ローラ21を回転軸10の外径面に圧接させるようにしている。
【0048】
図8では、一対のローラ軸19の小径軸部19aに係合される一対の係合片33aを両端部に有し、その一対の係合片33a間に内向き屈曲部33bが形成された圧縮ばねとしてのM字状のばね鋼板製の薄板ばね33を弾性部材とし、その薄板ばね33を組となる一対のローラ軸19の小径軸部19a間に組み込んで、一対のローラ軸19を周方向に付勢し、遊星ローラ21の外周に形成された螺旋溝22のフランクを螺旋突条6のフランクに圧接させ、その圧接力に対する反力の径方向分力により遊星ローラ21を回転軸10の外径面に圧接させるようにしている。なお、薄板ばね33に代えて、鋼線をM字状に曲げ加工した線細工ばねを採用するようにしてもよい。
【0049】
図6乃至図8に示すいずれの弾性部材においても遊星ローラ21を回転軸10の外径面に強く弾性接触させることができ、回転軸10の回転を複数の遊星ローラ21のそれぞれに確実に伝達することができる。
【0050】
実施の形態では、遊星ローラ21の自転と公転とによって外輪部材5を軸方向に移動させるようにしたが、外輪部材5を固定し、キャリア14を軸方向に移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
A 電動式直動アクチュエータ
B 電動式ディスクブレーキ装置
1 ハウジング
5 外輪部材
6 螺旋突条
6a、6b フランク
10 回転軸
11 電動モータ
14 キャリア
21 遊星ローラ
22 螺旋溝
23 引張りコイルばね(弾性部材)
31 薄板ばね(弾性部材)
31a 係合片
31b 屈曲部
32 圧縮コイルばね(圧縮ばね)
33 薄板ばね(圧縮ばね)
51 ブレーキディスク
53 可動ブレーキパッド(ブレーキパッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のハウジング内に外輪部材を組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータを駆動源として回転駆動される回転軸を設け、その回転軸の外径面と前記外輪部材の内径面間に偶数個の遊星ローラを組込み、その偶数個の遊星ローラのそれぞれを回転自在に支持する遊星ローラと同数のローラ軸およびそれぞれのローラ軸の軸端部を支持するディスクを有するキャリアを前記回転軸を中心にして回転自在に支持し、前記遊星ローラのそれぞれの外径面に前記外輪部材の内径面に設けられた断面V字形の螺旋突条に噛合する螺旋溝または円周溝を形成し、前記回転軸を回転し、その回転軸との摩擦接触により複数の遊星ローラを自転および公転させて外輪部材とキャリアとを相対的に軸方向に移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、
前記キャリアのディスクに形成された軸挿入孔をローラ軸が余裕をもって挿通される大きさとし、前記遊星ローラを支持する偶数本のローラ軸を、隣接する一対のローラ軸を組とし、その組となる一対のローラ軸間に、その一対のローラ軸を周方向に付勢して遊星ローラの外周に形成された溝のフランクを螺旋突条のフランクに圧接させる弾性部材を組み込んだことを特徴とする電動式直動アクチュエータ。
【請求項2】
前記弾性部材が、組となる一対のローラ軸の軸端部に端部が係止された引張りばねからなる請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項3】
前記引張りばねが、引張りコイルばねからなる請求項2に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項4】
前記引張りばねが、前記一対のローラ軸に係止される一対の係合片を両端部に有し、その一対の係合片間に内向き屈曲部が形成されたM字状の薄板ばね又は線細工ばねからなる請求項2に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性部材が、組となる一対のローラ軸の軸端部に端部が係止された圧縮ばねからなる請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項6】
前記圧縮ばねが、圧縮コイルばねからなる請求項5に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項7】
前記圧縮ばねが、前記一対のローラ軸に係止される一対の係合片を両端部に有し、その一対の係合片間に内向き屈曲部が形成されたM字状の薄板ばね又は線細工ばねからなる請求項5に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項8】
電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでブレーキディスクを押圧して、そのブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、
前記電動式直動アクチュエータが請求項1乃至7のいずれかの項に記載の電動式直動アクチュエータからなることを特徴とする電動式ディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−241825(P2012−241825A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113582(P2011−113582)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】