説明

電動機、電動機の製造方法及びコイルユニットの製造方法

【課題】低損失の電動機を実現する。
【解決手段】電動機10は、回転子20と、回転子20を空隙を有して内挿する円筒形状のコイルユニット50と、コイルユニット50を内挿する円筒形状のバックヨーク40と、を有し、コイルユニット50は、半径方向に第1層コイル60と第2層コイル70の2層構造を有し、外周側の第1層コイル60は、複数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル61〜66の一つ一つが円周方向に所与の間隙を有して整列配置されており、内周側の第2層コイル70は、第1層コイル60と同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル71〜76の一つ一つが円周方向に所与の間隙を有し、第1層コイル60とは1/2ピッチ位相をずらして配置されており、第1層コイル60と第2層コイル70とが、軟磁性粉と樹脂との混合材80によってインサートモールドされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、電動機の製造方法、及びこの電動機に用いられるコイルユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状のバックヨーク部の半径方向に突出する複数のティース部を有し、このティース部を圧粉磁心材料と樹脂との混合材の成形体で構成して、ティース部に巻線を巻回した電動機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数のティース部に巻線を巻回する固定子において、コアバック部とティース部を含む固定子のコアを軟磁性粉末材料と樹脂との混合材料を射出成形した成形体で構成した電動機がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、回転子を周回するように配置された複数の集中巻コイルの中央位置の穴部に、軟磁性粉末を樹脂で成形した成形材を勘合させた電動機も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−182782号公報
【特許文献2】特開2005−80432号公報
【特許文献3】特開2007−53867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1や特許文献2では、ティース部を軟磁性粉と樹脂との混合材で成形し、このティース部に巻線を巻回して固定子を構成している。このような構造では、コイルスペースがそのまま回転子とのギャップとなり、界磁用磁石(永久磁石)に対する磁路抵抗が大きくなることから、永久磁石からなる回転子−バックヨーク間のギャップ磁束密度が低く、所望の電動機特性を得るためには巻線の巻線数を増加させなければならない。その結果、銅損が増加してしまうという課題があった。さらに、コギングトルクが大きくなるというような課題を有していた。
【0007】
また、特許文献3では、集中巻コイルの中央位置の穴部に軟磁性粉末を樹脂で成形した成形材を勘合させて磁路の一部とすることで、ギャップ磁束密度の低下を抑制しようとするものであるが、集中巻コイル間の円周方向の間隙はエアギャップまたは樹脂充填部であることから、それらの部分では磁路抵抗が大きくなってしまうという課題を有している。
さらに、エアギャップまたは単に樹脂充填部では熱伝導率が低く、コイルからの発熱の冷却性能が悪いという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る電動機は、回転子と、前記回転子を空隙を有して内挿する円筒形状のコイルユニットと、前記コイルユニットを内挿する円筒形状のバックヨークと、を有し、前記コイルユニットは、半径方向に第1層コイルと第2層コイルの2層構造を有し、外周側の前記第1層コイルは、複数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つが円周方向に所与の間隙を有して整列配置されており、内周側の前記第2層コイルは、前記第1層コイルと同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つが円周方向に所与の間隙を有して前記第1層コイルとは1/2ピッチ位相をずらして整列配置されており、前記第1層コイルと前記第2層コイルとが、軟磁性粉と樹脂との混合材によってインサートモールドされている、ことを特徴とする。
ここで、回転子は界磁用磁石(永久磁石)からなるローターである。
【0010】
本適用例によれば、軟磁性粉と樹脂の混合材によって第1層コイル及び第2層コイルの空芯部を含む周囲を充填することによって、回転子からバックヨークに向かう磁束数は、これらの間隙が空隙(空気層)または樹脂のみの場合に比べて非常に多くなる。このため、ギャップ磁束密度が高くなり、高トルク・低損失の電動機を実現できる。
【0011】
また、軟磁性粉は、熱伝導率が空気や樹脂と比べて高いことから、銅損によって発熱したコイルの冷却性能が向上するという効果がある。
【0012】
また、コイルユニットの内周面にも軟磁性粉成形層を構成することによって、コギングトルクを下げることができる。
さらに、本適用例のように、個片の各コイルを円周方向に2層構造で周回配置させることによって、前述した従来技術のようにティースを構成できないような小径のコイルユニット構造にも適用できる。
【0013】
[適用例2]上記適用例に係る電動機において、前記軟磁性粉と樹脂の混合材の比透磁率μが、μ≧100であること、が好ましい。
【0014】
詳しくは、実施の形態で説明するが、軟磁性粉と樹脂の混合材の比透磁率μを100以上にすれば、コギングトルクを0.4Nm以下に低減することができる。
【0015】
[適用例3]上記適用例に係る電動機において、前記軟磁性粉の粒度分布が20μm〜100μmの範囲であって、平均粒径が50μmであること、が好ましい。
【0016】
軟磁性粉と樹脂の混合材をモールドする際、軟磁性粉の粒径が50μm以下の場合は充填しやすいが混合比を高くすることが困難であり、50μm以上の場合は、粒径が大きくなるに従い徐々に充填しにくくなる傾向がある。このことから、軟磁性粉の粒径を20μm〜100μm、且つ平均粒径を50μm程度にすれば、充填性を確保しつつ混合比を高くすることができる。
【0017】
また、詳しくは、後述する実施の形態で説明するが、第1層コイルと第2層コイルとの半径方向の間隙は概ね70μmであって、隣り合う第1層コイル間の間隙及び隣り合う第2層コイル間の間隙は0.5mm〜1.0mm程度、それぞれのコイルの空芯部は幅3mm程度の空間があるため、粒径が20μm〜100μmの範囲で、狭い間隙部には粒径が小さい軟磁性粉を、広い間隙・空間には粒径が大きい軟磁性粉を充填させることが可能となる。
【0018】
[適用例4]上記適用例に係る電動機において、前記軟磁性粉の材質は、磁束密度が1.8T(T:テスラ)以上のFe−Si系材料であること、が好ましい。
ここで、軟磁性材料としては、例えば、FeSiBPCu組織の微結晶処理をした粉末、FeSiBPCu系のアモルファス粉末等を用いることができる。
【0019】
このような軟磁性粉を用いることによって、軟磁性粉が充填された間隙や空間のギャップ磁束密度が高くなり、高トルク・低損失の電動機を実現できる。
【0020】
[適用例5]上記適用例に係る電動機において、前記軟磁性粉が、混合材全重量に対する重量比で90%ないし95%含まれていること、が好ましい。
【0021】
前述した材質の軟磁性粉を用いた場合、軟磁性粉を重量比で90%ないし95%混合した場合に、比透磁率μを100以上にすることが可能で、比透磁率μを100以上にすればコギングトルクを0.4Nm以下に低減することができる。
【0022】
[適用例6]上記適用例に係る電動機において、前記軟磁性粉の表面に絶縁皮膜が形成されていること、が好ましい。
【0023】
軟磁性粉の表面に絶縁層を形成することによって、軟磁性粉間の電気抵抗を大きくして渦電流損を低減することができる。
【0024】
[適用例7]本適用例に係る電動機の製造方法は、上記各適用例に記載の電動機の製造方法であって、回転子を半径方向に所与の空隙を有して円筒形状のコイルユニットに内挿する工程と、円筒形状のバックヨークに前記コイルユニットを内挿する工程と、を有し、前記コイルユニットは、前記コイルユニットの半径方向に第1層コイルと第2層コイルの2層構造を有し、外周側の前記第1層コイルは、複数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有して整列配置する工程と、内周側の前記第2層コイルは、前記第1層コイルと同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有して前記第1層コイルとは1/2ピッチ位相をずらして整列配置する工程と、前記第1層コイルと前記第2層コイルとを、軟磁性粉と樹脂との混合材によってインサートモールドする工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、軟磁性粉と樹脂の混合材によって第1層コイル及び第2層コイルの空芯部を含む周囲を充填することによって、回転子からバックヨークに向かう磁束数は、これらの間隙が空隙(空気層)または樹脂のみの場合に比べて非常に多くなる。このため、ギャップ磁束密度が高くなり、高トルク・低損失の電動機を実現できる。
【0026】
また、軟磁性粉は、熱伝導率が空気や樹脂と比べて高いことから、銅損によって発熱したコイルの冷却性能が向上するという効果がある。
また、コイルユニットの内周面にも軟磁性粉成形層を形成することによって、コギングトルクを下げることができる。
さらに、本適用例のように、個片の各コイルを軟磁性粉と樹脂の混合材によってインサートモールドで一体化することから、前述した従来技術のようにティースにコイル線を巻回する構造に対し、小径のコイルユニット構造にも適用でき、回転子とコイルユニット、及びバックヨークとコイルユニット間の半径方向とアキシャル方向の位置精度を高めることができる。このことからも、高トルク・低損失の電動機を実現できる。
【0027】
[適用例8]本適用例に係るコイルユニットの製造方法は、上記各適用例に記載の電動機に用いられるコイルユニットの製造方法であって、扁平に巻回された第1層コイルの個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有してモールド型内に整列配置する工程と、扁平に巻回された第2層コイルの個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有し、且つ前記第一層コイルの内周側に整列配置する工程と、軟磁性粉と樹脂との混合材によって、前記第1層コイルと前記第2層コイルとを、インサートモールドする工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
本適用例によれば、モールド型に第1層コイルを同心円で周回するようにセットし、続いて、すでにセットした第1層コイルの内周側に第2層コイルを同心円で周回するようにセットした後、軟磁性粉と樹脂との混合材によってモールドすれば、2層構造のコイルユニットを精度よく容易に製造することができる。なお、第1層コイルと第2層コイルを配置する順番は入れ替えてもよい。
【0029】
[適用例9]上記適用例に係るコイルユニットの製造方法において、前記第1層コイル及び前記第2層コイルの個片のコイルの一つ一つの半径方向位置と周方向位置を規制する案内部が、前記モールド型に設けられていること、が好ましい。
【0030】
このようにすれば、コイル一つ一つの円周方向位置と、半径方向位置を正確に規制することができる。このことによって、円周方向のコイル間距離、回転子やバックヨークとコイルユニットとの半径方向の距離を正確に規制できるので、磁気特性のばらつきが小さい電動機を提供できる。
【0031】
[適用例10]上記適用例に係るコイルユニットの製造方法において、前記第1層コイルの外周に対して半径方向に所与の間隙を有して、バックヨークをさらに外挿するよう前記モールド型内に配置する工程を有すること、が好ましい。
【0032】
このようにすれば、コイルユニットとバックヨークとを軟磁性粉と樹脂との混合材によって一体化することが可能で、コイルユニットの外周とバックヨークとの半径方向の間隙にも軟磁性粉を充填できることからコイルユニット−バックヨーク間のギャップ磁束密度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電動機の構成を示す断面図であって、軸方向に切断した状態(図2のA−A切断面)。
【図2】電動機を図1のB−B切断面を表す断面図。
【図3】第1層コイルのうちの個片のコイルの構成を例示し、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図4】第2層コイルのうちの個片のコイルの構成を例示し、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図5】コイルユニットの構成を軸方向に視認した状態を示す説明図。
【図6】コギングトルクと比透磁率の関係を表すグラフ。
【図7】軟磁性粉混合比と比透磁率の関係を表すグラフ。
【図8】コイルユニットの製造方法の1例を示し、(a)は、個片のコイルをモールド型にセットした状態を軸方向に視認した正面図、(b)は個片のコイルを軟磁性粉と樹脂との混合材でインサートモールドした状態の一部を示す断面図、(c)はコイル線端末部を示す部分断面図、(d)は、モールドゲートの位置の1例を示す側面図の一部。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(電動機)
【0035】
まず、電動機10の構成について説明する。
図1は、電動機10の構成を示す断面図であって、軸方向に切断した状態(図2のA−A切断面)を表し、図2は、電動機10を図1のB−B切断面を表す断面図である。電動機10は、円筒形状の回転子20と、回転子20の外周に対して所与の空隙を有して回転子20を内挿する円筒形状のコイルユニット50と、コイルユニット50を内挿するバックヨーク40とから構成されている。
【0036】
回転子20は、本実施形態では円周方向に6極に着磁された界磁磁石(永久磁石)であって、シャフト30に軸止されており、シャフト30を回転軸として円周方向に回転可能である。
【0037】
バックヨーク40は、珪素鋼板等の薄板をアキシャル方向に複数枚積層して構成され、回転子20−コイルユニット50−バックヨーク40間で磁路を形成する。
【0038】
コイルユニット50は、半径方向に2層構造を有して構成されている。2層構造のうちの外周側に周回するように配置された個片のコイル群を第1層コイル60、内周側に周回するように配置された個片のコイル群を第2層コイル70とする。そして、第1層コイル60と第2層コイル70とは、インサートモールドによって互いの間隙や周囲を軟磁性粉と樹脂との混合材80によって充填、被覆されて円筒形状のコイルユニット50を構成している。
【0039】
続いて、回転子20とコイルユニット50とバックヨーク40との相互関係について図2を参照して説明する。第1層コイル60は、回転子20の極数と同数の個片のコイル61〜66によって構成されている。コイル61〜66は、コイル線が扁平な長円形状に空芯部を有して巻回されている。コイル61〜66の各々は、長円形状の短辺方向を円周方向に周回するように所与の間隙を有して整列配置されている。回転子20と第1層コイル60とは同心円の関係にある。
【0040】
第2層コイル70は、第1層コイル60の内周側に配置されており、第1層コイル60と同数の個片のコイル71〜76によって構成されている。コイル71〜76は、コイル線が扁平な長円形状に空芯部を有して巻回されている。コイル71〜76の各々は、第1層コイル60とは円周方向に1/2ピッチ位相をずらし、長円形状の短辺方向を円周方向に周回するように所与の間隙を有して整列配置されている。回転子20と第2層コイル70とは同心円の関係にある。なお、1/2ピッチ位相をずらすとは、本実施形態の回転子20が6極構成のため、角度で30度位相をずらすことである。
【0041】
第1層コイル60と第2層コイル70とは、半径方向に所与の間隙を有しており、この間隙は軟磁性粉と樹脂との混合材80によって充填されている。また、第1層コイル60及び第2層コイル70の各個片の空芯部にも軟磁性粉と樹脂との混合材80が充填されている。
【0042】
続いて、第1層コイル60及び第2層コイル70の個片の各コイルの構成について図面を参照して説明する。なお、第1層コイル60における個片の各コイルの構成は同じであって、第2層コイル70における個片の各コイルの構成も同じである。よって、各々の一つを例示して説明する。
【0043】
図3は、第1層コイル60のうちの個片のコイル61の構成を例示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。コイル61は、コイル線61aが扁平な長円形状に空芯部61bを有して巻回されており、空芯部61bの端部からコイル線端末部61c(巻回開始端末部)が外側に延在されている。また、長円形状の一方の側面からはコイル線端末部61d(巻回終了端末部)がコイル線端末部61cと同じ方向に延在されている。
コイル61は、図3(b)に示すように湾曲されており、コイル61〜66を周回するように配置したときに回転子20及びバックヨーク40と同心円となる。
【0044】
図4は、第2層コイル70のうちの個片のコイル71の構成を例示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。コイル71は、コイル線71aが扁平な長円形状に空芯部71bを有して巻回されており、空芯部71bの端部からコイル線端末部71c(巻回開始端末部)が外側に延在されている。また、長円形状の一方の側面からはコイル線端末部71d(巻回終了端末部)がコイル線端末部71cと同じ方向に延在されている。
コイル71は、図4(b)に示すように湾曲されており、コイル71〜76を周回するように配置したときに回転子20、第1層コイル60及びバックヨーク40と同心円となる。
【0045】
続いて、コイルユニット50の構成に付いて、さらに詳細に説明する。
図5は、コイルユニット50の構成を軸方向に視認した状態を示す説明図である。前述したように、第1層コイル60は、個片のコイル61〜66が円周方向に60度ピッチで配置されている。また、第2層コイル70は、個片のコイル71〜76が円周方向に60度ピッチで配置されている。そして、第1層コイル60と第2層コイル70の一つ一つのコイルは、1/2ピッチ(つまり、30度)位相がずれている。
【0046】
従って、図示するように第1層コイル60を構成するコイル61の空芯部61bと、第2層コイル70のコイル71とコイル76との円周方向の間隙S2は、固定子回転中心Pからの延長線上に位置する。他の第1層コイル60と第2層コイル70も同様な関係にある。例えば、第2層コイル70のコイル76の空芯部76bと、第1層コイル60のコイル61とコイル66との円周方向の間隙S1は固定子回転中心Pの延長線上に位置し、第2層コイル70のコイル71の空芯部71bと、第1層コイル60のコイル61とコイル62との円周方向の間隙S1は固定子回転中心Pからの延長線上に位置する。
【0047】
なお、図3及び図4に示したように、各コイルにはコイル線の巻回開始端末と巻回終了端末が延在されている。図5に示すように、第1層コイル60のコイル61の空芯部61bにはコイル線端末部61cが配置され、第2層コイル70のコイル71とコイル76との円周方向の間隙S2にはコイル71のコイル線端末部71dが配置されている。
【0048】
他の第1層コイル60と第2層コイル70の各コイル線端末部も同様に配置されている。例えば、第2層コイル70のコイル76の空芯部76bにはコイル線端末部76cが配置され、第1層コイル60のコイル61とコイル66との円周方向の間隙S1にはコイル61のコイル線端末部61dが配置されている。同様に、第2層コイル70のコイル71の空芯部71bにはコイル線端末部71cが配置され、第1層コイル60のコイル61とコイル62との円周方向の間隙S1にはコイル62のコイル線端末部62dが配置されている。
【0049】
上述したように構成される第1層コイル60は、各個片のコイル61〜66がコイル線端末部で電気的に並列接続され、第2層コイル70も各個片のコイル71〜76がコイル線端末部で電気的に並列接続される。
【0050】
なお、第1層コイル60の各個片のコイルと、第2層コイル70の各個片のコイルとは、回転子20からの半径方向の距離が異なることから、各々の回転子20に対するコイルの起磁力を合わせるために、コイル線の断面積(直径)及び巻数を設定する。
【0051】
本実施形態の1例では、第1層コイル60及び第2層コイル70の各個片コイルの空芯部の円周方向の幅を3mm、各個片コイル間の円周方向の間隙を0.5mm〜1.0mm、第1層コイル60とバックヨーク40との半径方向の間隙を150μm、第1層コイル60と第2層コイル70との半径方向の間隙を50μm〜70μmとしている。これらの間隙及び空間には、軟磁性粉と樹脂との混合材80が充填されている。なお、第2層コイル70の内周面に設けられる軟磁性粉と樹脂の混合材80の層厚みは50μm〜70μmとした。
【0052】
続いて、軟磁性粉と樹脂の混合材80について説明する。まず、軟磁性粉の材質について説明する。軟磁性粉の材質は、磁束密度が1.8T(T:テスラ)以上のFe−3.5%Si系材料であって、具体的な例としては、例えばFeSiBPCu組織の微結晶処理をした粉末、水アトマイズ法によって形成されるFeSiBPCu系のアモルファス粉末等を用いる。また、バインダーとしての樹脂は、耐熱性及びモールド成形性に優れたエポキシ系樹脂を用いる。
【0053】
また、軟磁性粉の粒度分布は20μm〜100μmの範囲とし、平均粒径が50μmであること、がより好ましい。回転子20からバックヨーク40に向かう磁束数を、前述した第1層コイル60及び第2層コイル70間の間隙が空隙または樹脂のみの場合に比べ多くし、ギャップ磁束密度を高くするという意味では、軟磁性粉の粒径は大きいほどよいと考えられるが、軟磁性粉の充填性を考慮すると粒度分布は20μm〜100μmの範囲がよく、平均粒径は50μm程度とすることがより好ましい。
【0054】
さらに、軟磁性粉の表面は酸化膜等の絶縁皮膜が形成されている。この絶縁皮膜は、格別に絶縁層形成工程や装置を用いることなく、軟磁性粉の表面が空気中の水分によって形成される酸化膜や、後述するインサートモールド工程において加熱されることによって形成される酸化膜でよい。
【0055】
なお、電動機10の性能において、コギングトルクの低減は重要なファクターの一つである。そして、コギングトルクは、磁路の比透磁率μに影響される。このことについて説明する。
図6は、コギングトルクと比透磁率の関係を表すグラフである。横軸に比透磁率μ、縦軸に電動機10のコギングトルク(Nm)を表している。ここで、コギングトルクは0.04(Nm)以下に抑制することが好ましく、図6に示すように、コギングトルクを0.04(Nm)以下にするためには比透磁率μは100以上必要であることが分かる。
【0056】
さらに、軟磁性粉と樹脂との混合材80の比透磁率μは、軟磁性粉の混合比に影響される。このことについて図7を参照して説明する。
図7は、軟磁性粉混合比と比透磁率μの関係を表すグラフである。横軸に混合材の全重量に対する軟磁性粉の重量比(wt%)、縦軸に比透磁率μを表している。なお、軟磁性粉の材質として、アモルファス粉(水アトマイズ法によって形成されたFeSiBPCu系アモルファス粉)と、Fe−3.5%Si粉(FeSiBPCu組織の微結晶処理をした粉末)とを、比較している。
【0057】
図7に示すように、比透磁率μが100以上となる混合比(重量比wt%)は、アモルファス粉で95%以上、Fe−3.5%Si粉で90%以上が必要となる。しかし、軟磁性粉と樹脂との混合材80を用いてコイルユニット50をインサートモールドする場合、混合材の流動性、充填性を確保するためには、アモルファス粉で95%±3%程度、Fe−3.5%Si粉で90%±3%程度の重量比に抑えることが望ましい。
(電動機の製造方法)
【0058】
次に、図1、図2を参照して電動機10の製造方法について説明する。コイルユニット50は、コイルユニット50の半径方向に第1層コイル60と第2層コイル70の2層構造を有する。外周側の第1層コイル60は、扁平に巻回された空芯の個片のコイル61〜66の一つ一つを円周方向に所与の間隙を有してモールド型内に整列配置し、内周側の前記第2層コイル70は、第1層コイル60と同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル71〜76の一つ一つを円周方向に所与の間隙を有して第1層コイル60とは1/2ピッチ位相をずらしてモールド型内に整列配置した後、第1層コイル60と第2層コイル70とを、軟磁性粉と樹脂との混合材80によってインサートモールドして一体化する。
なお、コイルユニット50の詳細な製造方法は、図8を参照して後述する。
【0059】
電動機10は、界磁用磁石からなる回転子20を半径方向に所与の空隙を有して円筒形状のコイルユニット50に内挿し、さらに、円筒形状のバックヨーク40にコイルユニット50を内挿して組み立てる。回転子20は、シャフト30の両端部を支持枠(図示せず)によって軸支する。支持枠を、図示左側を第1支持枠、図示右側を第2支持枠とすると、第1支持枠に回転子20のシャフト30を挿通した後、コイルユニット50、バックヨーク40の順に組み込み、第2支持枠をシャフト30を挿通させつつ第1支持枠に装着する。
【0060】
第1支持枠及び第2支持枠には、コイルユニット50、バックヨーク40の半径方向及びアキシャル方向の位置を規制するための案内部が突出されているため、回転子20、コイルユニット50、バックヨーク40は、それぞれの所与の相対位置で規制される。
【0061】
このような製造方法によれば、軟磁性粉と樹脂の混合材80によって第1層コイル60及び第2層コイル80それぞれの空芯部を含む周囲を充填することによって、回転子20からバックヨーク40に向かう磁束数は、これらの間隙が空隙(空気層)または樹脂のみの場合に比べて非常に多くなる。このため、ギャップ磁束密度が高くなり、高トルク・低損失の電動機10を実現できる。
【0062】
また、軟磁性粉は、熱伝導率が空気や樹脂と比べて高いことから、銅損によって発熱したコイルの冷却性能が向上するという効果がある。
また、コイルユニット50の内周面にも軟磁性粉成形層を形成することによって、コギングトルクを下げることができる。
さらに、本適用例のように、個片の各コイルを軟磁性粉と樹脂の混合材によってインサートモールドで一体化する。従って、前述した従来技術のようにティースにコイル線を巻回する構造に対し、小径のコイルユニット構造にも適用でき、回転子とコイルユニット、及びバックヨークとコイルユニット間の半径方向とアキシャル方向の位置精度を高めることができる。このことからも、高トルク・低損失の電動機を実現できる。
続いて、コイルユニット50の製造方法について説明する。
(コイルユニットの製造方法)
【0063】
図8は、コイルユニット50の製造方法の1例を示し、(a)は、個片の各コイルをモールド型にセットした状態を軸方向に視認した正面図、(b)は個片のコイルを軟磁性粉と樹脂との混合材80でインサートモールドした状態の一部を示す断面図、(c)はコイル線端末部を示す部分断面図、(d)は、モールドゲートの位置の1例を示す側面図の一部である。なお、(d)は、(b)のC−C面方向から視認した状態を展開図にして表している。
【0064】
まず、モールド型の構造について説明する。モールド型100は、コイルユニット50の円筒形状の内周を形成する中型101と、外周を形成する外型102と、各個片のコイルの位置を規制する円筒形状の仕切型103と、コイルユニット50の一方の端面を形成する上型104と、から構成されている。仕切型103は、本実施例では中型101に植え込まれている。
【0065】
仕切型103は、第1層コイル60及び第2層コイル70の半径方向の位置を規制する仕切壁103a、103b、103c(図8(b)参照)を有し、さらに、円周方向の位置を規制するための凹形状の案内部(図8(d)参照)が設けられている。この案内部の形状について、コイル76を例示して説明する。図8(d)に示すように、案内部は、仕切壁103a,103b,103cの上面から掘り下げられ、斜面103d,103e、底部103fを有して形成されている。これら斜面103d,103eによってコイル61の円周方向と高さ方向の位置が規制される。底部103fとコイル61との間には空隙が設けられている。
【0066】
上型104にも、仕切型103に対してほぼ対称となる凹形状の案内部が形成されている。上型104には、第1層コイル60及び第2層コイル70の半径方向の位置を規制する仕切壁104a,104b,104cが形成されている(図8(b)参照)。この案内部形状について、コイル76を例示して説明する。図8(d)に示すように、案内部は、仕切壁104a,104b,104cの上面から掘り下げられ、斜面104d,104e、底部104fを有して形成されている。これら斜面104d,104eによってコイル61の円周方向と高さ方向の位置が規制される。底部104fとコイル61とは空隙が設けられている。なお、斜面104d,104eと、コイル61の外周とは、若干の空隙が設けられるように寸法設定される。
【0067】
また、上型104には、図8(c)に示すように、各個片のコイルのコイル線端末部を挿通するコイル線挿通孔104gが開口されている。コイル線挿通孔104gは、コイル61のコイル線端末部61dと、コイル76のコイル線端末部76cとを挿通するというように円周方向に6箇所設けられる。
図示は省略するが、モールド型100には、仕切型103の上型104とは反対側に、コイルユニット50をモールド型100から取り外すための、押し上げ軸が設けられている。
【0068】
なお、モールド型の構造としては、図8に示した構造は一例であって、他の構造も可能である。例えば、仕切型103の斜面103d,103e及び上型104の斜面104d,104eの形状は、図示したように直線で形成せずに、個片のコイルの外形に合わせた円弧形状にしてもよい。
【0069】
また、モールド型100を、中型101と外型102と仕切型103とを一体とし、上型104との2体構造としてもよく、外型102を半径方向に2分割した割型構造としてもよい。
【0070】
次に、コイルユニット50の製造方法について説明する。まず、図8(a)に示すように、第1層コイル60の個片のコイル61〜66をモールド型100にセットし、円周方向に整列配置する。続いて、第1層コイル60の内周側に、第2層コイル70の個片のコイル71〜76をモールド型100にセットし、円周方向に並列配置する。
【0071】
この際、第1層コイル60及び第2層コイル70の間隙は、仕切壁103bの厚み分、第1層コイル60とコイルユニット50の最外周の間隙は仕切壁103cの厚み分、第2層コイル70とコイルユニット50の最内周の間隙は仕切壁103aの厚み分となる。
なお、第1層コイル60と第2層コイル70のセット順番は特に限定されない。
【0072】
そして、上型104で中型101と外型102とで構成される開口部を封鎖する。このとき、各個片のコイル61〜66,71〜76のコイル線端末部を、所定の巻回開始端末部と巻回終了端末部の2本組み合わせて上型104のコイル線挿通孔104gに挿通しておく。このような工程を経て、軟磁性粉と樹脂の混合材80を樹脂所定の温度で溶融し、第1層コイル60と第2層コイル70とをインサートモールドする。
【0073】
そして、インサートモールド終了後、所定の温度に冷却した後に上型104を開放して、コイルユニット50をモールド型から取り出す。そして、第1層コイル60及び第2層コイル70のそれぞれ所定のコイル線端末部どうしを接続する。
【0074】
なお、コイル線挿通孔104gに挿通する2本のコイル線端末部を予め、細管等に挿通しておいてもよい。また、接着剤等によって、各個片のコイル線の端末部をコイル本体部に仮固定しておけば、作業性が向上する。
【0075】
インサートモールド工程の際、第1層コイル60及び第2層コイル70の間隙、第1層コイル60と外型102との間隙、第2層コイル70とコイルユニット50の最内周の間隙は概ね50〜70μm、各個片コイル間の円周方向の間隙は0.5mm〜1.0mm、各個片のコイルの空芯部(コイル61の場合には空芯部61b)の円周方向幅は3mmである。従って、50〜70μmの狭い間隙領域には粒径の小さい軟磁性粉が充填され、150μm以上の広い間隙領域には粒径が大きい軟磁性粉が充填される。
【0076】
なお、インサートモールドの際に湯口としてのゲート位置105は、図8(d)に示すように、第2層コイル70の個片のコイル間(図示では、コイル71とコイル76の間)に設ければよく、ゲート位置105の数は適切な複数個所に配置させることができる。例えば、個片の各コイルの空芯部の幾つかに設けることができる。
【0077】
なお、以上の説明では、コイルユニット50を単独に形成した例示したが、コイルユニット50とバックヨーク40とを、軟磁性粉と樹脂の混合材80でインサートモールドして一体化することも可能である。例えば、図示は省略するが、外型102内周と第1層コイル60との間に、バックヨーク40を挿入し、インサートモールドすることでコイルユニット50とバックヨーク40とを一体化することが可能である。このような構成では、バックヨーク40と第1層コイル60との間隙は150μm程度とする。
【0078】
このような製造方法では、第1層コイル60のうち、バックヨーク40との交差範囲以外の外型102の間隙にも軟磁性粉と樹脂の混合材80が付着することになるが、電動機特性には影響しない。
【0079】
以上説明した電動機10によれば、軟磁性粉と樹脂との混合材80によって第1層コイル60及び第2層コイル70の空芯部を含む周囲を覆うことによって、回転子20からバックヨーク40に向かう磁束数は、これら間隙が空隙(空気層)または樹脂のみの場合に比べて非常に多くなる。このため、ギャップ磁束密度が高くなり高トルク、低損失の電動機を実現できる。
【0080】
また、軟磁性粉は、熱伝導率が空気や樹脂と比べて高いことから、銅損によって発熱したコイルの冷却性能が向上するという効果がある。
【0081】
また、コイルユニット50の内周面にも軟磁性粉の層を構成することによって、コギングトルクを下げることができる。
さらに、本適用例のように、個片の各コイルを半径方向の2層構造で周回配置させることによって、前述した従来技術のようにティースを構成できないような小径のコイルユニット構造にも適用できる。
【0082】
また、本実施形態では、軟磁性粉と樹脂の混合材80の比透磁率μを100以上にしている。このようにすれば、コギングトルクを0.4Nm以下に低減することができ、電動機特性を向上させることができる。
【0083】
なお、比透磁率μを100以上にするための軟磁性粉の材質は、磁束密度が1.8T(T:テスラ)以上のFeSiBPCu組織の微結晶処理をした粉末、FeSiBPCu系のアモルファス粉末等のFe−3.5%Si系材料を用いている。さらに、軟磁性粉の混合比が全重量に対する重量比で90%ないし95%としている。このようにすれば、比透磁率μを100以上にすることができる。
従って、このような軟磁性粉を用いることによって、充填された間隙や空間のギャップ磁束密度が高くなり、高トルク、低損失の電動機を実現できる。
【0084】
さらに、本実施形態では、軟磁性粉の粒度分布を20μm〜100μmの範囲、且つ、平均粒径を50μmとしている。軟磁性粉と樹脂の混合材80をモールドする際、軟磁性粉の粒径が20μm以下の場合は充填しやすいが混合比を高くしにくくなり、50μm以上の場合は、粒径が大きくなるに従い徐々に充填しにくくなる傾向がある。このことから、軟磁性粉の粒径を20μm〜100μm、且つ平均粒径を50μm程度にすれば、充填性を確保しつつ混合比を高くすることができる。
【0085】
また、第1層コイル60と第2層コイル70との半径方向の間隙は概ね70μmであって、隣り合う第1層コイル60の各コイル間の間隙、及び隣り合う第2層コイル70の各コイル間の間隙は0.5mm〜1.0mm程度、それぞれのコイルの空芯部は3mm程度の空間があるため、粒径が20μm〜100μmの範囲で、狭い間隙部には粒径が小さい軟磁性粉を、広い間隙・空間には粒径が大きい軟磁性粉を充填させることが可能となる。
【0086】
また、軟磁性粉の表面には、絶縁皮膜を形成することによって、軟磁性粉間の電気抵抗を大きくし、渦電流損を低減できるという効果を奏する。
【0087】
また、前述した電動機10に用いられるコイルユニット50の製造方法によれば、モールド型100に第1層コイル60を周回するようにセットし、続いて、すでにセットした第1層コイル60の内周側に第2層コイル70を周回するようにセットした後、軟磁性粉と樹脂との混合材80によってインサートモールドすれば、2層構造のコイルユニットを容易に製造することができる。なお、第1層コイル60と第2層コイル70を配置する順番は入れ替えてもよい。
【0088】
モールド型100の仕切型103には、第1層コイル60の個片のコイル61〜66の一つ一つの半径方向位置と周方向位置とを規制する案内部と、第2層コイル70の半径方向位置と円周方向位置とを規制する案内部と、が設けられている。このようにすれば、コイル一つ一つの円周方向位置と、半径方向位置を正確に規制することができる。このことによって、円周方向のコイル間距離、回転子20やバックヨーク40とコイルユニット50との半径方向の距離を正確に規制できるので、磁気特性のばらつきが小さい電動機を提供できる。
【0089】
また、第1層コイル60の外周に対して半径方向に所与の間隙を有して、バックヨーク40をさらに外挿するようモールド型100にセットする方法によれば、コイルユニット50とバックヨーク40とを別の固定工程を経ずに一体化できる。そのことによって、バックヨーク40とコイルユニット50との半径方向の位置、アキシャル方向位置を正確に管理できる他、第1層コイル60とバックヨーク40との半径方向の間隙も、別々に組み合わせる場合に比べて、適切な寸法に固定化することが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
10…電動機、20…回転子、40…バックヨーク、50…コイルユニット、60…第1層コイル、61〜66…個片のコイル、70…第2層コイル、71〜76…個片のコイル、80…軟磁性粉と樹脂との混合材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
前記回転子を空隙を有して内挿する円筒形状のコイルユニットと、
前記コイルユニットを内挿する円筒形状のバックヨークと、
を有し、
前記コイルユニットは、前記コイルユニットの半径方向に第1層コイルと第2層コイルの2層構造を有し、
外周側の前記第1層コイルは、複数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つが円周方向に所与の間隙を有して整列配置されており、
内周側の前記第2層コイルは、前記第1層コイルと同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つが円周方向に所与の間隙を有して前記第1層コイルとは1/2ピッチ位相をずらして整列配置されており、
前記第1層コイルと前記第2層コイルとが、軟磁性粉と樹脂との混合材によってインサートモールドされている、
ことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記軟磁性粉と樹脂の混合材の比透磁率μが、μ≧100であること、
を特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記軟磁性粉の粒度分布が20μm〜100μmの範囲であって、平均粒径が50μmであること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記軟磁性粉の材質は、磁束密度が1.8T(T:テスラ)以上のFe−Si系材料であること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項5】
前記軟磁性粉が、前記軟磁性粉と樹脂との混合材の全重量に対する重量比で90%ないし95%含まれていること、
を特徴とする請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
前記軟磁性粉の表面に絶縁皮膜が形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6に記載の電動機の製造方法であって、
回転子を半径方向に所与の空隙を有して円筒形状のコイルユニットに内挿する工程と、
円筒形状のバックヨークに前記コイルユニットを内挿する工程と、を有し、
前記コイルユニットは、前記コイルユニットの半径方向に第1層コイルと第2層コイルの2層構造を有し、
外周側の前記第1層コイルは、複数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有して整列配置する工程と、
内周側の前記第2層コイルは、前記第1層コイルと同数の扁平に巻回された空芯の個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有して前記第1層コイルとは1/2ピッチ位相をずらして整列配置する工程と、
前記第1層コイルと前記第2層コイルとを、軟磁性粉と樹脂との混合材によってインサートモールドする工程と、
を含むことを特徴とする電動機の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6に記載の電動機に用いられるコイルユニットの製造方法であって、
扁平に巻回された第1層コイルの個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有してモールド型内に整列配置する工程と、
扁平に巻回された第2層コイルの個片のコイル一つ一つを円周方向に所与の間隙を有し、且つ前記第1層コイルの内周側に整列配置する工程と、
軟磁性粉と樹脂との混合材によって、前記第1層コイルと前記第2層コイルとを、インサートモールドする工程と、
を含むことを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項9】
前記第1層コイル及び第2層コイルの個片のコイル一つ一つの半径方向位置と周方向位置とを規制する案内部が、前記モールド型に設けられていること、
を特徴とする請求項8に記載のコイルユニットの製造方法。
【請求項10】
前記第1層コイルの外周に対して半径方向に所与の間隙を有して、バックヨークをさらに外挿するよう前記モールド型内に配置する工程を有すること、
を特徴とする請求項8に記載のコイルユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−74728(P2013−74728A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212176(P2011−212176)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】