説明

電動機の内外接続導体配置構造

【課題】電動機を車両に搭載した状態のままでも車両下方側から内外接続導体にアクセス可能として、組付け性やメンテナンス性を向上させると共に、上方からの外力に対して内外接続導体を保護することができる電動機の内外接続導体配置構造を提供する。
【解決手段】電動機2は、ステータ14、ロータ15、ステータ14及びロータ15を収容するケース11、及びバスバー130と導電ケーブル103とを電気的に接続するコネクタ101を備える。電動機2は、マウント部材13a、13bによって車両3のサブフレーム13に支持され、コネクタ101は、マウント部材13a、13bが固定されるケース11のボス部11aよりも下方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の内外接続導体配置構造に係り、特に、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両に搭載される電動機において、電動機内外の電気導体端部を相互に接続する電動機の内外接続導体配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両は、車両駆動用の電動機を備えており、この電動機に駆動装置などからの電力を供給する導電ケーブルが、筐体を貫通して配索されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用モータの配線接続装置では、モータケースの上部のケース壁を貫通する通孔に電気絶縁性のブッシュを嵌挿し、このブッシュに導電性のアダプタ端子を嵌挿して内外接続導体を構成し、モータケース内外の導電ケーブルの端部同士を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−98494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の配線接続装置では、内外接続導体がモータの上部に配置されているので、モータの上方から異物が落下すると、該異物によって内外接続導体が損傷を受けるおそれがあった。また、モータを車両の床下に配置する場合には、モータの上部に配置される内外接続導体へのアクセスが困難となり、メンテナンス上の観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機を車両に搭載した状態のままでも車両下方側から内外接続導体にアクセス可能として、組付け性やメンテナンス性を向上させ、且つ、上方からの外力に対して内外接続導体を保護することができる電動機の内外接続導体配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
固定子(例えば、後述の実施形態におけるステータ14A、14B)、及び前記固定子に対して相対回転可能に配置される回転子(例えば、後述の実施形態におけるロータ15A、15B)を有する電動機本体と、
前記電動機本体を収容する筐体(例えば、後述の実施形態におけるケース11)と、
前記筐体の内部に設けられた内部電気導体(例えば、後述の実施形態におけるバスバー130)と、前記筐体の外部に設けられた外部電気導体(例えば、後述の実施形態における導電ケーブル103A、103B)とを電気的に接続する内外接続導体(例えば、後述の実施形態におけるコネクタ101A、101B)と、
を備える電動機(例えば、後述の実施形態における電動機2A、2B)と、
前記筐体及び車両の骨格部材(例えば、後述の実施形態におけるサブフレーム13)に固定されて、前記電動機を前記骨格部材に支持する支持装置(例えば、後述の実施形態におけるマウント部材13a、13b)と、
を有する電動機の内外接続導体配置構造であって、
前記内外接続導体は、前記支持装置が固定される前記筐体の固定部(例えば、後述の実施形態におけるボス部11a)よりも下方に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記支持装置の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2の構成に加えて、
前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記骨格部材の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項の構成に加えて、
前記内外接続導体は、前記電動機の回転軸線(例えば、後述の実施形態における回転軸線x)を通る水平面よりも下方に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項の構成に加えて、
前記車両は、前後方向長さが左右方向長さよりも長く形成され、
前記内外接続導体は、前記筐体の前方側面又は後方側面のいずれか一方の側面に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5の構成に加えて、
前記内外接続導体は、前記前方側面又は前記後方側面のうち、前記車両の前後方向中央寄りの側面(例えば、後述の実施形態における前方側面11f)に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項の構成に加えて、
前記車両は、前記筐体に固定される補機(例えば、後述の実施形態におけるオイルポンプ70)を更に備え、
前記内外接続導体は、前記補機及び前記支持装置の近傍に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7の構成に加えて、
前記補機は、前記内外接続導体の鉛直方向直下を避けて配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項の構成に加えて、
前記内外接続導体の最下部(例えば、後述の実施形態における最下部105a)は、前記筐体の最下部(例えば、後述の実施形態における最下部113a)より高い位置に配置されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか1項の構成に加えて、
前記電動機は、前記車両のフロアパネル(例えば、後述の実施形態におけるフロアパネル171)よりも下方に配置されることを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか1項の構成に加えて、
前記内外接続導体が配置される位置よりも下方の前記筐体の下面には、前記筐体の内部と外部とを連通させる開口部(例えば、後述の実施形態における開口部109)を備え、
前記開口部は、前記内外接続導体と、前記筐体の内部電気導体とを接続する接続部(例えば、後述の実施形態における接続部132)が視認可能となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか1項の構成に加えて、
前記内外接続導体は、導体本体(例えば、後述の実施形態における導体本体106)と、前記筐体と別体に形成されて前記導体本体を保持する導体保持部(例えば、後述の実施形態における導体保持部107)と、を有し、
前記導体保持部を前記筐体に固定することによって、前記内外接続導体が前記電動機に固定されることを特徴とする。
【0019】
請求項13に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記電動機は、前記車両の左右方向左側に配置されて前記車両の左車輪(例えば、後述の実施形態における後輪LWr)を駆動する左電動機(例えば、後述の実施形態における第1電動機2A)、及び前記車両の左右方向右側に配置されて前記車両の右車輪(例えば、後述の実施形態における後輪RWr)を駆動する右電動機(例えば、後述の実施形態における第2電動機2B)を備え、
前記筐体は、前記左電動機の電動機本体と、前記右電動機の電動機本体とを収容し、
前記支持装置は、前記筐体の左側を支持する左側支持装置(例えば、後述の実施形態におけるマウント部材13a)、及び前記筐体の右側を支持する右側支持装置(例えば、後述の実施形態におけるマウント部材13b)を備え、前記左側支持装置及び前記右側支持装置は、前記筐体の前記前方側面又は前記後方側面のいずれか一方の側面(例えば、後述の実施形態における前方側面11f)に固定され、
前記左電動機の前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記左側支持装置の鉛直方向直下に配置され、前記右電動機の前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記右側支持装置の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする。
【0020】
請求項14に係る発明は、請求項13の構成に加えて、
前記車両の補機は、前記左電動機の前記内外接続導体と、前記右電動機の前記内外接続導体との間に配置され、前記側面に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、内外接続導体が支持装置よりも低い位置に配置されるので、電動機を支持装置によって骨格部材に固定した状態のまま、車両の下方側から内外接続導体にアクセスすることができ、内外接続導体の組付け、メンテナンスなどが容易となり作業性が向上する。
【0022】
請求項2の発明によれば、支持装置によって、上方から内外接続導体に加わる衝撃を抑制することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、骨格部材によって、上方からの内外接続導体に加わる衝撃をさらに抑制することができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、内外接続導体の配置箇所が、電動機の下半分側となり、電動機の下方から内外接続導体に容易にアクセスすることができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、後輪駆動装置を車両に搭載したときに、前後方向には、左右方向や上下方向と比較して空間に余裕ができやすく、内外接続導体を無理なく配置することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、衝突などにより車両に対し前後方向から外力が入力したとき、内外接続導体の損傷をより軽減することができる。
【0027】
請求項7の発明によれば、支持装置と補機とによって内外接続導体へ加わる外力を抑制し、内外接続導体を保護することができる。
【0028】
請求項8の発明によれば、電動機の下方側から内外接続導体へアクセスする際、補機が障害とはならず、内外接続導体の接続作業性を阻害することがない。
【0029】
請求項9の発明によれば、下方から内外接続導体に外力が加わることを低減することができる。
【0030】
請求項10の発明によれば、電動機を床下に配置する場合でも、内外接続導体に容易にアクセス可能となる。また、床上の乗員居住スペース・積載スペースが拡大すると共に、電動機と車輪との距離を縮めることが可能となる。
【0031】
請求項11の発明によれば、電動機の下方側から、内外接続導体と内部電気導体との接続が可能となる。
【0032】
請求項12の発明によれば、導体本体を筐体に挿通する作業を省略して内外接続導体を電動機に固定することができる。
【0033】
請求項13の発明によれば、電動機の上下方向及び左右方向の長大化を抑制してスペースを効率的に活用することができる。
【0034】
請求項14の発明によれば、支持装置に加えて補機によっても内外接続導体を保護することができ、更に、左右の内外接続導体間に補機を配置することで、補機を効率的に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である電動機の内外接続導体配置構造が適用されるハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】電動機を有する後輪駆動装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す後輪駆動装置の上部部分拡大断面図である。
【図4】支持装置で支持された後輪駆動装置を前方斜め下方から見た斜視図である。
【図5】電動機の筺体に取り付けられたコネクタを保護部材を外して前方から見た図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿った後輪駆動装置の断面図である。
【図7】電動機の筺体に取り付けられたコネクタ及び保護部材を示す斜視図である。
【図8】電動機の筺体に取り付けられたコネクタ及び保護部材を前方から見た図である。
【図9】電動機の筺体に取り付けられた保護部材の側面図である。
【図10】電動機の筺体に取り付けられた保護部材を後方斜め下方から見た斜視図である。
【図11】電動機の筺体に取り付けられた保護部材の下面図である。
【図12】電動機がサブフレームを介して取り付けられた状態を示す車両の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本実施形態では、本発明に係る電動機の内外接続導体配置構造が、車輪駆動用駆動源としての電動機を有する車両用駆動装置に適用されるものとして説明する。以下の説明では、車両用駆動装置を後輪駆動用として用いる場合を例に説明するが、前輪駆動用に用いてもよい。
【0037】
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5が直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される一方で、この前輪駆動装置6と別に、車両後部のフロアパネル171よりも下方に設けられた(図12参照)駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。後輪駆動装置1は、第1及び第2電動機2A、2Bを備え、第1電動機2Aの動力が左後輪LWrに伝達され、第2電動機2Bの動力が右後輪RWrに伝達される。前輪駆動装置6の電動機5と後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bは、バッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が可能となっている。図1中、符号8は車両全体を制御するための制御装置である。
【0038】
図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、図3は、図2の上部部分拡大断面図である。後輪駆動装置1の筺体であるケース11は、車幅方向(以下、車両の左右方向とも称す)略中央部に配置される中央ケース11Mと、中央ケース11Mを挟むように中央ケース11Mの左右に配置される左側方ケース11A、及び右側方ケース11Bと、から構成され、全体が略円筒状に形成される。ケース11の内部には、後輪Wr用の車軸10A、10Bと、車軸駆動用の第1及び第2電動機2A、2Bと、この電動機2A、2Bの駆動回転を減速する第1及び第2変速機としての第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bとが、同一軸線上にそれぞれ並んで配置されている。この車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを駆動制御し、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを駆動制御する。車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aと、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは、ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。
【0039】
側方ケース11A、11Bの中央ケース11M側には、それぞれ径方向内側に延びる隔壁18A、18Bが設けられ、側方ケース11A、11Bと隔壁18A、18Bとの間には、それぞれ第1及び第2電動機2A、2Bが配置される。また、中央ケース11Mと隔壁18A、18Bとに囲まれた空間には、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bが配置されている。なお、図2に示すように、本実施形態では、左側方ケース11Aと中央ケース11Mは、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aを収容する第1ケース11Lを構成し、また、右側方ケース11Bと中央ケース11Mは、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bを収容する第2ケース11Rを構成している。そして、第1ケース11Lは、第1電動機2Aと動力伝達経路の少なくとも一方の潤滑及び/又は冷却に供される液状媒体としてのオイルを貯留する左貯留部RLを有し、第2ケース11Rは、第2電動機2Bと動力伝達経路の少なくとも一方の潤滑及び/又は冷却に供されるオイルを貯留する右貯留部RRを有する。
【0040】
後輪駆動装置1には、ケース11の内部と外部を連通するブリーザ装置40が設けられ、内部の空気が過度に高温・高圧とならないように内部の空気をブリーザ室41を介して外部に逃がすように構成される。ブリーザ室41は、ケース11の鉛直方向上部に配置され、中央ケース11Mの外壁と、中央ケース11M内に左側方ケース11A側に略水平に延設された第1円筒壁43と、右側方ケース11B側に略水平に延設された第2円筒壁44と、第1及び第2円筒壁43、44の内側端部同士をつなぐ左右分割壁45と、第1円筒壁43の左側方ケース11A側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Aと、第2円筒壁44の右側方ケース11B側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Bと、により形成された空間により構成される。
【0041】
ブリーザ室41の下面を形成する第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45は、第1円筒壁43が第2円筒壁44より径方向内側に位置し、左右分割壁45が、第2円筒壁44の内側端部から縮径しつつ屈曲しながら第1円筒壁43の内側端部まで延設され、さらに径方向内側に延設されて略水平に延設された第3円筒壁46に達する。第3円筒壁46は、第1円筒壁43と第2円筒壁44の両外側端部より内側に且つその略中央に位置している。
【0042】
中央ケース11Mには、バッフルプレート47A、47Bが、第1円筒壁43と中央ケース11Mの外壁との間の空間又は第2円筒壁44と中央ケース11Mの外壁との間の空間を遊星歯車式減速機12A又は遊星歯車式減速機12Bからそれぞれ区画するように固定されている。
【0043】
また、中央ケース11Mには、ブリーザ室41と外部とを連通する外部連通路49がブリーザ室41の鉛直方向上面に接続される。外部連通路49のブリーザ室側端部49aは、鉛直方向下方を指向して配置されている。従って、オイルが外部連通路49を通って外部に排出されるのが抑制される。
【0044】
第1及び第2電動機2A、2Bは、ステータ14A、14Bがそれぞれ側方ケース11A、11Bに固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bがステータ14A、14Bに対して相対回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸上に相対回転可能となるように側方ケース11A、11Bの端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転位置情報を電動機2A、2Bの制御コントローラ(図示せず)にフィードバックするためのレゾルバ20A、20Bが設けられている。
【0045】
また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して車軸10A、10Bに出力されるようになっている。
【0046】
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはニードルベアリング31A、31Bを介してプラネタリキャリア23A、23Bのピニオンシャフト32A、32Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸受33A、33Bを介して隔壁18A、18Bに支持されている。
【0047】
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径でケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bとを備えて構成されている。
【0048】
ギヤ部28A、28Bは、中央ケース11Mの左右分割壁45の内径側端部に形成された第3円筒壁46を挟んで軸方向に対向している。小径部29A、29Bは、その外周面がそれぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように互いに連結されて構成されている。
【0049】
遊星歯車式減速機12B側であって、ケース11を構成する中央ケース11Mの第2円筒壁44とリングギヤ24Bのギヤ部28Bとの間には、リングギヤ24Bに対する制動手段を構成する油圧ブレーキ60が第1ピニオン26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27Bと軸方向でオーバーラップするように配置されている。油圧ブレーキ60は、第2円筒壁44の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Bのギヤ部28Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35,36が環状のピストン37によって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37は、中央ケース11Mの左右分割壁45と第3円筒壁46間に形成された環状のシリンダ室に進退自在に収容されており、さらに第3円筒壁46の外周面に設けられた受け座38に支持される弾性部材39によって、常時、固定プレート35と回転プレート36とを解放する方向に付勢される。
【0050】
また、さらに詳細には、左右分割壁45とピストン37の間はオイルが直接導入される作動室Sとされ、作動室Sに導入されるオイルの圧力が弾性部材39の付勢力に勝ると、ピストン37が前進(右動)し、固定プレート35と回転プレート36とが相互に押し付けられて締結することとなる。また、弾性部材39の付勢力が作動室Sに導入されるオイルの圧力に勝ると、ピストン37が後進(左動)し、固定プレート35と回転プレート36とが離間して解放することとなる。なお、油圧ブレーキ60は後述のオイルポンプ70(図4参照)に接続されている。
【0051】
この油圧ブレーキ60の場合、固定プレート35がケース11を構成する中央ケース11Mの左右分割壁45から伸びる第2円筒壁44に支持される一方で、回転プレート36がリングギヤ24Bのギヤ部28Bに支持されているため、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦締結によってリングギヤ24Bに制動力が作用し固定される。その状態からピストン37による締結が解放されると、リングギヤ24Bの自由な回転が許容される。なお、上述したように、リングギヤ24A、24Bは互いに連結されているため、油圧ブレーキ60が締結することによりリングギヤ24Aにも制動力が作用し固定され、油圧ブレーキ60が解放することによりリングギヤ24Aも自由な回転が許容される。
【0052】
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、第3円筒壁46により位置決めされるとともに、回り止めされている。
【0053】
一方向クラッチ50は、車両3が電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、車輪Wr側の順方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに車輪Wr側の逆方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
【0054】
また、中央ケース11Mの前方側面11fには、図4に示すように、補機であるオイルポンプ70が固定されている。オイルポンプ70は、例えば、トロコイドポンプであり、位置センサレス・ブラシレス直流モータなどの不図示の電動機によって駆動されて左右貯留部RL、RRに貯留するオイルを吸引し、ケース11及び車軸10A、10Bなどの各機構部品に設けられた潤滑流路80A、80Bを介して各部を潤滑及び冷却する。
【0055】
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、電動機2A、2Bと車輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60とが並列に設けられている。なお、油圧ブレーキ60は、車両の走行状態や一方向クラッチ50の係合・非係合状態に応じて、オイルポンプ70から供給されるオイルの圧力により、解放状態、弱締結状態、締結状態に制御される。例えば、車両3が電動機2A、2Bの力行駆動により前進する時(低車速時、中車速時)は、一方向クラッチ50が締結するため動力伝達可能な状態となるが油圧ブレーキ60が弱締結状態に制御されることで、電動機2A、2B側からの順方向の回転動力の入力が一時的に低下して一方向クラッチ50が非係合状態となった場合にも、電動機2A、2B側と車輪Wr側とで動力伝達不能になることが抑制される。また、車両3が内燃機関4及び/又は電動機5の力行駆動により前進する時(高車速時)は、一方向クラッチ50が非係合となりさらに油圧ブレーキ60が解放状態に制御されることで、電動機2A、2Bの過回転が防止される。一方、車両3の後進時や回生時には、一方向クラッチ50が非係合となるため油圧ブレーキ60が締結状態に制御されることで、電動機2A、2B側からの逆方向の回転動力が車輪Wr側に出力され、又は車輪Wr側の順方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力される。
【0056】
図4及び図12に示すように、後輪駆動装置1は、マウント部材(支持装置)13a、13bによってサブフレーム(骨格部材)13に支持され、該サブフレーム13を介して車両3のフロアパネル171の下方に固定される。また、後輪駆動装置1は、マウント部材13a、13bを、ケース11(側方ケース11A、11B)の前方側面11fから前方に突出形成されたボス部(固定部)11a(図6参照)に固定することで、車両3に支持されている。
【0057】
また、左側方ケース11A及び右側方ケース11Bの前方側面11fには、ステータ14に巻回されたステータコイル102の3相線が接続される内部電気導体であるバスバー130と、不図示の外部機器から延設される外部電気導体である導電ケーブル103A、103Bと、を電気的に接続する内外接続導体である第1及び第2コネクタ101A、101Bがそれぞれ設けられている。
【0058】
第1及び第2コネクタ101A、101Bは、マウント部材13a、13bが固定されるボス部11aの下方近傍に配置され、特に、車軸10A、10Bの回転軸線xを通る水平面Pよりも下方に配置されている。さらに、第1及び第2コネクタ101A、101Bの少なくとも一部は、マウント部材13a、13bの鉛直方向直下、即ち、マウント部材13a、13bの鉛直投影内に配置され、また、サブフレーム13の鉛直方向直下、即ち、サブフレーム13の鉛直投影内に配置されている。このように、マウント部材13a、13bやサブフレーム13が第1及び第2コネクタ101A、101Bの上方を覆って配置されているので、上方からの落下物に対して第1及び第2コネクタ101A、101Bが保護される。
【0059】
また、第1コネクタ101Aと第2コネクタ101Bは、ケース11の前方側面11fの左右方向中央に位置するオイルポンプ70を挟むように、オイルポンプ70の左右方向近傍に配置されている。従って、オイルポンプ70は、第1コネクタ101Aと第2コネクタ101Bにアクセスする際の障害とはならないように配置されている。
【0060】
また、コネクタ101A、101B及び導電ケーブル103A、103Bの鉛直方向下方には、コネクタ101A、101B及び導電ケーブル103A、103Bを保護する第1及び第2保護部材140A、140Bが支持部材160A、160Bによってケース11に固定されている。なお、後輪駆動装置1は、車両3の左右方向中央に対して左右対称に形成されているので、以下の説明においては、右側(図4において左側)に位置する第2コネクタ101B、及び第2保護部材140Bの構造について説明する。
【0061】
図6を参照して、第2コネクタ101Bは、ケース11に固定される内側コネクタ104と、導電ケーブル103Bの先端部に設けられる外側コネクタ105と、を有する。そして、内側及び外側コネクタ104、105が互いに接続されることで、ステータ14Bに巻回されたステータコイル102の各相の配線が接続されるバスバー130と、導電ケーブル103Bとが、電気的に接続される。
【0062】
内側コネクタ104は、U相、V相、W相の3本の導体本体106と、各導体本体106を保持する導体保持部107とを有し、導体保持部107をケース11に2箇所のボルト108で締結固定することでケース11に取り付けられる(図5参照)。ケース11には、内側コネクタ104とステータ14との間に、U相、V相、W相の3本のバスバー130が配設された端子台131が設けられている。各バスバー130の一端には、ステータコイル102から延設された各相の配線が接続され、各バスバー130の他端130aには、内側コネクタ104の各相の導体本体106が、それぞれ接続されている(図6には1相のみを示す)。
【0063】
内側コネクタ104の導体本体106が配置されるケース11の下面には、ケース11の内部と外部とを連通する開口部109が形成されている。したがって、内側コネクタ104がケース11に取り付けられると、導体本体106がバスバー130の他端130aと上下方向においてオーバーラップして配置される。そして、各相のバスバー130の他端130aと導体本体106との接続部132を視認しながら、下方から開口部109に不図示の締結工具を挿入し、ボルト110と導体本体106に固定されたナット111とを締結して接続する。通常、開口部109は、ボルト113でケース11に固定されたカバー板112により塞がれている。
【0064】
そして、外側コネクタ105は、内側コネクタ104の導体保持部107に嵌めこまれた後、ボルト115によって固定される。また、第2コネクタ101Bの最下部、本実施形態では、外側コネクタ105の最下部105aは、ケース11の最下部113a、即ち、カバー板112を固定するボルト113の頭部より高さhだけ高い位置となるように配置されている(図6参照)。
【0065】
第2保護部材140Bは、金属板などで断面略コの字型に形成されており、第2コネクタ101B及び導電ケーブル103Bの下方に配置される底部142と、該底部142の車両の左右方向端縁から鉛直方向上方に向かって起立される起立部143と、を有する。これにより、第2コネクタ101B及び導電ケーブル103Bは、これらの下面側が底部142で覆われ、これらの両側面が起立部143で覆われており、下方側から第2コネクタ101B及び導電ケーブル103Bに加わる外力が抑制される。
【0066】
第2保護部材140Bは、ケース11から離間する方向、即ち、前方に延出する。底部142には、底部142からケース11に対する遠位側の鉛直方向位置が次第に高くなるように傾斜する傾斜部144と、ケース11に対する遠位側の水平方向幅W1が、近位側の水平方向幅W2より狭くなるように減幅する減幅部145と、が形成されている。第2保護部材140Bは、傾斜部144によって遠位側の高さが高くなるので、走行時に跳ね上げる石や水などが侵入し難い。また、第2保護部材140Bは、減幅部145によって遠位側の両起立部143の間隔が狭くなるので、同様に、走行時に跳ね上げる石や水などが侵入し難い。
【0067】
第2保護部材140Bは、車両の左右方向外側となる右側の起立部143から後方に延設される延設部146と、左右方向内側となる左側の起立部143から直角に屈曲形成され、内側に向かって延設されたリブ147(図8参照)と、を備える。延設部146はケース11の右方側面にボルト155によって固定され(図9参照)、リブ147はケース11の前方側面11fにボルト156により固定されている(図8参照)。また、図8に示すように、第2保護部材140Bには、オイルポンプ70の配線用カプラ71の下方を覆うように車両の左右方向内側に延出する補機保護部であるカプラガード148が一体に形成されており、配線用カプラ71は、カプラガード148によって保護されている。
【0068】
図9に示すように、第2保護部材140Bは、ケース11に対する近位側端部150と、ケース11との間に隙間Cが設けられるように配置されており、この隙間Cを介して第2保護部材140Bの上方と下方とが連通する。これにより、走行時などに第2保護部材140Bの上側に入り込んだ異物は、隙間Cから容易に排出除去される。
なお、第2保護部材140Bとケース11との間に隙間Cを設ける代わりに、底部142に貫通穴を設けて第2保護部材140Bの上下を連通させ、第2保護部材140Bの上側に侵入した異物を該貫通穴から排出するようにしてもよい。
【0069】
また、第2保護部材140Bの最下部151も、ケース11の最下部113aよりも高い位置に配置され、外部からの力が第2保護部材140Bに作用し難くなっている(図9参照)。
【0070】
支持部材160Bは、第2コネクタ101B及び導電ケーブル103Bの上方を、車両の左右方向一方側から他方側に亙って延在するように、金属板をプレス成形することにより略コの字型に形成されている。支持部材160Bは、後方に延設された一端部161が、第2コネクタ101Bの一方側(図8中、右方)に配置され、第2保護部材140Bの延設部146とケース11との固定位置より上方で、ケース11の右方側面にボルト166によって固定されている(図9参照)。支持部材160Bの他端部162は、第2コネクタ101Bの他方側(図8中、左方)に配置され、ケース11の前方側面11fにボルト167によってねじ止めされている。
【0071】
また、図9に示すように、支持部材160Bの一端部161側から下方に延設され、略L字型に形成された支持部163は、第2保護部材140Bの起立部143から上方に延びる取付け部149と、ボルト164によって固定されている。これにより、支持部材160Bは、第2コネクタ101B及び導電ケーブル103Aの上方を跨ぐように配置されて、ケース11に2ヶ所で固定される。そして、第2保護部材140Bは、ケース11の右方側面及び前方側面11fの2ヶ所と、支持部材160Bを介して固定される合計3ヶ所でケース11に固定される。
【0072】
図12に示すように、車両3のフロアパネル171の下方にサブフレーム13を介して固定される後輪駆動装置1は、フロアパネル171の下部で、車両3の下方を流れる走行風を整流するための整流部材170と、エンジンからの不図示の排気管を覆う遮熱板172と、の後方に配置されている。第1及び第2保護部材140A、140Bは、下方から見て、整流部材170とは重なり合わないように配置される一方、第1及び第2保護部材140A、140Bの少なくとも一部が、下方から見て、遮熱板172と重なり合うように配置されている。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る電動機の内外接続導体配置構造によれば、ステータ14A、14B及びロータ15A、15Bを有する電動機本体と、電動機本体を収容するケース11と、ケース11の内部に設けられたバスバー130とケース11の外部に設けられた導電ケーブル103A、103Bとを電気的に接続するコネクタ101A,101Bと、を備える第1及び第2電動機2A、2Bと、ケース11及び車両3のサブフレーム13に固定されて電動機2A,2Bをサブフレーム13に支持するマウント部材13a、13bと、を有する。そして、コネクタ101A、101Bは、マウント部材13a、13bが固定されるケース11のボス部11aよりも下方に配置されるので、電動機2A、2Bをサブフレーム13に固定した状態のまま、車両3の下方側からコネクタ101A、101Bにアクセスすることができ、コネクタ101A、101Bの組付け、メンテナンスなどが容易となり作業性が向上する。
【0074】
また、コネクタ101A、101Bの少なくとも一部が、マウント部材13a、13bの鉛直方向直下に配置されるので、マウント部材13a、13bによって、上方からコネクタ101A、101Bに加わる衝撃を抑制することができる。
【0075】
コネクタ101A、101Bの少なくとも一部は、サブフレーム13の鉛直方向直下に配置されるので、サブフレーム13によって、上方からのコネクタ101A、101Bに加わる衝撃をさらに抑制することができる。
【0076】
コネクタ101A、101Bは、電動機2A,2Bの回転軸線xを通る水平面Pよりも下方に配置されるので、コネクタ101A、101Bの配置箇所が、電動機2A,2Bの下半分側となり、電動機2A,2Bの下方からコネクタ101A、101Bに容易にアクセスすることができる。
【0077】
前後方向長さが左右方向長さよりも長い車両3において、コネクタ101A、101Bは、ケース11の前方側面11fに配置されるので、後輪駆動装置1を車両3に搭載したときに、前後方向は、左右方向や上下方向と比較して空間に余裕ができやすく、コネクタ101A、101Bを無理なく配置することができる。
【0078】
コネクタ101A、101Bは、車両3の前後方向中央寄りの前方側面11fに配置されるので、衝突などにより車両3に対し前後方向から外力が入力したとき、コネクタ101A、101Bの損傷をより軽減することができる。
【0079】
車両3は、ケース11に固定されるオイルポンプ70を更に備え、コネクタ101A、101Bは、オイルポンプ70及びマウント部材13a、13bの近傍に配置されるので、マウント部材13a、13bとオイルポンプ70とによってコネクタ101A、101Bへ加わる外力を抑制し、コネクタ101A、101Bを保護することができる。
【0080】
オイルポンプ70は、コネクタ101A、101Bの鉛直方向直下を避けて配置されるので、電動機2A,2Bの下方側からコネクタ101へアクセスする際、オイルポンプ70が障害とはならず、コネクタ101の接続作業性を阻害することがない。
【0081】
コネクタ101A、101Bの最下部105aは、ケース11の最下部113aより高い位置に配置されるので、下方からコネクタ101A、101Bに外力が加わることを低減することができる。
【0082】
電動機2A,2Bは、車両3のフロアパネル171よりも下方に配置されるので、電動機2A、2Bを床下に配置する場合でも、コネクタ101A、101Bに容易にアクセス可能となる。また、床上の乗員居住スペース・積載スペースが拡大し、電動機2A,2Bと車輪Wrとの距離を縮めることが可能となる。
【0083】
コネクタ101A、101Bが配置される位置よりも下方のケース11の下面には、ケース11の内部と外部とを連通させる開口部109を備え、開口部109は、コネクタ101A、101Bとバスバー130とを接続する接続部132が視認可能となるように形成されるので、電動機2A、2Bの下方側から、コネクタ101A、101Bとバスバー130A、130Bとの接続が可能となる。
【0084】
コネクタ101A、101Bは、導体本体106と、ケース11と別体に形成されて導体本体106を保持する導体保持部107と、を有し、導体保持部107をケース11に固定することによって、コネクタ101A、101Bの内側コネクタ104が電動機2A,2Bに固定されるので、導体本体106をケース11に挿通する作業を省略してコネクタ101A、101Bを電動機2A,2Bに固定することができる。
【0085】
電動機2A,2Bは、車両3の左車輪LWrを駆動する第1電動機2A及び右車輪RWrを駆動する第2電動機2Bを備え、ケース11は、第1電動機2Aの電動機本体と第2電動機2Bの電動機本体を収容し、ケース11の左側を支持するマウント部材13a及びケース11の右側を支持するマウント部材13bを備えて、ケース11の前方側面11fに固定され、第1電動機2Aのコネクタ101Aの少なくとも一部はマウント部材13aの鉛直方向直下に配置され、第2電動機2Bのコネクタ101Bの少なくとも一部はマウント部材13bの鉛直方向直下に配置される。これにより、電動機2A、2Bの上下方向及び左右方向の長大化を抑制してスペースを効率的に活用することができる。
【0086】
車両3のオイルポンプ70は、第1電動機2Aのコネクタ101Aと、第2電動機2Bのコネクタ101Bとの間に配置され、ケース11の前方側面11fに固定されるので、マウント部材13a、13bに加えてオイルポンプ70によってもコネクタ101A、101Bを保護することができる。更に、左右のコネクタ101A、101B間にオイルポンプ70を配置することで、オイルポンプ70を効率的に配置することができる。
【0087】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、本実施形態では、適用車両としてハイブリッド自動車について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、モータのみを駆動源とする電気自動車であってもよい。
【0088】
また、電動機2A、2Bをサブフレーム13に支持する支持装置として、本実施形態では、ケース11及びサブフレーム13に固定されるマウント部材13a、13bが適用されているが、これに限定されるものでない。例えば、支持装置は、マウント部材と骨格部材との間にブラケット部材を備え、マウント部材とブラケット部材によって構成されてもよい。また、ケース11は、本実施形態のようなボス部11aを備えず、マウント部材13a、13bが前方側面11fの平坦部に固定されてもよい。
【0089】
さらに、本実施形態では、内外接続導体は、ケースの前方側面に配置されているが、ケースの後方側面に配置されてもよい。特に、内外接続導体は、前方側面又は後方側面のうち、車両の前後方向中央寄りの側面に配置されることが好ましく、電動機を含む車両用駆動装置が、車両の前方に配置されている場合には、内外接続導体は、ケースの後方側面に配置されることが好ましい。
【0090】
また、本発明の補機としては、本実施形態のオイルポンプ70に限定されるものでなく、エアコン用コンプレッサやウォータポンプなどであってもよい。
さらに、本発明の内部電気導体、外部電気導体、及び内外接続導体は、本実施形態のものに限定されるものでなく、例えば、内外接続導体は、本実施形態のコネクタ101A,101Bを備えず、導電ケーブルをケース内に挿入する態様であってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、二つの電動機2A、2Bは、一つのケース11内に収容されているが、本発明はこれに限らず、別々のケースを設けてそれぞれに収容されてもよい。
さらに、本実施形態では、電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとが第1及び第2変速機を介してそれぞれ接続されているが、本発明はこれに限らず、電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとが直接接続されてもよい。
加えて、本実施形態では、電動機2A、2Bが左右後輪LWr、RWrに対して動力伝達可能に機械的に接続されているが、本発明はこれに限らず、発電専用モータ等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
2 電動機
2A 第1電動機(左電動機)
2B 第2電動機(右電動機)
3 車両
11 ケース(筐体)
11a ボス部(固定部)
11f 前方側面
13 サブフレーム(骨格部材)
13a、13b マウント部材(支持装置)
14A、14B ステータ(固定子)
15A、15B ロータ(回転子)
70 オイルポンプ(補機)
101A、101B コネクタ(内外接続導体)
103A、103B 導電ケーブル(外部電気導体)
104 内側コネクタ(内外接続導体)
105 外側コネクタ(内外接続導体)
105a 内外接続導体の最下部
106 導体本体
107 導体保持部
109 開口部
113a 筐体の最下部
130 バスバー(内部電気導体)
132 接続部
171 フロアパネル
x 回転軸線
LWr 左後輪
P 水平面
RWr 右後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子、及び前記固定子に対して相対回転可能に配置される回転子を有する電動機本体と、
前記電動機本体を収容する筐体と、
前記筐体の内部に設けられた内部電気導体と、前記筐体の外部に設けられた外部電気導体とを電気的に接続する内外接続導体と、
を備える電動機と、
前記筐体及び車両の骨格部材に固定されて、前記電動機を前記骨格部材に支持する支持装置と、
を有する電動機の内外接続導体配置構造であって、
前記内外接続導体は、前記支持装置が固定される前記筐体の固定部よりも下方に配置されることを特徴とする電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項2】
前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記支持装置の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項3】
前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記骨格部材の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする請求項2に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項4】
前記内外接続導体は、前記電動機の回転軸線を通る水平面よりも下方に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項5】
前記車両は、前後方向長さが左右方向長さよりも長く形成され、
前記内外接続導体は、前記筐体の前方側面又は後方側面のいずれか一方の側面に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項6】
前記内外接続導体は、前記前方側面又は前記後方側面のうち、前記車両の前後方向中央寄りの側面に配置されることを特徴とする請求項5に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項7】
前記車両は、前記筐体に固定される補機を更に備え、
前記内外接続導体は、前記補機及び前記支持装置の近傍に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項8】
前記補機は、前記内外接続導体の鉛直方向直下を避けて配置されることを特徴とする請求項7に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項9】
前記内外接続導体の最下部は、前記筐体の最下部より高い位置に配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項10】
前記電動機は、前記車両のフロアパネルよりも下方に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項11】
前記内外接続導体が配置される位置よりも下方の前記筐体の下面には、前記筐体の内部と外部とを連通させる開口部を備え、
前記開口部は、前記内外接続導体と、前記筐体の内部電気導体とを接続する接続部が視認可能となるように形成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項12】
前記内外接続導体は、導体本体と、前記筐体と別体に形成されて前記導体本体を保持する導体保持部と、を有し、
前記導体保持部を前記筐体に固定することによって、前記内外接続導体が前記電動機に固定されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項13】
前記電動機は、前記車両の左右方向左側に配置されて前記車両の左車輪を駆動する左電動機、及び前記車両の左右方向右側に配置されて前記車両の右車輪を駆動する右電動機を備え、
前記筐体は、前記左電動機の電動機本体と、前記右電動機の電動機本体とを収容し、
前記支持装置は、前記筐体の左側を支持する左側支持装置、及び前記筐体の右側を支持する右側支持装置を備え、前記左側支持装置及び前記右側支持装置は、前記筐体の前記前方側面又は前記後方側面のいずれか一方の側面に固定され、
前記左電動機の前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記左側支持装置の鉛直方向直下に配置され、前記右電動機の前記内外接続導体の少なくとも一部は、前記右側支持装置の鉛直方向直下に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電動機の内外接続導体配置構造。
【請求項14】
前記車両の補機は、前記左電動機の前記内外接続導体と、前記右電動機の前記内外接続導体との間に配置され、前記側面に固定されることを特徴とする請求項13に記載の電動機の内外接続導体配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−115830(P2013−115830A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256700(P2011−256700)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】