説明

電動機の端子接続構造、ブラシ付き電動機及び電動パワーステアリング装置

【課題】ブラシホルダーの変形を抑制し、ブラシ付き電動機に生じる作動音を低減する電動機の端子接続構造、ブラシ付き電動機及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】弾性部材であるハウジング33は、第1バスバー31及び第2バスバー32を支持する。第1バスバー31及び第2バスバー32の弾性部材貫通部36は、弾性部材の電動機側端子寄りの表面33Iから前記弾性部材の機器側端子寄りの表面33Oまでハウジング33を貫通する。弾性部材表面延在部37は、弾性部材貫通部36と異なる方向かつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面33Iに沿って延在する。機器側端子方向延在部38は、弾性部材表面延在部37と異なる方向に延在し、かつ機器側端子90Aと接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付き電動機(ブラシモータ)の端子と機器の端子とを電気的に接続するための電動機の端子接続構造、ブラシ付き電動機及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、ブラシモータは、整流子にブラシを当接させてコイルに通電し、電磁力により回転子を回転させるものである。このようなブラシモータは、回転子が回転する際に振動が生じた場合、前記振動が、整流子と、ブラシと、ブラシホルダーユニットと、ブラシモータの外殻となる部材(特にフランジ)とに順に伝わる。これにより、このようなブラシモータは、回転子が回転する際に振動が生じた場合、前記振動に起因して作動音が生じる。この振動及び作動音を低減するための技術として、ブラシホルダーユニットをフローティングさせる構造がある。この構造は、ブラシモータの外殻となる部材とブラシホルダーユニットとの間に弾性部材を介在させる構造である。以下、この構造をフローティング構造という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−070211号公報
【特許文献2】実用新案登録第3154393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラシモータの種類の中には、例えば特許文献2に開示されている技術のように、バスバーを備えるものがある。バスバーとは、ブラシモータの外部からブラシに電力を供給するための部材である。電力を供給するバスバーは、ブラシに電気接続されているので、バスバーを取り付けている状態に応じてブラシホルダーユニットに応力が加わるおそれがある。ブラシホルダーユニットへの応力は、ブラシホルダーユニットに微小な変形を及ぼすおそれがある。ブラシホルダーユニットに微小な変形により、ブラシが振動するおそれがある。このため、ブラシモータは、作動音や振動が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ブラシホルダーの変形を抑制し、ブラシ付き電動機に生じる作動音を低減する電動機の端子接続構造、ブラシ付き電動機及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、電動機の端子接続構造は、ブラシ付き電動機が有する電動機側端子と、機器が有する機器側端子とを電気的に接続する構造であり、前記電動機側端子と前記機器側端子との間に介在する弾性部材と、前記弾性部材に支持されかつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面から前記弾性部材の機器側端子寄りの表面まで前記弾性部材を貫通する弾性部材貫通部と、前記弾性部材貫通部の延在方向と異なる方向かつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面に沿って延在する弾性部材表面延在部と、前記弾性部材表面延在部の延在方向と異なる方向に延在し、かつ前記機器側端子と接続する機器側端子方向延在部と、を含み、前記ブラシに電力を供給するバスバーと、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成により、弾性部材表面延在部と機器側端子方向延在部とは、機器側端子方向延在部の変位の方向を変えることができる。このため、機器の取り付けにより、機器側端子方向延在部の変位ずれが生じた場合、弾性部材表面延在部が機器側端子方向延在部の変位ずれを撓みとして吸収することができる。バスバーは、機器側端子方向延在部の変位ずれが弾性部材貫通部の変位へ影響することを低減できる。その結果、電動機の端子接続構造は、機器の取り付け精度に起因するブラシホルダーの変形を抑制することができる。そして、電動機の端子接続構造は、ブラシノイズを低減することができる。
【0008】
また、上記構成により、電動機の端子接続構造は、弾性部材貫通部が弾性部材の貫通孔に差し込まれ、弾性部材を貫通する。弾性部材は、弾性により弾性部材貫通部を挟み込み押圧することで支持することができる。このため、機器側端子方向延在部の変位ずれが生じた場合、弾性部材貫通部が機器側端子方向延在部のずれを撓みとして吸収することができる。その結果、電動機の端子接続構造は、機器の取り付け精度に起因するブラシホルダーの変形を抑制することができる。そして、電動機の端子接続構造は、ブラシノイズを低減することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記弾性部材貫通部と、前記機器側端子方向延在部とは、前記電動機側端子から前記機器側端子に近づく方向に延在すると共に、延在する平面が異なり、前記弾性部材貫通部は、前記弾性部材貫通部が前記電動機側端子と電気接続する電動機側電気接続部と、前記弾性部材貫通部が前記弾性部材の機器側端子寄りの表面に露出する位置にある屈曲部とを備え、前記電動機側電気接続部と前記屈曲部との距離は、前記屈曲部から前記機器側端子方向延在部が前記機器側端子と電気接続する機器側電気接続部までの直線距離以下とすることが好ましい。
【0010】
上記構成により、電動機の端子接続構造は、機器側端子の取り付け精度がばらついた場合、屈曲部が支点となり、電動機側電気接続部の位置変位を低減することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記弾弾性部材内での前記弾性部材貫通部の位置を規制する弾性部材内バスバー位置規制構造を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成により、弾性部材貫通部が弾性部材から抜けることを抑制し、変位支点である屈曲部の位置精度を高めることができる。その結果、機器の取り付け精度に起因するブラシホルダーの変形をより抑制することができる。このため、電動機の端子接続構造は、ブラシノイズを低減することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記弾性部材の機器側端子寄りの表面に突出し、前記弾性部材表面延在部を押圧する押圧部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
上記構成により、バスバーの振動による破損のおそれを低減することができる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記電動機側端子に対する前記弾性部材の相対的な位置を規制する弾性部材位置規制構造を含むことが好ましい。
【0016】
上記構成により、電動機側端子に対する弾性部材の相対的な位置が規制される。これにより電動機の端子接続構造は、弾性部材の位置ずれに起因するブラシホルダーユニットへ加わる応力を低減することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記バスバーは、可撓性を有する電気伝導部材を介して前記電動機側端子と電気接続され、前記電動機側電気接続部はスポット溶接されていることが好ましい。
【0018】
上記構成により、可撓性を有するため、振動の伝達を低減することができる。その結果、電動機の端子接続構造は、弾性部材の位置ずれに起因するブラシホルダーユニットへ加わる応力を低減することができる。また、電動機側電気接続部はスポット溶接されているため、ねじ止めのような締結の場合と比較して締結に伴う回転の影響(例えば位置ずれ)を抑制し、ブラシホルダーユニットへ加わる応力を低減することができる。また、電動機側電気接続部はスポット溶接されているため、弾性部材に伝達される熱の影響を抑制することができる。
【0019】
本発明の望ましい態様として、前記機器側電気接続部は、前記機器側端子と前記機器側端子方向延在部との締結構造となっており、回転防止機構を含むことが好ましい。
【0020】
上記構成により、機器側電気接続部で生じる締結に伴う回転力の影響を低減することができる。このため、バスバーの変形を抑制することができる。その結果、ブラシホルダーの変形をより抑制することができる。このため、電動機の端子接続構造は、ブラシノイズを低減することができる。
【0021】
本発明の望ましい態様として、ブラシ付き電動機は、前記電動機の端子接続構造によりブラシと接続する前記電動機側端子が接続されることが好ましい。
【0022】
上記構成により、ブラシ付き電動機は、ブラシホルダーユニットの変形を低減することができる。このため、ブラシホルダーユニットの微小な変形により、ブラシが振動するおそれを低減できる。その結果、ブラシ付き電動機は、作動音または振動を低減できる。
【0023】
本発明の望ましい態様として、電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構に補助操舵力を付与する、前記ブラシ付き電動機を含み、前記ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいて前記ブラシ付き電動機を駆動制御することを特徴とする。
【0024】
上記構成により、電動パワーステアリング装置は、ブラシ付き電動機が備えるブラシホルダーユニットの変形を低減することができる。そして、ブラシ付き電動機は、作動音や振動を低減できる。このため、電動パワーステアリング装置は、ブラシ付き電動機の作動音または振動に伴い減速装置など他の部材と共振することを抑制することができる。その結果、操舵者は、違和感なく電動パワーステアリング装置を操舵することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ブラシホルダーの変形を抑制し、ブラシ付き電動機に生じる作動音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の構成図である。
【図2】図2は、電動パワーステアリング装置が備える電動機を説明する上面図である。
【図3】図3は、電動パワーステアリング装置が備える電動機の接続構造を説明する説明図である。
【図4】図4は、回転軸に直交する面でブラシモータを切って模式的に示す説明図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面矢視図である。
【図6】図6は、ブラシ及びブラシホルダーユニットを模式的に示す説明図である。
【図7】図7は、基板に取り付けられたブラシケースを模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、バスバーユニットを回転軸方向に沿って見て模式的に示す説明図である。
【図9】図9は、バスバーユニットを周方向に沿って見て模式的に示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態1に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。
【図11】図11は、バスバーユニットの取り付けを説明するための説明図である。
【図12】図12は、バスバーユニットの分解構成を示す説明図である。
【図13】図13は、バスバーユニットの機器側端子との接続を説明するための説明図である。
【図14】図14は、バスバーの取り付け状態を説明するための模式図である。
【図15】図15は、バスバーユニットのバスバーの変位を説明するための説明図である。
【図16】図16は、実施形態2に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。
【図17】図17は、実施形態3に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。
【図18】図18は、実施形態3に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。
【図19】図19は、バスバーユニットのバスバーの変位を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
本実施形態では、本発明に係るブラシモータを電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用した例を説明するが、本発明の適用対象は電動パワーステアリング装置に限定されるものではない。また、本発明を電動パワーステアリング装置に適用する場合でも、その方式は問わない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、ブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の構成図である。まず、図1を用いて、本実施形態のブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の概要を説明する。電動パワーステアリング装置80は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ステアリングギヤ88と、タイロッド89とを備える。また、電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ91aとを備える。車速センサ91bは、車両に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に入力する。
【0030】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部がトルクセンサ91aを介して操舵力アシスト機構83に連結される。出力軸82bは、一方の端部が操舵力アシスト機構83に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。本実施形態では、入力軸82a及び出力軸82bは、鉄等の磁性材料から形成される。
【0031】
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラック88bに連結される。
【0032】
操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、ブラシモータ10とを含む。減速装置92は、出力軸82bに連結される。ブラシモータ10は、減速装置92に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる。なお、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングシャフト82と、トルクセンサ91aと、減速装置92とによりステアリングコラムが構成されている。ブラシモータ10は、前記ステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
【0033】
図2は、電動パワーステアリング装置が備える電動機を説明する上面図である。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。ブラシモータ10の回転力は、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、ブラシモータ10のトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸92Aを回転し、図1に示すステアリングコラムの出力軸82bに補助操舵トルクを与える。
【0034】
図1に示すトルクセンサ91aは、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91bは、電動パワーステアリング装置80が搭載される車両の走行速度(車速)を検出する。ECU90は、ブラシモータ10と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bと電気的に接続される。ECU90は、ブラシモータ10の動作を制御する。
【0035】
また、ECU90は、トルクセンサ91a及び車速センサ91bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ91aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ91bから車両の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいてブラシモータ10へ供給する電流値を、バスバーユニット30を介して調節する。
【0036】
ステアリングホイール81に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時に、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ、車速信号Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、ブラシモータ10の動作を制御する。ブラシモータ10が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
【0037】
出力軸82bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介してロアシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に伝達される。ピニオンシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、操舵輪を転舵させる。
【0038】
図3は、電動パワーステアリング装置が備える電動機の接続構造を説明する説明図である。図3は、図2においてブラシモータ10の回転軸方向から視た側面図である。ECU90は、減速装置92に直接装着されており、ECU90の発熱を減速装置92で放熱できるようになっている。
【0039】
ブラシモータ10とECU90とは、減速装置92を介して固定されている。バスバーユニット30は、本実施形態に係る電動機の接続構造であり、ブラシ付き電動機であるブラシモータ10の電動機側端子と、機器であるECU90の機器側端子とを電気的に接続するためのものである。次に、ブラシモータ10について説明する。
【0040】
図4は、回転軸に直交する面でブラシモータを切って模式的に示す説明図である。図5は、図4のA−A断面矢視図である。図5に示すように、ブラシモータ10は、筐体11と、マグネット13と、回転子14と、軸18と、ブラシ19と、ブラシホルダーユニット20と、バスバーユニット30とを含む。
【0041】
筐体11は、筒状部11aと、底部11bと、フランジ12とを含む。筒状部11aは、磁性材料で略円筒形である。筒状部11aを形成する磁性材料は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等である。筒状部11aの一方の端部は、底部11bにより閉塞される。底部11bは、例えば筒状部11aと一体に形成される。また、筒状部11aの他方(底部11bとは反対側)の端部である開口は、フランジ12により閉塞される。
【0042】
マグネット13は、筒状部11aの内側面にマグネットホルダ13aによって取り付けられる。マグネット13は、2つ設けられる。2つのマグネット13は、互いに極性が逆に設けられる。マグネット13は、マグネット飛散防止カバー13bにより覆われる。これにより、マグネット飛散防止カバー13bは、2つのマグネット13の万一の飛散を防止する。回転子14は、筒状部11a内に設けられる。回転子14は、軸18によって中心を貫かれ、かつ、軸18に固定される。
【0043】
回転子14は、整流子15と、コア16と、コイル17とを含む。整流子15は、絶縁体で形成された円柱状の絶縁部の側面に、導電体で形成された複数の導電部15aが等間隔で平行に配置されているものである。コア16は、磁性材料を用いて形成される。コア16は、例えば、磁性材料としてケイ素鋼板が用いられ、ケイ素鋼板が積層されて形成される。回転子14のコア16部分は、複数のスロット(溝)を有する。コイル17は、前記スロットに巻き回されている。コイル17の一端は、1つの導電部15aに接続されており、他端は別の導電部15aに接続されている。
【0044】
軸18は、軸受18aと軸受18bとによって、回転軸Zrを中心に回転できるように支持される。軸受18aは、筒状部11aの内側であって、フランジ12の略中央部分に設けられる。軸受18bは、筒状部11aの内側であって、底部11bの略中央部分に設けられる。
【0045】
回転軸Zrは、軸18の中心軸に相当し、回転子14の回転軸とも一致する。軸18は、ジョイント18cが取り付けられる。ジョイント18cは、図2に示す減速装置92のウォームがスプライン結合される。なお、軸18とウォームとは、弾性カップリングで結合されてもよい。
【0046】
ブラシ19は、後述するブラシホルダーユニット20により支持される。ブラシ19は、筒状部11a内で、整流子15の径方向で整流子15と対向する位置に複数設けられる。ブラシ19は、略角柱、好ましくは四角柱状の多面体である。より好ましくは、ブラシ19は、整流子15と対向する面に含まれる4つの頂点のうち、フランジ12側ではなく、コア16側にある2つの頂点のいずれかが突出する形状である。ブラシ19は、この突出している頂点が整流子15と接する。このような構造により、ブラシモータ10は、ブラシ19と整流子15とが接触する位置が明確となる。その結果、ブラシモータ10は、ブラシ19から整流子15への電力の供給が安定する。また、ブラシモータ10のユーザーは、ブラシ19の摩耗状態も容易に予測できる。
【0047】
ブラシ19は、接触抵抗が小さく機械的衝撃に耐えられる材料により構成される。例えば、ブラシ19は、黒鉛により構成される。ブラシ19は、バスバーユニット30によって電力が供給される。なお、バスバーユニット30については後述する。前記電力は、ECU90により制御された電流値の電力である。ブラシ19に供給された電流は、ブラシ19と接触する整流子15の導電部15aを通ってコイル17に導かれる。
【0048】
コイル17に導かれた電流は、コイル17を通り、整流子15の別の導電部15aに至って別のブラシ19に流入する。ブラシモータ10は、コイル17に電流が流れることによって磁界が発生する。ブラシモータ10は、この磁界と、マグネット13の磁界との相互作用により回転子14が回転する。
【0049】
図6は、ブラシ及びブラシホルダーユニットを模式的に示す説明図である。ブラシホルダーユニット20は、図5に示すように、ブラシケース21と、スプリング22と、基板23と、底面弾性部材24とを含む。ブラシケース21は、5つの板状部分を含み、この5つの板状部分により開口21fを有する箱状に形成される。なお、図6では、5つの板状部分のうちの3つが示されている。残りの2つの板状部分は、図6に示す3つの板状部分に直交する部分であり、図6では紙面に平行な部分である。
【0050】
ブラシケース21は、開口21fが整流子15の径方向で整流子15に対向するように設けられる。ブラシケース21は、ブラシ19よりも大きく形成される。これは、ブラシ19の温度が上昇した際に、ブラシケース21内でブラシ19が熱膨張するためである。すなわち、ブラシケース21は、自身(ブラシケース21)とブラシ19との間に隙間を有してブラシ19を保持する。
【0051】
スプリング22は、圧縮応力スプリングである。スプリング22は、ブラシケース21の内部であって、ブラシ19とブラシケース21との間に設けられる。スプリング22は、ブラシケース21の5つの板状部分のうち、底面部分と、ブラシ19との間に設けられる。前記底面部分は、ブラシケース21の5つの板状部分のうち、開口21fとは反対側の板状部分である。
【0052】
スプリング22は、一方の端部がブラシケース21の底面部分に接し、他方の端部がブラシ19に接する。これにより、スプリング22は、整流子15に向かう方向の力をブラシ19に与える。よって、ブラシ19は、少なくとも一部が開口21fから突出し、スプリング22によって整流子15に押し付けられる。
【0053】
図7は、基板に取り付けられたブラシケースを模式的に示す説明図である。基板23は、ブラシケース21をフランジ12に取り付けるための部材である。基板23は、図5に示すように、ブラシケース21とフランジ12との間に設けられる。基板23は、例えば、図7中の斜線で示すように、2つ設けられる。
【0054】
基板23は、例えば、円環状の板状部材を2分割した形状である。本実施形態では、1つの基板23は、図6に示す2つのブラシケース21を有する。各基板23は、ボルト貫通孔23aを含む。ボルト貫通孔23aは、フランジ12に形成されるボルト孔12aと対向する位置に形成される。ボルト孔12aは、ブラシホルダーユニット20をフランジ12に締結するための雌ネジ孔である。ボルト孔12aは、図5に示す締結手段としてのボルトBがねじ込まれる。ボルト孔12aは、例えば、2つ設けられる。基板23は、ボルトBがボルト貫通孔23aに挿入され、かつ、ボルト孔12aに螺合されることでフランジ12に締結される。
【0055】
フランジ12は、図7に示すように、バスバーユニット取付凹部12bを含む。図5に示すバスバーユニット30のハウジング33は、このバスバーユニット取付凹部12bに嵌め込まれる。これにより、ハウジング33は、フランジ12と筒状部11aとの間に介在される。そして、ハウジング33は、弾性を有する弾性部材である。次に、バスバーユニット30について説明する。
【0056】
図8は、バスバーユニットを回転軸方向に沿って見て模式的に示す説明図である。図9は、バスバーユニットを周方向に沿って見て模式的に示す説明図である。図9は、例えば、図8のC−C断面を見ている。図8及び図9に示すように、ブラシモータ10の基板23は、複数の電動機側端子23A、23Bを備えている。複数の電動機側端子23A、23Bは、ブラシ19に電力を供給するための電極端子である。
【0057】
バスバーユニット30は、第1バスバー31と、第2バスバー32と、バスバー保持手段としてのハウジング33と、ピグテイル35とを含む。第1バスバー31及び第2バスバー32は、金属の板状部材である。第1バスバー31及び第2バスバー32は、電気的な導電部材である。
【0058】
第1バスバー31及び第2バスバー32は、図8に示すように、互いに接触しないように間隔をあけて設けられる。第1バスバー31及び第2バスバー32は、筐体11の外部に一部が露出する。なお、上述した筒状部11aと底部11bとフランジ12とで囲まれる空間が筐体11の内部であり、前記内部以外の空間が筐体11の外部である。
【0059】
ハウジング33は、弾性部材であり、例えばゴム材料で形成されており弾性を有している。ゴム材料は、エチレンプロピレンゴム、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。また、ハウジング33は絶縁性を有していることがより好ましい。
【0060】
図9に示すように、第1バスバー31及び第2バスバー32は、ハウジング33を貫通している。そして、ハウジング33は、第1バスバー31及び第2バスバー32を覆うことができる。これにより、ハウジング33は、第1バスバー31と第2バスバー32とを絶縁する。また、ハウジング33は、バスバーユニット30がブラシモータ10に取り付けられた際に、第1バスバー31及び第2バスバー32と、筒状部11aやフランジ12とを絶縁する。
【0061】
ピグテイル35は、電気伝導部材である。ピグテイル35は、第1バスバー31及び第2バスバー32と、基板23における電動機側端子23A、23Bとを電気的に接続する。基板23は、ブラシ19へ電力を供給するための電動機側端子23A、23Bを含む電気回路が設けられている。前記電気回路は、図5に示す電気電導部材の配線部材35aでブラシ19と電気的に接続される。これにより、ブラシ19は、第1バスバー31及び第2バスバー32から、ピグテイル35及び基板23を介して電力が供給される。なお、第1バスバー31及び第2バスバー32は、基板23に形成される電気回路を介さず、ピグテイル35でブラシ19と直接電気的に接続されてもよい。
【0062】
ピグテイル35は、第1バスバー31と第2バスバー32との両方に、例えば、溶接、より具体的にはスポット溶接またはプロジェクション溶接によって電気的に接続され電動機側電気接続部35Bが形成される。また、ピグテイル35は、基板23に形成された電気回路に、例えば、溶接、より具体的にはスポット溶接またはプロジェクション溶接によって電気的に接続され電動機側電気接続部35Aが形成される。
【0063】
電動機側電気接続部35Bにおいて、第1バスバー31及び第2バスバー32とピグテイル35とをスポット溶接によって電気的に接続する。この構造は、ねじ止めのような締結の場合と比較して締結に伴う回転の影響(例えば位置ずれ)を抑制し、ブラシホルダーユニット20へ加わる応力を低減することができる。また、電動機側電気接続部35Bはスポット溶接されているため、ハウジング33に伝わる溶接時の発熱を抑制することができる。これにより、ハウジング33への熱の影響を低減することができる。なお、スポット溶接は、金属板を重ねて、重ね合わせた金属板を電極で上下から挟み、加圧状態で通電し溶接する抵抗溶接の一種である。スポット溶接は、短時間に溶接することができるため、安価にバスバーユニット30を製造することができる手法である。
【0064】
ピグテイル35は、可撓性を有する。可撓性を有するため、ピグテイル35は、振動を伝え難い。よって、ブラシモータ10は、ブラシ19の振動が基板23を介してバスバーユニット30に伝わりにくい。また、ブラシモータ10は、ピグテイル35が撓むため、バスバーユニット30とフランジ12との取り付け誤差を許容しやすい。また、ブラシモータ10は、ピグテイル35が撓むため、バスバーユニット30をフランジ12により容易に取り付けられることができる。
【0065】
このように、ピグテイル35が撓むため、ブラシモータ10は、ブラシホルダーユニット20とバスバーユニット30との配置の自由度が向上する。また、ピグテイル35は、バスバーユニット30の電動機側電気接続部35Aの位置ずれがブラシホルダーユニット20に与える応力を低減することができる。なお、ピグテイル35は、フレキシブル基板またはばね状の導線でもよい。次に、ブラシホルダーユニット20とバスバーユニット30との配置でより好ましい配置について説明する。
【0066】
図10は、実施形態1に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。図11は、バスバーユニットの取り付けを説明するための説明図である。図12は、バスバーユニットの分解構成を示す説明図である。ハウジング33は、型による成型により、機器側端子寄りの表面33Oと、電動機側端子寄りの表面33Iと、機器側端子寄りの表面33Oと電動機側端子寄りの表面33Iとの間の側面33Sに突出形成された位置決め凸部33Tとを含む。図11に示すように、フランジ12をハウジング33の側面の形状に沿うように形成するとともに、フランジ12には、バスバーユニット取付凹部12bが含まれる。
【0067】
上述した位置決め凸部33Tとバスバーユニット取付凹部12bとが嵌まり合うことにより、ブラシホルダーユニット20の基板23に対するバスバーユニット30のハウジング33の相対的な位置が規制される。位置決め凸部33Tとバスバーユニット取付凹部12bとを嵌め合う構造は、電動機側端子23A、23Bに対するハウジング33の相対的な位置を規制する弾性部材位置規制構造となる。位置決め凸部33Tとバスバーユニット取付凹部12bとの凹凸関係は、逆でもよい。電動機側端子23A、23Bに対するハウジング33の相対的な位置が規制されているので、ハウジング33の位置ずれに伴うブラシホルダーユニット20に加わる応力を低減することができる。
【0068】
ハウジング33は、機器側端子寄りの表面33Oと電動機側端子寄りの表面33Iとの間を貫通する貫通孔33Hを含む。図10及び図12に示すように、第1バスバー31及び第2バスバー32は、同一の形状をしており、弾性部材貫通部36と、弾性部材表面延在部37と、機器側端子方向延在部38とを含む。
【0069】
第1バスバー31及び第2バスバー32は、直線状かつ板状の導電部材を屈曲部39A、39Bにおいて2回折り曲げて、弾性部材貫通部36と、弾性部材表面延在部37と、機器側端子方向延在部38とが形成されている。機器側端子方向延在部38は、回転防止機構である爪部31P、32Pと、後述する機器側電気接続部31Hを含む。
【0070】
弾性部材貫通部36は、矢印Q方向に向かって貫通孔33Hに差し込まれ、ハウジング33を貫通する。ハウジング33は、弾性により弾性部材貫通部36を押圧する。このため、ハウジング33は、容易かつ安価に第1バスバー31及び第2バスバー32を支持することができる。
【0071】
また、貫通孔33Hに差し込むため、弾性部材貫通部36の延在方向は、直線的であることが好ましい。これにより、弾性部材貫通部36を貫通孔33Hに差し込む際には両者間の抵抗を低減できるので、このときの作業の負荷を軽減できる。また、弾性部材貫通部36の延在方向は直線的であるため、電動機側電気接続部35Bにおける溶接の熱の影響を受けやすい。このため、電動機側電気接続部35Bにおいて、第1バスバー31及び第2バスバー32とピグテイル35とをスポット溶接によって電気的に接続することにより、ハウジング33に伝わる溶接時の発熱を抑制することがより好ましい。なお、弾性部材貫通部36の延在方向の距離BAは、機器側端子寄りの表面33Oと電動機側端子寄りの表面33Iとの間の距離よりも長ければよい。
【0072】
弾性部材表面延在部37の延在方向は、機器側端子寄りの表面33Oに沿う方向である。機器側端子方向延在部38は、機器側端子寄りの表面33Oから、ECU90の端子まで延在している。図13は、バスバーユニットの機器側端子との接続を説明するための説明図である。図13は図9と同様に、バスバーユニットを周方向に沿って見て模式的に示している。
【0073】
図13に示すように、ECU90の機器側端子90Aは、機器側端子方向延在部38と重ね合わされ、ねじ等の締結手段Eにより取り付けられて、電気的に接続され機器側電気接続部31Hとなっている。締結手段Eは、取付中心EXを中心とする回転力を生じさせ、回転力が機器側端子方向延在部38にも伝達される。このため、締結状態により機器側端子方向延在部38から機器側端子方向延在部38に伝達される応力が異なる。
【0074】
ここで、機器側端子方向延在部38は、ハウジング33に沿っているので、機器側端子方向延在部38に大きな応力が加わっても、ハウジング33の緩衝作用により、弾性部材貫通部36に伝達されにくくなる。緩衝作用を大きくするためには、図12に示す弾性部材表面延在部37の延在方向の距離BBが長いことが好ましい。
【0075】
また、機器側端子方向延在部38の延在方向の距離BCが短い方が、締結状態により機器側端子方向延在部38から機器側端子方向延在部38に伝達される応力を小さくすることができる。つまり、弾性部材表面延在部37の延在方向の距離BBは、機器側端子方向延在部38の延在方向の距離BCよりも長いことがより好ましい。
【0076】
また、爪部31P、32Pは、ECU90の機器側端子90Aの側面を押さえ、ECU90の機器側端子90Aと機器側端子方向延在部38と重ね合わせを固定する回転防止機構となり、締結手段Eによる回転力に対して位置ずれを防止することができる。ハウジング33は、弾性部材であり締結手段Eによる回転力が第1バスバー31及び第2バスバー32にねじれを生じさせ、第1バスバー31及び第2バスバー32の変形を引き起こすおそれがある。このため、爪部31P、32Pは、第1バスバー31及び第2バスバー32のねじれを抑制することで、第1バスバー31及び第2バスバー32の変形を低減することができる。その結果、ブラシホルダーユニット20の変形をより抑制することができる。このため、バスバーユニット30は、ブラシノイズを低減することができる。
【0077】
図14は、バスバーの取り付け状態を説明するための模式図である。図15は、バスバーユニットのバスバーの変位を説明するための説明図である。図14に示すように、ECU90の機器側端子の取り付け精度がばらついた場合、屈曲部39Aが支点となり、電動機側電気接続部35Bの位置を変位させてしまうおそれがある。
【0078】
また、バスバーユニット30は、弾性部材貫通部36と、機器側端子方向延在部38とは、電動機側端子23A、23Bから機器側端子90Aに近づく方向に延在すると共に、延在する平面が異なる。そこで、図13に示すように、弾性部材貫通部36は、弾性部材貫通部36が電動機側端子23A、23Bと電気接続する電動機側電気接続部35Bと、弾性部材貫通部36がハウジング33の機器側端子寄りの表面33Oに露出する位置にある第1バスバー31または第2バスバー32の屈曲部39Aとを備えている。また、電動機側電気接続部35Bと屈曲部39Aとの距離lは、39A屈曲部から機器側端子方向延在部38が機器側端子90Aと電気接続する機器側電気接続部31H(32H)までの直線距離L以下とする。
【0079】
図15に示すように、ECU90の機器側端子90Aの取り付け精度がばらついた場合、取付中心EXがΔmだけ変位したとする。この場合、屈曲部39Aを変位支点として、電動機側電気接続部35BがΔnだけ変位する。取付中心EXが変位支点に対して変位する変位角度θは、電動機側電気接続部35Bが変位支点に対して変位する変位角度と同じになる。このため、距離lを距離L以下にする場合、変位Δnの影響を抑えることができる。また、距離lを距離Lよりも小さくする場合、変位Δnの影響をより抑えることができる。
【0080】
以上説明したように、電動機側電気接続部35Bから屈曲部39Aまでの距離lは、屈曲部39Aから機器側電気接続部31Hまでの距離L以下であることが好ましい。この構成により、バスバーユニット30は、ECU90の機器側端子の取り付け精度がばらついた場合、屈曲部39Aが支点となり、電動機側電気接続部35Bの位置変位を低減することができる。
【0081】
以上説明したように、ブラシモータ10は、フランジ12と、整流子15と、ブラシ19と、ブラシホルダーユニット20と、バスバーユニット30とを含む。ブラシ19は、整流子15の径方向で対向し、整流子15と接触して設けられる。ブラシホルダーユニット20は、フランジ12との間に底面弾性部材24を介して設けられ、ブラシ19を保持する。バスバーユニット30は、第1バスバー31及び第2バスバー32と、ハウジング33とを含む。ブラシモータ10は、バスバーユニット30を介して、ECU90と電気的に接続する。
【0082】
第1バスバー31及び第2バスバー32は、ブラシ19に電力を供給する。第1バスバー31及び第2バスバー32は、同一の形状をしており、弾性部材貫通部36と、弾性部材表面延在部37と、機器側端子方向延在部38とを含む。
【0083】
ハウジング33は、第1バスバー31及び第2バスバー32を支持する。第1バスバー31及び第2バスバー32の弾性部材貫通部36は、弾性部材の電動機側端子寄りの表面33Iから前記弾性部材の機器側端子寄りの表面33Oまでハウジング33を貫通する。弾性部材表面延在部37は、弾性部材貫通部36と異なる方向かつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面33Iに沿って延在する。機器側端子方向延在部38は、弾性部材表面延在部37と異なる方向に延在し、かつ機器側端子90Aと接続する。
【0084】
以上の構成により、ブラシモータ10の端子接続構造であるバスバーユニット30は、ECU90の取り付け精度に起因するブラシホルダーユニット20の変形を抑制することができる。このため、ブラシモータ10は、ブラシノイズを低減することができる。
【0085】
また、弾性部材表面延在部37と機器側端子方向延在部38とは、略L字状となり、ECU90の取り付けにより、機器側端子方向延在部38の変位ずれが生じた場合、弾性部材表面延在部37が機器側端子方向延在部38のずれを撓みとして吸収することができる。このため、第1バスバー31及び第2バスバー32は、機器側端子方向延在部38の変位ずれが弾性部材貫通部36の変位へ影響することを低減できる。
【0086】
また、バスバーユニット30は、弾性部材貫通部36が貫通孔33Hに差し込まれ、ハウジング33を貫通する。ハウジング33は、弾性により弾性部材貫通部36を挟み込み押圧することで支持することができる。このため、機器側端子方向延在部38の変位ずれが生じた場合、弾性部材貫通部36が機器側端子方向延在部38のずれを撓みとして吸収することができる。
【0087】
ブラシ付き電動機であるブラシモータ10は、筐体11と、筐体11の内部に設けられ、整流子15及びコア16を含む回転子14と、筐体11の内部に設けられ、整流子15の径方向で対向して設けられるブラシホルダーユニット20と、ブラシホルダーユニット20によって保持され、整流子15と接触して設けられるブラシ19と、上述のブラシモータ10用のバスバーユニット30と、を含む。
【0088】
上記構成により、ブラシモータ10は、ブラシホルダーユニット20の変形を低減することができる。このため、ブラシホルダーユニット20の微小な変形により、ブラシ19が振動するおそれを低減できる。その結果、ブラシモータ10は、作動音または振動を低減できる。
【0089】
本実施形態の電動パワーステアリング装置80は、車両のステアリング機構に補助操舵力を付与するブラシモータ10を含み、ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいてブラシモータ10を駆動制御する。
【0090】
上記構成により、電動パワーステアリング装置80は、ブラシモータ10が備えるブラシホルダーユニット20の変形を低減することができる。そして、ブラシモータ10は、作動音や振動を低減できる。このため、電動パワーステアリング装置80は、ブラシモータ10の作動音または振動に伴い減速装置92など他の部材と共振することを抑制することができる。その結果、操舵者は、違和感なく電動パワーステアリング装置80を操舵することができる。
【0091】
(実施形態2)
図16は、実施形態2に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。実施形態2のハウジング33は、ハウジング33内での弾性部材貫通部36の位置を規制する弾性部材内バスバー位置規制構造を含む。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0092】
ハウジング33は、貫通孔33H内に突出部33Xを機器側端子寄りの表面33O側に備えている。また、弾性部材貫通部36は、貫通孔33H内に突出部33Xを、機器側端子寄りの表面33O側ではなく電動機側端子寄りの表面33I側または貫通孔33H内中央部に備えているようにしてもよい。または、弾性部材貫通部36は、貫通孔33H内に突出部33Xを、機器側端子寄りの表面33O及び電動機側端子寄りの表面33Iに備えているようにしてもよい。また、第1バスバー31及び第2バスバー32の弾性部材貫通部36は、凹部39Xを側面に備えている。上述したように、弾性部材貫通部36は、貫通孔33Hに差し込まれ、ハウジング33を貫通する。突出部33Xは、凹部39Xに嵌め合い、ハウジング33は、ハウジング33内での弾性部材貫通部36の位置を規制する。なお、弾性部材貫通部36が凸部を側面に備えて、凹凸関係は、逆でもよい。突出部33X及び凹部39Xは、ハウジング33内での弾性部材貫通部36の位置を規制する弾性部材内バスバー位置規制構造となる。
【0093】
実施形態2に係るバスバーユニット30は、弾性部材内バスバー位置規制構造がハウジング33内での弾性部材貫通部36の位置を規制するため、弾性部材貫通部36の位置ずれを抑制することができる。このため、弾性部材貫通部36がハウジング33から抜けることを抑制し、変位支点である屈曲部39Aの位置精度を高めることができる。その結果、ECU90の取り付け精度に起因するブラシホルダーユニット20の変形をより抑制することができる。このため、ブラシモータ10は、ブラシノイズを低減することができる。
【0094】
(実施形態3)
図17は、実施形態3に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。図18は、実施形態3に係るバスバーユニットの構成を示す説明図である。図19は、バスバーユニットのバスバーの変位を説明するための説明図である。実施形態3に係るハウジング33は、機器側端子寄りの表面33Oに突出し、弾性部材表面延在部37を押圧する押圧部33Yをさらに備えるなお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0095】
図17に示すように、実施形態3のハウジング33は、貫通孔33Hと、機器側端子寄りの表面33Oに突出する押圧部33Yとを含む。押圧部33Yは、貫通孔33H周囲の機器側端子寄りの表面33Oより離れる方向に突出していればよい。押圧部33Yは、ハウジング33と同じ弾性体で一体形成されていることが好ましい。押圧部33Yは弾性体であるので、図18に示すように、押圧部33Yは、接触する弾性部材表面延在部37に与圧を加えることができる。押圧部33Yがない場合、図19に示すように、ECU90の取り付け精度に応じて、機器側端子寄りの表面33Oと弾性部材表面延在部37との間に隙間ΔYが生じてしまうおそれがある。
【0096】
弾性部材表面延在部37を押圧する押圧部33Yは、隙間ΔYを抑制するとともに、与圧により第1バスバー31及び第2バスバー32の振動を抑制することができる。その結果、振動による第1バスバー31及び第2バスバー32の破損のおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 ブラシモータ
11 筐体
11a 筒状部
11b 底部
12 フランジ
12a ボルト孔
12b バスバーユニット取付凹部
13 マグネット
13a マグネットホルダ
13b マグネット飛散防止カバー
14 回転子
15 整流子
15a 導電部
16 コア
17 コイル
18 軸
18a 軸受
18b 軸受
18c ジョイント
19 ブラシ
20 ブラシホルダーユニット
21 ブラシケース
21f 開口
22 スプリング
23 基板
23a ボルト貫通孔
24 底面弾性部材
30 バスバーユニット
31 第1バスバー
32 第2バスバー
33 ハウジング(弾性部材)
33I、33O 表面
33S 側面
33T 凸部
33X 突出部
33Y 押圧部
33H 貫通孔
35 ピグテイル
35a 配線部材
35A、35B 電動機側電気接続部
36 弾性部材貫通部
37 弾性部材表面延在部
38 機器側端子方向延在部
39X 凹部
39A、39B 屈曲部
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
84 ユニバーサルジョイント
85 ロアシャフト
86 ユニバーサルジョイント
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
90A 機器側端子
91a トルクセンサ
91b 車速センサ
92 減速装置
98 イグニッションスイッチ
99 バッテリ
B ボルト
Zr 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ付き電動機が有する電動機側端子と、機器が有する機器側端子とを電気的に接続する構造であり、
前記電動機側端子と前記機器側端子との間に介在する弾性部材と、
前記弾性部材に支持されかつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面から前記弾性部材の機器側端子寄りの表面まで前記弾性部材を貫通する弾性部材貫通部と、前記弾性部材貫通部の延在方向と異なる方向かつ前記弾性部材の電動機側端子寄りの表面に沿って延在する弾性部材表面延在部と、前記弾性部材表面延在部の延在方向と異なる方向に延在し、かつ前記機器側端子と接続する機器側端子方向延在部と、を含み、前記ブラシに電力を供給するバスバーと、
を含むことを特徴とする電動機の端子接続構造。
【請求項2】
前記弾性部材貫通部と、前記機器側端子方向延在部とは、前記電動機側端子から前記機器側端子に近づく方向に延在すると共に、延在する平面が異なり、
前記弾性部材貫通部は、前記弾性部材貫通部が前記電動機側端子と電気接続する電動機側電気接続部と、前記弾性部材貫通部が前記弾性部材の機器側端子寄りの表面に露出する位置にある屈曲部とを備え、
前記電動機側電気接続部と前記屈曲部との距離は、前記屈曲部から前記機器側端子方向延在部が前記機器側端子と電気接続する機器側電気接続部までの直線距離以下とする請求項1に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項3】
前記弾弾性部材内での前記弾性部材貫通部の位置を規制する弾性部材内バスバー位置規制構造を含む請求項1または請求項2に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項4】
前記弾性部材の機器側端子寄りの表面に突出し、前記弾性部材表面延在部を押圧する押圧部をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項5】
前記電動機側端子に対する前記弾性部材の相対的な位置を規制する弾性部材位置規制構造を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項6】
前記バスバーは、可撓性を有する電気伝導部材を介して前記電動機側端子と電気接続され、前記電動機側電気接続部はスポット溶接されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項7】
前記機器側電気接続部は、前記機器側端子と前記機器側端子方向延在部との締結構造となっており、回転防止機構を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造によりブラシと接続する前記電動機側端子が接続されることを特徴とするブラシ付き電動機。
【請求項9】
車両のステアリング機構に補助操舵力を付与する、請求項8に記載のブラシ付き電動機を含み、前記ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいて前記ブラシ付き電動機を駆動制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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